特許第5673963号(P5673963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5673963ポジ型レジスト組成物及びマイクロレンズの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5673963
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】ポジ型レジスト組成物及びマイクロレンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20150129BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20150129BHJP
   G03F 7/022 20060101ALI20150129BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20150129BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   G03F7/004 501
   G03F7/023
   G03F7/022 601
   G02B1/04
   G02B3/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2011-551818(P2011-551818)
(86)(22)【出願日】2011年1月19日
(86)【国際出願番号】JP2011050854
(87)【国際公開番号】WO2011093188
(87)【国際公開日】20110804
【審査請求日】2013年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2010-14505(P2010-14505)
(32)【優先日】2010年1月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】湯川 昇志郎
(72)【発明者】
【氏名】荒瀬 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】武山 敏明
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】毛呂 健夫
【審査官】 石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−266487(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/029898(WO,A1)
【文献】 特開平06−095386(JP,A)
【文献】 特開2008−007782(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/092947(WO,A1)
【文献】 特開2008−065303(JP,A)
【文献】 特開2006−154779(JP,A)
【文献】 特開2010−001424(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/007915(WO,A1)
【文献】 特開平08−325481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分:
(A)成分:アルカリ可溶性ポリマー、
(B)成分:光分解しアルカリ可溶性基を生ずる有機基を有する化合物、
(C)成分:式(1):
【化1】
〔R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して炭素原子数1〜6の分岐を有していても良いアルキレン基又はオキシアルキレン基を表し、E1、E2、及びE3はそれぞれ独立して式(2)、又は式(3):
【化2】
(式中R4は水素原子又はメチル基を表す。)で表される構造を含む基を表す。〕で表される架橋性化合物、
(D)成分:溶剤、
を含むポジ型レジスト組成物。
【請求項2】
(A)成分のアルカリ可溶性ポリマーが、ヒドロキシ基、カルボキシル基、又はその組み合わせを繰り返し単位に含む重合体である、請求項1に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項3】
(A)成分のアルカリ可溶性ポリマーが、ヒドロキシ基、カルボキシル基、又はその組み合わせを有するモノマーと、疎水性基を有するモノマーとの共重合体である、請求項1又は請求項2に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項4】
(B)成分が式(4):
【化3】
〔式(4)中、R5は水素原子又は式(5):
【化4】
(式(5)中、R7は単結合、又は−SO3−基を表し、R8は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、m4は0〜3の整数を表す。)で表される構造を表し、R6は炭素原子数1〜10の置換又は未置換のアルキル基、ハロゲン原子、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表す。m3は0又は1の整数を表し、m3が0の時は、m1は1〜5の整数を表し、m2は0≦m2≦(5−m1)を満たす整数を表し、m3が1の時は、m1は1〜7の整数を表し、m2は0≦m2≦(7−m1)を満たす整数を表す。ただしR5は10〜100モル%が上記式(5)で表される構造を表す。〕で表される構造を有する化合物である、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項5】
(B)成分が式(6):
【化5】
(式(6)中、R5、R6は上記式(4)で表されるものと同一であり、R7は水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、m5は0〜10の整数を表し、m6は1〜5の整数を表し、m7は0≦m7≦(5−m6)を満たす整数を表し、m8は0〜1の整数を表し、m9は0〜5の整数を表し、m10は0≦m10≦(5−m8−m9)を満たす整数を表す。ただしR5は10〜100モル%が上記式(5)で表される構造を表す。)で表される化合物である、請求項4に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項6】
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分:
(A)成分:アルカリ可溶性ポリマー、
(B)成分:光分解しアルカリ可溶性基を生ずる有機基を有する化合物、
(C)成分:式(1):
【化1】
〔R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して炭素原子数1〜6の分岐を有していても良いアルキレン基又はオキシアルキレン基を表し、E1、E2、及びE3はそれぞれ独立して式(2):
【化2】
(式中R4は水素原子又はメチル基を表す。)で表される構造を含む基を表し、この際、式(2)で表される有機基の割合は、式(1)中のE1とE2とE3の合計モル数に対して67〜100モル%の割合であり、そして残部のE1、E2、又はE3は式(7):
【化6】
(式(7)中、R4は水素原子又はメチル基を表す。)で表される。〕で表される架橋性化合物、
(D)成分:溶剤、
を含むポジ型レジスト組成物。
【請求項7】
厚さ1.0μmの組成物膜を形成したときに波長400〜730nmの光に対する透過率が80%以上の塗膜物性を有する、請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物を基板上に塗布
し、乾燥し、露光し、そして現像する工程を含むパターン形成方法。
【請求項9】
露光後、現像前に加熱工程を含む、請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載のパターン形成方法で製造されたマイクロレンズ又は平坦化膜を含む固体撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は架橋剤としてトリアジン骨格を有する多官能エポキシ化合物を含有するポジ型レジスト組成物に関するものである。この組成物は特に平坦化膜及びマイクロレンズ材料として用いるのに好適である。
【背景技術】
【0002】
電荷結合素子(CCD)等の撮像素子用マイクロレンズは、主に微細なパターン形成により高精細な撮像素子を作製することが可能であり、この微細パターンはフォトレジストを用いて作製される。具体的には、高分子樹脂と感光剤とを含むレジスト組成物を基板上に塗布し製膜した後、フォトリソグラフィー法でパターニング、現像することで一つのパターンを形成し、マイクロレンズを作製する。このため、マイクロレンズ材料として用いられるレジスト組成物には高感度であること、パターン形成能に優れることが求められる。また、形成されたレンズパターンは半田付け工程において高温条件に曝されるため、前記レジスト組成物には、形成されるレンズパターンが所望の曲率半径を有し、耐熱性、透明性が高いことも求められる。
【0003】
上記の要求特性の中で重要なものの一つとして、感度が挙げられる。感度の向上は工業的な生産において生産時間の短縮につながり、昨今の撮像素子の需要が大幅に高まっていく現在、非常に重要な特性の一つとなっている。また、感度が十分でない場合には所望のパターンを解像することができず、良好なレンズ形状を形成することができなくなる。材料中のポリマーのアルカリ現像液への溶解性を高めることで感度を向上させることも可能であるが、ポリマーの組成を変更することは屈折率、吸湿性等の他の特性への影響が大きいため限界がある。
また、感度とともにマイクロレンズ材料に求められる重要な特性として、透明性及び耐熱性が挙げられる。通常、マイクロレンズを有するカメラなどのモジュールは、電子回路が作りこまれた基板に実装される。この実装では、鉛含有はんだが従来使用されてきたが、鉛は人体及び環境に有害であるため、近年、鉛を含まない無鉛はんだの使用が提唱されている。鉛以外の金属を用いた無鉛はんだは、鉛含有はんだよりも融点が高い。そのため、実装工程において、無鉛はんだを用いた場合には、鉛含有はんだを用いる場合よりも高い温度での加熱処理が必要となる。この際、耐熱性が十分でない材料では透明性が低下するという問題が生ずる。そして耐熱性の高いレジスト組成物(マイクロレンズ材料)を得るには、樹脂のみならず使用する架橋性化合物、感光材及びその他の添加材についても耐熱性に優れることが求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したように、マイクロレンズ材料として種々の特性を満足するレジスト組成物が求められる中、特に架橋性化合物は耐熱黄変性が十分でないものが多く、レジスト組成物の耐熱性を低下させる要因となっている。
