(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板構成の反対側にある前記膜材料層の主面上に電極支持部および電極を形成するステップを更に含み、犠牲材料を用いて前記膜材料と前記第1の領域内の電極との間に将来の間隙を画定し、前記犠牲材料が、キャビティの反対側から前記電極内またはこれに隣接するアクセス孔を通してエッチングされる、請求項1に記載の方法。
前記第2の膜支持材料層の主面上に第5の膜支持材料層を堆積させるステップであって、第5の膜支持材料が、前記特定のエッチング剤に関して前記第2のエッチング速度より遅い第5のエッチング速度を有するステップを更に含み、
第5の膜支持材料層は、前記第1の膜支持材料層および前記第2の膜支持材料層をエッチングする間にエッチングされ、前記エッチングにより、前記第2の膜支持材料層のテーパー面とは異なる角度を有する、前記第2の領域内で前記第5の膜支持材料層に第2のテーパー面が形成される、請求項1に記載の方法。
前記基板構成の反対側にある前記膜材料層の主面上に電極支持部および電極を形成するステップを更に含み、犠牲材料を用いて前記膜材料と前記少なくとも1個の第1の領域内の電極との間に将来の間隙を画定し、前記犠牲材料が、キャビティの反対側から前記電極内またはこれに隣接するアクセス孔を通してエッチングされる、請求項9に記載の方法。
前記テーパー面が前記膜支持材料と前記膜材料との間を機械的に接続すべく補強リングの境界を画定し、前記補強リングが前記機械的接続の近傍に機械的応力の幅広い空間分布を生じさせる、請求項9に記載の方法。
少なくとも前記基板構成、前記膜支持構造、および膜により境界が画定された開口部を更に含んでいて、前記開口部が前記テーパー面の反対側にある前記膜支持構造の側に位置している、請求項19に記載の微小機械音響トランスデューサ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に、本明細書の開示内容のいくつかの中核的特徴が実装されていない微小機械音響トランスデューサを通る模式的断面図を示す。微小機械音響トランスデューサは、マイクロホン、スピーカー、またはマイクロホンとスピーカーの組み合わせであってもよい。微小機械音響トランスデューサは、基板10、固定子または対電極16、および膜14を含んでいる。膜14および対電極16は支持構造32に固定されていて、支持構造32は次いで基板10に固定されている。ほぼ同質な基板(例:シリコン)の代わりに、1つの構成および他の構成、例えばシリコンバルクの主面に酸化シリコンSiO
2の層を有するシリコンバルクにおいて基板構成が存在してもよい。「固定されている」という表現は、「搭載されている」、「取付けられている」等を意味していてよい。通常、対電極16はほぼ剛性であり、これは対電極16の厚さおよび/または材料を適切に選択することにより実現できる。膜14は変形可能であるため、膜14の特に中央部が静止位置から、膜14が対電極16の方へ曲げられるかまたは対電極16に接触も可能な励起位置まで変位できる。膜14は、膜14の外周部で支持構造32に機械的に接続されている。膜14またはその中央部の対電極16方向への変位は、膜14に対し静電気力を作用させることにより実現できる。特に、対電極16は、静電気的に膜14を引き付けることができる。対電極16と膜14の間の静電効果は、対電極16および膜14に異なる電位を印加することにより実現される。支持構造32は通常、対電極16と膜14の間の電気絶縁体として機能する。膜14および対電極16がアンプ(図示せず)等の他の構成要素に電気的に接続できる電気接続および接続パッドは
図1に示していない。
【0010】
基板10は、膜14の第1の領域の下方にキャビティ22を有している。キャビティ22は、微小機械音響トランスデューサの後方体積空間として機能し、膜14が対電極16へ近づくかまたは遠ざかるように比較的自由に移動できるようにする。複数の気孔1が対電極16に形成されている。従って、膜14は、対電極16に向かって移動するときは強い逆圧に、また対電極16から遠ざかる方向に移動するときは副圧(真空)に打ち勝つ必要がない。
図1に示す構成において、キャビティ22は、膜−固定子の構成に関して反対側、例えば
