(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676878
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】新規な難燃性エポキシ樹脂、該エポキシ樹脂を必須成分とするエポキシ樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/30 20060101AFI20150205BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20150205BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20150205BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
C08G59/30
H01L23/30 R
H05K1/03 610L
【請求項の数】7
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2009-515267(P2009-515267)
(86)(22)【出願日】2008年5月15日
(86)【国際出願番号】JP2008059410
(87)【国際公開番号】WO2008143309
(87)【国際公開日】20081127
【審査請求日】2011年3月16日
(31)【優先権主張番号】特願2007-133108(P2007-133108)
(32)【優先日】2007年5月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(72)【発明者】
【氏名】石原 一男
(72)【発明者】
【氏名】中西 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岸 典子
【審査官】
武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−265562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
H01L 23/29
H01L 23/31
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される特定の構造を有する窒素とリンを含有するエポキシ当量200g/eq〜1000g/eq
、リン含有率が0.2%〜8.0%且つ窒素含有率が0.1%〜4.0%である新規な難燃性エポキシ樹脂:
一般式(1):
【化1】
(式中、Xは後記一般式(2)〜(5)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化学構造を示し、
Yは後記一般式(6)〜(9)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化学構造を示し、そして
nは1〜10の整数を表す);
一般式(2):
【化2】
(式中、R1は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、そして
aは0,1,2,3,4又は5の整数を表す);
一般式(3):
【化3】
(式中、R1は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、
aは0,1,2,3
又は4の整数を示し、そして
Z
は酸素、硫黄、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、または後記一般式(10)〜
(14)、(16)〜(19)のいずれかを示す);
一般式(4):
【化4】
(式中、R1は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、そして
aは0,1,2,3又は4の整数を表す);
一般式(5):
【化5】
(式中、R1は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、そして
bは0,1,2,3,4,5,6又は7の整数を表す);
一般式(6):
【化6】
(式中、R2は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、
cは0,1,2,3又は4の整数を表し、
Gは後記一般式(20)〜(23)のいずれかを示し、1分子中に少なくとも1個は
後記一般式(21)または後記一般式(22)を示し、
dは1,2,3,4又は5の整数を表し、そして
c+d≦5である);
一般式(7):
【化7】
(式中、R2は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、
c1及びc2は0,1,2,3又は4の整数を表し、
dは1,2,3,4又は5の整数を表し、
eは0,1,2,3又は4の整数を表し、
c1+e≦4であり、
c2+d≦5であり、そして
Gは後記一般式(20)〜(23)のいずれかを示し、1分子中に少なくとも1個は後記一般式(21)または後記一般式(22)を示す)、
一般式(8):
【化8】
(式中、R2は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でも良く、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、
c1及びc2は0,1,2,3又は4の整数を表し、
eは0,1,2,3又は4の整数を表し、
fは1,2,3又は4の整数を表し、
c1+e≦4であり、
c2+f≦4であり、
Gは後記一般式(20)〜(23)のいずれかを示し、1分子中に少なくとも1個は後記一般式(21)または(22)を示し、
