特許第5673274号(P5673274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5673274リチウムイオン電池用正極活物質とその製造方法及びリチウムイオン電池用電極並びにリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5673274
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用正極活物質とその製造方法及びリチウムイオン電池用電極並びにリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20150129BHJP
   C01B 25/45 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   H01M4/58
   C01B25/45 Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-64894(P2011-64894)
(22)【出願日】2011年3月23日
(65)【公開番号】特開2012-204014(P2012-204014A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2013年9月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】大野 宏次
(72)【発明者】
【氏名】忍足 暁
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−207637(JP,A)
【文献】 特開2008−066019(JP,A)
【文献】 特開2011−009190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/58
C01B 25/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的な粉砕により微粒子化する方法によらずに得られたLiMPO(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)からなるリチウムイオン電池用正極活物質であって、
X線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)は、3.00以上かつ5.00以下であり、
比表面積は15m/g以上かつ50m/g以下であることを特徴とするリチウムイオン電池用正極活物質。
【請求項2】
LiMPO(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)からなり、Li源、P源及びM源(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)を水を主成分とする溶媒と混合して得られた原料スラリーに、アンモニア及びアミン類化合物の群から選択される1種または2種を、前記アンモニアまたは前記アミン類化合物のアンモニア基の前記M源に対するモル%が1モル%以上かつ12モル%以下となるように加えて混合物とし、次いで、前記混合物を前記原料スラリーの沸点以上の温度に加熱して得られるリチウムイオン電池用正極活物質であって、
X線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)は、3.00以上かつ5.00以下であることを特徴とするリチウムイオン電池用正極活物質。
【請求項3】
LiMPO(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)からなり、X線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)は、3.00以上かつ5.00以下であるリチウムイオン電池用正極活物質を水熱合成法にて製造する方法であって、
Li源、P源及びM源(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)を水を主成分とする溶媒と混合して得られた原料スラリーに、アンモニア及びアミン類化合物の群から選択される1種または2種を、前記アンモニアまたは前記アミン類化合物のアンモニア基の前記M源に対するモル%が1モル%以上かつ12モル%以下となるように加えて混合物とし、次いで、前記混合物を前記原料スラリーの沸点以上の温度に加熱することを特徴とするリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2記載のリチウムイオン電池用正極活物質を含有してなることを特徴とするリチウムイオン電池用電極。
【請求項5】
