特許第5676722号(P5676722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5676722
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】平面アンテナ及びレーダ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/28 20060101AFI20150205BHJP
   H01P 5/10 20060101ALI20150205BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20150205BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20150205BHJP
   G01S 13/89 20060101ALI20150205BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   H01Q9/28
   H01P5/10 C
   H01P5/10 Z
   H01Q21/08
   G01S7/02 F
   G01S13/89
   G01S7/03 D
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-235398(P2013-235398)
(22)【出願日】2013年11月13日
【審査請求日】2014年5月26日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/研究開発課題名」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】三井造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】森 康成
(72)【発明者】
【氏名】土井 恭二
(72)【発明者】
【氏名】弓井 孝佳
(72)【発明者】
【氏名】浅野 有美
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01229605(EP,A1)
【文献】 特開2010−273204(JP,A)
【文献】 特開2002−323459(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/055028(WO,A1)
【文献】 特開2009−100253(JP,A)
【文献】 特開2009−213125(JP,A)
【文献】 特開2005−130292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/02
G01S 13/89
H01P 5/10
H01Q 9/28
H01Q 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面アンテナであって、
誘電体基板と、
前記誘電体基板の第1の面に設けられた第1のアンテナ要素と、前記第1の面と反対側の第2の面に設けられた第2のアンテナ要素により構成され、前記第1のアンテナ要素と前記第2のアンテナ要素が平衡型のアンテナとして機能するアンテナ本体部と、
前記第1のアンテナ要素に給電するために前記第1のアンテナ要素の給電点と接続した、前記第1の面に設けられた第1の給電線路と、前記第2のアンテナ要素に給電するために前記第2のアンテナ要素の給電点と接続した、前記第2の面に設けられた第2の給電線路と、前記第1の給電線路と接続した、前記第1の面に設けられた信号線を含む信号線路部と、
前記第1の面に設けられ、前記信号線とともにコプレーナ線路を形成する第1の接地導体と、
前記第1の面に形成された前記コプレーナ線路の領域に対向する、前記第2の面の領域に設けられ、前記第2の給電線路と接続した第2の接地導体と、
を有し、
前記信号線路部は、
前記信号線路部の信号を伝送させる1つの線において、線幅が前記給電点に向かって連続的に細くなる部分を2つ設けることにより前記アンテナ本体部と前記信号線路部の間のインピーダンスを整合させ、かつ、平衡-不平衡の変換をする整合回路を備え、
前記コプレーナ線路の前記信号線が前記第1の給電線路と接続する前記信号線の端に対向する前記第1の接地導体の縁部の端には、前記第1の接地導体と前記第2の接地導体とを接続することにより、前記第1の給電線路と前記第2の給電線路を平衡伝送線路にするビアホールが設けられている、ことを特徴とする平面アンテナ。
【請求項2】
前記第1の給電線路上に、前記インピーダンスを整合させる前記部分が設けられている、請求項1に記載の平面アンテナ。
【請求項3】
前記第1のアンテナ要素と前記第2のアンテナ要素は、自己補対型のアンテナ要素であり、
前記第1の給電線路は、線幅が前記給電点に向かって連続的に細くなる第1の部分を有し、
前記第2の給電線路は、線幅が前記給電点に向かって連続的に細くなる第2の部分を有し、
前記信号線は、線幅が前記給電点に向かって連続的に細くなる第3の部分を有し、
前記第1の部分と前記第2の部分は、前記誘電体基板を挟んで同じ位置に設けられる、請求項に記載の平面アンテナ。
【請求項4】
前記第3の部分は、前記信号線が前記第1の給電線路と接続する端部で終了し、前記第1の給電線路の前記第1の部分は、前記信号線の前記端部と接続する前記第1の給電線路の端部から開始し、
