特許第5676599号(P5676599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676599
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】散乱粒子領域を有するLEDパッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/58 20100101AFI20150205BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20150205BHJP
【FI】
   H01L33/00 430
   H01L33/00 410
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-519534(P2012-519534)
(86)(22)【出願日】2010年6月28日
(65)【公表番号】特表2012-532473(P2012-532473A)
(43)【公表日】2012年12月13日
(86)【国際出願番号】US2010001852
(87)【国際公開番号】WO2011005300
(87)【国際公開日】20110113
【審査請求日】2012年2月16日
【審判番号】不服2013-23573(P2013-23573/J1)
【審判請求日】2013年12月2日
(31)【優先権主張番号】12/498,253
(32)【優先日】2009年7月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】クリー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レ トクイン、ロナン
【合議体】
【審判長】 吉野 公夫
【審判官】 鈴木 肇
【審判官】 山村 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−054995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオード(LED)放射プロファイルでLED光を放射する少なくとも1つのLEDと、
第1ターゲット波長を散乱する第1の複数の散乱粒子と、
前記第1ターゲット波長とは異なる第2ターゲット波長を散乱する第2の複数の散乱粒子とを備え、
前記LED放射プロファイルの均一性を改善するように、前記LED光を散乱させるべく、前記第1の複数の散乱粒子及び前記第2の複数の散乱粒子が前記LEDの周りに配置され、
前記第1の複数の散乱粒子及び前記第2の複数の散乱粒子が、放射角度に基づいて前記LEDの周りの領域に、少なくとも2つの領域を有するように配置され、前記少なくとも2つの領域は、それぞれの領域が放射角度の範囲の1つに対応し、少なくとも1つの領域には、前記第1の複数の散乱粒子が配置され、少なくとも1つの他領域には、前記第2の複数の散乱粒子が配置される、LEDパッケージ。
【請求項2】
前記LEDパッケージは、パッケージ放射プロファイルで放射し、
前記LED放射プロファイルと比較して、前記パッケージ放射プロファイルが、様々な観察角度において改善された放射均一性を有するように、前記第1の複数の散乱粒子及び前記第2の複数の散乱粒子が前記LED光を散乱する請求項1に記載のLEDパッケージ。
【請求項3】
前記第1の複数の散乱粒子及び前記第2の複数の散乱粒子はそれぞれ、第1散乱粒子領域及び第2散乱粒子領域に配置される請求項1に記載のLEDパッケージ。
【請求項4】
前記第1散乱粒子領域は、放射角度0°をカバーする請求項3に記載のLEDパッケージ。
【請求項5】
前記第1散乱粒子領域は、放射角度0°から45°のうちの少なくとも一部をカバーする請求項3に記載のLEDパッケージ。
【請求項6】
前記第2散乱粒子領域は、放射角度90°をカバーする請求項3に記載のLEDパッケージ。
【請求項7】
前記第2散乱粒子領域は、放射角度75°をカバーする請求項3に記載のLEDパッケージ。
【請求項8】
前記第2散乱粒子領域は、放射角度45°から90°のうちの少なくとも一部をカバーする請求項3に記載のLEDパッケージ。
【請求項9】
前記第1の複数の散乱粒子は、青色の波長の光を散乱し、前記第2の複数の散乱粒子は、黄色の波長の光を散乱する請求項1に記載のLEDパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子(LED)パッケージに関し、より詳細には、散乱粒子を有する白色LED及びマルチLEDパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、電気エネルギーを光に変換する半導体素子であり、通常、反対の型でそれぞれドープされた層の間に挟まれた半導体材料の1以上の活性層を有する。典型的には、ワイヤボンドを使用してドープ層にバイアスを印加することにより、正孔(ホール)及び電子を活性層に注入し、正孔及び電子が再結合して光が生成される。光は、活性層及びLEDの全面から放射される。典型的な高効率LEDは、LEDパッケージに搭載され透明な媒体によって封止されたLEDチップを備える。LEDから効率的に光を取り出すことが、高効率LEDの製造の主要な課題である。
【0003】
LEDは、様々な色で発光するように製造することができる。しかしながら、通常のLEDは、活性層から白色光を生成することができない。青色発光LEDを、黄色蛍光物質、ポリマー又は染料で囲むことにより、青色発光LEDからの光を白色に変換している。典型的な蛍光物質として、セリウムでドープされたイットリウムアルミニウムガーネット(Ce:YAG)が挙げられる。(日亜化学工業の型番NSPW300BS、NSPW312BS等を参照、米国特許第5959316号公報、発明者Lowrey、"Multiple Encapsulation of Phosphor-LED Devices(蛍光LEDデバイスの複数封止)"も参照のこと。)青色LEDを囲む蛍光物質は、LEDの青色の光の一部のエネルギーを低い周波数に変換(ダウンコンバート)して、光の波長を高くし、光の色を黄色へと変化させる。青色光の一部は変化せずに蛍光物質を通過し、青色光の別の一部は、黄色へと変換される。したがって、LEDは、青色と黄色の両方を放射して、これらが組み合わさって白色光が提供される。別の方法では、紫色又は紫外線を発光するLEDを、複数色の蛍光物質又は染料で囲むことによって、白色光へと変換される。
【0004】
