(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
血液が流れている空間の周囲に設置されている複数の電極の間に、所定の周波数の交流電圧が印加された場合の複数の電極間のインピーダンスを計測するインピーダンス計測手段と、前記インピーダンス計測手段により計測された複数の電極間のインピーダンスから赤血球の界面における接触抵抗を特定する接触抵抗特定手段と、前記接触抵抗特定手段により特定された接触抵抗を用いて、赤血球の界面における電気二重層容量を特定する電気二重層容量特定手段とを備えた赤血球モニター。
接触抵抗特定手段は、インピーダンス計測手段により計測された複数の電極間のインピーダンスから、血液が流れている空間内で、流れている位置が異なる複数の赤血球の界面における接触抵抗を特定し、
電気二重層容量特定手段は、前記接触抵抗特定手段により特定された接触抵抗を用いて、流れている位置が異なる複数の赤血球の界面における電気二重層容量を特定する
ことを特徴とする請求項1記載の赤血球モニター。
インピーダンス計測手段は、複数の電極の間に印加される交流電圧の周波数を順次切り換えながら、各周波数の交流電圧が印加された場合の複数の電極間のインピーダンスを計測し、
接触抵抗特定手段は、前記インピーダンス計測手段により計測された複数の電極間のインピーダンスの中から、実数成分が最大になるインピーダンス及び実数成分が最小になるインピーダンスを探索し、赤血球の界面における接触抵抗として、前記最大の実数成分と前記最小の実数成分との差分を算出し、
電気二重層容量特定手段は、前記インピーダンス計測手段により計測された複数の電極間のインピーダンスの中から、虚数成分が最大になるインピーダンスを探索し、そのインピーダンスが前記インピーダンス計測手段により計測される際に印加された交流電圧の周波数と前記接触抵抗から、赤血球の界面における電気二重層容量を特定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の赤血球モニター。
電気二重層容量特定手段により特定された電気二重層容量が所定の下限容量より小さい場合、赤血球の凝集状態に変化がある旨を認定する凝集状態変化認定手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の赤血球モニター。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による赤血球モニターを示す構成図である。
図2A及び
図2Bは周囲に2個の電極が設置されている人工心臓の動脈送血管を示す側面図であり、
図2C及び
図2Dは周囲に2個の電極が設置されている人工心臓の動脈送血管を示す断面図である。
図1及び
図2A〜
図2Dにおいて、人工心臓の動脈送血管1は患者の血管と接続されており、周囲には2個の電極2
1,2
2が設置されている。
図2A及び
図2Cは、複数の赤血球11が塊になっていない状態を示しており、
図2B及び
図2Dは、複数の赤血球11が塊になっている状態を示している。
【0021】
インピーダンス計測部3は例えばLCRメータなどから構成されており、2個の電極2
1,2
2の間に印加される交流電圧V(f
n)の周波数f
n(n=1,2,・・・,N)を順次切り換えながら、各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合の電極2
1,2
2間のインピーダンスZを計測(インピーダンスZの実数成分であるレジスタンスRと、インピーダンスZの虚数成分であるリアクタンスXを計測)する処理を実施する。
このように、インピーダンス計測部3が、交流電圧V(f
n)の周波数f
nを順次切り換えながら、電極2
1,2
2間のインピーダンスZを計測する方法は、一般に“インピーダンス・スペクトロスコピー法”と呼ばれている。
なお、インピーダンス計測部3はインピーダンス計測手段を構成している。
【0022】
接触抵抗特定部4は例えばCPUを実装している半導体集積回路、ワンチップマイコン、あるいは、パーソナルコンピュータなどから構成されており、インピーダンス計測部3により計測されたインピーダンスZ(各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合の電極2
1,2
2間のインピーダンスZ)の中から、レジスタンスRが最大であるインピーダンスZ
Rmax(レジスタンスが「R
pw+R
ct」であるインピーダンス)を探索するとともに、レジスタンスRが最小であるインピーダンスZ
Rmin(レジスタンスが「R
pw」であるインピーダンス)を探索する処理を実施する。ただし、R
pw,R
ctの内容は後述する。
また、接触抵抗特定部4はインピーダンスZ
RmaxのレジスタンスR
pw+R
ctからインピーダンスZ
RminのレジスタンスR
pwを減算することで、赤血球の界面における接触抵抗R
ct(=(R
pw+R
ct)−R
pw)を算出する処理を実施する。
なお、接触抵抗特定部4は接触抵抗特定手段を構成している。
【0023】
電気二重層容量特定部5は例えばCPUを実装している半導体集積回路、ワンチップマイコン、あるいは、パーソナルコンピュータなどから構成されており、インピーダンス計測部3により計測されたインピーダンスZ(各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合の電極2
1,2
2間のインピーダンスZ)の中から、リアクタンスXが最大であるインピーダンスZ
Xmaxを探索する処理を実施する。
また、電気二重層容量特定部5はインピーダンス計測部3によりインピーダンスZ
Xmaxが計測される際に印加された交流電圧V(f
n)の周波数f
n(以下、この周波数f
nを「周波数f
maxC」と称する)と、接触抵抗特定部4により特定された接触抵抗R
ctとから、赤血球の界面における電気二重層容量C
dlを特定する処理を実施する。
なお、電気二重層容量特定部5は電気二重層容量特定手段を構成している。
【0024】
凝集状態変化認定部6は例えばCPUを実装している半導体集積回路、ワンチップマイコン、あるいは、パーソナルコンピュータなどから構成されており、電気二重層容量特定部5により特定された電気二重層容量C
dlが予め設定された下限容量Cl
thより小さい場合、赤血球の凝集状態に変化がある旨(即ち、赤血球が凝集している旨)を認定して、その認定結果を出力する処理を実施する。なお、凝集状態変化認定部6は凝集状態変化認定手段を構成している。
認定結果提示部7は例えば液晶表示器やスピーカなどから構成されており、凝集状態変化認定部6から出力された認定結果の表示や音声出力を行う。
【0025】
図1の例では、赤血球モニターの構成要素である電極2
1,2
2、インピーダンス計測部3、接触抵抗特定部4、電気二重層容量特定部5、凝集状態変化認定部6及び認定結果提示部7のそれぞれが専用のハードウェアで構成されているものについて示したが、赤血球モニターの構成要素の一部(例えば、インピーダンス計測部3、接触抵抗特定部4、電気二重層容量特定部5、凝集状態変化認定部6及び認定結果提示部7)が1つのコンピュータで構成されていてもよい。
【0026】
例えば、インピーダンス計測部3、接触抵抗特定部4、電気二重層容量特定部5、凝集状態変化認定部6及び認定結果提示部7を1つのコンピュータで構成する場合、インピーダンス計測部3、接触抵抗特定部4、電気二重層容量特定部5、凝集状態変化認定部6及び認定結果提示部7の処理内容を記述しているプログラムを当該コンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
図3はこの発明の実施の形態1による赤血球のモニタリング方法(赤血球モニターの処理内容)を示すフローチャートである。
