特許第5673988号(P5673988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星エスディアイ株式会社の特許一覧

特許5673988複合負極活物質、これを採用した負極及びリチウム電池
<>
  • 特許5673988-複合負極活物質、これを採用した負極及びリチウム電池 図000003
  • 特許5673988-複合負極活物質、これを採用した負極及びリチウム電池 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5673988
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】複合負極活物質、これを採用した負極及びリチウム電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20150129BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20150129BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20150129BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20150129BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20150129BHJP
【FI】
   H01M4/587
   H01M4/38 Z
   H01M4/36 B
   H01M4/36 E
   H01M10/0566
   H01M10/052
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2008-185201(P2008-185201)
(22)【出願日】2008年7月16日
(65)【公開番号】特開2009-26760(P2009-26760A)
(43)【公開日】2009年2月5日
【審査請求日】2011年6月14日
(31)【優先権主張番号】10-2007-0072489
(32)【優先日】2007年7月19日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung SDI Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】黄 勝▲シク▼
(72)【発明者】
【氏名】金 翰秀
【審査官】 吉田 安子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−196338(JP,A)
【文献】 特開2006−216277(JP,A)
【文献】 特開2004−055505(JP,A)
【文献】 特開2005−078933(JP,A)
【文献】 特開2005−285382(JP,A)
【文献】 特開2001−102048(JP,A)
【文献】 特開2004−146292(JP,A)
【文献】 特開2003−303588(JP,A)
【文献】 特開2007−042579(JP,A)
【文献】 特開2004−220911(JP,A)
【文献】 特開2008−288059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/587
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 4/62
H01M 10/052
H01M 10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系負極活物質、金属系負極活物質、高分子粒子及び前記高分子粒子の表面上にコーティングされた金属粒子で成り立った複合物を含む、リチウム電池用の複合負極活物質であって、
前記金属系負極活物質は、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Zn、Ag及びAuからなる群から選択された一つ以上の金属あるいはこれらの合金を含み、
前記金属系負極活物質の含有量は、前記炭素系負極活物質100重量部に対して1ないし100重量部であり、
前記高分子粒子及び前記金属粒子は、前記複合負極活物質において均一に分散されることを特徴とする、複合負極活物質。
【請求項2】
前記高分子粒子の平均粒径は、20nmないし20μmであることを特徴とする請求項1に記載の複合負極活物質。
【請求項3】
前記高分子粒子は、弾性を持つことを特徴とする請求項1に記載の複合負極活物質。
【請求項4】
前記高分子粒子は、ビニル系高分子であることを特徴とする請求項1に記載の複合負極活物質。
【請求項5】
前記高分子粒子は、ポリスチレン系高分子、ポリ(メタ)アクリレート系高分子、スチレン−ブタジエン系共重合体、ポリウレタン系高分子、ポリビニルアルコール系及びポリオレフィン高分子からなる群から選択された一つ以上、またはそれらから選択された2種以上の共重合体または架橋体を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合負極活物質。
