特許第5673959号(P5673959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5673959
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】アキシャルギャップモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20150129BHJP
   H02K 21/24 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   H02K1/27 503
   H02K21/24 M
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-536136(P2011-536136)
(86)(22)【出願日】2010年10月12日
(86)【国際出願番号】JP2010067860
(87)【国際公開番号】WO2011046108
(87)【国際公開日】20110421
【審査請求日】2013年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2009-239688(P2009-239688)
(32)【優先日】2009年10月16日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、NEDO委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願、題目「次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発/要素技術開発/脱レアアース次世代モータの研究開発(高速スイッチドリラクタンスモータおよび3次元モータの研究開発)
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100154656
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 英彦
(72)【発明者】
【氏名】竹本 真紹
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 悟司
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−136721(JP,A)
【文献】 特開2005−151725(JP,A)
【文献】 特開2006−304562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00− 1/34
H02K 21/00− 21/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
前記ロータの回転軸の方向からギャップを介して前記ロータを挟むように、前記ロータと対向して設けられた一対のステータと、
を備え、
前記ロータは、
前記回転軸の周方向に沿って互いに離間して設けられた複数の非希土類磁石と、
前記複数の非希土類磁石の間に非磁性体部又は空間ギャップを介して設けられた複数の磁性体部と、
を有し、
前記複数の非希土類磁石の着磁方向は、それぞれ前記回転軸の方向に沿っており、
前記複数の磁性体部の透磁率は、前記複数の非希土類磁石の透磁率よりも大きく、
前記複数の非希土類磁石及び前記複数の磁性体部は、前記ロータの前記一対のステータとの対向面を規定し、
前記複数の非希土類磁石のそれぞれと前記複数の磁性体部のそれぞれとの前記回転軸の周方向に沿った離間距離は、前記ロータと前記一対のステータ間の前記ギャップの前記回転軸に沿った方向の幅よりも大きいことを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項2】
前記複数の非希土類磁石の残留磁束密度は、200mT以上、600mT以下であることを特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項3】
前記複数の非希土類磁石のリコイル透磁率は、1.0以上、2.0以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項4】
前記複数の非希土類磁石の着磁方向は、前記回転軸の周方向に沿って交互に反転することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項5】