請求項4記載のリチウムイオン電池用電極を備えてなることを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用正極活物質とその製造方法及びリチウムイオン電池用電極並びにリチウムイオン電池に関し、特に詳しくは、LiMPO(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)粒子の表面積及び結晶形状を制御することにより、充放電容量及びハイレート特性を向上させることが可能なリチウムイオン電池の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、小型化、軽量化、高容量化が期待される電池として、リチウムイオン電池等の非水電解液系の二次電池が提案され、実用に供されている。このリチウムイオン電池は、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有する正極及び負極と、非水系の電解質とにより構成されている。
リチウムイオン電池は、従来の鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等の二次電池と比べて、軽量かつ小型で高エネルギーを有しており、携帯用電話機、ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯用電子機器の電源として用いられているが、近年、電気自動車、ハイブリッド自動車、電動工具等の高出力電源としても検討されている。これらの高出力電源として用いられる電池の電極活物質には、高速の充放電特性が求められている。
【0003】
そこで、上記のような二次電池の高機能化、高容量化、低コスト化等の観点から、正極活物質として様々な材料が検討されている。これらの中でもLiMnPOやLiCoPOで代表されるオリビン系リン酸塩系電極活物質は、安全性はもちろんのこと、高資源量及び低コストの電極活物質として注目されている。
【0004】
ところで、オリビン系リン酸塩系電極活物質については、低レート放電条件下にあっても材料利用率が悪いという問題点が多く指摘されてきた(非特許文献1等参照)。
材料利用率が悪くなる問題点の1つとして、オリビン系リン酸塩系電極活物質の構造に由来する、活物質内部のLi拡散の遅さが挙げられる。
このオリビン系リン酸塩系電極活物質では、活物質内部のLi拡散は、LiMPO(MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)とMPO(MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)の二相の変換を伴いながら結晶格子のb軸方向のみに起こることが知られており(非特許文献2)、オリビン系リン酸塩系電極活物質は高速の充放電には不利だとされている。
【0005】
これらの問題点を解決する有効な方法としては、LiMPO(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)粒子におけるLi拡散距離を短縮する目的で、この粒子のb軸方向の結晶格子長さを短縮すること、または、この粒子の一次粒子形状をb軸方向に薄い板状結晶とすること、あるいは、LiとLiMPO粒子の反応面積を増大させる目的で、LiMPO粒子の微粒子化が挙げられる。
このLiMPO粒子を微粒子化する方法としては、このLiMPO粒子を機械的な粉砕により微粒子化する方法が一般的である(特許文献1等参照)。
また、他の方法としては、グリコールやポリオール等の高沸点の多価アルコールを用いた微粒子化方法が提案されている(特許文献2等参照)。
この方法は、十分な量の前駆体をグリコールやポリオール等の高沸点の多価アルコール中で加熱しながら、LiMPO粒子を沈澱させる方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】再公表WO2007/034823号公報
【特許文献2】特表2009−532323号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】A.K.Padhi,K.S.Nanjundaswamy and J.B.Goodenough,J.Electbrochem.Soc.,Vol.144,No.4,1 30 pp188−1193(1997)
【非特許文献2】A.Yamada,H.Koizumi,S.Nishimura,N.Sonoyama,R.Kanno,M.Yonemura,T.Nakamura and Y.Kobayashi,Nature Materials 5,pp357−360(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の機械的な粉砕により微粒子化する方法では、粒子のb軸方向の結晶格子長さを短縮することは難しく、また、機械的な粉砕では微粒子化に限度があり、目的とする粒子径にまで十分に微粒子化することが難しいという問題点があった。
さらに好ましくないことには、機械的な粉砕がLiMPO粒子に歪みや割れ等のダメージを与えてしまうことにより、充放電に不活性なLiMPOを生成してしまい、その結果、十分な充放電特性が得られないという問題点があった。
【0009】
