特許第5674767号(P5674767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5674767
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/04 20060101AFI20150205BHJP
   C23C 14/04 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   C23C16/04
   C23C14/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-511506(P2012-511506)
(86)(22)【出願日】2010年5月21日
(86)【国際出願番号】JP2010058644
(87)【国際公開番号】WO2011132325
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2012年6月11日
(31)【優先権主張番号】特願2010-98118(P2010-98118)
(32)【優先日】2010年4月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100102875
【弁理士】
【氏名又は名称】石島 茂男
(74)【代理人】
【識別番号】100106666
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 英樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 正志
(72)【発明者】
【氏名】亀崎 厚治
(72)【発明者】
【氏名】岡山 智彦
(72)【発明者】
【氏名】堀 英介
(72)【発明者】
【氏名】清水 美穂
(72)【発明者】
【氏名】阿部 慶子
(72)【発明者】
【氏名】下田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】江藤 謙次
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−281821(JP,A)
【文献】 特開2003−068456(JP,A)
【文献】 特開2004−006257(JP,A)
【文献】 特開2002−235165(JP,A)
【文献】 特開2003−332056(JP,A)
【文献】 特開2006−037128(JP,A)
【文献】 特開2006−009858(JP,A)
【文献】 特開2004−335382(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3121038(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
C23C 14/00−14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に配置され成膜対象物に非成膜領域を形成するマスクであって、
テープ状又はシート状のシャドーマスク部と、
前記シャドーマスク部の端部に取り付けられた張力発生部とを有し、
前記張力発生部は、前記シャドーマスク部の片面に接触する第一の挟持部材と、前記シャドーマスク部の反対側の面に接触する第二の挟持部材とを有し、
互いに嵌合する凹部形状と凸部形状のうち、一方が前記第一の挟持部材に設けられ、他方が前記第二の挟持部材に設けられ、前記第一、第二の挟持部材で前記シャドーマスク部を挟むように構成され、
前記張力発生部によって前記シャドーマスク部の両端の間に張力を印加するマスク。
【請求項2】
