(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記硬化された熱硬化性樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が−40℃以下若しくは100℃以上であることを特徴とする請求項1、3および4のいずれか一項に記載の導電性材料の製造方法。
前記熱硬化性樹脂又は前記熱可塑性樹脂は、平均粒径が0.1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の導電性材料の製造方法。
前記有機溶剤は、低級アルコール、または、低級アルコキシ、低級アルコキシで置換された低級アルコキシ、アミノおよびハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級アルコールの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項9に記載の導電性材料の製造方法。
請求項15乃至18のいずれか一項に記載の導電性材料が、電気配線、部品電極、ダイアタッチ接合材または微細バンプの材料として使用されることを特徴とする電子機器。
前記配線基板が、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、酸化チタン、窒化チタンまたはこれらの混合物を含むセラミック基板、Cu、Fe、Ni、Cr、Al、Ag、Au、Tiまたはこれらの合金を含む金属基板、ガラスエポキシ基板及びBTレジン基板からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項20に記載の発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<発光装置>
本発明に係る発光装置の一例を、図面を参照して説明する。
図1は、発光装置を示す概略斜視図であり、
図2は、発光装置を示す概略断面図である。
【0032】
発光装置は、発光素子10と、発光素子10を載置するパッケージ20と、発光素子10を覆う封止部材30と、発光素子10を実装するための導電性材料40とを有する。パッケージ20には導電性を有する一対のリード21が一体成形されている。パッケージ20は底面と側面を有するカップ形状の凹部を有しており、底面に導電性リード21の表面が露出している。リード21は鉄または銅等を母材とし、表面に銀メッキが施されている。発光素子10は導電性材料40を介して一のリード21に接合されており、また、発光素子10はワイヤー50を介して他のリード21に接合されている。他のリード21にツェナーダイオードなどの保護素子11を載置してもよい。保護素子11も導電性材料40を介して実装されている。封止部材30は発光素子10からの光を吸収し、かつ波長変換する蛍光物質60を含有していても良い。
【0033】
発光素子10としては、窒化ガリウム(GaN)系半導体からなる青色発光のLEDチップや、紫外発光のLEDチップ、レーザダイオードなどが用いられる。その他、例えば、MOCVD法等によって基板上にInN、AlN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物半導体を発光層として形成させたものも使用できる。発光素子10は、リード21上に導電性材料40を介して実装されている。発光素子は、サファイア等の基板上にn型半導体層、活性層、p型半導体層の順に半導体が積層されている。この半導体が積層されている側と反対側のサファイア基板の表面上には銀がメタライズされている。サファイア基板に設けられた銀の厚みは特に限定されないが、銀の厚みが厚い方が剥離し難く、接合強度に優れている。銀の厚みは、少なくとも250nm以上あることが好ましく、より好ましくは360nm以上、最も好ましくは500nm以上である。発光素子や半導体素子に用いる基板は、サファイア基板だけでなく、SiO
2基板、GaN基板、ZnO基板、GaP基板なども使用することができる。発光素子10は、同一平面上にn側電極とp側電極を持つ発光素子の他、一方の面にn側電極、反対の面にp側電極を持つ発光素子も使用することができる。
【0034】
パッケージ20としてはリード21が一体成型されているものの他、パッケージを成型した後にメッキなどにより回路配線を設けたものであってもよい。パッケージ20の凹部の形状は、開口方向に広口となる円錐台形や円筒状、側面に凹凸が設けられた略円筒状など種々の形態を採ることができる。パッケージ20を構成する樹脂としては、耐光性、耐熱性に優れた電気絶縁性のものが好適に用いられ、例えばポリフタルアミドなどの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂、ガラスエポキシ、セラミックスなどを用いることができる。また、発光素子10からの光を効率よく反射させるためにこれらの樹脂に酸化チタンなどの白色顔料などを混合させることができる。パッケージ20の成形法としては、リードを予め金型内に設置して行うインサート成形、射出成形、押出成形、トランスファ成形などを用いることができる。
【0035】
リード21は、発光素子10と電気的に接続され、例えば、パッケージ20にインサートされた板状のリードや、ガラスエポキシやセラミックなどの基板に形成された導電パターンであってよい。
【0036】
リード21は、銅を主成分とする母材に、銀をメッキしている。母材の材質は銅以外にも鉄、アルミニウム、金、これらの合金なども用いることができる。また母材と銀との間には、ニッケル、ロジウムなども下地として使用できる。このリード21に設けられた銀の厚みは特に限定されないが、銀の厚みが厚い方が剥離し難く、接合強度に優れている。銀の厚みは、少なくとも500nm以上あることが好ましく、より好ましくは1μm以上、最も好ましくは3μm以上である。
【0037】
サファイア基板に設けられた銀メッキの銀と導電性材料の銀とは、金属接合されている。また、導電性材料の各粒子同士は互いに融着されており、金属接合されている。これにより電気抵抗値を低くすることができる。
【0038】
封止部材30は、発光素子10からの光を効率よく外部に透過させると共に、外力、埃などから発光素子10やワイヤー50などを保護する。封止部材30は、蛍光物質60及び光拡散部材などを含有してもよい。蛍光物質60としては、発光素子10からの光を吸収し、発光素子からの光とは異なる波長の蛍光を発するものであればよく、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体または酸窒化物系蛍光体、Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に付活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類硫化物蛍光体、アルカリ土類チオガレート蛍光体、アルカリ土類窒化ケイ素蛍光体、ゲルマン酸塩蛍光体、Ce等のランタノイド系元素で主に付活される希土類アルミン酸塩蛍光体、希土類ケイ酸塩蛍光体、又はEu等のランタノイド系元素で主に賦活される有機及び有機錯体等から選ばれる少なくとも1以上であることが好ましい。より好ましくは、(Y,Gd)
3(Al,Ga)
5O
12:Ce、(Ca,Sr,Ba)
2SiO
4:Eu、(Ca,Sr)
2Si
5N
8:Eu、CaAlSiN
3:Euなどが使用される。
【0039】
上記のような発光装置の他、発光を伴わない電子機器の分野の製品についても半導体素子を実装する際に、本発明の導電性材料及びその製造方法を適用することができる。
【0040】
また、ガラスエポキシ基板やBTレジン基板に、本発明の導電性材料を製造する方法を用いれば、熱可塑性樹脂又は半硬化された熱硬化性樹脂が加熱により溶融し、溶着又は溶着硬化された導電性材料を施して配線基板とすることができる。例えば、ガラスエポキシ基板に導電性材料用組成物をスクリーン印刷し、加熱融着させることにより簡単に銀回路パターンを形成することができる。
【0041】
<導電性材料及びその接合状態>
以下、説明の便宜のため、樹脂を含まない導電性材料用組成物を用いて、銀粒子が融着した導電性材料の接合状態について図面及び写真を用いて説明する。
図3は、導電性材料(樹脂を含まない)の接合状態を示す模式図である。
図3中、発光素子10のサファイア基板71には銀72がメタライズされている。銅を主成分とするリードフレーム75には銀メッキ74が施されている。サファイア基板71は導電性材料73を介してリードフレーム75に融着されている。銀72と導電性材料73とは融着され金属接合されており、また、導電性材料73と銀メッキ74とが融着され金属接合されている。
【0042】
図4は、導電性材料の接合状態を示す断面写真である。
図5は、
図4のA1部を拡大した断面写真である。
図6は、
図5のA2部を拡大した断面写真である。
図7は、
図6のB1部を拡大した断面写真である。
図8は、
図7のB2部を拡大した断面写真である。
図9は、
図7のB3部を拡大した断面写真である。
図10は、
図6のC部を拡大した断面写真である。
図11は、
図6のD部を拡大した断面写真である。
図12は、
図6のE部を拡大した断面写真である。
図13は、
図4のF1部を拡大した断面写真である。
図14は、
図13のF2部を拡大した断面写真である。
図15は、
図14のF3部を拡大した断面写真である。
図16は、導電性材料の接合状態を示す別の断面写真である。
【0043】
図4のA1部及び
図5のA2部は、サファイア基板のうち銀がメタライズされた部分及びメタライズされていない部分と導電性材料との接合状態が示されている。
図6のB1部、
図7のB2部およびB3部、
図8ならびに
図9は、サファイア基板71のうち銀がメタライズされた部分72と導電性材料73との接合状態が示されている。
図6のC部及び
図10はサファイア基板71の銀がメタライズされた部分72と導電性材料73との接合状態を示す。
図6のD部及び
図11は、サファイア基板71の銀がメタライズされていない部分と導電性材料73との接合状態を示す。
図6のE部及び
図12は、リードフレーム75の銀がメタライズされた部分74と導電性材料73との接合状態を示す。
図4のF1部、
図13のF2部、
図14のF3部および
図15は、サファイア基板71のうち銀がメタライズされた部分72と導電性材料73との接合状態が示されている。このように、サファイア基板71にメタライズされた銀72と導電性材料73の銀粒子、リードフレーム75にメタライズされた銀74と導電性材料73の銀粒子、導電性材料73の銀粒子同士は、それぞれ互いに融着されており、金属接合されている。
【0044】
図16は、硬化された熱硬化性樹脂が含有されている、銀粒子が融着した導電性材料の接合状態を示す。