図1の表現に関してキャビティ22の下端で開いている。しかしキャビティ22は、より大きい断面で支持構造32内へ続いている。第1の自由体積空間が膜14の上方に、第2の自由な体積空間が膜14の下方に、より正確には膜14の中央部の上方/下方に存在する。これらの自由な体積空間により、膜14の中央部は上下に移動可能である。キャビティ22の支持構造32までの延長部分は、微小機械音響トランスデューサの音響変換領域と見なすことができ、本開示の他の箇所で「第1の領域」と呼ばれる。
【0011】
一般に、静電音響トランスデューサは、プレート(すなわち膜)の1枚が内部で移動可能である少なくとも1個のコンデンサを含んでいる。上記構造をスピーカーとして動作させる場合、当該コンデンサは通常、電気的にバイアスが掛けられ、変換される音声データを表す電気入力信号が電場を変調する。コンデンサ内の電場のこの変調により膜が振動する。通常、この構造は二乗検波の力/電圧特徴(square-law force/voltage characteristic)を有し、二乗検波の力/電圧特徴のため、特に音声入力信号の高入力電圧において顕著な歪みが生じる恐れがある。一方、上記構造をマイクロホンとして動作させる場合、同様にコンデンサは通常、電気的にバイアスが掛けられる。膜14に衝突する音響信号が膜14を振動させる。この振動によりコンデンサで電場の変調が生じ、これは微小機械音響トランスデューサの電気接続パッドで検出できる。
【0012】
図1の下部の吹き出しに、微小機械音響トランスデューサの詳細を模式的断面図で示す。膜14の周辺領域と基板10との間において、膜支持材料層502が膜14を支持する役割を果たす。膜支持材料層502は膜支持構造32に属している。膜支持材料502は通常、二酸化シリコンSiO
2等の酸化物である。膜14は、ほぼ垂直な縁を示す酸化物の層502により底面に保持される。キャビティ22は、基板10内でほぼ均一な断面を有しており、その断面は、膜支持材料層502の位置では、開口部503まで広がっている。開口部503は、膜支持材料のほぼ垂直な縁に外周が囲まれていて、ほぼ膜支持材料層502の酸化物材料のみに影響を及ぼし、膜14および基板10には影響を及ばさない等方性エッチングにより通常は形成される。等方性エッチング処理を計時し、温度およびエッチング剤の濃度などの等方性エッチング処理の他のパラメータを制御することにより、開口部503の寸法を比較的正確に制御することができる。開口部503の寸法は、共鳴周波数および剛性等、膜のいくつかの物理的特性に影響を及ぼす。
図1で示すように膜支持構造または「保持装置」32は、圧縮荷重は前面から(上方から)作用する場合は所与のトランスデューサ構成に対して5barという高い圧縮強度を生じるが、圧縮荷重が背面(下方から)から作用する場合は1.5barという僅かな圧縮強度しか生じない。
【0013】
実際に、圧縮荷重が背面から作用する場合、現行の微小機械音響トランスデューサの製造方法は圧縮強度に関して膜保持装置の脆弱性を示す。
【0014】
従って、
図1で示すような構成を有する微小機械音響トランスデューサは、圧縮荷重が背面から作用する場合の圧縮強度に関して、膜支持構造の脆弱性を示す。
【0015】
図2に、
図1に示す微小機械音響トランスデューサの横断の透視図を示す。膜14は、キャビティ22と膜14上方の体積空間との静的な圧力差を等しくすることに主に用いられる換気孔4を含んでいる。
【0016】
図3の下部に、膜支持材料層502および膜14を通る部分的な模式的断面図を示す。
図3に、膜支持材料層502と膜14との間の遷移に対する3個の異なる構成を示す。膜14には下側から圧力Pが掛けられていて、従って膜14に対して圧縮負荷が掛かっていると仮定する。対応する3本の応力曲線が
図3の上部において比較されている。第1の構成において、膜支持材料層502および膜14はほぼ矩形の角を形成し、すなわち、膜支持材料層502の縁はほぼ垂直(連続線)である。
図3の上部において、接線応力σ
tを表す応力曲線321は、膜支持材料層502と膜14の間にほぼ矩形の角を有する構成に対応している。第1の応力曲線321は、ほぼ矩形の角の位置に高くて鋭いピークを有する。第1の応力曲線321の鋭いピークにより、膜14を膜支持材料層502に固定する圧縮強度が減少する。膜14に過剰な圧縮負荷が掛かっている場合、特に応力が高い箇所でひびが生じる恐れがある。この効果は、「応力集中」または「ノッチ効果」と呼ばれる。
