(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676223
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】電磁誘導式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
G01D5/245 110Q
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-258845(P2010-258845)
(22)【出願日】2010年11月19日
(65)【公開番号】特開2012-108074(P2012-108074A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2013年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康二
【審査官】
眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−210472(JP,A)
【文献】
特開2001−255107(JP,A)
【文献】
特開2008−216154(JP,A)
【文献】
特開2006−098141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01D 5/39−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定方向に沿ってスケール上に多数配設された複数列のスケールコイルと、
前記スケールに対して測定方向に相対移動自在なグリッド上にパターン形成された、複数列の送信コイル及び複数層にわたって形成された受信コイルとを備え、
前記送信コイルを励磁した時に、前記スケールコイルを経由して前記受信コイルで検出される磁束の変化から、前記スケールと前記グリッドの相対移動量を検出する電磁誘導式エンコーダにおいて、
前記複数列の送信コイルを、それぞれ前記グリッド上の異なる層に形成すると共に、
前記複数列の送信コイルの互いに近接するパターンを、前記グリッド上の異なる層の同じ平面位置に形成したことを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【請求項2】
測定方向に沿ってスケール上に多数配設された複数列のスケールコイルと、
前記スケールに対して測定方向に相対移動自在なグリッド上にパターン形成された、複数列の送信コイル及び複数層にわたって形成された受信コイルとを備え、
前記送信コイルを励磁した時に、前記スケールコイルを経由して前記受信コイルで検出される磁束の変化から、前記スケールと前記グリッドの相対移動量を検出する電磁誘導式エンコーダにおいて、
前記複数列の送信コイルの互いに近接するパターンを、前記グリッド上の異なる層の同じ平面位置に形成したことを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導式エンコーダに係り、特に、ノギス、インジケータ、リニアスケール、マイクロメータ等に用いるのに好適な、エンコーダ幅とスケール幅の小型化、及び/又は、エンコーダの高精度化を図ることが可能な電磁誘導式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や2に記載されている如く、
図1に特許文献2の例を示すように、測定方向に沿ってスケール10上に多数配列されたスケールコイル14、16と、前記スケール10に対して測定方向に相対移動自在なグリッド(スライダとも称する)12上に配設された送信コイル24、26及び受信コイル20、22とを備え、送信コイルを励磁した時に、スケールコイルを経由して受信コイルで検出される磁束の変化から、スケール10とグリッド12の相対移動量を検出する電磁誘導式エンコーダが知られている。図において、28は送信制御部、30は受信制御部である。
【0003】
このような電磁誘導式エンコーダで、余分な信号であるオフセットを低減しようとした場合、
図2に示す如く、送信コイル24が発生する磁界がキャンセルされ、正味零となる部分(
図2の例では、両側の送信コイルの間の中央部分)に受信コイル20を配置することでオフセットを低減していた。なお、特許文献2では、
図2の第1の送信コイル24と第1の受信コイル20でなる構成に加えて、
図3に示す如く、第2の送信コイル26の両側に第2の受信コイル22も配設されている。
【0004】
しかしながら、この構成は、スケールコイルが3列必要となり、スケールコイルの配線が長くなるため、発生する誘導電流が、スケールコイル自身のインピーダンスによって減衰してしまい、強い信号が得難いという問題点を有していた。
【0005】
このような問題点を解決するべく、出願人は特許文献3で、その
図6に対応する本願の
図4に示す如く、送信コイル24A、24B、受信コイル20A、20Bとスケールコイル14A、14Bを、スケール10の中心に対して対称に複数セット配置し、スケール中心に関して対称な位置にあるスケールコイルの一方(例えば14A)を、他方のスケールコイル(例えば14B)に対し、スケールピッチλの1/2位相がずれた関係となるようにすることを提案している。