図16中、融着された銀粒子102中に平均粒径が0.1μm以上10μm以下の熱硬化性樹脂粉体101が分散されている。
【0045】
本発明の導電性材料は、発光素子や保護素子などの半導体素子を、銀若しくは銀合金を施したリード上等に実装するために用いられる。以下において、平均粒径(メジアン径)はレーザー方法により、比表面積はBET法により測定した値である。
【0046】
本発明者らは、硬化若しくは半硬化された熱硬化性樹脂及び、熱可塑性樹脂の少なくともいずれか一方、並びに、銀粒子を含む導電性材料用組成物を加熱することにより銀粒子が融着して、導電性材料を得ることができることを見出した。この本発明の導電性材料の製造方法により、電気抵抗値の低い導電性材料を提供することができる。また、この導電性材料を製造する方法によれば、急激な反応熱による分解ガス発生という問題が無く、導電性材料を製造することができる。さらに、本発明の導電性材料の製造方法により、弾力性・柔軟性に富む導電性材料を提供することができる。
【0047】
本発明の導電性材料の製造方法は、硬化若しくは半硬化された熱硬化性樹脂、又は、熱可塑性樹脂、及び、銀粒子を含む導電性材料用組成物を加熱する工程を含む。本発明において、導電性材料用組成物を大気雰囲気中等で加熱すると、銀粒子が融着するに伴って、導電性材料が収縮する。この導電性材料の収縮を抑制するために、硬化若しくは半硬化された熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の少なくともいずれか一方を銀粒子と共に混在させておく。このような樹脂が混在されていることにより、導電性材料用組成物を加熱する際に導電性材料の収縮が抑制され、その結果、半導体素子から導電性材料が剥離することを低減することができる。なお、本発明において、この熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂は金属接合にほとんど寄与しておらず、応力緩和材として、また一部は導電性材料と被着体間の接着剤として機能するものである。
【0048】
また、本発明の発光装置を製造する方法は、硬化若しくは半硬化された熱硬化性樹脂、及び、熱可塑性樹脂の少なくともいずれか一方、並びに、銀粒子を含む導電性材料用組成物を、配線基板またはリードフレームに塗布する工程と、発光素子を導電性材料用組成物上に配置して発光装置前駆体を得る工程と、発光装置前駆体を酸素、オゾン又は大気雰囲気下で150℃〜400℃で加熱して、前記配線基板またはリードフレームと、前記発光素子との間に、接合材料として導電性材料を有する発光装置を得る工程を含む。
【0049】
また、本発明の発光装置を製造する別の方法は、硬化若しくは半硬化された熱硬化性樹脂、及び、熱可塑性樹脂の少なくともいずれか一方、並びに、銀粒子を含む導電性材料組成物を、配線基板またはリードフレームに塗布する工程と、発光素子を導電性材料用組成物上に配置して発光装置前駆体を得る工程と、発光装置前駆体を非酸化雰囲気下で150℃〜400℃で加熱して、前記配線基板またはリードフレームと、前記発光素子との間に、接合材料として導電性材料を有する発光装置を得る工程とを含む。ここでの銀粒子は少なくとも酸化銀を含むものである。
【0050】
[銀粒子]
本発明において、銀粒子は、平均粒径(メジアン径)が1種類のものであっても、2種類以上のものを混合して用いてもよい。銀粒子が1種類の場合、平均粒径(メジアン径)が例えば0.1μm〜15μmであり、好ましくは0.1μm〜10μmであり、より好ましくは0.3μm〜5μmである。銀粒子を2種類以上混合する場合、平均粒径(メジアン径)が、例えば0.1μm〜15μmのものと、0.1μm〜15μmのものとの組み合わせ、好ましくは0.1μm〜15μmのものと、0.1μm〜10μmのものとの組み合わせ、より好ましくは0.1μm〜15μmのものと、0.3μm〜5μmのものとの組み合わせである。銀粒子を2種類以上混合する場合、平均粒径(メジアン径)が、0.1μm〜15μmのものの含有率は、例えば70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。これにより得られる導電性材料の電気抵抗値を小さくすることができる。銀粒子の平均粒径(メジアン径)は、レーザー方法により測定することができる。
【0051】
また、銀粒子は、比表面積が例えば0.5m
2/g〜3m
2/gであり、好ましくは0.6m
2/g〜2.8m
2/gであり、より好ましくは0.6m
2/g〜2.7m
2/gである。これにより得られる導電性材料における隣接する銀粒子の接合面積を大きくすることができる。銀粒子の比表面積は、BETの方法により測定することができる。
【0052】
銀粒子の形態は限定されないが、例えば、球状、扁平な形状、多面体等が挙げられる。銀粒子の形態は、平均粒径(メジアン径)が所定の範囲内の銀粒子に関して、均等であるのが好ましい。銀粒子は、平均粒径(メジアン径)が2種類以上のものを混合する場合、それぞれの平均粒径(メジアン径)の銀粒子の形態は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、平均粒径(メジアン径)が3μmである銀粒子と平均粒径(メジアン径)が0.3μmである銀粒子の2種類を混合する場合、平均粒径(メジアン径)が0.3μmである銀粒子は球状であり、平均粒径(メジアン径)が3μmである銀粒子は扁平な形状であってもよい。
【0053】
[硬化若しくは半硬化された熱硬化性樹脂]
熱硬化性樹脂は、特に限定するものではないが、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、シリコーン変成樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド等と高度に架橋を施した架橋型アクリル樹脂(例えば、架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂)、架橋型ポリスチレン樹脂等より少なくとも一つ以上を選択することができる。ダイシェア強度や被着体との接着性が期待される用途では、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましく、長期耐熱性が必要な用途であれば、熱硬化性樹脂としては熱硬化性ポリイミドが好ましい。耐光性を必要とする用途では熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、架橋型アクリル樹脂が好ましい。なお、「硬化された熱硬化性樹脂」とは、前記熱硬化性樹脂に熱をかけて、完全に硬化したものである。その硬化方法としては、従来公知の任意の硬化方法を用いることができる。また、「半硬化された」とは、熱硬化性樹脂の硬化を中間段階で停止させることであり、更に硬化を進めることが可能な状態である。なお、「半硬化された熱硬化性樹脂」とは、その硬化過程において加熱により溶融可能な熱硬化性樹脂をいう。
【0054】
前記熱硬化性樹脂は、酸化チタン、硫酸バリウム等の白色顔料、アルミナ、シリカ等の無機フィラー等により、被覆されていてもよい。このような被覆された半硬化若しくは硬化された熱硬化性樹脂は、接合強度を維持することができるため、好ましい。
【0055】
前記熱硬化性樹脂の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上10μm以下であり、より好ましくは1μm以上8μm以下である。前記熱硬化性樹脂の平均粒径(メジアン径)は、レーザー方法により測定することができる。
【0056】
また、前記硬化された熱硬化性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−40℃以下若しくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。
【0057】
また、前記硬化された熱硬化性樹脂は、前記銀粒子の重量に対して添加量が0重量%より大きく5重量%以下であることが好ましい。これにより被着体に施した銀反射膜の剥離を低減することができる。前記添加量は、0重量%より大きく3重量%以下であることがより好ましい。前記半硬化された熱硬化性樹脂は、前記銀粒子の重量に対して添加量が0重量%より大きく10重量%以下であることが好ましい。これにより被着体に施した銀反射膜の剥離を低減することができ、かつ被着体との接着性を付与することができる。前記添加量は、0重量%より大きく6重量%以下であることがより好ましい。
【0058】
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂は、特に限定するものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、テフロン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ナイロン、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフロロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド等の単重合体および共重合体から少なくとも一つ以上を選択することができる。前記熱可塑性樹脂としては、特にアクリル樹脂はラジカル重合で容易に種々の物性を付与した微粒子を作製することが可能であるため好ましい。
【0059】