【0027】
次に動作について説明する。
この実施の形態1では、赤血球モニターが人工心臓における赤血球の凝集状態(血栓が発生する予兆の段階)を検知する例を説明する。
この赤血球モニターは、人工心臓の動脈送血管1(例えば、直径が10mm程度の管路)を流れる血液中の赤血球の表面積を把握することで、複数の赤血球が塊になって流れている状態(血液が凝固している状態)であるか否かを判別するものである。
【0028】
ここで、
図4は赤血球が血漿中に存在する場合の電気抵抗の種類を示す説明図である。
図4において、抵抗R1は赤血球11の内部の電気抵抗であり、R2は血漿12の電気抵抗である。
また、R3は赤血球11と赤血球11の接触界面における電気抵抗であり、R4は赤血球11と血漿12の接触界面における電気抵抗である。
さらに、R5は赤血球11と電極2
1の接触界面における電気抵抗であり、R6は血漿12と電極2
2の接触界面における電気抵抗である。
【0029】
人工心臓の動脈送血管1の周囲に設置されている2個の電極2
1,2
2に直流電圧を印加して、電極2
1,2
2間の抵抗を測定しても、電気抵抗R1〜R6のそれぞれを区別することができないが、2個の電極2
1,2
2に印加する交流電圧V(f
n)の周波数f
n(n=1,2,・・・,N)を順次切り換えながら、各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合の電極2
1,2
2間のインピーダンスZを計測(インピーダンスZの実数成分であるレジスタンスRと、インピーダンスZの虚数成分であるリアクタンスXを計測)すれば、電気抵抗R1〜R6のそれぞれを区別することができる。
【0030】
これらの電気抵抗R1〜R6の中で、赤血球の内部の電気抵抗R1と、血漿の電気抵抗R2とは、緩和時間が短く応答速度が速い特性を有しているが、電気抵抗R3〜R6は、緩和時間が長く応答速度が遅い特性を有している。
一般的には、赤血球と赤血球の接触界面における電気抵抗R3は、赤血球と血漿の接触界面における電気抵抗R4よりも小さい場合が多く、赤血球の界面における電気抵抗成分である接触抵抗R
ctのみを抽出することができる(接触抵抗R
ctの抽出方法は後述する)。
【0031】
また、赤血球が誘電体である場合、赤血球の界面には電気抵抗の他に、電気二重層容量が形成される。
動脈送血管1の周囲に設置されている電極2
1,2
2は金属であるため、一般的には、電極2
1,2
2の界面における電気二重層容量は無視することができ、赤血球の界面における電気二重層容量C
dlのみを抽出することができる(電気二重層容量C
dlの抽出方法は後述する)。
【0032】
ここで、赤血球の界面における電気二重層容量C
dlは、赤血球の表面積の関数となるものである。
したがって、赤血球の界面における電気二重層容量C
dlを抽出し、その電気二重層容量C
dlが小さければ、赤血球の表面積が小さいことになるため、血液の凝固が生じていると考えられる。
即ち、複数の赤血球が凝固(凝集)していると、複数の赤血球の表面同士がくっついて、複数の赤血球がバラバラの状態で流れている場合の赤血球の個数よりも赤血球の個数が少なくなって、赤血球の表面が減少する。そのため、複数の赤血球が凝固している場合、複数の赤血球が凝固していない場合(複数の赤血球がバラバラの状態で流れている場合)の赤血球の表面積の総和と比較し、複数の赤血球の体積の総和が同じであっても、赤血球の表面積の総和が小さくなる。
一方、その電気二重層容量C
dlが大きければ、赤血球の表面積が大きいことになるため、血液の凝固が生じていないと考えられる。
これにより、赤血球の界面における電気二重層容量C
dl及び赤血球の表面積は、血液凝固が生じているか否かの指標とすることができる。
【0033】
以下、
図1の赤血球モニターの処理内容を具体的に説明する。
まず、インピーダンス計測部3は、2個の電極2
1,2
2の間に印加する交流電圧V(f
n)の周波数f
nをf
1(例えば、f
1=1MHz)に設定し(
図3のステップST1)、周波数f
1の交流電圧V(f
1)を2個の電極2
1,2
2の間に印加する(ステップST2)。
インピーダンス計測部3は、周波数f
1の交流電圧V(f
1)を印加すると、2個の電極2
1,2
2間のインピーダンスZとして、そのインピーダンスZの実数成分であるレジスタンスRと、そのインピーダンスZの虚数成分であるリアクタンスXを計測する(ステップST3)。
インピーダンス計測部3は、その計測結果である電極2
1,2
2間のインピーダンスZを例えば内部のメモリに記録する(ステップST4)。
【0034】
インピーダンス計測部3は、周波数f
1の交流電圧V(f
1)が印加された場合の電極2
1,2
2間のインピーダンスZの計測が完了すると、2個の電極2
1,2
2の間に印加する交流電圧V(f
n)の周波数f
nをf
2(例えば、f
2=1.05MHz)に高める変更を行って(ステップST6)、周波数f
2の交流電圧V(f
2)を2個の電極2
1,2
2の間に印加する(ステップST2)。
インピーダンス計測部3は、周波数f
2の交流電圧V(f
2)を印加すると、2個の電極2
1,2
2間のインピーダンスZとして、そのインピーダンスZの実数成分であるレジスタンスRと、そのインピーダンスZの虚数成分であるリアクタンスXを計測する(ステップST3)。
インピーダンス計測部3は、その計測結果である電極2
1,2
2間のインピーダンスZを例えば内部のメモリに記録する(ステップST4)。
【0035】
インピーダンス計測部3は、周波数f
Nの交流電圧V(f
N)が印加された場合の電極2
1,2
2間のインピーダンスZの計測が完了するまで、ステップST2〜ST6の処理を繰り返し実施する。
即ち、インピーダンスZの計測回数がN回に到達するまで、ステップST2〜ST6の処理を繰り返し実施する(ステップST5)。
【0036】
インピーダンス計測部3は、周波数f
Nの交流電圧V(f
N)が印加された場合の電極2
1,2
2間のインピーダンスZの計測が完了すると、
図5に示すように、内部のメモリに記録にしている各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合のインピーダンスZを複素平面(横軸:レジスタンスR、縦軸:リアクタンスX)上にプロットすることで、その複素平面上に描かれるインピーダンスZの軌跡であるCole−Coleプロットを生成する(ステップST7)。
図5はCole−Coleプロットの一例を示す説明図であり、渦巻き状のCole−Coleプロットが生成される。
【0037】
ここで、
図6A及び
図6Bは血液を異なる速度(2.625×10
-6m
3/s、及び、6.5625×10
-6m
3/s)で流して、インピーダンスZを計測した場合の実験結果を示す説明図である。
図6A及び
図6Bの実験結果は、赤血球の表面積の相違や血液が流れる速度の相違で、生成されるCole−Coleプロットの形状が変化することを表している。
図6A及び
図6Bにおいて、φは赤血球の表面積であり、φ=0.6とφ=0.3の場合を示している。
【0038】
図7は血漿と赤血球が混在している動脈送血管1の内部における電気的成分を示す等価回路である。
図7において、R
pwは血漿の電気抵抗(上記の電気抵抗R2に相当する)であり、R
ctは赤血球の界面における接触抵抗(上記の電気抵抗R3に相当する)である。
また、C
dlは赤血球の界面における電気二重層容量(上記の電気抵抗R4に相当する)である。
さらに、Lは赤血球と電極の接触界面におけるインダクタンス(上記の電気抵抗R5に相当する)であり、R
Lは血漿と電極の接触界面における電気抵抗(上記の電気抵抗R6に相当する)である。
なお、Z
FはインダクタンスL及び電気抵抗R
Lの直列回路と接触抵抗R
