(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱硬化性樹脂と硬化剤(I)とを含有する硬化性組成物を用いて、未硬化又は半硬化の樹脂層を、基板上に形成した(工程A)後、硬化剤(I)が熱硬化性樹脂を実質的に硬化不可能な温度において熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能な硬化剤(II)を、前記樹脂層表面に接触させた後、硬化剤(I)が熱硬化性樹脂を実質的に硬化不可能な温度であって、硬化剤(II)が熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能な温度で前記樹脂層を加熱し(工程B)、次いで硬化剤(I)が熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能な温度で前記樹脂層を加熱して硬化させ、電気絶縁層を形成する(工程C)、多層回路基板の製造方法であって、
硬化剤(I)が、多価エポキシ化合物、ジカルボン酸誘導体、及びポリオール化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
硬化剤(II)が、ポリスルフィド;ポリメルカプタン;ポリアミド;並びに、鎖状脂肪族ポリアミン、環状脂肪族ポリアミン、脂肪芳香族アミン、芳香族アミン、及びそれらのアミン錯体;からなる群より選択される少なくとも1種である多層回路基板の製造方法。
工程Aにおいて、未硬化又は半硬化の樹脂層が、前記硬化性組成物のフィルム状又はシート状成形体を、前記基板の表面に貼り合わせて形成される請求項1記載の多層回路基板の製造方法。
工程Bにおいて、硬化剤(II)の樹脂層表面への接触が、樹脂層が形成された基板を、硬化剤(II)の水溶液中に浸漬させて行われる請求項1〜3いずれか記載の多層回路基板の製造方法。
熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、脂環式オレフィン重合体、芳香族ポリエーテル重合体、ベンゾシクロブテン重合体、シアネートエステル重合体、液晶ポリマー、及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜4いずれか記載の多層回路基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の多層回路基板の製造方法は、その機能発現に好適な温度域が異なる2種の硬化剤を用い、少なくとも2段階の温度で樹脂層を加熱硬化して電気絶縁層を形成することを1つの大きな特徴とする。
本発明の多層回路基板の製造方法は、次の3つの工程を有する。
(工程A)熱硬化性樹脂と硬化剤(I)とを含有する硬化性組成物を用いて、未硬化又は半硬化の樹脂層を、基板上に形成する工程。
(工程B)硬化剤(I)が熱硬化性樹脂を実質的に硬化不可能な温度において熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能な硬化剤(II)を、前記樹脂層表面に接触させた後、硬化剤(I)が熱硬化性樹脂を実質的に硬化不可能な温度であって、硬化剤(II)が熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能な温度で前記樹脂層を加熱する工程。
(工程C)硬化剤(I)が熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能な温度で前記樹脂層を加熱して硬化させ、電気絶縁層を形成する工程。
各工程について、以下に詳述する。
【0009】
(工程A)
工程Aで用いる基板は、特に限定されるものではないが、通常、電気絶縁層aの表面の一方又は両方に導電体回路層aが形成されてなる基板が用いられる。かかる基板の具体例としては、プリント配線基板、シリコンウェハー基板、及びガラス基板などの、電気絶縁層と、その表面に形成された導電体回路層とからなる基板が挙げられる。基板の厚さは、通常50μm〜2mm、好ましくは60μm〜1.6mm、より好ましくは100μm〜1mmである。
【0010】
プリント配線基板において、基板を構成する電気絶縁層aは、電気絶縁性を有する熱硬化性樹脂を主成分としてなる。熱硬化性樹脂は特に制限されず、例えば、脂環式オレフィン重合体、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、芳香族ポリエーテル重合体、シアネートエステル重合体、及びポリイミドなどが挙げられる。通常、これらの熱硬化性樹脂と硬化剤とを含有する硬化性組成物を硬化して電気絶縁層aを得る。また、基板は、強度向上の観点から、ガラス繊維や樹脂繊維などを電気絶縁層aに含有させたものであってもよい。基板を構成する導電体回路層aの材料は、通常、導電性金属である。
【0011】
以上のような基板上に、熱硬化性樹脂と硬化剤(I)とを含有する硬化性組成物を用いて、未硬化又は半硬化の樹脂層を形成する。
ここで未硬化の樹脂層とは、樹脂層を構成する熱硬化性樹脂が溶解可能な溶剤に、実質的に樹脂層全部が溶解可能な状態のものである。半硬化の樹脂層とは、加熱によって更に硬化しうる程度に硬化された状態のものであり、樹脂層を構成している熱硬化性樹脂が溶解可能な溶剤に一部が溶解する状態のものである。
【0012】
基板上に樹脂層を形成する方法に格別な制限はないが、基板の表面、詳しくは基板の導電体回路層aと接するように、熱硬化性樹脂と硬化剤(I)とを含有する硬化性組成物のフィルム状又はシート状成形体を貼り合わせて、未硬化又は半硬化の樹脂層を形成する(工程A1)方法や、基板上に熱硬化性樹脂と硬化剤(I)とを含有する硬化性組成物を塗布し、乾燥させて、未硬化又は半硬化の樹脂層を形成する(工程A2)方法が挙げられる。樹脂層を硬化して得られる電気絶縁層上に所望により形成される導電体回路層との密着性の面内均一性が高くなることから、(工程A1)によって樹脂層を形成するのが好ましい。
【0013】
(工程A1)によって樹脂層を形成する場合、導電体回路層aが形成された基板と、樹脂層を硬化して形成される電気絶縁層との密着性を向上させるために、硬化性組成物のフィルム状又はシート状成形体を貼り合わせる前に、導電体回路層aが形成された基板の表面を前処理することが好ましい。前処理としては、アルカリ性亜塩素酸ナトリウム水溶液や過マンガン酸等を基板表面に接触させて表面を粗化する方法、アルカリ性過硫酸カリウム水溶液や硫化カリウム−塩化アンモニウム水溶液等により表面を酸化した後に還元する方法、及び基板の導電体回路層部分にめっきを析出させ、粗化する方法、チオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法等が挙げられる。なかでも2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンなどのチオール化合物を用いたプライマー層を形成する方法は、導電体回路層aが銅からなる場合に、銅の腐食がなく、高い密着性が得られる点で好適である。
【0014】
樹脂層を形成するのに用いる硬化性組成物を構成する熱硬化性樹脂は、硬化剤との組み合わせで熱硬化性を示し、電気絶縁性を有するものであれば制限されず、例えば、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、脂環式オレフィン重合体、芳香族ポリエーテル重合体、ベンゾシクロブテン重合体、シアネートエステル重合体、及びポリイミドなどが挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組合わせて用いられる。これらの中でも、脂環式オレフィン重合体、芳香族ポリエーテル重合体、ベンゾシクロブテン重合体、シアネートエステル重合体、及びポリイミドが好ましく、脂環式オレフィン重合体、及び芳香族ポリエーテル重合体がより好ましく、脂環式オレフィン重合体が特に好ましい。これらの重合体の他に、液晶ポリマーも好ましい熱硬化性樹脂として用いることができる。液晶ポリマーとしては、芳香族または脂肪族ジヒドロキシ化合物の重合体、芳香族または脂肪族ジカルボン酸の重合体、芳香族ヒドロキシカルボン酸の重合体、芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミンまたは芳香族アミノカルボン酸の重合体などが例示される。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とはメタクリル又はアクリルを意味する。