具体的には、前記熱可塑性樹脂としては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル−トリデシル、メタクリル酸イソボニル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸セチル−ステアリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシルプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸t−ブチルアミノエチル、メタクリルアミド、ジメタクリル酸エチレン、ジメタクリル酸ペンタコンタヘクタエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸−1,3−ブチレングリコール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、メタクリル酸アリル、ジメタクリル酸デカエチレングリコール、テトラメタクリル酸ペンタエリエストール、ジメタクリル酸ペンタデカエチレングリコール、ジメタクリル酸フタル酸ジエチレングリコール、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー、ジビニルベンゼン、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸塩類モノマー、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシブチル、アクリル酸ラウリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、アリルアルコール、アリルクロライド、アリルスルホン酸ナトリウム、アリルメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アクリル酸ステアリル、アクリル酸テトラエチレングリコール、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、2−ヒドロキシルプロピルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、2−プロペノイックアシッド〔2−〔1,1−ジメチル−2−〔(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ〕エチル〕−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル〕メチルエステル、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、無水フタル酸−アクリル酸2−ヒドロキシプロピル付加物、メチル−3−メトキシアクリレート、酢酸ビニル、メチルビニルケトン、イソプロペニルケトン、ブタジエン、イソプレン、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、イタコン酸、イタコン酸エステル、フマル酸、フマル酸エステル及びエチレンのうち少なくとも一つ以上を含む樹脂の単独重合体、共重合体、もしくは部分架橋した架橋ポリマー等があげられる。中でもアクリル樹脂の単独重合体、共重合体もしくは部分架橋した架橋ポリマーが好ましい。
【0060】
前記熱可塑性樹脂の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上10μm以下であり、より好ましくは1μm以上8μm以下である。前記熱可塑性樹脂の平均粒径(メジアン径)は、レーザー方法により測定することができる。
【0061】
また、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)若しくは融点は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上である。
【0062】
また、前記熱可塑性樹脂は、前記銀粒子の重量に対して添加量が0重量%より大きく10重量%以下であることが好ましい。これにより被着体に施した銀反射膜の剥離を低減することができ、かつ被着体との接着性を付与することができる。前記添加量は、0重量%より大きく6重量%以下であることがより好ましい。
【0063】
[無機物フィラー]
導電性材料組成物には、無機物フィラーを更に添加してもよい。無機物フィラーは、銀粒子の重量に対して0重量%より大きく80重量%以下で加えることができる。特に、前記無機物フィラーとしては、銀粒子の重量に対して20重量%以上80重量%以下含まれる無機物フィラーであることが好ましい。無機物フィラーを添加した場合であっても、得られる導電性材料の電気抵抗性は低く5.0×10
-5Ω・cm以下であり、更には線膨張係数を銀より小さくすることができる。例えば、無機物フィラーを添加した場合、4.0×10
-6〜5.0×10
-5Ω・cmとなる導電性材料を提供することができる。前記無機物フィラーは、銀のコーティングが施されていることが好ましい。前記銀コーティングの膜厚は、前記無機物フィラーの粒子全体で粒径が0.1μm〜15μmとなるようすることさえできれば特に制限はないが、容易に調製可能な0.01μm〜1μmが好ましい。
【0064】
また、本発明の製造方法によれば、特に加工を必要としないマイクロオーダーの銀粒子を加熱によりそのまま融着させることができるため、簡易に導電性材料を製造することができる。また、本発明の製造方法によれば、入手容易でかつ安価な銀粒子を用いて、導電性材料を製造することができる。また、本発明の製造方法によれば、液状接着剤や、不安定なナノオーダーの銀化合物の微粒子等を原料として用いる必要が無いという利点がある。また、本発明の製造方法によれば、加熱により銀粒子が互いに隣接する部分のみが融着するため、空隙が発生し、柔軟性に富んだ膜状の導電性材料を形成することが可能であるという利点がある。なお、この空隙部分には、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が分散されて入り込んでいる。また、本発明の製造方法によれば銀、熱硬化性樹脂、および熱可塑性樹脂のような安価な材料を原料として利用できるため更に安価な導電性材料を簡便な方法で提供することができる。
【0065】
無機物フィラーとしては、線膨張係数が銀より小さな無機物フィラーが好ましく、例えば、鉄ならびにその合金、コバルトならびにその合金、ニッケルならびにその合金からなる群から選択される1つ以上であることが好ましいが、これら以外にも、タングステンならびにその合金、チタンならびにその合金、モリブデンならびにその合金、シリコンならびにその合金、アルミニウムならびにその合金、銅ならびにその合金、アルミナ、シリカ、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、チタン酸カリウム、マイカ、ケイ酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ガラスフレークならびに繊維を用いることができる。電気抵抗の小さな無機物フィラーが好ましいが線膨張係数が大きい傾向にあり、導電性材料を所定の線膨張係数とするためには前記無機物フィラーの添加量を増やす必要がある。線膨張係数の小さな無機物フィラーは、少量を添加することにより導電性材料を所定の線膨張係数とすることができる。しかし、そのような無機物フィラーはシリカ等、本来絶縁体である場合があり、その場合には、得られる導電性材料の電気抵抗が上昇してしまう。また、銀と極端に線膨張係数の異ならない無機物フィラーは、導電性材料中で熱応力発生させることが無く、導電性材料の凝集強度は低下しない。電気抵抗と線膨張係数の小ささのバランスの観点から、前記無機フィラーとしては、鉄ならびにその合金、コバルトならびにその合金、ニッケルならびにその合金、タングステンならびにその合金、チタンならびにその合金が好ましい。単に低コスト化と言う観点からは、前記無機フィラーとしては、アルミニウムならびにその合金、銅ならびにその合金が好ましい。
【0066】
無機物フィラーは、0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有する粒子状、若しくは、繊維径0.1μm〜15μmである繊維状のものが含有されていることが好ましい。前記無機物フィラーの平均粒径(メジアン径)は、レーザー方法により測定することができる。
【0067】
無機物フィラーは平均粒径(メジアン径)が1種類のものであっても、2種類以上のものを混合して用いてもよい。無機物フィラーが1種類の場合、無機物フィラーは、0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有するのが好ましい。これらは作業性に富み、安価に製造することができるからである。また、無機物フィラーが1種類の場合、平均粒径(メジアン径)が好ましくは0.1μm〜10μmである。無機物フィラーを2種類以上混合する場合、平均粒径(メジアン径)が、例えば0.1μm〜15μmのものと、0.1μm〜15μmのものとの組み合わせ、好ましくは0.1μm〜15μmのものと、0.1μm〜10μmのものとの組み合わせ、より好ましくは0.1μm〜15μmのものと、0.3μm〜5μmのものとの組み合わせである。無機物フィラーを2種類以上混合する場合、平均粒径(メジアン径)が、0.1μm〜15μmのものの含有率は、例えば70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
【0068】
[有機溶剤]
導電性材料の製造方法においては、導電性材料用組成物は、沸点300℃以下の有機溶剤または水を更に含み、前記銀粒子と、前記熱硬化性樹脂若しくは前記熱可塑性樹脂とが前記有機溶剤または水中に浸漬していることが好ましい。前記有機溶剤の沸点は、より好ましくは150℃〜250℃である。このような沸点を有する有機溶剤を用いる場合、有機溶剤揮発による導電性材料用組成物の室温時粘度変化を抑制することができ作業性が良好であり、さらには加熱により前記有機溶剤または水を完全に揮発させることができる。前記有機溶剤または水は、銀粒子、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂および、任意の無機物フィラー(好ましくは銀コーティングを施してなる線膨張係数が銀より小さい)間のなじみを良くし、銀粒子と銀との反応を促進することができる。本発明の導電性材料の製造方法において、銀粒子を有機溶剤または水中に浸漬することは、作業性を損なうことなく高度に銀粒子を充填することが可能であるため、加熱した後の導電性材料の体積収縮が少なく、好ましい。従って、得られる導電性材料の寸法を予測することが容易である。また、前記有機溶剤は、低級アルコール、または、低級アルコキシ、低級アルコキシで置換された低級アルコキシ、アミノおよびハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級アルコールを含むのが好ましい。このような有機溶剤は揮発性が高いため、導電性材料用組成物を加熱した後に、得られた導電性材料中の有機溶剤の残留を減らすことができるからである。
【0069】
低級アルコールは、例えば、炭素原子1〜6個を有する低級アルキル基と、水酸基1〜3個、好ましくは1〜2個とを含むものが挙げられる。
【0070】
前記低級アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、および1−エチル−1−メチルプロピル基などの直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0071】
