(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5675055
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】ポリカーボネート系樹脂発泡体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
C08J9/04CFD
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2009-91722(P2009-91722)
(22)【出願日】2009年4月6日
(65)【公開番号】特開2010-241946(P2010-241946A)
(43)【公開日】2010年10月28日
【審査請求日】2012年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(72)【発明者】
【氏名】稲森 康次郎
(72)【発明者】
【氏名】大来 裕
(72)【発明者】
【氏名】山崎 宏行
【審査官】
横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−328319(JP,A)
【文献】
特開2008−127466(JP,A)
【文献】
特開平08−311230(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/038639(WO,A1)
【文献】
特開2007−114747(JP,A)
【文献】
特開2005−179411(JP,A)
【文献】
エンジニアリングプラスチックの最新成形・加工技術,日本,株式会社 シーエムシー/境 鶴雄,1987年12月 4日,第1刷,第294頁 表4・17 エンプラ押出条件
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂が、メルトフローレートが5〜15g/100minである直鎖または分岐のポリカーボネート系樹脂であり、下記式(1)で得られる結晶化度Xc[%]が0.15〜2%、かつ平均セル密度が1×109個/cm3以上であり、押出法で製造されてなることを特徴とするポリカーボネート系樹脂発泡体。
Xc=ΔH/110.04×100[%]・・・式(1)
(式中、ΔHは示差走査熱量分析によって得られる結晶融解熱(J/g)を表し、110.04はポリカーボネートの完全結晶の融解熱(J/g)を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載のポリカーボネート系樹脂発泡体の製造方法であって、前記樹脂発泡体をダイ出口近傍を150℃として押出しする押出法で製造することを特徴とするポリカーボネート系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項3】
発泡剤が炭酸ガスまたはペンタンであることを特徴とする請求項2に記載のポリカーボネート系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項4】
前記発泡剤の濃度が、6〜9wt%である請求項3に記載のポリカーボネート系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項5】
前記ポリカーボネート系樹脂が直鎖のポリカーボネート系樹脂の場合、押出機のシリンダー内での設定温度の最低温度が125℃以上でかつ最高温度が310℃であり、シリンダー内の滞留時間が35〜40分のいずれかの時間であり、前記ポリカーボネート系樹脂が分岐のポリカーボネート系樹脂の場合、押出機のシリンダー内での設定温度の最低温度が140℃以上でかつ最高温度が310℃であり、シリンダー内の滞留時間が35〜40分のいずれかの時間であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法で製造されたことを特徴とするポリカーボネート系樹脂発泡体。
【請求項7】
請求項1または6に記載のポリカーボネート系樹脂発泡体を利用することを特徴とする光反射板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂発泡体、さらに詳しくは、内部に平均セル密度が1×10
9個/cm
