(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では電子機器の小型化等に伴い、磁気センサの小型、薄型化も進展している。例えば、磁気センサのパッケージング後の大きさ(即ち、パッケージサイズ)は、縦1.6mm、横0.8mm、厚さ0.38mmを実現している。また、ペレットをさらに薄くすることによって、パッケージサイズの厚さを0.30mmとすることも可能である。また、磁気センサの小型、薄型化をさらに進展させるために、アイランドを省いた構造(即ち、アイランドレス構造)も考えられる。
【0005】
図10(a)及び(b)は、本発明の比較形態に係る磁気センサ400の構成例と、課題を説明するための概念図である。
図10(a)に示すように、アイランドレス構造では、ペレット310はモールド樹脂350で固定される。また、アイランドレス構造の磁気センサ310を配線基板450に取り付ける場合は、リードフレーム320の各リード端子のうち、モールド樹脂350から露出している裏面をハンダ(半田)370を介して配線基板450の配線パターン451に接続する。
ここで、磁気センサ400が小型、薄型化し、その投影面積が小さくなると、リードフレーム320の各リード端子間の距離が短くなる。これにより、各リード端子の裏面を配線パターン451にハンダ付けする際に、リード端子下からハンダ370がはみ出して、ペレット310下に到達する可能性が高くなる。例えば
図10(a)に示すように、リード端子325下からはみ出したハンダ370がペレット310の裏面に接触する可能性が高くなる。
【0006】
リード端子325下からはみ出したハンダ370がペレット10の裏面に接触すると、その接触面は半導体と金属のショットキー接合となる。また、
図10(b)に示すように、リード端子325が電源に接続される端子(即ち、電源端子)の場合、電源端子325下からはみ出したハンダ370がペレット310の裏面に接触すると、上記のショットキー接合には順バイアスが印加されることになる。ここで、ペレット310を構成している半導体(例えば、GaAs)は半絶縁性(≒超高抵抗)であるため、従来のようにペレット310が厚いときは、上記のショットキー接合に順バイアスを印加しても電流はほとんど流れなかった。
【0007】
しかしながら、ペレット310を薄くしていくと、その厚みの減少分に比例して抵抗値が減少する。このため、ペレット310の薄型化に伴い、ショットキー接合の順方向に電流が流れ易くなり、電源端子325→ハンダ370→ペレット310→金属細線343→接地電位に接続されたリード端子(即ち、接地端子)327という経路でリーク電流が流れ易くなる。
そこで、本発明は、上記のように磁気センサの小型、薄型化を進展させる過程で顕在化する課題に鑑みてなされたものであって、アイランドレス構造の磁気センサにおいてペレットを小型薄型化した場合でも、リーク電流の増大を防止できるようにした磁気センサ及び磁気センサ装置、磁気センサの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る磁気センサは、ペレットと、前記ペレットの周囲に配置された複数のリード端子と、前記ペレットが有する複数の電極部と前記複数のリード端子とをそれぞれ電気的に接続する複数の導線と、前記ペレットの前記複数の電極部を有する面の反対側の面を覆う絶縁層と、前記ペレットと前記複数の導線とを覆う樹脂部材と、を備え、前記絶縁層の少なくとも一部と、前記複数のリード端子の各々の前記導線と接続する面の反対側の面の少なくとも一部は、前記樹脂部材からそれぞれ露出している。ここで、絶縁層と樹脂部材は、異なる材料からなる(例えば、含有する成分が異なる、又は、含有する成分が同一であっても含有比が異なる。)。
【0009】
また、上記の磁気センサにおいて、前記絶縁層は、前記ペレットの前記複数の電極部を有する面の反対側の面に接していてもよい。
また、上記の磁気センサにおいて、前記樹脂部材は、前記ペレットと、前記複数の導線と、前記複数のリード端子の各々の前記導線と接続する面とを封止するモールド樹脂であってもよい。
また、上記の磁気センサにおいて、前記複数のリード端子は、第一のリード端子と、前記ペレットを挟んで前記第一のリード端子と対向する第二のリード端子と、第三のリード端子と、前記ペレットを挟んで前記第三のリード端子と対向する第四のリード端子と、を有してもよい。
【0010】
また、上記の磁気センサにおいて、前記ペレットは、磁電変換素子を有してもよい。