前記第3の部分から前記第1の部分の接続部分に向かって進むとき、線幅が段差を持って広くなっている、請求項3に記載の平面アンテナ。
【請求項5】
前記第1の給電線路の延びる方向における前記第1の部分の長さと前記信号線の延びる方向における前記第3の部分の長さの合計は、前記第3の部分の開始位置から前記給電点までの線路長に等しい、請求項3または4に記載の平面アンテナ。
【請求項6】
前記第1のアンテナ要素の周りを覆うように、前記第1の接地導体から延長した延長接地導体が、前記第1のアンテナ要素と離間して設けられ、前記第2のアンテナ要素の周りを覆うように、前記第2の接地導体から延長した延長接地導体が、前記第2のアンテナ要素と離間して設けられ、
前記第1のアンテナ要素及び前記第2のアンテナ要素のそれぞれと、前記延長接地導体それぞれとの間に、抵抗素子が設けられる、請求項〜5のいずれか1項に記載の平面アンテナ。
【請求項7】
前記第1のアンテナ要素及び前記第2のアンテナ要素は、いずれも、前記給電点から最も遠い位置において、前記抵抗素子を介して前記延長接地導体と接続されている、請求項6に記載の平面アンテナ。
【請求項8】
前記信号線に対向する前記第1の接地導体の縁部に沿って、前記第1の接地導体と前記第2の接地導体とを接続する複数のビアホールが設けられている、請求項1〜のいずれか1項に記載の平面アンテナ。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の平面アンテナが複数配列し、電磁波を物体に向けて放射する送信用アレイアンテナと、
請求項1〜のいずれか1項に記載の平面アンテナが複数配列し、前記物体から反射した電磁波を受信する受信用アレイアンテナと、
前記送信用アレイアンテナに用いた送信信号を用いて、前記受信用アレイアンテナで受信した受信信号を処理する高周波回路と、
前記高周波回路で得られた処理信号を用いて前記物体に関する3次元画像信号を取得する信号処理部と、
前記送信用アレイアンテナによる送信、前記受信用アレイアンテナによる受信、前記受信信号の処理、及び、前記3次元画像信号の取得のそれぞれを制御するシステム制御回路と、
前記3次元画像信号を用いて3次元画像を生成する画像表示部と、を有することを特徴とするレーダ装置。
【請求項10】
前記高周波回路は、前記送信信号を供給する平面アンテナを前記送信用アレイアンテナの内から選択する高周波スイッチと、前記受信用アレイアンテナの内から平面アンテナを選択する高周波スイッチと、を含む、請求項に記載のレーダ装置。
【請求項11】
さらに、前記物体を前記レーダ装置に対して相対的に移動させる移動装置と、
前記物体が相対的に移動する移動距離に関して一定の移動距離毎に、前記送信用アレイアンテナの送信と前記受信用アレイアンテナの受信を行うために、定められた移動距離毎に信号を出力するセンサと、を含む、請求項9または10に記載のレーダ装置。
【請求項12】
前記送信用アレイアンテナと前記受信用アレイアンテナは、共通する1つの誘電体基板上に設けられ、
前記送信用アレイアンテナの平面アンテナの配列方向に平行に、前記受信用アレイアンテナの平面アンテナは配列されている、請求項9〜11のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項13】
前記レーダ装置に対して、前記物体は相対的に移動し、
前記送信用アレイアンテナの平面アンテナの配列方向及び前記受信用アレイアンテナの平面アンテナの配列方向は、前記物体の移動方向に垂直である、請求項12に記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板上でパターン化された整合回路を持つ平面アンテナ及びこの平面アンテナを複数用いたアレイアンテナを有するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリート、木材等の材料(非金属)による構造物の内部を非破壊で検査する方法として、3次元映像化レーダ装置が用いられている。この3次元映像化レーダ装置は、複数の受信アンテナにより計測したデータをマイグレーション処理することにより、構造体の内部の3次元映像化を行う。検知できる対象は、構造物内のギャップ、空洞、金属物、導電率や誘電率が異なる領域等を含む。このようなレーダ装置における映像上の平面分解能は、用いる電磁波の波長に依存し、映像の垂直分解能は用いる電磁波の帯域の広狭に依存する。このため、高精細な3次元映像を得るために、レーダで用いる電磁波の周波数を高くし、さらに、電磁波の帯域を広くすることが好ましい。現在、3次元映像化レーダ装置の周波数帯域は、100MHz〜4.5GHzである。したがって、現在の3次元映像化レーダ装置の動作する周波数の上限をより高くし、かつ、電磁波の動作する帯域をより広くすることが好ましい。
【0003】
3次元映像化レーダ装置では、比較的小型化が可能であり、広帯域を実現することができる点で、ボウタイ形状をした平面アンテナが有効に用いられる。このようなボウタイ形状を成したアンテナとして、自己補対な複数のアンテナ要素を用いた平面アンテナが用いられる。この一例として、非常に広帯域な範囲で反射損の少ない平面アンテナが知られている(特許文献1)。
【0004】