前記シャドーマスク部は、前記張力発生部によって、前記張力の方向に沿って引き延ばされ、元の長さに戻ろうとする復元力が生じている請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記シャドーマスク部の厚さが0.05mm以上2.0mm未満である請求項1又は請求項のいずれか1項記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置製造過程の技術分野にかかり、特に基板上に陰を形成するマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、有機EL(Electro Luminescence)表示装置は、電極に印加された電圧により有機EL薄膜が励起し、励起したエネルギーを光に変換することにより表示される装置である。有機EL薄膜自身が熱を発生しないで光を放出するのでバックライトが不であるため、さらなる省エネ化と薄型化が実現可能であり、注目されている。
【0003】
有機EL表示装置の製造過程において、真空処理装置内に表面に配線が配置されたガラス基板等の基板が搬入され、基板上にマスクが配置される。
【0004】
マスクは、ガラス基板上に形成された配線が成膜され、覆われるのを防ぐために配置される。マスクと基板は、機械的に又はマスク及び基板に設けられたアライメントマークをCCDカメラ等で観察することにより位置合わせが行われた後、プラズマCVD、蒸着、スパッタリング等で陽陰電極、有機EL薄膜や保護膜の成膜が行われる。
【0005】
ガラス基板上には、ガラス基板を分割するためのスクライブラインが設けられている。成膜後はスクライブラインに沿って分割される。
【0006】
現在は、このマスクは、主にアルミナ(Al23)等のセラミックを用いて製作されている。
【0007】
アルミナ等のマスクのシャドーマスク部を使用する場合に、基板上のシャドーマスク部近傍では、アルミナのマスクの厚さによって反応プラズマが遮られて成膜されず、各シャドーマスク部間の中央付近にある薄膜の膜厚より薄くなってしまうという問題点がある。
【特許文献1】特開2004-335123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、従来より薄いシャドーマスク部によって、均一に成膜する事が出来るマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、基板表面に配置され成膜対象物に非成膜領域を形成するマスクであって、テープ状又はシート状のシャドーマスク部と、前記シャドーマスク部の端部に取り付けられた張力発生部とを有し、前記張力発生部は、前記シャドーマスク部の片面に接触する第一の挟持部材と、前記シャドーマスク部の反対側の面に接触する第二の挟持部材とを有し、互いに嵌合する凹部形状と凸部形状のうち、一方が前記第一の挟持部材に設けられ、他方が前記第二の挟持部材に設けられ、前記第一、第二の挟持部材で前記シャドーマスク部を挟むように構成され、前記張力発生部によって前記シャドーマスク部の両端の間に張力を印加するマスクである。
本発明は、前記シャドーマスク部は、前記張力発生部によって、前記張力の方向に沿って引き延ばされ、元の長さに戻ろうとする復元力が生じているマスクである
発明は、前記シャドーマスク部の厚さが0.05mm以上2.0mm未満であるマスクである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、基板上のシャドーマスク部の周辺部分において、より均一に有機EL薄膜を成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】成膜装置内に配置された本発明の重りによりシャドーマスク部に張力が印加されるマスクの断面図
図2】(a):本発明の第一例であり、重りによりシャドーマスク部に張力が印加されるマスクの平面図(b):基板上の発光エリアの拡大図
図3】本発明の第二例のマスクであり、(a):第一の挟持部材の平面図 (b):シャドーマスク部の平面図 (c):第二の挟持部材の平面図 (d):第一の挟持部材のA−A線切断断面図 (e):シャドーマスク部のB−B線切断断面図 (f):第二の挟持部材のC−C線切断断面図
図4】二個の挟持装置によってシャドーマスク部に張力が印加された本発明のマスクの断面図
図5】二個の挟持装置によってシャドーマスク部に張力が印加された本発明のマスクの平面図
図6】本発明の第三例のマスクであり、弛みを無くす前の、(a):平面図 (b):D−D線切断断面図
図7】本発明の第三例のマスクであり、弛みを無くした状態の、(a):平面図 (b):E−E線切断断面図