【0015】
熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)に格別な制限はないが、通常1,000〜1,000,000、好ましくは3,000〜500,000、より好ましくは4,000〜300,000である。樹脂層を硬化して得られる電気絶縁層上に導電体回路層を形成する場合に無電解めっき処理を行う際、その前処理による電気絶縁層の粗化が抑制されることから、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である熱硬化性樹脂成分が、硬化性組成物に含まれる熱硬化性樹脂全体の、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上の割合で含まれるのが好適である。なお、当該割合の上限は100重量%、すなわち、硬化性組成物に含まれる熱硬化性樹脂の全部が、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である熱硬化性樹脂成分からなっていてもよい。熱硬化性樹脂としては、重量平均分子量(Mw)が1,000未満であるものや、1,000,000を超えるものが含まれていてもよい。本明細書における重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0016】
脂環式オレフィン重合体は、脂環式構造を有する、不飽和炭化水素の重合体である。脂環式構造としては、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造などが挙げられるが、得られる電気絶縁層の機械的強度や耐熱性などが向上することから、シクロアルカン構造が好ましい。また、脂環式構造としては、単環及び多環(縮合多環、橋架け環、これらの組み合わせ多環など)のいずれであっても良い。脂環式構造を構成する炭素原子数に格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、硬化性組成物の成形性や、得られる電気絶縁層の機械的強度及び耐熱性といった諸特性が高度にバランスされ好適である。
【0017】
脂環式オレフィン重合体は、極性基を有するものが好ましい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、及びカルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、カルボキシル基及びカルボン酸無水物基が好適である。脂環式オレフィン重合体を構成する全繰り返し単位100モル%中、極性基を有する繰り返し単位の含有率は、特に制限されないが、通常、5〜60モル%、好ましくは10〜50モル%である。なお、各繰り返し単位に存在する極性基の数は特に制限されないが、通常、1〜2個が好適である。
【0018】
脂環式オレフィン重合体は、通常、脂環式オレフィン単量体を付加重合又は開環重合し、所望により不飽和結合部分を水素化することによって、或いは芳香族オレフィン単量体を付加重合し、得られた重合体の芳香環部分を水素化することによって得られる。また、極性基を有する脂環式オレフィン重合体は、例えば、1)前記脂環式オレフィン重合体に極性基を変性反応により導入することによって、2)極性基を含有する単量体を共重合成分として共重合することによって、あるいは3)エステル基などの極性基を含有する単量体を共重合成分として共重合した後、エステル基などを加水分解することによって得られる。上記1)の場合、極性基の導入量を調整することで、上記2)と3)の場合、重合の際、所望の極性基を有さない単量体を適宜用いることで、脂環式オレフィン重合体中の極性基を有する繰り返し単位の含有率を調整することができる。本明細書において、「脂環式オレフィン単量体」とは、脂環式構造内に炭素−炭素二重結合を有する単量体をいい、「芳香族オレフィン単量体」とは、芳香族基及び炭素−炭素二重結合を有する鎖式炭化水素からなる単量体をいう。
【0019】
脂環式オレフィン重合体を得るために使用される脂環式オレフィン単量体としては、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、
【0020】
5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−メトキシ−カルボニル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−5−エニル−2−メチルプロピオネイト、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−5−エニル−2−メチルオクタネイト、
【0021】
ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−i−プロピルビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシ−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸イミド、5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−シクロヘキセニル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、
【0022】
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、テトラシクロ[7.4.0.110,13.02,7]−トリデカ−2,4,6−11−テトラエン(別名:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[8.4.0.111,14.03,8]−テトラデカ−3,5,7,12,11−テトラエン(別名:1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン)、
【0023】
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−ヒドロキシメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、
【0024】
8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−3,10−ジエン、及びペンタシクロ[7.4.0.13,6.110,13.02,7]−ペンタデカ−4,11−ジエンのごときノルボルネン系単量体;
【0025】
シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、及びシクロヘプテンのごとき単環シクロアルケン系単量体;ビニルシクロヘキセンやビニルシクロヘキサンのごときビニル系脂環式炭化水素系単量体;シクロペンタジエンやシクロヘキサジエンのごとき脂環式共役ジエン系単量体;などが挙げられる。
【0026】
芳香族オレフィン単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、及びジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0027】