【0017】
第2の構成を
図3の下部の破線302で示す。当該第2の構成によれば、膜支持材料層502と膜14との間の遷移は適度に湾曲している。
図3の上部において、応力線322は、当該第2の構成における接線応力σ
tを示す。矢印331で示すように、第1の構成よりも第2の構成を選択することにより応力の最大値を大幅に減少することができる。応力曲線322はまた、応力曲線321に比べてより大きな領域にわたり応力が分散していることを示し、第2の構成の領域は丸い角302が延びている部分に概ね対応している。
【0018】
接線応力σ
tの最大値の更なる減少は、
図3下部の破線303で示す第3の構成を選択することにより実現できる。
図3の上部において、応力曲線323は対応する応力分布を示す。第2の構成と第3の構成との間の最大応力値の更なる減少を矢印332で示す。応力曲線323は比較的平坦であって、比較的大きい領域に応力が分布していることがわかる。
【0019】
本明細書の開示内容は、膜支持構造の縁形状を最適化し、その結果、膜支持構造内でより均一な圧力分布を実現することにより、ノッチ効果または応力集中を減少させる。更に、材料および異なるエッチング剤製造に対するそれらの異なる反応の特定の順序またはシーケンスにより、音響トランスデューサの選択された下部構造を互いに独立にエッチングすることが可能になる。このように、いくつかのエッチング処理を制御して、他のエッチング処理がより高速な状態で、相対的に高精度を実現することができる。相対的に高精度のエッチング処理を用いて、膜のリリースエッチングのように膜の近くにある構造をエッチングすることができる。
【0020】
これらの開示内容によれば、圧縮負荷が背面から作用した場合に圧縮強度が弱いという問題は、ノッチ効果を減らすべく膜支持構造の縁の構造を決定することにより解決できる。第1の構成において、膜14が圧縮負荷により下側から曲げられた場合、ノッチ効果の結果、極めて強い機械的張力が膜支持構造32に直接作用する。張力の最大値は、
図3の第2および第3の構成の各々において曲線302、303で示すように、膜支持構造に薄いカラーを設けることにより減少させることができる。当該カラーにより、機械的張力の分布が概ねカラー構造の領域まで広がり、その結果張力の最大値が減少し、更に圧縮強度の増加につながる。
【0021】
図4に、本明細書の開示内容に基づく第1の可能な構成による微小機械音響トランスデューサの部分的な模式的断面図を示す。第1の可能な構成によれば、膜支持構造はカラーを含んで製造されている。基板10の上部の第1主面に、第1の膜支持材料層402が設けられている。第1の膜支持材料層402は微小機械音響トランスデューサの製造工程中に構造が決定されているため、図示する仕上がった音響トランスデューサ内に第1の膜材料層の残留パッチが存在する。第1の膜材料層402の上方に、すなわち基板10の反対側にある第1の膜支持材料層の主面に、第2の膜支持材料層404が位置している。第2の膜材料層404は、カラーまたはカラー状構造を形成することができる。
図4において第1の膜支持材料層402および第2の膜材料層404の左側に示す開口部403が形成されている。第2の膜支持材料層404は、開口部403の境界を画定するテーパー面を有している。膜14は、第2の膜材料層404の上部主面、すなわち第1の膜支持材料層402の反対側に位置している。第2の膜支持材料層404のテーパー面のため、第2の膜支持材料層404の幅が、第2の膜支持材料層404の下部主面と上部主面の間で値Lだけ増大する。「テーパー」または「先細」という表現は、階段状の表面または縁だけでなく、連続的な面または縁、湾曲した面または縁を含んでいてよい。テーパー面/縁の他の実装例もまた「テーパー」および「先細」という表現に含まれる。
【0022】
開口部403は、等方性エッチング処理により微小機械音響トランスデューサの製造工程中に形成されている。第1の膜支持材料層は、等方性エッチング処理中に使用されたエッチング剤に関する第1のエッチング速度を有する。この第1のエッチング速度は通常、相対的に高い。第2の膜支持材料層404は、使用されたエッチング剤に関して相対的に低い第2のエッチング速度を有する。いずれの場合も、第2のエッチング速度は通常、第1のエッチング速度よりも低い。エッチング剤は通常、膜14および基板10を大幅にはエッチングしない。
