特許第5676502号(P5676502)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676502
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】光式流速水圧測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20060101AFI20150205BHJP
   G01F 1/28 20060101ALI20150205BHJP
   G01L 11/02 20060101ALI20150205BHJP
   G01P 5/04 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   G01F1/00 H
   G01F1/28 B
   G01L11/02
   G01P5/04 M
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-17534(P2012-17534)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-156175(P2013-156175A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100167852
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 康史
(72)【発明者】
【氏名】小野 義視
(72)【発明者】
【氏名】出雲 正樹
(72)【発明者】
【氏名】風間 純一
(72)【発明者】
【氏名】嘉本 健治
(72)【発明者】
【氏名】原田 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊男
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4794931(JP,B2)
【文献】 特許第4570222(JP,B2)
【文献】 特開平10−82674(JP,A)
【文献】 特許第4851480(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に配置され、前記流路内を流れる流水の流速と水圧を測定する光式流速水圧測定装置であって、
前記流速に応じた応力を検知する第1ファイバブラッグレーティングと、
前記応力の負荷に連動して、前記第1ファイバブラッグレーティングに前記応力の負荷を伝達する負荷伝達機構と、
前記応力を受ける第1ダイヤフラムを備え、前記第1ファイバブラッグレーティングと前記負荷伝達機構を収容する第1気密室を形成する第1ハウジングと、
前記第1ハウジング外の前記流水の上流側に設けられ、前記応力を前記第1ダイヤフラムへ伝達する受圧板を備えた流速測定部と、
前記水圧を検知する第2ファイバブラッグレーティングと、
前記水圧を受け、該水圧を前記第2ファイバブラッグレーティングに伝達する第2ダイヤフラムと、
前記第2ダイヤフラムを備え、前記第2ファイバブラッグレーティングを収容する第2気密室を形成する第2ハウジングを備えた水圧測定部と、を有し、
前記第1気密室の前記流水の下流側に、前記第1気密室と隣接して前記第2気密室が設けられ
さらに、前記流水の流れが前記第2ダイヤフラムの撓みに影響するのを抑制するための流水規制部材が、底部に設けられ、前記流水規制部材が、板状体であり、該板状体表面の一方の端部から他方の端部へ、流水の流れ方向に対して平行方向の溝が形成されていることを特徴とする光式流速水圧測定装置。
【請求項2】
流路に配置され、前記流路内を流れる流水の流速と水圧を測定する光式流速水圧測定装置であって、
前記流速に応じた応力を検知する第1ファイバブラッググレーティングと、
前記応力の負荷に連動して、前記第1ファイバブラッググレーティングに前記応力の負荷を伝達する負荷伝達機構と、
前記応力を受ける第1ダイヤフラムを備え、前記第1ファイバブラッググレーティングと前記負荷伝達機構を収容する第1気密室を形成する第1ハウジングと、
前記第1ハウジング外の前記流水の上流側に設けられ、前記応力を前記第1ダイヤフラムへ伝達する受圧板を備えた流速測定部と、
前記水圧を検知する第2ファイバブラッググレーティングと、
前記水圧を受け、該水圧を前記第2ファイバブラッググレーティングに伝達する第2ダイヤフラムと、
前記第2ダイヤフラムを備え、前記第2ファイバブラッググレーティングを収容する第2気密室を形成する第2ハウジングを備えた水圧測定部と、を有し、
前記第1気密室の前記流水の下流側に、前記第1気密室と隣接して前記第2気密室が設けられ、
さらに、前記流水の流れが前記第2ダイヤフラムの撓みに影響するのを抑制するための流水規制部材が、底部に設けられ、前記流水規制部材が、板状体であり、該板状体表面の上流側端部から延在する、流水の流れ方向に対して平行方向の溝と、該溝の下流側に該溝と連通した、流水の流れ方向に対して0°超90°未満の方向の溝とが形成されていることを特徴とする光式流速水圧測定装置。
【請求項3】
流路に配置され、前記流路内を流れる流水の流速と水圧を測定する光式流速水圧測定装置であって、
前記流速に応じた応力を検知する第1ファイバブラッググレーティングと、
前記応力の負荷に連動して、前記第1ファイバブラッググレーティングに前記応力の負荷を伝達する負荷伝達機構と、