ctからなる並列回路のファラデーインピーダンスである。
【0039】
動脈送血管1の内部における電気的成分が
図7の等価回路で表される場合、インピーダンス計測部3により計測されるインピーダンスZは、下記の式(1)のように表される。
【0040】
【数1】
ただし、jは虚数単位、ωは交流の角振動数である。
【0041】
また、動脈送血管1の内部における電気的成分が
図7の等価回路で表される場合、インピーダンス計測部3により生成されるCole−Coleプロットは、
図8に示すようなプロットになる。
【0042】
【数2】
ただし、a
1,a
2,a
Xは電気抵抗に関する定数、f
maxCはリアクタンスXが最大であるインピーダンスZ
Xmaxが計測される際に印加された交流電圧Vの周波数である。
また、f
maxLはインダクタンスLが最大であるインピーダンスZ
Lmaxが計測される際に印加された交流電圧Vの周波数である。
【0043】
ここでは、インピーダンス計測部3が2個の電極2
1,2
2の間に印加する交流電圧V(f
n)の周波数f
nを段階的に高めていく例を示したが、交流電圧V(f
n)の周波数f
nを段階的に下げていくようにしてもよい。
また、交流電圧V(f
n)の周波数f
nの間隔は、等間隔でもよいし、不等間隔でもよい。
例えば、交流電圧V(f
n)の周波数f
nの間隔を不等間隔とする場合、レジスタンスRが最大になるインピーダンスZ
Rmax、レジスタンスRが最小になるインピーダンスZ
Rminや、リアクタンスXが最大になるインピーダンスZ
Xmaxが計測される可能性が高いと考えられる周波数f
nの付近の間隔を、これらのインピーダンスが計測される可能性が低いと考えられる周波数f
nの付近の間隔よりも狭くする態様が考えられる。
【0044】
接触抵抗特定部4は、インピーダンス計測部3がCole−Coleプロットを生成すると、そのCole−Coleプロットを参照して、各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合のインピーダンスZのレジスタンスRを比較し、レジスタンスRが最大であるインピーダンスZ
Rmaxを探索する(ステップST8)。
図8の例では、レジスタンスRが最大であるインピーダンスZ
Rmaxとして、レジスタンスが「R
pw+R
ct」であるインピーダンスが探索される。
【0045】
次に、接触抵抗特定部4は、Cole−Coleプロットを参照して、各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合のインピーダンスZのレジスタンスRを比較し、レジスタンスRが最小であるインピーダンスZ
Rminを探索する(ステップST9)。
図8の例では、レジスタンスRが最小であるインピーダンスZ
Rminとして、レジスタンスが「R
pw」であるインピーダンスが探索される。
【0046】
接触抵抗特定部4は、インピーダンスZ
RmaxとインピーダンスZ
Rminを探索すると、そのインピーダンスZ
RmaxのレジスタンスR
pw+R
ctから、インピーダンスZ
RminのレジスタンスR
pwを減算することで、赤血球の界面における接触抵抗R
ctを算出する(ステップST10)。
R
ct=(R
pw+R
ct)−R
pw (6)
【0047】
ここでは、接触抵抗特定部4が、インピーダンスZ
RmaxのレジスタンスR
pw+R
ctから、インピーダンスZ
RminのレジスタンスR
pwを減算することで、赤血球の界面における接触抵抗R
ctを算出する方法を示したが、これは一例に過ぎず、他の方法で、赤血球の界面における接触抵抗R
ctを特定するようにしてもよい。
例えば、過去の接触抵抗R
ctの算出結果や実験結果などに基づいて、各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合のインピーダンスZと、赤血球の界面における接触抵抗R
ctとの対応関係を示すマップを予め作成し、接触抵抗特定部4が、当該マップを参照して、インピーダンス計測部3により計測されたインピーダンスZから、赤血球の界面における接触抵抗R
ctを特定するようにしてもよい。
【0048】
電気二重層容量特定部5は、インピーダンス計測部3がCole−Coleプロットを生成すると、そのCole−Coleプロットを参照して、各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合のインピーダンスZのリアクタンスXを比較し、リアクタンスXが最大であるインピーダンスZ
Xmaxを探索する(ステップST11)。
図8の例では、リアクタンスXが最大であるインピーダンスZ
Xmaxとして、周波数f
maxCの交流電圧V(f
maxC)が印加された場合に計測されたインピーダンスが探索される。
【0049】
電気二重層容量特定部5は、インピーダンスZ
Xmaxを探索すると、インピーダンス計測部3によりインピーダンスZ
Xmaxが計測される際に印加された交流電圧V(f
maxC)の周波数f
maxCと、接触抵抗特定部4により特定された接触抵抗R
ctとを上記の式(3)に代入して、赤血球の界面における電気二重層容量C
dlを算出する(ステップST12)。
【0050】
ここでは、電気二重層容量特定部5が、インピーダンス計測部3によりインピーダンスZ
Xmaxが計測される際に印加された交流電圧V(f
maxC)の周波数f
maxCと、接触抵抗特定部4により特定された接触抵抗R
ctとを上記の式(3)に代入して、赤血球の界面における電気二重層容量C
dlを算出する方法を示したが、これは一例に過ぎず、他の方法で、赤血球の界面における電気二重層容量C
dlを特定するようにしてもよい。
例えば、過去の電気二重層容量C
dlの算出結果や実験結果などに基づいて、赤血球の界面における接触抵抗R
ctと電気二重層容量C
dlの対応関係を示すマップを予め作成し、電気二重層容量特定部5が、当該マップを参照して、接触抵抗特定部4により特定された接触抵抗R
ctから、赤血球の界面における電気二重層容量C
dlを特定するようにしてもよい。
【0051】
凝集状態変化認定部6は、電気二重層容量特定部5が電気二重層容量C
dlを算出すると、その電気二重層容量C
dlと予め設定された下限容量Cl
thを比較する。
ただし、下限容量Cl
thは、実験等により得られる閾値であるが、例えば、統計的に血栓が形成される確率が30%や50%、あるいは、80%以上の電気二重層容量C
dlを閾値とする態様が考えられる。
凝集状態変化認定部6は、電気二重層容量C
dlと下限容量Cl
thを比較して、その電気二重層容量C
dlが下限容量Cl
thより小さい場合(ステップST13)、赤血球の表面積が小さいので、赤血球の凝集状態に変化がある旨(赤血球が凝集している旨)を認定して、その認定結果を出力する(ステップST14)。
【0052】
ここでは、凝集状態変化認定部6は、1個の下限容量Cl
thが設定されて、1個の下限容量Cl
thと電気二重層容量C
dlを比較するものについて示したが、値が異なる複数個の下限容量Cl
thが設定されて、複数個の下限容量Cl
thと電気二重層容量C
dlを比較するようにしてもよい。
例えば、統計的に赤血球の凝集が問題となる確率が10%以上の電気二重層容量に相当する下限容量Cl
th,1と、統計的に赤血球の凝集が問題となる確率が80%以上の電気二重層容量に相当する下限容量Cl
th,2とが設定されている場合、凝集状態変化認定部6が、下限容量Cl
t,1、Cl
th,2と電気二重層容量C
dlを比較する。
そして、凝集状態変化認定部6は、電気二重層容量C
dl<下限容量Cl
th,2であれば、赤血球の凝集状態に大きな変化がある旨を認定して、その認定結果を出力し、下限容量Cl
th,2≦電気二重層容量C