LEDの上に蛍光物質が使用されたLEDパッケージの一般的な種類として、"カップの中の1滴(glob-in-a-cup)"方法が知られている。LEDチップが、カップ状のくぼみの底に配置されて、蛍光物質を含む材料(例えば、シリコーン又はエポキシ樹脂のような封止材料中に分散された蛍光物質粒子)がくぼみに注入されて、くぼみを満たし、LEDを取り囲むように封止する。そして、封止材料の硬化が行われて、LEDの周囲で固まる。しかしながら、このパッケージ方法で形成されたLEDパッケージでは、パッケージに対して様々な観察角度で放射される光の色温度が大幅に変動する。この色変動は、光が変換材料を通過する時に光路長が異なることをはじめ、多くの要因で引き起こされる。この問題は、基材(マトリックス)を含む蛍光物質が、LEDが配置されるくぼみの周縁上にまで伸びるようなパッケージで最も顕著となり、LEDの横方向から高い観察角度の方向(例えば、光軸から測って90度)に出射する変換光が支配的になる。その結果、LEDパッケージから放射される白色光は不均一となり、様々に異なる色又は強度を持つ光の帯又は斑点を持つようになる。
【0005】
LEDをパッケージ化又はコーティングする別の方法として、共形コーティングとも称される、LED表面に蛍光物質の粒子を直接結合させる方法が存在する。共形コーティングを行うのに、電気泳動堆積、スクリーン印刷、スピンコーティングを使用することができる。これらの方法により、観察角の関数としての色の均一性が改善されるが、その理由の1つは、変換される光と変換されない光のソースが、空間における同一点に対してより近接するようになるためである。例えば、黄色の変換材料によって変換される青色発光LEDの場合、空間における同一点に対して変換材料とLEDとを近くに配置することができるため、実質的に均一な白色光を提供することができる。しかしながら、依然として、色の均一性は、光路長における蛍光物質の濃度の又は蛍光物質の厚みの変動及び違いの影響を受ける。
【0006】
LEDからの放射角度も、放射プロファイルにおける不均一性の原因となる。図1には、周知の発光デバイス又はパッケージの断面が示されている。LED102のような光源が、基板/サブマウント104に配置されて、ダウンコンバート材料106の層がLED102を覆う。リフレクタ108を、基板104上のLED102の周りに配置して、リフレクタ108及び基板104によって画定されるくぼみ内にLED102が位置するようにして、半球状の封止材又はレンズ110が、光源102上に設けられる。封止材110は、例えば、エポキシ接着剤を使用して光源102の上に搭載されてもよいし、その他の搭載方法を使用してもよい。封止材110全体にわたって、光散乱粒子112が配置される。
【0007】
本願明細書全体において、観察角及び放射角という言葉が使用されるが、観察角とは、LED又はLEDパッケージを見る角度であり、図1では例として、θとして表されている。観察角は、本例では、半球状の封止材110の中心から発光体102とは垂直に伸びる光軸から測定される。観察角が0度(0°)であるということは、発光体102の真向いの封止材の外側の点から、すなわち、光軸上で、封止材からの出射光を観察する(測定する)ということを意味する。デバイスが観察者に対して傾けられると、観察角は増加する。観察角90度(90°)とは、出射される光が光軸に対して垂直な角度で測定されることを意味し、封止材110の平坦な縁部分、すなわち、側面の真上から測定されることになる。
【0008】
放射角は、LED又はLEDパッケージから光が放射される角度であって、図1ではθで表されている。放射角と観察角とは同じ光軸を有し、放射角は、LEDから出射した後、最初に封止材110内を伝播する光線の光軸からの角度である。光源102からの光線は最初に光軸(例えば、光線R1)に沿って伝播して、放射角0°を有する。図に示す光線のθは、約40度(40°)である。放射角は、最初の伝播方向が光軸から離れるにしたがって、増加する。この2つの角度の重要な違いは、所与の観察角における出射プロファイルは、封止材110内部の散乱現象による影響を受けるのに対し、放射角は、封止材内の材料と反応する前の、光源又はLEDから初期状態で出射した場合の光の方向が保存されているということである。
【0009】
図1に示す光線R1−R4は、LED102から放射される光子の経路の例をモデル化したものである。図に示すように、R1は出射された後、光子が波長変換を経験する可能性のあるダウンコンバート材106の長さ(l)を通過する。光子がダウンコンバートされる(すなわち、吸収及び再放射される)確率は、光子がダウンコンバート材106を通過する距離と共に増加する。したがって、ダウンコンバート材106中を長い距離(l)で通過する光線R2は、ダウンコンバートされる確率がより高くなる。ダウンコンバート層の形状に応じて、光がダウンコンバート層106を通過する時にダウンコンバートを経験する割合は、光源102からの放射角度の関数となる。
【0010】
光散乱粒子が存在しない場合には、放射スペクトルは、不均一な放射パターンとなり、多くの場合、人間の目が認識可能な程度の色温度及び明度のばらつきを有する放射が生成される。このような不均一さにより、特定のアプリケーションに対しては、望ましくない発光デバイスとなる可能性がある。ダウンコンバート材106を通過した後、光は、封止材110に入射する。光散乱粒子112は、封止材110中に分布し、光が放射される前に個々の光子の方向を変更するように設計されており、光子が封止材110から出射する位置がランダムに分散するようにしている。これは、空間的色温度の均一性を改善する効果を有する。例えば、R1が、光散乱粒子と衝突すると方向が変化して、図に示すように放射される。このように、散乱粒子が存在しなかった場合とは異なる位置で、R1は封止材110を出る。R3は、複数の散乱現象を経験する。R2及びR4は、妨げられることなく、封止材を通過する。このように、光散乱粒子は、光子をその内部放射角との関係を断つことにより、光子が封止材110を出る位置を(ある程度)ランダム化する。
【0011】
LEDパッケージはまた、複数のLEDを備え、同じパッケージ内の複数のLEDは、多くの場合、異なる色を放射してもよい。例えば、赤、緑及び青色発光LEDを組み合わせて使用して、白色光パッケージ(半導体(solid state)RGB)を形成することができる。ユニット毎に1つの赤色チップ、1つの青色チップ及び2つの緑色チップを含む半導体RGGBといったその他のマルチチップ組み合わせも知られている。蛍光物質による変換層を、このマルチチップデバイスと組み合わせて使用してもよく、例えば、蛍光物質変換RGBは、演色評価数(Color Rendering Index)が高い用途に対して使用されている。蛍光物質の変換による白色LED及び半導体赤色チップからなるデバイスも知られている。マルチチップLEDパッケージでは、蛍光変換色チップと半導体チップのその他の組み合わせも知られている。マルチチップLEDパッケージでも、光の異なる色を混色するのを助けるべく、散乱粒子が使用されている。