前記複数の非希土類磁石のそれぞれの体積は、前記複数の磁性体部のそれぞれの体積よりも大きいことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項6】
前記非希土類磁石は、フェライト磁石であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のアキシャルギャップモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルギャップモータに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータと、ロータの回転軸の方向からギャップを介してロータと対向するステータとを有するアキシャルギャップモータとして、例えば下記特許文献1〜4に記載されたものが知られている。
【0003】
下記特許文献1〜4に記載のアキシャルギャップモータのロータは、回転軸の周方向に互いに離間して設けられた永久磁石と、これらの永久磁石の間に設けられた軟磁性体部(永久磁石間軟磁性体部)とを有している。このように設けられた軟磁性体部に起因して、リラクタンストルクが増大し、モータトルクが増大することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−50706号公報
【特許文献2】特開2008−278649号公報
【特許文献3】特開2008−199895号公報
【特許文献4】特開2005−94955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなアキシャルギャップモータのロータに使用される永久磁石としては、一般に残留磁束密度の大きい希土類磁石が用いられる。しかし、希土類磁石の原材料となるネオジム(Nd)やジスプロシウム(Dy)等のレアアースは、産出地が特定の地域に偏在し、また、近年使用量が急激に増加している。そのため、レアアースは、安定供給及び価格の点において難点がある。
【0006】
そのため、アキシャルギャップモータのロータに使用される永久磁石として、希土類磁石に替えてフェライト磁石等の非希土類磁石を用いることが考えられる。しかしながら、従来のアキシャルギャップモータにおいて希土類磁石を非希土類磁石に替えることには、以下のような問題がある。
【0007】
即ち、非希土類磁石の残留磁束密度は希土類磁石の残留磁束密度よりも小さいため、その分マグネットトルクが減少する。そのため、マグネットトルクの減少を抑制することが可能であると共に、リラクタンストルクを増加させることが可能な構成を有するアキシャルギャップモータを採用することが好ましい。しかしながら、従来のアキシャルギャップモータにおいて希土類磁石を非希土類磁石に替えた場合、これらを両立させることが困難であった。
【0008】
例えば、上記特許文献1に記載のアキシャルギャップモータのロータにおいては、永久磁石のステータ側の面には軟磁性材料からなるロータバックコアが設けられている。また、上記特許文献2に記載のアキシャルギャップモータのロータにおいては、永久磁石は軟磁性材料からなる一対の磁性体によって回転軸方向から挟まれている。即ち、永久磁石の一対のステータ側の両面には軟磁性材料からなる一対の磁性体が設けられている。
【0009】
そのため、上記特許文献1及び2に記載のアキシャルギャップモータにおいては、永久磁石のステータ側の面に設けられた部材が原因で、非希土類磁石が薄くなってしまい、ロータ全体の体積のうち非希土類磁石の体積が占める割合を大きくすることができなかった。その結果、ロータ全体の体積のうち非希土類磁石の体積が占める割合を大きくすることが困難であるため、マグネットトルクの減少を抑制することが困難であった。
【0010】
さらに、永久磁石のステータ側の面には軟磁性材料からなる部材が設けられているため、ステータから発生した磁束は、永久磁石のステータ側の面にある磁性体に引き寄せられる。そのため、一方のステータから他方のステータまで至る磁束は、永久磁石間軟磁性体部内だけでなく、永久磁石内もある程度通過する。その結果、永久磁石間軟磁性体部内を通過する磁束が減少することに起因してリラクタンストルクが減少してしまうと共に、永久磁石内を通過する磁束、特に弱め界磁磁束に起因して非希土類磁石に不可逆減磁が生じてしまい、マグネットトルクが減少してしまうという問題があった。
【0011】