一方、高沸点の多価アルコールを用いた微粒子化方法では、機械的な粉砕と比べて微粒子化がなされているものの、得られた粒子の形状は球状であるから、粒子のb軸方向の結晶格子長さの短縮化を行うことが難しく、十分な充放電特性を得ることができないという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、結晶成長を抑制することで、結晶性が良くかつ高純度の微細粒子が可能であり、しかも、充放電容量及びハイレート特性を向上させることが可能なリチウムイオン電池用正極活物質と、このリチウムイオン電池用正極活物質を製造することが可能なリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法、及びリチウムイオン電池用電極並びにリチウムイオン電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、LiMPO(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)からなるリチウムイオン電池用正極活物質のX線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)を、3.00以上かつ5.00以下であり、比表面積が15m/g以上かつ50m/g以下とすれば、非常に微細であり、高純度かつ結晶性の良好な上記のLiMPOで表されるリチウムイオン電池用正極活物質を実現することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
また、Li源、P源及びM源(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)を水を主成分とする溶媒と混合して得られた原料スラリーに、アンモニア及びアミン類化合物の群から選択される1種または2種を、前記アンモニアまたは前記アミン類化合物のアンモニア基の前記M源に対するモル%が1モル%以上かつ12モル%以下となるように加えて混合物とし、次いで、前記混合物を前記原料スラリーの沸点以上の温度に加熱することとすれば、非常に微細であり、高純度かつ結晶性の良好な上記のLiMPOで表されるリチウムイオン電池用正極活物質を容易に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、機械的な粉砕により微粒子化する方法によらずに得られたLiMPO(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)からなるリチウムイオン電池用正極活物質であって、X線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)は、3.00以上かつ5.00以下であり、比表面積は15m/g以上かつ50m/g以下であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、LiMPO(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)からなり、Li源、P源及びM源(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)を水を主成分とする溶媒と混合して得られた原料スラリーに、アンモニア及びアミン類化合物の群から選択される1種または2種を、前記アンモニアまたは前記アミン類化合物のアンモニア基の前記M源に対するモル%が1モル%以上かつ12モル%以下となるように加えて混合物とし、次いで、前記混合物を前記原料スラリーの沸点以上の温度に加熱して得られるリチウムイオン電池用正極活物質であって、X線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)は、3.00以上かつ5.00以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法は、LiMPO(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)からなり、X線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)は、3.00以上かつ5.00以下であるリチウムイオン電池用正極活物質を水熱合成法にて製造する方法であって、Li源、P源及びM源(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)を水を主成分とする溶媒と混合して得られた原料スラリーに、アンモニア及びアミン類化合物の群から選択される1種または2種を、前記アンモニアまたは前記アミン類化合物のアンモニア基の前記M源に対するモル%が1モル%以上かつ12モル%以下となるように加えて混合物とし、次いで、前記混合物を前記原料スラリーの沸点以上の温度に加熱することを特徴とする。
【0016】
本発明のリチウムイオン電池用電極は、本発明のリチウムイオン電池用正極活物質を含有してなることを特徴とする。
本発明のリチウムイオン電池は、本発明のリチウムイオン電池用電極を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質によれば、機械的な粉砕により微粒子化する方法によらずに得られたLiMPO(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)のX線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)を、3.00以上かつ5.00以下とし、比表面積を15m/g以上かつ50m/g以下としたので、LiMPOで表されるリチウムイオン電池用正極活物質の純度及び結晶性を高めることができ、しかも、非常に微細な粒子とすることができる。したがって、高純度かつ結晶性が良く、しかも、非常に微細なLiMPOで表されるリチウムイオン電池用正極活物質を提供することができる。