図8】その第一、第二の挟持部材を、(a):離間させた側面図 (b):密着させた側面図
図9】(a)〜(c):第三例のマスクを形成する手順を説明するための取付装置とシャドーマスク部の側面図
図10】取付装置とシャドーマスク部の部分的平面図であり、(a):弛みを無くす前 (b):弛みを無くした状態
図11】本発明の第四例のマスクであり、弛みを無くす前の、(a):平面図 (b):F−F線切断断面図
図12】本発明の第四例のマスクであり、弛みを無くした状態の、(a):平面図 (b):G−G線切断断面図
【符号の説明】
【0012】
1、50……マスク 2……シャドーマスク部 3……固定部材 4……変換部材 5……重り 6……基板 7……基板支持台 8、34、60……枠体 9……成膜室 10……真空処理装置 11…真空排気装置 12…ガス導入装置 13……RF電極(シャーワープレート) 20……発光エリア 21……透明電極 22……有機EL薄膜 31……第一の挟持部材 32……第二の挟持部材 33……固定螺子 36、63……挟持装置 37……スクライブライン
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1の符号10は、真空処理装置であり、真空処理装置10は、成膜室9と、真空排気装置11とガス導入装置12を有しており、真空排気装置11によって成膜室9の内部を真空排気した後に、ガス導入装置12を動作させ、反応ガスを導入すると成膜室9内部を所望圧力の反応ガス雰囲気にすることができる。
成膜室9内部には、基板6が配置された基板支持台7とマスク1が配置されている。
【0014】
成膜室9の内部には、RF電極(シャーワープレート)13などの成膜手段が配置されており、ガス導入装置12を動作させ、成膜室9の内部にガスを導入し、プラズマCVDによって、基板6及びマスク1の表面に薄膜が形成されるように構成されている。
【0015】
マスク1は、金属または耐熱性樹脂からなるテープ状又はシート状のシャドーマスク部2と、固定部材3と、変換部材4と、重り5と、枠体8を有している。マスクの厚さは、マスクの開口付近において飛来する成膜物質の斜め成分に対する影響を考慮すると薄いことが好ましい。しかし、マスクの伸びや耐久性、クリーニングの可否を考慮すると、シャドーマスク部2の厚さは0.05mm以上2.0mm未満であることが好ましい。シャドーマスク部2の材質は、金属として、例えば、低膨張アルミ、その他、耐食性、耐熱性を満たす金属が使用可能である。また、耐食性、耐熱性を満たし、テープ状又はシート状に形成できれば、金属又は耐熱性樹脂に限定されない。例えば、耐食処理した薄膜ガラス、石英等も使用可能である。耐食処理した薄膜ガラスは厚さ50〜200μmのものも使用可能である。
【0016】
固定部材3は、例えば、枠体8に形成された穴と穴にねじ込み可能な螺子で構成されており、シャドーマスク部2の一端には穴が設けられており、シャドーマスク部2の穴に螺子をねじ込むことにより、シャドーマスク部2を枠体8に固定する。
【0017】
シャドーマスク部2の一端は、固定部材3によって保持され、水平方向に伸びている。変換部材4は、固定部材3が配置されている枠体8の辺とは反対側の枠体8の辺上に固定されている。変換部材4は、角部が丸められており、水平方向から鉛直下方に向けて湾曲しているので、シャドーマスク部2の他端に、重り5が取り付けられると、シャドーマスク部2は、水平方向から変換部材4の丸められた角部と接触し、鉛直下向きに変換される。
【0018】
シャドーマスク部2は、放電により熱が加わり、昇温し、伸びて基板6とシャドーマスク部2の間にプラズマが入らないように、重り5に引っ張られるシャドーマスク部2の伸びの量が、熱による伸びの量より大きくなるように重り5の重さは決められている。
【0019】
シャドーマスク部2は、重り5に引っ張られるので、弛まず基板6の表面と密着する。
シャドーマスク部2は張力が印加された状態で基板6と密着するので、基板6を成膜するときにシャドーマスク部2と基板6の間に成膜物質が入らない。
【0020】