また、図1は、上記特許文献3に記載のアキシャルギャップモータにおけるロータ近傍の、回転軸の周方向に沿った模式的な断面を示す図である。上記特許文献3に記載のアキシャルギャップモータにおいては、図1に示すように、ロータ3の永久磁石8は、ロータ3の回転軸と直交する方向(図1の左右方向)に着磁している。即ち、永久磁石8の磁極面8mSは、ステータ4のロータ3との対向面4Sと直交している。そのため、永久磁石8から発生する磁束8mは、永久磁石8から永久磁石間軟磁性体部9に向かい、さらに、永久磁石間軟磁性体部9から一対のステータ4の方向に向かう。そのため、永久磁石8によって磁化される永久磁石間軟磁性体部9の一対のステータ4側の一対の面は、同極となってしまう。その結果、一対のステータ4から生じる磁束4mの多くは一方のステータ4から永久磁石間軟磁性体部9を経由して他方のステータ4へ向かうことができず、ステータ4から発生した磁束は再び同一のステータ4へ戻ってしまう。そのため、ステータ4から発生し永久磁石間軟磁性体部9内を通過する磁束が減少するため、リラクタンストルクが減少してしまうという問題があった。
【0012】
また、上記特許文献4に記載のアキシャルギャップモータにおいては、上記特許文献4の図4に記載されているように、永久磁石と永久磁石間軟磁性体部が直接接している。そのため、永久磁石として非希土類磁石を用いると、その非希土類磁石と永久磁石間軟磁性体部は磁気的に結合してしまう。非希土類磁石の残留磁束密度は希土類磁石の残留磁束密度よりも小さいため、ステータからの磁束、特に弱め界磁磁束が永久磁石間軟磁性体部を通過して永久磁石間軟磁性体部の磁化の向きが変化すると、その変化に引きずられるように非希土類磁石の磁化もある程度変化してしまう。その結果、非希土類磁石に不可逆減磁が生じてしまい、マグネットトルクが減少してしまうという問題があった。
【0013】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、永久磁石として非希土類磁石を用いたアキシャルギャップモータであって、マグネットトルクの減少を抑制することが可能であると共に、リラクタンストルクを増加させることが可能なアキシャルギャップモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決するため、本発明に係るアキシャルギャップモータは、ロータと、ロータの回転軸の方向からギャップを介してロータを挟むように、ロータと対向して設けられた一対のステータとを備え、ロータは、回転軸の周方向に沿って互いに離間して設けられた複数の非希土類磁石と、複数の非希土類磁石の間に非磁性体部又は空間ギャップを介して設けられた複数の磁性体部とを有し、複数の非希土類磁石の着磁方向は、それぞれ回転軸の方向に沿っており、複数の磁性体部の透磁率は、複数の非希土類磁石の透磁率よりも大きく、複数の非希土類磁石及び複数の磁性体部は、ロータの一対のステータとの対向面を規定することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るアキシャルギャップモータでは、複数の非希土類磁石及び複数の磁性体部は、ロータの一対のステータとの対向面を規定するため、複数の非希土類磁石の一対のステータ側の面には、ロータバックコア等の部材は何も存在しない。そのため、そのような部材のために非希土類磁石が薄くなってしまうことはないため、ロータ全体の体積のうち非希土類磁石の体積が占める割合を大きくすることができる。その結果、ロータ全体の体積のうち非希土類磁石の体積が占める割合が小さいことに起因するマグネットトルクの減少を抑制することが可能となる。
【0016】
また、複数の磁性体部の透磁率は、複数の非希土類磁石の透磁率よりも大きい上に、複数の非希土類磁石の一対のステータ側の面には軟磁性材料からなる部材は存在しないため、ステータから発生した磁束が非希土類磁石のステータ側の面の方向に引き寄せられることは抑制される。そのため、一方のステータから発生し他方のステータへ向かう磁束の大部分は非希土類磁石を経由することなく、複数の非希土類磁石間に設けられた磁性体部内を経由する。その結果、ステータから発生した磁束の大部分は磁性体部内に導かれるため、リラクタンストルクを増加させることが可能である。また、非希土類磁石内を通過する磁束による非希土類磁石の不可逆減磁は抑制される。その結果、非希土類磁石内を通過する磁束による非希土類磁石の不可逆減磁に起因するマグネットトルクの減少を抑制することが可能である。
【0017】
また、非希土類磁石の着磁方向は回転軸の方向に沿っているため、非希土類磁石が発生する磁束によって磁性体部の一対のステータ側の面が同極に磁化されることはない。そのため、一方のステータから他方のステータへ向かう磁束が磁性体部内を経由することは妨げられないため、磁性体部の一対のステータ側の面が同極に磁化された場合に生じるようなリラクタンストルクの減少の問題は生じない。