脂環式オレフィン単量体及び/又は芳香族オレフィン単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
脂環式オレフィン重合体は、前記脂環式オレフィン単量体及び/又は芳香族オレフィン単量体と、それらの単量体と共重合可能な単量体とを共重合して得られるものであってもよい。
脂環式オレフィン単量体又は芳香族オレフィン単量体と共重合可能な単量体としては、エチレン;プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、及び1−エイコセンなどの炭素数3〜20のα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、及び1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;等が挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
脂環式オレフィン単量体や芳香族オレフィン単量体の重合、及び所望により行われる、得られた重合体に対する水素添加は、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0030】
脂環式オレフィン重合体の具体例としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びその水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とビニル化合物との付加重合体、単環シクロアルケン重合体、脂環式共役ジエン重合体、ビニル系脂環式炭化水素重合体及びその水素添加物、芳香族オレフィン重合体の芳香環水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びその水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とビニル化合物との付加重合体、芳香族オレフィン重合体の芳香環水素添加物が好ましく、特にノルボルネン系単量体の開環重合体の水素添加物が好ましい。これらの脂環式オレフィン重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、脂環式オレフィン重合体のなかでも、特に好ましい重合体であるノルボルネン系単量体の開環重合体及びその水素添加物は、その構造の違いから、C
nH
2nで表されるオレフィンを共重合して得られるポリオレフィン樹脂とは異種の重合体に分類されるものである。本明細書において「ノルボルネン系単量体」とは、ノルボルネン環構造を有する脂環式オレフィン単量体をいう。
【0031】
脂環式オレフィン重合体の重量平均分子量を調整する方法は常法に従えば良く、例えば、チタン系触媒、タングステン系触媒、又はルテニウム系触媒を用いた脂環式オレフィン単量体の開環重合に際して、ビニル化合物又はジエン化合物のような分子量調整剤を、単量体全量に対して0.1〜10モル%程度添加する方法が挙げられる。このとき分子量調整剤の量を少な目に用いると比較的高いMwの重合体が得られ、多めに用いると比較的低いMwの重合体が得られる。
分子量調整剤として用いるビニル化合物としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、及び1−オクテンなどのα−オレフィン化合物;スチレンやビニルトルエンなどのスチレン化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、及びアリルグリシジルエーテルなどのエーテル化合物;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、及びグリシジルメタクリレートなどの酸素含有ビニル化合物;アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物;などが挙げられる。ジエン化合物としては、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、及び2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン化合物;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及び1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエン化合物;が挙げられる。
【0032】
脂環式オレフィン重合体のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択できるが、通常50℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは100℃以上、最も好ましくは125℃以上である。
【0033】
本発明に用いる硬化剤(I)に格別な限定はなく、例えば、イオン性硬化剤、ラジカル性硬化剤又はイオン性とラジカル性とを兼ね備えた硬化剤等が用いられる。例えば、1−アリル−3,5−ジグリシジルイソシアヌレートや1,3−ジアリル−5−グリシジルイソシアヌレートのごときアリル基とエポキシ基とを含有するハロゲン不含のイソシアヌレート系硬化剤などの窒素系硬化剤;ビスフェノールAビス(エチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル、ビスフェノールAビス(ジエチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル、ビスフェノールAビス(トリエチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル、及びビスフェノールAビス(プロピレングリコールグリシジルエーテル)エーテルなどのビスフェノールA系グリシジルエーテル型エポキシ化合物のようなグリシジルエーテル型エポキシ化合物、フルオレン系エポキシ化合物などの脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物などの多価エポキシ化合物;酸無水物やジカルボン酸化合物などのジカルボン酸誘導体;ジオール化合物、トリオール化合物、及び多価フェノール化合物などのポリオール化合物;等の硬化剤があげられる。これらの硬化剤(I)は、適宜、それぞれ単独で、又は2種以上を組合わせて用いることができる。これらの中でも、得られる電気絶縁層の機械的強度を高める観点から、硬化剤(I)としては、多価エポキシ化合物、ジカルボン酸誘導体、及びポリオール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を用いるのが好ましく、多価エポキシ化合物を用いるのがより好ましい。
硬化性組成物の硬化は、該組成物を加熱することにより進行するが、以上の硬化剤(I)の、熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能な温度域は、通常、150〜300℃の範囲である。
本発明に用いる硬化性組成物への硬化剤(I)の配合量としては、熱硬化性樹脂100重量部に対して、通常、1〜500重量部である。
【0034】
脂環式オレフィン重合体と硬化剤(I)との硬化反応を促進させるために、硬化促進剤等を使用することもできる。硬化剤(I)が、例えば多価エポキシ化合物の場合には、硬化促進剤として第3級アミン系化合物や三弗化ホウ素錯化合物などが好適である。なかでも、第3級アミン系化合物を使用すると、得られる電気絶縁層の微細配線に対する積層性、絶縁抵抗性、耐熱性、及び耐薬品性が向上する。
【0035】