また、上記の磁気センサにおいて、前記第一のリード端子は、前記磁電変換素子に所定電圧を供給する電源用リード端子であり、前記第二のリード端子は、前記磁電変換素子に接地電位を供給する接地用リード端子であり、前記第三のリード端子と前記第四のリード端子は、前記磁電変換素子のホール起電力信号を取り出す信号取出用リード端子であってもよい。
また、上記の磁気センサにおいて、前記絶縁層は、熱硬化型樹脂を含んでもよい。
また、上記の磁気センサにおいて、前記絶縁層は、紫外線硬化型樹脂をさらに含んでもよい。
また、上記の磁気センサにおいて、前記絶縁層のうち、前記ペレットの前記反対側の面を覆う部分の厚さは、少なくとも2μm以上であってもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る磁気センサ装置は、上記の磁気センサと、前記磁気センサが取り付けられる配線基板と、前記磁気センサが備える前記複数のリード端子を前記配線基板の配線パターンに電気的に接続するハンダと、を備える。
本発明の一態様に係る磁気センサの製造方法は、基材の一方の面に複数のリード端子が形成されたリードフレームを準備する工程と、前記基材の一方の面の前記複数のリード端子で囲まれる領域に、絶縁層を介してペレットを載置する工程と、前記ペレットが有する複数の電極部と前記複数のリード端子とを複数の導線でそれぞれ電気的に接続する工程と、前記基材の前記ペレットが載置された面側を樹脂部材で封止する工程と、前記樹脂部材及び前記絶縁層から前記基材を分離する工程と、を備え、前記基材を分離する工程では、前記ペレットの前記複数の電極部を有する面の反対側の面に前記絶縁層を残す。
【0012】
また、上記の磁気センサの製造方法において、前記基材を分離する工程の後、さらに、前記樹脂部材を前記複数のペレットの各々ごとにダイシングして個片化する工程を備えてもよい。
また、上記の磁気センサの製造方法において、前記基材として、耐熱性フィルムを用いてもよい。
また、上記の磁気センサの製造方法において、前記絶縁層として、絶縁シートを用いてもよい。
また、上記の磁気センサの製造方法において、前記ペレットを載置する工程の前に、前記ペレットが複数作り込まれた基板の、前記複数の電極部を有する面の反対側の面に絶縁性接着層を有するダイアタッチフィルムを貼付する工程と、前記ダイアタッチフィルムが貼付された前記基板をダイシングして、該基板に作り込まれた複数の前記ペレットを個片化する工程と、前記個片化されたペレットを、前記ダイアタッチフィルムから分離する工程と、をさらに備え、前記ダイアタッチフィルムから分離する工程では、前記ペレットと共に前記絶縁性接着層を前記ダイアタッチフィルムのフィルム基材から剥離し、前記ペレットを載置する工程では、前記絶縁層として、前記フィルム基材から剥離した前記絶縁性接着層を用いてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、アイランドレス構造の磁気センサにおいて、ペレットの裏面は絶縁層で覆われている。これにより、磁気センサを配線基板に取り付ける際に、例えば電源端子下からペレットの下方までハンダがはみ出した場合でも、ペレット(半導体)とハンダ(金属)との間でショットキー接合が形成されることを防ぐことができ、該ショットキー接合の順方向(即ち、金属から半導体に向かう方向)に電流が流れることを防ぐことができる。従って、アイランドレス構造の磁気センサにおいてペレットを薄型化した場合でも、リーク電流の増大を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態の磁気センサは、ペレットと、前記ペレットの周囲に配置された複数のリード端子と、前記ペレットが有する複数の電極部と前記複数のリード端子とをそれぞれ電気的に接続する複数の導線と、前記ペレットの前記複数の電極部を有する面の反対側の面の少なくとも一部を覆う絶縁層と、前記ペレットと前記複数の導線とを覆う樹脂部材と、を備え、前記絶縁層の少なくとも一部と、前記複数のリード端子の各々の前記導線と接続する面の反対側の面の少なくとも一部は、前記樹脂部材からそれぞれ露出している。
【0016】
アイランドレス構造の磁気センサにおいて、ペレット裏面の少なくとも一部が絶縁層で覆われており、その絶縁層が樹脂部材から露出する形態であることにより、リーク電流の増大を抑制することができる。
本実施形態において、絶縁層としては、絶縁樹脂層、絶縁シート等が挙げられる。絶縁層としては、ペレットの抵抗よりも高い抵抗であればよい。例えば、絶縁層の体積抵抗率が10
8〜10
20(Ω・cm)であることが好ましい。より好ましくは、絶縁層の体積抵抗率が10
10〜10
18(Ω・cm)である。絶縁層が数mm四方で、厚み数μmの場合、絶縁層の抵抗は、10