上記平面アンテナは、誘電体基板と、この誘電体基板上の片面に構成され、この面において擬似自己補対な複数のアンテナ導体と、このアンテナ導体の対称面に関し対称な複数の給電用導体とを備える。このとき、複数のアンテナ導体間の回転対称の中心において使用周波数の真空中での波長の1/10以下の間隙が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−130292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、自己補対あるいは擬似自己補対のアンテナに接続する高周波伝送線路には、高周波回路が不平衡回路であることから、同軸ケーブルあるいはマイクロストリップ線路等の不平衡伝送線路が用いられる。平衡回路であるボウタイ形状の自己補対あるいは擬似自己補対のアンテナに不平衡伝送線路を用いて給電するには、バラン(平衡-不平衡変換器)を用い、不要な電流の発生を抑制する。また、アンテナのインピーダンスと同軸ケーブルやマイクロストリップ線路等のインピーダンスとを整合させるために、インピーダンスを変換することが必要である。このインピーダンス変換の機能をバランが持つものもある。バランはトランスを含むため、5〜20GHzの高周波では平衡-不平衡変換器として機能しない。このため、10〜20GHzの帯域のアンテナにおいてバランを用いることはできない。
上述の公知の平面アンテナの実施形態では、インピーダンス変換機能を持たせるために、給電用導体の幅を給電点に近づくにつれて細くした例も示されている(図12)。しかし、
この例の場合、フィルタ、アンプ、カプラ、RFスイッチ、及びミキサ等を含む高周波回路(当該文献では平衡回路と記載されている)は全てレッヘル線路(平衡回路)で結線されており、高周波回路にマイクロストリップ線路や同軸線路等の不平衡線路を用いることができない。
【0007】
そこで、本発明は、例えば10〜20GHz等の高周波でかつ超広帯域で動作する平面アンテナであって、アンテナ本体部と信号線路のインピーダンスを整合することができ、かつ、不平衡−平衡の変換をすることができる整合回路を持つ、コストのかからない平面アンテナ及びレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、平面アンテナである。当該平面アンテナは、
誘電体基板と、
前記誘電体基板の第1の面に設けられた第1のアンテナ要素と、前記第1の面と反対側の第2の面に設けられた第2のアンテナ要素により構成され、前記第1のアンテナ要素と前記第2のアンテナ要素が平衡型のアンテナとして機能するアンテナ本体部と、
前記第1のアンテナ要素に給電するために前記第1のアンテナ要素の給電点と接続した、前記第1の面に設けられた第1の給電線路と、前記第2のアンテナ要素に給電するために前記第2のアンテナ要素の給電点と接続した、前記第2の面に設けられた第2の給電線路と、前記第1の給電線路と接続した、前記第1の面に設けられた信号線を含む信号線路部と、
前記第1の面に設けられ、前記信号線とともにコプレーナ線路を形成する第1の接地導体と、
前記第1の面に形成された前記コプレーナ線路の領域に対向する、前記第2の面の領域に設けられ、前記第2の給電線路と接続した第2の接地導体と、
を有し、
前記信号線路部は、
前記信号線路部の信号を伝送させる1つの線において、線幅が前記給電点に向かって連続的に細くなる部分を2つ設けることにより前記アンテナ本体部と前記信号線路部の間のインピーダンスを整合させ、かつ、平衡-不平衡の変換をする整合回路を備え、
前記コプレーナ線路の前記信号線が前記第1の給電線路と接続する前記信号線の端に対向する前記第1の接地導体の縁部の端には、前記第1の接地導体と前記第2の接地導体とを接続することにより、前記第1の給電線路と前記第2の給電線路を平衡伝送線路にするビアホールが設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
前記第1の給電線路上に、前記インピーダンスを整合させる前記部分が設けられている、ことが好ましい。
【0010】
前記第1のアンテナ要素と前記第2のアンテナ要素は、自己補対型のアンテナ要素であり、
前記第1の給電線路は、線幅が前記給電点に向かって連続的に細くなる第1の部分を有し、
前記第2の給電線路は、線幅が前記給電点に向かって連続的に細くなる第2の部分を有し、
前記信号線は、線幅が前記給電点に向かって連続的に細くなる第3の部分を有し、
前記第1の部分と前記第2の部分は、前記誘電体基板を挟んで同じ位置に設けられる、ことが好ましい。
【0011】
前記第3の部分は、前記信号線が前記第1の給電線路と接続する端部で終了し、前記第1の給電線路の前記第1の部分は、前記信号線の前記端部と接続する前記第1の給電線路の端部から開始し、
前記第3の部分から前記第1の部分の接続部分に向かって進むとき、線幅が段差を持って広くなっている、ことが好ましい。
【0012】
前記第1の給電線路の延びる方向における前記第1の部分の長さと前記信号線の延びる方向における前記第3の部分の長さの合計は、前記第3の部分の開始位置から前記給電点までの線路長に等しい、ことが好ましい。
【0013】
前記第1のアンテナ要素の周りを覆うように、前記第1の接地導体から延長した延長接地導体が、前記第1のアンテナ要素と離間して設けられ、前記第2のアンテナ要素の周りを覆うように、前記第2の接地導体から延長した延長接地導体が、前記第2のアンテナ要素と離間して設けられ、
前記第1のアンテナ要素及び前記第2のアンテナ要素のそれぞれと、前記延長接地導体それぞれとの間に、抵抗素子が設けられる、ことが好ましい。