【0018】
また、複数の磁性体部は、非磁性体部又は空間ギャップを介して複数の非希土類磁石の間に設けられているため、非希土類磁石と磁性体部との磁気的な結合を抑制することができる。そのため、ステータからの磁束、特に弱め界磁磁束が磁性体部を通過して磁性体部の磁化の向きが変化しても、その変化に引きずられるように非希土類磁石の磁化が変化することは抑制される。その結果、非希土類磁石の不可逆減磁は抑制されるため、マグネットトルクの減少を抑制することができる。
【0019】
以上のように、本発明に係るアキシャルギャップモータによれば、マグネットトルクの減少を抑制することが可能であると共に、リラクタンストルクを増加させることが可能となる。
【0020】
さらに、本発明に係るアキシャルギャップモータにおいて、複数の非希土類磁石の残留磁束密度は、200mT以上、600mT以下であることが好ましい。
【0021】
さらに、本発明に係るアキシャルギャップモータにおいて、複数の非希土類磁石のリコイル透磁率は、1.0以上、2.0以下であることが好ましい。
【0022】
さらに、本発明に係るアキシャルギャップモータにおいて、複数の非希土類磁石の着磁方向は、回転軸の周方向に沿って交互に反転することが好ましい。これにより、一対のステータから発生する回転磁束によって、ロータを効率よく回転させることが可能となる。
【0023】
さらに、本発明に係るアキシャルギャップモータにおいて、複数の非希土類磁石のそれぞれの体積は、複数の磁性体部のそれぞれの体積よりも大きいことが好ましい。これにより、マグネットトルクの減少を十分に抑制することが可能となる。
【0024】
さらに、本発明に係るアキシャルギャップモータにおいて、非希土類磁石は、フェライト磁石であることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、永久磁石として非希土類磁石を用いたアキシャルギャップモータであって、マグネットトルクの減少を抑制することが可能であると共に、リラクタンストルクを増加させることが可能なアキシャルギャップモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】従来のアキシャルギャップモータにおけるロータ近傍の、回転軸の周方向に沿った模式的な断面を示す図である。
図2】実施形態に係るアキシャルギャップモータの断面構成を模式的に示す図である。
図3】ロータ及び一対のステータを互いに回転軸の方向に離間させた状態を示す斜視図である。
図4】ロータを示す斜視図である。
図5】非希土類磁石の要素、枠部材、及び、ロータ軸の構成を示す図である。
図6】ロータを示す斜視図である。
図7】実施形態のアキシャルギャップモータのロータ近傍の、回転軸の周方向に沿った模式的な断面を示す図である。
図8】解析で用いた実施例の諸条件を示す図である。
図9】平均トルクの推移の解析結果を示す図である。
図10】ロータのフェライト磁石の減磁体積比の電流密度依存性の解析結果を示す図である。
図11】スロット数とU相鎖交磁束の減少率の関係を示す図である。
図12】ターン数と、平均トルク及びU相鎖交磁束の減少率との関係を示す図である。
図13】非希土類磁石の幅と平均トルク及びトルクリプルとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施の形態に係るアキシャルギャップモータについて、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、可能な場合には同一要素には同一符号を用いる。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
【0028】
図2は、本実施形態に係るアキシャルギャップモータの断面構成を模式的に示す図である。図2に示すように、本実施形態のアキシャルギャップモータ10は、ロータ11と、一対のステータ21と、ロータ軸19と、ケース29とを備えている。
【0029】
ロータ11は円筒状の部材であり、その円筒形状の中心線に沿った回転軸11aの周りに回転する部材である。ロータ軸19は、ロータ11を貫通し、ロータ11は、その内周面においてロータ軸19と固定されている。ロータ軸19は回転軸11aに沿った方向、即ち、ロータ11の高さ(厚さ)方向に延びる部材であり、回転軸11aを規定する。
【0030】