第3級アミン系化合物の具体例としては、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミン、及びジメチルホルムアミドなどの鎖状3級アミン化合物;ピラゾール類、ピリジン類、ピラジン類、ピリミジン類、インダゾール類、キノリン類、イソキノリン類、イミダゾール類、及びトリアゾール類などの化合物が挙げられる。これらの中でも、イミダゾール類、特に置換基を有する置換イミダゾール化合物が好ましい。
【0036】
置換イミダゾール化合物の具体例としては、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビス−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、及び2−ヘプタデシルイミダゾールなどのアルキル置換イミダゾール化合物;2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール,1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−[2’−(3”,5”−ジアミノトリアジニル)エチル]イミダゾール、及び1−(2−アミノエチル)−2−メチル−1H−イミダゾールなどのアリール基やアラルキル基などの環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物などが挙げられる。これらの中でも、脂環式オレフィン重合体との相溶性に優れることから、環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物が好ましく、特に、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
【0037】
硬化促進剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。硬化促進剤の配合量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、熱硬化性樹脂100重量部に対して、通常0.001〜30重量部、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.03〜5重量部である。
【0038】
本発明に用いる硬化性組成物には、所望により、その他の成分を配合することができる。例えば、ビアホールやスルホールなどの孔を形成するときに使用されるレーザ光線の波長領域に吸収を持つ化合物を配合するのが好ましい。炭酸ガスレーザを用いる場合にはシリカなどが用いられ、紫外線レーザ(例えばUV−YAGレーザなど)を用いる場合には紫外線吸収剤が用いられる。レーザ光線の波長領域に吸収を持つ化合物を含有する硬化性組成物を用いた場合には得られる電気絶縁層に対してレーザにより容易に孔形成でき、スミアの発生なども少なくなる。
紫外線吸収剤の具体例としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、及びp−オクチルフェニルサリシレートなどのサリチル酸系化合物;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、及びビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾイルフェニル)メタンなどのベンゾフェノン系化合物;
【0039】
2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、及び2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物;2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系化合物;2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、及びエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレートなどのシアノアクリレート系化合物;ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル4)セバケートなどのヒンダードアミン系化合物;ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、及び[2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノラート)]−n−ブチルアミンニッケルなどの有機金属化合物;などが挙げられる。これらの中でも、脂環式オレフィン重合体との相溶性や加熱硬化時の安定性に優れることから、ベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。
紫外線吸収剤の配合量は、熱硬化性樹脂100重量部に対して、通常0.1〜30重量部、好ましくは1〜10重量部である。
【0040】
このほか、難燃剤、軟質重合体、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、及び充填剤などをその他の成分として用いることができる。それらの配合量は、本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
【0041】
(工程A1)において用いる硬化性組成物のフィルム状又はシート状成形体は、通常、硬化性組成物を、溶液キャスト法や溶融キャスト法などで成形することにより得られるが、溶液キャスト法により製造するのが好ましい。溶液キャスト法により成形する場合は、ワニスを支持体に塗布した後に、有機溶剤を乾燥除去する。
溶液キャスト法に使用する支持体として、樹脂フィルム(キャリアフィルム)や金属箔などが挙げられる。樹脂フィルムとしては、通常、熱可塑性樹脂フィルムが用いられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネイトフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、及びナイロンフィルムなどが挙げられる。これらの樹脂フィルム中、耐熱性、耐薬品性、及び積層後の剥離性などに優れることから、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。金属箔としては、例えば、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、及び銀箔などが挙げられる。導電性が良好で安価であることから、銅箔、特に電解銅箔や圧延銅箔が好適である。支持体の厚さは特に制限されないが、作業性等の観点から、通常1〜150μm、好ましくは2〜100μm、より好ましくは3〜50μmである。
【0042】
ワニスを得る方法に格別な制限はなく、例えば、硬化性組成物を構成する各成分と有機溶剤とを混合することにより得られる。各成分の混合は、常法に従って行なえばよく、例えば、攪拌子とマグネチックスターラーを使用した攪拌、高速ホモジナイザー、ディスパージョン、遊星式攪拌機、二軸攪拌機、ボールミル、及び三本ロールなどを使用した方法などで行うことができる。混合時の温度は、硬化剤(I)による反応が作業性に影響を及ぼさない範囲であり、さらには安全性の点から混合時に使用する有機溶剤の沸点以下が好ましい。
【0043】
有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、及びアニソールなどの芳香族炭化水素系有機溶剤;n−ペンタン、n−ヘキサン、及びn−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤;シクロペンタンやシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系有機溶剤;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びトリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系有機溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、及びシクロヘキサノンなどのケトン系有機溶剤などを挙げることができる。これらの有機溶剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
