【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0052】
[切断試験1A]
[実施例1]
本発明の実施例1として、樹脂ボンド相からなる基材2内に、粒度#170(粒径75−90μm)の単体砥粒7と、平均粒径40μmの砥粒8を複数含み、金属相9がNi無電解めっきで形成された平均粒径75μmの凝集砥粒10とが分散された樹脂ボンド砥石1を作製した。また、砥粒7、10は、基材2内の集中度が100となるように分散配置した。この樹脂ボンド砥石1の各寸法は、外径58mm、内径40mm、厚さ0.3mmである。
【0053】
この樹脂ボンド砥石1を切断加工装置に装着し、被切断材としてQFNパッケージ:4×4mm、24Pinを用いて切断加工を行い、QFNパッケージの切断面において厚さ方向(縦方向)に突出するように形成された電極バリの大きさ(Zバリ)と、切断面に露出した隣り合う電極間距離と、樹脂面(切断面)に生じたチッピングのうち、チッピング幅が20μm以上であるものの発生頻度(樹脂面チッピング)と、主軸電流値とを測定した。尚、前記電極間距離とは、切断面に露出した隣り合う電極同士において、一方の電極から他方の電極に向かうように電極バリが形成された場合に、該電極バリの先端から他方の電極までの距離を言う。また、隣り合う電極同士の両方に、互いに接近するように対向して電極バリが形成された場合には、これら電極バリの先端同士の間の距離を言う。
また、試験の条件としては、フランジ:φ52mm、主軸回転数:20000min
−1、送り速度:30mm/secとした。
試験の結果を、表1に示す。
【0054】
[実施例2]
また、実施例2として、実施例1で説明した平均粒径40μmの砥粒8を複数含む凝集砥粒10の代わりに、平均粒径30μmの砥粒8を複数含む凝集砥粒10を用いた。それ以外は実施例1と同じ条件として、樹脂ボンド砥石1を作製し試験を行った。
【0055】
[実施例3]
また、実施例3として、実施例1で説明した凝集砥粒10の代わりに、平均粒径20μmの砥粒8を複数含む凝集砥粒10を用いた。それ以外は実施例1と同じ条件として、樹脂ボンド砥石1を作製し試験を行った。
【0056】
[実施例4]
また、実施例4として、実施例1で説明した凝集砥粒10の代わりに、平均粒径10μmの砥粒8を複数含む凝集砥粒10を用いた。それ以外は実施例1と同じ条件として、樹脂ボンド砥石1を作製し試験を行った。
【0057】
[実施例5]
また、実施例5として、実施例1で説明した凝集砥粒10の代わりに、平均粒径60μmの砥粒8を複数含む凝集砥粒10を用いた。それ以外は実施例1と同じ条件として、樹脂ボンド砥石1を作製し試験を行った。
【0058】
[比較例1]
一方、比較例1として、樹脂ボンド相からなる基材内に、単体砥粒7のみが分散された樹脂ボンド砥石を作製した。それ以外は実施例1と同じ条件として、樹脂ボンド砥石を作製し試験を行った。
【0059】
【表1】
【0060】
[評価]
表1に示される通り、実施例1〜5のように、基材2内に分散される砥粒として、単一の砥粒からなる単体砥粒7と、複数の砥粒8が金属相9により互いに結合されてなる凝集砥粒10とを備えた樹脂ボンド砥石1においては、Zバリが47μm以下、電極間距離が144μm以上となり、切断加工による電極バリの発生が抑制されることがわかった。また、樹脂面チッピングが1.9%以下となり、チッピングが抑制された。また、主軸電流値が2.6A以下となり、切断加工時の摩擦抵抗が低減することが確認された。
【0061】
特に、凝集砥粒10に含まれる各砥粒8の大きさが、単体砥粒7の大きさの1/2以下である実施例1〜4については、Zバリが24μm以下、樹脂面チッピングが1.3%以下となって、優れた効果を奏することが確認された。