【0006】
更に、
図5に示す如く、スケールコイル、送信コイル及び受信コイルを有するトラックを、異なるスケールピッチλ1、λ2でスケール幅方向(グリッド幅方向)に2組(スケールコイル14−1、送信コイル24−1、受信コイル20−1の組と、スケールコイル14−2、送信コイル24−2、受信コイル20−2の組)配置して、絶対位置測定を可能とすることが考えられる。
【0007】
ここで、受信コイル20−1、20−2のパターンを基板上に形成する場合、例えば菱形等のループ状とするためには、2層以上必要であり、
図6に例示する如く、1層目パターンと2層目パターン接続用スルーホ−ルVHを用いて形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−318781号公報
【特許文献2】特開2003−121206号公報(
図1、
図2、
図3)
【特許文献3】特開2009−186200号公報(
図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、送信コイル24−1、24−2は、
図6に例示する如く、同じ層(
図6では1層目)で形成が可能であるが、パターンを形成するためには、送信コイル24−1、24−2の隣接する内側パターン間の距離をA0だけ離す必要があり、その分だけ送信コイル24−1、24−2の全幅B0が大きくなるため、エンコーダ幅、及び、送信コイル24−1、24−2と対応する位置にスケールコイル14−1、14−2が配設されるスケールの幅を狭くしようとする場合の制約になっていた。又、エンコーダを小型にしようとする場合、各トラックの送信コイルと受信コイル間の距離C0が近い構成になるため、送信コイルから受信コイルへのクロストーク量が大きいという課題があり、グリッド製造のばらつき(特に層間パターンの位置ずれ)により、高精度化する場合の障害となっていた。
【0010】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、エンコーダ幅とスケール幅の小型化、及び/又は、エンコーダの高精度化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、測定方向に沿ってスケール上に多数配設された複数列のスケールコイルと、前記スケールに対して測定方向に相対移動自在なグリッド上にパターン形成された、複数列の送信コイル及び複数層にわたって形成された受信コイルとを備え、前記送信コイルを励磁した時に、前記スケールコイルを経由して前記受信コイルで検出される磁束の変化から、前記スケールと前記グリッドの相対移動量を検出する電磁誘導式エンコーダにおいて、前記複数列の送信コイルを、それぞれ前記グリッド上の異なる層に形成
すると共に、前記複数列の送信コイルの互いに近接するパターンを、前記グリッド上の異なる層の同じ平面位置に形成することにより、前記課題を解決したものである。
【0012】
本発明は、又、測定方向に沿ってスケール上に多数配設された複数列のスケールコイルと、前記スケールに対して測定方向に相対移動自在なグリッド上にパターン形成された、複数列の送信コイル及び複数層にわたって形成された受信コイルとを備え、前記送信コイルを励磁した時に、前記スケールコイルを経由して前記受信コイルで検出される磁束の変化から、前記スケールと前記グリッドの相対移動量を検出する電磁誘導式エンコーダにおいて、前記複数列の送信コイルの互いに近接するパターンを、前記グリッド上の異なる層の同じ平面位置に形成することにより、同様に前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数
列の送信コイルのグリッド上の配置幅を従来より縮小して、エンコーダ幅及びスケール幅の小型化を図ることができる。又、各送信コイルの幅を従来より拡大して、送信コイルと受信コイル間のクロストーク量を減少させ、エンコーダの高精度化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】特許文献2に記載された従来の電磁誘導式エンコーダの全体構成を示す斜視図
【
図2】同じくグリッド上のコイルの配置及び第1の作用を示す平面図
【
図3】同じくグリッド上のコイルの配置及び第2の作用を示す平面図
【
図4】特許文献3に記載された従来の電磁誘導式エンコーダのグリッドとスケールの平面図
【
図5】発明者が検討中の電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダの基本的な構成を示すグリッドとスケールの平面図
【
図7】本発明の第1実施形態を示すグリッドとスケールの平面図
【
図9】本発明の第2実施形態を示すグリッドとスケールの平面図
【
図10】本発明の第3実施形態におけるグリッドの断面図
【
図11】本発明の第4実施形態におけるグリッドの断面図
【
図12】本発明の第5実施形態におけるグリッドの断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
本発明の第1実施形態は、
