特許第5676563号(P5676563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676563
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/32 20060101AFI20150205BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20150205BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20150205BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   C08G59/32
   C08L63/00 C
   H01L23/30 R
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-505621(P2012-505621)
(86)(22)【出願日】2011年3月8日
(86)【国際出願番号】JP2011055302
(87)【国際公開番号】WO2011114935
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2013年9月19日
(31)【優先権主張番号】特願2010-62457(P2010-62457)
(32)【優先日】2010年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(72)【発明者】
【氏名】片山 篤彦
(72)【発明者】
【氏名】スレスタ・ニランジャン・クマール
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03251861(US,A)
【文献】 特開2007−197647(JP,A)
【文献】 特開平10−003084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00
C08L 63/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物において、下式(1)で表されるエポキシ樹脂を含み、無機充填材を83重量%以上含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂が下式(2)で表される1,2,4−トリエポキシエチルシクロヘキサンであることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂用硬化剤が、アミン類、酸無水物類、多価フェノール類、イミダゾール類、ジシアンジアミド類、及び有機酸ヒドラジッド類から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂用硬化剤として、アミノ基を複数有するポリアミン、フェノール性ヒドロキシ基を複数有する多価ヒドロキシ化合物及び酸無水物類から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、更に硬化促進剤として、三級アミン類、イミダゾール類、ジシアンジアミド類、及び有機ホスフィン類から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
電気・電子部品封止用であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなることを特徴とするエポキシ樹脂硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低粘度性に優れるとともに、耐熱性、低熱膨張性等に優れた硬化物を与える電気・電子部品等の封止、コーティング材料、積層材料、複合材料等の用途として有用なエポキシ樹脂組成物並びにその硬化物に関するものであり、プリント配線板、半導体封止等の電気電子分野の絶縁材料、炭素繊維強化複合材料等に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は工業的に幅広い用途で使用されてきているが、その要求性能は近年ますます高度化している。例えば、エポキシ樹脂を主剤とする樹脂組成物の代表的分野に半導体封止材料があるが、近年、半導体素子の集積度の向上に伴い、パッケージサイズが大面積化、薄型化に向かうとともに、実装方式も表面実装化への移行が進展しており、より半田耐熱性に優れた材料の開発が望まれている。
【0003】
また最近では、高集積化、高密度実装化の技術動向により、従来の金型を利用したトランスファー成形によるパッケージに代わり、ハイブリッドIC、チップオンボード、テープキャリアパッケージ、プラスチックピングリッドアレイ、プラスチックボールグリッドアレイ等の金型を使用しないで液状材料を用いて封止し、実装する方式が増えてきている。しかし、一般に液状材料はトランスファー成形に用いる固形材料に比べて信頼性が低い欠点がある。これは、液状材料に粘度上の限界があり、用いる樹脂、硬化剤、充填剤等に制約があるからである。
【0004】
また、炭素繊維強化複合材料のマトリックス樹脂としては、成形性、耐熱性、機械特性等に優れるエポキシ樹脂が望まれている。特に、近年では、自動車部品、鉄道車両、航空機等の用途において低粘度化及び高耐熱化の両立といった要求が高まってきている。
【0005】
これまでに、低粘度エポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が一般に広く知られているが、低粘度性及び耐熱性の点で充分ではない。また、低粘度性に優れたエポキシ樹脂として、特許3339083号公報には、シクロヘキサン骨格にオキシメチレン鎖を有するエポキシ樹脂が提案されている。シクロヘキサン骨格にオキシメチレン鎖を有するエポキシ樹脂は、芳香族環を有するエポキシ樹脂に比べ、透明性、耐候性に優れるが、耐熱性の点で充分ではなかった。
【0006】
一方、USP3251861号明細書には、1,2,4-トリエポキシエチルシクロヘキサンが記載されている。しかし、エポキシ樹脂用硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物の例は示されておらず、その反応性や、エポキシ樹脂硬化物とした場合の詳細な物性検討はなされておらず、実用物性上の性能は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3339083号公報
【特許文献2】USP3251861号明細書
【発明の開示】
【0008】
従って、本発明の目的は低粘度性に優れ、かつ耐熱性、低熱膨張性等に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物ならびにその硬化物を提供することにある。