【0014】
前記第1のアンテナ要素及び前記第2のアンテナ要素は、いずれも、前記給電点から最も遠い位置において、前記抵抗素子を介して前記延長接地導体と接続されている、ことが好ましい。
【0016】
前記信号線に対向する前記第1の接地導体の縁部に沿って、前記第1の接地導体と前記第2の接地導体とを接続する複数のビアホールが設けられている、ことが好ましい。
【0017】
本発明の他の一態様は、レーダ装置である。当該レーダ装置は、
前記平面アンテナが複数配列し、電磁波を物体に向けて放射する送信用アレイアンテナと、
前記平面アンテナが複数配列し、前記物体から反射した電磁波を受信する受信用アレイアンテナと、
前記送信用アレイアンテナに用いた送信信号を用いて、前記受信用アレイアンテナで受信した受信信号を処理する高周波回路と、
前記高周波回路で得られた処理信号を用いて前記物体に関する3次元画像信号を取得する信号処理部と、
前記送信用アレイアンテナによる送信、前記受信用アレイアンテナによる受信、前記受信信号の処理、及び、前記3次元画像信号の取得のそれぞれを制御するシステム制御回路と、
前記3次元画像信号を用いて3次元画像を生成する画像表示部と、を有する。
【0018】
前記高周波回路は、前記送信信号を供給する平面アンテナを前記送信用アレイアンテナの内から選択する高周波スイッチと、前記受信用アレイアンテナの内から平面アンテナを選択する高周波スイッチと、を含む、ことが好ましい。
【0019】
さらに、前記物体を前記レーダ装置に対して相対的に移動させる移動装置と、
前記物体が相対的に移動する移動距離に関して一定の移動距離毎に、前記送信用アレイアンテナの送信と前記受信用アレイアンテナの受信を行うために、定められた移動距離毎に信号を出力するセンサと、を含む、ことが好ましい。
【0020】
その際、前記送信用アレイアンテナと前記受信用アレイアンテナは、共通する1つの誘電体基板上に設けられ、
前記送信用アレイアンテナの平面アンテナの配列方向に平行に、前記受信用アレイアンテナの平面アンテナは配列されている、ことが好ましい。
【0021】
また、前記レーダ装置に対して、前記物体は相対的に移動し、
前記送信用アレイアンテナの平面アンテナの配列方向及び前記受信用アレイアンテナの平面アンテナの配列方向は、前記物体の移動方向に垂直である、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
上述の態様によれば、高周波でかつ超広帯域で動作する平面アンテナであって、アンテナ本体部と信号線路のインピーダンスを整合することができ、かつ、不平衡−平衡の変換をすることができる整合回路を持つ、コストのかからない平面アンテナ及びレーダ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(a)〜(c)は、本実施形態の平面アンテナの一形態を説明する図である。
図2】(a)〜(c)は、ビアホールの機能を説明する図である。
図3】本実施形態の平面アンテナ(形態A及び形態B)のVSWRの周波数依存性の一例のグラフを示す図である。
図4】本実施形態の平面アンテナの各寸法を説明する図である。
図5】本実施形態の平面アンテナを備える送信用アレイアンテナと受信用アレイアンテナを含む送受信モジュールの一例の構成を示している。
図6図5に示す送受信モジュールの構成と異なる構成例を示す図である。
図7】本実施形態のレーダ装置の一例のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本実施形態の平面アンテナ及びレーダ装置について詳細に説明する。図1(a)〜(c)は、本実施形態の平面アンテナ10の一形態を説明する図である。図1(a)は、平面アンテナ10の表面を示す図であり、図1(b)は、平面アンテナ10の背面を示す図であり、図1(c)は、平面アンテナ10の側面を示す図である。
【0025】
(平面アンテナの説明)
本実施形態の平面アンテナ10は、プリント基板上でパターン化された整合回路を持つアンテナである。平面アンテナ10は、例えば10〜20GHzである周波数で動作するアンテナであり、非金属の物体を検査対象とする3次元映像化レーダ装置に好適に適用される。
【0026】
本実施形態の平面アンテナ10は、図1(a)〜(c)に示すように、アンテナ本体部と給電部とを有する。
アンテナ本体部は、プリント基板である誘電体基板12の両側の面上に形成された自己補対型の第1のアンテナ要素14と第2のアンテナ要素16を含む平衡型のアンテナとして機能する。
誘電体基板12は、比誘電率1〜20の材料が用いられ、例えばガラスやガラスエポキシ樹脂やフッ素樹脂等が用いられる。自己補対型のアンテナ要素とは、アンテナの形状のうち、無限縁のアンテナ要素のあるアンテナ領域と、アンテナ導体のないスロット領域とが互いに回転や移動を行うことで重なるような形状をいう。例えば、1本の連続する直線あるいは曲線を、給電点を中心に90度ずつ回転したときの直線あるいは曲線を縁とする回転対称な形状のアンテナ要素が挙げられる。このような形状のアンテナの入力インピーダンスは、188Ω(略200Ω)の定インピーダンスアンテナとなる。
【0027】