10〜10
18(Ω)となり、ペレットの抵抗は、通常、約10
9Ω以下であるため、十分な絶縁性がある。
【0017】
以下、本発明による実施形態を、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合もある。
<第1実施形態>
(構成)
図1(a)〜(d)は、本発明の第1実施形態に係る磁気センサ100の構成例を示す断面図と平面図と底面図、及び外観図である。
図1(a)は、
図1(b)を破線A−A´で切断した断面を示している。また、
図1(b)では、図面の複雑化を回避するために、モールド樹脂(樹脂部材)を省略して示している。
図1(a)〜(d)に示すように、磁気センサ100は、ペレット(即ち、磁気センサチップ)10と、リード端子20と、複数の金属細線31〜34と、絶縁ペースト40と、モールド樹脂50と、外装めっき層60とを備える。また、リード端子20は、複数のリード端子22〜25を有する。
【0018】
ペレット10は、例えばホール素子等の磁電変換素子である。ペレット10は、例えば半絶縁性のガリウムヒ素(GaAs)基板11と、このGaAs基板11上に形成された半導体薄膜からなる活性層(即ち、受感部)12と、活性層12に電気的に接続する電極13a〜13dとを有する。活性層12は、例えば平面視で十字(クロス)型であり、クロスの4つの先端部上にそれぞれ電極13a〜13dが設けられている。平面視で向かい合う一対の電極13a、13cがホール素子に電流を流すための入力端子であり、電極13a、13cを結ぶ線と平面視で直交する方向で向かい合う他の一対の電極13b、13dがホール素子から電圧を出力するための出力端子である。ペレット10の厚さは、例えば0.10mm以下である。
【0019】
磁気センサ100は、アイランドレス構造であり、外部との電気的接続を得るための複数のリード端子22〜25を有する。
図1(b)に示すように、リード端子22〜25は、ペレット10の周囲(例えば、磁気センサ100の四隅近傍)に配置されている。例えば、リード端子22とリード端子24とがペレット10を挟んで対向するように配置されている。また、リード端子23とリード端子25とがペレット10を挟んで対向するように配置されている。さらに、リード端子22とリード端子24とを結ぶ直線(仮想線)と、リード端子23とリード端子25とを結ぶ直線(仮想線)とが平面視で交差するように、リード端子22〜25はそれぞれ配置されている。リード端子20(リード端子22〜25)は、例えば銅(Cu)等の金属からなる。また、リード端子20は、その面側又は裏面の一部がエッチング(即ち、ハーフエッチング)されていてもよい。
【0020】
なお、図示しないが、リード端子20の表面で(
図1(a)における上面側)、金属細線31〜34で接続されるリード端子22〜25の表面には、Agめっきが施されていることが電気的接続の観点から好ましい。
また、別の態様で、リード端子20の表面及び裏面には、外装めっき層60に代えて、ニッケル(Ni)−パラジウム(Pd)−金(Au)等のめっきが施されていてもよい。磁気センサであるが、アイランドレスのため、磁性体であるNiめっき膜の影響を受けにくいため実施が可能となる。
金属細線31〜34は、ペレット10が有する電極13a〜13dと、リード端子22〜25をそれぞれ電気的に接続する導線であり、例えば金(Au)からなる。
図1(b)に示すように、金属細線31はリード端子22と電極13aとを接続し、金属細線32はリード端子23と電極13bとを接続している。また、金属細線33はリード端子24と電極13cとを接続し、金属細線34はリード端子25と電極13dとを接続している。
【0021】
絶縁ペースト40は、その成分として例えば、エポキシ系の熱硬化型樹脂と、フィラーとしてシリカ(SiO
2)とを含むことがより好ましい。第1実施形態では、絶縁ペースト40はペレット10の裏面(即ち、活性層12を有する面(つまり、電極部13a〜13dを有する面)の反対側の面)に接しており、この絶縁ペースト40によってペレット10の裏面が覆われている。第1実施形態では、ペレット10の裏面全体が絶縁ペースト40により覆われていることが、リーク電流増大抑制の観点から好ましい。絶縁ペースト40のうち、ペレット10の裏面を覆っている部分の厚さは、フィラーサイズで決まり、例えば5μm以上である。
【0022】