一対のステータ21は、それぞれ円筒状の部材である。一対のステータ21は、ロータ11の回転軸11aの方向からギャップG(空間ギャップ)を介してロータ11を挟むように、ロータ11と対向して設けられている。即ち、一対のステータ21の対向面21Sは、ロータ11の対向面11Sと対向する。ロータ軸19は、一対のステータ21を貫通し、一対のステータ21の内周面は、ロータ軸19と固定されていない。
【0031】
ケース29は、ロータ11及び一対のステータ21を内部に収容する部材である。ケース29は、ベアリング等を介してロータ軸19を回転可能に支持している。一対のステータ21は、ケース29に固定されている。
【0032】
続いて、ロータ11及びステータ21について、より詳細に説明する。
【0033】
図3は、ロータ及び一対のステータを互いに回転軸の方向に離間させた状態を示す斜視図であり、図4は、ロータを示す斜視図である。
【0034】
図3及び図4に示すように、ロータ11は、回転軸11aの周方向に沿って互いに離間して設けられた複数の非希土類磁石13と、複数の非希土類磁石13の間に設けられた複数の磁性体部15と、非希土類磁石13、磁性体部15、及び、ロータ軸19を互いに固定するための枠部材17とを有している。
【0035】
複数の非希土類磁石13は、それぞれ例えばフェライト磁石やアルニコ磁石等の希土類磁石以外の永久磁石である。非希土類磁石13の数は、本実施形態では8個であるが、特に制限されない。複数の非希土類磁石13の着磁方向は、それぞれ回転軸11aに沿っている。本実施形態においては、複数の非希土類磁石13の着磁方向は、回転軸11aの周方向に沿って交互に反転している。また、本実施形態においては複数の非希土類磁石13はそれぞれ、回転軸11aに沿った方向を厚さ方向とし、回転軸11aと垂直な方向に延びると共に回転軸11a中に中心点を有する円弧帯状をなしている。
【0036】
複数の磁性体部15は、非希土類磁石13同様に、回転軸11aに沿った方向を厚さ方向とし、回転軸11aと垂直な方向に延びると共に回転軸11a中に中心点を有する円弧帯状をなしている。磁性体部15の数は、本実施形態では8個であるが、特に制限されない。磁性体部15の透磁率は、非希土類磁石13の透磁率よりも大きい。磁性体部15は、例えば圧粉鉄心やS45C等の鉄や電気機器用磁性材料等の磁性材料で構成されている。
【0037】
また、複数の非希土類磁石13及び複数の磁性体部15は、ロータ11の一対のステータ21との対向面11S(図2参照)を規定する。
【0038】
また、図3に示すように、一対ステータ21は、それぞれ軟磁性材料からなるステータコア23と、コイル部25とを有する。ステータコア23は、円筒状部材と、円筒状部材からロータ11の方向に突出した複数のティースとを有する。ティースの回転軸11aと垂直な面に沿っての断面は、例えば円弧帯状である。複数のティースの周りには、コイル部25が捲回されている。コイル部25は、通電されることにより一方のステータ21と他方のステータ21との間の領域において、回転軸11aに沿った方向に回転磁束を発生させる。この回転磁束によって生じるトルクによって、ロータ11は回転軸11aの周りに回転する。
【0039】
図5は、非希土類磁石の要素、枠部材、及び、ロータ軸の構成を示す図である。図5では、枠部材17及びロータ軸19と、その他の部材とを、回転軸11aに沿った方向に離間させた状態を示している。
【0040】
枠部材17は、ステンレス鋼等の非磁性材料で構成されている。図5に示すように、枠部材17は、ロータ11の外形を規定するリング状部材17aと、ロータ軸19を固定するロータ軸固定部材17bと、リング状部材からロータ軸固定部材に延びると共に、非希土類磁石13と磁性体部15とを離間させるようにこれらの間に介在する複数の離間部材17cとを有している。また、本実施形態においては、図5に示すように、複数の非希土類磁石13のそれぞれは、回転軸11aの上方と下方にそれぞれに設けられた一対の非希土類磁石要素13aからなる。同様に、複数の磁性体部15のそれぞれは、回転軸11aの上方と下方にそれぞれに設けられた一対の磁性体部要素15aからなる。そして、回転軸11aの上方の複数の非希土類磁石要素13a及び磁性体部要素15aは、リング状部材17a、ロータ軸固定部材17b、及び離間部材17cで規定される領域に、枠部材17の上方からはめ込まれる。同様に、回転軸11aの下方の複数の非希土類磁石要素13a及び磁性体部要素15aは、リング状部材17a、ロータ軸固定部材17b、及び離間部材17cで規定される領域に、枠部材17の下方からはめ込まれる。
【0041】