さらに、このリチウムイオン電池用正極活物質を用いてリチウムイオン電池用電極を作製し、さらには、このリチウムイオン電池用電極を用いてリチウムイオン電池を作製すれば、充放電容量及びハイレート特性を向上させたリチウムイオン電池を提供することができる。
【0018】
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法によれば、LiMPO(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)からなり、X線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)は、3.00以上かつ5.00以下であるリチウムイオン電池用正極活物質を水熱合成法にて製造する方法であって、Li源、P源及びM源(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)を水を主成分とする溶媒と混合して得られた原料スラリーに、アンモニア及びアミン類化合物の群から選択される1種または2種を、前記アンモニアまたは前記アミン類化合物のアンモニア基の前記M源に対するモル%が1モル%以上かつ12モル%以下となるように加えて混合物とし、次いで、前記混合物を前記原料スラリーの沸点以上の温度に加熱するので、高純度かつ結晶性が良く、しかも、非常に微細なLiMPOで表されるリチウムイオン電池用正極活物質を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1及び比較例1、2各々の粉体のX線回折図形を示す図である。
図2】本発明の実施例3及び比較例3、4各々の粉体のX線回折図形を示す図である。
図3】本発明の実施例1及び比較例1各々の0.1CAの充放電曲線を示す図である。
図4】本発明の実施例3及び比較例3各々の0.1CAの充放電曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質とその製造方法及びリチウムイオン電池用電極並びにリチウムイオン電池を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0021】
[リチウムイオン電池用正極活物質]
本実施形態のリチウムイオン電池用正極活物質は、LiMPO(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)粒子からなるリチウムイオン電池用正極活物質であって、X線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)が、3.00以上かつ5.00以下である。
【0022】
ここで、(200)面のX線強度I(200)と(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)を、3.00以上かつ5.00以下とした理由は、この範囲が、LiMPO粒子のb軸方向の結晶格子長さを短縮することのできる範囲だからである。
なお、比I(020)/I(200)が上記の範囲を外れると、粒子の形状が球形に近くなり、その結果、LiMPO粒子のb軸方向の結晶格子長さが長い状態のままとなる。
【0023】
このLiMPO粒子の比表面積は15m/g以上かつ50m/g以下であることが好ましく、より好ましくは25m/g以上かつ40m/g以下である。
ここで、比表面積を15m/g以上かつ50m/g以下とした理由は、比表面積が15m/g未満では、このLiMPO粒子の微細化が不十分なものとなり、その結果、非常に微細であり、高純度かつ結晶性の良好なLiMPO粒子が得られず、一方、比表面積が50m/gを超えると、微細になり過ぎて結晶性を良好に保つことが難しくなり、その結果、やはり非常に微細な、高純度かつ結晶性の良好なLiMPO粒子が得られないので、好ましくない。
【0024】
[リチウムイオン電池用正極活物質の製造方法]
本実施形態のリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法は、上記のLiMPO(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)からなるリチウムイオン電池用正極活物質を水熱合成法にて製造する方法であり、Li源、P源及びM源(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)を水を主成分とする溶媒と混合して得られた原料スラリーに、アンモニア及びアミン類化合物の群から選択される1種または2種を、前記アンモニアまたは前記アミン類化合物のアンモニア基の前記M源に対するモル%が1モル%以上かつ12モル%以下となるように加えて混合物とし、次いで、前記混合物を前記原料スラリーの沸点以上の温度に加熱する方法である。
【0025】