炭素原子1〜6個を有する低級アルキル基と水酸基1〜3個とを有する低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、n−プロパノール、i−プロパノール、トリエチレングリコール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、2−メチルブタノール、n−ヘキサノール、1−メチルペンタノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール、4−メチルペンタノール、1−エチルブタノール、2−エチルブタノール、1,1−ジメチルブタノール、2,2−ジメチルブタノール、3,3−ジメチルブタノール、および1−エチル−1−メチルプロパノール等が挙げられる。
【0072】
低級アルコキシ、低級アルコキシで置換された低級アルコキシ、アミノおよびハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級アルコールにおいて、置換基については以下のとおりである。
【0073】
低級アルコキシとしては、低級アルキル基に−O−が置換された基が挙げられる。低級アルコキシとしては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペンチルオキシ等が挙げられる。
【0074】
低級アルコキシで置換された低級アルコキシとしては、例えば、メトキシエトキシ、n−ブトキシエトキシ等が挙げられる。
【0075】
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
【0076】
低級アルコキシ、低級アルコキシで置換された低級アルコキシ、アミノおよびハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級アルコールとしては、例えば、メトキシメタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−クロロエタノール、エタノールアミン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)等が挙げられる。
【0077】
前記有機溶剤の添加量は、導電性材料用組成物の塗布方法により必要粘度が変化するため特に限定するものではないが、導電性材料の空隙率を抑制するため、銀粒子の重量に対して30重量%を上限とすることが好ましい。
【0078】
[金属酸化物]
前記のように、前記導電性材料用組成物は、金属酸化物を更に含むのが好ましい。前記金属酸化物としては、例えば、酸化銀(例えばAgO、Ag
2O、Ag
2O
3など)を用いることが好ましいが、亜塩素酸塩類(例えば、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸銅など)、塩素酸塩類(例えば、塩素酸カリウム 、塩素酸バリウム、塩素酸カルシウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸アンモニウムなど)、過塩素酸塩類(例えば、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸アンモニウムなど)、臭素酸塩類(例えば、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸マグネシウムなど)、ヨウ素酸塩類(例えば、ヨウ素酸カリウム、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸アンモニウムなど)、無機過酸化物(例えば、過酸化カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化リチウムなど)、硝酸塩類(例えば、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硝酸ウラニル、硝酸カルシウム、硝酸銀、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硝酸銅(II)、硝酸鉛(II)、硝酸バリウムなど)、過マンガン酸塩類(例えば、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸アンモニウム、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸亜鉛、過マンガン酸マグネシウム、過マンガン酸カルシウム、過マンガン酸バリウムなど)、重クロム酸塩類(例えば、重クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウムなど)、過ヨウ素酸塩類(例えば、過ヨウ素酸ナトリウムなど)、過ヨウ素酸類(例えば、メタ過ヨウ素酸など)、クロム酸化物類(例えば、三酸化クロムなど)、鉛酸化物類(例えば、二酸化鉛など)、ヨウ素の酸化物類、亜硝酸塩類(例えば、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カルシウムなど)、次亜塩素酸塩類(例えば、次亜塩素酸カルシウムなど)、ペルオキソ二硫酸塩類(例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウムなど)、ペルオキソほう酸塩類(例えば、ペルオキソほう酸カリウム、ペルオキソほう酸ナトリウム、ペルオキソほう酸アンモニウムなど)等も用いることができる。
【0079】
このうち、前記金属酸化物としては、AgO、Ag
2O及びAg
2O
3からなる群から選択される1つ以上であるのが好ましい。これらの金属酸化物によれば、前記導電性材料用組成物中の銀粒子の酸化反応が促進され、その結果、比較的低温で金属接合できるからである。また、これらの金属酸化物は、加熱により熱分解され、その後、銀になるため、好ましい。また、金属酸化物としてAgOは、酸化力が強く、そのため、金属酸化物の添加量を抑制することができる。その結果、得られる導電性材料の電気抵抗値がより低くなり、かつ導電性材料の機械的強度が向上するからである。
【0080】
前記金属酸化物は平均粒径(メジアン径)が1種類のものであっても、2種類以上のものを混合して用いてもよい。金属酸化物が1種類の場合、金属酸化物は、0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有するのが好ましい。これにより、作業性に富み、安価に製造することができるからである。また、金属酸化物が1種類の場合、平均粒径(メジアン径)が好ましくは0.1μm〜10μmであり、より好ましくは0.3μm〜5μmである。金属酸化物を2種類以上混合する場合、平均粒径(メジアン径)が、例えば0.1μm〜15μmのものと、0.1μm〜15μmのものとの組み合わせ、好ましくは0.1μm〜15μmのものと、0.1μm〜10μmのものとの組み合わせ、より好ましくは0.1μm〜15μmのものと、0.3μm〜5μmのものとの組み合わせである。金属酸化物を2種類以上混合する場合、平均粒径(メジアン径)が、0.1μm〜15μmのものの含有率は、例えば70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。前記金属酸化物の平均粒径(メジアン径)は、レーザー方法により測定することができる。
【0081】
前記金属酸化物の含有量は、銀粒子の重量に対して5重量%〜40重量%であるのが好ましく、5重量%〜30重量%であるのがより好ましく、10重量%程度であるのがさらに好ましい。このような含有量の場合、得られる導電性材料のせん断強度が高くなるからである。
【0082】
[加熱条件]
本発明の導電性材料の製造方法において、加熱は、酸素、オゾン、大気雰囲気下で行うことが好ましいが、金属酸化物を更に含む導電性材料用組成物を用いる場合は、上述に加えて真空雰囲気下、非酸素雰囲気下で行うこともできる。前記加熱は、大気雰囲気下で加熱を行うのが製造コスト面よりも好ましい。ただし、リードフレーム、半導体素子等が実装される樹脂パッケージ他の周辺部材が酸化劣化起こしやすい場合は、加熱時の酸素濃度を周辺部材の酸化劣化を最小とするレベルまで制限してもよい。金属酸化物を更に含まない導電性材料用組成物を用いる場合には、酸素、オゾン、大気雰囲気下で加熱すれば、加熱の際に銀粒子の融着が促進され、好ましい。
【0083】
前記加熱は、150℃〜400℃の範囲の温度で行うこともできるが、150℃〜320℃の範囲の温度で行われるのが好ましい。半導体素子等が実装される樹脂パッケージの融点よりも低い温度で、金属接合が可能だからである。また、前記加熱は、160℃〜260℃の範囲の温度で行われるのがより好ましく、180℃〜220℃の範囲の温度で行われるのがさらに好ましい。
【0084】
[導電性材料]
本発明の方法により得られる導電性材料は、銀粒子が互いに融着されており、空隙率が2体積%〜80体積%である。前記空隙率は比重法により定量できる。このような導電性材料は、接合強度が高いという利点を有する。
【0085】
また、本発明の方法により得られる導電性材料は、電気抵抗値が4.0×10
-5Ω・cm以下であるのが好ましい。前記電気抵抗値は、1.6×10
-5 Ω・cm以下であるのがより好ましく、8.5×10
-6 Ω・cm以下であるのが更に好ましい。
【0086】
<発光素子>
上述の発光素子に代えて、下記のような発光素子を用いることもできる。
図17は、異なる実施形態である発光装置を示す概略断面図である。
図18は、異なる実施形態である発光装置を示す概略断面図である。
【0087】
異なる実施形態の発光素子として、サファイア等の透光性の基板80上にn型半導体層、活性層、p型半導体層の順に半導体81が積層されている。p型半導体層をエッチングしてn型半導体層を露出させ、n型半導体層にn側電極82を形成し、p型半導体層にp側電極83を形成する。この半導体81が積層されている側と反対側の基板80の表面上に反射膜としての銀84がメタライズされている。さらにこのメタライズされた銀84の表面上に樹脂や無機部材、金属部材などの緩衝部材85を設け、その緩衝部材85の表面に銀86をメタライズしたものを用いてもよい。発光素子の実装面側の最表面に銀膜が施されていれば、緩衝部材を複数積層してもよい。最表面に設けられた銀86の厚みは特に限定されないが、銀86の厚みが厚い方が剥離し難く、接合強度に優れている。リードフレーム87は銅を主成分とするものであり、銀メッキ88が施されている。この発光素子はリードフレーム87上に導電性材料89を介して実装されている。発光素子の銀86と導電性材料89とは融着され金属接合しており、また、リードフレーム87の銀メッキ88と導電性材料89とは融着され金属接合している。後述するように、サファイア基板と銀の導電性材料との接合強度は、ZnO基板若しくはGaP基板と銀の導電性材料との接合強度に比べて低いため、緩衝部材85を設けることにより発光素子と導電性材料との接合強度を上げることができ、剥離を低減することができる。
【0088】