なお、非希土類磁石13は、必ずしも一対の非希土類磁石要素13aで構成される必要はなく、一つの部材で構成されてもよい。磁性体部15は、必ずしも一対の磁性体部要素15aで構成される必要はなく、一つの部材で構成されてもよい。
【0042】
図6は、ロータを示す斜視図である。図6においては、非希土類磁石13の着磁方向を示す符号(N及びS)を付しており、また、非希土類磁石13、磁性体部15、及び、枠部材17の一部を、回転軸11aと平行な平面で切断した状態を示している。
【0043】
図6に示すように、非希土類磁石13と磁性体部15は、互いに離間している。より具体的には、複数の非希土類磁石13の間には、非磁性体部としての離間部材17c及び空間ギャップ17gを介して複数の磁性体部15が設けられている。即ち、非希土類磁石13と磁性体部15の間には、離間部材17c及び空間ギャップ17gが介在している。
【0044】
なお、本実施形態では、非希土類磁石13と磁性体部15の間において、回転軸11aに沿った方向の上部及び下部に空間ギャップ17gが存在し、これらの間に離間部材17cが存在するが、例えば、回転軸11aに沿った方向の上部及び下部に離間部材17cが存在し、これらの間に空間ギャップ17gが存在してもよい。また、本実施形態では、非希土類磁石13と磁性体部15の間には、離間部材17c及び空間ギャップ17gの両方が介在しているが、離間部材17cのみが介在してもよく、空間ギャップ17gのみが介在してもよい。また、非希土類磁石13と磁性体部15の回転軸11aの周方向に沿った離間距離(即ち、離間部材17c及び/又は空間ギャップ17gの回転軸11aの周方向に沿った幅)は、ロータ11とステータ21間のギャップG(図2参照)の回転軸11aに沿った方向の幅よりも大きいことが好ましい。何故なら、この条件を満たす場合、非希土類磁石13の磁束が回転軸11aに沿って直線的にステータ21へ向かう効果が特に大きくなるためである。
【0045】
また、図6に示すように、複数の非希土類磁石13の着磁方向は、回転軸11aの周方向に沿って交互に反転することが好ましい。これにより、一対のステータ21から発生する回転磁束によって、ロータ11を効率よく回転させることが可能となる。
【0046】
上述のような本実施形態に係るアキシャルギャップモータ10によれば、以下のような理由により、マグネットトルクの減少を抑制することが可能であると共に、リラクタンストルクを増加させることが可能となる。
【0047】
図7は、本実施形態のアキシャルギャップモータのロータ近傍の、回転軸の周方向に沿った模式的な断面を示す図である。
【0048】
図7に示すように、本実施形態のアキシャルギャップモータ10では、複数の非希土類磁石13及び複数の磁性体部15は、ロータ11の一対のステータ21との対向面11Sを規定するため、複数の非希土類磁石13の一対の磁性体部15側の面(対向面11Sの一部)には、ロータバックコア等の部材は何も存在しない。そのため、そのような部材のために非希土類磁石13が薄くなってしまうことはないため、ロータ11全体の体積のうち磁性体部15の体積が占める割合を大きくすることができる。その結果、ロータ11全体の体積のうち非希土類磁石13の体積が占める割合が小さいことに起因するマグネットトルクの減少を抑制することが可能となる。
【0049】
また、非希土類磁石13の着磁方向は回転軸11aの方向に沿っているため、非希土類磁石13が発生する磁束11mによって磁性体部15の一対のステータ21側の面(対向面11Sの一部)が同極に磁化されることはない。そのため、一方のステータ21から他方のステータ21へ向かう磁束21mが磁性体部15内を経由することは妨げられないため、磁性体部15の一対のステータ21側の面が同極に磁化された場合に生じるようなリラクタンストルクの減少の問題は生じない。
【0050】
また、複数の磁性体部15の透磁率は、複数の非希土類磁石13の透磁率よりも大きい上に、複数の非希土類磁石13の一対のステータ21側の面(対向面11Sの一部)には軟磁性材料からなる部材は存在しないため、ステータ21から発生した磁束21mが非希土類磁石13のステータ21側の面の方向に引き寄せられることは抑制される。(仮に、複数の非希土類磁石13の一対のステータ21側の面において、d軸及びq軸に交差する領域にロータバックコア等の軟磁性材料からなる部材が存在すると、ステータ21から発生した磁束21mは非希土類磁石13のステータ21側の面の方向、即ちd軸の方向に引き寄せられる。)
【0051】