モールド樹脂50は、ペレット10と、リード端子20の少なくとも表面側(即ち、金属細線と接続する側の面)と、金属細線31〜34とを覆って保護(即ち、樹脂封止)している。モールド樹脂50は、例えばエポキシ系の熱硬化型樹脂からなり、リフロー時の高熱に耐えられるようになっている。なお、モールド樹脂50と絶縁ペースト40は、例えば同じエポキシ系の熱硬化型樹脂の場合でも、その材料は互いに異なる(例えば、含有する成分が異なる、又は、含有する成分が同一であっても含有比が異なる。)。
図1(a)及び(d)に示すように、磁気センサ100の底面側(即ち、配線基板に実装する側)では、各リード端子22〜25の裏面の少なくとも一部と、絶縁ペースト40の少なくとも一部とが、モールド樹脂50からそれぞれ露出している。
また、外装めっき層60は、モールド樹脂50から露出しているリード端子22〜25の裏面に形成されている。外装めっき層60は、例えばスズ(Sn)等からなる。
【0023】
(動作)
上記の磁気センサ100を用いて磁気(磁界)を検出する場合は、例えば、リード端子22を電源電位(+)に接続すると共に、リード端子24を接地電位(GND)に接続して、リード端子22からリード端子24に電流を流す。そして、リード端子23、25間の電位差V1−V2(=ホール出力電圧VH)を測定する。ホール出力電圧VHの大きさから磁界の大きさを検出し、ホール出力電圧VHの正負から磁界の向きを検出する。
即ち、リード端子22は、ペレット10に所定電圧を供給する電源用リード端子である。
リード端子24は、ペレット10に接地電位を供給する接地用リード端子である。リード端子23、25は、ペレット10のホール起電力信号を取り出す信号取出用リード端子である。
【0024】
(製造方法)
本実施形態の磁気センサの製造方法は、基材の一方の面に複数のリード端子が形成されたリードフレームを準備する工程と、前記基材の一方の面の前記複数のリード端子で囲まれる領域に、絶縁層を介してペレットを載置する工程と、前記ペレットが有する複数の電極部と前記複数のリード端子とを複数の導線でそれぞれ電気的に接続する工程と、前記基材の前記ペレットが載置された面側を樹脂部材で封止する工程と、前記樹脂部材及び前記絶縁層から前記基材を分離する工程と、を備え、前記基材を分離する工程では、前記ペレットの前記複数の電極部を有する面の反対側の面に前記絶縁層を残す。
【0025】
図2(a)〜(e)及び
図3(a)〜(d)は、磁気センサ100の製造方法を示す工程順に示す平面図と断面図である。なお、
図2(a)〜(e)において、ダイシングのブレード幅(即ち、カーフ幅)の図示は省略している。
図2(a)に示すように、まず、前述のリード端子が形成されたリードフレーム120を用意する。このリードフレーム120は、
図1(b)に示したリード端子20が平面視で縦方向及び横方向に複数繋がっている基板である。
【0026】
次に、
図2(b)に示すように、リードフレーム120の裏面側に、例えば、基材として耐熱性フィルム80の一方の面を貼付する。この耐熱性フィルム80の一方の面には例えば絶縁性の粘着層が塗布されている。粘着層は、その成分として、例えばシリコーン樹脂がベースとなっている。この粘着層によって、耐熱性フィルム80にリードフレーム120を貼付し易くなっている。リードフレーム120の裏面側に耐熱性フィルム80を貼付することによって、リードフレーム120の貫通している貫通領域を、裏面側から耐熱性フィルム80で塞いだ状態となる。
なお、基材である耐熱性フィルム80としては、粘着性を有すると共に、耐熱性を有する樹脂製のテープが用いられることが好ましい。
【0027】
粘着性については、粘着層の糊厚がより薄いほうが好ましい。また、耐熱性については、約150℃〜200℃の温度に耐えることが必要とされる。このような耐熱性フィルム80として、例えばポリイミドテープを用いていることができる。ポリイミドテープは、約280℃に耐える耐熱性を有している。このような高い耐熱性を有するポリイミドテープは、後のモールドやワイヤーボンディング時に加わる高熱にも耐えることが可能である。また、耐熱性フィルム80としては、ポリイミドテープの他に、以下のテープを用いることも可能である。
・ポリエステルテープ 耐熱温度、約130℃(但し使用条件次第で耐熱温度は約200℃にまで達する)。
・テフロン(登録商標)テープ 耐熱温度:約180℃
・PPS(ポリフェニレンサルファイド) 耐熱温度:約160℃
・ガラスクロス 耐熱温度:約200℃
・ノーメックペーパー 耐熱温度:約150〜200℃
・他に、アラミド、クレープ紙が耐熱性フィルム80として利用し得る。
【0028】
次に、耐熱性フィルム80の粘着層を有する面のうち、リード端子22〜25で囲まれた領域に絶縁ペースト40を塗布する。ここでは、完成後の磁気センサ100において、ペレット10の裏面の一部がモールド樹脂50から露出することがないように、絶縁ペースト40の塗布条件(例えば、塗布する範囲、塗布する厚さ等)を調整する。