3以上の高密度かつ微細な気泡を有するポリカーボネート系樹脂発泡体、ポリカーボネート系樹脂発泡体を効率よく製造する方法、およびポリカーボネート系樹脂発泡体を利用した光反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートは剛性、耐衝撃性、難燃性のバランスに優れた樹脂であり、その発泡体も形状保持性に優れていることから、自動車や建築用内装材、包装材、各種容器等、さまざまな分野への利用が期待されている。また、発泡体内部の気泡を高密度かつ微細にすると、光反射特性が向上することが一般に知られており、ポリカーボネートにおいても光反射板等の用途を想定して、気泡が微細なポリカーボネートの発泡体を得る工夫がなされてきた。例えば、特許文献1ではポリカーボネートにフッ素化ポリカーボネートを添加することで平均気泡径10μm以下の発泡体を得ており、特許文献2では、ポリカーボネート樹脂にシリコーン化合物を添加することで平均気泡径0.01〜10μmの発泡体を得ている。
【0003】
樹脂中に気泡を形成させる方法として、前記特許文献1および前記特許文献2のように主成分と異なる物質を気泡核剤として添加する方式の他に、主成分自体を結晶化させ、当該結晶を気泡核剤や気泡成長核剤として利用する方式が知られている。この方式であれば、主成分と異なる物質を気泡核剤や気泡成長核剤として加える方式と比べて、工程の簡略化や、コスト的に有利になるというメリットがある。気泡が微細なポリカーボネートの発泡体を得るためには、前記特許文献1および前記特許文献2のように比較的高価な物質を気泡核剤や気泡成長核剤として利用することが必要とされるため、主成分自体を結晶化させ、当該結晶を気泡核剤や気泡成長核剤として利用する方式により気泡が微細なポリカーボネートの発泡体を得ることが可能となれば、そのメリットはさらに顕著となる。しかし、ポリカーボネート樹脂はその分子構造から結晶化させることが困難であり、ポリカーボネート樹脂自体を結晶化させ、当該結晶を気泡核剤や気泡成長核剤として利用する方式を実施することが困難であった。
【0004】
一方、発泡体の製造方法としては、前記特許文献1および前記特許文献2のようなバッチ法や延伸法以外に、押出法が知られている。押出法はバッチ法等と比べて製造効率に優れ、製造コストを削減することが可能である。しかし、押出法でポリカーボネート系樹脂発泡体を成形する場合、押出機シリンダ内での樹脂の溶融温度を高くすると微細な気泡が得られず、一方、溶融温度を低くすると樹脂の押し出しことが困難になるという性質を有するため、微細気泡を持つ発泡体を押出法で得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−169554号公報
【特許文献2】特開2008−127466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、主成分であるポリカーボネート自体を結晶化させ当該結晶を気泡核剤や気泡成長核剤として利用することにより、高密度かつ微細な気泡を有するポリカーボネート系樹脂発泡体と、前記ポリカーボネート系樹脂発泡体の製造効率に優れた製造方法および前記ポリカーボネート系樹脂発泡体を利用した光反射特性に優れた光反射板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前期目的を達成すべく鋭意検討した結果、ポリカーボネートに発泡剤として供給するガスを利用してポリカーボネートを特定の範囲内に結晶化させることにより、主成分と異なる物質を気泡核剤や気泡成長核剤として加えることなく高密度かつ微細な気泡を有するポリカーボネート系樹脂発泡体を得ることを見出した。また、併せて、押出機内で樹脂とガスを特定の条件下におくことによってポリカーボネートを特定の範囲内に結晶化させることで、本発明に係るポリカーボネート系樹脂発泡体を押出法により製造できることを見出した。
【0008】
本発明は、以下のポリカーボネート系樹脂発泡体、その製造方法および光反射板を提供するものである。
(1)樹脂が、メルトフローレートが5〜15g/100minである直鎖または分岐のポリカーボネート系樹脂であり、下記式(1)で得られる結晶化度Xc[%]が0.15〜2%、かつ平均セル密度が1×10
9個/cm
3以上であ
り、押出法で製造されてなることを特徴とするポリカーボネート系樹脂発泡体。
Xc=ΔH/110.04×100[%]・・・式(1)
(式中、ΔHは示差走査熱量分析によって得られる結晶融解熱(J/g)を表し、110.04はポリカーボネートの完全結晶の融解熱(J/g)を表す。)
(2)前記(1)に記載のポリカーボネート系樹脂発泡体の製造方法であって、前記樹脂発泡体を
ダイ出口近傍を150℃として押出しする押出法押出法で製造することを特徴とするポリカーボネート系樹脂発泡体の製造方法。
(3)発泡剤が炭酸ガスまたはペンタンであることを特徴とする(2)に記載のポリカーボネート系樹脂発泡体の製造方法。