前記応力を受ける第1ダイヤフラムを備え、前記第1ファイバブラッググレーティングと前記負荷伝達機構を収容する第1気密室を形成する第1ハウジングと、
前記第1ハウジング外の前記流水の上流側に設けられ、前記応力を前記第1ダイヤフラムへ伝達する受圧板を備えた流速測定部と、
前記水圧を検知する第2ファイバブラッググレーティングと、
前記水圧を受け、該水圧を前記第2ファイバブラッググレーティングに伝達する第2ダイヤフラムと、
前記第2ダイヤフラムを備え、前記第2ファイバブラッググレーティングを収容する第2気密室を形成する第2ハウジングを備えた水圧測定部と、を有し、
前記第1気密室の前記流水の下流側に、前記第1気密室と隣接して前記第2気密室が設けられ、
前記負荷伝達機構に、前記第1ファイバブラッグレーティングの破損を防止するための負荷伝達規制構造が設けられていることを特徴とする光式流速水圧測定装置。
【請求項4】
流路に配置され、前記流路内を流れる流水の流速と水圧を測定する光式流速水圧測定装置であって、
前記流速に応じた応力を検知する第1ファイバブラッググレーティングと、
前記応力の負荷に連動して、前記第1ファイバブラッググレーティングに前記応力の負荷を伝達する負荷伝達機構と、
前記応力を受ける第1ダイヤフラムを備え、前記第1ファイバブラッググレーティングと前記負荷伝達機構を収容する第1気密室を形成する第1ハウジングと、
前記第1ハウジング外の前記流水の上流側に設けられ、前記応力を前記第1ダイヤフラムへ伝達する受圧板を備えた流速測定部と、
前記水圧を検知する第2ファイバブラッググレーティングと、
前記水圧を受け、該水圧を前記第2ファイバブラッググレーティングに伝達する第2ダイヤフラムと、
前記第2ダイヤフラムを備え、前記第2ファイバブラッググレーティングを収容する第2気密室を形成する第2ハウジングを備えた水圧測定部と、を有し、
前記第1気密室の前記流水の下流側に、前記第1気密室と隣接して前記第2気密室が設けられ、
前記第1ファイバブラッグレーティングの長手方向に対して並列に、ダミー用光ファイバまたはダミー用光ファイバテープ心線が設けられていることを特徴とする光式流速水圧測定装置。
【請求項5】
前記第1気密室または前記第2気密室に、温度補償用ファイバブラッグレーティングが収容されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の光式流速水圧測定装置。
【請求項6】
請求項またはに記載の光式流速水圧測定装置を流水の流れる流路に設置して、前記光式流速水圧測定装置の下流側の流れを整流して前記流水の流速と水圧を測定することを特徴とする流速水圧測定方法。
【請求項7】
請求項またはに記載の光式流速水圧測定装置を下水道内に設置して、前記下水道内を流れる異物が、前記光式流速水圧測定装置周辺に堆積するのを防止して前記周辺を洗浄しながら前記下水道内の流水の流速と水圧を測定することを特徴とする流速水圧測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバブラッグレーティング(FBG)を用いた、流速と水圧とを測定する装置に関し、より具体的には、河川や管路等の流路を流れる流水の流速と水圧を測定する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のFBGを用いた光式流速測定装置は、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1では、気密室を形成するハウジングと、ハウジング内に収容された、応力に応じて変位し、その変位量に応じた波長の光を出射するFBGと、ハウジング外の上流側にあって、流水の流速に応じた力を受ける受圧板と、一端部が受圧板側に固定されたシャフトを有し、受圧板に作用する力に応じてシャフトが変位し、その変位によりFBGを変位させる荷重伝達機構と、を備えている。また、特許文献1では、長期に渡って信頼性の高い流速測定を可能とするために、荷重伝達機構は、シャフトが貫通し受圧板に固定されたボス部と、内周部がボス部の外周に固定され、外周部がハウジング側に固定されたダイヤフラムとを有し、受圧板とシャフトとの間およびボス部とシャフトとの間にOリングがそれぞれ設けられている。
【0003】
また、従来のFBGを用いた光式水圧測定装置は、例えば、特許文献2に開示されている。特許文献2では、圧力の変化を歪みの変化に変換するダイヤフラムに、光ファイバの長さ方向の一部に形成したFBGを取り付けた光式水圧測定装置であり、FBGの両側の2点のみをFBGにたるみがないようダイヤフラムに固定している。
【0004】
一般に、河川や管路等の流路を流れる流水を測定する場合、流速測定装置を設置して水の流速を測定するだけではなく、水圧測定装置も設置して水圧を測定する。流速を測定するだけでなく、流速を測定した地点の水圧もあわせて測定することで、該地点の水位も計測する。該地点における水位も計測することにより、該地点の水位に応じた流速を正確に算出できる。
【0005】
しかし、従来、流速と水圧を測定するには、特許文献1に例示される光式流速測定装置と特許文献2に例示される光式水圧測定装置とを、別の地点に設置する必要があった。従って、流速の測定地点と水圧の測定地点が離れてしまうので、流速の測定地点について水位に応じた流速を正確に算出できないという問題や、流速の測定地点における流量に誤差が発生しやすいという問題があった。