図7(グリッドとスケールの平面図)及び
図8(グリッドの断面図)に示す如く、測定方向に沿ってスケール10上に多数配設された、スケールピッチλ1、λ2が異なる2列のスケールコイル14−1、14−2と、前記スケール10に対して測定方向に相対移動自在なグリッド12上にパターン形成された、2つの送信コイル24−1、24−2及び2層にわたって形成された受信コイル20−1、20−2とを備え、前記送信コイル24−1、24−2を励磁した時に、前記スケールコイル14−1、14−2を経由して前記受信コイル20−1、20−2で検出される磁束の変化から、前記スケール10と前記グリッド12の相対移動量を検出する電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダにおいて、
図8に示す如く、前記2つの送信コイル24−1、24−2のパターンを、前記グリッド12上の異なる層(図では送信コイル24−1を1層目、送信コイル24−2を2層目)に形成し、且つ、互いに近接する内側パターン(送信コイル24−1の右側パターンと送信コイル24−2の左側パターン)を同じ平面位置に形成したものである。
【0019】
前記スケール10とグリッド12は、スケールコイル14−1が送信コイル24−1と正対し、スケールコイル14−2が送信コイル24−2と正対するように配置される。
【0020】
図において、13は例えばガラスエポキシでなるコアであり、パターンは例えば電磁結合が良好な銅で形成することができる。なお、コア13の材料はガラスエポキシに限定されず、パターン材料も、電磁結合が可能であれば銅に限定されない。
【0021】
本実施形態によれば、2つの送信コイルの全幅B1を、
図5と
図6に示した比較例の全幅B0から送信コイルの間隔A0分だけ縮小することができる。
【0022】
なお、
図7においては、各トラックにおける測定方向の受信コイル20−1、20−2が各々1組とされていたが、
図9に示す第2実施形態のように、各トラックにおける測定方向の受信コイル数を増やすと共に、受信コイルの一方(20−1B、20−2B)が、他方(20−1A、20−2A)に対し、スケールピッチλの1/2位相がずれた関係となるようにし、2組の受信コイルの信号の差を出力するようにして、オフセットを低減し、ピッチング方向の変動に強くすることもできる。
【0023】
又、前記実施形態においては、2つの送信コイル24−1、24−2の内側パターンが同じ平面位置に形成されていたが、
図10に示す第3実施形態の如く、2つの送信コイル24−1、24−2の内側パターンの平面配置を若干離したり、あるいは逆にオーバーラップさせることも可能である。
【0024】
次に、
図11を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。
【0025】
本実施形態は、受信コイル20−1、20−2の配置間隔を変えることなく、同じ送信コイルの全幅B3=B0、従って同じエンコーダ幅のまま、各トラックの送信コイルと受信コイルの距離をC3(>C0)まで広げたものである。
【0026】
本実施形態によれば、送信コイルから受信コイルへの直接のクロストーク量が減少し、結果的に、より高精度化できる。
【0027】
本実施形態においても、2つの送信コイル24−1、24−2の内側パターンの平面配置を若干離したり、あるいは逆にオーバーラップさせることが可能である。
【0028】
なお、前記実施形態においては、いずれも、送信コイルが1層目又は2層目のいずれか一方の層に形成されていたが、
図12に示す第5実施形態のように、受信コイルと同様に各トラックの送信コイル24−1、24−2を2つの層にわたって形成することも可能である。
【0029】
本実施形態においても、2つの送信コイル24−1、24−2の内側パターンの平面配置を若干離したり、あるいは逆にオーバーラップさせることが可能である。
【0030】
なお、トラック数、パターン層数は2に限定されず、3以上であっても良い。1トラックの受信コイル数も1又は2に限定されず、3以上であっても良い。
【0031】
又、前記実施形態においては、いずれも、受信コイルの形状が菱形とされていたが、受信コイルの形状は、これに限定されず、例えば正弦波状、あるいは、これに近似した形状とすることができる。
【0032】
又、前記実施形態においては、いずれも、スケールコイルが矩形の枠状とされていたが、スケールコイルの形状も矩形の枠状に限定されず、例えば矩形内に電極が存在する板状、あるいは逆に矩形部分を抜いた板状とすることも可能である。
【0033】
本発明は、前記実施形態に示したような絶対位置測定用エンコーダの他、特許文献3に記載されたようなインクリメンタル測定用エンコーダにも同様に適用できる。特に特許文献3の
図6(本願の
図4)で本発明を適用すると、近接する送信コイルの送信方向が同方向である為、送信磁界強度が強めあい、本発明の効果がより強くなる。
【符号の説明】
【0034】
10…スケール
12…グリッド
14−1、14−2…スケールコイル
20−1、20−1A、20−1B、20−2、20−2A、20−2B…受信コイル
24−1、24−2…送信コイル
28…送信制御部