Zはメチレン、酸素、硫黄、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、または後記一般式(10)〜(19)のいずれかを示し、そして
mは1,2,3・・・の整数を表す);
一般式(9):
【化9】
(式中、R2は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、
Gは後記一般式(20)〜(23)のいずれかを示し、1分子中に少なくとも1個は後記一般式(21)または(22)を示し、
gは0,1,2,3,4,5又は6の整数を表し、
h1及びh2は0,1,2,3,4又は5の整数を表し、
iは1,2,3,4,5又は6の整数を表し、
g+h1≦6であり、
i+h2≦6であり、
Zはメチレン、酸素、硫黄、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、または後記式(10)〜(19)のいずれかを示し、そして
lは1,2,3・・・の整数を表す);
一般式(10);
【化10】
一般式(11);
【化11】
一般式(12);
【化12】
一般式(13);
【化13】
一般式(14);
【化14】
一般式(15);
【化15】
一般式(16);
【化16】
一般式(17);
【化17】
(式中、Dはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン又はビフェニルを示す)
一般式(18);
【化18】
(式中、qは0,1,2,3・・・の整数を表す)
一般式(19);
【化19】
(式中、Wはメチレン、硫黄、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、または一般式(10)〜(17)のいずれかを示す);
一般式(20);
【化20】
一般式(21):
【化21】
(式中、jは0又は1であり、そして
R3及びR4は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐鎖状又は環状であってもよく、或いはR3とR4が結合し、環状構造となっていてもよい);
一般式(22):
【化22】
(式中、jは0又は1であり、
R3及びR4は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐鎖状又は環状であっても良く、或いはR3とR4が結合し、環状構造となっていてもよく、
Bはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン及びこれらの炭化水素置換体を示し、そして
Yは一般式(6)〜(9)のいずれかを示す);
一般式(23):
【化23】
(式中、rは0,1,2,3…の整数を表し、
Eはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル及びこれらの炭化水素置換体、一般式(24)又は(25)を示し、そして
Yは一般式(6)〜(9)のいずれかを示す);
一般式(24):
【化24】
(式中、R2は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、
c1及びc2は0,1,2,3又は4の整数を表し、
Zはメチレン、酸素、硫黄、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、または一般式(10)〜(19)のいずれかを示し、そして
mは1,2,3・・・の整数を表す);
一般式(25):
【化25】
(式中、R2は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、
h1及びh2は0,1,2,3,4又は5の整数を表し、
Zはメチレン、酸素、硫黄、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、または一般式(10)〜(19)のいずれかを示し、そして
lは1,2,3・・・の整数を表す)。
【請求項2】
一般式(26)で示されるアミン化合物とエポキシ樹脂類と一般式(27)及び/又は一般式(28)で示される有機リン化合物類とを反応して得られる請求項1記載のエポキシ樹脂を含む新規難燃性エポキシ樹脂:
一般式(26):
【化26】
(式中、Xは一般式(2)〜(5)のいずれかを示し、そして
nは1,2,3,・・・の整数を表す);
一般式(27):
【化27】
(式中、jは0又は1であり、そして
R3及びR4は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐鎖状又は環状であってもよく、或いはR3とR4が結合し、環状構造となっていてもよい);
一般式(28):
【化28】
(式中、jは0又は1であり、
R3及びR4は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐鎖状又は環状であってもよく、或いはR3とR4が結合し、環状構造となっていてもよく、そして
Bはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン及びこれらの炭化水素置換体を示す)。
【請求項3】
請求項1又は2記載の新規難燃性エポキシ樹脂を必須成分とし、硬化剤を配合してなる新規難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載の新規難燃性エポキシ樹脂組成物を用いて得られるエポキシ樹脂積層板。
【請求項5】
請求項3記載の新規難燃性エポキシ樹脂組成物を用いて得られるエポキシ樹脂封止材。
【請求項6】
請求項3記載の新規難燃性エポキシ樹脂組成物を用いて得られるエポキシ樹脂注型材。
【請求項7】