【0012】
しかしながら、光散乱粒子は、LEDパッケージの放射効率を下げてしまう。典型的には、様々な波長の光が散乱されるように、様々なサイズの散乱粒子がレンズ内に拡散されるが、波長の一部は散乱の必要がない場合もある。このことは、散乱される必要のない光の不必要な後方散乱、及び、散乱される必要がある光の吸収につながり、放射効率に許容されないロスが生じてしまう。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、発光体の放射プロファイルに基づき、発光体からの光の波長域又は目的の波長を散乱させるように設計された散乱粒子を有する発光素子パッケージを提供することを目的とする。散乱粒子は、発光体からの光を混合するように配置されて、発光体パッケージが様々な観察角から観察された場合により均一な光を提供できるようにする。本発明はまた、LEDパッケージで使用することができ、LED周辺の様々な領域に異なる散乱粒子を提供して、特定の放射角においてLEDから放射される光の目的の波長が散乱されるようにする。この配置はまた、散乱によって生じる放射効率損失を最小限に抑え、LEDの光を混合することを提供する。
【0014】
本発明に係るLEDパッケージの一実施形態は、LED放射プロファイルでLED光を放射する少なくとも1つのLEDを備える。LEDパッケージはまた、第1ターゲット波長を散乱する第1の複数の散乱粒子、及び、第1ターゲット波長とは異なる第2ターゲット波長を散乱する第2の複数の散乱粒子を備える。光損失を最小限にすると同時に、放射プロファイルの均一性を改善するように、LED光を散乱させるべく、第1の複数の散乱粒子及び第2の複数の散乱粒子がLEDの周りに配置される。
【0015】
本発明に係る発光体パッケージの別の実施形態では、発光体放射プロファイルで光を放射する少なくとも1つの発光体を備える。また、第1散乱粒子の第1領域及び第2散乱粒子の第2領域を備える。第1領域及び第2領域は、少なくとも1つの発光体の周りに配置されて、発光体の放射プロファイルと比較して、発光体パッケージの放射均一性を改善する。
【0016】
本発明に係るLEDパッケージの別の実施形態は、LED放射プロファイルで光を放射する少なくとも1つのLEDを備える。また、第1ターゲット波長域を散乱する第1粒径分布(粒度分布)を有する第1の複数の散乱粒子、及び、第2ターゲット波長域を散乱する第2粒径分布(粒度分布)を有する第2の複数の散乱粒子を備える。第1の複数の散乱粒子及び第2の複数の散乱粒子は、LEDの周りの対応する領域に配置される。
【0017】
本発明に係るLEDパッケージの別の実施形態は、LED放射プロファイルで光を放射する少なくとも1つのLEDを備える。パッケージはまた、第1ターゲット波長の光を散乱する第1散乱構造、及び、第2ターゲット波長の光を散乱する第2散乱構造を備える。第1散乱構造及び第2散乱構造はそれぞれ、LEDの周りに配置されて、LEDパッケージが、LED放射プロファイルと比較して均一性が改善されたパッケージ放射プロファイルを放射するように、LED放射プロファイルに基づいてLEDからの光を散乱させる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来技術における発光デバイスの断面図である。
図2】本発明に係るLEDパッケージの一実施形態の平面図である。
図3図2の線3−3に沿ったLEDパッケージの断面図である。
図4】散乱される光の波長に基づく、様々に異なるサイズの散乱粒子に対する散乱能を示したグラフである。
図5】本発明に係るLEDパッケージの別の実施形態の断面図である。
図6】本発明に係るLEDパッケージの別の実施形態の断面図である。
図7】本発明に係るLEDパッケージの別の実施形態の平面図である。
図8図7における線7−7に沿ったLEDパッケージの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、色放射の均一性、及び、1つの発光体のパッケージ及び複数の発光体のパッケージの両方における空間色混合性が改善された発光体パッケージを提供する。実施形態は特に、発光体として発光ダイオード(LED)を使用するパッケージに好適であり、白色発光ダイオード(LED)又は白色光を発光するべく組み合わせられるマルチカラーLEDを使用した多くのパッケージに好適である。LEDパッケージが異なる観察角において均一な光を提供するように、LEDの放射プロファイルに基づいて、目的の波長及び波長域(目的の波長)の光を散乱するべく、LEDの周りに様々な態様で配置された散乱粒子を備える。
【0020】
以下に詳細に説明するように、黄色蛍光物質によって変換される青色LEDを備える白色発光LEDを有するLEDパッケージの場合、白色光の相関色温度(correlated color temperature:CCT)は、典型的には、法線方向の放射角度(チップの中心に対して垂直な線から0°に規定される)付近では高くなり、法線から90°付近の角度では低くなる。本発明のある実施形態は、目的の波長の光を散乱するべく、粒子のそれぞれの領域において異なる散乱粒子を提供する。本発明に係る白色光を発光するLEDを有するパッケージの場合、主に青色の光子を散乱するように設計された散乱粒子の領域が、LEDの放射角の0°付近に配置される。ある実施形態では、この青色の散乱領域は、法線方向から45°以上の放射角度の範囲をカバーする。90°近い放射角の場合、散乱粒子は、主に黄色の光子を散乱するように設計されてもよい。黄色の光を散乱する粒子は、45−90°又はそれ以上の範囲といった、90°に近い放射角の範囲をカバーしてもよい。
【0021】
目的の波長における光の光子を主に散乱させるように設計された散乱粒子の領域を有することにより、異なる観察角におけるパッケージの相関色温度(CCT)をより均一にすることができ、散乱粒子がLEDの周りに均一に分布した従来のパッケージと比較して、パッケージの放射効率を向上させることができる。特定の放射角度に、特定の目的の波長の光を主に散乱させる(例えば、法線方向付近及び小さな放射角度では青色の光、そして、大きな放射角度では黄色の光)ように、異なる散乱粒子領域を配置する。散乱粒子は、特定の目的の波長を散乱し、その他の波長は、望ましくは、通過する又は散乱が最小になるように設計されている。従来のLEDパッケージでは、目的の波長及び目的でない波長を含む光の様々な波長が、散乱粒子の影響を受ける。目的でない光子を、大きく散乱させることなく通過させることを可能とすることにより、本発明に係るLEDパッケージの放射効率は、従来のLEDパッケージの放射効率よりも高くなる。
【0022】