【0009】
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物において、下式(1)で表されるエポキシ樹脂を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物に関する。
【0010】
上記エポキシ樹脂としては、1,2,4-トリエポキシエチルシクロヘキサンであることが好ましい。1,2,4-トリエポキシエチルシクロヘキサンは、下式(2)で表される。
【0011】
本発明において、上記エポキシ樹脂用硬化剤が、アミン類、酸無水物類、多価フェノール類、イミダゾール類、ブレンステッド酸塩類、ジシアンジアミド類、有機酸ヒドラジッド類、ポリカルボン酸類及び有機ホスフィン類から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。また、エポキシ樹脂用硬化剤に加えて、更に硬化促進剤を含むことが好ましい。そして、三級アミン類、イミダゾール類、ジシアンジアミド類、及び有機ホスフィン類から選ばれる少なくとも1種の化合物を硬化促進剤として含有することが好ましい。
【0012】
更に、本発明は、無機充填材の含有率が83重量%以上含有する上記のエポキシ樹脂組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、電気・電子部品封止用である上記のエポキシ樹脂組成物、及び上記のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物に関する。
【発明を実施するため形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、及びエポキシ樹脂用硬化剤を必須成分とし、且つこれら必須成分を樹脂成分の主成分とする。本発明のエポキシ樹脂組成物は無機充填材を含むことができ、この場合は、上記必須成分と無機充填材を主成分とする。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、式(1)で表されるエポキシ樹脂の構造に特徴があり、エポキシ基とシクロヘキサンとがエーテル結合を介さないで結合することで、低粘度性に優れ、かつ耐熱性、低熱膨張性等に優れた硬化物を与える。従って、エポキシ樹脂用硬化剤等の添加物の種類及び添加量は、適宜の条件が使用できる。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用されるエポキシ樹脂は式(1)で表される。
【0016】
式(1)のエポキシ樹脂における、エポキシエチル基の置換位置は特に限定しないが、好ましくは、シクロヘキサン骨格の1位、2位及び4位に置換した、式(2)で表される1,2,4-トリエポキシエチルシクロヘキサンである。
【0017】
本発明で用いるエポキシ樹脂成分は、式(1)のエポキシ樹脂の他に、本発明の効果を損なわない範囲で他のエポキシ樹脂を併用することができる。他のエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、2,2' −ビフェノール、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジヒドロキシビフェノール、レゾルシン、ナフタレンジオール類等の2価のフェノール類のエポキシ化物、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類のエポキシ化物、ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物、フェノール類とパラキシリレンジクロライド等から合成されるフェノールアラルキル樹脂類のエポキシ化物、フェノール類とビスクロロメチルビフェニル等から合成されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフトール類とパラキシリレンジクロライド等から合成されるナフトールアラルキル樹脂類のエポキシ化物等が好ましく挙げられる。これら他のエポキシ樹脂は、2種以上を併用してもよい。これら他のエポキシ樹脂を併用する場合、その使用量は全エポキシ樹脂の50wt%以下、有利には20wt%以下にとどめることがよい。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂用硬化剤としては、次のものが挙げられる。
【0019】
アミン類;ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m−キシリレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5,5]ウンデカン等の脂肪族及び脂環族アミン類、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族アミン類、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノ−ル、1,8−ジアザビシクロ−(5,4,0)−ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ−(4,3,0)−ノネン−7等の3級アミン類及びその塩類。
【0020】
酸無水物類;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族酸無水物類、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水シクロドデセニルコハク酸、無水トリアルキルテトラヒドロフタル酸等の環状脂肪族酸無水物類。
【0021】
多価フェノ−ル類;カテコ−ル、レゾルシン、ハイドロキノン、ビスフェノ−ルF、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルS、ビフェノ−ル、フェノ−ルノボラック類、クレゾ−ルノボラック類、ビスフェノ−ルA等の2価フェノ−ルのノボラック化物類、トリスヒドロキシフェニルメタン類、アラルキルポリフェノ−ル類、ジシクロペンタジエンポリフェノ−ル類等。
【0022】
その他;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール及び2−フェニルイミダゾール等のイミダゾ−ル類及びその塩類、ジシアンジアミド類、有機酸ヒドラジッド類である。これらのエポキシ樹脂用硬化剤は、単独で使用しても良いが、2種以上を併用して使用することも可能である。
【0023】
これらの中でも、耐熱性、耐湿性、電気特性等の点で、半導体封止材料に好適なポリアミン、多価ヒドロキシ化合物が好ましく使用される。また、耐熱性、耐湿性、電気特性、透明性を要求される樹脂用途には、ポリアミン、酸無水物が特に好ましく使用される。