次に、
図2(c)に示すように、耐熱性フィルム80のうち、絶縁ペースト40が塗布された領域にペレット10を載置する(即ち、ダイボンディングを行う。)。そして、ボンディング後に熱処理(即ち、キュア)を行って、絶縁ペースト40を硬化させて絶縁層とする。
次に、
図2(d)に示すように、金属細線31〜34の一端を各リード端子22〜25にそれぞれ接続し、金属細線31〜34の他端を電極13a〜13dにそれぞれ接続する(即ち、ワイヤーボンディングを行う。)。そして、
図2(e)に示すように、モールド樹脂50を形成する(即ち、樹脂封止を行う。)。この樹脂封止は、例えばトランスファーモールド技術を用いて行う。
【0029】
例えば
図3(a)に示すように、下金型91と上金型92とを備えるモールド金型90を用意し、このモールド金型90のキャビティ内にワイヤーボンディング後のリードフレーム20を配置する。次に、キャビティ内であって、耐熱性フィルム80の粘着層を有する面(即ち、リードフレーム20と接着している面)の側に加熱し溶融したモールド樹脂50を注入し、充填する。これにより、ペレット10と、リードフレーム20の少なくとも表面側と、金属細線31〜34とを樹脂封止する。モールド樹脂50が更に加熱し硬化したら、該モールド樹脂50をモールド金型から取り出す。なお、樹脂封止後は任意の工程で、モールド樹脂50の表面に例えば符号等(図示せず)をマーキングしてもよい。
【0030】
次に、
図3(b)に示すように、絶縁ペースト40及びモールド樹脂50から耐熱性フィルム80を剥離する。これにより、ペレット10の裏面に絶縁ペースト40を残しつつ、絶縁ペースト40及びモールド樹脂50から耐熱性フィルム80を剥離する。
そして、
図3(c)に示すように、リードフレーム20のモールド樹脂50から露出している面(少なくとも、各リード端子22〜25のモールド樹脂50から露出している裏面)に外装めっきを施して、外装めっき層60を形成する。
次に、
図3(d)に示すように、モールド樹脂50の上面(即ち、磁気センサ100の外装めっき層60を有する面の反対側の面)にダイシングテープ93を貼付する。そして、例えば
図2(e)に示した仮想の2点鎖線に沿って、リードフレーム120に対してブレードを相対的に移動させて、モールド樹脂50及びリードフレーム120を切断する(即ち、ダイシングを行う。)。つまり、モールド樹脂50及びリードフレーム120を複数のペレット10の各々ごとにダイシングして個片化する。ダイシングされたリードフレーム120は、リード端子20となる。
以上の工程を経て、
図1(a)〜(d)に示した磁気センサ100が完成する。
【0031】
図4は、本発明の第1実施形態に係る磁気センサ装置200の構成例を示す断面図である。磁気センサ100が完成した後は、例えば
図4に示すように配線基板250を用意し、この配線基板250の一方の面に磁気センサ100を実装する。この実装工程では、例えば、各リード端子22〜25のうち、モールド樹脂50から露出し且つ外装めっき層60で覆われている裏面を、ハンダ70を介して配線基板250の配線パターン251に接続する。このハンダ付けは、例えばリフロー方式で行うことができる。リフロー方式は、配線パターン251上にハンダペーストを塗布(即ち、印刷)し、その上に外装めっき層60が重なるように配線基板250上に磁気センサ100を配置し、この状態でハンダペーストに熱を加えてハンダを溶かす方法である。実装工程を経て、
図4に示すように、磁気センサ100と、磁気センサ100が取り付けられる配線基板250と、磁気センサ100の各リード端子22〜25を配線基板250の配線パターン251に電気的に接続するハンダ70と、を備えた磁気センサ装置200が完成する。
【0032】
この第1実施形態では、金属細線31〜34が本発明の「複数の導線」に対応し、絶縁ペースト40が本発明の「絶縁層」に対応し、モールド樹脂50が本発明の「樹脂部材」に対応している。また、リード端子22が本発明の「第1のリード端子」に対応し、リード端子24が本発明の「第2のリード端子」に対応している。リード端子23、25の一方が本発明の「第3のリード端子」に対応し、その他方が本発明の「第4のリード端子」に対応している。また、耐熱性フィルム80が本発明の「基材」に対応している。
【0033】
(第1実施形態の効果)
本発明の第1実施形態は、以下の効果を奏する。