有機溶剤の使用量は、得られる成形体の厚みの制御や平坦性向上などの目的に応じて適宜選択されるが、ワニスの固形分濃度が、通常5〜85重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜70重量%になる範囲である。
【0045】
塗布方法として、デイップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、及びスリットコートなどの方法が挙げられる。また有機溶剤の除去乾燥の条件は、有機溶剤の種類により適宜選択され、乾燥温度は、通常20〜300℃、好ましくは30〜200℃であり、乾燥時間は、通常30秒〜1時間、好ましくは1分〜30分である。
【0046】
なお、硬化性組成物のフィルム状又はシート状成形体を製造する際、例えば、支持体上にて繊維基材にワニスを塗布、含浸させ、適宜、有機溶剤を除去することにより、硬化性組成物が繊維基材に含浸してなる、フィルム状又はシート状の複合成形体として得てもよい。前記繊維基材としては、ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維及びポリエステル繊維等の有機繊維や、ガラス繊維やカーボン繊維等の無機繊維が挙げられる。また、繊維基材の形態としては、平織りや綾織り等の織物の形態や、不織布の形態等が挙げられる。繊維基材の厚さとしては、得られる成形体の取扱い安さや配線埋め込み性を高める観点から、5〜100μmが好ましく、10〜50μmの範囲がより好ましい。
【0047】
フィルム状又はシート状成形体の厚みは、通常0.1〜150μm、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜80μmである。フィルム状又はシート状成形体は単層構造であっても多層構造であってもよく、各層は同一種類のものからなっても相異なる種類のものからなってもよい。なお、フィルム又はシートを単独で得たい場合には、支持体上にフィルム又はシートを形成した後、支持体から剥離する。
【0048】
(工程A1)において、この硬化性組成物のフィルム状又はシート状成形体を基板上に貼り合わせるには、通常、支持体付きのフィルム状又はシート状成形体を、当該成形体が導電体回路層aに接するように重ね合わせ、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、及びロールラミネータなどの加圧機を使用して加熱圧着(ラミネーション)して、基板表面と成形体との界面に、実質的な空隙が存在しないように両者を結合させる。加熱圧着は、成形体の配線への埋め込み性を向上させ、気泡等の発生を抑えるために減圧下で行うのが好ましい。加熱圧着時の温度は、通常30〜250℃、好ましくは70〜200℃、圧着力は、通常10kPa〜20MPa、好ましくは100kPa〜10MPa、圧着時間は、通常30秒〜5時間、好ましくは1分〜3時間であり、通常100kPa〜1Pa、好ましくは40kPa〜10Paに雰囲気を減圧する。
【0049】
基板に貼り合わせる成形体は2以上であってもよく、例えば、電気絶縁層の平坦性を向上させる目的や、電気絶縁層の厚みを増す目的で、成形体が貼り合わせられた基板に、当該成形体と接するように別の成形体を貼り合わせてもよい。用いる成形体は、同一種類のものであっても、相異なる種類のものであってもよい。基板に複数の成形体を貼り合わせて、成形体を積層する場合、次の(工程B)で硬化剤(II)と接触するのは、最後に積層した成形体表面となる。
【0050】
(工程A2)によって樹脂層を形成する場合、上述した硬化性組成物のワニスを、基板上に直接塗布し、乾燥すればよい。塗布や乾燥の方法や条件などは、硬化性組成物のフィルム状又はシート状成形体を形成するのと同様でよい。
【0051】
基板上、樹脂層は、基板の両面に形成しても、片面のみに形成してもよい。従来、特に、基板の片面のみに電気絶縁層と導電体回路層とを積層して形成される多層回路基板に反りの発生が顕著であるため、本発明の多層回路基板の製造方法は、樹脂層を基板の片面のみに形成して多層回路基板を製造するのに非常に好適である。
【0052】
(工程B)
工程Bでは、硬化剤(I)が熱硬化性樹脂を実質的に硬化不可能な温度において熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能な硬化剤(II)を、工程Aで基板上に形成した樹脂層表面に接触させた後、硬化剤(I)が熱硬化性樹脂を実質的に硬化不可能な温度であって、硬化剤(II)が熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能な温度で、硬化剤(II)と接触させた後の樹脂層を加熱する。
【0053】
本明細書において、所定の硬化剤につき「熱硬化性樹脂を実質的に硬化不可能」とは、該硬化剤の存在下に熱硬化性樹脂を所定の温度で1時間加熱した場合、未硬化の熱硬化性樹脂が溶解性を示す溶剤に対する、熱硬化性樹脂の加熱前の溶解量と比べて、加熱後の溶解量の減量〔硬化(架橋)して不溶化した部分に相当する溶解量の減少分〕が5重量%以内であることをいう。また、所定の硬化剤につき「熱硬化性樹脂を実質的に硬化不可能な温度」とは、熱硬化性樹脂を実質的に硬化不可能な、該硬化剤の使用温度をいう。一方、所定の硬化剤につき「熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能」とは、該硬化剤の存在下に熱硬化性樹脂を所定の温度で1時間加熱した場合、未硬化の熱硬化性樹脂が溶解性を示す溶剤に対する、熱硬化性樹脂の加熱前の溶解量と比べて、加熱後の溶解量の減量が95重量%以上であることをいう。また、所定の硬化剤につき「熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能な温度」とは、熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能な、該硬化剤の使用温度をいう。
【0054】
本発明の多層回路基板の製造方法では、熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能な温度域の異なる2種の硬化剤である、硬化剤(I)と硬化剤(II)とを用いる。両硬化剤を比べた場合、硬化剤(I)の前記温度域は高温側にあり、硬化剤(II)の前記温度域は低温側にある。工程Bでは、硬化剤(II)を接触させた樹脂層を加熱するが、その際の加熱条件では、通常、熱硬化性樹脂は実質的に流動性を示さず、樹脂層として得られた形状を保って硬化剤(II)との接触部分が部分的に硬化し(予備硬化)、続く工程Cで、樹脂層をさらに加熱し、硬化剤(I)により実質的に完全に硬化させて(本硬化)、電気絶縁層を形成するが、前記樹脂層は、工程Bでの予備硬化により形状が保持されており、例えば、本硬化時(高温)と多層回路基板の保存時(室温)で温度差が生じたとしても、得られた電気絶縁層の変形が小さく、その結果、本発明の多層回路基板では反りが生じないものと推定される。
【0055】
工程Bでは、工程Aで基板上に形成された樹脂層表面に硬化剤(II)を接触させる。基板上に硬化性組成物のフィルム状又はシート状成形体を貼り合わせて樹脂層を形成するに際し、成形体として支持体付きのもの用いた場合には、この支持体を剥がした後に、樹脂層表面に硬化剤(II)を接触させる。