【請求項6】
前記高分子粒子の含有量は、前記炭素系負極活物質100重量部に対して1ないし30重量部であることを特徴とする請求項1に記載の複合負極活物質。
【請求項7】
前記炭素系負極活物質は、グラファイト、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン及びハードカーボンからなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の複合負極活物質。
【請求項8】
前記金属粒子は、Ni、Cu、Co、Ag及びAuからなる群から選択された一つ以上またはこれらの合金を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合負極活物質。
【請求項9】
前記金属粒子の平均粒径は、20nmないし10μmであることを特徴とする請求項1に記載の複合負極活物質。
【請求項10】
前記金属粒子の含有量は、前記炭素系負極活物質100重量部に対して1ないし30重量部であることを特徴とする請求項1に記載の複合負極活物質。
【請求項11】
負極集電体及び前記負極集電体上に塗布された負極活物質を含み、
前記負極活物質は、請求項1ないし10のうちいずれか1項に記載の複合負極活物質である負極。
【請求項12】
負極、正極及び電解液を含み、
前記負極は、請求項11に記載の負極であるリチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合負極活物質、これを採用した負極及びリチウム電池に係り、さらに詳細には、活物質の伝導度を高めて高容量及び初期効率特性と寿命特性が改善された複合負極活物質、これを採用した負極及びリチウム電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウム電池の負極活物質としてはリチウム金属を使用したが、リチウム金属を使用する場合、デンドライトの形成による電池短絡が発生して爆発の危険性があるので、リチウム金属の代わりに炭素系物質が負極活物質として多く使われている。
【0003】
前記炭素系活物質としては、グラファイト及び人造黒鉛のような結晶質系炭素と、ソフトカーボン及びハードカーボンのような非晶質系炭素がある。しかし、前記非晶質系炭素は容量が大きいが、充放電過程で非可逆性が大きいという問題点がある。結晶質系炭素としてはグラファイトが代表的に使われ、理論限界容量が372mAh/gであって容量が高くて、負極活物質として利用されている。しかし、かかるグラファイトやカーボン系活物質は、理論容量が多少高いとしても380mAh/g程度に過ぎず、今後、高容量リチウム電池の開発時に、前述した負極を使用できなくなるという問題点がある。
【0004】
かかる問題点を改善するために現在活発に研究されている物質が、金属系または金属間化合物系の負極活物質である。例えば、アルミニウム、ゲルマニウム、シリコン、スズ、亜鉛、鉛などの金属または半金属を負極活物質として活用したリチウム電池が研究されている。かかる材料は、高容量かつ高エネルギー密度を持ち、炭素系材料を利用した負極活物質より多いリチウムイオンを吸蔵、放出できて、高容量及び高エネルギー密度を持つ電池を製造できると見なされている。例えば、純粋なシリコンは4017mAh/gの高い理論容量を持つと知られている。
【0005】
しかし、炭素系材料と比較してサイクル特性が低下するので、まだ実用化に障害物になっており、その理由は、負極活物質として前記シリコンやスズのような無機質粒子をそのままリチウム吸蔵及び放出物質として使用した場合、充放電過程で体積変化によって活物質間の導電性が低下するか、負極集電体から負極活物質が剥離される現象が発生するためである。すなわち、負極活物質に含まれた前記シリコンやスズのような無機質粒子は、充電によってリチウムを吸蔵してその体積が約300ないし400%に至るほどに膨脹する。そして、放電によってリチウムが放出されれば、前記無機質粒子は収縮し、かかる充放電サイクルを反復すれば、無機質粒子と活物質との間に発生する空いている空間により電気的絶縁が発生して寿命が急激に減少する特性を持つので、リチウム電池に使用するのに深刻な問題点を持っている。
【0006】
これを改善するために、特許文献1でリチウムの吸蔵及び脱離の可能な炭素系活物質と、金属または合金粒子とを単純混合して製造された負極を使用した例が記載されているが、この場合には、充放電中の金属系負極活物質の過度な体積膨脹及び収縮によって金属系活物質が破砕されて微粉化され、微粉化された粒子が集電体と脱離されて寿命特性が急激に劣化する現象を示す。また、特許文献2で、表面に孔が形成されている集電体内に黒鉛より高容量の金属系活物質粒子と導電性の炭素系材料またはゴム状の材料の粒子とを含む活物質層を形成した負極が記載されているが、この場合にはゴム状の粒子を電極内に単純に混合することによって、バインダーの役割を行って充放電中の負極の変形を防止しようとしたのに過ぎず、その製造工程が複雑であり、高容量、効率特性及び寿命特性の改善が不十分であるという問題がある。