図1(a),(b)に示す例では、第1のアンテナ要素14と第2のアンテナ要素16のそれぞれは、誘電体基板12の両側の表面に形成されているが、給電点Fを中心として点対象に配置された直角二等辺三角形形状となっている。この二等辺三角形形状を90度右回転あるいは左回転することにより、アンテナ要素の形成されていないスロット部分に重なる。したがって、第1のアンテナ要素14と第2のアンテナ要素16は、自己補対型といえる。しかも第1のアンテナ要素14と第2のアンテナ要素16のそれぞれに、給電点Fから高周波が給電されるので、ダイポールアンテナ、すなわち平衡型アンテナとして機能する。なお、後述するように、無限縁のアンテナ要素を実現するために、第1のアンテナ要素14と第2のアンテナ要素16の給電点Fから最も遠く離れたアンテナ要素の端に抵抗素子が設けられている。これにより、第1のアンテナ要素14と第2のアンテナ要素16が近似的に無限縁のアンテナ要素として機能する。
第1のアンテナ要素14と第2のアンテナ要素16の材料は、導電性を有すればよく、例えば、銅や銀の導電材である。
第1のアンテナ要素14は、誘電体基板12の両側の面のうち第1の面に設けられ、第2のアンテナ要素16は、誘電体基板12の両側の面のうち第2の面に設けられる。
【0028】
給電部は、コプレーナ線路18と、給電線路対20と、第2の接地導体22と、を有する。コプレーナ線路18は、誘電体基板12の第1の面に設けられた信号線24と、信号線24に対して間隔をあけて挟むように設けられた第1の接地導体26とを含む。第1の接地導体26及び第2の接地導体22は、グランドに接続されている。
第2の接地導体22は、信号線24及び第1の接地導体26を含むコプレーナ線路18の第1の面の領域に対して、誘電体基板12を挟んで第2の面の同じ領域に設けられている。すなわち、第1の面及び第2の面では、自己補対型の第1のアンテナ要素14と第2のアンテナ要素16のアンテナ領域と、これらのアンテナ要素のない自己補対形状のスロット領域を含む領域には、給電点Fpに延びる給電線路対20しか設けられず、給電線路20の給電点Fpの側と反対側の基部に信号線24、第1の接地導体26、及び第2の接地導体22が設けられている。
【0029】
給電線路対20は、信号線24の端部と第1のアンテナ要素の給電点Fとの間を接続する第1の給電線路20aと、第2の接地導体22から延びて、第2の接地導体22と第2のアンテナ要素16の給電点Fとの間を接続する第2の給電線路20bと、を含む。第1の給電線路20aと第2の給電線路20bは、いずれもアンテナ要素のないスロット領域に設けられている。第1の給電線路20aと第2の給電線路20bは、誘電体基板12を挟んで同じ位置に設けられ、平行フィーダ線のように機能する。信号線24と第1の給電線路20aと第2の給電線路20bは、信号線路部を構成する。
【0030】
信号線24が第1の給電線路20aと接続する端に対向する第1の接地導体26の縁部の端には、第1の接地導体26と第2の接地導体22とを接続するビアホール30が設けられていることが好ましい。このビアホール30には、信号線24に対向する第1の接地導体26の縁に局所的に生じる電荷を第2の接地導体22に流し、この電荷が第2の給電線路20bに流れるようにすることができる。図2(a)〜(c)は、ビアホール30の機能を説明する図である。図2(a)に示すように、信号線24に例えば正の電荷が流れるとき、第1の接地導体26及び第2の接地導体22の信号線24に近い部分には、局所的に負の電荷が形成される。この正の電荷は、図2(b)に示すように、信号線24の端に進むと、信号線24は第1の給電線路20aに接続されているので、給電点Fに向けて電流として流れる一方、第1の接地導体26及び第2の接地導体22に局所的に生じる負の電荷は、第2の給電線路20bに流れる。このとき、第1の接地導体26の電荷が、第1の接地導体26から第2の接地導体22を経由して第2の給電線路20bに最短で流れこむことができるように、第1の接地導体26と第2の接地導体22の間を接続するビアホール30が設けられていることが好ましい。
【0031】
このように、信号線24が第1の給電線路20aと接続する端に対向する第1の接地導体26の縁部の端には、第1の接地導体26と第2の接地導体22とを接続するビアホール30が設けられているので、第1の給電線路20aと第2の給電線路20bとは平衡伝送線路として機能する。すなわち、バランを不要とする。
【0032】
このとき、平面アンテナ10に接続される図示されないマイクロストリップ線路、同軸ケーブル等の不平衡線路は50Ωのインピーダンスを有するので、コプレーナ線路においても入力インピーダンスが50Ωとなるように構成される。一方、第1のアンテナ要素14と第2のアンテナ要素16は、自己補対型のアンテナを構成しているので、入力インピーダンスが略200Ω(厳密には188Ω=60πΩ)の定インピーダンスアンテナとなっている。このため、給電部において、50Ωから200Ωにインピーダンスを変換することが、定在波比を低下させる点で好ましい。この点で、平面アンテナ10の第1の給電線路20aは、線幅がアンテナ本体部の給電点Fに向かって連続的に細くなる第1の部分21aを有し、第2の給電線路20bは、線幅がアンテナ本体部の給電点Fに向かって連続的に細くなる第2の部分21bを有し、上記第1の部分21aと上記第2の部分21bは、誘電体基板12を挟んで同じ位置に設けられることが好ましい。第1の部分21aと上記第2の部分21bは、同じ形状であることが好ましい。
【0033】