さらに、凝集砥粒10に含まれる各砥粒8の大きさが、単体砥粒7の大きさの1/2以下で、かつ、1/5以上である実施例1〜3については、電極間距離が161μm以上、主軸電流値が2.4A以下となって、顕著な効果を奏することが確認された。
【0062】
一方、基材内に単体砥粒7のみが分散された比較例1の樹脂ボンド砥石においては、実施例1〜5に比べて、Zバリ、電極間距離、樹脂面チッピング及び主軸電流値が、すべて悪い結果となった。
【0063】
[切断試験1B]
次に、実施例1〜5及び比較例1の樹脂ボンド砥石を用いて、前述した試験の条件のうち、送り速度:60mm/secとして、切断試験を行った。
試験の結果を、表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
[評価]
表2に示される通り、実施例1〜5の樹脂ボンド砥石1においては、Zバリが57μm以下、電極間距離が138μm以上となり、切断加工による電極バリの発生が抑制されることがわかった。また、樹脂面チッピングが2.4%以下となり、チッピングが抑制された。また、主軸電流値が2.6A以下となり、切断加工時の摩擦抵抗が低減することが確認された。
【0066】
特に、凝集砥粒10に含まれる各砥粒8の大きさが、単体砥粒7の大きさの1/2以下である実施例1〜4については、Zバリが33μm以下、樹脂面チッピングが1.7%以下となって、優れた効果を奏することが確認された。
さらに、凝集砥粒10に含まれる各砥粒8の大きさが、単体砥粒7の大きさの1/2以下で、かつ、1/5以上である実施例1〜3については、電極間距離が151μm以上、主軸電流値が2.4A以下となって、顕著な効果を奏することが確認された。
【0067】
一方、比較例1の樹脂ボンド砥石においては、実施例1〜5に比べて、Zバリ、電極間距離、樹脂面チッピング及び主軸電流値が、すべて悪い結果となった。
【0068】
[切断試験2A]
[実施例6]
本発明の実施例6として、樹脂ボンド相からなる基材2内に、粒度#230(粒径55−65μm)の単体砥粒7と、平均粒径25μmの砥粒8を複数含み、金属相9がNi無電解めっきで形成された平均粒径70μmの凝集砥粒10とが分散された樹脂ボンド砥石1を作製した。また、砥粒7、10は、基材2内の集中度が75となるように分散配置した。この樹脂ボンド砥石1の各寸法は、外径58mm、内径40mm、厚さ0.3mmである。
【0069】
詳しくは、前述の実施形態で説明したドクターブレード法を用い、凝集砥粒10を含む一対の外層同士の間に単体砥粒7を含む中央層を配置して3層とし、ホットプレスした。これにより、基材2の外面6から突出する砥粒のうち、凝集砥粒10の占める割合が、100%である樹脂ボンド砥石1が作製された。
【0070】
この樹脂ボンド砥石1を切断加工装置に装着し、被切断材としてアクリル樹脂付きガラスエポキシ基板(ガラエポ基板)を用いて切断加工を行い、このガラエポ基板の切断面における樹脂バリの大きさ(樹脂バリ)と、切断面の透明性やスクラッチの状態(切断面)と、切断面に露出した電極バリのうち、バリ長さが50μm以上であるものの発生頻度(電極バリ)と、主軸電流値とを測定した。
また、試験の条件としては、フランジ:φ52mm、主軸回転数:20000min
−1、送り速度:20mm/secとした。
試験の結果を、表3に示す。
【0071】
[実施例7]
また、実施例7として、実施例6で説明した単体砥粒7を含む中央層の代わりに、単体砥粒7及び凝集砥粒10を含む中央層を用いた。それ以外は実施例6と同じ条件として、樹脂ボンド砥石1を作製し試験を行った。
【0072】
[実施例8]
また、実施例8として、実施例6で説明した凝集砥粒10を含む外層の代わりに、凝集砥粒10及び単体砥粒7を含む外層を用いた。尚、基材2の外面6に突出する砥粒のうち凝集砥粒10の占める割合が、80%となるように設定した。それ以外は実施例6と同じ条件として、樹脂ボンド砥石1を作製し試験を行った。