【0023】
第2の膜材料層404のテーパー面の上述の幅Lは、第2の膜材料層404の厚さおよび第1のエッチング速度と第2のエッチング速度の比率に依存し、すなわち次式で与えられる。
L=厚さ
second membrane support material*エッチング速度
1/エッチング速度
2
【0024】
第1の膜材料は、例えば酸化シリコンSiO
2であってよい。第2の膜材料は、例えば酸窒化シリコンSiONであってもよい。従って、酸化物(SiO
2)および酸窒化物(SiON)を含む2層構造が形成される。SiO
2のエッチング速度は、ある種のエッチング剤については明らかにSiONよりも高い。マスクを用いて等方性湿式化学エッチングが実行された場合、SiONの三角形の突出部が生じ、上述のようにその幅が層厚およびエッチング速度の比率に対応している。カラーの幅が3μm、カラーの厚さが190nmである可能な実現例を示す。カラーもまた、層厚およびエッチング速度/材料を選択することにより調整できる。
【0025】
膜支持構造はまた、支持リングにより最適化しても良く、従って、膜層内に入れることにしても良い。
図5に、カラーの代わりに補強リングを特徴とする、本明細書の開示内容に基づく第2の可能な構成による微小機械音響トランスデューサの部分的な模式的断面図を示す。この場合も、第1の膜支持材料層512が基板10の上部第1主面に設けられている。基板10の反対側にある第1の膜材料層512の主面に、第3の膜支持材料層514が設けられている。第3の膜支持材料層514は、補強リングまたは支持リングを形成していてよい。一般に、第3の膜支持材料層514は、少なくとも1個のテーパー面を含んでいる。
図5において、第3の膜支持材料層514は、2個のテーパー面を含んでいる。第1のテーパー面は、第3の膜支持材料層514により形成される補強リングの半径方向内側に設けられている。第1のテーパー面は幅Lを有している。第2のテーパー面は、補強リングの半径方向外側に設けられている。膜材料層14は第3の膜材料層514を覆い、また局所的には第1の膜材料層512をも覆う。このように、膜材料層14は、いくつかの領域において第3の膜支持材料層514のテーパー面に追随するかまたは再現する。開口部513は、下限において基板10の上部主面により、半径方向の外側限界において第1の膜材料層512により、および上限において第3の膜支持材料層514および膜14によって境界が画定されている。開口部513は等方性エッチングを用いて形成されている。
【0026】
第3の膜支持材料層514のテーパー面は、その上部主面で第3の膜支持材料に隣接する補助層を用いて形成されている。補助層は、特定のエッチング剤に関して第3の膜支持材料514のエッチング速度より速いエッチング速度を有している。補強リングの領域内に補助層のマスキングを用いてテーパー面が得られる。
【0027】
第3の膜支持材料層514の厚さは、100nm〜800nm、好適には300nm〜800nmの範囲にあってよい。補助膜支持材料層の厚さは、100nm〜1000nm、好適には100nm〜500nmの範囲にあってよい。
【0028】
図6に、本明細書の開示内容に基づく第3の可能な構成による微小機械音響トランスデューサの部分的な模式的断面図を示し、
図4、5に各々示す第1および第2の構成が組み合わされている。基板10の第1主面に、第1の膜支持材料402(例えばシリコーン酸化物SiO
2)の層が設けられている。基板10の反対側の面において、第2の膜支持材料層404が第1の膜支持材料層402に設けられている。上述のように、第2の膜支持材料層404はカラーまたはカラー状構造を形成する。第2の膜支持材料404は、例えば、酸窒化シリコンSiONであってよく、テーパー面を有している。既に
図5に示し、対応する記述で説明しており、例えば補強リングを形成できる第3の膜支持材料層514が第2の膜支持材料404の上面に設けられている。膜材料層14が第3の膜支持材料層514の上面に設けられている。
【0029】