Li源としては、例えば、水酸化リチウム(LiOH)等の水酸化物、炭酸リチウム(LiCO)、塩化リチウム(LiCl)、硝酸リチウム(LiNO)、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸水素二リチウム(LiHPO)、リン酸二水素リチウム(LiHPO)等のリチウム無機酸塩、酢酸リチウム(LiCHCOO)、蓚酸リチウム((COOLi))等のリチウム有機酸塩、及びこれらの水和物が挙げられ、これらの中から選択された1種または2種以上が好適に用いられる。
【0026】
P源としては、オルトリン酸(HPO)、メタリン酸(HPO)等のリン酸、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)、リン酸アンモニウム((NHPO)、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸水素二リチウム(LiHPO)、リン酸二水素リチウム(LiHPO)等のリン酸塩、及びこれらの水和物の中から選択された1種または2種以上が好適に用いられる。
【0027】
M源としては、Mn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上を含む化合物、すなわちMn源、Co源及びNi源のうち1種または2種以上が好ましい。
Mn源としては、Mn塩が好ましく、例えば、塩化マンガン(II)(MnCl)、硫酸マンガン(II)(MnSO)、硝酸マンガン(II)(Mn(NO)、酢酸マンガン(II)(Mn(CHCOO))及びこれらの水和物の中から選択された1種または2種以上が好ましい。
【0028】
Co源としては、Co塩が好ましく、例えば、塩化コバルト(II)(CoCl)、硫酸コバルト(II)(CoSO)、硝酸コバルト(II)(Co(NO)、酢酸コバルト(II)(Co(CHCOO))及びこれらの水和物の中から選択された1種または2種以上が好ましい。
Ni源としては、Ni塩が好ましく、例えば、塩化ニッケル(II)(NiCl)、硫酸ニッケル(II)(NiSO)、硝酸ニッケル(II)(Ni(NO)、酢酸ニッケル(II)(Ni(CHCOO))及びこれらの水和物の中から選択された1種または2種以上が好ましい。
【0029】
水を主成分とする溶媒とは、水単独、あるいは水を主成分とし必要に応じてアルコール等の水性溶媒を含む水系溶媒、のいずれかである。
水性溶媒としては、Li源、P源及びM源を溶解させることのできる溶媒であればよく、特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類等を挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
これらLi源、P源及びM源を、これらのモル比(Li源:P源:M源)が3:1:1となるように水を主成分とする溶媒に投入し、撹拌・混合して原料スラリーとする。
これらLi源、P源及びM源を均一に混合する点を考慮すると、これらLi源、P源及びM源を水溶液とした後に混合する方法が好ましい。
この原料スラリーにおけるLi源、P源及びM源のモル濃度は、高純度であり、結晶性が高くかつ非常に微細なLiMPO粒子を得る必要があることから、1.5mol/L以上かつ4.0mol/L以下が好ましい。
【0031】
次いで、この原料スラリーに、アンモニア及びアミン類化合物の群から選択される1種または2種を、アンモニアまたはアミン類化合物のアンモニア基のM源に対するモル%が1モル%以上かつ12モル%以下となるように加えて混合物とする。
アミン類化合物としては、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、アニリン、トルイジン等から選択される1種のみ、または2種以上を混合して用いることができる。
特に、生成するLiMPO粒子の結晶成長を効果的に抑制し、生成したLiMPO粒子からの不純物の除去を容易にする点を考慮すると、アンモニアが好ましい。
【0032】
ここで、アンモニアまたはアミン類化合物のアンモニア基のM源に対するモル%を1モル%以上かつ12モル%以下と限定した理由は、モル%が1モル%未満では、アンモニアまたはアミン類化合物の添加効果を十分に発揮することができず、よって、結晶性が高くかつ非常に微細なLiMPO粒子を得ることができないので、好ましくない。
一方、モル%が12モル%を超えると、アンモニアまたはアミン類化合物の添加効果が飽和してしまい、これ以上アンモニアまたはアミン類化合物を添加しても、さらなる添加効果が得られず、さらに悪いことには目的のLiMPOとは異なる第2相の生成に繋がってしまうので、好ましくない。
【0033】
次いで、この混合物を耐圧容器に入れ、原料スラリーの沸点以上の温度に加熱し、1時間以上かつ48時間以下、水熱処理を行い、LiMPO粒子を得る。
この原料スラリーの沸点以上の温度に到達したときの耐圧容器内の圧力は、例えば0.1MPa以上かつ0.7MPa以下となる。
この場合、水熱処理時の温度及び時間を調整することにより、LiMPO粒子の粒子径を所望の大きさに制御することが可能である。