例えば、架橋性化合物としては、高い耐熱性を有するトリアジントリオン環と溶解性を有する長鎖アルキレン鎖を有する化合物として、長鎖アルキレン鎖を有するエポキシ化合物(特許文献1、2、3を参照)が開示されているものの、こうした高い耐熱性が期待できる化合物をレジスト組成物に適用した提案はなされていない。
このように、従来提案されたレジスト組成物にあっては、高感度でありながら十分な耐熱性を有するといった種々の性能を満足できるものではなかった。
【0005】
従って本発明は透明性、耐熱性、感度特性に優れ、現像液に対する溶解性に優れその結果解像性の高いマイクロレンズ形成用に好適なレジスト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、レジスト組成物においトリアジン骨格を有する特定の多官能エポキシ化合物を架橋性化合物として採用することにより、高感度であり且つ耐熱性、透明性に優れた材料となることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、第1観点として、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分:
(A)成分:アルカリ可溶性ポリマー、
(B)成分:光分解しアルカリ可溶性基を生ずる有機基を有する化合物、
(C)成分:式(1):
【化1】
〔R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して炭素原子数1〜6の分岐を有していても良いアルキレン基又はオキシアルキレン基を表し、E1、E2、及びE3はそれぞれ独立して式(2)、又は式(3):
【化2】
(式中R4は水素原子又はメチル基を表す。)で表される構造を含む基を表す。〕で表される架橋性化合物、
(D)成分:溶剤、
を含むポジ型レジスト組成物に関する。
第2観点として、(A)成分のアルカリ可溶性ポリマーが、ヒドロキシ基、カルボキシル基、又はその組み合わせを繰り返し単位に含む重合体である、第1観点に記載のポジ型レジスト組成物に関する。
第3観点として、(A)成分のアルカリ可溶性ポリマーが、ヒドロキシ基、カルボキシル基、又はその組み合わせを有するモノマーと、疎水性基を有するモノマーとの共重合体である、第1観点又は第2観点に記載のポジ型レジスト組成物に関する。
第4観点として、(B)成分が式(4):
【化3】
〔式(4)中、R5は水素原子又は式(5):
【化4】
(式(5)中、R7は単結合、又は−SO3−基を表し、R8は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、m4は0〜3の整数を表す。)で表される構造を表し、R6は炭素原子数1〜10の置換又は未置換のアルキル基、ハロゲン原子、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表す。m3は0又は1の整数を表し、m3が0の時は、m1は1〜5の整数を表し、m2は0≦m2≦(5−m1)を満たす整数を表し、m3が1の時は、m1は1〜7の整数を表し、m2は0≦m2≦(7−m1)を満たす整数を表す。ただしR5は10〜100モル%が上記式(5)で表される構造を表す。〕で表される構造を有する化合物である、第1観点乃至第3観点のうちいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物に関する。
第5観点として、(B)成分が式(6):
【化5】
(式(6)中、R5、R6は上記式(4)で表されるものと同一であり、R7は水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、m5は0〜10の整数を表し、m6は1〜5の整数を表し、m7は0≦m7≦(5−m6)を満たす整数を表し、m8は0〜1の整数を表し、m9は0〜5の整数を表し、m10は0≦m10≦(5−m8−m9)を満たす整数を表す。ただしR5は10〜100モル%が上記式(5)で表される構造を表す。)で表される化合物である、第4観点に記載のポジ型レジスト組成物に関する。
第6観点として、(C)成分の架橋性化合物は、式(1)中のE1、E2、E3、又はこれらE1〜E3から選択される2種以上が式(7):
【化6】
(式中、R4は水素原子又はメチル基を表す。)で表される有機基を有するものである、第1観点乃至第5観点のうちいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物に関する。
第7観点として、厚さ1.0μmの組成物膜を形成したときに波長400〜730nmの光に対する透過率が80%以上の塗膜物性を有する、第1観点乃至第6観点のうちいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物に関する。
第8観点として、第1観点乃至第6観点のうちいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物を基板上に塗布し、乾燥し、露光し、そして現像する工程を含むパターン形成方法に関する。
第9観点として、露光後、現像前に加熱工程を含む、第8観点に記載のパターン形成方法に関する。
第10観点として、第8観点又は第9観点に記載のパターン形成方法で製造されたマイクロレンズ又は平坦化膜を含む固体撮像素子に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポジ型レジスト組成物は、トリアジントリオン環骨格を有する多官能エポキシ化合物を架橋剤として用いることにより、該組成物を用いて得られる塗膜は高感度でありかつ現像液に対する溶解性に優れ、そして得られる硬化膜は透明性及び耐熱性が高く、溶剤耐性にも優れたものとすることができる。特に本発明から得られる膜厚1.0μmの硬化膜は波長400〜730nmにおいて透過率80%以上というすぐ偉た透明性を有する。
このため、本発明のポジ型レジスト組成物は、マイクロレンズ用材料、及びマイクロレンズを形成する為の平坦化膜材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、平坦化膜やマイクロレンズ材料に好適な組成物を対象とする。
マイクロレンズが適用される用途の一つに、光学映像を電気的な信号に変換させる半導体装置であるイメージセンサーが挙げられる。イメージセンサーは照射される光を感知するフォトダイオード(光感知素子)と、それを電気信号に変換する部分とから構成される。フォトダイオードの受光量が大きければ大きいほど、イメージセンサーの光に対する感度は高くなる。この受光量を高める集光技術の一つとして前述のマイクロレンズを形成する方法が採用されている。具体的には、フォトダイオードの上部に光透過率の高い物質で凸状マイクロレンズを作り、そのマイクロレンズにより入射光の経路を屈折させて多くの光をフォトダイオード上に集光させるものである。より詳細には、基板上に形成されたフォトダイオード上に層間絶縁層が形成され、その上に保護膜が形成され、その上にR/G/Bからなるカラーフィルター層が形成される。さらにカラーフィルター上に平坦化膜が形成され、その上にマイクロレンズが形成されることとなる。このように、マイクロレンズ材料は光学材料としての高い透明性が求められる。
従来、マイクロレンズの形成にはポジ型感光性材料(レジスト材料)が用いられており、具体的には、平坦化層上にポジ型レジスト組成物を塗布して乾燥することによりポジ型レジスト層を形成し、露光と現像によりポジ型レジストパターンを形成し、その後、熱リフロー等により凸状のマイクロレンズを形成する。レンズの形状は現像後のパターン形状に依存し、そしてレンズの曲率や形成された高さなどのレンズ形状に関する因子が集光効率を左右することとなる。このためマイクロレンズ材料には、集束される光の焦点を考慮して任意のレンズ形状を形成できること、すなわち、感度、パターニング性が良好であることも求められる。
また、マイクロレンズの下層に存在する平坦化膜層も、均一な面を形成する事によりマイクロレンズの均一な光軸形成にとって重要な役割を担い、そしてフォトダイオードへの集光効率をより高めるには、やはり透明性の高い平坦化膜層が求められる。平坦化膜層に配線のための開口部を設ける場合もあることから、パターニング性も良好であることが望ましい。
本発明は、マイクロレンズや平坦化膜に求められる上述の性能を備える材料であるポジ型レジスト組成物を提供すべくなされたものであり、以下に該組成物に含まれる各成分について詳述する。
【0010】
本発明は下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分:
(A)成分:アルカリ可溶性ポリマー、
(B)成分:光分解しアルカリ可溶性基を生ずる有機基を有する化合物、
(C)成分:前記式(1)で表される架橋性化合物、
(D)成分:溶剤、を含むポジ型レジスト組成物である。
前記式(1)中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して炭素原子数1〜6の分岐を有していても良いアルキレン基又はオキシアルキレン基を表し、E1、E2、及びE3はそれぞれ独立して前記式(2)又は前記式(3)で表される構造を含む基を表す。
また本発明のポジ型レジスト組成物は、更に必要に応じて後述の(E)成分:界面活性剤及び/又は(F)成分:密着促進剤を含有することができる。
【0011】
本発明のポジ型レジスト組成物において、その固形分は3〜50質量%、好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは7〜30質量%である。固形分とはポジ型レジスト組成物より溶剤を除去した残りの成分の割合である。
上記固形分中で(A)成分の含有量は、8〜90質量%、好ましくは40〜90質量%、更に好ましくは50〜80質量%である。