目的の光子又は目的の波長の光を散乱させるために、複数の散乱粒子領域の各々は、異なるサイズ又は種類の散乱粒子を有してもよい。一実施形態では、このような領域は、同じ材料で形成されているが、領域の目的の波長に応じた異なるサイズを有する散乱粒子を含むことができる。更に以下で説明するように、粒子が目的の波長を主に散乱させるのを可能とするべく、複数の異なる領域が、相対的に狭い粒径分布を有する。
【0023】
所与の波長又は所与の波長域における光と粒子との相互作用の態様は、粒子のサイズ及び材料の屈折性(屈折率で表される)の積で表される。光源から初期状態で放射される経路から、光の経路をそらすことによって、放射光をランダム化する散乱機能は、視野角の全範囲にわたる改善された色温度均一性及び色混合性を提供する。同様に、特定用途の場合、意図的に不均一な色温度プロファイルを形成するべく、散乱粒子を配置することもできる。本発明においては、散乱粒子が光を散乱させる3つの方法が存在し、それぞれ、反射、屈折及び回折である。
【0024】
反射とは、異なる屈折率を有する媒体間の界面における光の方向の変化であり、光は、入射してきた媒体に戻る。媒体を伝播してきた光が、異なる屈折率を有する別の材料との界面に到達すると、光は、屈折又は反射されて、元の媒体に再び入射する。散乱粒子の場合、光は、形状に応じて、元の方向に屈折される、又は、所定の角度に屈折される。散乱された光が最終的には出射するように構成する目的から、前方散乱又は僅かに側方散乱するのが望ましく、これにより、吸収体に向かって後方に反射される(後方散乱)光の量が低減される。
【0025】
光はまた、屈折によっても散乱される。屈折とは、位相速度(すなわち、媒体中を伝播する波の速度)の変化に起因する光の方向の変化である。この意味では、光がある媒体から、異なる屈折率を有する別の媒体へと進む場合に、屈折が生じる。一実施形態では、光は封止媒体へと入射して、媒体全体に分布する光散乱粒子と相互作用する。光散乱粒子に光が入射すると、速度が変化し、その結果、方向が変化して、散乱が生じる。
【0026】
光はまた、回折によっても散乱される。回折とは、光の波のような特性によって、物体又は開口の周辺で光が曲がることを指す。例えば、光散乱粒子のような物体の付近を光が通過すると、物体周辺で光が曲がり、物体に接近してきた元の経路から逸れる。大きな物体では、この曲がる効果は、ほとんど認識できない。しかしながら、物体のサイズが入射光の波長のサイズに近づくと、現象が明確になる。この意味で、光散乱粒子のサイズが、入射光の波長の半分に近づくと、光は、物体に実際に衝突する光の約5倍の光が曲げられる。このように、散乱粒子を好適なサイズにすることにより、粒子周辺の回折面積を、粒子直径の約5倍まで大きくすることができる。回折断面積を大きくできる利点を考慮して、特定の波長域及びサブレンジを有する光に対して、散乱粒子のサイズを慎重に選択する。
【0027】
層、領域又は基板のような要素が、別の要素の"上(on)"にあるという場合、直接別の要素上に存在する場合又は間にその他の要素が介在している場合を含む。また、"内側(inner)"、"外側(outer)"、"上側(upper)"、"上方(above)"、"下側(lower)"、"真下(beneath)"及び"下方(below)"という相対的な言葉は、一の層又は別の領域の関係を表現するのに使用されている場合がある。これらの言葉は、デバイスの様々な方向、及び、図面に示される方向を包含することを意図している。
【0028】
本明細書に記載されるデバイスの多くは、可視光のスペクトル域で放射するように設計されているが、一部のデバイスは、赤外域、紫外域又はその他の帯域で放射してもよい。簡便のために"光"という言葉が使用されているが、そうではないと明記されていない限り、"光"という言葉は、可視光スペクトルの外側の帯域又はサブレンジを除外していると解釈されるべきではない。
【0029】
また、様々な要素、構成要素、領域、層及び/又は部分を示すために第1(first)、第2(second)等の言葉が使用されているが、これらの要素、構成要素、領域、層及び/又は部分は、第1、第2等の言葉によって限定されない。第1、第2等の言葉は、1つの要素、構成要素、領域、層、部分又は特性を、別のこれららと区別するためだけに使用されている。したがって、以下に記載される第1要素、構成要素、領域、層、部分又は特性は、第2要素、構成要素、領域、層、部分又は特性と記載することができ、本発明の教示する範囲内である。
【0030】
本願明細書全体において、"1層"及び"複数の層"という言葉は、交換可能に使用されている。当業者であれば、ある材料の1つの"層"が、実際には、その材料からなる別個の層が複数含まれる場合もあることは理解できる。同様に、ある材料の複数の"層"は、機能的に1つの層と見なされてもよい。すなわち、"層"という言葉は、材料の同質の1層を意味するのに限られない。1つの"層"は、複数のサブレイヤに局所化される様々な散乱材料濃度及び組成を含んでもよい。複数のサブレイヤは、1つの形成段階で形成されてもよいし、複数の形成段階を経て形成されてもよい。特にそうでないと記載されない限り、要素がある材料の"1層"又は"複数の層"を含むとの記載によって、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲が限定されることを意図しない。
【0031】
本発明の理想的な実施形態を概略的に描いた断面図を参照して、本発明の実施形態が以下に記載される。例えば、製造技術及び許容誤差の結果、図示した形状からのずれが生じることが予期される。本発明の実施形態は、図に示される領域又は粒子の特定の形状に限定されると解釈されるべきではなく、例えば、製造の結果生じる形状のずれも包含すると解釈されるべきである。例えば、矩形に描かれた又は説明された領域は、通常の製造許容誤差のために、典型的には、丸みを帯びた又は曲線状の形状を有する。このように、図に示される領域は、本質的に概略を示すものであり、領域又は粒子の正確な形状を示すことを意図しておらず、本発明の範囲を限定することを意図していない。更に、特定の構造のサイズは、実寸ではない場合がある。例えば、図における散乱粒子のサイズは、実寸ではなく、図示の目的から及び理解を容易にするために、他の要素とは異なる縮尺で示されている場合がある。
【0032】
図2及び図3には、本発明に係る発光体パッケージ200の一実施形態が示されている。発光体202は、サブマウント、基板又はプリント回路基板(サブマウント)を含む面204上に配置される。図示の実施形態では、発光体202は、LEDであるが、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)又は別の種類の発光デバイスのようなその他の発光体も使用することができることは明らかである。
【0033】