dl<下限容量Cl
th,1であれば、赤血球の凝集状態に小さな変化がある旨を認定して、その認定結果を出力するようにする。
【0053】
認定結果提示部7は、凝集状態変化認定部6から赤血球の凝集状態に変化がある旨を示す認定結果を受けると、その認定結果を示すメッセージ等をディスプレイに表示する。あるいは、その認定結果を示すメッセージ等をスピーカから音声出力する(ステップST15)。
なお、認定結果提示部7は、凝集状態変化認定部6から認定結果を受けなければ、赤血球の凝集状態に変化がない旨を示すメッセージ等をディスプレイに表示する。あるいは、赤血球の凝集状態に変化がない旨を示すメッセージ等をスピーカから音声出力する。あるいは、メッセージ等の表示や音声出力を行わない。
【0054】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、人工心臓の動脈送血管1の周囲に設置されている2個の電極2
1,2
2の間に、周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合の電極2
1,2
2間のインピーダンスZを計測するインピーダンス計測部3と、インピーダンス計測部3により計測された電極2
1,2
2間のインピーダンスZから赤血球の界面における接触抵抗R
ctを特定する接触抵抗特定部4とを設け、電気二重層容量特定部5が接触抵抗特定部4により特定された接触抵抗R
ctを用いて、赤血球の界面における電気二重層容量C
dlを特定するように構成したので、その電気二重層容量C
dlから赤血球の表面積を把握することができるようになり、その結果、赤血球の凝集状態の変化を迅速かつ正確に検知し、ひいては血栓を予兆の段階で検知することができる効果を奏する。
【0055】
また、この実施の形態1によれば、電気二重層容量特定部5により特定された電気二重層容量C
dlが予め設定された下限容量Cl
thより小さい場合、赤血球の凝集状態に変化がある旨を認定して、その認定結果を出力する凝集状態変化認定部6を設けるように構成したので、電気二重層容量C
dlと赤血球の表面積との対応関係が分からないユーザでも、赤血球の凝集状態に変化があることを速やかに認識することができる効果を奏する。
【0056】
また、この実施の形態1によれば、2個の電極2
1,2
2が人工心臓の動脈送血管1の周囲に設置されているように構成したので、人工心臓における赤血球の凝集状態の変化を検知することができる効果を奏する。
【0057】
なお、この実施の形態1では、予め下限容量Cl
thが凝集状態変化認定部6に設定されているものについて示したが、その下限容量Cl
thの設定を受け付けるマンマシンインタフェース部(例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなど)を実装し、ユーザがマンマシンインタフェース部を操作して、その下限容量Cl
thを適宜設定するようにしてもよい。
【0058】
これにより、赤血球の凝集が問題となる確率が少しでもあれば、凝集状態変化認定部6から赤血球の凝集状態に変化がある旨の認定結果が出力されることをユーザが希望する場合、ユーザがマンマシンインタフェース部を操作して、例えば、統計的に赤血球の凝集が問題となる確率が10%以上の電気二重層容量C
dlが下限容量Cl
thとなるように設定すればよい。
一方、赤血球の凝集が問題となる確率がかなり高いときに限り、凝集状態変化認定部6から赤血球の凝集状態に変化がある旨の認定結果が出力されることをユーザが希望する場合、ユーザがマンマシンインタフェース部を操作して、例えば、統計的に赤血球の凝集が問題となる確率が90%以上の電気二重層容量C
dlが下限容量Cl
thとなるように設定すればよい。
【0059】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、動脈送血管1の周囲に2個の電極2
1,2
2が設置されているものを示したが、動脈送血管1の周囲にM(M≧3)個の電極2
1,2
2,・・・,2
Mが設置されていてもよい。
この実施の形態2では、M個の電極2
1,2
2,・・・,2
Mを動脈送血管1の周囲に設置することにより、動脈送血管1内で、流れている位置が異なる複数の赤血球の界面における電気二重層容量を特定する例を説明する。
【0060】
図9はこの発明の実施の形態2による赤血球モニターを示す構成図である。
図10は周囲にM個の電極が設置されている人工心臓の動脈送血管を示す断面図である。
図9及び
図10において、人工心臓の動脈送血管1は患者の血管と接続されており、周囲にはM個の電極2
1,2
2,・・・,2
Mが設置されている。
電極選択部11はM個の電極2
1〜2
Mの中から、インピーダンス計測部12による計測対象の2個の電極2
i,2
jを順次選択する切換スイッチである。
【0061】
インピーダンス計測部12は例えばLCRメータなどから構成されており、電極選択部11により選択された2個の電極2
i,2
jの間に印加される交流電圧V(f
n)の周波数f
n(n=1,2,・・・,N)を順次切り換えながら、各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合の電極2
i,2
j間のインピーダンスZ
i,jを計測(インピーダンスZ
i,jの実数成分であるレジスタンスR
i,jと、インピーダンスZの虚数成分であるリアクタンスX
i,jを計測)する処理を実施する。
例えば、電極選択部11により選択された2個の電極が電極2
iと電極2
jである場合、Z
i,jは電極2
iと電極2
jの間のインピーダンスとなる。
例えば、M=12であれば、2個の電極2
i,2
jの組み合わせが66通りになるため、66通りのインピーダンスZ
i,jを計測する。
なお、電極選択部11及びインピーダンス計測部12からインピーダンス計測手段が構成されている。
【0062】
接触抵抗特定部13は例えばCPUを実装している半導体集積回路、ワンチップマイコン、あるいは、パーソナルコンピュータなどから構成されており、インピーダンス計測部12により計測されたインピーダンスZ
i,jから、血液が流れている動脈送血管1内で、流れている位置が異なる複数の赤血球の界面における接触抵抗R
ct−i,jを特定する処理を実施する。
即ち、接触抵抗特定部13はインピーダンス計測部12により計測されたインピーダンスZ
i,j(各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合の電極2
i,2
j間のインピーダンスZ
i,j)の中から、レジスタンスR
i,jが最大であるインピーダンスZ
Rmax−i,j(レジスタンスが「R
pw−i,j+R
ct−i,j」であるインピーダンス)を探索するとともに、レジスタンスR
i,jが最小であるインピーダンスZ
Rmin−i,j(レジスタンスが「R
pw−i,j」であるインピーダンス)を探索する処理を実施する。
また、接触抵抗特定部13はインピーダンスZ
Rmax−i,jのレジスタンスR
pw−i,j+R
ct−i,jからインピーダンスZ
Rmin−i,jのレジスタンスR
pw−i,jを減算することで、赤血球の界面における接触抵抗R
ct−i,j(=(R
pw−i,j+R
ct−i,j)−R
pw−i,j)を算出する処理を実施する。
なお、接触抵抗特定部13は接触抵抗特定手段を構成している。
【0063】
電気二重層容量特定部14は例えばCPUを実装している半導体集積回路、ワンチップマイコン、あるいは、パーソナルコンピュータなどから構成されており、接触抵抗特定部13より特定された接触抵抗R
ct−i,jを用いて、流れている位置が異なる複数の赤血球の界面における電気二重層容量C
dl−i,jを特定する処理を実施する。