また、固形分中で(B)成分の含有量は、1〜90質量%、好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは10〜30質量%である。(B)成分の割合がこの下限値以下の場合は、露光部と未露光部の現像液への溶解度差が小さくなり、現像によるパターニングが困難になる場合がある。また、上限値を超える場合には短時間の露光では(B)成分(例えば1,2−ナフトキノンジアジド化合物)が充分に分解されないため、感度が低下する場合や、また(B)成分が光を吸収してしまい硬化膜の透明性を低下させてしまう場合がある。
また、固形分中での(C)成分の含有量は、0.24〜45質量%、好ましくは0.56〜40質量%、0.80〜35質量%である。架橋性化合物の含有量が少ない場合には、架橋性化合物によって形成される架橋の密度が十分ではないため、使用する目的によってはパターン形成後の耐熱性、耐溶剤性、長時間焼成耐性等の耐プロセス性を向上させる効果が十分に得られない場合がある。一方、架橋性化合物の含有量が上記数値範囲を超える場合、使用する目的によっては未架橋の架橋性化合物が存在し、解像度が低下したり、或いはパターン形成後の耐熱性、耐溶剤性、長時間焼成耐性等の耐プロセス性が低下し、また、レジスト組成物の保存安定性が悪くなる場合がある。
以下に各成分について詳述する。
【0012】
[(A)成分:アルカリ可溶性ポリマー]
(A)成分のアルカリ可溶性ポリマーとしては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、又はその組み合わせ、すなわちヒドロキシ基及びカルボキシル基を繰り返し単位に含む重合体を使用することができる。
例えば、前記重合体を構成するモノマーとして、ヒドロキシ基を含有するモノマー、カルボキシル基を含有する単量体、並びの双方の基を有するモノマーを用いることができ、これらモノマーを単独で用いて得られる重合体又は他の共重合性モノマーと共に用いて得られる共重合体をアルカリ可溶性ポリマーとして使用することができる。
【0013】
(A)成分のアルカリ可溶性ポリマーを構成するカルボキシル基を有するモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、4−ビニル安息香酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などのジカルボン酸、並びにこれらジカルボン酸の無水物を挙げることができる。これらカルボキシル基を有するモノマーと、他の共重合性モノマーとを共重合させる場合、前記カルボキシル基を有するモノマーは、共重合に使用する全モノマー当たり、好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは10〜50質量%の割合で使用する。前記カルボキシル基を有するモノマーの使用量が10質量%未満であると、ポジ型レジスト組成物を露光後の現像性が低下することがあり、一方、これらの使用量が70質量%を越えると、所定の残膜率が得られない場合がある。
【0014】
また、(A)成分のアルカリ可溶性ポリマーを構成するヒドロキシ基を有するモノマーとしては、例えば4−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートなどのフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーを挙げることができる。これらヒドロキシ基を有するモノマーと、他の共重合性モノマーとを共重合させる場合、前記ヒドロキシ基を有するモノマーは、共重合に使用する全モノマー当たり、好ましくは30〜100質量%、特に好ましくは50〜100質量%の割合で使用する。前記ヒドロキシ基を有するモノマーの使用量が30質量%未満の場合は、アルカリ可溶性重合体の現像性が低下する傾向にある。
【0015】
(A)成分のアルカリ可溶性ポリマーは、前述のカルボキシル基、ヒドロキシ基又はその組み合わせを有するモノマーと、他の共重合性モノマーとの共重合体である場合、他の共重合性モノマーとして疎水性基を有するモノマーを使用できる。ここで用いられる疎水性基を有するモノマーとしては、例えばメチルメタクリレート、エチルメクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸−β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸−β−プロピルグリシジル、α−チルアクリル酸−β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸−3−エチル−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸−4−メチル−4,5−エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸−5−メチル−5,6−エポキシヘキシル、3−エチル−3−オキセタニルメタクリレート、3−エチル−3−オキセタニルアクリレートなどの不飽和二重結合を有する環状エーテル類、メチルアクリレート、イソプロピルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル、シクロヘキシルメタクリレート、2−メチルシクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルメタクリレート、イソボロニルメタクリレートなどのメタクリル酸環状アルキルエステル、シクロヘキシルアクリレート、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルアクリレート、イソボロニルアクリレートなどのアクリル酸環状アルキルエステル、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミドなどのN−置換マレイミド、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸アリールエステル、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸アリールエステル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなどのジカルボン酸ジエステル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシアルキルエステル、及びスチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン、2−ビニルナフタレン、4−ビニルビフェニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、フェニルマレイイミド、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレートなどが挙げられる。
これらのうち、スチレン、t−ブチルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、p−メトキシスチレン、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、1,3−ブタジエン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸−β−メチルグリシジル、3−エチル−3−オキセタニルメタクリレート、2−ビニルナフタレン、4−ビニルビフェニルなどが共重合反応性、分子量分布のコントロール性及びアルカリ水溶液に対する溶解性の点から好ましい。これらは、単独であるいは組み合わせて用いられる。
【0016】
(A)成分のアルカリ可溶性ポリマーの合成に用いられる溶剤としては、具体的には、例えばメタノール、エタノールなどのアルコール類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルなどのジエチレングリコール類、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテルなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートプロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールブチルエーテルプロピオネートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類、及び酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロピル、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸ブチル、ブトキシ酢酸メチル、ブトキシ酢酸エチル、ブトキシ酢酸プロピル、ブトキシ酢酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸ブチル、2−ブトキシプロピオン酸メチル、2−ブトキシプロピオン酸エチル、2−ブトキシプロピオン酸プロピル、2−ブトキシプロピオン酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸プロピル、3−エトキシプロピオン酸ブチル、3−プロポキシプロピオン酸メチル、3−プロポキシプロピオン酸エチル、3−プロポキシプロピオン酸プロピル、3−プロポキシプロピオン酸ブチル、3−ブトキシプロピオン酸メチル、3−ブトキシプロピオン酸エチル、3−ブトキシプロピオン酸プロピル、3−ブトキシプロピオン酸ブチルなどのエステル類が挙げられる。この溶剤は本発明のポジ型レジスト組成物の溶剤(D)としても用いることができる。
【0017】
(A)成分のアルカリ可溶性ポリマーの合成に用いられる重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用でき、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどの有機過酸化物;及び過酸化水素が挙げられる。ラジカル重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、過酸化物を還元剤とともに用いてレドックス型開始剤としてもよい。