さらに、信号線24は、線幅がアンテナ本体部の給電点Fに向かって連続的に細くなる第3の部分24aを有し、第3の部分24aは、信号線24が第1の給電線路20aと接続する端部で終了し、第1の給電線路20aの第1の部分21aは、信号線24の端部と接続する第1の給電線路20aの端部から開始し、かつ、第3の部分24aと第1の部分21aの接続部分では、第3の部分24aから第1の部分21aに向かって進むとき線幅が段差を持って広くなっていることが好ましい。このように、信号線24と第1の信号線路20aにおいて、第3の部分24aと第1の部分21aを設け、第2の信号線路20bにおいて第2の部分21bを設けることにより、インピーダンスを50Ωから200Ωに変換することができる。このように、第1の部分21aと第2の部分21bと、第3の部分24aを設けることで、線幅の最も狭い部分では現実的に実現可能な寸法、例えば0.6mmとすることができる。第1の部分21aと第2の部分21bを設けず、第3の部分24aでインピーダンスを50Ωから200Ωに変更する場合、線幅の最も狭い部分は、実現困難な極めて狭い寸法、例えば0.1mmとなる。このように、第1の部分20a、第2の部分20b、及び第3の部分24aは、連続的に線幅が徐々に狭くなっているので、インピーダンスによる電力の反射ロスは小さい。図に示す例では、第1の部分21a、第2の部分21b、及び第3の部分24aの線幅は、それぞれ直線的に連続して細くなるが、線幅は直線的に狭くなることに限定されない。
このように、本実施形態では、第1の面に設けられた第1の部分21aと第3の部分24aと、第2の面に設けられ、第1の部分21aと誘電体基板12を挟んで同じ領域に設けられた第2の部分21bとによりアンテナ本体部と信号線路のインピーダンスを整合することができ、かつ、不平衡−平衡の変換をする整合回路を形成する。
インピーダンスを整合させる上述の第1の部分21aと第2の部分21bは、誘電体基板12を挟んで同じ位置に設けられることが、インピーダンスを精度よく変換させる点で好ましい。
【0034】
本実施形態の平面アンテナ10のアンテナ本体部は、誘電体基板12に設けられた自己補対型の第1のアンテナ要素14と第2のアンテナ要素16とを含み、第1のアンテナ要素14は、誘電体基板12の第1の面に設けられ、第2のアンテナ要素16は、誘電体基板12の第2の面に設けられる。すなわち、第1のアンテナ要素14と第2のアンテナ要素16は、平衡型のアンテナとして機能させる。この自己補対型のアンテナは、一定のインピーダンスを有し、インピーダンスの整合を容易にできる点で本実施形態において好ましい。
【0035】
第1の給電線路20aの延びる方向における第1の部分21aの長さと信号線24の延びる方向における第3の部分24aの長さの合計は、第3の部分24aの開始位置から給電点Fまでの線路長に等しいことが、インピーダンスを効率よく変換する点で好ましい。また、上記第1の部分21aの長さと信号線24の延びる方向における第3の部分20aの長さの合計の下限長は、平面アンテナで動作させる周波数における基板中の実効波長(=真空中での波長/(実効誘電率)1/2)の10分の1以上の長さであることが好ましい。
【0036】
さらに、信号線24に対向する第1の接地導体26の縁部に沿って、第1の接地導体26と第2の接地導体22とを接続する複数のビアホールが設けられていることが、信号線24の周りに位置する第1の接地導体26と第2の接地導体22の縁部に局所的に生じる電流を安定させる点で好ましい。この場合、信号線24の領域に対して誘電体基板12を挟んだ第2の接地導体22の同じ領域には、ビアホールは設けられていない。
【0037】
さらに、図1(a),(b)に示すように、第1のアンテナ要素14の周りを覆うように、第1の接地導体26から延長した延長接地導体27が、第1のアンテナ要素14と離間して設けられ、第2のアンテナ要素16の周りを覆うように、第2の接地導体16から延長した延長接地導体23が、第2のアンテナ要素16と離間して設けられる。このとき、第1のアンテナ要素14及び第2のアンテナ要素16のそれぞれと、延長接地導体27,23それぞれとの間に、抵抗素子32が設けられることが、第1のアンテナ要素14と第2のアンテナ要素16とを、無限縁のアンテナ要素とする点で好ましい。
図1(a),(b)に示す例では、第1のアンテナ要素14と第2のアンテナ要素16との間のインピーダンスは略200Ωであるので、200Ωの抵抗素子32が並列に2つずつ計4箇所設けられている。
この場合、第1のアンテナ要素14及び第2のアンテナ要素16は、いずれも、給電点Fから最も遠い位置において、抵抗素子32を介して延長接地導体27,23と接続されていることが好ましい。
【0038】
図3は、平面アンテナ10(形態A及び形態B)のVSWRの周波数依存性の例のグラフを示す図である。図示されるように、10〜20GHzの広帯域において、VSWRが3.00以下となっており、この周波数範囲で平面アンテナ10が有効に動作することがわかる。
【0039】
ここで、平面アンテナ10の形態A及び形態Bの寸法は下記のようになっている。以下では、形態Aの寸法等の後に、形態Bの寸法等を括弧書きで記す。図4は、平面アンテナ10の各寸法を説明する図である。
・誘電体基板12の比誘電率:2.6(2.6)
・誘電体基板12の板厚:1.6mm(1.6mm)
・第1の部分20a、第2の部分20bの長さL2:5mm(6.5mm)
・第3の部分24aの長さL3:5mm(6mm)