(1)アイランドレス構造の磁気センサ100において、ペレット10の裏面は絶縁ペースト40で覆われている。これにより、磁気センサ100を配線基板150に取り付ける際に、例えば、電源電位に接続されるリード端子(即ち、電源端子)22下からペレット10の下方までハンダ70がはみ出した場合でも、ペレット10(半導体)とハンダ70(金属)との間でショットキー接合が形成されることを防ぐことができ、該ショットキー接合の順方向(即ち、金属から半導体に向かう方向)に電流が流れることを防ぐことができる。
例えば
図5に示すように、電源端子22→金属細線31→電極13a→活性層12→電極13c→金属細線33→リード端子24の方向に電流を流した場合でも、ハンダ70からペレット10へ電流が流れることを防ぐことができる。従って、アイランドレス構造の磁気センサ100においてペレット10を小型薄型化した場合でも、リーク電流の増大を防止することができる。磁気センサ100や、磁気センサ装置200のさらなる小型、薄型化に寄与することができる。
【0034】
図6は、入力電圧Vinに対するオフセット電圧Vuのばらつき低減の効果を模式的に示した図である。
図6の横軸は磁気センサに対する入力電圧Vinを示し、縦軸は磁気センサのオフセット電圧Vuを示す。入力電圧Vinは磁気センサの入力端子間の電位差であり、Vinのプラス(+)は順方向(即ち、リード端子22からリード端子24へ電流を流す方向)に電圧を印加した場合、Vinのマイナス(−)は逆方向(即ち、リード端子24からリード端子22へ電流を流す方向)に電圧を印加した場合をそれぞれ示す。また、オフセット電圧Vuは、磁気の無い環境下での出力端子間の電位差である。オフセット電圧Vuは、入力電圧Vinの大きさに関わらずゼロ(0)となることが理想的である。
【0035】
ここでは、例えば
図5に示したように、リード端子22下からペレット10の下方までハンダ70がはみ出している場合を想定する。この想定下で、比較形態に係る構造(即ち、アイランドレスで、ペレットの裏面に絶縁ペーストが存在しない構造。つまり、ペレットの裏面がモールド樹脂から露出している構造)では、ペレットとハンダとの間にショットキー接合が形成される。入力電圧Vinがプラス(+)のときは、このショットキー接合に対して順バイアスとなりハンダからペレットへ電流が流れる。ペレットを薄型化するとショットキー接合の順方向に流れる電流が大きくなるため、
図6の破線で示すようにオフセット電圧Vuのばらつきが大きくなる。
これに対して、本発明の第1実施形態で説明した構造(即ち、アイランドレスで、ペレット10の裏面に絶縁ペースト40が存在する構造)では、ペレット10とハンダ70との間は絶縁ペースト40で絶縁されており、上記の想定下でもショットキー接合は形成されない。このため、ペレット10を薄型化してもペレット10とハンダ70との間で電流は流れず、
図6の実線で示すように、オフセット電圧Vuのばらつきを小さく抑えることができる。
【0036】
(2)また、リーク電流の増大を防止できるため、消費電力の増大を抑制することができる。
(3)また、絶縁ペースト40は、その成分として例えばエポキシ系の熱硬化型樹脂を含む。このため、ダイボンディング後にキュアを行うことにより、絶縁ペースト40を容易に硬化させることができ、ペレット10の裏面を硬化した絶縁ペースト40で封止することができる。
【0037】
(4)また、
図2(b)及び(c)に示したペレット10の取付工程では、耐熱性フィルム80の粘着層上に、粘着力を有する絶縁層(一例として、絶縁ペースト40)を塗布し、その上にペレットを取り付けている。ペレット10の取り付けに、耐熱性フィルム80の粘着力と絶縁ペースト40の粘着力の両方を利用するため、耐熱性フィルム80とペレット10との密着性を高めることができる。これにより、例えば
図3(a)に示した樹脂封止の工程で、耐熱性フィルム80とペレット10との間に溶融したモールド樹脂50が染み込むことを防ぐことができる。また、樹脂封止後のワイヤーボンディング工程で、ペレット10とリードフレーム20との相対的な位置関係がボンディングの衝撃により変動することを防ぐことができる。
【0038】
(5)なお、絶縁ペースト40のうち、ペレット10の裏面を覆う部分の厚さは、少なくとも2μm以上確保されていることが好ましい。本発明者の知見によれば、上記厚さが少なくとも2μm以上であれば、ペレット10の下方までハンダ70がはみ出している場合でも、ペレット10とハンダ70との間の絶縁の信頼性を高め、ショットキー接合が形成されることを防ぐことができる。
【0039】
(変形例)
上記の第1実施形態において、ペレット10はホール素子ではなく、ホールICでもよい。このような構成であっても、第1実施形態の効果(1)〜(4)を奏する。