【特許文献1】特開1994−318454号公報
【特許文献2】特開2006−147316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする第1の技術的課題は、高容量、初期効率特性及び寿命特性が改善された複合負極活物質を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとする第2の技術的課題は、前記複合負極活物質を含む負極を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとする第3の技術的課題は、前記負極を採用したリチウム電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記第1の技術的課題を達成するために本発明は、炭素系負極活物質、金属系負極活物質及び高分子粒子の複合物を含む複合負極活物質を提供する。
【0011】
本発明の一具現例によれば、前記複合物は、金属粒子をさらに含む。
【0012】
本発明の一具現例によれば、前記炭素系負極活物質は、グラファイト、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン及びハードカーボンからなる群から選択される一つ以上である。
【0013】
本発明の一具現例によれば、前記金属系負極活物質は、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Zn、Ag及びAuからなる群から選択された一つ以上の金属あるいはこれらの合金を含む。
【0014】
本発明の一具現例によれば、前記高分子粒子の含有量は、前記炭素系負極活物質100重量部に対して1ないし30重量部である。
【0015】
本発明の一具現例によれば、前記高分子粒子の平均粒径は、20nmないし20μmであることが望ましい。
【0016】
本発明の一具現例によれば、前記高分子粒子は、弾性粒子であることが望ましい。
【0017】
本発明の一具現例によれば、前記高分子粒子は、ビニル系高分子であることが望ましい。
【0018】
本発明の一具現例によれば、前記高分子粒子は、ポリスチレン系高分子、ポリ(メタ)アクリレート系高分子、スチレン−ブタジエン系共重合体、ポリウレタン系高分子、ポリビニルアルコール系及びポリオレフィン高分子からなる群から選択された一つ以上、またはそれらから選択された2種以上の共重合体または架橋体を含む。
【0019】
本発明の一具現例によれば、前記金属粒子の含有量は、前記炭素系負極活物質100重量部に対して1ないし30重量部である。
【0020】
前記第2の技術的課題を達成するために本発明は、負極集電体及び前記負極集電体上に塗布された負極活物質を含み、前記負極活物質は、前述した複合負極活物質である負極を提供する。
【0021】
前記第3の技術的課題を達成するために本発明は、負極、正極及び電解液を含み、前記負極は、前述した複合負極活物質を含む負極であるリチウム電池を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明による炭素系負極活物質、金属系負極活物質、高分子粒子を複合化して製造された負極活物質、または炭素系負極活物質、金属系負極活物質、高分子粒子と金属粒子とを複合化して製造された負極活物質は、高分子粒子が負極活物質内に導入されることによって、充放電中の活物質の体積変化に対する応力を緩和させる緩衝剤の役割を行うだけでなく、複合化された負極活物質をかたく保持させ、かつ追加的な金属粒子が活物質内で均一に分散されて活物質の伝導度を高めて、高容量及び初期効率特性、高率特性と寿命特性とを向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明による複合負極活物質は、炭素系負極活物質、金属系負極活物質及び高分子粒子の複合物を含む。このような本発明による複合負極活物質は、図1に示したように、炭素系負極活物質及び金属系負極活物質が持つ長所を維持しつつ、高分子粒子を負極活物質内に導入することによって、充放電中の活物質の体積変化に対する応力を緩和させる緩衝剤の役割を行うだけではなく、複合化された負極活物質をかたく保持させる役割を行う。
【0025】
前記複合負極活物質に使われる炭素系負極活物質は、当業界で使われるものならば何の制限もなしに使用でき、例えば、グラファイト、天然黒鉛、または人造黒鉛のような結晶質系炭素と、ソフトカーボン及びハードカーボンのような非晶質系炭素を含むことができる。
【0026】
前記複合負極活物質に使われる金属系負極活物質は、当業界で使われるものならば何の制限もなしに使用でき、例えば、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Zn、Ag及びAuからなる群から選択された一つ以上の金属あるいはこれらの合金を含む。これら金属系負極活物質は、前記炭素系負極活物質100重量部に対して1ないし100重量部、望ましくは20ないし80重量部の割合で使われうる。前記金属系負極活物質の含有量が1重量部未満ならば、高容量化を達成し難いという問題がああり、100重量部を超過すれば、充放電中に金属系活物質の過度な体積膨脹及び収縮による寿命特性の顕著な低下が発生する恐れがあって望ましくない。