【0056】
本発明に用いる硬化剤(II)は、特に限定されないが、予備硬化を効果的に行なう観点から、ポリスルフィド;ポリメルカプタン;ポリアミド;イミダゾール;並びに、鎖状脂肪族ポリアミン、環状脂肪族ポリアミン、脂肪芳香族アミン、芳香族アミン、及びそれらのアミン錯体;からなる群より選択される少なくとも1種を用いるのが好ましく、鎖状脂肪族ポリアミンを用いるのがより好ましい。鎖状脂肪族ポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロプレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、及びヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。環状脂肪族ポリアミンとしては、例えば、N−アミノエチルピペラジンなどが挙げられる。脂肪芳香族アミンとしては、例えば、キシレンジアミン、キシレンジアミン三量体(例えば、昭和電工社製「アミンブラック」や「ショーアミンブラック」)、キシレンジアミン誘導体(例えば、昭和電工社製「ショーアミンN」、「ショーアミン1001」、及び「ショーアミン1010」)などが挙げられる。芳香族アミンとしては、例えば、メタフェニレンジアミンやジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上を組合わせて用いることができる。硬化剤(II)の熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能な温度域は、通常、20℃以上150℃未満の範囲である。
【0057】
硬化剤(II)を樹脂層表面に接触させる方法は特に制限されない。例えば、硬化剤(II)を水又は有機溶媒に溶かして溶液にした後、得られた溶液中に、樹脂層が形成された基板を浸漬するディップ法や、該溶液を基板上の樹脂層表面にスプレー等で塗布するスプレー法などが挙げられる。樹脂層表面への硬化剤(II)の接触は、予備硬化を効果的に行なう観点から、樹脂層が形成された基板を、硬化剤(II)の水溶液中に浸漬して行うのが好適である。また、実質的に樹脂層表面の全体に行なうのが好適である。接触操作は、1回でも2回以上繰り返し行ってもよい。
【0058】
接触に際しての温度は、硬化剤(II)の熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能な温度域やその溶液の溶媒の沸点等を考慮して任意に選択すればよいが、通常、10〜100℃、好ましくは15〜65℃の範囲である。接触をディップ法により行う場合、浸漬時間は、硬化剤(II)溶液の濃度等に応じて適宜選択すればよいが、通常、0.1〜360分、好ましくは0.1〜60分である。
硬化剤(II)の樹脂層表面への接触操作後、硬化剤(II)の過剰分を除去する目的で、窒素などの不活性ガスを吹きかける方法をとってもよい。また、かかる除去操作前に、水又は有機溶剤で基板表面を洗浄してもよい。
【0059】
硬化剤(II)の溶液の調製に用いられる溶媒は、樹脂層が容易に溶解せず、かつ硬化剤(II)が溶解するものであれば特に限定されない。例えば、水;ジエチルエーテルなどのエーテル類;エタノールやイソプロパノールなどのアルコール類;アセトンなどのケトン類;エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ類;などの極性溶媒、並びにこれらの混合物が挙げられる。硬化剤(II)の溶液中の硬化剤(II)の濃度は、特に制限されないが、予備硬化を効果的に行なう観点から、通常、0.001〜70重量%、好ましくは0.01〜50重量%である。かかる硬化剤(II)の溶液に対し、樹脂層が形成された基板を浸漬するか、又は該溶液を基板上の樹脂層表面にスプレーすることで、予備硬化を良好に実施することができる。
なお、使用温度において硬化剤(II)が液状であり、硬化剤(II)の樹脂層表面への接触操作に支障がない場合は、硬化剤(II)を、特に溶媒に溶解することなく、そのまま用いて接触操作を行なうことも可能である。
【0060】
硬化剤(II)の溶液には、硬化剤(II)以外の成分として、硬化剤(II)と樹脂層表面との濡れ性を向上させる観点から、任意に界面活性剤等を配合してもよい。硬化剤(II)以外の成分の配合量としては、通常、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
【0061】
硬化剤(II)を樹脂層の表面に接触後、樹脂層を加熱する。加熱は、硬化剤(I)が熱硬化性樹脂を実質的に硬化不可能な温度下であって、硬化剤(II)が熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能な温度で行なわれるが、加熱温度としては、通常、20℃以上150℃未満である。また、加熱時間は、通常、0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。樹脂層の加熱は、(i)一定温度を一定時間維持して行ってもよいし、(ii)前記(i)の加熱を一定温度域で多段階に組合わせて行ってもよいし、(iii)一定温度域の下限から上限に向かって一定に若しくは変則的に一定時間で温度上昇させて行ってもよいし、(iv)前記(i)〜(iii)を適宜組合わせて行ってもよい。中でも、予備硬化を効果的に行なう観点から、樹脂層の加熱は前記(iv)により行なうのが好ましい。加熱方法としては、特に制限されず、例えば、オーブンなどを用いて行えばよい。
【0062】
(工程C)
上記(工程B)に続いて、硬化剤(I)が熱硬化性樹脂を実質的に硬化可能な温度で、予備硬化を経た樹脂層を加熱して硬化させ、電気絶縁層を形成する。
【0063】
樹脂層の硬化は、通常、樹脂層(樹脂層が形成された基板全体)を加熱することにより行う。硬化剤(I)に応じて硬化条件は適宜選択すればよいが、樹脂層の加熱温度としては、通常、150〜300℃であり、加熱時間は、通常、0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。樹脂層の加熱は、工程Bで、硬化剤(II)をその表面に接触させた後の樹脂層を加熱するのと同様、前記(i)〜(iv)の通りに行なうことができるが、本硬化を効果的に行なう観点から、前記(i)により行なうのが好ましい。加熱方法としては、特に制限されず、例えば、オーブンなどを用いて行えばよい。工程Cでの樹脂層の加熱により、樹脂層は実質的に完全に硬化し、電気絶縁層が形成される。電気絶縁層の厚さとしては、特に限定はないが、通常、1〜50μmである。
【0064】
以上のようにして、本発明の多層回路基板が製造される。かかる多層回路基板では実質的に反りが生じない。ここで、「実質的に」とは、実用上問題にならない程度との意味である。なお、本発明の多層回路基板において、基板の導電体回路層aの上に形成された電気絶縁層上には、さらに導電体回路層bを設けてもよい。その場合、導電体回路層aと導電体回路層bとを接続するため、導電体回路層bを形成する前に、電気絶縁層にビアホール形成用の開口を形成する。このビアホール形成用の開口は、通常、樹脂層を硬化させて電気絶縁層を形成した後、ドリル、レーザ、及びプラズマエッチング等の物理的処理により形成することができる。電気絶縁層の特性を低下させず、より微細なビアホールを形成することができるという観点から、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、及びUV−YAGレーザ等のレーザによる方法が好ましい。
【0065】