【0018】
(A)成分のアルカリ可溶性ポリマーの合成においては、分子量を調整するために分子量調整剤を使用することができる。その具体例としては、クロロホルム、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類、ジメチルキサントゲンスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン類、ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0019】
本発明で用いられる(A)成分のアルカリ可溶性ポリマーは、ポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という)が、通常、2×103〜1×105、好ましくは5×103〜5×104であることが望ましい。Mwが2×103未満であると、得られる被膜は、現像性、残膜率などが低下したり、またパターン形状、耐熱性などに劣ることがあり、一方1×105を超えると、感度が低下したりパターン形状に劣ることがある。
【0020】
上記のように本発明における(A)成分のアルカリ可溶性ポリマーは、ヒドロキシ基及び/又はカルボキシル基を含有する重合体であり、アルカリ水溶液に対して適切な溶解性を有する。このような(A)成分を含む本発明のポジ型レジスト組成物は、現像する際に現像残りを生じることなく、また膜減りすることなく、容易に所定パターンを有する塗膜を形成することができる。
【0021】
[(B)成分:光分解しアルカリ可溶性基を生ずる有機基を有する化合物]
(B)成分としては光分解しアルカリ可溶性基を生ずる有機基を有する化合物であり、具体的には、前記式(4)で表される部分構造を有する1,2−ナフトキノンジアジド化合物を用いることができる。
本発明のポジ型レジスト組成物が被覆された塗膜をフォトマスクを用いて露光し現像すると、露光部に存在する(B)成分に含まれる1,2−ナフトキノンジアジド基は光照射を受けてケテンに変換され、生じたケテンは反応性が高く、水分と接触し、カルボキシル基を生成する。即ち、露光部においてレジスト組成物は1,2−ナフトキノンジアジド基が露光によりインデンカルボン酸を生じるため現像液に可溶になり、未露後部との溶解性の差異によりパターンを形成することができる。
【0022】
式(4)中、R5は水素原子又は前記式(5)で表される構造を表す。R6は炭素原子数1〜10の置換又は未置換のアルキル基、ハロゲン原子、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表す。m3は0又は1の整数を表し、m3が0の時は、m1は1〜5の整数を表し、m2は0≦m2≦(5−m1)を満たす整数を表し、m3が1の時は、m1は1〜7の整数を表し、m2は0≦m2≦(7−m1)を満たす整数を表す。
ただし、R5は10〜100モル%が上記式(5)で表される構造を表す。すなわちこれは、式(4)で表される構造を有する化合物中に含まれる基R5の総モル数に対して、10〜100モル%の基R5が式(5)で表される構造であることを示す。
また式(5)中、R7は単結合、又は−SO3−基を表し、R8は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、m4は0〜3の整数を表す。
【0023】
上記炭素原子数1〜10のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、1−メチル−シクロプロピル、2−メチル−シクロプロピル、n−ペンチル、1−メチル−n−ブチル、2−メチル−n−ブチル、3−メチル−n−ブチル、1,1−ジメチル−n−プロピル、1,2−ジメチル−n−プロピル、2,2−ジメチル−n−プロピル、1−エチル−n−プロピル、シクロペンチル、1−メチル−シクロブチル、2−メチル−シクロブチル、3−メチル−シクロブチル、1,2−ジメチル−シクロプロピル、2,3−ジメチル−シクロプロピル、1−エチル−シクロプロピル、2−エチル−シクロプロピル、n−ヘキシル、1−メチル−n−ペンチル、2−メチル−n−ペンチル、3−メチル−n−ペンチル、4−メチル−n−ペンチル、1,1−ジメチル−n−ブチル、1,2−ジメチル−n−ブチル、1,3−ジメチル−n−ブチル、2,2−ジメチル−n−ブチル、2,3−ジメチル−n−ブチル、3,3−ジメチル−n−ブチル、1−エチル−n−ブチル、2−エチル−n−ブチル、1,1,2−トリメチル−n−プロピル、1,2,2−トリメチル−n−プロピル、1−エチル−1−メチル−n−プロピル、1−エチル−2−メチル−n−プロピル、シクロヘキシル、1−メチル−シクロペンチル、2−メチル−シクロペンチル、3−メチル−シクロペンチル、1−エチル−シクロブチル、2−エチル−シクロブチル、3−エチル−シクロブチル、1,2−ジメチル−シクロブチル、1,3−ジメチル−シクロブチル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2,3−ジメチル−シクロブチル、2,4−ジメチル−シクロブチル、3,3−ジメチル−シクロブチル、1−n−プロピル−シクロプロピル、2−n−プロピル−シクロプロピル、1−i−プロピル−シクロプロピル、2−i−プロピル−シクロプロピル、1,2,2−トリメチル−シクロプロピル、1,2,3−トリメチル−シクロプロピル、2,2,3−トリメチル−シクロプロピル、1−エチル−2−メチル−シクロプロピル、2−エチル−1−メチル−シクロプロピル、2−エチル−2−メチル−シクロプロピル及び2−エチル−3−メチル−シクロプロピル等が挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
上記炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、1−メチル−n−ブトキシ、2−メチル−n−ブトキシ、3−メチル−n−ブトキシ、1,1−ジメチル−n−プロポキシ、1,2−ジメチル−n−プロポキシ、2,2−ジメチル−n−プロポキシ、1−エチル−n−プロポキシ、n−ヘキシルオキシ、1−メチル−n−ペンチルオキシ、2−メチル−n−ペンチルオキシ、3−メチル−n−ペンチルオキシ、4−メチル−n−ペンチルオキシ、1,1−ジメチル−n−ブトキシ、1,2−ジメチル−n−ブトキシ、1,3−ジメチル−n−ブトキシ、2,2−ジメチル−n−ブトキシ、2,3−ジメチル−n−ブトキシ、3,3−ジメチル−n−ブトキシ、1−エチル−n−ブトキシ、2−エチル−n−ブトキシ、1,1,2−トリメチル−n−プロポキシ、1,2,2,−トリメチル−n−プロポキシ、1−エチル−1−メチル−n−プロポキシ、及び1−エチル−2−メチル−n−プロポキシ等が挙げられる。
【0024】
(B)成分としては、具体的には前記式(6)で表される化合物を用いることができる。式(6)中、R5、R6は上記式(4)で表されるものと同一であり、R7は水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、m5は0〜10の整数を表し、m6は1〜5の整数を表し、m7は0≦m7≦(5−m6)を満たす整数を表し、m8は0〜1の整数を表し、m9は0〜5の整数を表し、m10は0≦m10≦(5−m8−m9)を満たす整数を表す。ただし、R5は10〜100モル%が上記式(5)で表される構造を表す。すなわちこれは、式(6)で表される化合物中に含まれる基R5の総モル数に対して、10〜100モル%の基R5が式(5)で表される構造であることを示す。
【0025】
(B)成分の具体例として、下記式(B−1)〜(B−5)で表される化合物を挙げることができる。
【化7】
上記式(B−1)〜(B−5)中、Dは水素原子又は前記式(5)で表される1,2−ナフトキノンジアジド基を表す。
【0026】
また、本発明に用いられる(B)成分として、下記(B−6)〜(B−10)で表される化合物も例示できる。
【化8】
上記式(B−6)〜(B−10)中、Dは水素原子又は式(5)で表される1,2−ナフトキノンジアジド基を表す。
【0027】
[(C)成分:式(1)で表される架橋性化合物]
本発明に用いられる(C)成分としては、前記式(1)で表される架橋性化合物を用いることができる。
式(1)中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して炭素原子数1〜6の分岐を有していても良いアルキレン基、又はオキシアルキレン基を表す。
1、E2、及びE3はそれぞれ独立して前記式(2)、又は前記式(3)で表される構造を含む基を表す。また式(2)中、R4は水素原子又はメチル基を表す。
【0028】
上記炭素原子数1〜6のアルキレン基としては、例えばメチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、シクロプロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、s−ブチレン、t−ブチレン、シクロブチレン、1−メチル−シクロプロピレン、2−メチル−シクロプロピレン、n−ペンチレン、1−メチル−n−ブチレン、2−メチル−n−ブチレン、3−メチル−n−ブチレン、1,1−ジメチル−n−プロピレン、1,2−ジメチル−n−プロピレン、2,2−ジメチル−n−プロピレン、1−エチル−n−プロピレン、シクロペンチレン、1−メチル−シクロブチレン、2−メチル−シクロブチレン、3−メチル−シクロブチレン、1,2−ジメチル−シクロプロピレン、2,3−ジメチル−シクロプロピレン、1−エチル−シクロプロピレン、2−エチル−シクロプロピレン、n−ヘキシレン、1−メチル−n−ペンチレン、2−メチル−n−ペンチレン、3−メチル−n−ペンチレン、4−メチル−n−ペンチレン、1,1−ジメチル−n−ブチレン、1,2−ジメチル−n−ブチレン、1,3−ジメチル−n−ブチレン、2,2−ジメチル−n−ブチレン、2,3−ジメチル−n−ブチレン、3,3−ジメチル−n−ブチレン、1−エチル−n−ブチレン、2−エチル−n−ブチレン、1,1,2−トリメチル−n−プロピレン、1,2,2−トリメチル−n−プロピレン、1−エチル−1−メチル−n−プロピレン、1−エチル−2−メチル−n−プロピレン、シクロヘキシレン、1−メチル−シクロペンチレン、2−メチル−シクロペンチレン、3−メチル−シクロペンチレン、1−エチル−シクロブチレン、2−エチル−シクロブチレン、3−エチル−シクロブチレン、1,2−ジメチル−シクロブチレン、1,3−ジメチル−シクロブチレン、2,2−ジメチル−シクロブチレン、2,3−ジメチル−シクロブチレン、2,4−ジメチル−シクロブチレン、3,3−ジメチル−シクロブチレン、1−n−プロピル−シクロプロピレン、2−n−プロピル−シクロプロピレン、1−イソプロピル−シクロプロピレン、2−イソプロピル−シクロプロピレン、1,2,2−トリメチル−シクロプロピレン、1,2,3−トリメチル−シクロプロピレン、2,2,3−トリメチル−シクロプロピレン、1−エチル−2−メチル−シクロプロピレン、2−エチル−1−メチル−シクロプロピレン、2−エチル−2−メチル−シクロプロピレン及び2−エチル−3−メチル−シクロプロピレン等が挙げられる。R1、R2、及びR3はそれぞれ上記に挙げた基の中でも炭素原子数1〜3のアルキレン基が好ましく、特に炭素原子数2〜3の上記アルキレン基が好ましい。