【0073】
[実施例9]
また、実施例9として、実施例6で説明した凝集砥粒10を含む外層の代わりに、凝集砥粒10及び単体砥粒7を含む外層を用いた。尚、基材2の外面6に突出する砥粒のうち凝集砥粒10の占める割合が、60%となるように設定した。それ以外は実施例6と同じ条件として、樹脂ボンド砥石1を作製し試験を行った。
【0074】
[実施例10]
また、実施例10として、実施例6で説明した凝集砥粒10を含む外層の代わりに、凝集砥粒10及び単体砥粒7を含む外層を用いた。尚、基材2の外面6に突出する砥粒のうち凝集砥粒10の占める割合が、40%となるように設定した。それ以外は実施例6と同じ条件として、樹脂ボンド砥石1を作製し試験を行った。
【0075】
[実施例11]
また、実施例11として、実施例6で説明した一対の外層及び中央層の代わりに、凝集砥粒10及び単体砥粒7を含む混合層(1層)を用いた。尚、凝集砥粒10と単体砥粒7との比は、体積比で1:1(50%:50%)となるように設定した。これにより、基材2の外面6に突出する砥粒のうち凝集砥粒10の占める割合が、50%に設定された。それ以外は実施例6と同じ条件として、樹脂ボンド砥石1を作製し試験を行った。
【0076】
[比較例2]
一方、比較例2として、樹脂ボンド相からなる基材内に、単体砥粒7のみが分散された1層からなる樹脂ボンド砥石を作製した。それ以外は実施例6と同じ条件として、樹脂ボンド砥石を作製し試験を行った。
【0077】
【表3】
【0078】
[評価]
表3に示される通り、実施例6〜11のように、基材2の外面6から凝集砥粒10が突設された樹脂ボンド砥石1においては、樹脂バリが91μm以下、電極バリが9%以下となり、切断加工による樹脂バリ及び電極バリの発生が抑制されることがわかった。また、主軸電流値が2.9A以下となり、切断加工時の摩擦抵抗が低減することが確認された。
【0079】
特に、外面6から突出する砥粒全体に占める凝集砥粒10の割合が、50%以上である実施例6〜9、11については、樹脂バリが69μm以下、切断面が半透明(つまり加工品位が高い)となり、電極バリが7%以下となって、優れた効果を奏することが確認された。
さらに、前記凝集砥粒10の割合が50%以上で、かつ、基材2の層構成が一対の外層及び中央層の計3層からなる実施例6〜9については、樹脂バリが53μm以下、電極バリが2.8%以下となって、顕著な効果を奏することが確認された。
【0080】
一方、基材が単体砥粒7層のみからなる比較例2の樹脂ボンド砥石においては、実施例6〜11に比べて、樹脂バリ、電極バリ及び主軸電流値が、すべて悪い結果となった。
【0081】
[切断試験2B]
次に、実施例6〜11及び比較例2の樹脂ボンド砥石を用いて、前述した試験の条件のうち、送り速度:50mm/secとして、切断試験を行った。
試験の結果を、表4に示す。
【0082】
【表4】
【0083】
[評価]
表4に示される通り、実施例6〜11の樹脂ボンド砥石1においては、樹脂バリが97μm以下、電極バリが8%以下となり、切断加工による樹脂バリ及び電極バリの発生が抑制されることがわかった。また、主軸電流値が3.5A以下となり、切断加工時の摩擦抵抗が低減することが確認された。
【0084】
特に、外面6から突出する砥粒全体に占める凝集砥粒10の割合が、50%以上である実施例6〜9、11については、樹脂バリが78μm以下、電極バリが6%以下となって、優れた効果を奏することが確認された。
さらに、前記凝集砥粒10の割合が50%以上で、かつ、基材2の層構成が一対の外層及び中央層の計3層からなる実施例6〜9については、樹脂バリが62μm以下、切断面が半透明(つまり加工品位が高い)となり、電極バリが3.1%以下となって、顕著な効果を奏することが確認された。