即ち、電気二重層容量特定部14はインピーダンス計測部12により計測されたインピーダンスZ
i,j(各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合の電極2
i,2
j間のインピーダンスZ
i,j)の中から、リアクタンスX
i,jが最大であるインピーダンスZ
Xmax−i,jを探索する処理を実施する。
また、電気二重層容量特定部14はインピーダンス計測部12によりインピーダンスZ
Xmax−i,jが計測される際に印加された交流電圧V(f
n)の周波数f
n(以下、この周波数f
nを「周波数f
maxC−i,j」と称する)と、接触抵抗特定部4により特定された接触抵抗R
ct−i,jとから、赤血球の界面における電気二重層容量C
dl−i,jを算出する処理を実施する。
なお、電気二重層容量特定部14は電気二重層容量特定手段を構成している。
【0064】
凝集状態変化認定部15は例えばCPUを実装している半導体集積回路、ワンチップマイコン、あるいは、パーソナルコンピュータなどから構成されており、電気二重層容量特定部14により特定された電気二重層容量C
dl−i,jが予め設定された下限容量Cl
thより小さい場合、赤血球の凝集状態に変化がある旨を認定して、その認定結果を出力するとともに、赤血球の凝集状態が変化している位置を示す情報を出力する処理を実施する。
なお、凝集状態変化認定部15は凝集状態変化認定手段を構成している。
【0065】
認定結果提示部16は例えば液晶表示器やスピーカなどから構成されており、凝集状態変化認定部15から出力された認定結果の表示や音声出力を行うとともに、赤血球の凝集状態が変化している位置の表示を行う。
【0066】
図9の例では、赤血球モニターの構成要素である電極2
1,2
2,・・・,2
M、電極選択部11、インピーダンス計測部12、接触抵抗特定部13、電気二重層容量特定部14、凝集状態変化認定部15及び認定結果提示部16のそれぞれが専用のハードウェアで構成されているものについて示したが、赤血球モニターの構成要素の一部(例えば、電極選択部11、インピーダンス計測部12、接触抵抗特定部13、電気二重層容量特定部14、凝集状態変化認定部15及び認定結果提示部16)が1つのコンピュータで構成されていてもよい。
【0067】
例えば、電極選択部11、インピーダンス計測部12、接触抵抗特定部13、電気二重層容量特定部14、凝集状態変化認定部15及び認定結果提示部16を1つのコンピュータで構成する場合、電極選択部11、インピーダンス計測部12、接触抵抗特定部13、電気二重層容量特定部14、凝集状態変化認定部15及び認定結果提示部16の処理内容を記述しているプログラムを当該コンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
図11はこの発明の実施の形態2による赤血球のモニタリング方法(赤血球モニターの処理内容)を示すフローチャートである。
【0068】
次に動作について説明する。
電極選択部11は、例えば、インピーダンス計測部12の指示の下、M個の電極2
1〜2
Mの中から、インピーダンス計測部12による計測対象の2個の電極2
i,2
jを順次選択し、2個の電極2
i,2
jをインピーダンス計測部12と電気的に接続する(ステップST21)。
例えば、M個の電極2
1〜2
Mの中から、下記の順番で、2個の電極2
i,2
jを選択して、2個の電極2
i,2
jをインピーダンス計測部12と電気的に接続する。
(電極2
1+電極2
2)→(電極2
1+電極2
3)→・・・→(電極2
1+電極2
M)
→(電極2
2+電極2
3)→(電極2
2+電極2
4)→・・・→(電極2
2+電極2
M)
:
→(電極2
M−1+電極2
M)
例えば、M=12であれば、2個の電極2
i,2
jの組み合わせは66通りになる。
【0069】
インピーダンス計測部12は、電極選択部11が2個の電極2
i,2
jを選択することで(この段階では、説明の便宜上、電極選択部11が電極2
1,2
2を選択しているものとする)、電極2
1及び電極2
2と電気的に接続されると、2個の電極2
1,2
2の間に印加する交流電圧V(f
n)の周波数f
nをf
1(例えば、f
1=1MHz)に設定し(ステップST22)、周波数f
1の交流電圧V(f
1)を2個の電極2
1,2
2の間に印加する(ステップST23)。
インピーダンス計測部12は、周波数f
1の交流電圧V(f
1)を印加すると、2個の電極2
1,2
2間のインピーダンスZ
1,2として、そのインピーダンスZ
1,2の実数成分であるレジスタンスR
1,2と、そのインピーダンスZ
1,2の虚数成分であるリアクタンスX
1,2を計測する(ステップST24)。
インピーダンス計測部12は、計測結果である電極2
1,2
2間のインピーダンスZ
1,2を例えば内部のメモリに記録する(ステップST25)。
【0070】
インピーダンス計測部12は、周波数f
1の交流電圧V(f
1)が印加された場合の電極2
1,2
2間のインピーダンスZの計測が完了すると、2個の電極2
1,2
2の間に印加する交流電圧V(f
n)の周波数f
nをf
2(例えば、f
2=1.05MHz)に高める変更を行って(ステップST27)、周波数f
2の交流電圧V(f
2)を2個の電極2
1,2
2の間に印加する(ステップST23)。
インピーダンス計測部12は、周波数f
2の交流電圧V(f
2)を印加すると、2個の電極2
1,2
2間のインピーダンスZ
1,2として、そのインピーダンスZ
1,2の実数成分であるレジスタンスR
1,2と、そのインピーダンスZ
1,2の虚数成分であるリアクタンスX
1,2を計測する(ステップST24)。
インピーダンス計測部12は、計測結果である電極2
1,2
2間のインピーダンスZ
1,2を例えば内部のメモリに記録する(ステップST25)。
【0071】
インピーダンス計測部12は、周波数f
Nの交流電圧V(f
N)が印加された場合の電極2
1,2
2間のインピーダンスZ
1,2の計測が完了するまで、ステップST23〜ST27の処理を繰り返し実施する。
即ち、インピーダンスZ
1,2の計測回数がN回に到達するまで、ステップST23〜ST27の処理を繰り返し実施する(ステップST26)。
【0072】
次に、電極選択部11は、2個の電極2
1,2
3を選択する(ステップST21)。
インピーダンス計測部12は、電極選択部11が2個の電極2
1,2
3を選択すると(ステップST21)、2個の電極2
1,2
2が選択された場合と同様にして、電極2
1,2
3間のインピーダンスZ
1,3を計測して、そのインピーダンスZ
1,3を例えば内部のメモリに記録する。
即ち、インピーダンス計測部12は、2個の電極2
i,2
jについて、電極選択部11により全ての組み合わせが選択されるまで、ステップST21〜ST27の処理を繰り返し実施する(ステップST28)。
これにより、例えば、M=12であれば、全部で66通りのインピーダンスZ
1,2,Z
1,3,・・・,Z
M−1,Mが計測されて、これらのインピーダンスZ
1,2,Z
1,3,・・・,Z
M−1,Mが例えば内部のメモリに記録される。
【0073】
インピーダンス計測部12は、インピーダンスZ
1,2,Z
1,3,・・・,Z
M−1,Mの計測が完了すると、
図5に示すように、電極選択部11により選択される2個の電極2
i,2
jの組み合わせ毎に、内部のメモリに記録にしている各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合のインピーダンスZ
i,jを複素平面(横軸:レジスタンスR
i,j、縦軸:リアクタンスX
i,j)上にプロットすることで、その複素平面上に描かれるインピーダンスZ
i,jの軌跡であるCole−Coleプロットを生成する(ステップST29)。
