【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0034】
「粉体の作製」
(実施例1)
LiMnPO
4の合成は以下のようにして行った。
Li源及びP源としてLi
3PO
4を、Mn源としてMnSO
4水溶液を用い、これらをモル比でLi:Mn:P=3:1:1となるように混合して200mlの原料スラリーを作製した。
次いで、この原料スラリを耐圧容器に入れ、その後、100℃にて1時間、水熱合成を行った。このときの耐圧容器内の圧力は0.1MPaであった。
反応後、室温になるまで冷却し、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。この沈殿物を蒸留水にて計5回十分に水洗し、乾燥しないように含水率30%に保持し、実施例1のケーキ状物質を得た。
【0035】
次いで、上記の沈殿物から試料を若干量採取し、この試料を70℃にて2時間真空乾燥させ、実施例1の粉体を得た。
この粉体の平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置 SALD−2100J(島津製作所社製)を用いて測定したところ、17nmであった。
この粉体をX線回折装置を用いて同定したところ、単相のLiMnPO
4が生成していることが確認された。また、この粉体のX線回折図形から算出した格子定数の値は、a=10.419Å、b=6.086Å、c=4.734Åであった。
また、この粉体の走査型電子顕微鏡(SEM)像から観察されるLiMnPO
4粒子の形状は、特徴的な板状結晶であった。
さらに、X線回折図形に見られるX線強度のピークのうち、b軸の反射に由来するピークが大きく現れており、板状結晶の厚さ方向はb軸方向であることが分かった。
【0036】
(実施例2)
原料スラリの水熱合成の条件を130℃にて1時間とした他は、実施例1に準じて実施例2のケーキ状物質及び粉体を得た。
この粉体の平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置 SALD−2100J(島津製作所社製)を用いて測定したところ、39nmであった。
この粉体をX線回折装置を用いて同定したところ、単相のLiMnPO
4が生成していることが確認された。また、この粉体のX線回折図形から算出した格子定数の値は、a=10.429Å、b=6.085Å、c=4.735Åであった。
また、この粉体の走査型電子顕微鏡(SEM)像から観察されるLiMnPO
4粒子の形状は、特徴的な板状結晶であった。
【0037】
さらに、X線回折図形に見られるX線強度のピークのうち、b軸の反射に由来するピークが大きく現れており、板状結晶の厚さ方向はb軸方向であることが分かった。
実施例2の粉体のX線回折図形を
図1に、走査型電子顕微鏡(SEM)像を
図2に、それぞれ示す。なお、
図1の最下段に、JCPDSカードNo.33−0804に記載されているLiMnPO
4の回折線の位置を示している。
【0038】
(実施例3)
原料スラリの水熱合成の条件を150℃にて1時間とした他は、実施例1に準じて実施例3のケーキ状物質及び粉体を得た。
この粉体の平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置 SALD−2100J(島津製作所社製)を用いて測定したところ、78nmであった。
この粉体をX線回折装置を用いて同定したところ、単相のLiMnPO
4が生成していることが確認された。また、この粉体のX線回折図形から算出した格子定数の値は、a=10.424Å、b=6.088Å、c=4.739Åであった。
また、この粉体の走査型電子顕微鏡(SEM)像から観察されるLiMnPO
4粒子の形状は、特徴的な板状結晶であった。
さらに、X線回折図形に見られるX線強度のピークのうち、b軸の反射に由来するピークが大きく現れており、板状結晶の厚さ方向はb軸方向であることが分かった。
【0039】
(比較例1)
原料スラリの水熱合成の条件を170℃にて1時間とした他は、実施例1に準じて比較例1のケーキ状物質及び粉体を得た。
この粉体の平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置 SALD−2100J(島津製作所社製)を用いて測定したところ、132nmであった。
この粉体をX線回折装置を用いて同定したところ、単相のLiMnPO
4が生成していることが確認された。また、この粉体のX線回折図形から算出した格子定数の値は、a=10.443Å、b=6.102Å、c=4.748Åであった。
また、この粉体の走査型電子顕微鏡(SEM)像から観察されるLiMnPO
4粒子の形状は、柱状の結晶であった。
比較例1の粉体のX線回折図形を
図1に、走査型電子顕微鏡(SEM)像を
図3に、それぞれ示す。
【0040】
(比較例2)
原料スラリの水熱合成の条件を90℃にて1時間とした他は、実施例1に準じて比較例2のケーキ状物質及び粉体を得た。
この粉体の平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置 SALD−2100J(島津製作所社製)を用いて測定したところ、31nmであった。
この粉体をX線回折装置を用いて同定したところ、単相のLiMnPO
4は生成しておらず、Li
3PO
4とMn
2P
2O
7水和物との混合物が生成していることが確認された。
比較例2の粉体のX線回折図形を
図1に、走査型電子顕微鏡(SEM)像を
図4に、それぞれ示す。
【0041】
「リチウムイオン電池の作製」
実施例1〜3及び比較例1各々にて得られた各粉体、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を用い、これらを混合し、実施例1〜3及び比較例1各々の正極材料ペーストを作製した。なお、ペースト中の質量比、すなわち粉体:AB:PVdFは80:10:10であった。
次いで、これらの正極材料ペーストを厚み30μmのアルミニウム(Al)箔上に塗布し、乾燥した。その後、30MPaの圧力にて圧密し、正電極板とした。
【0042】
次いで、この正電極板を成形機を用いて直径16mmの円板状に打ち抜き、試験用正電極とした。
一方、負電極には、市販のLi金属板を、セパレーターには多孔質ボリプロピレン膜を、非水電解質溶液には1mol/LのLiPF
6溶液を、それぞれ用い、また、このLiPF
6溶液の溶媒としては、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとの体積比が1:1の混合溶液を用い、2032コイン型セルを用いて、実施例1〜3及び比較例1各々のリチウムイオン電池を作製した。
【0043】
「電池特性試験」
実施例1〜3及び比較例1各々のリチウムイオン電池の電池特性試験を、環境温度25℃、充電電流0.1CAで、正電極の電位がLiの平衡電位に対して4.5Vになるまで充電し、1分間休止の後、0.1CAの放電電流で2.0Vになるまで放電させて行った。
実施例1〜3及び比較例1各々の環境温度25℃における0.1C放電容量及び1C放電容量を表1に示す。また、
図5に実施例2及び比較例1各々の0.1CAの充放電曲線を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
なお、実施例1〜3では、導電助剤としてアセチレンブラックを用いているが、カーボンブラック、グラファイト、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料を用いてもよい。
また、負電極に市販のLi金属板を用いたが、このLi金属板の替わりに天然黒鉛、人造黒鉛、コークス等の炭素材料、リチウム合金、Li
4Ti
5O
12等の負極材料を用いてもよい。
【0046】
また、非水電解質溶液にLiPF
6溶液を、このLiPF
6溶液の溶媒として炭酸エチレンと炭酸ジエチルとの比が1:1のものを、それぞれ用いたが、LiPF
6の替わりにLiBF
4やLiClO
4溶液を用いてもよく、炭酸エチレンの代わりにプロピレンカーボネートやジエチルカーボネートを用いてもよい。
また、電解液とセパレーターの代わりに固体電解質を用いてもよい。