【0029】
上記炭素原子数1〜6のオキシアルキレン基としては、例えばオキシメチレン、オキシエチレン、オキシn−プロピレン、オキシイソプロピレン、オキシシクロプロピレン、オキシn−ブチレン、オキシイソブチレン、オキシs−ブチレン、オキシt−ブチレン、オキシシクロブチレン、オキシ1−メチル−シクロプロピレン、オキシ2−メチル−シクロプロピレン、オキシn−ペンチレン、オキシ1−メチル−n−ブチレン、オキシ2−メチル−n−ブチレン、オキシ3−メチル−n−ブチレン、オキシ1,1−ジメチル−n−プロピレン、オキシ1,2−ジメチル−n−プロピレン、オキシ2,2−ジメチル−n−プロピレン、オキシ1−エチル−n−プロピレン、オキシシクロペンチレン、オキシ1−メチル−シクロブチレン、オキシ2−メチル−シクロブチレン、オキシ3−メチル−シクロブチレン、オキシ1,2−ジメチル−シクロプロピレン、オキシ2,3−ジメチル−シクロプロピレン、オキシ1−エチル−シクロプロピレン、オキシ2−エチル−シクロプロピレン、オキシn−ヘキシレン、オキシ1−メチル−n−ペンチレン、オキシ2−メチル−n−ペンチレン、オキシ3−メチル−n−ペンチレン、オキシ4−メチル−n−ペンチレン、オキシ1,1−ジメチル−n−ブチレン、オキシ1,2−ジメチル−n−ブチレン、オキシ1,3−ジメチル−n−ブチレン、オキシ2,2−ジメチル−n−ブチレン、オキシ2,3−ジメチル−n−ブチレン、オキシ3,3−ジメチル−n−ブチレン、オキシ1−エチル−n−ブチレン、オキシ2−エチル−n−ブチレン、オキシ1,1,2−トリメチル−n−プロピレン、オキシ1,2,2−トリメチル−n−プロピレン、オキシ1−エチル−1−メチル−n−プロピレン、オキシ1−エチル−2−メチル−n−プロピレン、オキシシクロヘキシレン、オキシ1−メチル−シクロペンチレン、オキシ2−メチル−シクロペンチレン、オキシ3−メチル−シクロペンチレン、オキシ1−エチル−シクロブチレン、オキシ2−エチル−シクロブチレン、オキシ3−エチル−シクロブチレン、オキシ1,2−ジメチル−シクロブチレン、オキシ1,3−ジメチル−シクロブチレン、オキシ2,2−ジメチル−シクロブチレン、オキシ2,3−ジメチル−シクロブチレン、オキシ2,4−ジメチル−シクロブチレン、オキシ3,3−ジメチル−シクロブチレン、オキシ1−n−プロピル−シクロプロピレン、オキシ2−n−プロピル−シクロプロピレン、オキシ1−イソプロピル−シクロプロピレン、オキシ2−イソプロピル−シクロプロピレン、オキシ1,2,2−トリメチル−シクロプロピレン、オキシ1,2,3−トリメチル−シクロプロピレン、オキシ2,2,3−トリメチル−シクロプロピレン、オキシ1−エチル−2−メチル−シクロプロピレン、オキシ2−エチル−1−メチル−シクロプロピレン、オキシ2−エチル−2−メチル−シクロプロピレン及びオキシ2−エチル−3−メチル−シクロプロピレン等が挙げられる。特に、オキシエチレン基、オキシイソプロピレン基が好ましく用いられる。
【0030】
上記(C)成分では、式(1)において、R1、R2、及びR3が炭素原子数1〜3のアルキレン基、好ましくは炭素原子数2〜3のアルキレン基であり、E1、E2、及びE3が式(2)で表される有機基であり、上記R4が水素原子である化合物が好ましい。
【0031】
また、上記(C)成分の架橋性化合物において、式(1)中のE1、E2、E3、又はこれらE1〜E3から選択される2種以上が下記式(7)で表される有機基を有するものを用いることもできる。例えばそのような化合物として、E1とE2とE3の合計モル数に対して式(2)で表される有機基の割合が67〜100モル%、好ましくは90〜100モル%の割合であり、残部が式(7)で表される有機基とする、式(1)で表される架橋性化合物を用いることができる。
【化9】
上記式(7)中のR4は水素原子又はメチル基を表す。
【0032】
本発明における(C)成分として、例えば、下記式(C−1−1)〜式(C−1−15)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【化10】
【化11】
【化12】
【0033】
本発明に用いられる式(1)で表される架橋性化合物は、例えば式(C−1−2)で表される化合物の場合、以下の方法で得ることができる。
【化13】
【0034】
上記反応では、まず、イソシアヌール酸を水酸化ナトリウムでイソシアヌール酸Na塩に変換する。この反応は、水溶媒中で、0〜100℃、1〜10時間で行うことができる。
続いてイソシアヌール酸Na塩とハロゲン化アルケンを反応させて、アルケン置換イソシアヌール酸を得る。この反応は例えばDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)溶剤中で、0〜150℃、1〜10時間で行うことができる。式中Xはハロゲン原子を表し、ハロゲン化アルケンとしてはモノブロモアルケンや、モノクロロアルケンを用いることができる。
その後、アルケン置換イソシアヌール酸を過酸で酸化してエポキシ化合物を得ることができる。ここで過酸は例えば、メタクロロ過安息香酸、過酢酸、過酸化水素−タングステン酸等を用いることができる。この反応は塩化メチレン、トルエン等の溶剤中で、0〜110℃、1〜10時間で行うことができる。
上記式(C−1−1)、(C−1−3)、(C−1−6)〜(C−1−8)、(C−1−11)〜(C−1−13)で表される化合物も同様の方法で合成することができる。
【0035】
本発明に用いられる式(1)で表される架橋性化合物は、例えば式(C−1−4)で表される化合物の場合、以下の方法で得ることが出来る。
【化14】
【0036】
上記反応ではヒドロキシアルキルイソシアヌレートとエピハロヒドリンを反応させてトリス(アルキレンオキシグリシジル)イソシアヌレートが得られる。ヒドロキシアルキルイソシアヌレートは、ヒドロキシエチルイソシアヌレート等が用いられる。式中Xはハロゲン原子を表し、エピハロヒドリンはエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられる。反応はジオキサン等の溶剤中で、BF3や塩化錫を触媒として用い、0〜100℃で、1〜10時間の反応によって行われる。上記式(C−1−5)、(C−1−9)、(C−1−10)、(C−1−14)、(C−1−15)で表される化合物も同様の方法で合成することができる。
【0037】
本発明において式(1)におけるE1、E2、及びE3が式(3)で表される構造を有する化合物としては例えば上記と同様に以下の方法で合成することができる。
【化15】
【0038】
上記反応でアルコールをハロゲン化炭素でハロゲン化アルケンに変換する。この反応は例えばジクロロメタン溶媒中で、0〜100℃、1〜10時間で行うことができる。
一方で、イソシアヌール酸を水酸化ナトリウムでイソシアヌール酸Na塩に変換する。この反応は、水溶媒中で、0〜100℃、1〜10時間で行うことができる。
更にイソシアヌール酸Na塩とハロゲン化アルケンを反応させて、アルケン置換イソシアヌール酸を得る。この反応は例えばDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)溶剤中で、0〜150℃、1〜10時間で行うことができる。式中Xはハロゲン原子を表し、ハロゲン化アルケンはモノブロモアルケンや、モノクロロアルケンを用いることができる。
そしてアルケン置換イソシアヌール酸を過酸で酸化してエポキシ化合物を得ることができる。ここで過酸は例えば、メタクロロ過安息香酸、過酢酸、過酸化水素−タングステン酸等を用いることができる。この反応は塩化メチレン、トルエン等の溶剤中で、0〜110℃、1〜10時間で行うことができる。
【0039】
本発明において式(1)で表される架橋性化合物(C−1)[例えば式(C−1−1)〜(C−1−15)で表される化合物]に加えて、少なくとも2個のエポキシ基を有し且つ(C−1)以外の構造を有する架橋性化合物(C−2)を併用し、すなわち、(C−1)/〔(C−1)+(C−2)〕の質量比が1質量%、又は1.5質量%以上、又は50〜100質量%の割合で含有するポジ型レジスト組成物とすることができる。この(C−1)/〔(C−1)+(C−2)〕の質量比は100質量%、すなわち上記架橋性化合物(C−1)を単独で用いることは可能であるが、製造コストの観点から、架橋性化合物(C−2)と混合したエポキシ化合物とすることができる。
なお、(C−1)化合物とは(C−1−1)〜(C−1−15)化合物及びその例示される化合物に代表される(C−1)化合物群の総称である。また、(C−2)化合物とは以下の(C−2−1)〜(C−2−7)化合物及びその例示される化合物に代表される(C−2)化合物群の総称である。
【0040】
上記の(C−1)化合物は単独で用いるほか、(C−1)成分中のヒドロキシ基又は他の有機基と架橋されうる任意の架橋性化合物と組み合わせて用いることができる。
(C−1)成分と組み合わせて使用される架橋性化合物(C−2)としては以下に示される。
【0041】
例えば下記式(C−2−1)で表されるシクロアルケンオキサイド構造を有する化合物を用いることができる。
【化16】
上記式中、kは2〜10の整数を表し、mは0〜4の整数を表し、R1はk価の有機基を表す。
上記式(C−2−1)で表される化合物の具体例としては、下記式(C−2−2)で表されるシクロヘキセンオキサイド構造を有する化合物が例示される。
【化17】
【0042】