<第2実施形態>
上記の第1実施形態では、ペレット10の裏面を覆う絶縁層として、絶縁ペースト40を用いる場合について説明した。しかしながら、本発明において、絶縁層は絶縁ペースト40に限定されるものではない。絶縁層として、例えばダイアタッチフィルム(即ち、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム)の粘着層を用いてもよい。第2実施形態では、この点について説明する。
【0040】
(構成)
図7(a)〜(c)は、本発明の第2実施形態に係る磁気センサ300の構成例を示す断面図と平面図、及び外観図である。
図7(a)は、
図7(b)を破線B−B´で切断した断面を示している。また、
図7(b)では、図面の複雑化を回避するために、モールド樹脂50を省略して示している。
図7(a)〜(c)に示すように、磁気センサ300は、ペレット10と、リード端子20と、複数の金属細線31〜34と、絶縁性の粘着層130と、モールド樹脂50とを備える。これらの中で、粘着層130は、その成分として、例えばエポキシ系の熱硬化型樹脂と、紫外線(UV)硬化型樹脂と、バインダ樹脂とを含む。第2実施形態では、この粘着層130によって、ペレット10の裏面全体が覆われている。粘着層130のうち、ペレット10の裏面を覆っている部分の厚さは例えば10μm以上である。
なお、磁気センサ300の、粘着層130以外の構成は、例えば第1実施形態で説明した磁気センサ100と同じである。また、磁気センサ300の動作も、磁気センサ100と同じである。
【0041】
(製造方法)
図8(a)〜(e)は、本発明の第2実施形態に係る磁気センサ300の製造方法を工程順に示す断面図である。
図8(a)に示すように、まず、ダイアタッチフィルム140を用意する。ダイアタッチフィルム140は、フィルム基材135と、フィルム基材135の一方の面上に配置された絶縁性の粘着層130とを有する。このダイアタッチフィルム140の粘着層130に、複数のペレット10が作り込まれた半導体ウエーハ160の裏面(即ち、活性層12を有する面の反対側の面)を接触させて接着する(即ち、ウエーハマウントを行う)。
なお、この第2実施形態では、後述する
図8(b)の工程では粘着層130によるペレット10とフィルム基材135との接着を維持しつつ、
図8(c)の工程では粘着層130がフィルム基材135から剥がれ易くするために、粘着層130の粘着力を調整する処理を行っても良い。この粘着力を調整する処理は、ウエーハマウントを行うタイミング又はその前後のタイミングで行う。
【0042】
例えば、ウエーハマウントを行う際に、ダイアタッチフィルム140をステージを介して加熱して、粘着層130の成分の一つであるバインダ樹脂成分の粘着力を高め半導体ウエーハ160と粘着層130をより強く粘着する方向に調整してもよい。また、ウエーハマウントを行った後で、ダイアタッチフィルム140の粘着層130を有する面の反対側から、該ダイアタッチフィルム140に向けてUVを照射して、粘着層130の成分の一つであるUV硬化型樹脂成分を硬化させ、固くなることによりダイシングが容易になる方向に、またダイボンド時にフィルム基材135と粘着層130との粘着力を小さくする方向に調整してもよい。上記のように、ステージを介した加熱又はUV照射の少なくとも一方を行うことにより、粘着層130の粘着力を高めたり、多少硬化させて、その粘着力を小さくする方向に調整することが可能である。
【0043】
次に、
図8(b)に示すように、例えばブレード170を用いて半導体ウエーハ160をダイシングして、半導体ウエーハ160に作り込まれた複数のペレット10を個片化する。ここでは、半導体ウエーハ160のみならず粘着層130も一緒にダイシングする。
次に、
図8(c)に示すように、針状の突き上げピン180でペレット10の裏面を押し上げると共に、ペレット10の表面をコレット190で吸着して持ち上げる(即ち、ピックアップする)。なお、ダイアタッチフィルム140の粘着層130は、上述したように、例えば加熱又はUV照射の少なくとも一方を行うことによってその粘着力を小さくする方向に予め調整されている。このため、ペレット10をピックアップする工程では、粘着層130はペレット10の裏面に接着した状態で、フィルム基材135から剥離する。つまり、ペレット10と共に粘着層130をフィルム基材135から剥離する。
【0044】
ここで、
図8(c)工程において針状の突き上げピン180でペレット10の裏面を押し上げる際、ピンの跡がダイアタッチフィルム140の粘着層130に残ることがある。例えば、完成後の磁気センサ300において、粘着層130にピンの跡が残されていれば、ダイアタッチフィルム140の粘着層130を絶縁層として用いたことがわかる場合もある。