マスク1に対して基板6が配置された基板支持台7を相対的に移動させて、機械的に位置合わせを行い、位置合わせをした後に、成膜室9の内部にガス導入装置12からガスを導入し、プラズマを発生させ、プラズマCVD法により成膜すると、シャドーマスク部2によりマスクされていない基板6の表面に薄膜が形成される。本件においては、成膜方法は特に限定されず、スパッタリング、CVD、蒸着など公知の技術が適用可能である。
【0021】
マスク1に対する基板6の位置合わせは、機械的な方法ではなく、CCDカメラ等によってアライメントマークを観察しながら行ってもよい。
図2(a)は、マスク1と基板6の平面図である。基板6の表面のマスク1が配置されていない場所には、発光エリア20が形成されている。
【0022】
縦方向は図示していないが、基板6上の各発光エリア20間にはスクライブライン37が設けられている。
【0023】
図2(b)は、その発光エリア20の拡大図であり、発光エリア20内では、基板6の表面に、透明電極21が成膜され、透明電極21の表面に、有機EL薄膜22が積層している。図示はしていないが有機EL薄膜22の表面には、陰極が成膜され、陰極表面には保護膜が成膜される。
【0024】
保護膜を成膜後、基板6はスクライブライン37に沿って切断されると有機EL素子が生成される。
図3(a)は、リング状凹部を有し、リング形状の第一の挟持部材31の平面図、同図(d)はそのA−A線切断断面図であり、図3(b)は、シャドーマスク部2の平面図、同図(e)はそのB−B線切断断面図であり、図3(c)は、リング状の部を有し、リング形状の第二の挟持部材32の平面図、同図(f)はそのC−C線切断断面図である。
【0025】
図4は、本発明のマスクの他の例であり、真空処理装置10は図示していない。マスク50は、金属または耐熱性樹脂から成り、伸び、曲げが可能なテープ状のシャドーマスク部2と、シャドーマスク部2よりも厚く、剛性を有する枠体34と、同様に、それぞれ剛性を有する第一の挟持部材31と、第二の挟持部材32と、固定螺子33とから成る挟持装置36を有している。
【0026】
ここではシャドーマスク部2の両端にはマスク螺子穴43が形成されており、枠体34上の一辺と反対側の一辺には、それぞれ枠体穴47が設けられている。
枠体34の両方の枠体穴47とその周囲の上で、リング状の凹部から成る第一の嵌合形状42が上に向けられた第一の挟持部材31と、シャドーマスク部2のマスク螺子穴43が形成された部分と、リング状の凸部から成る第二の嵌合形状46が下に向けられた第二の挟持部材32とがこの順序で、枠体34側から並んで積層配置され、積層された各部材は、穴が連通する位置で重ねられ、シャドーマスク部2は、枠体34の開口上に渡って配置されている。
又は、リング状の凸部から成る第一の嵌合形状42が上に向けられた第一の挟持部材31と、シャドーマスク部2のマスク螺子穴43が形成された部分と、凹部から成る第二の嵌合形状46が下に向けられた第二の挟持部材32とがこの順序で、枠体34側から並んで積層配置され、積層された各部材は、穴が連通する位置で重ねられている。
【0027】
要するに、第一の挟持部材31は、上方に向く面に、凹形状又は凸形状の形状の第一の嵌合形状42が設けられており、下方を向く面に、凹形状又は凸形状の形状が第一の挟持部材31とは逆になっている第二の嵌合形状46が形成された第二の挟持部材32が第一の挟持部材31上に配置されている。
第一の嵌合形状42と第二の嵌合形状46とは、いずれか一方が凹形状であり、他方が凸形状であり、第一の嵌合形状42と第二の嵌合形状46とが嵌合すればよいが、ここでは、第一の嵌合形状42は、凹形状であり、第二の嵌合形状46は凸形状である。
【0028】
第一の挟持部材31は、枠体34上の一辺の枠体穴47の周囲上と、反対側の一辺の枠体穴47の周囲上に配置されている。
第一の挟持部材31には第一の固定穴41が設けられており、同様に、第二の挟持部材32には第二の固定穴45が設けられている。
上述したように、シャドーマスク部2の両端には、マスク螺子穴43が設けられており、枠体34の枠体穴47と枠体穴47の周囲を含む領域上に下方から第一の挟持部材31と、シャドーマスク部2の端部と、第二の挟持部材32とが、この順序で重ね合わせられると、シャドマスク部2の両端が、第一の挟持部材31と第二の挟持部材32に挟まれる。