本発明の多層回路基板の製造方法において基板上に形成された電気絶縁層(以下、電気絶縁層bという場合がある。)上に導電体回路層bを形成する方法としては、電気絶縁層bを形成した後、その上に金属薄膜層を形成し、さらに電解めっき等の湿式めっきによりめっきを成長させて導電体回路層を形成する方法が挙げられる。電気絶縁層bへのビアホール形成用の開口の形成は、通常、金属薄膜層を形成する前に行なわれる。金属薄膜層の形成は、無電解めっき法、スパッタリング法、及び真空蒸着法等により行なうことができ、特に無電解めっき法又はスパッタリング法により行なうのが好ましい。金属薄膜層は電気絶縁層b表面とビアホール形成用開口の内壁面に形成される。金属薄膜層を形成後、めっきを成長させる前に、金属薄膜層上にめっきレジストを形成し、めっきを成長させた後、めっきレジストを除去し、さらにエッチングにより金属薄膜層をエッチングして導電体回路層bを形成する。この導電体回路層bは、通常、金属薄膜層と、その上に成長させためっきとからなる。
【0066】
このようにして得られた多層回路基板を基板として、本発明における工程A〜Cによる電気絶縁層の形成と、当該電気絶縁層上への導電体回路層の形成とを繰り返すことで、更なる多層化も可能である。
本発明によれば、基板の片面にのみ多層回路を形成する場合であっても、実質的に反りのない多層回路基板を得ることができる。そのため、個別チップに切り分ける前のシリコンウエハー基板に直接、多層回路を形成することで、パッケージの面積をチップと同等に抑えられる「ウエハー・レベル・パッケージ(WLP:Wafer Level Package)」技術において、シリコンウエハー基板上に多層回路を形成する方法として、本発明の多層回路基板の製造方法は特に好適である。
【0067】
本発明の多層回路基板は、コンピューターや携帯電話等の電子機器において、CPUやメモリなどの半導体素子、その他の実装部品を実装するためのプリント配線板として使用できる。特に、微細配線を有するものは高密度プリント配線基板として、高速コンピューターや、高周波領域で使用する携帯端末の配線基板として好適である。
【実施例】
【0068】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特段の事情がない限り、重量基準である。各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
【0069】
(1)重合溶液中の単量体量:重合溶液をテトラヒドロフランで希釈し、ガス・クロマトグラフィー(GC)により測定し、重合溶液中の単量体量を求めた。
【0070】
(2)重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw):テトラヒドロフランを展開溶媒として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
【0071】
(3)重合体の水素添加率:水素添加率は、水素添加前における重合体中の不飽和結合のモル数に対する水素添加された不飽和結合のモル数の比率をいい、400MHzの1H−NMRスペクトル測定により求めた。
【0072】
(4)重合体のカルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率:重合体中の総単量体単位モル数に対するカルボン酸無水物基を有する繰り返し単位のモル数の割合をいい、400MHzの1H−NMRスペクトル測定により求めた。
【0073】
(5)ワニスの粘度: E型粘度計を用いて、25℃での動的粘度を測定した。
【0074】
(6)基板の反り量:基板上の片面に絶縁層が形成されてなる積層基板を、その凸面が下になるように平らな面に置き、平らな面から、最も高く反って浮いた積層基板端部までの距離を、基板の反り量として測定した。
【0075】
〔熱硬化性樹脂の合成例1〕
重合1段目として5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(以下、「EdNB」と略記する)35モル部、1−ヘキセン0.9モル部、アニソール340モル部およびルテニウム系重合触媒として4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(C1063、和光純薬社製)0.005部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で30分間の重合反応を行ってノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、ノルボルネン系開環重合体という。)の溶液を得た。
次いで、重合2段目として重合1段目に得た溶液中にテトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(メタノテトラヒドロフルオレン、以下、「MTF」と略記する。)35モル部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物(以下、「NDCA」と略記する)30モル部、アニソール250モル部およびC1063 0.01部を追加し、攪拌下に80℃で1.5時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。この溶液について、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、実質的に単量体が残留していないことが確認され、重合転化率は99%以上であった。
次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、C1063 0.03部を追加し、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行って、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である重合体(A−1)の溶液を得た。得られた重合体(A−1)の重量平均分子量は60,000、数平均分子量は30,000、分子量分布は2であった。また、水素添加率は95%であり、カルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率は30モル%であった。重合体(A−1)の溶液の固形分濃度は22%であった。
【0076】
〔熱硬化性樹脂の合成例2〕
MTF 70モル部、NDCA 30モル部、1−ヘキセン0.9モル部、アニソール590モル部およびC1063 0.015モル部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で1時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。この溶液について、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、実質的に単量体が残留していないことが確認され、重合転化率は99%以上であった。
次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行って、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である重合体(A−2)の溶液を得た。得られた重合体(A−2)の重量平均分子量は50,000、数平均分子量は26,000、分子量分布は1.9であった。また、水素添加率は97%であり、カルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率は30モル%であった。重合体(A−2)の溶液の固形分濃度は22%であった。
【0077】
〔熱硬化性樹脂の合成例3〕
MTF 70モル部、NDCA 30モル部、1−ヘキセン6モル部、アニソール590モル部およびC1063 0.015モル部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で1時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。この溶液について、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、実質的に単量体が残留していないことが確認され、重合転化率は99%以上であった。