【0024】
ポリアミンとしては、ポリエチレンジアミン、メタキシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタンメチレンジアミン等の脂肪族アミン、イソフォロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン等の脂環式ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン等の芳香族ポリアミンが好ましく挙げられる。
【0025】
多価ヒドロキシ化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4' −ビフェノール、2,2' −ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、ナフタレンジオール類等の2価のフェノール類、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ポリビニルフェノール等に代表される3価以上のフェノール類、更にはフェノール類、ナフトール類又は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4' −ビフェノール、2,2' −ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、ナフタレンジオール類等の2価のフェノール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−キシリレングリコール、p−キシリレングリコールジメチルエーテル、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジメトキシメチルビフェニル類、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル類等の架橋剤との反応により合成される多価ヒドロキシ化合物等が好ましい。これらの中で、耐熱性、耐湿性、電気特性等の点で優れる、ノボラック樹脂が特に好ましい。
【0026】
多価ヒドロキシ化合物の軟化点範囲は、好ましくは40〜150℃、より好ましくは50〜120℃である。40℃より低いと例えば無機材が充填されたエポキシ樹脂組成物としたときに粘度が低くなりすぎ無機材が沈降するといった問題があり、150℃より高いとエポキシ樹脂組成物調製時の混練性と成形性に問題がある。また、150℃における好ましい溶融粘度は1Pa・s以下であり、より好ましくは0.5Pa・s以下である。1Pa・sより高いとエポキシ樹脂組成物の調製時の混練性、及び成形性に問題があるが、エポキシ樹脂組成物(無機充填材を含まない)としたときの25℃での粘度が0.01〜100Pa・sとなるように適宜選定される。好適な例として荒川工業株式会社製 タマノールPA、タマノール531、タマノール758、タマノール759、DIC株式会社製 TD-2131、TD-2106,TD-2091、TD-2090として入手できるノボラック樹脂が挙げられる。
【0027】
酸無水物としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデセニル無水コハク酸、α−テルピネンやアロオシメン等のデカトリエンと無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応物及びそれらの水素添加物、構造異性体若しくは幾何異性体をはじめ、それらの混合変性物が好ましく挙げられる。より好ましくは、これらの水素添加物である。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤の官能基とエポキシ樹脂のエポキシ基の当量比を、0.5〜2.0の範囲とすることがよい。好ましくは、0.8〜1.2の範囲である。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、エポキシ樹脂用硬化剤とは別に硬化促進剤を配合することが好ましい。硬化促進剤としては、エポキシ樹脂の硬化促進剤として知られているものが使用できるが、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)等の三級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾ−ル類及びその塩類、ジシアンジアミド類、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類等が好ましく挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で使用しても良いが、2種以上を併用して使用することも可能である。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、無機充填材を高含有率で配合するためには、低粘度であることが好ましい。そのため、エポキシ樹脂組成物から無機充填材を除いた状態でのエポキシ樹脂組成物の粘度は25℃で、0.01〜100Pa・s、好ましくは0.1〜100Pa・sとなるようにする。
【0031】
本発明のエポキシ樹脂組成物には無機充填材を配合することができる。無機充填材を配合したエポキシ樹脂組成物は、封止用として適する。無機充填材としては、例えばシリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニアなどがあり、これらの1種又は2種以上ものを組み合わせてもよいが、溶融シリカを主成分とすることが好ましく、その形態としては破砕状、又は球形状のものが挙げられる。通常、シリカは、数種類の粒径分布を持ったものを組み合わせて使用される。組み合わせるシリカの平均粒径の範囲は、0.5〜100μmがよい。無機充填材を配合する場合の含有率は83重量%以上が好ましく、より好ましくは83〜90重量%である。83重量%より少ないと有機成分の含有率が高くなり耐湿性、低線膨張性が十分に発揮されない。