【0029】
第一の挟持部材31と、シャドーマスク部2の端部と、第二の挟持部材32とが、枠体34上で、第一の固定穴41と、マスク螺子穴43と、第二の固定穴45とが、枠体穴47の上方に位置し、各穴41、43、45、47が互いに連通して一つの螺子穴を形成するようにされている。
各穴41、43、45、47には螺子溝が設けられており、その螺子穴には固定螺子33が螺子留め挿入される。
この状態では、固定螺子33は、上方から、第二の挟持部材32と、シャドマスク部2の端部と、第一の挟持部材31とを貫通し、固定螺子33の下端部が、枠体34に挿入されており、固定螺33は枠体34に対して静止されており、シャドーマスク部2のマスク螺子穴43の位置は、枠体34に対して移動しないようになっている。
【0030】
従って、第一の嵌合形状42と第二の嵌合形状46とが、両端のマスク螺子穴43に固定螺子33が挿入され、マスク螺子穴43の位置が枠体34上で静止され、第一の嵌合形状42と第二の嵌合形状46との間にシャドーマスク部2のマスク螺子穴43の部分の一部が配置された状態で第一の嵌合形状42と第二の嵌合形状46とが嵌合されると、シャドーマスク部2の一部が、第一の嵌合形状42と第二の嵌合形状46の形状に沿って変形し、シャドーマスク部2は伸び、伸びた部分が元の長さに復元しようとする力によって、枠体34の開口上に位置するシャドーマスク部2には両端から引っ張る力が加わり、弛まないように張られる。
【0031】
簡単に言うと、連通された穴には、固定螺33をねじ込み、枠体の螺子穴と契合させ、固定螺の螺頭で積層された第一の挟持部材31と、第二の挟持部材32と、シャドーマスク部2とを押さえてその両端を固定すると、第一の挟持部材31と第二の挟持部材32とは、シャドーマスク部2を長くし、シャドーマスク部2には張力が印加される。
従って、第二の挟持部材32と、第一の挟持部材31と、固定螺子33と、枠体34の枠体穴47とが、シャドーマスク部2の一端を固定する固定装置であり、また、固定螺子33と、枠体34の枠体穴47とが、シャドーマスク部2の他端部に取り付けられた張力発生部である。
図5は、マスク50と基板6の平面図である。
【0032】
固定螺子33でシャドーマスク部2を枠体34に固定するのではなく、シャドーマスク部2の両端を枠体34に固定して、固定された両端の間を第一の挟持部材31と第二の挟持部材32とで挟み、嵌合させてシャドーマスク部2を伸ばし、張力を発生させてもよい。
また、シャドーマスク部2の一端は、マスク螺子穴43に固定螺子33を挿入してシャドーマスク部2の一端を固定し、他端を第一の挟持部材31と第二の挟持部材32とで挟み、嵌合させて引っ張る力を生じさせても良い。
【0033】
なお、上記の説明では、成膜手段を上、基板を下に配置し、マスク手段をその間に設置しているが、これに限定されず、成膜手段を下、基板を上に設置しマスク手段をその間に設置しても良い。もしくは、成膜手段と基板を縦に設置し、マスクをその間に設置し、下方向に張力を掛けても良い。
【0034】
なお、上記の説明では、第一の挟持部材31と第二の挟持部材32とがリング状の例が示されたが、リング状の形状に限定されず、一方が凹部、他方が凸部である、第一の嵌合形状42と第二の嵌合形状46とを有すれば矩形その他の形状でもよい。また、凹部、凸部の間にシャドーマスク部2を挟んで、シャドーマスク部2に張力を与えながらシャドーマスク部2を固定することもできる。
【0035】
また、シャドーマスク部2に張力を与える方法は、一端が固定されたシャドーマスク部2の他端を枠体に対して移動可能な移動部材に固定し、この移動部材を枠体に対して移動させてシャドーマスク部2に張力を掛けることもできる。例えば、シャドーマスク部2の他端が固定された移動部材の位置を、螺子により枠体に対してシャドーマスク部2に張力が掛かる方向に移動させ、シャドーマスク部2に張力を掛けてもよい。
【0036】
上記例では、第一の挟持部材31と第二の挟持部材32とから成る張力部材を、一本のシャドーマスク部2の両端に一個ずつ設けたが、一台の張力部材が複数のシャドーマスク部2を固定し、また、引っ張る力を生じさせても良い。