異なる実施形態の発光素子として、上述のように同一面側にp側電極、n側電極を設けるだけでなく、異なる面にp側電極93、n側電極(96に相当)を設けることもできる。透光性の基板90上にn型半導体層、活性層、p型半導体層の順に半導体91が積層されている。p型半導体層側にp側電極93を形成し、基板90の下面側にn側電極(96に相当)を形成する。基板90の下面側に反射膜としての銀94がメタライズされている。さらにこのメタライズされた銀94の表面上に金属部材などの導電性の緩衝部材95を設け、その緩衝部材95の表面に銀96をメタライズしたものを用いてもよい。発光素子の実装面側の最表面に銀膜が施されていれば、緩衝部材を複数積層してもよい。最表面に設けられた銀96の厚みは特に限定されないが、銀96の厚みが厚い方が剥離し難く、接合強度に優れている。リードフレーム97は銅を主成分とするものであり、銀メッキ98が施されている。この発光素子はリードフレーム97上に導電性材料99を介して実装されている。発光素子の銀96と導電性材料99とは融着され金属接合しており、また、リードフレーム97の銀メッキ98と導電性材料99とは融着され金属接合している。
なお、発光素子は、その導電性材料と融着する面が、銀、銀の合金で被覆されていることが好ましいが、Pt、Ptの合金、Sn、Snの合金、金、金の合金、銅、銅の合金、Rh、Rhの合金等により、被覆されていてもよい。導電性材料塗布部分表面が銀を主体とするため、銀で被覆されていると、導電性材料塗布部分表面との融着性が良好だからである。また、これらの被覆は、メッキ、蒸着、スパッタ、塗布等により行うことができる。
【0089】
<配線基板、リードフレーム>
発光装置や電子機器に用いられる配線基板としては、その表面に導電性材料用組成物を塗布することが可能であれば特に限定されない。例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、酸化チタン、窒化チタンまたはこれらの混合物を含むセラミック基板、Cu、Fe、Ni、Cr、Al、Ag、Au、Tiまたはこれらの合金を含む金属基板、ガラスエポキシ基板、BTレジン基板、ガラス基板、樹脂基板、紙等が挙げられる。このような配線基板を用いることにより、耐熱性に優れるからである。また、この製造方法によれば、加熱温度が低温でも可能なため、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂のような加熱に弱い配線基板も用いることができる。
【0090】
配線基板がセラミック基板であれば、発光素子が線膨張係数の小さな単結晶である場合、配線基板と発光素子との接合部に熱応力がかかるのを抑制することが可能である。また、セラミック基板では、酸化アルミニウムを含むものがより好ましい。発光装置のコストを抑制することが可能だからである。
【0091】
発光装置や電子機器に用いられるリードフレームとしては、例えば、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、銀、金、チタン又はそれらの合金より形成される金属フレ−ムが挙げられ、銅、鉄又はそれらの合金が好ましい。リードフレームとしては、放熱性が必要な発光装置では銅合金、半導体素子との接合信頼性が必要な発光装置では鉄合金であるのがより好ましい。
【0092】
配線基板又はリードフレームは、その導電性材料塗布部分表面が、銀、銀の酸化物、銀合金、銀合金の酸化物で被覆されていることが好ましいが、Pt、Pt合金、Sn、Sn合金、金、金合金、Cu、Cu合金、Rh、Rh合金等により、被覆されていてもよい。導電性材料塗布部分表面が銀を主体とするため、酸化銀で被覆されていると、導電性材料塗布部分表面との融着性が良好だからである。また、これらの被覆は、メッキ、蒸着、スパッタ、塗布等により行うことができる。
【0093】
<発光装置、電子機器>
また、本発明に係る電子機器は、本発明に係る製造方法により得られた導電性材料を含む電子機器であって、導電性材料が、電気配線、部品電極、ダイアタッチ接合材または微細バンプの材料として使用することができる電子機器である。導電性材料を用いることにより、得られる電子機器は、電気抵抗値が十分小さく経時変化が少ないという利点がある。また、得られる電子機器は、半導体素子であるシリコン、化合物半導体と熱的整合性が良好であり熱衝撃による接合部剥離の懸念のない信頼性が高いという利点がある。
【0094】
また、本発明の発光装置は、本発明に係る導電性材料を接合材料として用い、配線基板若しくはリードと発光素子とを金属接合している発光装置である。発光素子と配線基板等とを接合する方法には、一般に、絶縁接着剤、導電性金属フィラーを分散した導電性接着剤等の有機接合材料、または高温鉛はんだ、AuSn共晶等の金属接合材料を使用する方法がある。このような有機接合材料を用いる方法は、有機接合材料中の有機成分が、光および熱により劣化し、その結果、着色および強度が低下するという、発光装置の寿命を低下させる問題がある。また、金属接合材料を用いる方法は、接合時に300℃超える高温に曝されるため発光装置のプラスチック部材の熱劣化が甚だしいという問題がある。これに対し、本発明に係る導電性材料の製造方法は、導電性材料用組成物が金属である銀粒子を主成分とし、電気抵抗の上昇につながる接着剤を多く必要とせず、その結果、得られる導電性材料の表面に樹脂成分が殆ど存在しない。そのため、得られた導電性材料は、光および熱による影響が殆ど無い。また、導電性材料を用いる場合の接合時温度も150℃〜400℃、好ましくは150℃〜320℃の範囲が可能となるため、発光装置におけるプラスチック部材の熱劣化を防止することができる。また、本発明に係る導電性材料を製造する方法によれば、急激な反応熱による分解ガス発生という問題はなく、従って、得られた導電性材料には、不規則なボイドの形成が抑制されており、接合材料として良好である。
【0095】
本発明に係る導電性材料を用いることにより、得られる発光装置は、電気抵抗値が十分小さく経時変化が少ないという利点がある。また、本発明に係る導電性材料を用いることにより、得られる発光装置は、配線基板又はリードフレームの劣化、変色が抑制されるという利点がある。さらに、本発明に係る発光装置は、長時間の駆動でも光出力の経時的減少が少なく長寿命であるという利点がある。
【0096】
前記のように、発光装置を製造する方法は、硬化若しくは半硬化された熱硬化性樹脂、及び、熱可塑性樹脂の少なくともいずれか一方、並びに、銀粒子を含む導電性材料用組成物を、配線基板またはリードフレームに塗布する工程と、発光素子を導電性材料用組成物上に配置して発光装置前駆体を得る工程と、発光装置前駆体を酸素、オゾン又は大気雰囲気下で150℃〜400℃で加熱して、前記配線基板またはリードフレームと、前記発光素子との間に、接合材料として導電性材料を有する発光装置を得る工程を含む。
【0097】
また、前記のように、発光装置を製造する別の方法は、硬化若しくは半硬化された熱硬化性樹脂、及び、熱可塑性樹脂の少なくともいずれか一方、並びに、銀粒子を含む導電性材料組成物を、配線基板またはリードフレームに塗布する工程と、発光素子を導電性材料用組成物上に配置して発光装置前駆体を得る工程と、発光装置前駆体を非酸化雰囲気下で150℃〜400℃で加熱して、前記配線基板またはリードフレームと、前記発光素子との間に、接合材料として導電性材料を有する発光装置を得る工程とを含む。ここでの銀粒子は少なくとも酸化銀を含むものである。
【0098】
前記発光装置を製造する方法において、導電性材料用組成物を基板上に塗布する工程は、基板表面に導電性材料用組成物を塗布することが可能であれば特に限定されないが、例えば、印刷法、コーティング法等により行ってもよい。印刷法としては、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサー印刷法、グラビア印刷法、スタンピング、ディスペンス、スキ−ジ印刷、シルクスクリ−ン印刷、噴霧、刷毛塗り等が挙げられ、スクリーン印刷法、スタンピングおよびディスペンスが好ましい。塗布された導電性材料用組成物の厚さは、例えば、3μm〜100μm、好ましくは3μm〜50μm、より好ましくは5μm〜20μmである。特に発光素子の寸法が0.5mm角を超えないものについてはスタンピング、ディスペンスが好ましく、より好ましくはスタンピングである。スタンピングによれば、微小領域へ正確な塗布が可能であるうえ作業速度を速くできるからである。
【0099】
前記発光装置を製造する方法は、さらに、金属ワイヤーにより発光素子の電極と配線基板又はリードフレームの配線部とに配線される工程を含むことができる。この際、金属ワイヤーとしては、金、銀、銅、アルミが好ましく、金がより好ましい。金属ワイヤーが金の場合、安定した接合性が得られ腐食の懸念が低いからである。
【0100】
また、前記発光装置を製造する方法は、さらに、樹脂又は気密カバー又は非気密カバーにより封止または封着される工程を含んでもよい。封止工程に使用される樹脂は、例えば、エポキシ系、フェノール系、アクリル系、ポリイミド系、シリコーン系、ウレタン系、熱可塑性系等が挙げられる。中でもシリコーン系が耐熱・耐光性に優れ長寿命な発光装置を作製できるため好ましい。気密カバー又は非気密カバーとしては無機ガラス、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリノルボルネン樹脂等が挙げられる。中でも無機ガラスが耐熱・耐光性に優れ長寿命な発光装置を作製できるため好ましい。
【実施例】
【0101】
以下、実施例、比較例、参考例を元に、本発明に係る導電性材料、導電性材料の製造方法について説明する。
図1は、実施例に係る発光装置を示す概略斜視図である。
図2は、実施例に係る発光装置を示す概略断面図である。
図19は、実施例18の導電性材料の接合状態を示す写真である。
図20は、実施例23の導電性材料の接合状態を示す写真である。実施の形態で説明した事項とほぼ同様の事項については、説明を省略する。
【0102】
<参考例1−6>
参考例1−6において、銀粒子から得られた導電性材料のせん断強度を測定し、せん断強度に優れた銀粒子の粒子組成を求めた。用いた銀粒子は、以下のとおりである。製品名「AgC−239」(福田金属箔粉工業株式会社製)。「AgC−239」は平均粒径(メジアン径)が2.0〜3.2μm、比表面積が0.6〜0.9m
2/gである。製品名「FHD」(三井金属鉱業株式会社製)。「FHD」は、平均粒径(メジアン径)が0.3μm、比表面積が2.54m
2/gである。
【0103】
せん断強度の測定法は以下のとおりである。