第2の膜支持材料層404は、第2の膜支持材料404と基板10の間で開口部603を部分的に境界を画定するテーパー面を含んでいる。半径方向において、開口部603は第1の膜支持材料層402により境界が画定されている。第2の膜支持材料層404のテーパー面の幅はL
collarである。また、第3の膜支持材料層514は、とりわけ、膜材料層14が設けられているテーパー面を含んでいる。第3の膜材料514のテーパー面の幅はL
reinforement ringである。
【0030】
図6において示す構造は、以下の動作を含む方法により得ることができる。
−基板構成の第1主面上に第1の膜支持材料層を堆積させるステップであって、前記第1の膜支持材料が特定のエッチング剤に関して第1のエッチング速度を有するステップ、
−第1の膜支持材料層の主面上に第2の膜支持材料層を堆積させるステップであって、前記第2の膜支持材料が特定のエッチング剤に関して第1のエッチング速度より低い第2のエッチング速度を有するステップ、
−第2の膜支持材料層の主面上に第3の膜支持材料層を堆積させるステップ、
−第3の膜支持材料層の第1主面上に補助材料層を堆積させるステップであって、前記補助材料が特定のエッチング剤に関して第3のエッチング速度より速い第4のエッチング速度を有し、膜材料はまた、第3の膜支持材料層が第2の膜支持材料層を覆う第3の膜支持材料層に堆積されるステップ、
−補助材料層が少なくとも1個の第1の領域内で露出し、当該少なくとも1個の第1の領域外でマスクされるように、補助材料層の主面を部分的にマスキングするステップ、
−特定のエッチング剤を適用することにより、当該少なくとも1個の第1の領域内および第2の領域内で補助材料層および第3の膜支持材料層をエッチングするステップであって、当該エッチングにより第2の領域内に第3の膜支持材料層のテーパー面が形成されるステップ、
−少なくとも第3の膜支持材料層が当該少なくとも1個の第1の領域内で除去されて当該少なくとも1個の第1の領域で第2の膜支持材料層が露出するまでエッチングを続けるステップ、
−補助材料と、補助材料層の主面をマスキングする間に形成されたマスクとを除去するステップ、
−第2の膜支持材料層の主面上に膜材料層を堆積させるステップ、
−少なくともキャビティが第1の膜支持材料層へ延長するまで、第1の膜支持材料層、第2の膜支持材料層、および膜材料層の反対側にある基板構成の側から、基板構成内に当該キャビティを形成するステップ、
−キャビティを通して特定のエッチング剤を適用することにより第1の膜支持材料層および第2の膜支持材料層をエッチングするステップであって、当該エッチングは基板構成の第1の主面とほぼ直交する方向に沿ったキャビティの延長部分に位置する少なくとも1個の第1の領域内で生じ、且つ第1の領域を囲む第2の領域内で生じ、当該エッチングにより第1のエッチング速度と第2のエッチング速度の差異により生じる第2の領域の第2の膜支持材料層の上にテーパー面が形成されるステップ、および
−少なくとも第2の膜支持材料層が第1の領域内で除去されて膜材料層が露出するまでエッチングを続けるステップ。
【0031】
図4〜6に関して開示した内容は膜固定の圧縮強度を向上させることを意図しており、最新の実験により、ほぼ垂直な縁を有する膜支持部と比較して2〜3倍向上することが示されている。
【0032】
図7に、第1の可能な構成による微小機械音響トランスデューサの部分的な模式的断面図を示す。特に、
図7は膜14に負荷が掛かっていない状態にある場合の、第1の膜支持材料(SiO
2)の層402、および第2の膜支持材料(SiON)の層404における膜14内の応力分布を示す。外部的にもたらされた応力は存在せず、各種材料に固有の機械的張力は均一に分布している。
【0033】
図8A〜8Cに、圧力が膜14に影響を及ぼす場合のカラー構造の機械的シミュレーションの結果を示す。
図8Aにおいて、テーパー面または類似構造を有していない構成のシミュレーション結果を示す。膜支持材料502のほぼ垂直な縁および膜14のほぼ水平な面により形成される角で、膜14および膜支持材料502内の機械的応力が各々2.2GPaおよび3.9GPaの相対的に高い絶対値に到達することがわかる。「MX」および「MN」のマークは、最大応力および最小応力が各々生じる領域を示す。
【0034】