(4)前記発泡剤の濃度が、6〜9wt%である(3)に記載のポリカーボネート系樹脂発泡体の製造方法。
(5)前記ポリカーボネート系樹脂が直鎖のポリカーボネート系樹脂の場合、押出機のシリンダー内での設定温度の最低温度が125℃以上でかつ最高温度が310℃であり、シリンダー内の滞留時間が35〜40分のいずれかの時間であり、前記ポリカーボネート系樹脂が分岐のポリカーボネート系樹脂の場合、押出機のシリンダー内での設定温度の最低温度が140℃以上でかつ最高温度が310℃であり、シリンダー内の滞留時間が35〜40分のいずれかの時間であることを特徴とする(2)〜(4)のいずれか1項に記載のポリカーボネート系樹脂発泡体の製造方法。
(6)前記(2)〜(5)のいずれか1項に記載の方法で製造されたことを特徴とするポリカーボネート系樹脂発泡体。
(7)前記(1)または(6)に記載のポリカーボネート系樹脂発泡体を利用することを特徴とする光反射板。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリカーボネート系樹脂発泡体は軽量性、形状安定性、経済性などの特性に優れ、さらに光反射特性に優れる。また、本発明のポリカーボネート系樹脂発泡体の製造方法は、製造効率、経済性に優れる。本発明の光反射板は、電飾看板や照明器具、ディスプレイなどのバックライトに使用される光反射板として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る発泡体を押出法で製造する場合の製造装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき、さらに詳しく説明する。本発明でいうポリカーボネート系樹脂とは、カーボネート基を持った高分子化合物単体(以下、単体と呼ぶ)、種類の異なる前記単体同士をブレンドしたもの、前記単体に他の樹脂をブレンドしたもの、前記単体に添加剤を加えたもの、あるいはこれらを組み合わせたもの全てを指していう。
本発明で使用するポリカーボネート系樹
脂は、分岐タイプのもの、
または直鎖タイプのもの
である。
【0012】
本発明で使用するポリカーボネート系樹脂のメルトフローレート(以下MFRという)は5〜15g/10minの範囲
である。
これは、MFRが5g/10minを下回ると負荷が高すぎて押出が困難になりやすく、MFRが15g/10minを超えるとダイの圧力を十分に高く保つことが困難になるためである。押出時の負荷とダイの圧力とのバランスを考えると、MFRは5〜12g/10minであれば好ましく、5〜10g/10minであればさらに好ましい。なお、ポリカーボネート系樹脂のMFRは、JIS K7210に規定される方法により、温度300℃, 荷重1.20kg(JIS K7210附属書A表1の条件コード名W)で測定した値である。
【0013】
樹脂成分中には、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種添加物、例えば酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光増白剤、染料、顔料、加工助剤、衝撃改質剤、充填剤などが添加されていてもよい。
【0014】
発泡剤には化学発泡剤、物理発泡剤のいずれを用いてもよい。化学発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、炭酸水素ナトリウム、ビステトラゾール・ジアンモニウム、ビステトラゾール・ピペラジン、5−フェニールテトラゾールなどを単体、あるいは適宜ブレンドして用いることができるが、これらに限られるものではない。また、これら化学発泡剤には分解温度を調節するための分解助剤(尿素等)を加えてもよい。
【0015】
物理発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、水、空気、アルゴン、ヘリウム、希ガス、代替フロン等の無機ガス、あるいはブタン、ペンタンなどの有機ガスを単体、もしくは混合して用いてよいが、これらに限られるものではない。製造時の安全性、環境負荷の小ささなどを考慮すると二酸化炭素が望ましい。
【0016】
本発明において発泡体の結晶化度は
後述の式(1)で得られた結晶化度Xc[%]が0.15〜2%であ
る。結晶化度
Xc[%]が0.15%を下回ると気泡径が大きくなりセル密度が低下する。結晶化度
Xc[%]が2%を超えると樹脂が硬くなりすぎて気泡が形成されにくくなる。なお、発泡体の結晶化度
Xc[%]はガスの種類や濃度、および樹脂成形機内の温度と滞留時間によって変化するので、個々の製造設備においてこれらの条件を事前に調節することにより発泡体の結晶化度