・第1の部分20a,第2の部分20bの最小幅W2min:0.6mm(0.6mm)
・第1の部分20a,第2の部分20bの最大幅W2max:2.1mm(2.1mm)
・第3の部分24aの最小幅W3min:0.9mm(0.9mm)
・第3の部分24aの最大幅W3max:2.5mm(2.5mm)
・信号線24を形成するための第1の接地導体26間の隙間W:3mm(3mm)
・アンテナ本体部の大きさA:10mm(13mm)
・第1、第2のアンテナ要素の全長B:9mm(12mm)
【0040】
図3に示されるように、形態A,Bの双方とも5〜20GHz、より好ましくは10〜20GHzの広帯域においてVSWRが3.00以下となっている。
このように、平面アンテナ10は、高周波でかつ超広帯域で動作する平衡型のアンテナであって、信号線路部の信号を伝送させる1つの線において、線幅が給電点に向かって連続的に細くなる部分(第1の部分、第3の部分)を2つ設けることにより、平衡型のアンテナ本体部と不平衡型の信号線路部の間で、インピーダンスを整合させ、かつ、平衡-不平衡の変換をする整合回路と、を有するので、バランのような平衡-不平衡変換器を用いず、プリント基板上で実現することができる。そして、平面アンテナ10はバランを不要とするので、簡便な構成でコストのかからないアンテナとして用いることができる。
【0041】
このような平面アンテナ10は、図5に示すように複数個用いてアレイアンテナとして用いることができる。
図5は、送信用アレイアンテナ50と受信用アレイアンテナ52を含む送受信モジュール40の一例の構成を示している。
送信用アレイアンテナ50と受信用アレイアンテナ52が共通の誘電体基板12に形成されている。具体的に、送信用アレイアンテナ50として、図1〜4に示す平面アンテナ10が複数個誘電体基板12上に形成され、受信用アレイアンテナ52として、図1〜4に示す平面アンテナ10が複数個誘電体基板12上に形成されている。送信用アレイアンテナ50の平面アンテナ10の配列方向は、受信用アレイアンテナ52の平面アンテナ10の配列方向と平行である。このとき、図5に示されるように、受信用アレイアンテナ52の平面アンテナ10の配列方向における位置は、送信用アレイアンテナ50の隣接する平面アンテナ10の2つの位置の中間にあることが好ましい。なお、受信用アレイアンテナ52の平面アンテナ10の配列方向における位置を、送信用アレイアンテナ50の平面アンテナ10の配列方向の位置と一致させてもよい。
【0042】
また、送信用アレイアンテナ50の各平面アンテナ10に送られる送信信号は、図5に示されるように、トーナメント形式で信号線路54が2つに分岐されて、この分岐を3回繰り返して最終的に例えば8個の平面アンテナ10のうちの特定の1つの送信用の平面アンテナ10に供給されることが好ましい。また、受信用アレイアンテナ52の各平面アンテナ10から出力される受信信号も、図5に示されるように、トーナメント形式で各信号線路が接続され、特定の1つの受信用の平面アンテナ10からの受信信号が信号線路56に出力されることが好ましい。トーナメント形式とは、送信信号の場合、1つの信号線路が複数の信号線路に分岐され、かつ、分岐後のそれぞれの信号線路の長さが等しいことをいい、同様に受信信号の場合も、複数の信号線路が1つの信号線路に合流し、かつ、信号線路の長さがいずれの信号線路でも等しいことをいう。このようにトーナメント形式の信号線路を用いることにより同一位相の送信信号を平面アンテナ10に供給することができ、平面アンテナ10からの受信信号に対して、線路長に起因する位相ずれの補正をする必要がなくなる。
トーナメント形式の信号線の分岐部分及び合流部分には、高周波スイッチ58,59が設けられており、送信信号を用いて電磁波を放射させる平面アンテナ10を送信用アレイアンテナ50から選択し、また、受信用アレイアンテナ52から受信信号を取り込みたい平面アンテナ10を選択することができる。このような高周波スイッチ58,59の制御は、図示されないシステム制御回路からの指示にしたがって制御する。
【0043】
図6は、図5に示す送受信モジュール40の構成と異なる構成例を示す図である。
送受信モジュール40も、送信用アレイアンテナ50と受信用アレイアンテナ52を有する。送信用アレイアンテナ50及び受信用アレイアンテナ52の平面アンテナ10の信号線24と第1の接地導体26及び第2の接地導体22は、同軸ケーブル80,82と接続されており、送信信号が送信用アレイアンテナ50に供給され、受信用アレイアンテナ52から受信信号が出力される。送受信モジュール40は、RFスイッチユニット84,86を有し、図示されないシステム制御回路からの制御信号によって、送信信号を供給する供給先である送信用アレイアンテナ50内の平面アンテナ10と、受信用アレイアンテナ52の内の平面アンテナ10がそれぞれ1つ選択される。
図6に示す構成では、図5に示す構成と異なり、送信用アレイアンテナ50及び受信用アレイアンテナ52は、同軸ケーブル80,82によってRFスイッチユニット84,86と接続されている。
【0044】
このような送受信モジュール40は、レーダ装置60に好適に用いることができる。図7はレーダ装置60の一例のブロック構成図である。
レーダ装置60は、送信用アレイアンテナ50と受信用アレイアンテナ52と高周波スイッチ58,59とを含む送受信用モジュール40と、高周波回路62と、システム制御回路64と、信号処理部66と、画像表示部68と、を有する。