図8Bに、最上部から圧力が加えられた場合のテーパー面を備えたカラーを有する構成の機械的シミュレーションの結果を示す。応力の最大値は1.8GPaに達し、膜14の上面で計測できる。
図8Cに、下側から圧力が加えられた場合のカラーまたはカラー状構造を有する同一構成の機械的シミュレーションの結果を示す。最大圧力は、約2.6GPaに達し、第2の膜支持材料404のテーパー面の先端付近で計測できる。
【0035】
図9A、9Bに、補強リングが無い構成と、有る構成の機械的シミュレーション結果の比較を示す。
図9Aは、
図8A、すなわち先細補強リングが無い構成の膜に最上部から1barの圧力が掛けられた場合の機械的シミュレーションの結果に対応している。
図9Bは、同じ状況、すなわち上部からの1barの圧力が掛けられた先細補強リングを有する構成における機械的シミュレーションの結果を示す。補強リングが無い構成の場合、膜支持構造と膜14の間の角で、応力の最大絶対値が3.9GPaに達する。これは、先細補強リングを有する構成における最大絶対値2.8GPaと比較される。膜の上側で、補強リングが無い構成(
図9A)における最大絶対値は2.2GPaであり、補強リングを有する構成(
図9B)における最大絶対値は1.7GPaである。
【0036】
張力または応力の最大値は、とりわけ、テーパー面の角度に依存する。以下のテーブルにこの依存性を示す。
【0038】
比較の目的で、右側の列は補強リングが無い構成の場合の値を含んでいる。膜14と補強リングとの間の遷移における張力または応力分布は縁の角度に極めて依存している。角度が小さいほど最大の圧力が小さく且つ圧縮強度が高い。上方から圧力が掛けられた膜の場合は特に、90度の角度と10度の角度の間で最大応力の大幅な減少を計測できる。
【0039】
当該機械的シミュレーションは、有限要素(FEM)シミュレーションに基づいており、膜支持構造における最大張力が明らかに減少していることがわかる。この結果はまた、圧縮強度に関する最初の測定において2〜3倍向上したことにより確かめられている。
【0040】
図10に、第1の可能な構成、すなわちカラーまたはカラー状構造を有する、微小機械音響トランスデューサの製造過程において採用できる等方性エッチング処理の進行を示す。カラー構造は、例えば、1個の層が低エッチング速度を有し、他の層が高エッチング速度を有する2層構造に対する等方性エッチングにより製造することができる。カラーの寸法は、エッチング速度と低エッチング速度を有する層の層厚との比率により決定される。
【0041】
最初の構成を
図10の最下部に示す。基板10の主面上に、異なる材料の3個の層、すなわち第1の膜支持材料層402(高エッチング速度)、第2の膜支持材料層404(低エッチング速度)、および膜材料層14(エッチング処理にあまり影響を受けない)が形成されている。キャビティ22がエッチング処理の前に基板10に形成されているため、キャビティ22のため、第1の膜支持材料層402が少なくとも部分的に露出している。
【0042】
最下部から最上部まで
図10の更なる図に、第1の膜支持材料層402が第2の膜支持材料層404に比べて相対的に速くエッチングされる様子を示す。これは、第2の膜支持材料層のテーパー面の形成につながる。
【0043】
図11に、第2の可能な構成による微小機械音響トランスデューサの製造過程において採用できる等方性エッチング処理の進行を示す。第1のステップは、鋭く先細になっている、すなわち相対的に浅い傾斜を有している少なくとも1個の内側縁を有する支持リングまたは補強リングを製造するステップを含んでいる。縁の形状は、例えば、適切な層厚および適切なエッチング速度を有する補助層により形成することができる。補助層は通常、後で完全に除去される。
【0044】
図11に示す製造状態に続く第2のステップにおいて、実際の膜層が自身の支持リングの上に堆積される。補強リングが十分に厚い場合、補強リングは自身で膜支持構造を表す。これは、補強リングの実際の膜支持構造は、圧縮負荷が作用している場合に重要でないことを意味する。
【0045】
図12の上部に本明細書の開示内容による微小機械音響トランスデューサによる部分的な模式的断面図を再び示す。