【0027】
前記炭素系負極活物質及び金属系負極活物質と共に使われる高分子粒子は、前述したように活物質の緩衝及び支持体の役割を行い、弾性を持つ高分子粒子を使用することが望ましい。このような弾性高分子粒子としては、ビニル系粒子を代表的な例として挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0028】
本発明で使用可能な高分子粒子の例としては、ポリスチレン系高分子、ポリ(メタ)アクリレート系高分子、スチレン−ブタジエン系共重合体、ポリウレタン系高分子、ポリビニルアルコール系及びポリオレフィン高分子からなる群から選択された一つ以上、またはそれらから選択された2種以上の共重合体または架橋体を使用できる。
【0029】
このような高分子粒子はその平均粒径が所定サイズを持つことが望ましく、例えば、20nmないし20μmの平均粒径を持つことが良い。前記高分子粒子の平均粒径が20nm未満ならば、高分子粒子が活物質内に均一に分散され難いという問題があり、20μmを超過すれば、活物質全体の粒径が大きくなって、高密度電極の形成が困難であるという問題があって望ましくない。
【0030】
前述した高分子粒子は、前記炭素系負極活物質100重量部に対して1ないし30重量部、望ましくは3ないし20重量部の含有量で使われ、前記含有量が1重量部未満ならば、活物質の体積変化による応力を効率的に除去できず、支持体としての作用が不十分な問題があり、30重量部を超過する場合、活物質の伝導性などが低下して望ましくない。
【0031】
前記本発明による複合負極活物質は、図2に示したように金属粒子をさらに含むことができ、かかる金属粒子は、前記複合負極活物質内で均一に分散されて活物質の伝導度を高めて、高容量及び初期効率特性、高率特性と寿命特性とを向上させる。
【0032】
かかる金属粒子としては、Ni、Cu、Co、Ag及びAuからなる群から選択された一つ以上であるか、これらの合金が望ましく、前記金属粒子は、平均粒径が20nmないし10μmであることが望ましい。前記金属粒子の平均粒径が20nm未満ならば、金属粒子間の凝集が発生して活物質内に均一に分散され難いという問題があり、10μmを超過すれば、単位重量当たり金属粒子の数が少なくてその効果を表し難いという問題があって望ましくない。
【0033】
前記金属粒子は、前記炭素系負極活物質100重量部に対して1ないし30重量部の含有量で使われ、前記金属粒子の含有量が1重量部未満ならば、伝導性の改善効果が微々であり、30重量部を超過する場合、活物質の高容量化が困難であるという問題があって望ましくない。
【0034】
前記金属粒子は、粉末形態で前記炭素系負極活物質、金属系負極活物質及び高分子粒子と混合されて使われうるが、さらに効率的な分散処理のためには、前記高分子粒子の表面上にコーティングした後、これを混合する場合にさらに効果的な分散処理を得ることができて望ましい。かかるコーティング層は、単層あるいは2層以上の複数層で構成される。前記高分子粒子に対する金属粒子のコーティング処理は、無電解メッキ、蒸着などの方法で行うことができる。
【0035】
前述したような本発明による複合負極活物質の構成成分は互いに混合した後、これを機械的処理、例えば、ボールミリングなどの方法で混合することによって複合化させることができる。または、分散剤と共に溶媒内で攪拌または超音波処理して分散させた後、乾燥させて複合化させることもできる。
【0036】
前述したように得られた本発明による複合負極活物質は、負極及びこれを採用したリチウム電池に有効に使われるところ、本発明による負極及びリチウム電池は次のように製造できる。
【0037】
前記本発明による負極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒を混合して負極活物質組成物を製造し、これを銅集電体に直接コーティングするか、別途の支持体上にキャスティングし、この支持体から剥離させた負極活物質フィルムを銅集電体にラミネートして負極極板を得る。前記負極活物質としては、前述したような本発明による複合負極活物質を使用する。導電剤としてはカーボンブラックを使用し、結合剤としては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン及びその混合物、スチレンブタジエンゴム系ポリマーを使用し、溶媒としては、N−メチルピロリドン、アセトン、水などを使用する。この時、正極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒の含有量はリチウム電池で通例的に使用するレベルである。
【0038】