LEDの動作は一般的に知られており、LED製造の様々な方法が知られているが、本明細書ではそれらを簡単に説明する。LEDを構成する複数の層は、有機金属気相成長法(MOCVD)を使用した製造のような好適なプロセスを含む周知のプロセスによって製造することができる。LEDを構成する複数の層には、互いに反対の型でドープされた第1エピタキャシル層及び第2エピタキャシル層との間に挟まれた活性層/領域を含んでもよく、これらの層は全て、基板上に成長により連続的に形成される。複数のLEDが、1つのウェハ上に形成されるが、パッケージに搭載するために、1つ1つのLEDにダイシングする。成長された基板は、ダイシングされた最終製品のLEDの一部として残ってもよいし、成長基板を完全に又は部分的に取り除くこともできる。
【0034】
更なる層及び要素をLEDに含めることもでき、これに限定するわけではないが、例えば、バッファ、核生成、コンタクト及び電流拡散層、並びに、光抽出層及び要素を含めることができる。活性領域は、単一量子井戸(SQW)、多重量子井戸(MQW)、ダブルへテロ構造又は超格子構造を含むことができる。活性領域及びドープ層は、異なる材料系から形成されてもよく、望ましい材料系としては、第III族窒化物系の材料が挙げられる。第III族窒化物とは、窒素と、多くの場合はアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)である周期表における第III族の元素との間の半導体化合物を指す。また、第III族窒化物とは、アルミニウムガリウム窒化物(AlGaN)及びアルミニウム・インジウム・ガリウム窒化物(AlInGaN)のような三元化合物及び四元化合物を指す。好ましい実施形態では、ドープ層は、窒化ガリウム(GaN)であり、活性領域は、InGaNである。別の実施形態では、ドープ層は、AlGaN、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)、又は、アルミニウム・ガリウム・インジウム・砒素リン(AlGaInAsP)であってもよい。
【0035】
成長基板は、例えば、サファイア、炭化ケイ素、窒化アルミニウム(AlN)及び窒化ガリウム(GaN)といった数多くの材料によって形成されていてもよく、好適な基板としては、4Hのポリタイプの炭化ケイ素が挙げられ、使用可能なその他の炭化ケイ素ポリタイプには、3C、6H及び15Rのポリタイプがある。炭化ケイ素は、サファイアよりも第III族窒化物と近い結晶格子整合となるという利点を有し、その結果、高品質の第III族窒化物膜となる。炭化ケイ素は、非常に高い熱伝導率を有するので、炭化ケイ素上の第III族窒化物デバイスの全出力は、(サファイア基板上に形成されたデバイスの場合と異なり)基板の放熱による制限を受けない。SiC基板は、米国、ノースカロライナ州、ダラムのCree Research, Inc.社から入手可能であり、SiC基板の製造方法については、科学論文及び米国特許第34,861号、4,946,547号、及び5,200,022号公報に記載されている。
【0036】
LEDはまた、導電性材料によって形成され、周知の方法で堆積される導電電流拡散構造及びワイヤボンドパッドを最上面に備えてもよい。これらの要素を形成するのに使用できる材料には、Au、Cu、Ni、In、Al、Ag及びこれらの組み合わせ、又は、導電酸化物及び透明導電酸化物が含まれる。電流拡散構造は、複数のLEDの上にグリッド状に導電フィンガーを含み、パッドからLEDの最上面への電流の拡散を向上させるべく、導電フィンガー同士は、間隔を空けて設けられている。動作時には、以下に記載するように、ワイヤボンドを介して電気信号がパッドに印加されて、電気信号が、電流拡散構造の導電フィンガーを介してLEDの最上面へと広がる。電流拡散構造は多くの場合、最上面がP型のLEDで使用されているが、N型のLEDにも使用可能である。
【0037】
LED光の少なくとも一部を吸収し、LEDが発光するのとは異なる波長の光を放射する1以上の蛍光物質で、LEDを覆ってもよく、この場合、LEDは、LEDからの光と蛍光物質からの光との組み合わせを放射する。本発明に係る一実施形態では、白色発光LEDは、青色波長スペクトルで光を放射するLEDを有し、蛍光物質が青色の光の一部を吸収して、黄色の光を再放射する。LEDは、青色と黄色の光の組み合わせで、白色光を放射する。一実施形態において、蛍光物質は、市販のYAG:Ceを含み、YAl12:Ce(YAG)のような(Gd,Y)(Al,Ga)12:Ce系をベースとする蛍光物質によって形成されている変換粒子を使用して、黄色スペクトル全範囲の放射が可能である。白色光LEDチップに使用可能なその他の黄色蛍光物質には、Tb3−xRE12:Ce(TAG)、RE=Y,Gd,La,Lu、又は、Sr2−x−yBaCaSiO:Euが含まれる。
【0038】
LEDはまた、活性領域から直接異なる色の放射を可能とする複数の層及び材料を含むことができる。例えば、赤色発光LEDは、活性領域から直接、赤色光の放射を可能とするLED構造及び材料によって構成することができる。これに替えて、赤色発光LEDは、蛍光物質で覆われた青色の光又はUV光を放射するLEDによって構成することもでき、蛍光物質は、LEDの光を吸収し赤色光を放射する。これらの構成に適切な蛍光物質の例としては、Lu:Eu3+、(Sr2−xLa)(Ce1−xEu)O、SrCe1−xEu、Sr2−xEuCeO、SrTiO:Pr3+,Ga3+、CaAlSiN:Eu2+、SrSi:Eu2+が挙げられる。
【0039】
様々な方法を使用して、LEDを蛍光物質で覆うことができ、好適な方法の1つが、米国特許出願第11/656,759号及び 第11/899,790号明細書、"Wafer Level Phosphor Coating Method and Devices Fabricated Utilizing Method(ウェハレベル蛍光物質コーティング方法及びデバイス製造利用方法"に記載されており、これら明細書の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。また、電気泳動堆積(EPD)のようなその他の方法を使用して、LEDを被覆することができ、好適なEPD方法は、米国特許出願第11/473,089号明細書、"Close Loop Electrophoretic Deposition of Semiconductor Devices(半導体デバイスの閉ループ電気泳動堆積)"に記載されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明に係るLEDパッケージは、異なる色の複数のLEDを含み、そのうちの1以上が白色光を放射してもよい。
【0040】