図12の下部において、部分断面図の電子顕微鏡画像を示す。基板10の最上部に、第1の膜支持材料層(この場合TEOS)402が設けられていて、開口部403の境界を画定するテーパー面を有している。第1の膜支持材料層402の厚さは600nmである。第2の膜支持材料層404は、例えば、酸窒化シリコンを含んでいる。この構成において、第2の膜支持材料層404もまた、開口部403の境界を画定するテーパー面を有している。第2の膜支持材料層404の厚さは190nmであり、第2の膜支持材料層により形成されたカラーの長さは3μmである。第2の膜支持材料層404の上方に、厚さが330nmである膜材料層14が設けられている。膜材料14は、この例ではポリシリコンである。
【0046】
図13に、第1の可能な構成の更なる発展型を示す。追加的なカラーの代わりに、エッチング速度が遅くなった2層構造を用いることができる。その結果、各々のカラー角度が上述のようなエッチング速度により画定される2重カラーとなる。基板10から始めて、以下のように基板10の上部主面上に層が積層される。すなわち、高エッチング速度を有する第1の膜支持材料層402、中程度のエッチング速度を有する第2の膜支持材料層404、および低エッチング速度を有する第5の膜支持材料層405である。膜材料層14が第5の膜支持材料層405の上面に設けられている。エッチング速度が異なるため、結果的に生じるテーパー面は、異なる角度を有する2個の断面を含んでいる。第2の膜支持材料のテーパー面の幅はL
1である。第2の支持材料のテーパー面の幅はL
2である。
【0047】
図14に、微小機械音響トランスデューサの製造工程の一連の工程ブロックを示す。最初に、
図14の工程ブロック1402に示すように、エッチストップ酸化物が基板10に適用される。次いで、1404において、ポリシリコンを用いて膜が形成される。後続する動作1406において、付着防止バンプ用構造を有する犠牲酸化物が形成される。動作1408の間、対応する付着防止バンプを有する対電極が次いで形成される。動作1410で示すように、中間酸化物、コンタクトホール、および金属化部が次いで形成される。次いで動作1412の間、パッシベーションが施される。膜およびパッドを介した背面FT開口もまた動作1412の間に実行される。次いで1414において膜およびパッドの上方に開口が実行される。動作1416に示すように、次いでボッシュ処理により背面キャビティ22がエッチングされる。動作1418の間に犠牲酸化物がエッチングされて微小機械音響トランスデューサが乾燥される。
【0048】
図15A〜15Mに、基板10および異なる処理段階で基板10に設けられた層の模式的断面図を示す。本開示の説明および図面全体を通じていかなるサイズおよび厚さも例に過ぎないと理解すべきである点に注意されたい。
図15Aに、基板10および基板10の上部主面に堆積された2個の膜支持材料層402、404を示す。例えば、第1の膜支持材料402として600nmのTEOSが堆積し、第2の膜支持材料層404として140nmの酸窒化シリコンSiONの層が堆積されていてよい。
図15Bに示すように、将来の膜14のためにポリシリコンの層が第2の膜支持材料層404に堆積されている。当該ポリシリコンは埋め込まれ、次いで将来の膜14のポリシリコンの構造を決定すべくマスクシリコンエッチングが実行される。酸化物の層504およびシリコン層505が基板10の背面にも堆積される。
【0049】
図15Cに、将来の膜支持構造を形成すべく厚さが1600nmであるTEOS32の更なる層が膜層14の最上部に形成される様子を示す。TEOSのこの更なる層の一部が除去されて膜14と対電極16との間隙を画定する。従って、TEOSは一時的に将来の膜14を覆い、特に将来の気孔4を一時的に埋める。対電極付着防止バンプ2(
図15D参照)を形成するための構造72を与えるべく深さが450nmであるマスクTEOSエッチングもまた実行される。
図15Cと15Dの間において、厚さが140nmである窒化シリコンSiNの層162が、
図15Cに示す構成の上面に設けられる。窒化シリコンの層162は、TEOS層32内の構造72を埋めることにより得られた付着防止バンプ2を含んでいる。窒化シリコン層162の最上部に、厚さが750nmであるTEOSの別の層が形成される。
【0050】
次いで、