【0037】
図6のマスク81は、その例であり、該マスク81は、複数のテープ状のシャドーマスク部2と、枠体60とを有している。
枠体60はシャドーマスク部2よりも厚みが厚く、剛性を有しており、枠体60の一辺と、その一辺と平行な反対側に位置する一辺には、枠体60よりも厚みの薄い取り付け部61がそれぞれ配置されている。
【0038】
シャドーマスク部2の長さは、取り付け部61が配置された枠体60の一辺と反対側の一辺との間の距離よりも長くされており、シャドーマスク部2の一端は、枠体60の一辺の取り付け部61上に位置し、他端は、枠体60の反対側の一辺の取り付け部61上に位置するようにされている。従って、シャドーマスク部2は、枠体60の開口69上に渡って配置されている。
【0039】
両方の取り付け部61上には、一台の挟持装置63がそれぞれ配置されている。
挟持装置63は、一個の第一の挟持部材64と、一個の第二の挟持部材65とを有しており、第一の挟持部材64には、第一の固定穴が複数個形成され、第二の挟持部材65には、第二の固定穴が複数個形成されている。
【0040】
図8(a)、(b)に挟持装置63の側面を拡大した図を示す。
図8(a)を参照し、第一の挟持部材64の複数の第一の固定穴と、第二の挟持部材65の複数の第二の固定穴は、第二の挟持部材65を第一の挟持部材64上に配置して各第一の固定穴と各第二の固定穴が一対一に連通できるように配置されており、同図(b)に示すように、第二の固定穴から固定螺子67を挿入し、回転させながらマスク螺子穴43と第一の固定穴とを通し、第二の挟持部材65を第一の挟持部材64に押し付けることができる。
【0041】
図9(a)〜(c)は、シャドーマスク部2を挟持装置63に取り付けるときの手順を説明するための図であり、先ず、固定螺子67を取り外した状態で、複数のシャドーマスク部2の端部を重ならないように一個の挟持装置63の第一の挟持部材64と第二の挟持部材65の間に配置し、一対一に連通する一組の第一の固定穴と第二の固定穴と、その一組に隣接し、一対一に連通する他の組の第一の固定穴と第二の固定穴との間の位置に一枚のシャドーマスク部2の端部を配置する。
【0042】
この例では、マスク螺子穴43は使用しないので、シャドーマスク部2にマスク螺子穴43が形成されていなくてもよい。
【0043】
図9(a)は、シャドーマスク部2を第一の挟持部材64上に配置した状態を示しており、符号74は第一の固定穴、符号75は第二の固定穴を示している。第二の固定穴75は貫通孔である。
【0044】
次に、第二の挟持部材65をシャドーマスク部2の端部上に乗せ、第一の固定穴74と第二の固定穴75とを連通させ、第二の固定穴75から固定螺子67を挿入し、回転させながらマスク螺子穴43と第一の固定穴74とを通し、第二の挟持部材65を第一の挟持部材64に押し付けると、シャドーマスク部2は、第二の挟持部材65と第一の挟持部材64とで挟まれる。
【0045】
第一の挟持部材64と第二の挟持部材65の互いに向かい合う面には、それぞれ第一の嵌合部71と第二の嵌合部72が形成されている。第一の嵌合部71と第二の嵌合部72のうち、一方は凹形状であり、他方は凸形状であり、第一の嵌合部71と第二の嵌合部72とは互いに嵌合するようになっている。
【0046】
第一の固定穴には螺子溝が設けられており、間にシャドーマスク部2の両端を挟んで固定螺子67をねじ込んで第二の嵌合部72を第一の嵌合部71に嵌合させて押し付けると、シャドーマスク部2は両端部を挟持装置63にそれぞれ固定される。
【0047】
図9(b)はその状態を示している。第一の嵌合部71と第二の嵌合部72は、枠体60の開口69よりも外側に位置しており、シャドーマスク部2の挟まれた部分の間の部分が、開口69に渡って配置される。
【0048】
挟持装置63は、枠体60に接触するか、枠体60との間の隙間を小さくするように配置されているが、嵌合した状態でも、シャドーマスク部2の開口69上の部分には、まだ弛みがある。
【0049】