その他にも以下に示す市販品等が挙げられる。
市販品としては、エポリードGT−401、同GT−403、同GT−301、同GT−302、セロキサイド2021、セロキサイド3000(商品名、以上ダイセル化学工業(株)製)、脂環式エポキシ樹脂であるデナコールEX−252(商品名、ナガセケムッテクス(株)製)、CY175、CY177、CY179(商品名、以上CIBA−GEIGY A.G(現:BASF)製)、アラルダイトCY−182、同CY−192、同CY−184(商品名、以上CIBA−GEIGY A.G(現:BASF)製)、エピクロン200、同400(商品名、以上DIC(株)製)、エピコート(現:jER)871、同872(商品名、以上油化シェルエポキシ(株)(現:三菱化学(株))製)、等を挙げることができる。
これらのうち、耐熱性、耐溶剤性、耐長時間焼成耐性等の耐プロセス性、及び透明性の観点からシクロヘキセンオキサイド構造を有する、エポリードGT−401、同GT−403、同GT−301、同GT−302、セロキサイド2021、セロキサイド3000が好ましい。
【0043】
また、架橋性化合物として、下記式(C−2−3)で表されるオキシラン構造を有する化合物を用いることができる。
【化18】
式中、kは2〜10の整数を表し、R1はk価の有機基を表す。
式(C−2−3)で表される化合物の具体例としては、式(C−2−4)で表される化合物が挙げられる。
【化19】
【0044】
その他にも以下に示す市販品等が挙げられる。
市販品として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート(現:jER)828、同834、同1001、同1004(商品名、いずれもジャパンエポキシレジン(株)製(現:三菱化学(株)))、エピクロン850、同860、同4055(商品名、いずれもDIC(株)製)等が挙げられる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート(現:jER)807(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製(現:三菱化学(株)))、エピクロン830(商品名、DIC(株)製)等が挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンN−740、同N−770、同N−775(商品名、いずれもDIC(株)製)、エピコート(現:jER)152、同154(商品名、いずれもジャパンエポキシレジン(株)製(現:三菱化学(株)))等が挙げられる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンN−660、同N−665、同−670、同N−673、同N−680、同N−695、同N−665−EXP、同N−672−EXP(商品名、いずれもDIC(株)製)等が挙げられる。グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロン430、同430−L(商品名、DIC(株)製)、TETRAD−C、TETRAD−X(商品名、いずれも三菱ガス化学(株)製)、エピコート(現:jER)604、同630(商品名、いずれもジャパンエポキシレジン(株)製(現:三菱化学(株)))、スミエポキシELM120、スミエポキシELM100、スミエポキシELM434、スミエポキシELM434HV(商品名、いずれも住友化学(株)製)、YH−434、YH−434L(商品名、いずれも東都化成(株)製(現:新日鐵化学(株)))、アラルダイトMY−720(商品名、旭チバ(株)製)等を挙げることができる。
【0045】
また、架橋性化合物として、下記式(C−2−5)で表される部分構造を有する化合物を用いることができる。
【化20】
式中、R1は炭素原子数が1〜6のアルキル基又は水素原子を表す。
上記炭素原子数1〜6のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を挙げることができる。
上記式(C−2−5)で表される部分構造を有する化合物は、すなわち、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する化合物であれば特に限定されず、好ましくは該ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基が窒素原子に結合する化合物、すなわちN−ヒドロキシメチル基又はN−アルコキシメチル基を含有する化合物である。その具体例としては、下記式(C−2−6)及び式(C−2−7)で表される化合物や、以下に示す市販品等が挙げられる。
【化21】
【0046】
市販品の具体例としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(メトキシメチル)尿素、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリノン、及び1,3−ビス(メトキシメチル)−4,5−ジメトキシ−2−イミダゾリノン等が挙げられる。市販品としては、メトキシメチルタイプメラミン化合物としては、例えばサイメル300、サイメル301、サイメル303、サイメル350(商品名、いずれも三井サイテック(株)製(現:日本サイテックインダストリーズ(株))が挙げられる。ブトキシメチルタイプメラミン化合物としては、例えばマイコート506、マイコート508(商品名、いずれも三井サイテック(株)製(現:日本サイテックインダストリーズ(株))が挙げられる。グリコールウリル化合物としては、例えばサイメル1170、パウダーリンク1174(商品名、いずれも三井サイテック(株)製(現:日本サイテックインダストリーズ(株))が挙げられる。メチル化尿素樹脂としてUFR65、ブチル化尿素樹脂としては、例えばUFR300、U−VAN10S60、U−VAN10R、U−VAN11HV(商品名、いずれも三井サイテック(株)製(現:日本サイテックインダストリーズ(株))が挙げられる。尿素/ホルムアルデヒド系樹脂としては、例えばベッカミンJ−300S、ベッカミンP−955、ベッカミンN(商品名、いずれもDIC(株)製)等を挙げることができる。
【0047】
また、架橋性化合物(C−2)として、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド及びN−ブトキシメチルメタクリルアミド等のヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物を使用して製造されるポリマーを用いることができる。そのようなポリマーとしては、例えば、ポリ(N−ブトキシメチルアクリルアミド)、N−ブトキシメチルアクリルアミドとスチレンの共重合体、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミドとメチルメタクリレートの共重合体、N−エトキシメチルメタクリルアミドとベンジルメタクリレートの共重合体、及びN−ブトキシメチルアクリルアミドとベンジルメタクリレートと2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの共重合体等を挙げることができる。
上記の架橋性化合物(C−2)は、一種のみ又は二種以上の化合物を(C−1)成分の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0048】
[(E)成分:界面活性剤]
本発明では塗布性を向上させる目的で界面活性剤(E)を添加しても良い。このような界面活性剤は、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤など特に限定されない。(E)成分として、前記界面活性剤のうち1種又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
これらの界面活性剤の中で、塗布性改善効果の高さからフッ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤の具体例としては、エフップEF301、EF303、EF352(商品名、いずれも(株)トーケムプロダクツ製(現:三菱マテリアル電子化成(株)))、メガファックF171、F173、R−30、R−08、R−90、BL−20、F−482(商品名、いずれもDIC(株)製)、フロラードFC430、FC431(商品名、いずれも住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(商品名、いずれも旭硝子(株)製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明のポジ型レジスト組成物における(E)成分の添加量は固形分中で、0.0008〜4.5質量%、好ましくは0.0008〜2.7質量%、より好ましくは0.0008〜1.8質量%である。界面活性剤の添加量が4.5質量%よりも多いと塗膜にムラが起こり易く、0.0008質量%よりも下回る場合には、塗膜にストリエーション等が発生し易くなる。
【0051】
[(F)成分:密着促進剤]
本発明では現像後の基板との密着性を向上させる目的で、密着促進剤(F)を添加することができる。これらの密着促進剤はトリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、ビニルトリクロロシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−ピペリジニル)プロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環状化合物や、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア等の尿素、又はチオ尿素化合物を挙げることができる。
【0052】
(F)成分として、前記密着促進剤のうち1種又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの密着促進剤の添加量は固形分中で、通常18質量%以下、好ましくは0.0008〜9質量%、より好ましくは0.04〜9質量%である。18質量%以上用いると塗膜の耐熱性が低下する場合があり、また、0.0008質量%未満では密着促進剤の十分な効果を得られない場合がある。
【0053】