請求項3記載の難燃性エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる新規難燃性エポキシ樹脂硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路基板に用いられる銅張積層板、フィルム材、樹脂付き銅箔などを製造する樹脂組成物や電子部品に用いられる封止材・成形材・注型材・接着剤・電気絶縁塗料用材料などとして有用な新規な難燃性エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は接着性、耐熱性、成形性に優れていることから電子部品、電気機器、自動車部品、FRP、スポーツ用品などに広範囲に使用されている。なかでも電子部品、電気機器に使用される銅張積層板や封止材には火災の防止・遅延といった安全性が強く要求されていることから、これまでこれらの特性を有する臭素化エポキシ樹脂などが使用されている。比重が大きいという問題を有しているものの、エポキシ樹脂にハロゲン、特に臭素を導入することにより難燃性が付与されることと、エポキシ基は高反応性を有し優れた硬化物が得られることから、臭素化エポキシ樹脂類は有用な電子、電気材料として位置づけられている。
【0003】
しかし、最近の電気機器を見るといわゆる軽薄短小を最重要視する傾向が次第に強くなってきている。このような社会的要求下において比重の大きいハロゲン化物は最近の軽量化傾向の観点からは好ましくない材料であり、また、高温で長期にわたって使用した場合、ハロゲン化物の解離が起こり、これによって配線腐食の発生の恐れがある。更に使用済みの電子部品、電気機器の燃焼の際にハロゲン化物などの有害物質を発生し、環境安全性の視点からハロゲンの利用が問題視されるようになり、これに代わる材料が研究されるようになった。本発明者はこの課題に鋭意取り組み、電子機器の軽薄短小化や配線腐食の問題、有害なハロゲン化物の発生の無いリン含有エポキシ樹脂を発明した。(特許文献1〜2)しかし、硬化物の耐熱性向上や難燃性の向上などが更に求められている。
【特許文献1】特開平11−166035号公報
【特許文献2】特開平11−279258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、ハロゲンを使用しないで難燃性を付与したリン含有エポキシ樹脂の、更なる耐熱性向上や難燃性の向上を達成すべく鋭意研究し、リンと窒素を含有した新規難燃性エポキシ樹脂により耐熱性向上や難燃性の向上ができることを見いだし、本発明を完成するに至ったものであり、電子回路基板に用いられる銅張積層板や電子部品に用いられる封止材・成形材・注型材・接着剤・電気絶縁塗料用材料・電気絶縁フィルムなどに適した、新規難燃性エポキシ樹脂、新規難燃性エポキシ樹脂組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明の要旨は、一般式(1)で示される窒素とリンを含有する新規難燃性エポキシ樹脂および該エポキシ樹脂を必須成分としてなる新規難燃性エポキシ樹脂組成物及びその硬化物である。
【0006】
具体的には、
一般式(1):
【化1】
【0007】
(式中、Xは後記一般式(2)〜(5)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化学構造を示し、
Yは後記一般式(6)〜(9)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化学構造を示し、そして
nは1〜10の整数を表す)
で示される特定の構造を有する窒素とリンを含有する新規な難燃性エポキシ樹脂を提供する。
上に引用した一般式(2)〜(28)は下記の構造を有する。
【0008】
一般式(2):
【化2】
【0009】
(式中、R1は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、そして
aは0,1,2,3,4又は5の整数を表す);
【0010】
一般式(3):
【化3】
【0011】
(式中、R1は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、
aは0,1,2,3又は4の整数を示し、そして
Z
は酸素、硫黄、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、または後記一般式(10)〜
(14)、(16)〜(19)のいずれかを示す);
【0012】
一般式(4):
【化4】
【0013】
(式中、R1は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、そして
aは0,1,2,3又は4の整数を表す);
【0014】
一般式(5):
【化5】
【0015】
(式中、R1は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、そして
bは0,1,2,3,4,5,6又は7の整数を表す);
【0016】
一般式(6):
【化6】
【0017】
(式中、R2は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、
cは0,1,2,3又は4の整数を表し、
Gは後記一般式(20)〜(23)のいずれかを示し、1分子中に少なくとも1個は式(21)または後記一般式(22)を示し、
dは1,2,3,4又は5の整数を表し、そして
c+d≦5である);
【0018】
一般式(7):
【化7】
【0019】
(式中、R2は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、
c1及びc2は0,1,2,3又は4の整数を表し、
dは1,2,3,4又は5の整数を表し、