【0074】
ここで、
図12は血漿と赤血球が混在している動脈送血管1の内部における電気的成分を示す等価回路である。
図12において、R
pw−i,jは電極2
iと電極2
jの間に存在している血漿の電気抵抗(上記の電気抵抗R2に相当する)であり、R
ct−i,jは電極2
iと電極2
jの間に存在している赤血球の界面における接触抵抗(上記の電気抵抗R3に相当する)である。
また、C
dl−i,jは電極2
iと電極2
jの間に存在している赤血球の界面における電気二重層容量(上記の電気抵抗R4に相当する)である。
さらに、L
i,jは電極2
iと電極2
jの間に存在している赤血球と電極2
i,2
jの接触界面におけるインダクタンス(上記の電気抵抗R5に相当する)であり、R
L−i,jは電極2
iと電極2
jの間に存在している血漿と電極2
i,2
jの接触界面における電気抵抗(上記の電気抵抗R6に相当する)である。
なお、Z
F−i,jはインダクタンスL
i,j及び電気抵抗R
L−i,jの直列回路と接触抵抗R
ct−i,jからなる並列回路のファラデーインピーダンスである。
【0075】
動脈送血管1の内部における電気的成分が
図12の等価回路で表される場合、インピーダンス計測部12により計測されるインピーダンスZ
i,jは、下記の式(11)のように表される。
【0076】
【数3】
ただし、jは虚数単位、ωは交流の角振動数である。
【0077】
また、動脈送血管1の内部における電気的成分が
図12の等価回路で表される場合、インピーダンス計測部12により生成されるCole−Coleプロットは、
図13に示すようなプロットになる。
【0078】
【数4】
ただし、a
1−i,j,a
2−i,j,a
X−i,jは電気抵抗に関する定数、f
maxC−i,jはリアクタンスX
i,jが最大であるインピーダンスZ
Xmax−i,jが計測される際に印加された交流電圧Vの周波数である。
また、f
maxL−i,jはインダクタンスL
i,jが最大であるインピーダンスZ
Lmax−i,jが計測される際に印加された交流電圧Vの周波数である。
【0079】
ここでは、インピーダンス計測部12が2個の電極2
i,2
jの間に印加する交流電圧V(f
n)の周波数f
nを段階的に高めていく例を示したが、交流電圧V(f
n)の周波数f
nを段階的に下げていくようにしてもよい。
また、交流電圧V(f
n)の周波数f
nの間隔は、等間隔でもよいし、不等間隔でもよい。
例えば、交流電圧V(f
n)の周波数f
nの間隔を不等間隔とする場合、レジスタンスR
i,jが最大になるインピーダンスZ
Rmax−i,j、レジスタンスR
i,jが最小になるインピーダンスZ
Rmin−i,jや、リアクタンスX
i,jが最大になるインピーダンスZ
Xmax−i,jが計測される可能性が高いと考えられる周波数f
nの付近の間隔を、これらのインピーダンスが計測される可能性が低いと考えられる周波数f
nの付近の間隔よりも狭くする態様が考えられる。
【0080】
接触抵抗特定部13は、インピーダンス計測部12が電極選択部11により選択される2個の電極2
i,2
jの組み合わせ毎に、Cole−Coleプロットを生成すると、2個の電極2
i,2
jの組み合わせに対応するCole−Coleプロットを参照して、各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合のインピーダンスZ
i,jのレジスタンスR
i,jを比較し、レジスタンスR
i,jが最大であるインピーダンスZ
Rmax−i,jを探索する(ステップST30)。
図13の例では、レジスタンスR
i,jが最大であるインピーダンスZ
Rmax−i,jとして、レジスタンスが「R
pw−i,j+R
ct−i,j」であるインピーダンスが探索される。
【0081】
次に、接触抵抗特定部13は、2個の電極2
i,2
jの組み合わせに対応するCole−Coleプロットを参照して、各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合のインピーダンスZ
i,jのレジスタンスR
i,jを比較し、レジスタンスR
i,jが最小であるインピーダンスZ
Rmin−i,jを探索する(ステップST31)。
図13の例では、レジスタンスR
i,jが最小であるインピーダンスZ
Rmin−i,jとして、レジスタンスが「R
pw−i,j」であるインピーダンスが探索される。
【0082】
接触抵抗特定部13は、インピーダンスZ
Rmax−i,jとインピーダンスZ
Rmin−i,jを探索すると、そのインピーダンスZ
Rmax−i,jのレジスタンスR
pw−i,j+R
ct−i,jから、インピーダンスZ
Rmin−i,jのレジスタンスR
pw−i,jを減算することで、赤血球の界面における接触抵抗R
ct−i,jを算出する(ステップST32)。
R
ct−i,j=(R
pw−i,j+R
ct−i,j)−R
pw−i,j (16)
これにより、電極選択部11により選択される2個の電極2
i,2
jの組み合わせ毎に、赤血球の界面における接触抵抗R
ct−i,jが算出される。
【0083】
ここでは、接触抵抗特定部13が、インピーダンスZ
Rmax−i,jのレジスタンスR
pw−i,j+R
ct−i,jから、インピーダンスZ
Rmin−i,jのレジスタンスR
pw−i,jを減算することで、赤血球の界面における接触抵抗R
ct−i,jを算出する方法を示したが、これは一例に過ぎず、他の方法で、赤血球の界面における接触抵抗R
ct−i,jを特定するようにしてもよい。
例えば、過去の接触抵抗R
ct−i,jの特定結果や実験結果などに基づいて、各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合のインピーダンスZ
i,jと、赤血球の界面における接触抵抗R
ct−i,jとの対応関係を示すマップを予め作成し、接触抵抗特定部13が、当該マップを参照して、インピーダンス計測部12により計測されたインピーダンスZ
i,jから、赤血球の界面における接触抵抗R
ct−i,jを特定するようにしてもよい。
【0084】
電気二重層容量特定部14は、インピーダンス計測部12が電極選択部11により選択される2個の電極2
i,2
jの組み合わせ毎に、Cole−Coleプロットを生成すると、2個の電極2
i,2
jの組み合わせに対応するCole−Coleプロットを参照して、各周波数f
nの交流電圧V(f
n)が印加された場合のインピーダンスZ
i,jのリアクタンスX
i,jを比較し、リアクタンスX
i,jが最大であるインピーダンスZ
Xmax−i,jを探索する(ステップST33)。
図13の例では、リアクタンスX
i,jが最大であるインピーダンスZ
Xmax−i,jとして、周波数f
maxC−i,jの交流電圧V(f
maxC−i,j)が印加された場合に計測されたインピーダンスが探索される。
【0085】
電気二重層容量特定部14は、インピーダンスZ
Xmax−i,jを探索すると、インピーダンス計測部12によりインピーダンスZ
Xmax−i,jが計測される際に印加された交流電圧V(f
maxC−i,j)の周波数f
maxC−i,jと、接触抵抗特定部13により特定された接触抵抗R
ct−i,jとを上記の式(13)に代入して、電極2
iと電極2
jの間に存在している赤血球の界面における電気二重層容量C
dl−i,jを算出する(ステップST34)。
これにより、電極選択部11により選択される2個の電極2
i,2
jの組み合わせ毎に、赤血球の界面における電気二重層容量C
dl−i,jが特定される。
【0086】
ここでは、電気二重層容量特定部14が、インピーダンス計測部12によりインピーダンスZ
Xmax−i,jが計測される際に印加された交流電圧V(f
maxC−i,j)の周波数f