Xc[%]を前記望ましい範囲内に収めることが可能である。
【0017】
本発明において、発泡体を製造する方法はバッチ法、押出法のいずれを用いてもかまわない。製造効率の観点でいえば、押出法で製造することが好ましい。
発泡体を押出法で製造する場合、発泡剤は押出機に供給する前にあらかじめ樹脂に練りこんでもよいし、押出機の側面に設けたノズルから溶融した樹脂に供給してもよい。また、押出機は1台であってもよいし、押出機を2台直列に接続したタンデムシステムを用いてもよい。ダイとしてはTダイ、サーキュラーダイ、多孔ダイなどを使用できるがこれらに限定されるものではない。
【0018】
以下、
図1に基づき発泡体の製造方法の一例を示す。押出機1には、ホッパー2、ガス供給口3、ダイ6が設置されている。押出機1は樹脂を完全に溶融させるとともにガスを樹脂中に均一に分散させる役割がある。押出機1には単軸押出機単体を用いてもよいが、樹脂中へのガスの溶解時間を十分に取ることができ、かつ、ダイ出口において樹脂を十分に冷却することができることから、押出機を二台直列につないだタンデム押出機がより望ましい。押出機(タンデム押出機の場合、1段目押出機)のL/Dは30以上あることが望ましい。
樹脂および添加剤の混合物(以下、単に樹脂という)を押出機1のホッパー2に供給する。押出機1内のスクリューを回転することにより、前記樹脂は押出機1のバレル内を溶融しながら前進していく。一方、押出機1のバレルの中程に設置されたたガス供給口3にはガスボンベ5が接続されており、ガス流量制御装置4で制御された所定の量のガスが押出機に供給される。溶融した樹脂とガスはガス供給ポートで接触し、押出機内の高い圧力によりガスは樹脂中に溶解していく。押出機内で均質に混合された樹脂とガスの混合物は、ダイ6から押し出されると同時に発泡する。最後に、押し出された発泡体を必要に応じて成形機7で成形することにより最終的な発泡体8を得ることができる。
なお、本発明に係る高密度かつ微細気泡を有するポリカーボネート系樹脂発泡体を得るためには、予備的な製造により得られた発泡体の結晶化度
Xc[%]を測定することにより、結晶化度
Xc[%]が0.15〜2%となるようにガス濃度や滞留時間、設定温度等の製造条件を調整することが望ましい。
【0019】
<発泡体の結晶化度>
発泡体の結晶化度Xc[%]は、示差走査熱量分析によって得られた結晶融解熱ΔH[J/g]をポリカーボネートの完全結晶の融解熱[J/g]で割って100を乗じて求めた。ここで、ポリカーボネートの完全結晶の融解熱は、110.04[J/g]であることから、発泡体の結晶化度Xc[%]は、式(1)にて求まる。
【0020】
Xc=ΔH/110.04×100[%]・・・式(1)
【0021】
<発泡体の平均セル密度>
発泡体試験片を長さ10mm、幅5mm程度に切断し、かかる個々の切断片を液体窒素中に沈め、5分間放置した。その後、切断片を液体窒素から取出し、二つに折ることにより破壊面を露出させた。かかる破壊面の表面に真空コーターで金を蒸着し、SEM観察用サンプルとした。
当該サンプルにつき、1枚あたりに含まれるカウント可能な気泡数が200個程度になるような倍率のSEM写真を複数個所につき撮影し、カウントした気泡の数の平均値を1cm
2あたりの気泡の数に換算し、当該数値を3/2乗した数値を発泡体の平均セル密度(単位体積当たりの平均気泡数)[個/cm
3]とした。ただし、SEM写真の気泡数をカウントするにあたり、気泡径が0.1μm未満の気泡については、カウント対象から除外した。なお、気泡径が均一である場合は、1×10
9個/cm
3以上の平均セル密度が`平均気泡径約10μmに相当する。本発明において平均セル密度が1×10
9個/cm
3以上になると光反射板に使用したときに十分な光反射率が得られる。一方平均セル密度が1×10
9個/cm
3未満になると、十分な光反射率が得られないからである。
【0022】
本発明の発泡体を光反射シートに用いる場合には、全光線反射率は90%以上であることが望ましい。全光線反射率が90%を下回ると光反射シートとしての性能が劣り、用途が狭い範囲に限られるからである。なお、ここでいう全光線反射率とは、JIS−K7105の測定法Bに準拠して、分光光度計(例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、形式U−4100、標準白色板:酸化アルミニウム)を用いて550nmの波長において測定した全光線反射率[%]のことである。
【0023】