eは0,1,2,3又は4の整数を表し、
c1+e≦4であり、
c2+d≦5であり、そして
Gは後記一般式(20)〜(23)のいずれかを示し、1分子中に少なくとも1個は後記一般式(21)または後記一般式(22)を示す)、
【0020】
一般式(8):
【化8】
【0021】
(式中、R2は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でも良く、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、
c1及びc2は0,1,2,3又は4の整数を表し、
eは0,1,2,3又は4の整数を表し、
fは1,2,3又は4の整数を表し、
c1+e≦4であり、
c2+f≦4であり、
Gは後記一般式(20)〜(23)のいずれかを示し、1分子中に少なくとも1個は後記一般式(21)または(22)を示し、
Zはメチレン、酸素、硫黄、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、または後記一般式(10)〜(19)のいずれかを示し、そして
mは1,2,3・・・の整数を表す);
【0022】
一般式(9):
【化9】
【0023】
(式中、R2は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、
Gは後記一般式(20)〜(22)のいずれかを示し、1分子中に少なくとも1個は後記一般式(21)または(22)を示し、
gは0,1,2,3,4,5又は6の整数を表し、
h1及びh2は0,1,2,3,4又は5の整数を表し、
iは1,2,3,4,5又は6の整数を表し、
g+h1≦6であり、
i+h2≦6であり、
Zはメチレン、酸素、硫黄、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、または後記式(10)〜(19)のいずれかを示し、そして
lは1,2,3・・・の整数を表す);
【0024】
一般式(10);
【化10】
【0025】
一般式(11);
【化11】
【0026】
一般式(12);
【化12】
【0027】
一般式(13);
【化13】
【0028】
一般式(14);
【化14】
【0029】
一般式(15);
【化15】
【0030】
一般式(16);
【化16】
【0031】
一般式(17);
【化17】
【0032】
(式中、Dはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン又はビフェニルを示す)
【0033】
一般式(18);
【化18】
(式中、qは0,1,2,3・・・の整数を表す)
【0034】
一般式(19);
【化19】
【0035】
(式中、Wはメチレン、硫黄、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、または一般式(10)〜(17)のいずれかを示す);
【0036】
一般式(20);
【化20】
【0037】
一般式(21):
【化21】
【0038】
(式中、jは0又は1であり、そして
R3及びR4は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐鎖状又は環状であってもよく、或いはR3とR4が結合し、環状構造となっていてもよい);
【0039】
一般式(22):
【化22】
【0040】
(式中、jは0又は1であり、
R3及びR4は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐鎖状又は環状であっても良く、或いはR3とR4が結合し、環状構造となっていてもよく、
Bはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン及びこれらの炭化水素置換体を示し、そして
Yは一般式(6)〜(9)のいずれかを示す);
【0041】
一般式(23):
【化23】
【0042】
(式中、rは0,1,2,3…の整数を表わし、
Eはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル及びこれらの炭化水素置換体、一般式(25)又は(24)を示し、そして
Yは一般式(6)〜(9)のいずれかを示す);
【0043】
一般式(24):
【化24】
【0044】
(式中、R2は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、
c1及びc2は0,1,2,3又は4の整数を表し、
Zはメチレン、酸素、硫黄、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、または一般式(10)〜(19)のいずれかを示し、そして
mは1,2,3・・・の整数を表す);
【0045】
一般式(25):
【化25】
【0046】
(式中、R2は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、
h1及びh2は0,1,2,3,4又は5の整数を表し、
Zはメチレン、酸素、硫黄、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、または一般式(10)〜(19)のいずれかを示し、そして
lは1,2,3・・・の整数を表す)。
【0047】
本発明はまた、一般式(26)で示されるアミン化合物とエポキシ樹脂類と一般式(27)及び/又は一般式(28)で示される有機リン化合物類とを反応して得られる請求項1記載の化合物を含む新規難燃性エポキシ樹脂を提供する。ここで、一般式(26)〜(28)は下記の式により表される。
【0048】
一般式(26):
【化26】
【0049】
(式中、Xは一般式(2)〜(5)のいずれかを示し、そして