以上により、非常に微細であり、高純度かつ結晶性の良好なLiMPO粒子を得ることができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態のリチウムイオン電池用正極活物質によれば、LiMPO(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)粒子のX線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)を3.00以上かつ5.00以下としたので、LiMPO粒子の純度及び結晶性を高めることができ、しかも、非常に微細な粒子とすることができる。したがって、高純度かつ結晶性が良く、しかも、非常に微細なLiMPO粒子を提供することができる。
【0035】
さらに、上記のLiMPO粒子を用いてリチウムイオン電池用電極を作製し、さらには、このリチウムイオン電池用電極を用いてリチウムイオン電池を作製すれば、充放電容量及びハイレート特性を向上させたリチウムイオン電池を提供することができる。
【0036】
本実施形態のリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法によれば、Li源、P源及びM源(但し、MはMn、Co、Niの群から選択される1種または2種以上)を水を主成分とする溶媒と混合して原料スラリーとし、この原料スラリーに、アンモニア及びアミン類化合物の群から選択される1種または2種を、アンモニアまたはアミン類化合物のアンモニア基のM源に対するモル%が1モル%以上かつ12モル%以下となるように加えて混合物とし、次いで、この混合物を原料スラリーの沸点以上の温度に加熱するので、高純度かつ結晶性が良く、しかも、非常に微細なLiMPO粒子を容易に製造することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
LiMnPOの合成は以下のようにして行った。
Li源及びP源としてLiPOを、Mn源としてMnSO水溶液を用い、これらをモル比でLi:Mn:P=3:1:1となるように混合して200mlの原料スラリーを作製した。
次いで、この原料スラリーにアンモニア水を、MnSOのMnに対してアンモニア換算で5mol%となるように混合し、耐圧容器に入れた。その後、120℃にて2時間、水熱合成を行った。反応後、室温になるまで冷却し、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。この沈殿物を蒸留水にて計5回十分に水洗し、乾燥しないように含水率30%に保持し、実施例1のケーキ状物質を得た。
【0039】
次いで、上記の沈殿物から試料を若干量採取し、この試料を70℃にて2時間真空乾燥させ、実施例1の粉体を得た。
この粉体をX線回折装置を用いて同定したところ、単相のLiMnPOが生成していることが確認された。また、この粉体のX線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)は3.38であった。
また、この粉体の比表面積を比表面積計 BelsorpII(日本ベル社製)を用いて測定したところ、30.1m/gであった。
実施例1の粉体のX線回折図形を図1に示す。なお、図1の最下段に、JCPDSカードNo.33−0804に記載されているLiMnPOの回折線の位置を示している。
【0040】
(実施例2)
LiMnPOの合成は以下のようにして行った。
Li源及びP源としてLiPOを、Mn源としてMnSO水溶液を用い、これらをモル比でLi:Mn:P=3:1:1となるように混合して200mlの原料スラリーを作製した。
次いで、この原料スラリーにアンモニア水を、MnSOのMnに対してアンモニア換算で10mol%となるように混合し、耐圧容器に入れた。その後、120℃にて2時間、水熱合成を行った。反応後、室温になるまで冷却し、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。この沈殿物を蒸留水にて計5回十分に水洗し、乾燥しないように含水率30%に保持し、実施例2のケーキ状物質を得た。
【0041】
次いで、上記の沈殿物から試料を若干量採取し、この試料を70℃にて2時間真空乾燥させ、実施例2の粉体を得た。
この粉体をX線回折装置を用いて同定したところ、単相のLiMnPOが生成していることが確認された。また、この粉体のX線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)は4.31であった。
また、この粉体の比表面積を比表面積計 BelsorpII(日本ベル社製)を用いて測定したところ、43.2m/gであった。
【0042】
(比較例1)
LiMnPOの合成は以下のようにして行った。
Li源及びP源としてLiPOを、Mn源としてMnSO水溶液を用い、これらをモル比でLi:Mn:P=3:1:1となるように混合して200mlの原料スラリーを作製した。
次いで、この原料スラリーを耐圧容器に入れ、その後、120℃にて2時間、水熱合成を行った。反応後、室温になるまで冷却し、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。この沈殿物を蒸留水にて計5回十分に水洗し、乾燥しないように含水率30%に保持し、比較例1のケーキ状物質を得た。
【0043】
次いで、上記の沈殿物から試料を若干量採取し、この試料を70℃にて2時間真空乾燥させ、比較例1の粉体を得た。
この粉体をX線回折装置を用いて同定したところ、単相のLiMnPOが生成していることが確認された。また、この粉体のX線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)は2.87であった。