【0032】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物中には、必要に応じて、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、石油樹脂、インデンクマロン樹脂、フェノキシ樹脂等のオリゴマーや高分子化合物を適宜配合することができ、顔料、難然剤、揺変性付与剤、カップリング剤、流動性向上剤等の添加剤を配合することができる。顔料としては、有機系又は無機系の体質顔料、鱗片状顔料等がある。揺変性付与剤としては、シリコン系、ヒマシ油系、脂肪族アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス、有機ベントナイト系、等を挙げることができる。また必要に応じて、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等の硬化促進剤を配合することができる。硬化促進剤の配合量としては、通常、エポキシ樹脂100重量部に対し、0.2〜5重量部が好ましい。更に必要に応じて、本発明の樹脂組成物には、カルナバワックス、OPワックス等の離型剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、三酸化アンチモン等の難燃剤、シリコンオイル等の低応力化剤、ステアリン酸カルシウム等の滑剤等を配合できる。
【0033】
本発明の硬化物は、上記エポキシ樹脂組成物を、注型、圧縮成形、トランスファー成形等の成形方法で硬化させることにより得ることができる。硬化物が生成する際の温度は、通常、120〜220℃である。
【0034】
上記式(1)で表されるエポキシ樹脂は、トリビニルシクロヘキサンを原料とし、ビニル基を過酸化物により酸化させエポキシ化反応を行うことことにより得られる。なお、上記式(2)で表されるエポキシ樹脂は、1,2,4-トリビニルシクロヘキサンを原料として得られる。
【0035】
上記エポキシ化反応において使用される過酸化物としては、公知の製法を採用することができ、具体的には通常の過酸又は有機過酸化物が用いられる。過ギ酸、過酢酸、過プロピオン酸、m−クロロ安息香酸等が例示される。
【実施例】
【0036】
次に本発明の特徴を更に明確にするため実施例を挙げて具体的に説明する。なお、文中の「部」、「%」は全て重量基準を示すものである。
【0037】
実施例1〜3、比較例1〜4
下記に示すエポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を用い、表1及び表2に示す配合割合で混練してエポキシ樹脂組成物を調製した。表1〜2中のカッコは重量部を表す。
【0038】
エポキシ樹脂成分として、上記式(2)で表されるエポキシ樹脂EP-a(エポキシ当量 93/eq.25℃での粘度は115mPa・s)、比較として、シクロヘキサン骨格にオキシメチレン鎖を有するエポキシ樹脂である1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル エポキシ樹脂EP-b(新日本理化株式会社製、DME−100;エポキシ当量158g/eq.25℃での粘度は100mPa・s)、水素化ビスフェノールAジグリジジルエーテル エポキシ樹脂EP-c (ジャパンエポキシレジン製 YX-8000;エポキシ当量210g/eq.25℃での粘度は2548mPa・s)を用いた。
硬化剤成分として、PN(フェノールノボラック樹脂、荒川化学製、タマノール758;OH当量103、軟化点 82℃)、MH−700(4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸混合物(70/30)、新日本理化株式会社製 リカシッド MH-700)及びEC-100(1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼンと1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼンの混合物、アルベマール日本株式会社製 エタキュアー100)を用いた。
硬化促進剤成分として、2E4MZ(2−エチル−4−メチルイミダゾール)を用いた。
フィラーとして、電気化学工業(株)製の球状溶融シリカFB−60(平均粒径21μm)及びFB−35(平均粒径12μm)、(株)アドマテックス製の球状溶融シリカSO−C3(平均粒径0.9μm)及びSO−C2(平均粒径0.5μm)の4種類を混合して使用した。混合比は、重量比で、20:50:10:20とした。
【0039】
エポキシ樹脂と硬化剤とを混合して得られた組成物(無機充填材と硬化促進剤を含まない)については、E型粘度計を用いて25℃における組成物の粘度測定を行い、その結果を表1及び表2に示した。
【0040】
更に、上記エポキシ樹脂組成物にフィラーを混合して得られたエポキシ樹脂組成物について、スパイラルフロー及びゲルタイムを測定した。スパイラルフローについては、規格(EMMI−1−66)に準拠したスパイラルフロー測定用金型でエポキシ樹脂組成物をスパイラルフローの注入圧力(150kgf/cm2)、硬化時間3分の条件で成形して流動長を調べた。ゲルタイムについては、予め175℃に加熱しておいたゲル化試験機(日新科学(株)製)の凹部にエポキシ樹脂組成物を流し込み、フッ素樹脂製棒を用いて一秒間に2回転の速度で攪拌し、エポキシ樹脂組成物が硬化するまでに要したゲル化時間を調べた。
【0041】
次に、エポキシ樹脂組成物を175℃で成形し、175℃で12時間ポストキュアを行い、硬化物試験片を得た後、各種物性測定に供した。ガラス転移点は、熱機械測定装置により、昇温速度7℃/分の条件で求めた。曲げ試験は、曲げ強度、曲げ弾性率を3点曲げ法により行った。吸水率は、本エポキシ樹脂組成物を用いて、直径50mm、厚さ3mmの円盤を成形し、ポストキュア後85℃、85%RHの条件で100時間吸湿させた時のものである。結果をまとめて表1及び表2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
上記から、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化前の粘度が低く、成形性時の流動性が良好であり、かつ耐熱性、耐湿性、低熱膨張性等に優れた硬化物を与えることがわかる。これらの硬化物は、半導体封止材等の電気・電子部品封止用材料、成形材料、積層材料、接着材料等に有用である。
【産業上の利用の可能性】
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、低粘度性に優れ、耐熱性及び低熱膨張性等に優れた硬化物を与えることができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、低粘度性に優れたエポキシ樹脂を用いることにより成形時の優れた流動性が発揮される。また、低粘度性に起因してフィラー高充填率化が可能である。更には、エポキシ樹脂成分が一般的なエポキシ樹脂が有するグリシジルエーテル基と比較して、柔軟なオキシメチレン部位を持たないため、硬化物の分子運動が抑制されることにより優れた耐熱性、低熱膨張性が発揮される。以上の優れた流動性、耐熱性、低熱膨張性により、半導体封止材、各種成形材料、積層材料、粉体塗料及び接着材料等に好適に用いることができる。特に、電子部品封止用として優れる。