nは1,2,3,・・・の整数を表す);
【0050】
一般式(27):
【化27】
【0051】
(式中、jは0又は1であり、そして
R3及びR4は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐鎖状又は環状であってもよく、或いはR3とR4が結合し、環状構造となっていてもよい);
【0052】
一般式(28):
【化28】
【0053】
(式中、jは0又は1であり、
R3及びR4は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐鎖状又は環状であってもよく、或いはR3とR4が結合し、環状構造となっていてもよく、そして
Bはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン及びこれらの炭化水素置換体を示す)。
【0054】
上記のエポキシ樹脂において、好ましくは、エポキシ当量は200g/eq〜1000g/eq、リン含有率は0.2%〜8.0%且つ窒素含有率は0.1%〜4.0%である。
本発明はまた、上記の新規難燃性エポキシ樹脂を必須成分とし、硬化剤を配合してなる新規難燃性エポキシ樹脂組成物を提供する。
本発明はまた、上記の新規難燃性エポキシ樹脂組成物を用いて得られるエポキシ樹脂積層板を提供する。
本発明はまた、上記の新規難燃性エポキシ樹脂組成物を用いて得られるエポキシ樹脂封止材を提供する。
【0055】
本発明はまた、上記の新規難燃性エポキシ樹脂組成物を用いて得られるエポキシ樹脂注型材を提供する。
本発明はまた、上記の難燃性エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる新規難燃性エポキシ樹脂硬化物を提供する。
前記新規難燃性エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物は、電子回路基板に用いられる銅張積層板の製造用樹脂組成物や電子部品に用いられる封止材、成形材、注型材、接着剤、電気絶縁塗料用材料などとして有用である。
【発明の効果】
【0056】
後述の実施例及び比較例との対比から明らかなように、本発明の新規難燃性エポキシ樹脂、新規難燃性エポキシ樹脂組成物は低いリン含有率で難燃性を有し、併せて耐熱性・反応性等の物性が優れているため、特に電子回路基板に用いられる銅張積層板をはじめとする電気絶縁材料に最適であり、電子部品に用いられる封止材・成形材・注型材・接着剤・フィルム材に適しており、更に電気絶縁塗料用材料としても有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
本発明について詳細に述べる。一般式(1)で示される新規エポキシ樹脂は同一分子内にリンと窒素を含有していることから難燃性が高くなっている。また、窒素の導入の効果として、耐熱性も高くなっており、反応性も著しく改良されている。この様な新規エポキシ樹脂を合成する方法としては一般式(26)に示されるアミン化合物と、一般式(27)及び/または一般式(28)で示される有機リン含有化合物、エポキシ樹脂類を反応することで得ることが出来る。
【0058】
本発明に用いる一般式(26)に示されるアミン化合物の具体例としては、(X)が一般式(2)の例としてアニリン、フェニレンジアミン、トルイジン、キシリジン、ジエチルトルエンジアミン等が挙げられる。(X)が一般式(3)、(4)の例とし
てジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジフェニルケトン、ジアミノジフェニルスルフィド
、ビス(アミノフェニル)フルオレン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノベンズアニリド、ジアミノビフェニル、ジメチルジアミノビフェニル、ビフェニルテトラアミン、ビスアミノフェニルアントラセン、ビスアミノフェノキシベンゼン、ビスアミノフェノキシフェニルエーテル、ビスアミノフェノキシビフェニル、ビスアミノフェノキシフェニルスルホン、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン等が挙げられる。(X)が一般式(5)の例としてジアミノナフタレン等が挙げられる。また、これらの炭化水素置換基を持った化合物や異性体等も挙げられる。また、これらに限定されるものではなく一般式(26)で示されるアミン化合物全般を示す物であり2種類以上併用しても良い。
【0059】
本発明に用いる一般式(27)で示される有機リン類とは、キノン類やグリシジル基、ビニル基などの官能基と反応しうる活性な水素がリン原子に結合した有機リン化合物類であり、具体的にはHCA(三光化学株式会社製 9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド)、ジフェニルホスフィンオキシド、CPHO(日本化学工業株式会社製 シクロオクチレンホスフィンオキシド)等が挙げられる。
【0060】
本発明に用いる一般式(28)に示される有機リン化合物類とは、一般式(27)に示される有機リン化合物類の活性な水素とキノン類とを反応して得られるリン含有フェノール化合物であり、具体的にはHCA-HQ(三光化学株式会社製 10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド)、10−(2,7−ジヒドロキシナフチル)−10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、PPQ(北興化学工業株式会社 ジフェニルホスフィニルハイドロキノン)、ジフェニルホスフィニルナフトキノン、CPHO-HQ(日本化学工業株式会社製 シクロオクチレンホスフィニル−1,4−ベンゼンジオール)、シクロオクチレンホスフィニル−1,4−ナフタレンジオール、特開2002-265562で開示されているリン含有フェノール化合物等が挙げられる。本発明では一般式(27)及び/又は一般式(28)で示されるものであれば良く、これらに限定されるものではなく、また、2種類以上使用しても良い。