【0006】
また、流速測定装置と水圧測定装置とを別の地点に設置することにより、水の流れが阻害されやすくなるので、流速や流量を正確に算出できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−236777号公報
【特許文献2】特開2002−98604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、水位に応じた流速を正確に算出でき、流量の測定に誤差が発生するのを防止できる測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、流路に配置され、前記流路内を流れる流水の流速と水圧を測定する光式流速水圧測定装置であって、前記流速に応じた応力を検知する第1ファイバブラッグレーティングと、前記応力の負荷に連動して、前記第1ファイバブラッグレーティングに前記応力の負荷を伝達する負荷伝達機構と、前記応力を受ける第1ダイヤフラムを備え、前記第1ファイバブラッグレーティングと前記負荷伝達機構を収容する第1気密室を形成する第1ハウジングと、前記第1ハウジング外の前記流水の上流側に設けられ、前記応力を前記第1ダイヤフラムへ伝達する受圧板を備えた流速測定部と、前記水圧を検知する第2ファイバブラッグレーティングと、前記水圧を受け、該水圧を前記第2ファイバブラッグレーティングに伝達する第2ダイヤフラムと、前記第2ダイヤフラムを備え、前記第2ファイバブラッグレーティングを収容する第2気密室を形成する第2ハウジングを備えた水圧測定部と、を有し、前記第1気密室の前記流水の下流側に、前記第1気密室と隣接して前記第2気密室が設けられていることを特徴とする光式流速水圧測定装置である。
【0010】
上記態様の光式流速水圧測定装置では、流速測定部の第1気密室と水圧測定部の第2気密室とが、別体ではなく一体となっている。つまり、流速測定部と水圧測定部とが一体となっている。また、上記態様の光式流速水圧測定装置は、流水の上流側に流速測定部が、下流側に水圧測定部が、それぞれ配置されるように、流路内に設置される。
【0011】
本発明の態様は、さらに、前記流水が前記第2ダイヤフラムの撓みに影響するのを抑制するための流水規制部材が、底部に設けられていることを特徴とする光式流速水圧測定装置である。
【0012】
本発明の態様は、前記流水規制部材が、板状体であり、該板状体表面の一方の端部から他方の端部へ、流水の流れ方向に対して平行方向の溝が形成されていることを特徴とする光式流速水圧測定装置である。
【0013】
本発明の態様は、前記流水規制部材が、板状体であり、該板状体表面の上流側端部から延在する、流水の流れ方向に対して平行方向の溝と、該溝の下流側に該溝と連通した、流水の流れ方向に対して0°超90°未満の方向の溝とが形成されていることを特徴とする光式流速水圧測定装置である。
【0014】
本発明の態様は、前記負荷伝達機構に、前記第1ファイバブラッグレーティングの破損を防止するための負荷伝達規制構造が設けられていることを特徴とする光式流速水圧測定装置である。
【0015】
本発明の態様は、前記第1気密室または前記第2気密室に、温度補償用ファイバブラッグレーティングが収容されていることを特徴とする光式流速水圧測定装置である。本発明では、第1気密室と第2気密室とが、隣接しかつ一体となっているので、1つの温度補償用ファイバブラッグレーティングにて、第1ファイバブラッグレーティングと第2ファイバブラッグレーティングの温度補正が可能となる。
【0016】
本発明の態様は、前記第1ファイバブラッグレーティングの長手方向に対して並列に、ダミー用光ファイバまたはダミー用光ファイバテープ心線が設けられていることを特徴とする光式流速水圧測定装置である。上記「ダミー用光ファイバ」とは、ファイバブラッグレーティングが形成されておらず、よって、流速に応じた応力を検知しない光ファイバを意味する。上記「ダミー用光ファイバテープ心線」とは、ファイバブラッグレーティングが形成されておらず、よって、流速に応じた応力を検知しない光ファイバを有するテープ心線を意味する。ダミー用光ファイバ・ダミー用光ファイバテープ心線の本数を調整することで、第1ファイバブラッグレーティングに伝達される応力を調整できる。
【0017】
本発明の態様は、流水の流れ方向に対して平行方向の溝が形成された流水規制部材を備えた光式流速水圧測定装置を、流水の流れる流路に設置して、前記光式流速水圧測定装置の下流側の流れを整流して前記流水の流速と水圧を測定することを特徴とする流速水圧測定方法である。
【0018】
本発明の態様は、流水の流れ方向に対して平行方向の溝が形成された流水規制部材を備えた光式流速水圧測定装置を下水道内に設置して、前記下水道内を流れる異物が、前記光式流速水圧測定装置周辺に堆積するのを防止して前記周辺を洗浄しながら前記下水道内の流水の流速と水圧を測定することを特徴とする流速水圧測定方法である。
【発明の効果】
【0019】
上記態様によれば、流速測定部と水圧測定部とが隣接し、かつ一体となっているので、小型化でき、流速の測定地点と水圧の測定地点とをほぼ一致させることができる。その結果、流速の測定地点について水位に応じた流速を正確に算出でき、また、流速の測定地点における流量測定値に誤差が発生するのを防止できる。さらに、流速測定部と水圧測定部とが一体となっているので、流水が光式流速水圧測定装置により阻害されるのを抑制でき、結果、流速や流量を正確に算出できる。