平均粒径の異なる銀粒子を所定量混合した銀粉2gを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g中に25℃で混合して導電性材料用組成物を得た。得られた導電性材料用組成物をアルミナ基板上の銀メッキ面にスタンピングし、サファイア基板の片面に銀がメタライズされた600μm×600μm×厚さ100μmの大きさの発光素子をアルミナ基板上に実装した。これを200℃の大気雰囲気下で加熱した。室温でアルミナ基板から発光素子を剥す方向にせん断力をかけ、剥離したときの強度をせん断強度(ダイシェア強度)として測定した。表1に銀粒子組成とダイシェア強度の測定結果を示す。
【0104】
【表1】
【0105】
この測定結果から、参考例3の銀粉組成を持つ銀粒子を含む導電性材料材料用組成物から得られた導電性材料がダイシェア強度の最大値をとることが確認できた。また参考例1−6の導電性材料の表面観察から参考例3の導電性材料において密に銀粉が充填されていることが確認できた。すなわち、せん断強度は融着した銀粉の凝集強度を示すものと推測される。
【0106】
<参考例7−9>
(発光素子の銀反射膜厚と銀融着後の剥離関係)
参考例7〜9は、InGaN青色発光層を有し、600μm×600μm×厚さ100μmの大きさを持つ発光素子を用いる。発光素子はサファイア基板上に半導体層を形成しており、サファイア基板の裏面へ銀反射膜を膜厚250nm、360nm、500nmとなるよう銀スパッタを施した。パッケージは、酸化チタンが含有された白色のエポキシ樹脂によりなるリードフレームを一体成形してなるものを用いた。パッケージは凹部を形成しており、凹部の側壁はリフレクターとして機能しており、白色のエポキシ樹脂により形成されており、凹部の底面はリードフレームが露出している。リードフレームは、銅合金の母材に銀メッキを施している。以下、実施例、参考例、比較例とも参考例7と同じパッケージを用いた。せん断強度が最大となる参考例3の銀粉組成の銀粉2gを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g中に25℃で混合して導電性材料用組成物を得た。この導電性材料用組成物を、リードフレームの銀メッキ上にスタンピングし、発光素子を実装した。これを200℃の大気雰囲気下で加熱した。発光素子が実装されたパッケージを室温に戻した後、発光素子側から顕微鏡にて銀反射膜の部分的剥離(以降、剥離という)を目視確認した。更に発光素子の電極とリードフレームの電極とを金ワイヤーで配線し、シリコーン樹脂で封止し発光装置とした。この状態で通電を行い各発光装置からの光出力を測定した。表2に剥離発生率と光出力比を示す。
【0107】
【表2】
【0108】
表2に示すように、銀粒子の低温融着による接合直後の銀反射膜と、発光素子のサファイア基板の銀メタライズ面との界面の剥離は銀反射膜厚みに依存しており、薄膜になるほど剥離が発生しやすいことが確認できた。銀粒子低温融着膜の融着時収縮挙動に差があるとは考えにくいため、この現象は、銀反射膜が厚膜となることにより塑性変形が容易となり、剥離に至らないものと推測される。また、銀反射膜を厚膜化しても電子部品の製造プロセス上で受ける熱応力や完成後の各種環境条件での剥離即ち接合信頼性の懸念がある。更に剥離が発生することにより発光装置の光出力が低下するため剥離抑制は接合信頼性のみならず、発光装置の高出力化とその維持に必要である。
【0109】
<参考例10−13>
(各種透明基板裏面の銀反射膜の銀粒子融着後の剥離傾向)
600μm×600μm×厚さ100μmの二酸化珪素(SiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウムナイトライド(GaN)、ガリウムリン(GaP)の4種類の発光素子の基板裏面へ銀反射膜を膜厚250nmとなるよう銀スパッタを施した。せん断強度が最大となる参考例3の銀粉組成の銀粉2gを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g中に25℃で混合して導電性材料用組成物を得た。この導電性材料用組成物を、銅合金リードフレーム上の銀メッキ面にスタンピングし、各4種類の発光素子を実装した。これを200℃の大気雰囲気下で加熱した。発光素子が実装されたパッケージを室温に戻した後、発光素子側から顕微鏡にて銀反射膜の部分的剥離を目視確認した。更に発光素子の電極とリードフレームの電極とを金ワイヤーで配線し、シリコーン樹脂で封止し発光装置とした。この状態で通電を行い各発光装置からの光出力を測定した。表3に剥離発生率を示す。
【0110】
【表3】
【0111】
表3に示すように、銀反射膜の各透明基板への密着力はガリウムリン、酸化亜鉛、ガリウムナイトライド、二酸化珪素、サファイアの順となりサファイアが発光素子に使用される透明基板の中で最も銀と密着力が低い傾向にあることが確認できた。そこでサファイアにて銀反射膜の剥離評価することにより発光素子に使用される全透明基板へ適用可能な条件について検証可能である。
【0112】
<実施例1−18>
(熱硬化性樹脂粒子添加による剥離改善効果、電気抵抗:銀粒子と硬化された熱硬化性樹脂とを含む導電性材料用組成物を用いた例)
【0113】
InGaN青色発光層を有し、600μm×600μm×厚さ100μmの大きさを持つ発光素子を用いた。発光素子はサファイア基板上に半導体層を形成しており、サファイア基板の裏面へ銀反射膜を膜厚250nmとなるよう銀スパッタを施した。せん断強度が最大となる参考例3の銀粉組成の銀粉2g、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g、および熱硬化性樹脂粒子(銀粒子重量に対し所定重量%添加)を含む導電性材料用組成物を、リードフレームの銀メッキ上にスタンピングし、発光素子を実装した。
【0114】
用いた熱硬化性樹脂粒子は、以下のとおりである。なお、熱硬化性樹脂粒子は、熱により硬化された熱硬化性樹脂から成形されている。
【0115】
実施例1〜3は、シリコーン樹脂粒子(東レ・ダウコーニング株式会社製、製品名「Dow Corning EP−9215」、平均粒径2−7μm、JIS−A硬度60、Tg−120℃)、実施例4〜6は、シリコーン樹脂粒子を酸化チタンで被覆したもの(東レ・ダウコーニング株式会社製、製品名「Dow Corning EP−9261TI」平均粒径2−3μm、JIS−A硬度40、Tg−120℃)、実施例7〜9は、シリコーン樹脂粒子をアルミナで被覆したもの(東レ・ダウコーニング株式会社製、製品名「Dow Corning EP−9293AL」平均粒径2−3μm、JIS−A硬度40、シリコーン樹脂のTg−120℃)、実施例10〜13は、シリコーン樹脂粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル製、製品名「トスパール 120」平均粒径2μm、ショアD70−80、実施例14〜18は、架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂粒子(綜研化学株式会社製、製品名「MX−180TA」平均粒径1.9μm、Tg130℃)を使用した。
【0116】
前記発光素子が実装されたパッケージを200℃の大気雰囲気下で加熱した。これを室温に戻した後、発光素子側から顕微鏡にて銀反射膜の部分的剥離を目視確認した。更に、リードフレームからダイスを剥す方向にせん断力をかけ剥離したときの強度をダイシェア強度として測定した。表4は、各熱硬化性樹脂粒子の添加量とダイシェア強度値ならびに銀反射膜の剥離発生状況、後記する方法で測定した電気抵抗値を示す。
【0117】
【表4】
【0118】
表4に示すように、実施例1〜3、実施例4〜6、実施例7〜9、実施例10〜13、実施例14〜18において、熱硬化性樹脂粒子の添加量が増加するにつれ銀反射膜の剥離は発生しなくなることが確認できた。剥離を防止するには、最低でも0.5重量%の熱硬化性樹脂粒子の添加が必要であった。
表4に示すように、実施例1〜3、実施例4〜6、実施例10〜13、実施例14〜18において、熱硬化性樹脂の添加量が少ないほど、高いダイシェア強度を示していた。実施例7〜9では、検証範囲より更に低い添加量で同傾向を示すものと推測される。超音波ワイヤーボンディングによる安定した電気配線を施すためにはダイシェア強度が500gf程度は必要であると考えられる。
【0119】
このことから剥離防止が可能かつダイシェア強度を確保できる添加量が各粒子の最適値である。弾性率の低いシリコーン樹脂粒子は添加量増によりダイシェア強度が極端に低下する傾向にあるが、実施例4〜6は熱硬化性樹脂の少ない添加量で剥離防止が可能なため有用である。この結果から樹脂粒子表面状態が銀粒子融着膜の収縮応力緩和へ影響していることを推測できる。
【0120】
実施例1−18で使用した導電性材料の電気抵抗を確認した。
電気抵抗の測定法は以下のとおりである。
銀粒子と、銀粒子重量に対し所定重量%の熱硬化性樹脂粒子とを含む混合銀粉2gを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g中に25℃で混合して導電性材料用組成物を得た。得られた導電性材料用組成物を、ガラス基板(厚み1mm)にスクリ−ン印刷法により厚み200μmに塗布した。導電性材料用組成物が塗布されたガラス基板を、200℃の大気雰囲気下で加熱した。得られた配線(導電性材料)を製品名「MCP−T600」(三菱化学株式会社製)を用い4端子法にて電気抵抗を測定した。
【0121】
表4に示すように、実施例1〜18における電気抵抗値は、熱硬化性樹脂粒子の添加量とともに増加する傾向であるが、実用的なダイシェア強度を有する領域では10
-6台を維持していることが確認できた。なお、参考例3の電気抵抗値は4.512×10
-6Ω・cmである。フレーク状銀フィラーをエポキシ樹脂等へ分散した一般的な導電性接着剤から得られる導電性材料の電気抵抗値は5×10
-5Ω・cmを超えるものであることを考慮すると、本発明の製造方法により得られる導電性材料の優位性が明らかである。
【0122】
図19は、実施例18の導電性材料の接合状態を示す写真である。この写真に示すように、十分に架橋された熱硬化性樹脂粒子105は溶融することなく、融着された銀粒子106中で、熱分解温度まで初期粒子形状を保持している。
【0123】
<実施例19−42>
(熱可塑性樹脂粒子添加による剥離改善効果、電気抵抗:銀粒子と熱可塑性樹脂とを含む導電性材料用組成物を用いた例)
InGaN青色発光層を有し、600μm×600μm×厚さ100μmの大きさを持つ発光素子を用いた。発光素子はサファイア基板上に半導体層を形成しており、サファイア基板の裏面へ銀反射膜を膜厚250nmとなるよう銀スパッタを施した。せん断強度が最大となる参考例3の銀粉組成の銀粉2g、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g、および熱可塑性樹脂粒子(銀粒子重量に対し所定重量%添加)を含む導電性材料用組成物を、リードフレームの銀メッキ上にスタンピングし、発光素子を実装した。