また、この粉体の比表面積を比表面積計 BelsorpII(日本ベル社製)を用いて測定したところ、12.6m/gであった。
比較例1の粉体のX線回折図形を図1に示す。
【0044】
(比較例2)
LiMnPOの合成は以下のようにして行った。
Li源及びP源としてLiPOを、Mn源としてMnSO水溶液を用い、これらをモル比でLi:Mn:P=3:1:1となるように混合して200mlの原料スラリーを作製した。
次いで、この原料スラリーにアンモニア水を、MnSOのMnに対してアンモニア換算で15mol%となるように混合し、耐圧容器に入れた。その後、120℃にて2時間、水熱合成を行った。反応後、室温になるまで冷却し、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。この沈殿物を蒸留水にて計5回十分に水洗し、乾燥しないように含水率30%に保持し、比較例2のケーキ状物質を得た。
【0045】
次いで、上記の沈殿物から試料を若干量採取し、この試料を70℃にて2時間真空乾燥させ、比較例2の粉体を得た。
この粉体をX線回折装置を用いて同定したところ、生成物はLiPOとMn水和物との混合物であることが確認された。
また、この粉体の比表面積を比表面積計 BelsorpII(日本ベル社製)を用いて測定したところ、32.1m/gであった。
比較例2の粉体のX線回折図形を図1に示す。
【0046】
(実施例3)
LiCoPOの合成は以下のようにして行った。
Li源及びP源としてLiPOを、Co源としてCoSO水溶液を用い、これらをモル比でLi:Co:P=3:1:1となるように混合して200mlの原料スラリーを作製した。
次いで、この原料スラリーにアンモニア水を、CoSOのCoに対してアンモニア換算で5mol%となるように混合し、耐圧容器に入れた。その後、180℃にて12時間、水熱合成を行った。反応後、室温になるまで冷却し、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。この沈殿物を蒸留水にて計5回十分に水洗し、乾燥しないように含水率30%に保持し、実施例3のケーキ状物質を得た。
【0047】
次いで、上記の沈殿物から試料を若干量採取し、この試料を70℃にて2時間真空乾燥させ、実施例3の粉体を得た。
この粉体をX線回折装置を用いて同定したところ、単相のLiCoPOが生成していることが確認された。また、この粉体のX線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)は3.76であった。
また、この粉体の比表面積を比表面積計 BelsorpII(日本ベル社製)を用いて測定したところ、15.3m/gであった。
実施例3の粉体のX線回折図形を図2に示す。なお、図2の最下段に、JCPDSカードNo.85−0002に記載されているLiCoPOの回折線の位置を示している。
【0048】
(実施例4)
LiCoPOの合成は以下のようにして行った。
Li源及びP源としてLiPOを、Co源としてCoSO水溶液を用い、これらをモル比でLi:Co:P=3:1:1となるように混合して200mlの原料スラリーを作製した。
次いで、この原料スラリーにアンモニア水を、CoSOのCoに対してアンモニア換算で10mol%となるように混合し、耐圧容器に入れた。その後、180℃にて12時間、水熱合成を行った。反応後、室温になるまで冷却し、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。この沈殿物を蒸留水にて計5回十分に水洗し、乾燥しないように含水率30%に保持し、実施例4のケーキ状物質を得た。
【0049】
次いで、上記の沈殿物から試料を若干量採取し、この試料を70℃にて2時間真空乾燥させ、実施例4の粉体を得た。
この粉体をX線回折装置を用いて同定したところ、単相のLiCoPOが生成していることが確認された。また、この粉体のX線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)は3.21であった。
また、この粉体の比表面積を比表面積計 BelsorpII(日本ベル社製)を用いて測定したところ、19.4m/gであった。
【0050】
(比較例3)
LiCoPOの合成は以下のようにして行った。
Li源及びP源としてLiPOを、Co源としてCoSO水溶液を用い、これらをモル比でLi:Co:P=3:1:1となるように混合して200mlの原料スラリーを作製した。
次いで、この原料スラリーを耐圧容器に入れ、その後、180℃にて12時間、水熱合成を行った。反応後、室温になるまで冷却し、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。この沈殿物を蒸留水にて計5回十分に水洗し、乾燥しないように含水率30%に保持し、比較例3のケーキ状物質を得た。
【0051】
次いで、上記の沈殿物から試料を若干量採取し、この試料を70℃にて2時間真空乾燥させ、比較例3の粉体を得た。
この粉体をX線回折装置を用いて同定したところ、単相のLiCoPOが生成していることが確認された。また、この粉体のX線回折図形における回折角2θが17°付近の(200)面のX線強度I(200)と29°付近の(020)面のX線強度I(020)との比I(020)/I(200)は1.91であった。