次に、
図8(d)に示すように、リードフレーム120を用意すると共に、その裏面側に、例えば耐熱性フィルム80の一方の面を貼付する。上述したように、耐熱性フィルム80の一方の面には例えば絶縁性の粘着層が塗布されている。リードフレーム基板120の裏面側に耐熱性フィルム80を貼付することによって、リードフレーム120の貫通している貫通領域を、裏面側から耐熱性フィルム80で塞いだ状態となる。
次に、
図8(e)に示すように、耐熱性フィルム80のうち、リード端子22〜25で囲まれた領域にペレット10を配置する(即ち、ダイボンディングを行う。)。ここでは、ペレット10の裏面側を粘着層130を介して耐熱性フィルム80の一方の面に取り付ける。この取り付け後、熱処理(キュア)を実施し、粘着層130の成分(例えば、エポキシ樹脂系の熱効果型樹脂成分)を硬化させて、十分な接着強度を得る。
【0045】
これ以降の工程は、第1実施形態と同じである。即ち、
図2(d)に示したようにワイヤーボンディングを行い、
図3(a)に示したように樹脂封止を行う。次に、
図3(b)に示したように、粘着層130及びモールド樹脂50から耐熱性フィルム80を剥離する。これにより、ペレット10の裏面に絶縁性の粘着層130を残しつつ、粘着層130及びモールド樹脂50から耐熱性フィルム80を剥離する。次に、
図3(c)に示したように、リードフレーム20のモールド樹脂50から露出している面に外装めっき層60を形成する。そして、
図3(d)に示したように、モールド樹脂50及びリードフレーム基板120をカーフ幅に沿ってダイシングする。このような工程を経て、
図7(a)〜(d)に示した磁気センサ300が完成する。
この第2実施形態では、半導体ウエーハ160が本発明の「基板」に対応し、粘着層130が本発明の「絶縁性接着層」に対応し、フィルム基材135が本発明の「フィルム基材」に対応している。その他の対応関係は第1実施形態と同じである。
【0046】
(第2実施形態の効果)
本発明の第2実施形態は、第1実施形態の効果(1)〜(5)の効果に加え、以下の効果を奏する。
(1)ペレット10の裏面を覆う絶縁層として、ダイアタッチフィルム140の粘着層130を用いる。これにより、絶縁ペーストの塗布工程を省くことができるので、工程数の削減に寄与することができる。
(2)また、粘着層130は、例えば、その成分としてバインダ樹脂と、UV硬化型樹脂とを含む。このため、熱処理を行うことによって、粘着層130の粘着力を高め半導体ウエーハ160と粘着層130をより強く粘着する方向に、また、UV照射を行うことによって、ダイシングが容易になる方向に、そしてフィルム基材135と粘着層130との粘着力を小さくする方向に調整することができる。これにより、ペレット10をピックアップする工程では、ペレット10と共に、粘着層130をフィルム基材135から容易に剥がすことができる。
【0047】
(3)また、粘着層130は粘性が高いので、絶縁ペースト40を用いる場合と比べて、ペレット10の側面における這い上がりを極めて小さくすることができる。これにより、ペレット10の表面に樹脂が付着する不良が発生することは無く、また粘着層130の厚さも薄くならず厚さを均一化できるという利点がある。
(4)また、
図9に示すように、粘着層130を用いる場合は、その保管条件について、冷凍ではなく冷蔵で保管することができる、という利点がある。冷蔵保管の場合は、絶縁性接着層の解凍は不要であり、必要なときに直ぐに使用することができるという利点がある。さらに、工程条件についても、塗布量の管理が不要で、濡れ広がりが小さく、這い上がりが小さく、厚みのばらつきが小さい等の利点がある。
【0048】
(変形例)
(1)第2実施形態においても、第1実施形態で説明した変形例を適用してよい。即ち、ペレット10はホール素子ではなく、ホールICでもよい。このような構成であっても、第1実施形態の効果(1)〜(5)に加え、第2実施形態の効果(1)〜(4)を奏する。
(2)また、
図4において、磁気センサ100ではなく、第2実施形態で説明した磁気センサ300を配線基板250に実装して、磁気センサ装置を構成してもよい。このような構成であっても、第1実施形態の効果(1)〜(5)に加え、第2実施形態の効果(1)〜(4)を奏する。
<その他>
本発明は、以上に記載した各実施形態に限定されうるものではない。当業者の知識に基づいて各実施形態に設計の変更等を加えることが可能であり、そのような変更等を加えた態様も本発明の範囲に含まれる。