【0061】
リン原子に結合した活性な水素とキノン類とを反応して得られるリン含有フェノール化合物は、例えば特開平5-214068号公報、ロシアの一般的な雑誌である(Zh.Obshch.Khim.),42(11),第2415-2418 頁(1972)や特開昭60-126293号公報、特開昭61-236787号公報、特開平5-331179号公報で示される方法により反応される。この際、生成した多官能のリン含有フェノール化合物だけを取り出すには精製や再結晶などの操作が必要である。しかし、活性な水素がリン原子に結合した有機リン化合物を適度に残存させるとその様な操作が不要となるばかりか、エポキシ樹脂のリン含有率を高めつつ反応後のエポキシ樹脂粘度を低下させることも出来る。
【0062】
一般式(26)に示されるアミン化合物と、一般式(27)及び/または一般式(28)で示される有機リン含有化合物と反応を行うエポキシ樹脂類はグリシジルエーテル基をもったものが望ましい。
【0063】
具体的にはエポトート YDC-1312、ZX-1027(東都化成株式会社製 ハイドロキノン型エポキシ樹脂)、ZX-1251(東都化成株式会社製 ビフェノール型エポキシ樹脂)、エポトート YD-127、エポトート YD-128、エポトート YD-8125、エポトート YD-825GSエポトート YD-011、エポトート YD-900、エポトート YD-901(東都化成株式会社製 BPA型エポキシ樹脂)、エポトート YDF-170、エポトート YDF-8170、エポトート YDF-870GS、エポトート YDF-2001(東都化成株式会社製 BPF型エポキシ樹脂)、エポトート YDPN-638(東都化成株式会社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトート YDCN-701(東都化成株式会社製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、ZX-1201(東都化成株式会社製 ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂)、NC-3000(日本化薬株式会社製 ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂)、EPPN-501H、EPPN-502H(日本化薬株式会社製 多官能エポキシ樹脂)ZX-1355(東都化成株式会社製 ナフタレンジオール型エポキシ樹脂)、ESN-155、ESN-185V、ESN-175(東都化成株式会社製 βナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、ESN-355、ESN-375(東都化成株式会社製 ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、ESN-475V、ESN-485(東都化成株式会社製 αナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく2種類以上併用しても良い。
【0064】
エポキシ樹脂類と一般式(26)に示されるアミン化合物と、一般式(27)及び/または一般式(28)で示される有機リン含有化合物との反応は公知の方法で行うことが可能であり、反応温度として100℃〜200℃より好ましくは120℃〜180℃で攪拌下行うことができる。エポキシ樹脂類とアミン化合物、あるいは有機リン化合物を反応させた後、残りのアミン化合物、あるいは有機リン化合物を反応しても良く、同時にエポキシ樹脂類とアミン化合物と有機リン化合物を同時に反応しても良い。
【0065】
反応時間はエポキシ当量の測定を行って決定することが出来る。測定にはJIS K7236の方法により測定可能である。エポキシ樹脂類とアミン化合物、有機リン含有化合物との反応によりエポキシ当量は大きくなっていき、理論エポキシ当量との比較により反応終点を決定できる。
【0066】
また、反応の速度が遅い場合、必要に応じて触媒を使用して生産性の改善を計ることができる。具体的にはベンジルジメチルアミン等の第3級アミン類、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類、2メチルイミダゾール、2エチル4メチルイミダゾール等のイミダゾール類等各種触媒が使用可能である。
【0067】
反応には本発明の物性を損なわない範囲に於いて多価フェノール類等の変性剤を同時に用いても良い。多価フェノール類としてはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、ビフェノール等の二価フェノール類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、フェノールアラルキル樹脂などの多価フェノール類が挙げられる。
【0068】
本発明組成物の硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂を代表とする各種多価フェノール樹脂類や酸無水物類、DICYを代表とするアミン類、ヒドラジッド類、酸性ポリエステル類等の通常使用されるエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができ、これらの硬化剤は1種類だけ使用しても2種類以上使用しても良い。
【0069】