図15Eに示すように、アモルファスシリコン(a−Si)の層164が厚さ1400nmで形成される。アモルファスシリコン層164は次いで埋め込まれ(矢印により模式的に示す)て、結晶化が実行される。
図15Fに、窒化シリコン層162およびシリコン層164に対して実行された、マスクエッチングステップの結果を示す。将来の対電極16の外側輪郭以外に、マスクエッチングはまた2個の層に気孔1を生成する。
図15Fの上部に、処理の後段で膜層14と窒化シリコン層162との間の犠牲酸化物32が除去された状態で、窒化シリコン層162およびアモルファスシリコン層164を下側から見た透視図を示す。この図において付着防止バンプ2および気孔1が見られる。付着防止バンプ2は、過度の接力のために膜14が対電極16に接着するのを防止する。
【0051】
図15Gに、今回はTEOS層32に影響を及ぼす更なるエッチングステップの結果を示す。エッチングステップは、酸化物層504の輪郭構造を決定すべく酸化物層504の選択された領域だけが特に縁で除去されるようにマスクされている。
図15Hにおいて、酸化シリコンSiO
2の更なる層が厚さ150nmで形成されている。更に、硼燐珪酸ガラス(BPSG)の層563が厚さ800nmで形成されている。次いでマスク酸化物エッチングが実行されて膜層14、対電極層162、164、および基板10にコンタクトホール564を形成する。
図15Iに示すように、金属接触部565が設けるべくコンタクトホールは各々厚さが50nm、100nm、および600nmであるチタン、白金および/または金で埋められる。コンタクトホールの埋め込みはマスク金属化ステップにより実現される。
【0052】
図15Jにおいて、背面ハードマスクステップが実行された。最初に、先に設けられたシリコン層505を除去すべく背面からの非マスクシリコンエッチングが実行された。次いで、シリコン酸化層504内の背面キャビティ22の構造を画定すべく背面からのマスク酸化シリコンエッチングが実行された。これまでに形成された前面構造を保護すべくパッシベーション566(通常はSiN)も前面に適用される。
図15Kに、パッドおよび膜の開口が実行された後の微小機械音響トランスデューサを示す。この目的のために、コンタクトパッド565および硼燐珪酸ガラス層563の中央部が露出するようにマスク窒化シリコンエッチングが実行された。
【0053】
図15Lに、キャビティ22を形成すべく背面からボッシュ処理を実行した結果を示す。ボッシュ処理の一部であるエッチングはエッチストップ層として機能するTEOS層402、512で停止する。前面において、次の工程ステップの準備としてフォトレジスト567が適用され、その結果を
図15Mに示す。
【0054】
図15Mにおいて、リリースエッチングが背面だけでなく前面からも実行された。リリースエッチングは気孔1および換気孔4を介して膜14と対電極16との間隙から入る。リリースエッチングの完了後、フォトレジスト567が除去されて構造は洗浄される。キャビティ22を形成するボッシュ処理が高速且つ相対的に粗い方法であるが、リリースエッチングは通常、より正確であるため、膜14の開口部および膜と対電極と間隙は相対的に正確に形成することができる。開口部403、513、603の形状および寸法は、膜14の機械的特性、特に共鳴周波数および減衰に影響を及ぼす恐れがある。再現可能な結果を得るために、リリースエッチングが相対的に正確に制御可能であることが望ましい。リリースエッチングの結果は通常、良好な精度で予測可能であるため、所望のエッチング結果が得られるよう、例えばエッチング実行中にエッチング剤の濃度および/または温度を調整することができる。
【0055】
装置の関連でいくつかの態様について記述してきたが、これらの態様もまた対応する方法を記述することは明らかであり、1個のブロックまたは装置は方法ステップまたは方法ステップの特徴に対応している。同様に、方法ステップの関連で記述された態様はまた、対応するブロックまたは項目あるいは対応する装置の特徴を記述するものである。
【0056】
上述の実施形態は単に本発明の原理を例示するに過ぎない。本明細書に記述した構成および詳細事項の変更および変型は他の当業者には明らかであることを理解されたい。従って、添付の特許請求の範囲だけに限定され、本明細書における実施形態の記述および説明を介して示す具体的な詳細事項には限定されないものとする。