【0085】
一方、基材が単体砥粒7層のみからなる比較例2の樹脂ボンド砥石においては、実施例6〜11に比べて、樹脂バリ、電極バリ及び主軸電流値が、すべて悪い結果となった。
【0086】
[切断試験3]
[実施例12]
本発明の実施例12として、樹脂ボンド相からなる基材2内に、粒度#400(平均粒径50μm)の単体砥粒7と、平均粒径10μmの砥粒8を複数含み、金属相9がNi無電解めっきで形成された平均粒径60μmの凝集砥粒10とが分散された樹脂ボンド砥石1を作製した。また、砥粒7、10は、基材2内の集中度が75となるように分散配置した。この樹脂ボンド砥石1の各寸法は、外径58mm、内径40mm、厚さ0.2mmである。
【0087】
この樹脂ボンド砥石1を切断加工装置に装着し、被切断材としてSONパッケージ:2×2mm、6Pinを用いて切断加工を行い、SONパッケージの切断面において厚さ方向(縦方向)に突出するように形成された電極バリの大きさ(Zバリ)と、切断面に露出した隣り合う電極間距離と、樹脂面(切断面)に生じたチッピングのうち、チッピング幅が20μm以上であるものの発生頻度(樹脂面チッピング)と、主軸電流値とを測定した。
また、試験の条件としては、フランジ:φ52mm、主軸回転数:20000min
−1、送り速度:40mm/secとした。
試験の結果を、表5に示す。
【0088】
[実施例13]
また、実施例13として、実施例12で説明した凝集砥粒10の代わりに、平均粒径50μmの凝集砥粒10を用いた。それ以外は実施例12と同じ条件として、樹脂ボンド砥石1を作製し試験を行った。
【0089】
[実施例14]
また、実施例14として、実施例12で説明した凝集砥粒10の代わりに、平均粒径40μmの凝集砥粒10を用いた。それ以外は実施例12と同じ条件として、樹脂ボンド砥石1を作製し試験を行った。
【0090】
[実施例15]
また、実施例15として、実施例12で説明した凝集砥粒10の代わりに、平均粒径30μmの凝集砥粒10を用いた。それ以外は実施例12と同じ条件として、樹脂ボンド砥石1を作製し試験を行った。
【0091】
[実施例16]
また、実施例16として、実施例12で説明した凝集砥粒10の代わりに、平均粒径70μmの凝集砥粒10を用いた。それ以外は実施例12と同じ条件として、樹脂ボンド砥石1を作製し試験を行った。
【0092】
[比較例3]
一方、比較例3として、樹脂ボンド相からなる基材内に、単体砥粒7のみが分散された樹脂ボンド砥石を作製した。それ以外は実施例12と同じ条件として、樹脂ボンド砥石を作製し試験を行った。
【0093】
【表5】
【0094】
[評価]
表5に示される通り、実施例12〜16のように、基材2内に分散される砥粒として、単一の砥粒からなる単体砥粒7と、複数の砥粒8が金属相9により互いに結合されてなる凝集砥粒10とを備えた樹脂ボンド砥石1においては、Zバリが35μm以下、電極間距離が123μm以上となり、切断加工による電極バリの発生が抑制されることがわかった。また、樹脂面チッピングが1.4%以下となり、チッピングが抑制された。また、主軸電流値が2.6A以下となり、切断加工時の摩擦抵抗が低減することが確認された。
【0095】
特に、凝集砥粒10の大きさが、単体砥粒7の大きさの0.8〜1.2倍である実施例12〜14については、Zバリが25μm以下、電極間距離が135μm以上、樹脂面チッピングが1.2%以下、主軸電流値が2.4A以下となって、顕著な効果を奏することが確認された。
【0096】
一方、基材内に単体砥粒7のみが分散された比較例1の樹脂ボンド砥石においては、実施例12〜16に比べて、Zバリ、電極間距離、樹脂面チッピング及び主軸電流値が、すべて悪い結果となった。