本発明組成物には必要に応じて第3級アミン、第4級アンモニウム塩、ホスフィン類、イミダゾール類等の硬化促進剤を配合することができる。また、必要に応じて無機充填剤やガラスクロス・アラミド繊維などの補強材、充填材、顔料等を配合しても良い。
【0070】
本発明の新規難燃性エポキシ樹脂を使用して得られた積層板の特性評価を行った結果、難熱性が高く、耐熱性が高いことがわかった。このことからハロゲン化物を含有しないで難燃性であるエポキシ樹脂組成物、またその硬化物を得ることが可能であり、該エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物は、電子回路基板に用いられる銅張積層板の製造用樹脂組成物や電子部品に用いられる封止材、成形材、注型材、接着剤、フィルム材、電気絶縁塗料用材料などとして有用であることがわかった。
【実施例】
【0071】
一般的事項
実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。積層板は以下の条件により作成した。得られたエポキシ樹脂、硬化剤、必要に応じて硬化促進剤を用いて、表1に示す組成を有する樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製 WEA7628)に含浸させた後、150℃で5分間加熱することにより乾燥し、プリプレグを得た。
【0072】
このプリプレグを4枚積層し、その両側に厚み35μmの銅箔(三井金属鉱業株式会社製 3EC−III )を配置して積層物を作製した。この積層物を170℃、20kgf/cm
2の条件で70分間、加熱加圧成形することにより積層板を作製した。難燃性はUL(Underwriter Laboratorics)規格に準じて測定を行った。銅箔剥離強さはJIS C 6481 5.7に準じて測定した。また、硬化物のガラス転移温度はエスエスアイナノテクノロジー株式会社製 Exster6000 DSCで10℃/分の昇温速度で測定を行った。
【0073】
実施例1.
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、YDPN-638 575.5重量部、YDF-170 250.0重量部、HCA 140.0重量部、エタキュアー100(エチルコーポレーション製 ジエチルトルエンジアミン)34.5重量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌を行い加熱して溶解した。トリフェニルホスフィンを0.1重量部添加して150℃で4時間反応した。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は275.9g/eq、リン含有率は2.0重量%であった。得られたエポキシ樹脂のGPC、FTIRを
図1,
図2に示す。得られたエポキシ樹脂に表1に示した割合で硬化剤(DICY)及び硬化促進剤(2E4MZ)を添加し、実施例の一般的事項の項に記載した方法により積層板評価を行った。その積層板評価結果を表1に示す。
【0074】
実施例2.
実施例1と同様な装置にYD-128 300.0重量部、YDPN-638 500.4重量部、HCA 154.6重量部、BPA(新日鐵科学株式会社製 ビスフェノールA)15.0重量部、エタキュアー100 30.0重量部,トリフェニルホスフィン 0.2重量部とした以外は実施例1と同じ操作を行った。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は299.8g/eq、リン含有率は2.2重量%であった。得られたエポキシ樹脂に表1に示した割合で硬化剤(DICY)及び硬化促進剤(2E4MZ)を添加し、実施例の一般的事項の項に記載した方法により積層板評価を行った。その積層板評価結果を表1に示す。
【0075】
実施例3.
実施例1と同様な装置にYD-128 299.6重量部、YDPN-638 504.5重量部、HCA 143.7重量部、HCA-HQ 16.0重量部、BPA 15.0重量部、エタキュアー100 21.2重量部,トリフェニルホスフィン 0.2重量部とした以外は実施例1と同じ操作を行った。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は301.8g/eq、リン含有率は2.2重量%であった。得られたエポキシ樹脂に表1に示した割合で硬化剤(DICY)及び硬化促進剤(2E4MZ)を添加し、実施例の一般的事項の項に記載した方法により積層板評価を行った。その積層板評価結果を表1に示す。
【0076】
実施例4.
実施例1と同様な装置にHCA 42.0重量部、トルエン98.0重量部を仕込み加熱して溶解した。1,4−ナフトキノン 27.7重量部を反応発熱に注意しながら分割して投入した。反応発熱がほとんど無くなってから昇温し、還流温度で2時間保持して反応を進めた。ESN-485 895.3重量部とTSB-HB(和歌山精化工業株式会社製 3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル)35.0重量部を仕込み、溶剤を除去しながら溶融した。トリフェニルホスフィン 0.1重量部配合して160℃で4時間反応した。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は458.3g/eq、リン含有率は0.6重量%であった。得られたエポキシ樹脂のGPC、FTIRを
図3,
図4に示す。得られたエポキシ樹脂に表1に示した割合で硬化剤(DICY)及び硬化促進剤(2E4MZ)を添加し、実施例の一般的事項の項に記載した方法により積層板評価を行った。その積層板評価結果を表1に示す。
【0077】
比較例1.