サブマウント204は、様々な種類の材料によって形成することができ、誘電体のような電気的に絶縁性を有する材料が望ましく、サブマウントは、LEDアレイと裏面の構成要素との間に配置される。サブマウント204は、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化ケイ素等のセラミック、又は、ポリイミド及びポリエステル等のポリマー材料によって構成されてもよい。好ましい実施形態では、誘電体材料は、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素のように、高い熱伝導率を持つ。別の実施形態では、サブマウント204は、反射セラミック又は銀のような金属層のような高反射材料を有し、構成要素からの光の抽出を向上させてもよい。別の実施形態では、サブマウント204は、プリント回路基板(PCB)、アルミナ、サファイア又はシリコン、又は、米国、ミネソタ州、チャンハッセン(Chanhassen)のThe Bergquist Company社から入手可能なT−Clad熱的クラッド絶縁基板材料等のその他の好適な材料によって構成することができる。PCBの実施形態の場合、標準的なFR−4 PCB、金属コアPCB、又は、その他の種類の印刷回路基板のように、様々な種類のPCBを使用することができる。
【0041】
ワイヤボンド(図示せず)を、サブマウント204上の導電線と、LED202との間に設けて、電気信号をLED202に印加することができる。また、ダイアタッチ・パッドを介して、LEDの各々に電気信号を印加することができる。その他の実施形態において、LEDは、LEDの一方の面(底面)に、複数のコプラナー(同一平面)電気コンタクトを有してもよく、光出射面の大部分は、電気コンタクトに対向するLED面(上面)に位置している。ダイパッド状の1つの電極(陽極又は陰極)に対応する複数のコンタクトを設けることにより、このようなフリップチップLEDをサブマウント204に実装することができる。その他のLED電極(陰極又は陽極)のコンタクトを、電気線に設けることもできる。光学的反射体(図示せず)を、LED周辺のサブマウントに設けてもよい。別の実施形態では、反射体は、異なる位置に配置されてもよく、異なる形状であってもよい。LEDパッケージ200は、反射体なしで構成されている。
【0042】
封止材、又は、レンズのような光学素子206を、LED202の上に設けることができる。レンズ206は、様々な方法で形成することができ、例えば、硬化性レンズ材料をLED上に成形又は注入し、材料を硬化することによって形成することができる。レンズ材料としては、透明なエポキシ、シリコーン、ガラス、プラスチック、又は、その他の透明な媒質が含まれる。これに替えて、レンズ206を、設置場所に接着することが可能な別個の部品として設けてもよい。レンズは、様々な異なる形状を有してもよく、また、光抽出を強化する部品を含んでもよい。本発明のその他の実施形態は、レンズなしで構成することができることは明らかである。レンズ206の好適な形状は、曲面及び平面を有する半球体である。しかしながら、平面形状や平凸状といったその他のレンズ形状を使用することができる。
【0043】
本発明に係るLEDパッケージの実施形態で使用可能なLEDは、異なる放射角度において、光の複数の波長域のスペクトルを放射することができ、異なる観察角度では、LEDパッケージが異なる色の光を放射しているように見える。このような一実施形態では、LED202は、変換材料208によって被覆されてもよい。LED202の活性領域から光が全方向に放射され、放射される方向に応じて光は変換材料を異なる量(距離)通過する。これによって、異なる観察角度では、異なる色に光が観察されるようにすることができる。光線L1−L3は、LED光の一部が、活性領域からどのように放射されるかのモデルを示している。L1は、低放射角度におけるLED活性領域から放射されるLED光線を表しており、L1は、LED202の上面に位置する変換コーティング208の層を通過する。低放射角度において、活性領域から放射される同様な光線は、LED202の上面における変換コーティング208の厚みで表される、同様な量の変換材料を通過する。これらの光線は、同様な色の光を放射し、典型的には、LED光と変換材料から再放射された光との組み合わせである。
【0044】
LED活性領域から高放射角度で放射される光線L2は、変換コーティング208を通過する時に、より多くの量の変換材料を通過する。その結果、L1に沿って放射する光と比較して、L2に沿って放射するLED光の方がより多く、変換材料によって変換される。更に高い放射角度でLED活性領域から放射される光線L3は、より多い量の変換材料を通過する。したがって、L3に沿って放射する光が変換される可能性がより高くなる。
【0045】
上記で列挙した材料のうちの1つのような黄色の変換材料を含む変換コーティングを備えるLEDの場合、大きな放射角度で放射される光線は、より多い量の変換材料を通過する。したがって、高放射角度でパッケージから放射される光は、低放射角で放射される光(例えば、光線L1)と比較して、変換材料からの黄色の光成分をより多く含むと考えられる。この結果、LEDパッケージ200からの光は、異なる観察角度で観察されると異なる色を呈し、大きな観察角度では光が黄色に近くなり、小さな観察角度では光が青色に近づく。
【0046】
この異なる観察角度による色の違いは、パッケージから放射される光を混合するべく、散乱粒子を提供することによって補償することができる。上記のように、従来のLEDパッケージは、LEDの周りに、様々なサイズの散乱粒子を均一に分布させていた。この場合、異なる角度では、異なる波長の光が散乱され、散乱しなくてもよい波長まで散乱される場合があり、LEDパッケージからの放射効率を下げてしまう。
【0047】
本発明に係るLEDパッケージは、異なる放射角度において、LEDから放射される目的の波長の光を散乱する散乱粒子を有する領域を有するように設けられる。LEDパッケージ200の場合、層散乱粒子209は、レンズ206に設けられ、LED202からの低放射角度の範囲をカバーする第1散乱粒子領域210と、LED202からの高放射角度の範囲をカバーする第2散乱粒子領域212とを含む。このような放射角度の範囲をカバーして、異なる散乱粒子領域を配置することにより、特定の放射角度範囲における光が、所望の散乱粒子領域を通過するようにすることができる。例えば、特定の範囲の低放射角度内で、LED202から放射された光は、第1散乱粒子領域210を通過する。特定の範囲の高放射角度内で、LED202から放射された光は、第2散乱粒子領域212を通過する。
【0048】