そのため、一方のステータ21から発生し他方のステータ21へ向かう磁束21mの大部分は非希土類磁石13を経由することなく、複数の非希土類磁石13間に設けられた磁性体部15内を経由する。その結果、ステータ21から発生した磁束21mの大部分は磁性体部15内に導かれるため、リラクタンストルクを増加させることが可能である。また、非希土類磁石13内を通過する磁束による非希土類磁石13の不可逆減磁は抑制される。その結果、非希土類磁石13内を通過する磁束による非希土類磁石13の不可逆減磁に起因するマグネットトルクの減少を抑制することが可能である。
【0052】
以上のように、本実施形態に係るアキシャルギャップモータ10によれば、マグネットトルクの減少を抑制することが可能であると共に、リラクタンストルクを増加させることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態に係るアキシャルギャップモータ10において、複数の非希土類磁石13の残留磁束密度は、200mT以上、600mT以下であることが好ましい。ただし、複数の非希土類磁石13の残留磁束密度が上記範囲外であっても、アキシャルギャップモータ10は上述の効果を発揮する。
【0054】
また、本実施形態に係るアキシャルギャップモータ10において、複数の非希土類磁石13のリコイル透磁率は、1.0以上、2.0以下であることが好ましい。ただし、複数の非希土類磁石13のリコイル透磁率が上記範囲外であっても、アキシャルギャップモータ10は上述の効果を発揮する。
【0055】
さらに、本実施形態に係るアキシャルギャップモータ10において、複数の非希土類磁石13のそれぞれの体積は、複数の磁性体部15のそれぞれの体積よりも大きいことが好ましい(図3図7参照)。これにより、マグネットトルクの減少を十分に抑制することが可能となる。
【0056】
なお、上述の実施形態においては、ロータ11は、マグネットトルクを発生させるための永久磁石として非希土類磁石13のような非希土類磁石のみを有しているが(図3図6参照)、このような態様に限られない。例えば、ロータ11は、マグネットトルクを発生させるための永久磁石として、非希土類磁石に加えて、希土類磁石を有していてもよい。
【0057】
本実施形態のアキシャルギャップモータ10は、例えばハイブリッド自動車、電気自動車等の自動車や、エアコン、冷蔵庫、洗濯機等の家電製品に利用することができる。
【0058】
次に、実施例のアキシャルギャップモータについて、磁石温度は75℃で一定、定格電流密度は22Arms/mmで一定の条件で、電流位相を0°(0deg)から90°(90deg)まで変化させて3D−FTA解析を行った場合の平均トルクの推移について調査した。図8は、本解析で用いた実施例の諸条件を示す図である。図9は、上記解析に基づく、実施例の平均トルク及びマグネットトルクの電流位相角依存である。図9に示すように、平均トルクの最大値は、プロットAにおける値、即ち、電流位相角が50°(50deg)における355.0Nmであった。このときのトルク密度は40.3Nm/Lであり、実用レベルに十分に満たしていた。これにより、例えば出力密度5.68kW/L、即ち、出力50.2kWを達成するのに、規定速度を1350rpm程度まで下げられることがわかった。
【0059】
また、図9においては、電流位相角度が0°(0deg)の場合の平均トルクと基準としたマグネットトルクの大まかな推移も示している。図9に示すように、平均トルクが最大となる電流位相角50°において、平均トルク中のマグネットトルクの割合は約36%であり、平均トルク中のリラクタンストルクの割合は約64%であることがわかった。これにより、実施例のアキシャルギャップモータの平均トルクにおいて、リラクタンストルクが支配的であり、リラクタンストルクを有効に利用できていることがわかった。
【0060】
図10は、上記解析に基づく、ロータのフェライト磁石の減磁体積比の電流密度依存性の解析結果を示す図である。減磁体積比とは、磁石全体に対する不可逆減磁が発生した部分の割合を示す値である。この解析は、回転角度を0°で一定、電流位相角を90°で一定という不可逆減磁が最も発生しやすい条件において、電流密度を変化させながら行った。また、フェライト磁石は低温状態であると不可逆減磁が生じやすいため、フェライト磁石の温度は、−20℃で一定とした。
【0061】
図10に示すように、電流密度が低いときには、不可逆減磁は殆ど発生しなかった。定格電流密度である22Arms/mmにおいて減磁体積比は約5.6%であった。実施例においては、コアの永久磁石として不可逆減磁の生じやすいフェライト磁石を用い、さらに低温状態で22Arms/mmという大きな電流を流した場合であっても、不可逆減磁は僅かにしか生じないことがわかった。