maxC−i,jと、接触抵抗特定部13により特定された接触抵抗R
ct−i,jとを上記の式(13)に代入して、赤血球の界面における電気二重層容量C
dl−i,jを算出する方法を示したが、これは一例に過ぎず、他の方法で、赤血球の界面における電気二重層容量C
dl−i,jを特定するようにしてもよい。
例えば、過去の電気二重層容量C
dl−i,jの算出結果や実験結果などに基づいて、赤血球の界面における接触抵抗R
ct−i,jと電気二重層容量C
dl−i,jの対応関係を示すマップを予め作成し、電気二重層容量特定部14が、当該マップを参照して、接触抵抗特定部13により特定された接触抵抗R
ct−i,jから、赤血球の界面における電気二重層容量C
dl−i,jを特定するようにしてもよい。
【0087】
凝集状態変化認定部15は、電気二重層容量特定部14が電極選択部11により選択される2個の電極2
i,2
jの組み合わせ毎に電気二重層容量C
dl−i,jを特定すると、2個の電極2
i,2
jの組み合わせ毎に、当該電気二重層容量C
dl−i,jと予め設定された下限容量Cl
thを比較する。
凝集状態変化認定部15は、電気二重層容量C
dl−i,jと下限容量Cl
thを比較して、その電気二重層容量C
dl−i,jが下限容量Cl
thより小さい場合(ステップST35)、電極2
iと電極2
jの間に存在している赤血球の表面積が小さいので、赤血球の凝集状態に変化がある旨(赤血球が凝集している旨)を認定して、その認定結果を出力する(ステップST36)。
また、赤血球の凝集状態が変化している位置を示す情報として、電極選択部11により選択された2個の電極2
i,2
jを示す情報を出力する。
【0088】
ここでは、凝集状態変化認定部15は、1個の下限容量Cl
thが設定されて、1個の下限容量Cl
thと電気二重層容量C
dl−i,jを比較するものについて示したが、
図1の凝集状態変化認定部6と同様に、値が異なる複数個の下限容量Cl
thが設定されて、複数個の下限容量Cl
thと電気二重層容量C
dl−i,jを比較するようにしてもよい。
また、電極選択部11により選択される2個の電極2
i,2
jの距離が長くなる程、電気二重層容量特定部14により特定される電気二重層容量C
dl−i,jが小さくなる傾向があるため、電極選択部11により選択される2個の電極2
i,2
j毎に下限容量Cl
thが設定されるようにしてもよい。
即ち、電極選択部11により選択される2個の電極2
i,2
jの距離が長い程、小さな下限容量Cl
thが設定されるようにしてもよい。
【0089】
認定結果提示部16は、凝集状態変化認定部15から赤血球の凝集状態に変化がある旨を示す認定結果を受けると、その認定結果を示すメッセージ等をディスプレイに表示する。あるいは、その認定結果を示すメッセージ等をスピーカから音声出力する(ステップST37)。
その際、凝集状態変化認定部15から赤血球の凝集状態が変化している位置を示す情報として、電極選択部11により選択された2個の電極2
i,2
jを示す情報を受けると、2個の電極2
i,2
jの間の位置を表示する。例えば、2個の電極2
i−電極2
jを結ぶ線分L
i−jを表示する。
これにより、ユーザは、赤血球の凝集状態が変化している位置が、電極2
iと電極2
jの間にあることを認識することができる。
【0090】
なお、認定結果提示部16は、凝集状態変化認定部15から認定結果を受けなければ、赤血球の凝集状態に変化がない旨を示すメッセージ等をディスプレイに表示する。あるいは、赤血球の凝集状態に変化がない旨を示すメッセージ等をスピーカから音声出力する。あるいは、メッセージ等の表示や音声出力を行わない。
【0091】
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、接触抵抗特定部13が、インピーダンス計測部12により計測されたインピーダンスZ
i,jから、血液が流れている動脈送血管1内で、流れている位置が異なる複数の赤血球の界面における接触抵抗R
ct−i,jを特定し、電気二重層容量特定部14が、接触抵抗特定部13より特定された接触抵抗R
ct−i,jを用いて、流れている位置が異なる複数の赤血球の界面における電気二重層容量C
dl−i,jを特定するように構成したので、電気二重層容量C
dl−i,jから流れている位置が異なる複数の赤血球の表面積を把握することができるようになり、その結果、赤血球の凝集状態の変化を迅速かつ正確に検知することができるとともに、赤血球の凝集状態が変化している位置を特定することができる効果を奏する。
【0092】
また、この実施の形態2によれば、電極選択部11により選択される2個の電極2
i,2
jの組み合わせ毎に、電気二重層容量特定部14により特定された電気二重層容量C
dl−i,jが予め設定された下限容量Cl
thより小さい場合、赤血球の凝集状態に変化がある旨を認定して、その認定結果を出力するとともに、赤血球の凝集状態が変化している位置を示す情報を出力する凝集状態変化認定部15を設けるように構成したので、電気二重層容量C
dl−i,jと赤血球の表面積との対応関係が分からないユーザでも、赤血球の凝集状態に変化があることを速やかに認識することができるとともに、赤血球の凝集状態が変化している位置を速やかに認識することができる効果を奏する。
【0093】
さらに、この実施の形態2によれば、M個の電極2
1〜2
Mが人工心臓の動脈送血管1の周囲に設置されているように構成したので、人工心臓における赤血球の凝集状態の変化を正確に検知することができる効果を奏する。
【0094】
なお、この実施の形態2では、予め下限容量Cl
thが凝集状態変化認定部15に設定されているものについて示したが、その下限容量Cl
thの設定を受け付けるマンマシンインタフェース部(例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなど)を実装し、ユーザがマンマシンインタフェース部を操作して、その下限容量Cl
thを適宜設定するようにしてもよい。
【0095】
これにより、赤血球の凝集が問題とされる確率が少しでもあれば、凝集状態変化認定部15から赤血球の凝集状態に変化がある旨の認定結果が出力されることをユーザが希望する場合、ユーザがマンマシンインタフェース部を操作して、例えば、統計的に赤血球の凝集が問題とされる確率が10%以上の電気二重層容量C
dlが下限容量Cl
thとなるように設定すればよい。
一方、赤血球の凝集が問題とされる確率がかなり高いときに限り、凝集状態変化認定部15から赤血球の凝集状態に変化がある旨の認定結果が出力されることをユーザが希望する場合、ユーザがマンマシンインタフェース部を操作して、例えば、統計的に赤血球の凝集が問題とされる確率が90%以上の電気二重層容量C
dlが下限容量Cl
thとなるように設定すればよい。
【0096】
また、この実施の形態2では、凝集状態変化認定部15が、赤血球の凝集状態が変化している位置を示す情報として、電極選択部11により選択された2個の電極2
i,2
jを示す情報を出力すると、認定結果提示部7が、赤血球の凝集状態が変化している位置として、2個の電極2
i,2
jの間の位置を表示するようにしているが、以下に示すように、赤血球の凝集状態が変化している位置を更に具体的に表示するようにしてもよい。
【0097】
人工心臓の動脈送血管1には、上述したように、M個の電極2
1〜2
Mが設置されているが、例えば、M=12であれば、2個の電極2
i,2
jの組み合わせが66通りになり、電極選択部11により選択される2個の電極2
i,2
jの組み合わせ毎に、電気二重層容量特定部14が、電気二重層容量C
dl−i,jを算出するので、全部で66通りの電気二重層容量C
dl−i,jを算出する。
したがって、この場合、凝集状態変化認定部15は、66通りの電気二重層容量C