【0020】
上記態様によれば、流水規制部材により、流水が第2ダイヤフラムの撓みに影響を与えるのを抑制するので、第2ダイヤフラムは、流水に関係なく水圧に応じて撓み、結果、水圧を正確に測定できる。
【0021】
上記態様によれば、板状体である流水規制部材の表面に、流水の流れ方向に対して平行方向に溝が設けられているので、流水によって運ばれてくる流路内の砂、泥、ゴミ等の異物が、上記溝を通ることで光式流速水圧測定装置の下流側へ円滑に流される。このように、上記溝は、異物を光式流速水圧測定装置の下流側へ流す自己洗浄作用を発揮する。上記溝の自己洗浄作用により、流路内を流れてくる異物が光式流速水圧測定装置とその周辺部に堆積するのを防止できるので、光式流速水圧測定装置の周囲に堆積した異物によって受圧板の変位が阻害されるのを防止し、より正確に流速を測定できる。また、光式流速水圧測定装置の周囲に堆積した異物が第2ダイヤフラムの撓みに影響を与えるのを防止できるので、より正確に水圧を測定できる。さらに、上記溝により、光式流速水圧測定装置の下流側にカルマン渦が発生するのを抑制できるので、光式流速水圧測定装置周辺の流れに整流作用を与えることができる。
【0022】
上記態様によれば、流水の流れ方向に対して平行方向の溝に加えて、さらに流水の流れ方向に対して0°超90°未満の方向の溝が形成されているので、流路内の異物が光式流速水圧測定装置とその周辺部に堆積するのをより確実に防止できる。
【0023】
上記態様によれば、第1ファイバブラッグレーティングの破損を防止する負荷伝達規制構造が設けられているので、流速が予想外に速くなって第1ファイバブラッグレーティングに伝達される応力が大きくなっても、光式流速水圧測定装置の故障を防止できる。
【0024】
上記態様によれば、1つの温度補償用ファイバブラッグレーティングにて、第1ファイバブラッグレーティングと第2ファイバブラッグレーティングの温度補正をするので、装置の構造が簡素化でき、製造コストを低減できる。
【0025】
上記態様によれば、ダミー用光ファイバまたはダミー用光ファイバテープ心線により第1ファイバブラッグレーティングに伝達される応力を調整できるので、測定地点の流速に応じて流速測定部の感度を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態例に係る光式流速水圧測定装置の内部を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態例に係る光式流速水圧測定装置の側面断面図である。
図3】本発明の実施形態例に係る負荷伝達規制構造の正面図である。
図4】光式流速水圧測定装置内のFBGと外部の光源等が光ファイバで接続された光経路を示す模式図である。
図5】実施形態例に係る流水規制部材の正面図である。
図6】第2の実施形態例に係る流水規制部材の正面図である。
図7】第3の実施形態例に係る流水規制部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施形態例に係る光式流速水圧測定装置について、図面を用いながら説明する。図1、2に示すように、本発明の実施形態例に係る光式流速水圧測定装置1は、流速測定部2と、この流速測定部2の下流側に流速測定部2と隣接した水圧測定部3とを備え、流速測定部2と水圧測定部3とは連結部4を介して連結されることで、流速測定部2と水圧測定部3が一体化されている。この連結部4の強度は、周囲に設けられた板状の連結部補強部材43で補強されている。また、流速測定部2の底部30から水圧測定部3の底部32にわたって、板状体の流水規制部材5が1枚設置されている。
【0028】
流速測定部2は、従来のファイバブラッグレーティングを用いた光式流速測定装置と同様の構造を有したものでよく、よって、従来と同様のメカニズムにて流速を測定することができる。
【0029】
実施形態例に係る流速測定部2は、図1、2に示すように、流速に応じた応力を検知する第1ファイバブラッグレーティング(第1FBG)11と、前記応力の負荷に連動して、前記第1FBG11に前記応力の負荷を伝達する負荷伝達機構12と、前記応力を受ける第1ダイヤフラム13を有し、前記第1FBG11と前記負荷伝達機構12を収容する第1気密室14を形成する第1ハウジング15を備えている。
【0030】
負荷伝達機構12は、第1ハウジング15の上流側に設けられ、流水Fの流速に応じて力を受ける上流側受圧板16に、一方の端部が固定された一本のシャフト17と、このシャフト17に固定されているが第1ハウジング15には固定されていない、可動ブロックである第1FBG下流側取付台18と、第1ハウジング15に固定されているがシャフト17には固定されていない、固定ブロックである第1FBG上流側取付台19と、を有している。上流側受圧板16が流水Fの流速に応じた力を受けると、それに対応して、上流側受圧板16に一方の端部が固定されたシャフト17が下流側に変位し、この変位量に応じて第1FBG下流側取付台18も下流側に変位する。このとき、シャフト17が下流側に変位しても、第1FBG上流側取付台19は第1ハウジング15に固定されているので変位しない。第1FBG下流側取付台18の変位によって、一方の端部近傍が第1FBG上流側取付台19に、他方の端部が第1FBG下流側取付台18に接着剤で取り付けられている第1FBG11が、伸び方向の応力を受け、結果、第1FBG11が変位する。