また、この粉体の比表面積を比表面積計 BelsorpII(日本ベル社製)を用いて測定したところ、8.2m/gであった。
比較例3の粉体のX線回折図形を図2に示す。
【0052】
(比較例4)
LiCoPOの合成は以下のようにして行った。
Li源及びP源としてLiPOを、Co源としてCoSO水溶液を用い、これらをモル比でLi:Co:P=3:1:1となるように混合して200mlの原料スラリーを作製した。
次いで、この原料スラリーにアンモニア水を、CoSOのCoに対してアンモニア換算で15mol%となるように混合し、耐圧容器に入れた。その後、180℃にて12時間、水熱合成を行った。反応後、室温になるまで冷却し、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。この沈殿物を蒸留水にて計5回十分に水洗し、乾燥しないように含水率30%に保持し、比較例4のケーキ状物質を得た。
【0053】
次いで、上記の沈殿物から試料を若干量採取し、この試料を70℃にて2時間真空乾燥させ、比較例4の粉体を得た。
この粉体をX線回折装置を用いて同定したところ、生成物はLiPOとCo水和物との混合物であることが確認された。
また、この粉体の比表面積を比表面積計 BelsorpII(日本ベル社製)を用いて測定したところ、16.3m/gであった。
比較例4の粉体のX線回折図形を図2に示す。
【0054】
「リチウムイオン電池の作製」
実施例1〜4及び比較例1〜4各々にて得られた各粉体、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を用い、これらを混合し、実施例1〜4及び比較例1〜4各々の正極材料ペーストを作製した。なお、ペースト中の質量比、すなわち粉体:AB:PVdFは80:10:10であった。
次いで、これらの正極材料ペーストを厚み30μmのアルミニウム(Al)箔上に塗布し、乾燥した。その後、30MPaの圧力にて圧密し、正電極板とした。
【0055】
次いで、この正電極板を成形機を用いて直径16mmの円板状に打ち抜き、試験用正電極とした。
一方、負電極には、市販のLi金属板を、セパレーターには多孔質ボリプロピレン膜を、非水電解質溶液には1mol/LのLiPF溶液を、それぞれ用い、また、このLiPF溶液の溶媒としては、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとの体積比が1:1の混合溶液を用い、2032コイン型セルを用いて、実施例1〜4及び比較例1、3各々のリチウムイオン電池を作製した。
【0056】
「電池特性試験A」
実施例1、2及び比較例1各々のリチウムイオン電池の電池特性試験を、環境温度25℃、充電電流0.1CAで、正電極の電位がLiの平衡電位に対して4.3Vになるまで充電し、続いてLiの平衡電位に対して4.3Vで充電電流0.01CAとなるまで充電した。1分間休止の後、0.1CAの放電電流で2.0Vになるまで放電させて行った。
実施例1、2及び比較例1各々の環境温度25℃における0.1C放電容量及び1C放電容量を表1に示す。また、図3に実施例1及び比較例1各々の0.1CAの充放電曲線を示す。
【0057】
「電池特性試験B」
実施例3、4及び比較例3各々のリチウムイオン電池の電池特性試験を、環境温度25℃、充電電流0.1CAで、正電極の電位がLiの平衡電位に対して5.0Vになるまで充電し、続いてLiの平衡電位に対して5.0Vで充電電流0.01CAとなるまで充電した。1分間休止の後、0.1CAの放電電流で2.0Vになるまで放電させて行った。
実施例3、4及び比較例3各々の環境温度25℃における0.1C放電容量及び1C放電容量を表2に示す。また、図4に実施例3及び比較例3各々の0.1CAの充放電曲線を示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
なお、実施例1〜4では、単相のLiMnPOあるいはLiCoPOを用いたが、これらの替わりにLiNiPOを用いても、同様の結果が得られたことが確認された。
また、単相のLiMnPOあるいはLiCoPOの替わりに、これらにMn、Co、Niのいずれかをドープしたものについても、同様の結果が得られたことが確認された。
【0061】
また、実施例1〜4では、導電助剤としてアセチレンブラックを用いているが、カーボンブラック、グラファイト、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料を用いてもよい。
また、負電極に市販のLi金属板を用いたが、このLi金属板の替わりに天然黒鉛、人造黒鉛、コークス等の炭素材料、リチウム合金、LiTi12等の負極材料を用いてもよい。
【0062】
また、非水電解質溶液にLiPF溶液を、このLiPF溶液の溶媒として炭酸エチレンと炭酸ジエチルとの比が1:1のものを、それぞれ用いたが、LiPFの替わりにLiBFやLiClO溶液を用いてもよく、炭酸エチレンの代わりにプロピレンカーボネートやジエチルカーボネートを用いてもよい。
また、電解液とセパレーターの替わりに固体電解質を用いてもよい。
図1
図2
図3
図4