dl−i,jと下限容量Cl
thを比較し、どの組み合わせの電極2
i,2
jのときに、その電気二重層容量C
dl−i,jが下限容量Cl
thより小さくなるかを特定する。
【0098】
凝集状態変化認定部15は、電気二重層容量C
dl−i,jが下限容量Cl
thより小さくなる電極2
i,2
jの組み合わせの数が少なくとも2個以上ある場合、赤血球の凝集状態が変化している位置の具体的な特定処理を実施する。ただし、電気二重層容量C
dl−i,jが下限容量Cl
thより小さくなる電極2
i,2
jの組み合わせの数が1個である場合、赤血球の凝集状態が変化している位置の具体的な特定処理を実施せず、上記の通り、赤血球の凝集状態が変化している位置を示す情報として、電気二重層容量C
dl−i,jが下限容量Cl
thより小さくなる電極2
i,2
jを示す情報を出力する。
以下、赤血球の凝集状態が変化している位置の具体的な特定処理を説明する。
【0099】
例えば、電気二重層容量C
dl−i,jが下限容量Cl
thより小さくなる電極2
i,2
jの組み合わせの数が2個であり、電極2
1−電極2
5の組み合わせと、電極2
4−電極2
Mの組み合わせが、下限容量Cl
thより小さくなる電極2
i,2
jの組み合わせであるとすると、
図14に示すように、電極2
1と電極2
5を結ぶ線分L
1−5と、電極2
4−電極2
Mを結ぶ線分L
4−Mとの交点Ndが、赤血球の凝集状態が変化している位置であるとして特定する。
この場合、凝集状態変化認定部15は、赤血球の凝集状態が変化している位置を示す情報として、交点Ndの位置を示す座標情報を認定結果提示部16に出力する。
ここでは、凝集状態変化認定部15が、交点Ndの位置を示す座標情報を出力しているが、交点Ndの位置を示す座標情報の代わりに、線分L
1−5と線分L
4−Mの交点Ndが“凝集状態の変化位置である”旨を示すフラグ情報を出力するようにしてもよい。
【0100】
認定結果提示部16は、凝集状態変化認定部15から赤血球の凝集状態が変化している位置を示す情報として、交点Ndの位置を示す座標情報を受けると、赤血球の凝集状態が変化している位置として、交点Ndの位置を表示する(
図14を参照)。この場合、認定結果提示部16は、更に、電極2
1と電極2
5を結ぶ線分L
1−5、及び、電極2
4−電極2
Mを結ぶ線分L
4−Mに関する情報を凝集状態変化認定部15から受け取り、これらの線分に関する情報を表示しても良い。
凝集状態変化認定部15から赤血球の凝集状態が変化している位置を示す情報として、交点Ndの位置を示す座標情報ではなく、線分L
1−5と線分L
4−Mの交点Ndが“凝集状態の変化位置である”旨を示すフラグ情報を受けているときは、認定結果提示部16が、線分L
1−5と線分L
4−Mの交点Ndを特定して、その交点Ndの位置を表示する。
これにより、ユーザは、赤血球の凝集状態が変化している位置の概略的な位置(2個の電極の間の位置)ではなく、具体的な位置(交点Ndの位置)を認識することができる。
【0101】
ただし、電気二重層容量C
dl−i,jが下限容量Cl
thより小さくなる電極2
i,2
jの組み合わせの数が2個である場合でも、下限容量Cl
thより小さくなる電極2
i,2
jの組み合わせが、例えば、電極2
2−電極2
4の組み合わせと、電極2
5−電極2
Mの組み合わせであるような場合、
図15に示すように、電極2
2と電極2
4を結ぶ線分L
2−4と、電極2
5−電極2
Mを結ぶ線分L
5−Mとが交わらない。
このような場合、凝集状態変化認定部15は、赤血球の凝集状態が変化している位置を示す情報として、電極2
2,2
4を示す情報と、電極2
5,2
Mを示す情報とを認定結果提示部16に出力する。
【0102】
ここでは、電気二重層容量C
dl−i,jが下限容量Cl
thより小さくなる電極2
i,2
jの組み合わせの数が2個であるときに、赤血球の凝集状態が変化している位置の具体的な特定処理を実施するものについて示したが、その組み合わせの数が2個以上であればよく、例えば、その組み合わせの数が3個である場合、
図16に示すように、複数個の交点Nd
1,Nd
2が現れることがある。更に、組み合わせの数が4個以上の多数であり、複数個の交点Nd
1,Nd
2,Nd
3,Nd
4等が現れることがある。
このような場合には、凝集状態変化認定部15が、複数個の交点Nd
1,Nd
2等を示す座標情報を認定結果提示部16に出力する。
この出力に基づく表示を認定結果提示部16が行う場合、複数個の交点Nd
1,Nd
2等を示す座標情報に基づき生成された画像(即ち、赤血球を含む血液が流れる管の断面図、及び、その管の断面図内で複数個の交点Nd
1,Nd
2等を結んだ画像)を表示することにより、赤血球の凝集状態が変化している部分の形状(即ち、凝集状態の赤血球の形状)を把握しやすいように表示しても良い。
更に、例えば上述のような12個の電極2
1〜2
Mが設置されており、66通りの電極の組み合わせがある場合、66通りの電極の組み合わせの各々につき、赤血球を含む血液が流れる管が延びる方向における複数個所につき、赤血球の凝集状態が変化している位置の特定(複数個の交点の特定)を行って、赤血球の凝集状態が変化している位置を示す座標情報を出力し、その情報に基づき、赤血球の凝集状態が変化している部分の形状の立体的な表示を行うことも可能である。
【0103】
実施の形態3.
上記実施の形態1,2では、2個又はM個の電極2が人工心臓の動脈送血管1の周囲に設置されているものを示したが、2個又はM個の電極2が手術用又は透析用の体外循環回路の周囲に設置されているようにしてもよい。
このように、2個又はM個の電極2が手術用又は透析用の体外循環回路の周囲に設置されている場合、その体外循環回路における赤血球の凝集状態を迅速かつ正確に検知することができる効果を奏する。
したがって、赤血球モニターは、埋込み型の人工心臓や体外循環回路などに応用可能な技術であるが、本発明を更に発展させることによって、例えば、飛行機内等で発症するエコノミークラス症候群を未然に防止する技術にも応用できる可能性がある。
【0104】
参考の形態.
上記実施の形態1〜3では、赤血球の界面における電気二重層容量C
dlを特定することで、赤血球の凝集状態の変化を迅速かつ正確に検知する赤血球モニターについて示したが、特許(特許第03772237号)に開示されている技術を当該赤血球モニターに適用するようにしてもよい。
【0105】
特許第03772237号には、多次元多点測定によって、液体、気体、固体が混じっている混相流内において、液体や気体内の固体の濃度分布や、液体内の気体分布を可視化計測する技術が開示されている。
即ち、計測対象物の外周に多数の電極を配置させて、各電極間のキャパシタンスやインピーダンスを測定し、画像再構成法を利用して、その測定結果から固体や気体の濃度分布を画像化する技術が開示されている。
【0106】
人工心臓の動脈送血管1又は体外循環回路の周囲にM個の電極2を配置して、特許第03772237号に開示されている技術を当該赤血球モニターに適用すれば、各電極間のキャパシタンスやインピーダンスの測定結果から、赤血球の濃度分布を画像化することができる。
【0107】
尚、赤血球の界面における電気二重層容量の特定は、前述の各実施の形態に記載されたものには限られず、例えば、様々な条件等を考慮した実験や算出等により、複数の電極間のインピーダンスと電気二重層容量の対応関係を示すマップを作成しておき、このマップを使用して電気二重層容量を特定する形態、その他の形態が取られ得る。即ち、本発明は、赤血球の界面における電気二重層容量が赤血球の表面積の関数となることに着目し、赤血球の界面における電気二重層容量に基づき、赤血球の凝集状態の変化を迅速かつ正確に検知する点にその特徴を有するものである。