【0031】
また、必要に応じて、負荷伝達機構12に負荷伝達規制構造20を取り付けてもよい。図2、3の実施形態例に示すように、負荷伝達規制構造20は、第1FBG下流側取付台18の上流側に隣接した、第1ハウジング15に固定されているがシャフト17には固定されていない、固定ブロックである上流側負荷伝達規制台21と、第1FBG下流側取付台18の下流側に隣接した、第1ハウジング15に固定されているがシャフト17には固定されていない、固定ブロックである下流側負荷伝達規制台22とを備えている。すなわち、上流側負荷伝達規制台21と下流側負荷伝達規制台22は、流水Fの流れ方向に沿って直線上に配置され、第1FBG下流側取付台18は、上流側負荷伝達規制台21と下流側負荷伝達規制台22との間に配置されている。従って、上流側負荷伝達規制台21の下流側表面23と第1FBG下流側取付台18の上流側表面24は所定量の間隔にて対向し、下流側負荷伝達規制台22の上流側表面25と第1FBG下流側取付台18の下流側表面26は所定量の間隔にて対向している。
【0032】
上流側受圧板16が流水Fの速さに応じた力を受け、その応力に応じて、第1FBG下流側取付台18が下流側に変位するにあたり、上流側受圧板16が第1FBG11の伸びによる破損に至る過大な力を受けても、第1FBG下流側取付台18が負荷伝達規制構造20の下流側負荷伝達規制台22に上流側から当接することで、第1FBG下流側取付台18が所定の変位量を超えて下流側に変位するのを規制する。このように、第1FBG下流側取付台18の変位量が規制されることで、第1FBG11の伸びによる破損を防止する。FBGを形成する光ファイバの種類によっては、FBGの伸び率が数%程度に達するまで破断しない場合もあるが、通常、FBGは、伸び率が2%程度に達すると破断する。また、伸びがFBGに繰り返しかかると、2%程度の伸び率以下であっても破断が起こる場合がある。このため、FBGに繰り返し伸びがかかっても破断の起こらない程度の伸び率、すなわち、許容伸び率の範囲内に、FBGの伸びを規制するのが望ましい。そこで、図3の実施形態例では、上記許容伸び率を0.2%に設定している。従って、第1FBG11の最大伸び率が0.2%(図3の実施形態例では、第1FBG下流側取付台18と第1FBG上流側取付台19の間の第1FBG11の長さは25mmとしているので、伸び率0.2%相当の伸び量は50μmである。)となる位置、すなわち、第1FBG11の変位量が零点にある第1FBG下流側取付台18について、下流側負荷伝達規制台22の上流側表面25と第1FBG下流側取付台18の下流側表面26との間隔が50μmとなる位置に、下流側負荷伝達規制台22が取り付けられている。
【0033】
上記負荷伝達規制構造20は、第1ダイヤフラム13の変形を直接規制する構造と比較して、精度の高い規制が可能なので、確実に第1FBG11の破損を防止できる。
【0034】
上流側負荷伝達規制台21は、上流側が下流側に対して下方に傾いている傾斜地点に、光式流速水圧測定装置1を設置する必要がある場合に、第1FBG下流側取付台18が所定の変位量を超えて上流側に変位するのを規制して、第1FBG11のたわみによる破損を防止するためのものである。通常、FBGは、たわみによって曲げ半径の小さい曲線形状が形成されると破断する。よって、上流側負荷伝達規制台21の下流側表面23と第1FBG下流側取付台18の上流側表面24との間隔は、光ファイバの曲げによって破断が起こらない程度、例えば、100μm未満(図3では50μm)となるように、上流側負荷伝達規制台21が取り付けられている。
【0035】
上記の通り、第1FBG11は、一方の端部近傍が第1FBG上流側取付台19に、他方の端部近傍が第1FBG下流側取付台18に取り付けられているが、必要に応じて、図3に示すように、さらに、第1FBG11の長手方向に対して並列、すなわち平行方向に、一方の端部近傍が第1FBG上流側取付台19に、他方の端部近傍が第1FBG下流側取付台18に取り付けられているダミー用光ファイバ27またはダミー用光ファイバテープ心線27´を接着剤で取り付けてもよい。なお、この実施形態例ではダミー用光ファイバテープ心線27´が使用されている。
【0036】
ダミー用光ファイバ27またはダミー用光ファイバテープ心線27´の本数は、後述する流速測定部2に要する感度に応じて適宜選択可能である。図3では、第1FBG11を中心に左右それぞれ1本ずつのダミー用光ファイバテープ心線27´が取り付けられている。ダミー用光ファイバ27またはダミー用光ファイバテープ心線27´を上記のように取り付けることで、その取り付け本数に応じて第1FBG11に与えられる応力が低減される。第1FBG11に与えられる応力が低減されることで、第1FBG11の変位量が低減され、結果、流速測定部2の感度を調整できる。また、ダミー用に光ファイバまたは光ファイバテープ心線を用いることにより、金属箔等、他の部材を使用する場合と比較して、容易に第1FBG11の張力バランスをとることができる。
【0037】
シャフト17の上流側には金属製の第1ダイヤフラム13が設けられ、シャフト17の変位に応じて第1ダイヤフラム13が撓むように構成されている。また、シャフト17の下流側には金属製の下流側ダイヤフラム28が設けられている。第1ダイヤフラム13と下流側ダイヤフラム28を備えた第1ハウジング15により、高い気密性の保たれた第1気密室14が形成されている。