前記負極極板と同様に、正極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒を混合して正極活物質組成物を用意する。前記正極活物質組成物をアルミニウム集電体上に直接コーティング及び乾燥させて正極極板を準備した後、次いで、前記正極活物質の組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを前記アルミニウム集電体上にラミネートして正極極板を製造することもできる。
【0039】
前記正極活物質はリチウム含有金属酸化物であり、当業界で通例的に使われるものならば制限なしにいずれも使用でき、例えば、LiCoO、LiMn2x、LiNi−1Mn2x(x=1,2)、LiNi1−x−yCoMn(0≦x≦0.5、0≦y≦0.5)などを挙げることができる。前記正極活物質組成物で導電剤、結合剤及び溶媒は負極の場合と同じものを使用する。この時、正極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒の含有量はリチウム電池で通例的に使用するレベルである。
【0040】
場合によっては、前記正極電極活物質組成物及び負極電極活物質組成物に可塑剤をさらに加えて、電極板の内部に気孔を形成することもある。
【0041】
セパレータとしては、リチウム電池で通例的に使われるものならばいずれも使用できる。特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗でありつつ電解液含湿能に優れたものが望ましい。例えば、ガラスファイバ、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、その化合物のうち選択された材質であり、不織布または織布形態でも構わない。これをさらに詳細に説明すれば、リチウムイオン電池の場合には、ポリエチレン、ポリプロピレンのような材料からなる巻き取り可能なセパレータを使用し、リチウムイオンポリマー電池の場合には有機電解液の含浸能力に優れたセパレータを使用するが、かかるセパレータは、下記の方法によって製造可能である。
【0042】
すなわち、高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合してセパレータ組成物を用意した後、前記セパレータ組成物を電極上部に直接コーティング及び乾燥させてセパレータフィルムを形成するか、または前記セパレータ組成物を支持体上にキャスティング及び乾燥させた後、前記支持体から剥離させたセパレータフィルムを電極上部にラミネートして形成できる。
【0043】
前記高分子樹脂は特別に限定されず、電極板の結合剤に使われる物質ならばいずれも使用できる。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート及びその混合物を使用できる。特に、ヘキサフルオロプロピレン含有量が8ないし25重量%であるフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーを使用することが望ましい。
【0044】
前述したような正極極板と負極極板との間にセパレータを配置して電池構造体を形成する。かかる電池構造体を巻き取るか、折り畳んで円筒形電池ケースや角形電池ケースに入れた後、有機電解液を注入すれば、リチウムイオン電池が完成される。または、前記電池構造体をバイセル構造で積層した後、これを有機電解液に含浸させ、得られた結果物をポーチに入れて密封すれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。
【0045】
前記有機電解液は、リチウム塩、及び高誘電率溶媒と低沸点溶媒とからなる混合有機溶媒を含み、必要に応じて過充電防止剤のような多様な添加剤をさらに含むことができる。
【0046】
前記有機電解液に使われる高誘電率溶媒としては、当業界で通例的に使われるものならば特別に制限されず、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートのような環状カーボネートまたはγ−ブチロラクトンなどを使用できる。
【0047】
また、低沸点溶媒も当業界で通例的に使われるものであり、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネートのような鎖型カーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタンまたは脂肪酸エステル誘導体などを使用でき、特別に制限されない。
【0048】
前記高誘電率溶媒及び低沸点溶媒に存在する一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子に置換され、前記ハロゲン原子としては、フッ素が望ましい。
【0049】
前記高誘電率溶媒と低沸点溶媒との混合体積比は1:1ないし1:9であることが望ましく、前記範囲を外れる時には放電容量及び充放電寿命の側面で望ましくない。
【0050】
また前記有機電解液に使われるリチウム塩は、リチウム電池で通例的に使われるものならばいずれも使用でき、LiClO、LiCFSO、LiPF、LiN(CFSO、LiBF、LiC(CFSO、及びLiN(CSOからなる群から選択された一つ以上の化合物が望ましい。
【0051】