一実施形態において、第1散乱粒子領域は、第1領域210を0°から45°の放射角度で、第2領域212を45°から90°の角度で、放射光が通過するLEDに配置することができる。第1領域及び第2領域は、様々な態様で配置することができ、異なる放射角度で放射される光が、所望の領域を通過するようにすることができる。
【0049】
散乱粒子層209は、周知の様々な方法を使用して堆積することができ、バインダ内に散乱粒子を含む。散乱粒子層は、使用用途及び使用される材料に応じて、異なる濃度で散乱粒子を含んでもよい。散乱粒子の好適な濃度範囲は、0.01%から0.2%であるが、これより高い又は低い範囲の濃度であってもよい。ある実施形態では、濃度は、0.001%と低い値に抑えられる場合もある。その他の濃度を採用することができるが、これより高い濃度で散乱粒子を含む場合には、吸収による損失が大きくなる。したがって、許容される光損失の数値となるように、散乱粒子の濃度は選択される。
【0050】
第1及び第2領域210、212はそれぞれ、目的の波長又は波長域(ターゲット波長)を散乱するように設計された散乱粒子を含む。各領域は、目的の放射を散乱するべく、特定の散乱粒子サイズ及び/又は材質を有することができる。散乱粒子は、特定の粒径分布(例えば、D50と示される)を有するように提供され、本発明では、ターゲット波長を最も効率的に散乱させるべく、領域各々における散乱粒子は、粒径分布が小さい範囲内で提供されるべきである。これにより、ターゲット波長外で光が散乱されるのを低減させることができ、LEDパッケージの放射効率を最大にすることにつながると同時に、より均一な光の放射を提供できる。
【0051】
LEDパッケージ200の場合、小さな放射角度で放射される光は、上記したように、より多くの青色光を含むことができる。したがって、第1放射領域210は、青色の波長の光を散乱するように設計された特定のサイズ及び材料を有する第1散乱粒子211を含んでもよい。同様に、大きな放射角度でLEDパッケージから放射された光は、変換材料からの黄色の光成分をより多く含む。第2放射領域212は、黄色の波長の光を散乱するように設計された特定のサイズ及び材料を有する第2散乱粒子213を含んでもよい。
【0052】
第1及び第2散乱粒子211、213は、様々に異なる材料によって構成することができ、例えば、シリカゲル、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y)、二酸化チタン(TiO)、硫酸バリウム(BaSO)、アルミナ(Al)、溶融石英(SiO)、フュームドシリカ(SiO)、窒素化アルミニウム、ガラスビーズ、二酸化ジルコニウム(ZrO)、炭化シリコン(SiC)、酸化タンタル(TaO)、窒化シリコン(Si)、酸化ニオブ(Nb)、窒化ボロン(BN)又は蛍光粒子(例えば、YAG:Ce、BOSE)が挙げられる。上記以外のその他の材料を使用することもできる。材料の様々な組み合わせ、又は、同じ材料の異なる形態の組み合わせを使用して、特定の散乱効果を達成してもよい。例えば、一実施形態では、第1散乱粒子211は、アルミナを含んでもよく、第2散乱粒子213は、二酸化チタンを含んでもよい。また、領域210、212の各々は、異なる材料によって形成された複数の粒子の混合物を含んでもよいことは明らかである。
【0053】
図4は、DuPont社等から入手可能なTiO散乱粒子の散乱粒子のサイズと相対的な光の散乱能とを示したグラフである。青い波長の光の場合、散乱能のピークは、約0.15ミクロンの直径を有する散乱粒子によって提供される。黄色い光の散乱能は、緑色の光を提供するTiOの散乱能で近似することができ、散乱能のピークは、約0.25ミクロンの直径を有する散乱粒子によって提供される。LEDパッケージ200の場合、第1散乱粒子211は、約0.15ミクロンの直径を有するTiO粒子を含むことができ、第2散乱粒子213は、約0.25ミクロンの直径を有し、同じ材料で形成された粒子を含むことができる。
【0054】
上述したように、第1及び第2散乱粒子は、異なる材料を含むことができ、それによる利点を有する。特定の材料に応じて、散乱分布は、粒子のサイズに加えて、材料固有の特性によって分離することができる。
【0055】
上記したように、目的の波長を効率よく散乱させ、その他の波長の散乱を最小にするために、粒径分布は各領域において可能な限り狭くすることが望ましい。一実施形態において、粒径分布は、50%以下であることが望ましく、別の実施形態では、33%以下であることが望ましい。一実施形態において、第1散乱粒子211のサイズは、0.10から0.20ミクロン(すなわち、0.15ミクロン±0.05ミクロン)であり、第2散乱粒子213のサイズは、0.20から0.30ミクロン(すなわち、0.25ミクロン±0.05ミクロン)であってもよい。その他の狭い粒径分布の範囲を使用することができることは明らかであり、ある実施形態では、異なる散乱粒子領域間で、粒子サイズがほとんど重複しない、又は、全く重複しないことが望ましい。
【0056】
LEDパッケージ200では、第1領域及び第2領域210、212間の遷移は、突然区切れているように示されており、第2領域212には第1散乱粒子211が存在せず、第1領域210には第2散乱粒子213が存在しないように示されている。しかしながら、その他の実施形態では、領域間の遷移は、粒子サイズに重複が存在するように漸次的に遷移する態様であってもよい。
【0057】
様々な放射角度において目的の波長を散乱させることにより、パッケージ内のLED自体の放射プロファイルと比較して、LEDパッケージの全体の放射均一性を改善させることができると同時に、効率損失を最小限にすることができる。すなわち、ターゲット波長を主に散乱する散乱粒子を通過させることによって、LED光のプロファイルをより均一にすることができる。
【0058】
LEDパッケージ200の場合、レンズ206上の1層として散乱粒子が提供されているが、散乱粒子は、様々に異なる配置で提供できることは明らかである。図5には、図2〜3に示したLEDパッケージ200と同様なLEDパッケージ300の別の実施形態の断面図である。LEDパッケージ300は、LED302、サブマウント304、レンズ306、及び、LED302上の変換コーティング308を備える。LEDパッケージ200と同様に、LEDパッケージ300は、第1散乱粒子311を有する第1散乱粒子領域310、及び、第2散乱粒子313を有する第2散乱粒子領域312を備える。LEDパッケージ300の場合、これら領域は、層として提供されておらず、レンズ306内に散乱粒子の領域を含む。第1散乱粒子領域310は、LED302の上面を覆うように配置され、低放射角度におけるLED302からの光の放射をカバーする。第2散乱粒子領域312は、LED302の側面を覆うように配置され、高放射角度におけるLED302からの光の放射をカバーする。一実施形態では、第1領域310を、約0°から45°の範囲におけるLEDからの放射角度をカバーするように配置してもよく、第2領域312を、約45°から90°の範囲におけるLEDからの放射角度をカバーするように配置することができる。しかしながら、領域310及び312を、これ以外の異なる放射角度をカバーするように配置可能であることは明らかである。第1及び第2散乱粒子311、313は、上記したサイズ及び材料によって構成することができ、また上記したように、領域310、312間の遷移は、区切られた態様であってもよいし、漸次的な態様であってもよい。レンズ内の散乱粒子領域は、LED上のレンズの形成工程の間に形成されてもよいし、又は、射出成型のように別個にレンズが形成される時に、複数の異なる散乱粒子形成されてもよい。