【0038】
また、図2に示すように、下流側ダイヤフラム28は、光流速水圧測定装置1の外に対して、光流速水圧測定装置1の側面部にある板状の連結部補強部材43に形成された孔部44により、開放状態とされている。下流側ダイヤフラム28は、孔部44により流路内の流水Fと円滑に接触できるので、流水Fの水圧(静圧)を受けることができる構成となっている。従って、この下流側ダイヤフラム28により、上流側受圧板16に作用する水圧(静圧)を相殺することができる。流水Fの流速に応じて力を受ける上流側受圧板16に作用する静圧が、下流側ダイヤフラム28により相殺されることで、流水Fの流速が零のとき、第1FBG11の変位量が零に維持できるようになっている。
【0039】
水圧測定部3は、水の静圧を測定する部位であり、従来のファイバブラッグレーティングを用いた光式水圧測定装置と同様の構造を有したものでよい。よって、従来と同様のメカニズムにて水圧を測定することができる。
【0040】
実施形態例に係る水圧測定部3は、図1、2に示すように、水圧を検知する第2ファイバブラッグレーティング(第2FBG)31と、前記水圧を受け、該水圧を前記第2FBG31に伝達する金属製の第2ダイヤフラム33と、前記第2ダイヤフラム33を備え、前記第2FBG31を収容する第2気密室34を形成する第2ハウジング35と、を備えている。
【0041】
図2に示すように、第2ダイヤフラム33は、第2ハウジング35の底部よりも高い位置に配置されている。また、第2ダイヤフラム33は、光式流速水圧測定装置1の外に対して、後述する板状体の流水規制部材5に形成された貫通孔60により、開放状態とされている。よって、第2ダイヤフラム33は流路内の流水Fと円滑に接触できるので、水圧を正確に測定できる構成となっている。第2ダイヤフラム33の第2気密室側34には、2つの第2FBG取付台38、39が対向配置され、第2FBG31の一方の端部近傍が、一方の第2FBG取付台38に取り付けられ、第2FBG31の他方の端部近傍が、他方の第2FBG取付台39に取り付けられている。
【0042】
第2ダイヤフラム33を備えた第2ハウジング35により、高い気密性の保たれた第2気密室34が形成されている。第2ダイヤフラム33に水圧がかかると、第2ダイヤフラム33が撓み、この撓みに対応して、2つの第2FBG取付台38、39がそれぞれ変位し、第2FBG31に歪みが発生する。
【0043】
水圧測定部3の第2気密室34内には、別途、温度を検出して温度を補償するための温度補償用ファイバブラッグレーティング(温度補償用FBG)36が設けられている。さらに、水圧を正確に測定するためには、水圧測定部3の第2気密室34内部は大気圧に調整されるのが好ましいので、光式流速水圧測定装置1外に、別途、圧力測定装置(図示せず)が設置されている。この圧力測定装置の大気圧導入パイプと第2気密室34内部とが接続されているので、第2気密室34内部が大気圧に補正されている。
【0044】
図4に示すように、光式流速水圧測定装置1の外には、別途、さらに、光源51、波長計52、データ処理装置53及び光サーキュレータ54が設置されている。光サーキュレータ54と第2FBG31は光ファイバ55で接続され、第2FBG31と第1FBG11は光ファイバ56で接続されている。第1FBG11と一方の端部で接続されている光ファイバ57の他方の端部は、無反射端58となっている。光サーキュレータ54と第2FBG31を接続している光ファイバ55には、別途、第2気密室34に対応する位置に温度補償用FBG36が設けられている。光サーキュレータ54と光源51との間、光サーキュレータ54と波長計52との間は、それぞれ、光ファイバ59、59´で接続されている。
【0045】
光源51からの光は、光サーキュレータ54を介して、温度補償用FBG36が設けられた光ファイバ55、第2FBG31、光ファイバ56、第1FBG11、光ファイバ57の順で通光する。上流側受圧板16が流水Fの速さに応じた力を受けると、その応力に応じて第1FBG11が変位して伸び歪みが生じる。これにより、第1FBG11の回折格子の周期が変化してブラッグ波長(FBGが反射する特定の波長領域)がシフトし、シャフト17の変位量、すなわち、第1FBG11の伸び歪み量に応じた波長の光が、第1FBG11から反射光として出射される。この出射光が光ファイバ56、光ファイバ55の順で通光し、光サーキュレータ54を介して波長計52へ送られる。さらに、この波長計52で観測される波長データがデータ処理装置53へ送られる。データ処理装置53は、波長計52から送られるデータに基づき流速を求める。
【0046】
第2ダイヤフラム33が水圧に応じて撓むと、この撓み量に応じて、第2ダイヤフラム33の第2気密室34側に取り付けられた2つの第2FBG取付台38、39がそれぞれ変位し、この第2FBG取付台38、39の変位量に応じて第2FBG31に所定量の歪みが生じる。これにより、第2FBG31の回折格子の周期が変化してブラッグ波長がシフトし、第2FBG31の歪み量に応じた波長の光が第2FBG31から反射光として出射される。この出射光が光ファイバ55および光サーキュレータ54を介して波長計52へ送られる。さらに、この波長計52で観測される波長データがデータ処理装置53へ送られる。データ処理装置53は、波長計52から送られるデータに基づき水圧を求める。