【0124】
用いた熱可塑性樹脂粒子の調製法は以下のとおりである。実施例19〜28において用いた熱可塑性樹脂粒子は、架橋型ポリスチレン樹脂粒子(綜研化学株式会社製、製品名「KSR−3」平均粒径3.3μm、ガラス転移点108℃)であった。実施例29〜34は、以下の方法で製造されたポリスチレン粒子を使用した。蒸留精製スチレンモノマー100g、ドデシル硫酸ナトリウム3g、純水120gを、還流冷却管及び温度計、攪拌羽根付きモーターを備えた3つ口フラスコに入れ、70℃で攪拌した。フラスコ内へ窒素を導入した後、過硫酸アンモニウム0.2gを純水に溶解し、これをフラスコ内に投入した。3時間攪拌反応した後、フラスコ内の凝集物を100メッシュにてろ別した。ろ過した重合分散液を大量のエタノール中に投入しポリスチレン粒子を沈殿させた。吸引ろ過にてポリスチレン粒子をろ別し更にエタノールでリンスを行い常温減圧下にポリスチレン粒子を乾燥した。得られたポリスチレン粒子は平均粒径13μm、ガラス転移温度103℃(DSC法)であった。
【0125】
実施例35〜42は、以下の方法で製造されたポリメチルメタクリレート粒子を使用した。蒸留精製メタクリル酸メチルモノマー100g、ドデシル硫酸ナトリウム3g、純水120gを、還流冷却管及び温度計、及び攪拌羽根付きモーターを備えた3つ口フラスコに入れ、70℃で攪拌した。フラスコ内へ窒素を導入した後、過硫酸アンモニウム0.2gを純水に溶解し、これをフラスコ内に投入した。3時間攪拌反応した後、フラスコ内の凝集物を100メッシュにてろ別した。ろ過した重合分散液を大量のエタノール中に投入しポリメチルメタクリレート粒子を沈殿させた。吸引ろ過にてポリメチルメタクリレート粒子をろ別し更にエタノールでリンスを行い常温減圧下にポリメチルメタクリレート粒子を乾燥した。得られたポリメチルメタクリレート粒子は平均粒径8.0μm、ガラス転移温度127 ℃(DSC法)であった。
【0126】
発光素子が実装されたパッケージを200℃の大気雰囲気下で加熱した。これを室温に戻した後、発光素子側から顕微鏡にて銀反射膜の部分的剥離を目視確認した。更に、リードフレームからダイスを剥す方向にせん断力をかけ剥離したときの強度をダイシェア強度として測定した。表5は、各可塑性樹脂粒子の添加量とダイシェア強度値、銀反射膜の剥離発生状況、および後記する方法で測定した電気抵抗値を示す。
【0127】
【表5】
【0128】
表5に示すように、実施例19〜28は、熱可塑性樹脂粒子の添加量とダイシェア強度の関係が特異な傾向を示した。このため、導電性材料中での熱可塑性樹脂の存在状態を観察したところ、
図20の写真で見られるように銀粒子融着膜中において、熱可塑性樹脂の初期粒子形状が認められないことが判明した。つまり、一定温度で溶着する熱可塑性樹脂としての挙動を示しているものと推測できる。よって、銀粒子融着条件下において溶着可能な熱可塑性樹脂ならばダイシェア強度を大きく低下させることなく広い添加量幅をもって銀反射膜の剥離を防止することができる。熱可塑性樹脂の溶融温度は既知の融点、ガラス転移温度から容易に推測可能である。電子部品は一般的に100℃程度までの信頼性・安定性を問われるため、90℃以下で溶融・固化を繰り返す若しくは大きな機械物性変化点を有する熱可塑性樹脂は使用困難である。また、低温で溶融する熱可塑性樹脂は銀粒子の融着現象そのものを阻害する危険性がある。従って100℃付近に機械物性変化点を有する熱可塑性樹脂粒子を用いて下限温度の妥当性を検証する必要がある。
【0129】
表5の実施例19〜42に示すように、熱可塑性樹脂を0.5重量%以上添加することにより、銀反射膜の剥離抑制が可能である。表5の実施例29〜32のように、熱可塑性樹脂を0重量%より大きく1.8重量%未満添加すると、更にダイシェア強度を高く維持することができる。また、実施例31および32では、銀反射膜の剥離も生じていない。一方、実施例29〜32に示すように、熱可塑性樹脂を1.1重量%以下添加すると銀粒子の融着現象を促進しダイシェア強度を保つことができる。これは熱可塑性樹脂の溶融温度が低いため、その量をコントロールすることにより、銀粒子が融着開始した後に熱可塑性樹脂を溶融させ、その結果、前記熱可塑性樹脂により銀粒子表面をコーティングするのを防ぐためと推測される。
【0130】
表5の実施例35〜42に示すように、熱可塑性樹脂を0重量%より大きく5.0重量%以下添加するとダイシェア強度を高く維持することができる。また、表5の実施例36〜42に示すように、熱可塑性樹脂を0.5重量%以上添加すると銀反射膜の剥離を無くすることができる。これは、実施例35〜42のポリメチルメタクリレートが、実施例29〜34のポリスチレンよりガラス転移温度が116℃と高いため、溶融温度が高いことが影響している。このため、ポリメチルメタクリレートの添加量を多くできることが可能である。この結果よりアモルファスポリマーの場合は、溶融温度の指標となるガラス転移温度が高いものが大きな添加量幅を確保できることが判明した。また、ガラス転移温度100℃のポリスチレンが実用上の限界と推測され、このことよりアモルファスポリマー粒子の場合はガラス転移温度を100℃以上とすることが必要である。
【0131】
実施例19〜28の架橋ポリスチレン粒子はガラス転移温度が113℃(DSC法)であり、実施例35〜42のポリメチルメタクリレートよりガラス転移温度が低いにも関わらず、更に添加量を増やすことができる。これは部分的に架橋構造を導入することによりガラス転移温度と溶融温度との△Tを大きく取ることができ、溶融温度がポリメチルメタクリレートより実質高いためと推測できる。また、結晶性ポリマーではガラス転移温度が溶融温度ならびに機械物性変化点の指標とはならず融点に支配されることはよく知られている。従って、結晶性ポリマーの場合は融点が100℃以上であることが必要である。半硬化された熱硬化性樹脂も加熱により溶融する。溶融後硬化するまでは熱可塑性樹脂と考えることができるため、その溶融開始温度の指標である凝固点は同様に100℃以上である必要がある。
【0132】
実施例19〜42で使用した導電性材料の電気抵抗を確認した。
電気抵抗の測定法は以下のとおりである。
銀粒子と、銀粒子重量に対し所定重量%の熱可塑性樹脂粒子とを含む混合銀粉2gを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g中に25℃で混合して導電性材料用組成物を得た。得られた導電性材料用組成物を、ガラス基板(厚み1mm)にスクリ−ン印刷法により厚み200μmに塗布した。導電性材料用組成物が塗布されたガラス基板を、200℃の大気雰囲気下で加熱した。得られた配線(導電性材料)を製品名「MCP−T600」(三菱化学株式会社製)を用い4端子法にて電気抵抗を測定した。
【0133】
表5に示すように、実施例19〜42における電気抵抗値は熱可塑性樹脂粒子の添加量とともに増加する傾向であるが、実用的なダイシェア強度を有する領域では10
-6台を維持していることが確認できた。フレーク状銀フィラーをエポキシ樹脂等へ分散した一般的な導電性接着剤は5×10
-5Ω・cmを超えるものであることを考慮すると、本発明の製造方法により得られる導電性材料の優位性が明らかとなった。
【0134】
なお、
図20の写真に示すように、熱可塑性樹脂粒子は溶着され、融着された銀粒子の空隙に配置されている。これは熱可塑性樹脂粒子107の初期形状が完全に失われ全く認められないことより明らかである。
【0135】
<実施例43−48>
(部分的に架橋された熱可塑性樹脂粒子添加による剥離改善効果、電気抵抗:銀粒子と部分的に架橋された熱可塑性樹脂とを含む導電性材料用組成物を用いた例)
InGaN青色発光層を有し、600μm×600μm×厚さ100μmの大きさを持つ発光素子を用いた。発光素子はサファイア基板上に半導体層を形成しており、サファイア基板の裏面へ銀反射膜を膜厚250nmとなるよう銀スパッタを施した。せん断強度が最大となる参考例3の銀粉組成の銀粉2g、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g、および部分的に架橋構造を有するよう調整した熱可塑性樹脂粒子(銀粒子重量に対し所定重量%添加)を含む導電性材料用組成物を、リードフレームの銀メッキ上にスタンピングし、発光素子を実装した。
【0136】
用いた熱可塑性樹脂粒子の調製法は以下のとおりである。
実施例43〜48は、以下の方法で製造された部分架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂粒子を使用した。
【0137】
蒸留精製メタクリル酸メチルモノマー95g、蒸留精製ジビニルベンゼン5g、ドデシル硫酸ナトリウム3g、純水120gを還流冷却管及び温度計、攪拌羽根付きモーターを備えた3つ口フラスコに入れ70℃で攪拌した。フラスコ内へ窒素を導入した後、過硫酸アンモニウム0.2gを純水に溶解し、これをフラスコ内に投入した。3時間攪拌反応した後、フラスコ内の凝集物を100メッシュにてろ別した。ろ過した重合分散液を大量のエタノール中に投入し、部分架橋ポリメチルメタクリレート粒子を沈殿させた。吸引ろ過にて部分架橋ポリメチルメタクリレート粒子をろ別し、更にエタノールでリンスを行い、常温減圧下に部分架橋ポリメチルメタクリレート粒子を乾燥した。得られた部分架橋ポリメチルメタクリレート粒子は平均粒径8μm、ガラス転移温度130℃(DSC法)であった。
【0138】
発光素子が実装されたパッケージを200℃の大気雰囲気下で加熱した。これを室温に戻した後、発光素子側から顕微鏡にて銀反射膜の部分的剥離を目視確認した。更に、リードフレームからダイスを剥す方向にせん断力をかけ剥離したときの強度をダイシェア強度として測定した。表6は、各可塑性樹脂粒子の添加量とダイシェア強度値ならびに銀反射膜の剥離発生状況、後記する方法で測定した電気抵抗値を示す。
【0139】
【表6】
【0140】
表6に示すように、実施例43〜48において、ポリメチルメタクリレートに部分架橋を施すことにより、得られた導電性材料の実用的なダイシェア強度を保持したまま大幅に樹脂の添加量を増やすことが可能であることが確認できた。これは部分架橋により樹脂の溶融温度が上昇したことによるものと推測される。従って、ガラス転移温度が100℃程度のアモルファスポリマーでも部分架橋構造を導入することにより銀粒子の融着現象を阻害することなく広い添加量幅を確保できる。
実施例43−48で使用した導電性材料の電気抵抗を確認した。
【0141】
電気抵抗の測定法は以下のとおりである。