【0062】
次に、実施例のアキシャルギャップモータについて、スロット数(ステータ21が有するコイル部25の数)と、非希土類磁石13の不可逆減磁に起因するU相鎖交磁束の減少率について調べた。
【0063】
具体的には、スロット数が、15、18、24の3個の実施例に係るアキシャルギャップモータを準備した。これらの実施例のコイルの巻線の総量がそれぞれ同一となるように、ステータ21のステータコア23とコイル部25の形状を決定した。その結果、スロット数が15、18、24の実施例に係るアキシャルギャップモータのターン数(コイルの巻数)は、それぞれ順に20、17、13となった。極数(ロータ11が有する非希土類磁石13の数)は、3個の実施例全てにおいて10とした。
【0064】
これらの実施例について、回転角度0deg一定、定格電流密度22Arms/mm一定、磁石温度―20℃、又は、75℃、電流位相角90deg一定、の条件で、減磁に関する解析を行い、U相鎖交磁束の減少率を求めた。
【0065】
図11は、スロット数とU相鎖交磁束の減少率の関係を示す図である。図11に示すように、スロット数が15〜24の範囲の実施例においては、スロット数が増加する程、U相鎖交磁束の減少率が小さくなった。磁石温度が−20℃の場合、スロット数が18の実施例のU相鎖交磁束の減少率は約4.9%となり、スロット数が25の実施例のU相鎖交磁束の減少率は約1.7%となった。これにより、スロット数が15〜24の範囲の実施例においては、スロット数が増加する程、不可逆減磁に対する耐性が高くなることが分かった。
【0066】
次に、実施例のアキシャルギャップモータについて、スロット数を24に固定した場合のターン数と平均トルクとの関係を調べた。
【0067】
具体的には、ターン数が13、14、15、16、17、18の6個の実施例に係るアキシャルギャップモータを準備した。スロット数は6個の実施例全てにおいて、24とした。極数は、6個の実施例全てにおいて10とした。
【0068】
これらの実施例について、磁石温度75℃一定、定格電流密度22Arms/mm一定、電流位相角40deg一定の条件で、平均トルクに関する解析を行った。
【0069】
図12は、実施例のアキシャルギャップモータについて、ターン数と、平均トルク及びU相鎖交磁束の減少率との関係を示す図である。図12に示すように、ターン数が16場合に、平均トルクは最大値(330.3Nm)となった。U相鎖交磁束の減少率は、ターン数の増加と共に、増加した。ターン数が15である場合、平均トルクも十分に大きく、U相鎖交磁束の減少率は2.7%と非常に小さい値となった。これらの結果より、平均トルクとU相鎖交磁束の減少率とを両方考慮した場合、最適なターン数は15であることがわかった。
【0070】
次に、実施例のアキシャルギャップモータについて、非希土類磁石13の回転軸11aの周方向に沿った方向の幅と、トルクの大きさ及びトルクリプルとの関係を調べた。
【0071】
具体的には、非希土類磁石13の幅(非希土類磁石13の回転軸11aの周方向に沿った方向の幅)を、18degから26.4degまで、1.2deg刻みで変更した8個の実施例に係るアキシャルギャップモータを準備した。スロット数は8個全ての実施例において24とした。ターン数は8個全ての実施例において15とした。極数は8個の実施例全てにおいて10とした。
【0072】
これらの実施例について、磁石温度75℃一定、定格電流密度22Arms/mm一定、電流位相角40deg一定の条件で、平均トルクに関する解析を行った。
【0073】
図13は、実施例のアキシャルギャップモータについて、非希土類磁石の幅と平均トルク及びトルクリプルとの関係を示す図である。図12に示すように、トルクリプルは、非希土類磁石の幅が18degから26.4degまでの範囲において、9%未満の非常に小さい値となった。また、平均トルクは、非希土類磁石の幅が24degである場合に最大値となった。これらの結果より、最適な非希土類磁石の幅が24degであることがわかった。
【符号の説明】
【0074】
10・・・アキシャルギャップモータ、11・・・ロータ、11S・・・ロータのステータとの対向面、13・・・非希土類磁石、15・・・磁性体部、17c・・・非磁性体部(離間部材)、17g・・・空間ギャップ、21・・・ステータ、G・・・ギャップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13