実施例1と同様な装置にYDF-170 250.0重量部、YDPN-638 547.5重量部、HCA 140.0重量部、BRG-557(昭和高分子株式会社製 フェノールノボラック樹脂) 62.5重量部、トリフェニルホスフィン 0.2重量部とした以外は実施例1と同じ操作を行った。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は297.5g/eq、リン含有率は2.0重量%であった。得られたエポキシ樹脂に表1に示した割合で硬化剤(DICY)及び硬化促進剤(2E4MZ)を添加し、実施例の一般的事項の項に記載した方法により積層板評価を行った。その積層板評価結果を表1に示す。
【0078】
比較例2.
実施例1と同様な装置にYDPN-638 761.0重量部、HCA 209.0重量部、BPA 30.0重量部、トリフェニルホスフィン 0.2重量部とした以外は実施例1と同じ操作を行った。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は327.4g/eq、リン含有率は3.0重量%であった。得られたエポキシ樹脂に表1に示した割合で硬化剤(DICY)及び硬化促進剤(2E4MZ)を添加し、実施例の一般的事項の項に記載した方法により積層板評価を行った。その積層板評価結果を表1に示す。
【0079】
比較例3.
実施例1と同様な装置にHCA 42.0重量部、トルエン98.0重量部を仕込み加熱して溶解した。1,4−ナフトキノン 27.7重量部を反応発熱に注意しながら分割して投入した。反応発熱がほとんど無くなってから昇温し、還流温度で2時間保持して反応を進めた。ESN-485 930.3重量部を仕込み、溶剤を除去しながら溶融した。トリフェニルホスフィン 0.1重量部配合して160℃で4時間反応した。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は315.2g/eq、リン含有率は0.6重量%であった。得られたエポキシ樹脂に表1に示した割合で硬化剤(DICY)及び硬化促進剤(2E4MZ)を添加し、実施例の一般的事項の項に記載した方法により積層板評価を行った。その積層板評価結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
以上、実施例及び比較例の試験結果及び、表1の比較例に記載されている物性値から明らかなように、本発明の新規難燃性エポキシ樹脂を使用することでリン含有が同等でも高い難燃性が得られ、耐熱性も高い。実施例1と比較例1の比較においてエタキュア100を反応して得られる本発明エポキシ樹脂はリン含有率が変わらないにもかかわらず高い難燃性を有し、ガラス転移温度の比較から耐熱性も高くなっている。また、実施例4と比較例3においても同様にTSB-HBを反応して得られる本発明エポキシ樹脂は難燃性、耐熱性とも著しく改良されている。
【0082】
また、使用した硬化触媒2E4MZの配合量で解るように本発明のエポキシ樹脂は反応性をも改良されていることが解る。この様に本発明の新規難燃性エポキシ樹脂、新規難燃性エポキシ樹脂組成物は低いリン含有率で難燃性を有し、併せて耐熱性・反応性等の物性が優れているため、特に電子回路基板に用いられる銅張積層板をはじめとする電気絶縁材料に最適であり、電子部品に用いられる封止材・成形材・注型材・接着剤・フィルム材に適しており、更に電気絶縁塗料用材料としても有効である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によって得られた新規難燃性エポキシ樹脂、新規難燃性エポキシ樹脂組成物は低いリン含有率で難燃性を有し、耐熱性・反応性等の物性が優れているため、特に電子回路基板に用いられる銅張積層板をはじめとする電気絶縁材料、電子部品に用いられる封止材・成形材・注型材・接着剤・フィルム剤として適しており、更に電気絶縁塗料用材料として適している。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1】
図1は、実施例1において得られたエポキシ樹脂のGPC図を示す。
【
図2】
図2は、実施例1において得られたエポキシ樹脂のFTIR図を示す。
【
図3】
図3は、実施例4において得られたエポキシ樹脂のGPC図を示す。
【
図4】
図4は、実施例4において得られたエポキシ樹脂のFTIR図を示す。