その他の添加剤として、更に必要に応じて顔料、染料、保存安定剤、消泡剤や多価フェノール、多価カルボン酸等の溶解促進剤等を添加しても良い。
【0054】
上述した成分を含有する本発明のポジ型レジスト組成物は、好ましくは、厚さ1.0μmの組成物膜を形成したときに波長400〜730nmの光に対する透過率が80%以上の塗膜物性を有するものである。
【0055】
[パターン形成方法]
本発明のポジ型レジスト組成物は、ガラス基板、シリコンウェハー、酸化膜、窒化膜、アルミニウムやモリブデンやクロムなどの金属が被覆された基板などの基材上に回転塗布、流し塗布、ロール塗布、スリット塗布、スリットに続いた回転塗布、インクジェット塗布などによって塗布した後、ホットプレートやオーブン等で予備乾燥(プリベーク)して塗膜を形成することができる。その際、予備乾燥は、温度80℃〜130℃で30〜600秒間の条件とすることが好ましいが、必要に応じて適宜条件を選択することができる。また塗膜の厚みは、硬化物の用途によって応じて、0.01μm〜10mm程度の範囲から選択できる。
【0056】
上記で得られた塗膜上に、所定のパターンを有するマスクを装着して紫外線等の光を照射して露光し、アルカリ現像液で現像することで、露光部が洗い出されて端面のシャープなレリーフパターンが得られる。
【0057】
照射又は露光する光の波長は、例えば150〜800nm、好ましくは150〜600nm、さらに好ましくは200〜400nm、特に300〜400nm程度である。照射光量は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば2〜20000mJ/cm2、好ましくは5 〜5000mJ/cm2程度とすることができる。
なお、パターン形状に対する定在波の影響を抑制したり、架橋性化合物(C)と前述ポリマー(A)、1,2−ナフトキノンジアジド化合物(B)との架橋度合いを調整するために、露光後ベーク(PEB)を行うことも出来る。
【0058】
現像の際に使用される現像液はアルカリ水溶液であれば特に限定されない。その具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液を挙げることができる。
前記アルカリ現像液は10質量%以下の水溶液であることが一般的で、好ましくは0.1〜3.0質量%の水溶液などが用いられる。さらに上記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもでき、これらはそれぞれ、現像液100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部である。
この中で、水酸化テトラメチルアンモニウム0.1〜2.38質量%水溶液は、フォトレジストの現像液として一般的に使用されており、本発明のポジ型レジストはこの溶液を用い、膨潤などの問題を起こすことなく現像することができる。
また現像方法は液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法などのいずれを用いても良い。その際、現像時間は、通常15〜180秒間である。
【0059】
現像後、流水洗浄を20〜90秒間行い、圧縮空気や圧縮窒素、若しくはスピンにより風乾させることによって、基板上の水分を除去し、パターンが形成された塗膜を得る。
その後、このパターンが形成された塗膜に、高圧水銀灯などを用いた紫外線等の光を全面に照射し、パターン状塗膜中に残存する(B)成分(1,2−ナフトキノンジアジド化合物)を完全に分解させることにより、塗膜の透明性を向上させる。
【0060】
続いて、ホットプレート、オーブンなどを用いて加熱することにより、塗膜の硬化処理(以下、ポストベークと称す。)を行い、耐熱性、透明性、平坦化性、低吸水性、耐薬品性に優れ、良好なレリーフパターンを有する塗膜を得ることができる。
ポストベークの条件は、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置により、所定温度、例えば140℃〜260℃で、所定時間、例えばホットプレート上では3〜30分間、オーブン中では30〜90分間加熱処理すればよい。
【0061】
このようにして目的とする良好なパターン形状を有する硬化膜を得ることができる。この硬化膜は耐熱性、耐溶剤性、透明性に優れ、層間絶縁膜、各種絶縁膜、各種保護膜及びマイクロレンズ等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0063】
略記号は以下の意味を表す。また以下の商品名等で表される化合物の構造は以下の通りである。
MAA:メタクリル酸
MAIB:2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル
QD1:上記式B−5で表される化合物1mol中、式中のDが、モル比で2.0molが1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、同1.0molが水素原子で置換された化合物
式(C−2−4)で表される化合物:エピコート(現:jER)828、ジャパンエポキシレジン(株)製(現:三菱化学)
【化22】
式(C−2−8)で表される化合物:YH−434L、東都化成(株)製(現:新日鐵化学(株)
【化23】
式(C−2−9)で表される化合物:TETRAD−C、三菱ガス化学(株)製
【化24】
式(C−2−10)で表される化合物:トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート(商品名テピック)、日産化学工業(株)製
【化25】
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
メガファックR30:フッ素系界面活性剤(商品名、DIC(株)製)
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド。
ARC−XHRiC−16:レジスト下層に用いる反射防止膜を形成するための組成物(商品名、日産化学工業(株)製)
【0064】
(数平均分子量及び重量平均分子量の測定)
以下の合成例に従い得られた共重合体の数平均分子量(以下、Mnと称す)及び重量平均分子量(以下、Mwと称す)を、日本分光(株)製GPC装置(Shodex(登録商標)カラムKF803L及びKF804L)を用い、溶出溶媒THFを1mL/分でカラム(温度40℃)中に流して溶離させるという条件で測定した。なお、下記のMn及びMwは、ポリスチレン換算値にて表される。
【0065】
(合成例1:架橋性化合物CL1の合成)
反応器に106gのイソシアヌル酸と420mlの水を加えたスラリーに、206gの48%水酸化ナトリウム溶液を滴下して、60〜70℃の温度で2時間反応後、水を留去、メタノール洗浄、そして乾燥してイソシアヌル酸ナトリウム157.5gの白色結晶として得た。攪拌機、冷却器を取り付けた反応器に溶剤としてN,N−ジメチルホルムアミド400mlを入れ、157.5gのイソシアヌル酸ナトリウムと361.4gの5−ブロモ1−ペンテンを120〜125℃で6時間反応させた後、無機塩を濾別、トルエン抽出、水洗、乾燥、溶媒留去してトリス5−ペンテニルイソシアヌレート205gの薄茶色油状物として得た。攪拌機、冷却器を取り付けた反応器に溶剤として塩化メチレン8,700mlを入れ、205gのトリス5−ペンテニルイソシアヌレートを加え、815gのメタクロロ過安息香酸を30℃以下でゆっくりと加え、25℃で4時間反応させた。反応終了後、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液3,000mlを20℃以下でゆっくり加え、不溶物を濾別後、クロロホルムを加えて溶媒抽出した。10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で充分洗浄後、乾燥、溶媒留去して租物を得た。この租物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して透明油状物161.7gを得た。得られたエポキシ化合物は式(C−1−2)で表される化合物に相当するトリス(4,5−エポキシペンチル)イソシアヌレートであった。
得られた式(C−1−2)で表される架橋性化合物を以降CL1と略す。
【0066】
(合成例2:架橋性化合物CL2の合成)
反応器に106gのイソシアヌル酸と420mlの水を加えたスラリーに、206gの48%水酸化ナトリウム溶液を滴下して、60〜70℃の温度で2時間反応後、水を留去、メタノール洗浄、そして乾燥してイソシアヌル酸ナトリウム157.5gの白色結晶として得た。攪拌機、冷却器を取り付けた反応器に溶剤としてN,N−ジメチルホルムアミド400mlを入れ、157.5gのイソシアヌル酸ナトリウムと327.4gの4−ブロモ1−ブテンを120〜125℃で6時間反応させた後、無機塩を濾別、トルエン抽出、水洗、乾燥、溶媒留去してトリス4−ブテニルイソシアヌレート179gの薄茶色油状物として得た。攪拌機、冷却器を取り付けた反応器に溶剤として塩化メチレン8,700mlを入れ、179gのトリス4−ブテニルイソシアヌレートを加え、815gのメタクロロ過安息香酸を30℃以下でゆっくりと加え、25℃で4時間反応させた。反応終了後、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液3,000mlを20℃以下でゆっくり加え、不溶物を濾別後、クロロホルムを加えて溶媒抽出した。10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で充分洗浄後、乾燥、溶媒留去して租物を得た。この租物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して透明油状物141.3gを得た。得られたエポキシ化合物は式(C−1−1)で表される化合物に相当するトリス(3,4−エポキシブチル)イソシアヌレートであった。
得られた式(C−1−1)で表される架橋性化合物を以降CL2と略す。
【0067】
(合成例3:架橋性化合物CL3の合成)