有機電解液中の前記リチウム塩の濃度は0.5ないし2M程度であることが望ましいが、リチウム塩の濃度が0.5M未満であれば、電解液の伝導度が低くなって電解液性能が落ち、2.0Mを超過する時には、電解液の粘度が上昇してリチウムイオンの移動性が減少するという問題点があって望ましくない。
【0052】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、これらが本発明を限定するものではない。
【0053】
<負極活物質及び負極の製造>
[実施例1]
黒鉛系負極活物質18.2g、Siの金属系活物質10gと平均粒径4μmのポリスチレン架橋体からなる高分子粒子1.8gを、ハイエネルギーボールミリング機械を利用して混合させることによって複合活物質を製造した。
【0054】
前記複合活物質15g、黒鉛2g、導電剤(Timcal社製の黒鉛系導電材、SFG6)2gを混合した後、1重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩水溶液60gを添加して混合し、再び20重量%水分散ポリアクリレートバインダー2gを添加した後、よく混合してスラリーを製造した。このスラリーを、ドクターブレードを使用して15μmの銅(Cu)集電体上に約75μmになるように塗布した。このように製造された電極を約100℃の熱風乾燥器で2時間乾燥させた後、再び約120℃で2時間真空乾燥させて水分を完全に除去した負極を製造した。製造された負極を圧延機を通じて活物質層の最終厚さが約40μmになるように圧延を施して、最終負極を製造した。
【0055】
[実施例2]
黒鉛系負極活物質16.85g、Siの金属系活物質10g、Ni1.46gがコーティングされた平均粒径4μmのポリスチレン架橋体からなる高分子粒子3.15gを、ハイエネルギーボールミリング機械を利用して混合させることによって複合活物質を製造した。
【0056】
ここで得られた複合活物質を使用したことを除いては、前記実施例1の方法と同一に行って負極を製造した。
【0057】
[実施例3]
黒鉛系負極活物質15.5g;Siの金属系活物質10g;第1層にNi1.44g、第2層にAu1.395gがコーティングされた平均粒径4μmのポリスチレン架橋体からなる高分子粒子4.5gとを、ハイエネルギーボールミリング機械を利用して混合させることによって複合活物質を製造した。
【0058】
ここで得られた複合活物質を使用したことを除いては、前記実施例1の方法と同一に行って負極を製造した。
【0059】
[実施例4]
黒鉛系負極活物質17g;Siの金属系活物質10g;第1層にNi0.96g、第2層にAu0.93gがコーティングされた平均粒径4μmのポリスチレン架橋体からなる高分子粒子3gを、ハイエネルギーボールミリング機械を利用して混合させることによって複合活物質を製造した。
【0060】
ここで得られた複合活物質を使用したことを除いては、前記実施例1の方法と同一に行って負極を製造した。
【0061】
[実施例5]
黒鉛系負極活物質18.5g;Siの金属系活物質10g;第1層にNi0.48g、第2層にAu0.465gがコーティングされた高分子粒子1.5gを、ハイエネルギーボールミリング機械を利用して複合活物質を製造した。
【0062】
ここで得られた複合活物質を使用したことを除いては、前記実施例1の方法と同一に行って負極を製造した。
【0063】
[比較例1]
黒鉛系負極活物質20g、Siの金属系活物質10gをハイエネルギーボールミリング機械を利用して混合させることによって複合活物質を製造した。
【0064】
ここで得られた複合活物質を使用したことを除いては、前記実施例6の方法と同一に行って負極を製造した。
【0065】
<リチウム電池の製造>
前記実施例1ないし5及び比較例1で製造した前記負極とリチウム金属とを相対電極とし、PE隔離膜をセパレータとし、1.3MのLiPFがEC(エチレンカーボネート)/DEC(ジエチルカーボネート)/FEC(フッ化エチレンカーボネート)(2/6/2)に溶けている溶液を電解質として電池を製造した。
【0066】
[実験例:充放電実験]
前記製造した電池を100mA/gの電流で0.001Vに到達するまで定電流放電を施した。放電が完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、100mA/gの電流で電圧が1.5Vに至るまで定電流充電した。これを50回反復実施して寿命特性を評価して下記の表1に示した。
【0067】
【表1】
【0068】
前記表1に示したように、本発明による複合負極活物質を含む負極を採用したリチウム電池の場合、初期容量を保持しつつも初期効率が高くて寿命特性が改善されたことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、リチウム二次電池関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】本発明の一例によって製造された活物質の形状を示す図面である。
図2】本発明の一例によって製造された活物質の形状を示す図面である。
図1
図2