次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行った。次いで、得られた水素化反応溶液を濃縮して、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である重合体(A−3)の溶液を得た。得られた重合体(A−3)の重量平均分子量は10,000、数平均分子量は5,000、分子量分布は2であった。また、水素添加率は97%であり、カルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率は30モル%であった。重合体(A−3)の溶液の固形分濃度は55%であった。
【0078】
〔製造例1:硬化性組成物B−1〕
前記重合体(A−1)の溶液450部、および球状シリカ(アドマファイン(登録商標)SO−C1、アドマテックス社製、体積平均粒径0.25μm)40%と前記重合体(A−2)2%とをアニソールに分散したシリカスラリー150部を混合し、遊星式攪拌機で3分間攪拌した。
これに、硬化剤(I)として多官能エポキシ樹脂(1032H60、三菱化学社製、エポキシ当量163〜175)をアニソールに70%溶解した溶液4.5部、レーザー加工性向上剤として2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1部、老化防止剤としてトリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート1部、エラストマーとして液状エポキシ化ポリブタジエン(Ricon(登録商標)657、サートマー・ジャパン社製)をアニソールに80%溶解した溶液3部、およびアニソール370部を混合し、遊星式攪拌機で3分間攪拌した。
さらにこれに、硬化促進剤として1−(2−アミノエチル)−2−メチル−1H−イミダゾールをアニソールに1%溶解した溶液70部を混合し、遊星式攪拌機で5分間攪拌して硬化性組成物(B−1)のワニスを得た。ワニスの粘度は、230mPa・secであった。
【0079】
〔製造例2:硬化性組成物B−2〕
前記重合体(A−2)の溶液44部、前記重合体(A−3)の溶液32部、および表面処理球状シリカ(アドマファインSC−2500−SXJ、アドマテックス社製、アミノシランタイプシランカップリング剤処理)78%と前記重合体(A−3)2%とをアニソールに混合し、高圧ホモジナイザーで15分間処理し、分散させたシリカスラリー863部を混合し、遊星式攪拌機で3分間攪拌した。
これに、硬化剤(I)としてフルオレン系エポキシ樹脂(オグソール(登録商標)PG−100、大阪ガスケミカル社製、エポキシ当量163〜175)123部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔エピコート(登録商標)828EL、三菱化学社製、エポキシ当量184〜194〕28部、多官能エポキシ樹脂1032H60 23部、老化防止剤としてトリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート1部、ジシクロペンタジエン型ノボラック樹脂(GDP−6095LR、群栄化学工業社製)81部、CP−002(フルオレン系フェノールモノマーとビスフェノールAの混合物、大阪ガスケミカル社製)をアニソールに50%溶解した溶液60部を混合し、遊星式攪拌機で3分間攪拌した。さらにこれに、硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾールをアニソールに5%溶解した溶液25部を混合し、遊星式攪拌機で5分間攪拌して硬化性組成物(B−2)のワニスを得た。ワニスの粘度は、2300mPa・secであった。
【0080】
〔実施例1〕
硬化性組成物(B−1)のワニスを、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)上にワイヤーバーを用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、130℃で90秒間乾燥させて、未硬化の硬化性組成物(B−1)の厚みが3μmの樹脂層が形成された支持体付きフィルム(C−1)を得た。
次に、支持体付きフィルム(C−1)の硬化性組成物(B−1)の面に、硬化性組成物(B−2)のワニスを、ドクターブレード(テスター産業社製)とオートフィルムアプリケーター(テスター産業社製)を用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥させて、硬化性組成物の総厚みが13μmの樹脂層が形成された支持体付きフィルム(C−2)を得た。支持体付きフィルム(C−2)は、支持体、硬化性組成物(B−1)の樹脂層、硬化性組成物(B−2)の樹脂層の順で形成された。
基板として直径4インチの円形ガラス基板(D263、ショット社製、厚み150μm)の片方の面に、上記で得られた支持体付きフィルム(C−2)を、硬化性組成物(B−2)の樹脂層の面が基板と重なるようにして、重ね合わせた。これを、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータ(名機製作所社製)を用いて、真空度13hPa以下で30秒間減圧した後、耐熱ゴム製プレス板で圧着温度110℃、圧着圧力0.1MPaで60秒間加熱圧着した(一次プレス)。さらに、金属製プレス板を上下に備えた油圧プレス装置を用いて、圧着温度110℃、1MPaで90秒間、加熱圧着した(二次プレス)。次いで支持体を剥がすことにより、硬化性組成物の樹脂層と基板との積層体を得た。
【0081】
この積層体を、硬化剤(II)としてトリエチレンテトラミン(以下、「TETA」と略記する。)の5%水溶液に25℃で1時間浸漬した後、エアーガンで余分な溶液を除去した。次いで、積層体を基板側を下にしてオーブン用プレートに置き、オーブン(INH−9CD、光洋リンドバーグ社製)で60〜120℃まで1時間かけて昇温加熱した。次いで120℃で30分間加熱した後、120〜180℃まで1時間かけて昇温加熱した。さらに180℃で30分間加熱し、硬化性組成物の樹脂層を硬化させて、絶縁層が形成された積層基板を得た。得られた積層基板について反り量を測定したところ、反り量は1.5mmであった。結果を表1に示す。
【0082】
〔比較例1〕
TETA5%水溶液に替えてイオン交換水としたこと以外は、実施例1と同じ方法で絶縁層が形成された積層基板を得た。なお、樹脂層の総厚みは14μmとなった。得られた積層基板について反り量を測定したところ、反り量は2.5mmであった。結果を表1に示す。
【0083】
〔比較例2〕
硬化性組成物の樹脂層と基板との積層体を、TETA5%水溶液に浸漬した後、多段階の加熱処理を行なうことなく、オーブンにて180℃で60分間加熱して樹脂層を完全硬化させたこと以外は、実施例1と同じ方法で絶縁層が形成された積層基板を得た。なお、樹脂層の総厚みは14μmとなった。得られた積層基板について反り量を測定したところ、反り量は3mmであった。結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
表1より、基板上に、熱硬化性樹脂と硬化剤(I)とを含有する硬化性組成物を用いて樹脂層を形成した後、硬化剤(II)を前記樹脂層表面に接触させて所定温度で加熱し、次いで前記樹脂層を加熱して硬化させることにより絶縁層を形成した積層基板では、反り量が小さく抑えられることが分かる(実施例1)。これに対し、硬化剤(II)を樹脂層表面に接触させなかったり(比較例1)、硬化剤(II)を樹脂層表面に接触させても、所定温度で加熱しなかった(比較例2)場合、積層基板の反り量が大きくなることが分かる。