【0047】
なお、第1FBG11、第2FBG31、温度補償用FBG36のブラッ波長を、それぞれ異なる波長に設定することで、いずれのFBGからの反射光であるかを波長計52にて識別することができる。
【0048】
図1、2の実施形態例に係る光式流速水圧測定装置1では、連結部4は管状体であり、連結部4の上流側端部41は第1ハウジング15の下流側表面に固定され、連結部4の下流側端部42は第2ハウジング35の上流側表面に固定されている。このように、管状の連結部4が、流速測定部2と水圧測定部3とを一体化させている。また、連結部4の内部には、第2FBG31と第1FBG11とを接続する光ファイバ56と、第1FBG11と一方の端部で接続されている光ファイバ57が挿通されている。
【0049】
従って、第1ハウジング15の下流側表面のうち連結部4の上流側端部41が固定されている箇所には、光ファイバ56と光ファイバ57を第1気密室14内から連結部4内へ挿通しつつ第1気密室14内部が気密性を保持できるよう、光ファイバ56と光ファイバ57の径に対応した孔部が形成されている。同様に、第2ハウジング34の上流側表面のうち連結部4の下流側端部42が固定されている箇所には、光ファイバ56と光ファイバ57を第2気密室34内から連結部4内へ挿通しつつ第2気密室34内部が気密性を保持できるよう、光ファイバ56と光ファイバ57の径に対応した孔部が形成されている。
【0050】
なお、上記実施形態例に代えて、第1ハウジング15の下流側表面のうち連結部4の上流側端部41が固定されている箇所と、第2ハウジング35の上流側表面のうち連結部4の下流側端部42が固定されている箇所に、それぞれ、光ファイバ56と光ファイバ57の径よりも大きい径を有する孔部を設け、第1気密室14内部と第2気密室34内部が連結部4を介して連通した構成としてもよい。
【0051】
また、実施形態例に係る光式流速水圧測定装置1に流水規制部材を設けてもよい。流水規制部材を設けることで、流水Fが第2ダイヤフラム33の撓みに影響するのを抑制して、より正確な水圧を測定できる。流水規制部材は、上流からの流水Fの勢いが第2ダイヤフラム33の撓みに影響を与えるのを抑制できるものであれば特に限定されず、例えば、所定の厚さを有する板状体が挙げられる。この板状体の一方の表面を、第1気密室14とは反対側の第1ハウジング15の底部30表面に取り付けることによって、上流側受圧板16の動作を阻害することなく、上流からの流水Fが板状体の上流側の側面により規制され、結果、上流からの流水Fが第2ダイヤフラム33の撓みに影響するのを抑制できる。
【0052】
その他、流水規制部材の例には、図2、5に示すように、光式流速水圧測定装置1の長さ・幅と略同等の寸法を有する矩形の板状体に、厚さ方向の貫通孔60と該貫通孔60と連通した切り欠き61が設けられた流水規制部材5がある。貫通孔60は第2ダイヤフラム33の位置に対応する箇所に設けられ、切り欠き61の開口部62は下流側に設けられている。この流水規制部材5を光式流速水圧測定装置1の底部に取り付けると、切り欠き61の開口部62が下流側に設けられているので、上流からの流水Fを規制できるだけでなく、光式流速水圧測定装置1の側面方向からの流水Fや光式流速水圧測定装置1により発生する流水Fの渦も規制できる。
【0053】
また、貫通孔60は第2ダイヤフラム33の位置に対応する箇所に設けられているので、第2ダイヤフラム33は、流水規制部材5に邪魔されることなく光式流速水圧測定装置1外の水の圧力を正確に受けることができる。流水規制部材5は、上流からの流水Fだけでなく、側面からの流水Fや流水Fの渦も規制できるので、流水Fが第2ダイヤフラム33の撓みに影響するのをより確実に抑制でき、さらに精度良く水圧を測定できる。なお、流水規制部材5には、光式流速水圧測定装置1の底部に取り付けるためのねじ孔63が設けられている。
【0054】
また、図6に示すように、第2の実施形態例として、上記した貫通孔60と切り欠き61を備えた板状体の表面に、さらに、流水Fの流れ方向に対して略平行方向に直線状の溝である縦溝64が複数本設けられている流水規制部材5´としてもよい。図6では、この縦溝64は、流水Fの流れ方向に対して平行方向となるように、矩形である流水規制部材5´の長手方向に対して平行に設けられている。また、この縦溝64は、流水規制部材5´の長手方向に対して直交する一方の側面から他方の側面まで形成されている。
【0055】
従って、縦溝64の開口が流路の底面側に対向するように、流水規制部材5´を光式流速水圧測定装置1の底部に取り付けると、流水Fによって運ばれてくる流路内の砂、泥、ゴミ等の異物が、上流側から縦溝64に入って縦溝64内を下流方向へ流れ、流水規制部材5´の下流側へ排出されるので、異物は光式流速水圧測定装置1の下流側へ円滑に流される。このように、縦溝64を形成した流水規制部材5´は、異物を光式流速水圧測定装置1の下流へ流して、光式流速水圧測定装置1の周囲に異物が堆積するのを防止する自己洗浄機能を有するので、異物が、上流側受圧板16の動作と第2ダイヤフラム33の撓みに影響を与えるのを防止して、精度良く流速と水圧を測定できる。
【0056】