反応器に106gのイソシアヌル酸と420mlの水を加えたスラリーに、206gの48%水酸化ナトリウム溶液を滴下して、60〜70℃の温度で2時間反応後、水を留去、メタノール洗浄、そして乾燥してイソシアヌル酸ナトリウム157.5gの白色結晶として得た。攪拌機、冷却器を取り付けた反応器に溶剤としてN,N−ジメチルホルムアミド400mlを入れ、157.5gのイソシアヌル酸ナトリウムと395.4gの6−ブロモ1−ヘキセンを120〜125℃で6時間反応させた後、無機塩を濾別、トルエン抽出、水洗、乾燥、溶媒留去してトリス6−ヘキセニルイソシアヌレート230.8gの薄茶色油状物として得た。攪拌機、冷却器を取り付けた反応器に溶剤として塩化メチレン8,700mlを入れ、230.8gのトリス6−ヘキセニルイソシアヌレートを加え、815gのメタクロロ過安息香酸を30℃以下でゆっくりと加え、25℃で4時間反応させた。反応終了後、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液3,000mlを20℃以下でゆっくり加え、不溶物を濾別後、クロロホルムを加えて溶媒抽出した。10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で充分洗浄後、乾燥、溶媒留去して租物を得た。この租物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して透明油状物182.1gを得た。得られたエポキシ化合物は式(C−1−3)で表される化合物に相当するトリス(5,6−エポキシヘキシル)イソシアヌレートであった。
得られた式(C−1−3)で表される架橋性化合物を以降CL3と略す。
【0068】
(合成例4:(A)成分のアルカリ可溶性ポリマー(P−1)の合成)
(A)成分を構成するモノマー成分として、スチレン(60.0g)、MAA(21.2g)を使用し、ラジカル重合開始剤としてMAIB(4.1g)を使用し、これらを1,4−ジオキサン(340.0g)中において10時間、攪拌下に加熱還流温度で加熱還流し重合反応を行った。反応溶液を室温まで冷却後、多量のn−ヘキサンに投入してポリマーを再沈殿し、50℃で加熱乾燥をしてMn6,000、Mw14,000である白色粉末状の(A)成分:ポリマー(P−1)を得た。
【0069】
(実施例1)
(A)成分:2.0gのポリマー(P−1)、(B)成分:0.6gのQD1、(C)成分:0.6gのCL1、(D)成分:8.88gのPGMEと8.88gのPGMEAの混合溶剤、及び(E)成分:0.01gのメガファックR30を混合し、室温で1時間攪拌して均一な溶液とし、ポジ型レジスト組成物を得た。
【0070】
(実施例2)
(A)成分:2.0gのポリマー(P−1)、(B)成分:0.6gのQD1、(C)成分:0.6gのCL2、(D)成分:8.88gのPGMEと8.88gのPGMEAの混合溶剤、及び(E)成分:0.01gのメガファックR30を混合し、室温で1時間攪拌して均一な溶液とし、ポジ型レジスト組成物を得た。
【0071】
(実施例3)
(A)成分:2.0gのポリマー(P−1)、(B)成分:0.6gのQD1、(C)成分:0.6gのCL3、(D)成分:8.88gのPGMEと8.88gのPGMEAの混合溶剤、及び(E)成分:0.01gのメガファックR30を混合し、室温で1時間攪拌して均一な溶液とし、ポジ型レジスト組成物を得た。
【0072】
(比較例1)
(A)成分:2.0gのポリマー(P−1)、(B)成分:0.6gのQD1、(C)成分:0.6gの式(C−2−4)で表される化合物、(D)成分:8.88gのPGMEと8.88gのPGMEAの混合溶剤、及び(E)成分:0.01gのメガファックR30を混合し、室温で1時間攪拌して均一な溶液とし、ポジ型レジスト組成物を得た。
【0073】
(比較例2)
(A)成分:2.0gのポリマー(P−1)、(B)成分:0.6gのQD1、(C)成分:0.6gの式(C−2−8)で表される化合物、(D)成分:8.88gのPGMEと8.88gのPGMEAの混合溶剤、及び(E)成分:0.01gのメガファックR30を混合し、室温で1時間攪拌して均一な溶液とし、ポジ型レジスト組成物を得た。
【0074】
(比較例3)
(A)成分:2.0gのポリマー(P−1)、(B)成分:0.6gのQD1、(C)成分:0.6gの式(C−2−9)で表される化合物、(D)成分:8.88gのPGMEと8.88gのPGMEAの混合溶剤、及び(E)成分:0.01gのメガファックR30を混合し、室温で1時間攪拌して均一な溶液とし、ポジ型レジスト組成物を得た。
【0075】
(比較例4)
(A)成分:2.0gのポリマー(P−1)、(B)成分:0.6gのQD1、(C)成分:0.6gの式(C−2−10)で表される化合物、(D)成分:8.88gのPGMEと8.88gのPGMEAの混合溶剤、及び(E)成分:0.01gのメガファックR30を混合した。この混合物を室温で12時間攪拌したが、均一な溶液は得られなかった。
【0076】
得られた実施例1〜3及び比較例1〜3の各ポジ型レジスト組成物について、それぞれ解像度、ベーク後の光透過率、屈折率を各々測定し、それらの評価を行った。
【0077】
(解像性の評価)
以下の露光以外の工程は、全て自動塗付現像装置ACT−8(東京エレクトロン(株)製)を用いて行った。シリコンウェハー上にARC−XHRiC−16をスピンコーターを用いて塗布した後、175℃で60秒間のベークを行い反射防止膜を形成した。この膜上に実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたポジ型レジスト組成物をそれぞれスピンコーターを用いて塗付した後、80℃で90秒間のプリベークを行い膜厚0.6μmの塗膜を形成した。この塗膜にテストマスクを通して、i線ステッパーNSR2205i12D((株)ニコン製)により、波長365nmの紫外線を照射した。その後、80℃で90秒間の露光後ベークを行った後、23℃の0.2%TMAH水溶液で50秒間現像し、さらに超純水洗浄を行い、ポジ型のパターンを形成した。
得られたパターンを走査型電子顕微鏡S4800((株)日立製作所製)により観察した。2μmのドットパターンが剥離なく矩形に形成されているものを解像性が良好として(○)と評価し、パターン形状が矩形でない場合又は解像しない場合を(×)と評価した。得られた結果を表1に示す。
【0078】
(透明性の評価)
石英基板上に実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたポジ型レジスト組成物をそれぞれスピンコーターを用いて塗付した後、80℃で3分間ホットプレート上で加熱を行うことによりプリベークを行い膜厚1.0μmの塗膜を形成した。その後、得られた塗膜の全面に紫外線照射装置PLA−501(F)(キヤノン(株)製)を用いて波長365nmでの照射量が1000mJ/cm2である紫外光を照射し、160℃で5分間、200℃で5分間加熱することでポストベークを行い、続いて250℃で10分間加熱することにより高温ベークを行った。
紫外光照射後及びポストベーク後の塗膜について、波長400nmの光に対する光透過率を紫外線可視分光光度計UV−2550((株)島津製作所製)を用いて測定した。得られた結果を表1に示す。
【0079】
(溶剤耐性の評価)
シリコン基板上に実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたポジ型レジスト組成物をそれぞれスピンコーターを用いて塗付した後、80℃で4分間ホットプレート上で加熱を行うことによりプリベークを行い膜厚1.0μmの塗膜を形成した。その後、得られた塗膜の全面に紫外線照射装置PLA−501(F)(キヤノン(株)製)を用いて波長365nmでの照射量が500mJ/cm2である紫外光を照射し、160℃で5分間、200℃で5分間のポストベークを行った。
作成した塗膜をPGME又はPGMEAに1分間浸漬し、残膜があるものを溶剤耐性が良好として(○)と評価し、残膜がなくなる場合を(×)と評価した。得られた結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
架橋性化合物として式(1)で表される化合物であるCL1〜CL3は、溶剤に高い溶解性を示し、これら架橋性化合物を用いた実施例1〜3のポジ型レジスト組成物は、レジスト膜を形成したときに均一な塗膜を形成できた。
そして表1に示すように、実施例1〜3のポジ型レジスト組成物より得られる塗膜はいずれも解像性が良好であり、ポストベークを行った後にも高い光透過率を示した。
なお、実施例1〜3において、(C)成分として一般式(1)で表される架橋性化合物中のR1、R2、及びR3のアルキレン基が、エチレン基(即ち、架橋性化合物としてトリス(4,5−エポキシペンチル)イソシアヌレート))である化合物を用いた実施例1の場合と、プロピレン基(即ち、架橋性化合物としてトリス(5,6−エポキシヘキシル)イソシアヌレート))である化合物を用いた実施例3の場合は、メチレン基(即ち、架橋性化合物としてトリス−(3,4−エポキシブチル)−イソシアヌレート))である化合物を用いた実施例2に比べて、光透過率が向上したとする結果となった。
【0082】
一方、比較例1及び3の組成物については、ポストベークを行った後にも比較的高い光透過率を示すものの、現像後に良好なパターンを形成することができず、解像性に劣るとする結果となった。
また比較例2の組成物については、ポストベークを行った後に光透過率が著しく低下し、また現像後に良好なパターンを形成することができなかった。
なお、比較例4については、前述のとおり、均一な溶液を得ることができなかった。これは、比較例4に用いた架橋性化合物は室温で完全に溶解するものではなく、膜形成を試みたものの均一な塗膜を形成することができず、ポジ型レジスト組成物としての評価ができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によるポジ型レジスト組成物は高感度、耐熱性及び透明性の点で優れ、固体撮像素子などに用いられるマイクロレンズを形成する材料として好適であり、固体撮像素子の微細化が可能であり、車両搭載などの耐候性に対応した材料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0295956号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0295983号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0299162号明細書