本発明の発泡体の厚さに特に制限はないが、光反射シートに用いる場合は厚さ0.5mm以上、3.0mm以下であることが望ましい。光反射シートの厚さが0.5mmを下回ると二次成形時にシートが破れやすくなり、3.0mmを上回ると、ハンドリングが悪くなったり設置場所が限定されたりするからである。二次成形性とハンドリングとのバランスを考えると、シートの厚さは0.5〜2.0mmであることが好ましく、0.5〜1.0mmであればさらに好ましい。
【0024】
本発明の発泡体の発泡倍率に特に制限はないが、光反射シートに用いる場合は発泡倍率が1.5〜15倍であることが望ましい。発泡倍率が1.5倍を下回ると十分な光反射率が得られないだけでなく材料のコストが増大し、発泡倍率が15倍を超えると、光反射シートの剛性が不足するからである。光反射率、材料コスト、剛性のバランスを考慮すると、光反射シートの発泡倍率は2〜12倍であれば好ましく、2〜10倍であればさらに好ましい。なお、ここでいう発泡倍率とは、発泡前の熱可塑性樹脂組成物の密度を、JIS K7112のA法(水中置換法)にしたがって電子天秤(例えば、メトラートレド社製 形式:AG204)で測定した発泡体の密度で割って求めた値である。
【0025】
本発明の発泡体を光反射シートに用いる場合には、発泡体の片面あるいは両面に必要に応じて光安定剤を含有する塗布層を設けてもよい。光安定剤としては、ヒンダードアミン系、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系、ベンゾエート系、蓚酸アニリド系などの有機系の光安定剤、あるいはゾルゲルなどの無機系の光安定剤を用いることができるが、これらに限られるものではない。
【実施例】
【0026】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
実施例1
直鎖型ポリカーボネート(MFR=7.0g/10min)をタンデム押出機(1段目φ38mm単軸スクリュー,2段目φ63.5mm単軸スクリュー)のホッパーに供給し、150〜310℃に設定されたシリンダ内で溶融させた。一方、1段目押出機の側面から9wt%のペンタンを供給し、この溶融樹脂と混合させた。こうして得られた樹脂とガスの混合物を直径28.7mmのサーキュラーダイから大気中に押し出すことで発泡体を得た。このとき、樹脂の押出機内の滞留時間は35〜40分であった。得られた発泡シートの結晶化度を示差走査熱量分析で測定したところ0.15%であった。また、発泡体断面のSEM写真から平均セル密度を計算したところ1×10
9個/cm
3であった。
【0028】
実施例2
設定温度範囲を134〜310℃とした以外は実施例1と同様な設備および条件で実験を行った。得られた発泡体の結晶化度は0.52%、SEM写真から得られた平均セル密度は4×10
10個/cm
3であった。
【0029】
実施例3
設定温度範囲を125〜310℃とした以外は実施例1と同様な設備および条件で実験を行った。得られた発泡体の結晶化度は1.73%、SEM写真から得られた平均セル密度は2×10
9個/cm
3であった。
【0030】
実施例4
ポリカーボネートとして分岐型ポリカーボネート(MFR=5.5g/10min)を、発泡剤として6wt%の炭酸ガスを使用し、設定温度を140〜310℃とした以外は実施例1と同様な設備および条件で実験を行った。得られた発泡体の結晶化度は0.33%、SEM写真から得られた平均セル密度は3×10
9個/cm
3であった。
【0031】
比較例1
設定温度を150〜310℃とした以外は実施例4と同様の樹脂、設備および条件で実験を行った。得られた発泡体の結晶化度は0%、SEM写真から得られた平均セル密度は4×10
8個/cm
3であった。
【0032】
比較例2
発泡剤をHFC−245fa、設定温度範囲を110〜310℃とした以外は実施例1と同様な設備および条件で実験を行った。得られた発泡体の結晶化度は2.15%、SEM写真ではセルの存在は確認できなかった。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示されるように、実施例1〜4では結晶化度を0.15〜2%に調節した結果、平均セル密度が1×10
9個/cm
3以上であり全光線反射率90%以上の光反射特性のよい発泡体が得られている。これに対して、結晶化度が0%の比較例1では平均セル密度が1×10
9個/cm
3を下回り結果として光反射特性が悪化している。また、結晶化度が2%を越えた比較例2は観察可能な気泡がなく、発泡体としての軽量性等の特性が悪化している。
【符号の説明】
【0035】
1 押出機
2 ホッパー
3 ガス供給口
4 ガス流量制御装置
5 ガスボンベ
6 ダイ
7 成形機
8 発泡体