一方、流水F中に本実施形態例の光式流速水圧測定装置1を設置すると、該光式流速水圧測定装置1により流水Fが乱れて、該装置1の下流側にカルマン渦が発生する場合がある。特に、光式流速水圧測定装置1の水面側部位と流路底部側部位との間で流速差が大きい場合には、上記カルマン渦が発生しやすい傾向がある。しかし、上記のように、光式流速水圧測定装置1の底部に、縦溝64を形成した流水規制部材5´を取り付けると、流水Fが縦溝64を通過するので、カルマン渦の発生を抑制でき、光式流速水圧測定装置1周辺の流れに整流作用を与えることができる。
【0057】
なお、縦溝64の本数は1本でも複数本でもよいが、流水規制部材5´の自己洗浄作用と整流作用を高める点で複数本が好ましい。
【0058】
また、図7に示すように、第3の実施形態例として、上記した貫通孔60と切り欠き61と縦溝64とを備えた矩形の板状体の表面に、さらに、流水Fの流れ方向に対して0°超90°未満の方向、すなわち、縦溝64に対して0°超90°未満の方向に直線状に形成された溝である斜め溝65を複数本設けた流水規制部材5″としてもよい。この斜め溝65は、縦溝64と連通しており、縦溝64との接続部から流水規制部材5″の長手方向に対して平行方向の側面まで形成されている。また、斜め溝65は貫通孔60の上流側に設けられている。従って、流水Fによって運ばれてくる流路内の砂、泥、ゴミ等の異物が、上流側から縦溝64に入って縦溝64内を下流方向へ流れ、縦溝64と斜め溝65との接続部から斜め溝65内に入って流水規制部材5″の斜め下流方向へ排出される。よって、異物が光式流速水圧測定装置1とその周辺部に堆積するのをより確実に防止できる。また、斜め溝65は貫通孔60の上流側に設けられているので、異物が貫通孔60内に流入するのを防止して、第2ダイヤフラム33の撓みに流水F中の異物が影響するのを確実に抑制できる。これにより、水圧測定の精度がさらに向上する。
【0059】
図7では、貫通孔60の下流側に流水Fの流れ方向に対して90°超180°未満の方向に、すなわち、上記貫通孔60の上流側の斜め溝65に対して貫通孔60を介して対向するように、別の斜め溝66が複数本形成されている。この別の斜め溝66は、貫通孔60の下流側に別途形成された別の縦溝67と連通している。この貫通孔60の下流側に設けられた斜め溝66と縦溝67によって、上流側の斜め溝64から斜め下流方向へ排出された異物や光式流速水圧測定装置1の下流に堆積した異物を、より下流側へ円滑に流すことができる。
【0060】
なお、斜め溝64の本数は1本でも複数本でもよいが、流水規制部材の自己洗浄作用を高める点で複数本が好ましい。
【0061】
上記、流水規制部材5、5´、5″の光式流速水圧測定装置1への取り付け方法は、特に限定されず、例えば、ねじ孔63を用いたねじ止めが挙げられる。また、流水規制部材5、5´、5″の材質は特に限定されないが、防錆性、耐腐食性の点からSUS製が好ましい。
【0062】
次に、本発明の実施形態例に係る光式流速水圧測定装置1の使用方法例について説明する。本発明の光式流速水圧測定装置1を設置する流路は特に限定されないが、ここでは、下水道内に設置する場合を例にとって説明する。下水道の底面部の所定の測定地点に、流速測定部2の上流側受圧板16が上流側を向くように、すなわち、水圧測定部3が下流側となるように、本発明の光式流速水圧測定装置1を配置する。光式流速水圧測定装置をねじ止め等で測定地点の底面部に固定し、光源、波長計、データ処理装置は、地上の観測室に設置する。これにより、作業員は観測室にて、該測定地点の流速と、水圧、すなわち水位とを観測できる。
【0063】
次に、他の実施形態例について説明する。上記実施形態例では、流水規制部材5、5´、5″の切り欠き61の開口部62は下流側、すなわち、上記流水規制部材5、5´、5″の長手方向に対して直交する側面の一方に設けられていたが、この開口部62の位置は、上流側以外であれば特に限定されず、例えば、流水Fの流れ方向に対して直交する方向、すなわち、流水規制部材5、5´、5″の長手方向に対して平行方向の側面の一方に設けてもよい。また、上記実施形態例では、第2気密室34に温度補償用ファイバブラッグレーティング36が収容されていたが、これに代えて、第1気密室14に収容されてもよい。
【0064】
上記実施形態例では、より円滑に異物を下流側に流すために、貫通孔60の下流側に、別途、別の斜め溝66と縦溝67が設けられていたが、この別の斜め溝66と縦溝67は、設けなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の光式流速水圧測定装置は、流速の測定地点と水圧の測定地点とをほぼ一致させることができ、さらに、溝を設けた流水規制部材を取り付けることで異物による測定誤差の発生を防止できるので、流水中に異物が多く存在しつつ、流速と流量の正確なデータが必要とされる分野、例えば、下水道の分野で、特に利用価値が高い。
【符号の説明】
【0066】
1 光式流水測定装置
2 流速測定部
3 水圧測定部
5、5´、5″ 流水規制部材
11 第1ファイバブラッグレーティング
12 負荷伝達機構
14 第1気密室
20 負荷伝達規制構造
27 ダミー用光ファイバ
27´ ダミー用光ファイバテープ心線
31 第2ファイバブラッグレーティング
34 第2気密室
36 温度補償用ファイバブラッグレーティング
64 縦溝
65 斜め溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7