【0059】
本発明に係る領域及び散乱粒子は、LEDパッケージ、特に、パッケージのレンズから離れた場所に提供することができる。図6には、本発明に係る、LED402、サブマウント404、レンズ406、及び、LED402上の変換コーティング408を備えるLEDパッケージ400の別の実施形態が示されている。この実施形態では、散乱粒子は、離れた場所に搭載され、散乱粒子キャップ410は、レンズ406とは離れた場所に設けられる。キャップ410は、LEDパッケージ400の様々な部分、又は、パッケージ400が搭載される構造の様々な部分に、数多くの様々な態様で設けることができる。
【0060】
キャップ410は、第1散乱粒子413を有する第1散乱粒子領域412、及び、第2散乱粒子415を有する第2散乱粒子領域414を備える。上記の実施形態と同様に、第1散乱粒子領域412は、LED402の上面を覆うように配置され、低放射角度におけるLED402からの光の放射をカバーする。第2散乱粒子領域414は、LED402の側面を覆うように配置され、高放射角度におけるLED402からの光の放射をカバーする。一実施形態では、第1領域412を、約0°から45°の範囲におけるLEDからの放射角度をカバーするように配置してもよく、第2領域414を、約45°から90°のの範囲におけるLEDからの放射角度をカバーするように配置することができる。しかしながら、領域412及び414を、これ以外の異なる放射角度をカバーするように配置することができることは明らかである。第1及び第2散乱粒子413、415は、上記したサイズ及び材料によって構成することができる。また、上記したように、領域412、414間の遷移は、区切られた態様であってもよいし、漸次的な態様であってもよい。キャップ410は、射出成型のような様々な周知の方法を用いて形成することができる。キャップ410はまた、周知の搭載方法及び構造を使用して、LEDパッケージに搭載することができる。
【0061】
本発明は、複数の発光体を有するLEDパッケージにも適用可能であることは明らかである。図7及び図8は、本発明に係る、全てサブマウント508に搭載されている第1LED502、第2LED504及び第3LED506を有するLEDパッケージ500の別の実施形態が示されている。LED502、504、506は、異なる色の光、又は、同じ又は同様な色の光を放射することができ、上記したような同様の材料及び同様な方法で形成することができるレンズ510によって、その光が変換されてもよい。散乱粒子層512をレンズ510上に設けることができ、層512は、パッケージからの様々な放射角度においてターゲット波長を散乱する複数の散乱粒子領域514a−cを有する。ターゲット波長を散乱し、その他の波長の散乱を最小限に抑えるべく、各領域における散乱粒子は、狭い粒径分布で提供される。
【0062】
一実施形態において、LED502、504、506はそれぞれ、赤色、緑色及び青色発光LEDによって構成されていてもよく、それぞれ、赤、緑又は青色の波長の光を散乱するように設計された散乱粒子を有する異なる領域514a−cを有する。異なる領域514a−cのサイズ及び位置は、LED502、504、506の放射特性に大きく依存する場合がある。LED配置の一例として、広帯域スペクトルの緑色又は黄色の発光体又は青色の発光体を含むことができる。良好な色混合が達成できる場合には、これら発光体の波長域を組み合わせて、白色光を放射するように構成してもよい。別の配置として、赤色発光体及び白色発光体を含んでもよい。このような組み合わせは、僅かに赤みがかった又はオレンジがかった"暖かみ"のある白色光を放射するのに使用することができる。赤−緑−青(RGB)パッケージ、又は、赤−緑−緑−青(RGGB)パッケージを使用することもできる。その他、様々な色の発光体の組み合わせが可能である。用途によっては、良好な演色評価数(CRI)を有するデバイスを生成するのに使用される色の組み合わせを選択するのが望ましい。良好なCRIを有する光源は、照明される場所の色の詳細が重要となるような、照明シーンの場合に有用である。
【0063】
その他の実施形態では、LEDパッケージは、数十のLEDのアレイを備えてもよい。このような構成において、黄色変換材料によって覆われた青色LED(青色シフト黄色LED又はBSY LEDとも称される)及び赤色LEDを設けて、LEDパッケージが、相対的に暖かい色温度を有する白色光を放射するようにしてもよい。この実施形態では、赤色、青色又は黄色の光を所望に散乱するべく、複数の散乱粒子領域を様々な放射角度に配置することができる。このように構成することにより、様々な観察角において、均一な光又は相関色温度(CCT)を放射するLEDパッケージとすることができる。
【0064】
複数のLEDを有するLEDパッケージは、レンズ内に散乱粒子領域を配置することができる。他にも、同様なLEDパッケージにおいて、散乱粒子領域を、レンズに搭載されたキャップに含めてもよいし、レンズから離れた場所に配置してもよい。別の実施形態として、レンズを設けずに、キャップをLED上に搭載してもよい。この構成では、LEDのアレイは、複数のLEDパッケージのアレイ、又は、LED及びLEDパッケージの組み合わせを含んでもよい。
【0065】
本発明に係るLEDパッケージの散乱粒子は、本明細書に記載される以外にも様々に異なる形状を有してもよく、必ずしも円形状又は対称形状である必要はない。また、多くの実施形態において、LEDパッケージにおけるLEDの放射プロファイルは、LED上に設けられる変換コーティングの厚み及び形状に依存する。形状及び厚みが異なれば、異なる放射プロファイルが提供され、散乱粒子領域が異なる形状及び位置に設定される。
【0066】
本発明が、特定の好ましい構成を参照して詳細に説明されたが、その他の変形例も可能である。したがって、本発明の精神及び範囲は、上記に記載された実施形態に限定されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8