銀粒子と、銀粒子重量に対し所定重量%の部分架橋ポリメチルメタクリレートとを含む混合銀粉2gを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g中に25℃で混合して導電性材料用組成物を得た。得られた導電性材料用組成物を、ガラス基板(厚み1mm)にスクリ−ン印刷法により厚み200μmに塗布した。導電性材料用組成物が塗布されたガラス基板を、200℃の大気雰囲気下で加熱した。得られた配線(導電性材料)を製品名「MCP−T600」(三菱化学株式会社製)を用い4端子法にて電気抵抗を測定した。
【0142】
表6に示すように、実施例43〜48における電気抵抗値は部分架橋熱可塑性樹脂粒子の添加量とともに増加する傾向であるが、実用的なダイシェア強度を有する領域では10
-6台を維持していることが確認できた。フレーク状銀フィラーをエポキシ樹脂等へ分散した一般的な導電性接着剤は5×10
-5Ω・cmを超えるものであることを考慮すると、本発明の製造方法により得られる導電性材料の優位性が明らかとなった。
【0143】
<実施例49−54>
(熱硬化性樹脂粒子と熱可塑性樹脂粒子の同時添加による剥離改善効果、電気抵抗:銀粒子と硬化された熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む導電性材料用組成物を用いた例)
InGaN青色発光層を有し、600μm×600μm×厚さ100μmの大きさを持つ発光素子を用いた。発光素子はサファイア基板上に半導体層を形成しており、サファイア基板の裏面へ銀反射膜を膜厚250nmとなるよう銀スパッタを施した。せん断強度が最大となる参考例3の銀粉組成の銀粉2g、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g、および熱硬化性樹脂粒子と熱可塑性樹脂粒子(銀粒子重量に対し所定重量%添加)を含む導電性材料用組成物を、リードフレームの銀メッキ上にスタンピングし、発光素子を実装した。実施例49〜54は、表面実装型のパッケージ(日亜化学工業株式会社製、製品名「NS3W183」)を用いる。
【0144】
用いた熱硬化性樹脂粒子と熱可塑性樹脂粒子は、以下のとおりである。
実施例49〜51において用いた熱硬化性樹脂粒子は、架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂粒子(綜研化学株式会社製、製品名「MX−180TA」平均粒径1.9μm、Tg130℃)、熱可塑性樹脂は、架橋型ポリスチレン樹脂粒子(綜研化学株式会社製、製品名「KSR−3」平均粒径3.3μm、Tg108℃)である。
【0145】
実施例52〜54において用いた熱硬化性樹脂粒子は、架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂粒子(綜研化学株式会社製、製品名「MX−180TA」平均粒径1.9μm、Tg130℃)、熱可塑性樹脂は、部分架橋ポリメチルメタクリレート粒子は平均粒径8μm、Tg113℃(DSC法)である。
【0146】
発光素子が実装されたパッケージを200℃の大気雰囲気下で加熱した。これを室温に戻した後、発光素子側から顕微鏡にて銀反射膜の部分的剥離を目視確認した。更に、リードフレームからダイスを剥す方向にせん断力をかけ剥離したときの強度をダイシェア強度として測定した。表7は、各熱硬化性樹脂粒子の添加量、熱可塑性樹脂の添加量とダイシェア強度値ならびに銀反射膜の剥離発生状況、後記する方法で測定した電気抵抗値を示す。
【0147】
【表7】
【0148】
表7の実施例49、52に示すように、熱硬化性樹脂粒子と熱可塑性樹脂粒子を各0.5重量%添加すれば銀反射膜の剥離抑制は可能であることが確認できた。表7の実施例49〜54のダイシェア強度の傾向より、熱硬化性樹脂粒子と熱可塑性樹脂粒子を共存させることによりダイシェア強度が極端に低下するような傾向は認められず、添加量の多い側の樹脂粒子の性質にダイシェア強度は依存するものと推測される。
【0149】
実施例49〜54で使用した導電性材料の電気抵抗を確認した。
電気抵抗の測定法は以下のとおりである。
銀粒子と、銀粒子重量に対し所定重量%の熱硬化性樹脂粒子と熱可塑性樹脂粒子とを含む混合銀粉2gを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g中に25℃で混合して導電性材料用組成物を得た。得られた導電性材料用組成物を、ガラス基板(厚み1mm)にスクリ−ン印刷法により厚み200μmに塗布した。導電性材料用組成物が塗布されたガラス基板を、200℃の大気雰囲気下で加熱した。得られた配線(導電性材料)を製品名「MCP−T600」(三菱化学株式会社製)を用い4端子法にて電気抵抗を測定した。
【0150】
表7に示すように、実施例49〜54における電気抵抗値は樹脂粒子の添加量とともに増加する傾向であるが、実用的なダイシェア強度を有する領域では10
-6台を維持していることが確認できた。フレーク状銀フィラーをエポキシ樹脂等へ分散した一般的な導電性接着剤は5×10
-5Ω・cmを超えるものであることを考慮すると、本発明の製造方法により得られる導電性材料の優位性が明らかとなった。
【0151】
<実施例55、56、比較例1、2>
(発光装置)
実施例55は、実施例15と同様の条件で作製した発光素子が実装されたパッケージにおいて、発光素子の電極とリードフレームの電極とを金ワイヤーで配線し、シリコーン樹脂で封止し発光装置とした。
【0152】
実施例56は、実施例31と同様の条件で作製した発光素子が実装されたパッケージにおいて、発光素子の電極とリードフレームの電極とを金ワイヤーで配線し、シリコーン樹脂で封止し発光装置とした。
【0153】
比較例1は、発光素子を実装する導電性材料に絶縁性透明エポキシ樹脂を用いる以外は実施例55と同じ構成で発光装置とした。
比較例2は、発光素子を実装する導電性材料にフレーク状銀フィラー80wt%−エポキシ樹脂20wt%の銀ペーストを用いる以外は実施例55と同じ構成で発光装置とした。
【0154】
実施例55、56、比較例1、2に係る発光装置は、この状態で通電試験と−40℃から100℃の熱衝撃試験を行い、通電1000時間後の光出力減衰と熱衝撃1000サイクル後の銀反射膜の剥離発生を確認した。表8にその結果を示す。
【0155】
【表8】
【0156】
表8に示すように、実施例55および実施例56に係る発光装置は、1000時間経過後も高い出力を維持できていることが確認できた。一方、比較例1および2で得られた発光装置は、1000時間経過後に著しく出力が低下していることが確認できた。
【0157】
また、表8に示すように、1000時間経過後、発光素子とリードフレームとの間の実施例55、実施例56の導電性材料は、変色が見られないことを確認した。それに対し、表8に示すように、1000時間経過後、発光素子とリードフレームとの間の比較例1の絶縁性透明エポキシ樹脂のマウント部材のフィレット部は、絶縁性透明エポキシ樹脂が僅かに黄変していることを確認した。また、表8に示すように、1000時間経過後、発光素子とリードフレームとの間の比較例2のフレーク状銀フィラー80wt%−エポキシ樹脂20wt%の銀ペーストのマウント部材のフィレット部は、黒茶褐色に変色が生じていることを確認した。
【0158】
表8に示すように、実施例55、実施例56で得られた発光装置中の発光素子裏面銀反射膜は熱衝撃を1000サイクル経ても剥離が発生しないことを確認した。
【0159】
<実施例57>
(照明装置)
実施例57に係る照明装置について図面を用いて説明する。
図21は、照明装置を示す概略斜視図である。
図22は、照明装置を示す概略断面図である。
絶縁性高反射白色レジストインクで片面塗布されたアルミニウム基板110へ実施例47で使用した導電性材料用組成物をメタルマスクを用いてレジストインク面へ直接回路パターンを印刷した。これを200℃の大気雰囲気下に加熱して銀融着膜の回路パターン120を得た。ここへ実施例50で得られた発光装置100をはんだ付けにより実装した。フェニルシリコーンを主成分とする透光性シリコーンワニスで銀融着膜の回路パターンを含むアルミニウム基板片側全体を保護するため、300μm厚にコーティングを施し、保護膜130を形成した。次いで電源回路150を有する筐体140との電気的接続を行い、更に光拡散材161が含有されたドーム状の透光性拡散レンズ160を発光部直上へ設置し照明装置を得た。
【0160】
実施例57で得られた照明装置の絶縁性高反射白色レジストインクと銀融着膜の回路パターンの密着性は、照明装置製作の全工程を通じて剥離することなく、実用的強度を有していた。また、銀融着膜上部表面のはんだ濡れ性は確保されており、銀融着膜中の部分架橋ポリメチルメタクリレートが溶融時に融着膜上部表面へ滲み出ていない(ブリードアウト無しである)ことが確認できた。
【0161】
(絶縁性高反射レジストインクと銀融着膜との密着力)
<実施例58−64>
InGaN青色発光層を有し、600μm×600μm×厚さ100μmの大きさを持つ発光素子を用いた。発光素子はサファイア基板上に半導体層を形成しており、サファイア基板の裏面へ銀反射膜を膜厚250nmとなるよう銀スパッタを施した。せん断強度が最大となる参考例3の銀粉組成の銀粒子へ実施例43〜48で使用した部分架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂粒子を銀粒子重量に対し所定重量%添加した導電性材料用組成物を、実施例57で用いた絶縁性高反射白色レジストインクで片面塗布されたアルミニウム基板の絶縁性高反射白色レジストインク上にスタンピングし、発光素子を実装した。
発光素子が実装されたアルミニウム基板を200℃の大気雰囲気下で加熱した。これを室温に戻した後、アルミニウム基板からダイスを剥す方向にせん断力をかけ剥離したときの強度をダイシェア強度として測定した。
【0162】
【表9】
【0163】
表9の実施例58の結果に示すように、銀粒子自体はプラスチック材料である絶縁性高反射レジストインクとほとんど接合性を有さないことが確認された。表9の実施例59−64の結果に示すように、より銀粒子への部分架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂粒子の添加量が増加するに比例して、得られる導電性材料のダイシェア強度が向上することが確認された。部分架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂粒子が200℃の加熱時に溶融液状化し、ポーラス構造を有する銀融着膜中より絶縁性高反射白色レジストインクとの界面へしみ出し接着剤として機能しているものと推定できる。すなわち被着体が存在すると、溶融液状化した樹脂成分が被着体の表面張力により被着体表面へ濡れ広がるため界面へ滲み出たものと考えられる。