すなわち、レーダ装置60は、上述の平面アンテナ10が複数配列し、電磁波を物体に向けて放射する送信用アレイアンテナ50と、上述の平面アンテナ10が複数配列し、物体から反射した電磁波を受信する受信用アレイアンテナ52と、送信用アレイアンテナ50に用いた送信信号を用いて、受信用アレイアンテナ52で受信した受信信号を処理する高周波回路62と、高周波回路62で得られた処理信号を用いて物体に関する3次元画像信号を取得する信号処理部66と、その処理結果を表示する画像表示部68と、を含む。
システム制御回路64は、送信用アレイアンテナ50による送信、受信用アレイアンテナ52による受信、受信信号の処理、及び、3次元画像信号の取得のそれぞれを制御する。
【0045】
このようなレーダ装置60は、送信用アレイアンテナ50及び受信用アレイアンテナ52を平行移動させるとともに、送信用アレイアンテナ50及び受信用アレイアンテナ52の移動単位毎に複数の送信用アレイアンテナ50の平面アンテナ10を高周波スイッチ58により切り替えつつ、電磁波を放射させる。送信用アレイアンテナ50及び受信用アレイアンテナ52の移動は、送信用アレイアンテナ50及び受信用アレイアンテナ52が設けられる基板に一体的に設けられ、定められた移動距離ごとに信号を出力するエンコーダ69によって感知される。送信用アレイアンテナ50及び受信用アレイアンテナ52の移動は、図示されない移動装置によって行われる。この移動装置により、測定対象の物体を、レーダ装置60に対して相対的に移動させることができる。なお、送信用アレイアンテナ50及び受信用アレイアンテナ52の平面アンテナの配列方向が、物体の移動方向に垂直になるようにすることが、3次元画像を移動方向に走査できる点で好ましい。このとき、個々の送信用アレイアンテナ50の平面アンテナ10から送信が行われる度に複数の受信用アレイアンテナ52の平面アンテナ10で切替受信させる処理を、高周波スイッチ59により繰り返す。そして、信号処理部66は、電磁波の送受信によって得られた処理信号から3次元画像信号を取得する。取得した3次元画像信号を用いて、物体内部の3次元画像は、画像表示部68で生成されて表示される。
本実施形態では、定められた移動距離毎に信号を出力するセンサとしてエンコーダ69を用いるが、エンコーダ69に限定されない。測定対象の非金属の構造物である物体が相対的に移動する移動距離に関して一定の移動距離毎に、送信用アレイアンテナ50の送信と受信用アレイアンテナ52の受信を行うために、定められた移動距離毎に信号を出力するセンサを用いればよい。
本実施形態のレーダ装置60は、測定対象の物体と相対的に移動するが、レーダ装置60と物体は相対的に移動するものでなくてもよい。
【0046】
このとき、送信用アレイアンテナ50の平面アンテナ10から放射された電磁波の反射波を複数の受信用アレイアンテナ52の平面アンテナ10で受信する。受信用マイクロ波増幅器(RFアンプ)は、送信する平面アンテナ10と受信する平面アンテナ10の対毎にゲインを変化させるように設定してもよい。この送信する平面アンテナ10と受信する平面アンテナ10の対の選択に応じてゲインを切り替える可変ゲイン増幅機能を有し、物体中の欠陥等の検査可能な深度を大きくすることもできる。
本実施形態の平面アンテナ10は、このようなレーダ装置60に好適に用いることができる。図7に示すレーダ装置60は、高周波スイッチ58,59を有するが、高周波スイッチ58,59を有さないレーダ装置にも本実施形態の平面アンテナ10は適用できる。
【0047】
以上、本発明の平面アンテナ及びレーダ装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0048】
10 平面アンテナ
12 誘電体基板
14 第1のアンテナ要素
16 第2のアンテナ要素
18 コプレーナ線路
20 給電線路対
20a 第1の給電線路
20b 第2の給電線路
21a 第1の部分
21b 第2の部分
22 第2の接地導体
23,27 延長接地導体
24 信号線
24a 第3の部分
26 第1の接地導体
30 ビアホール
32 抵抗素子
50 送信用アレイアンテナ
52 受信用アレイアンテナ
54 信号線路
56 信号線路
58,59 高周波スイッチ
60 レーダ装置
62 高周波回路
80,82 同軸ケーブル
84,86 RFスイッチユニット
【要約】
【課題】例えば10〜20GHz等の高周波でかつ超広帯域で動作する平面アンテナであって、アンテナ本体部と信号線路のインピーダンスを整合することができ、かつ、不平衡−平衡の変換をすることができる整合回路を持つ、コストのかからない平面アンテナ及びレーダ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】平面アンテナは、誘電体基板と、前記誘電体基板に設けられたアンテナ要素により構成されたアンテナ本体部と、前記アンテナ要素に給電するために前記アンテナ要素の給電点と接続した信号線路部と、を有する。前記信号線路部の信号を伝送させる1つの線において、線幅が前記給電点に向かって連続的に細くなる部分を2つ設けることにより前記アンテナ本体部と前記信号線路の間のインピーダンスを整合させ、かつ、不平衡−平衡の変換をする。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7