挟持装置63には、張力発生部が設けられており、シャドーマスク部2の一端と他端に張力を印加し、シャドーマスク部2の端部を、端部間の距離が大きくなるように移動させると、シャドーマスク部2の弛みが無くなり、その状態を維持するように挟持装置63を静止させると、シャドーマスク2によってパターニングされた薄膜を形成することができる。
【0050】
ここでは、張力発生部は、挟持装置63の表面のうち、枠体60に接触する面と、その反対側の面とに開口を有する張力用螺子穴と、張力用螺子穴に配置された張力用螺子68とを有しており、張力用螺子68内には螺子溝が設けられている。
枠体60と近接して配置し、反対側の開口から張力用螺子68をねじ込んで枠体60方向に移動させ、張力用螺子68の先端を枠体60に当接させる。図9(b)と、その平面図の図10(a)は、その状態を示している。
【0051】
挟持装置63は、枠体60に対して移動可能な状態にあり、張力用螺子68の先端を枠体60に当接させ、張力用螺子68を更にねじ込むと、張力用螺子68は、枠体60への方向には移動できず、挟持装置63が枠体60から離間する方向に移動する。
【0052】
張力用螺子68は、複数本挟持装置63に設けられ、各張力用螺子68をねじ込むことで、挟持装置63を、枠体60から、長さ方向の各部分において均一に離間させることができる。このとき、枠体60の開口69上の各シャドーマスク部2の弛みが無くなった後伸びるから、各シャドーマスク部2に伸びが生じたところで張力用螺子68のねじ込みを終了させる。
【0053】
図9(c)と、その平面図の図10(b)と、全体の平面図の図7は、その状態を示しており、張力用螺子68のねじ込みによって生じた挟持装置63の移動により、挟持装置63と枠体60との間に隙間Sが形成されており、各シャドーマスク部2は、開口69上で弛み無く張られ、シャドーマスク部2の伸びの復元力によって、張力用螺子68が枠体60に押し付けられることで、挟持装置63が枠体60に固定されている。
【0054】
なお、図7では、シャドーマスク部2の一端の挟持装置63と、他端の挟持装置63のうち、一つの挟持装置63の張力用螺子68がねじ込み移動されているが、両方の挟持装置63の張力用螺子68をねじ込み、シャドーマスク部2の端部を固定した二台の挟持装置63の両方を、枠体60から離間するように移動させてもよい。
【0055】
この挟持装置63については、第一の固定穴74と第二の固定穴75よりも枠体60に近い位置に、第一の嵌合部71と第二の嵌合部72とが形成されているので、固定螺子67の位置よりも内側にシャドーマスク部2を配置し、第一の嵌合部71と第二の嵌合部72とでシャドーマスク部2を挟んで固定することができる。
【0056】
図11のマスク82は、格子状に形成された薄い金属箔や樹脂箔から成り、可撓性を有するシャドーマスク部52であり、外周が四辺形状であるが、上記シャドーマスク部2と同じ形状の部分を複数個有している。
そして、このシャドーマスク部52は、その四辺形状の平行な二辺付近の部分を、二台の挟持装置63で挟み、上述したように、第一の嵌合部71と第二の嵌合部72とでシャドーマスク部52の両端を固定し、少なくとも一方の挟持装置63の張力用螺子68を回転させ、図12に示すように、その挟持装置63を枠体60から離間する方向に移動させて、シャドーマスク部52を伸ばし、開口69上に弛みが生じないようにされている。
挟持装置63は枠体60に押し付けられて固定されている。
【0057】
このように、本発明は、細長のシャドーマスク部2を用いたマスクに限定されるものではない。
張力用螺子68を有する上記挟持装置63は、一台で複数のテープ状のシャドーマスク部2の一端を固定したが、一本のテープ状のシャドーマスク部2の幅よりも少し長く、張力用螺子68を有する取付装置を形成し、シャドーマスク部2毎に、別々に引っ張るようにしてもよい。
なお、上記例では、シャドーマスク部2、52の両端に、それぞれ挟持装置63を取り付けたが、シャドーマスク部2、52は、一端を枠体60に固定し、他端に挟持装置63を取り付けて、張力用螺子6によって挟持装置63を枠体60から離間する方向に移動させて、シャドーマスク部2、52の弛みを無くすようにしても良い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12