特許第5677777号(P5677777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677777
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】集光器装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/252 20060101AFI20150205BHJP
   G01N 21/62 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   H01J37/252 Z
   G01N21/62 A
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2010-162715(P2010-162715)
(22)【出願日】2010年7月20日
(65)【公開番号】特開2012-28019(P2012-28019A)
(43)【公開日】2012年2月9日
【審査請求日】2013年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100113468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】粟田 正吾
(72)【発明者】
【氏名】新井 重俊
【審査官】 桐畑 幸▲廣▼
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−107335(JP,A)
【文献】 特開2010−040505(JP,A)
【文献】 特開昭60−230345(JP,A)
【文献】 特開2004−093526(JP,A)
【文献】 特開2007−010392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/252
G01N 21/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギ線照射系と測定試料との間に介在して設けられ、エネルギ線が照射された測定試料から出る光を集光する集光器装置であって、
前記測定試料から出る光を集光する集光ミラーと、
前記集光ミラーを有する保持シャフトと、
直交するX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向それぞれに移動可能にする移動ガイドを有し、前記保持シャフトを当該直交3軸方向に移動させる3軸方向移動機構と、
前記エネルギ線の照射方向及び前記保持シャフトの中心軸に直交する回転軸周りに回転可能にするチルトガイドを有し、前記保持シャフトを当該チルトガイドに沿って回転軸周りに回転させるチルト機構と、
前記チルト機構とは別に設けられ、前記保持シャフトの中心軸周りに回転可能にするローテーションガイドを有し、前記保持シャフトを当該ローテーションガイドに沿って中心軸周りに回転させるローテーション機構とを備え
前記チルト機構及び前記ローテーション機構が、それぞれ独立して前記保持シャフトを回転させるように構成されている集光器装置。
【請求項2】
前記3軸方向移動機構及び前記ローテーション機構が、前記チルト機構による回転移動に伴って移動するものである請求項1記載の集光器装置。
【請求項3】
前記測定試料が収容されるチャンバに取り付けられる取付フランジを有し、
前記取付フランジを挿通するように前記保持シャフトが設けられて、前記集光ミラーが前記チャンバ内に配置されるとともに、前記保持シャフトの外側端部が前記チャンバ外に延出するように構成されており、
前記取付フランジに前記チルト機構が連結されるとともに、前記3軸方向移動機構が、前記保持シャフトの外側端部に設けられている請求項1又は2記載の集光器装置。
【請求項4】
前記ローテーション機構が、前記チルト機構のチルトガイドによりチルト方向に移動するチルト可動体に連結されており、
前記3軸方向移動機構が、前記ローテーション機構のローテーションガイドによりローテーション方向に移動するローテーション可動体に連結されている請求項3記載の集光器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子線やイオンビーム等が照射された測定試料から出る例えばカソードルミネッセンスやフォトルミネッセンス等の光を集光して検出光学系に導くための集光器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、測定試料に電子線を照射することにより生じるカソードルミネッセンス(CL)を集光して、当該測定試料を分析するカソードルミネッセンス分析装置がある。このカソードルミネッセンス分析装置には、測定試料から出るカソードルミネッセンスを集光するための集光ミラーと、当該集光ミラーを保持する保持シャフトとを有する集光器装置が用いられている。
【0003】
この集光器装置は、直交する3軸方向(X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向)だけでなく、チルト方向及びローテーション方向の5軸調整機構を有している。なお、チルト方向は、電子線の照射方向及び保持シャフトの中心軸方向(X軸方向)に直交する回転軸回りの回転方向であり、ローテーション方向は、保持シャフトの中心軸方向に沿った回転軸周りの回転方向である。そして、この5軸調整機構により集光ミラーの直交3軸方向、チルト方向及びローテーション方向の位置決めが行われている。
【0004】
しかしながら、従来の5軸調整機構は、真空チャンバに取り付けられて真空雰囲気下で操作されるもののため、各方向それぞれにガイドを有さず、集光ミラーの位置調整が煩雑となるだけでなく位置再現性が悪いという問題がある。
【0005】
具体的に従来の集光器装置に組む込まれたチルト調整機構は、図7に示すように、保持シャフトが設けられた可動体を120度等配された3軸の調整軸の各軸を進退移動させることにより、集光ミラーをチルト方向に調整するものである。このチルト調整機構では、各調整軸の移動に伴い、集光ミラーが電子線の照射方向に沿った上下方向に回転するだけでなく、保持シャフトの中心軸方向に直交する左右方向(X軸方向)に回転してしまう。そうすると、集光ミラーのチルト方向のみを意図した調整であっても、X軸方向へ移動してしまうという問題がある。その結果、集光ミラーの位置調整が非常に複雑かつ煩雑となってしまう。したがって、集光ミラーの調整を行う作業者は、上記調整機構の動作を理解した上で操作を行う必要があり、熟練を要するだけでなく、集光ミラーの調整時間が半日〜1日を要するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−93526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであり、集光ミラーの位置調整の簡単化、位置調整における位置再現性の向上及び集光ミラーの調整時間の短縮を実現することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る集光器装置は、エネルギ線照射系と測定試料との間に介在して設けられ、エネルギ線が照射された測定試料から出る光を集光する集光器装置であって、前記測定試料から出る光を集光する集光ミラーと、前記集光ミラーを有する保持シャフトと、直交するX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向それぞれに移動可能にする移動ガイドを有し、前記保持シャフトを当該直交3軸方向に移動させる3軸方向移動機構と、前記エネルギ線の照射方向及び前記保持シャフトの中心軸に直交する回転軸周りに回転可能にするチルトガイドを有し、前記保持シャフトを当該チルトガイドに沿って回転軸周りに回転させるチルト機構と、前記チルト機構とは別に設けられ、前記保持シャフトの中心軸周りに回転可能にするローテーションガイドを有し、前記保持シャフトを当該ローテーションガイドに沿って中心軸周りに回転させるローテーション機構とを備え、前記チルト機構及び前記ローテーション機構が、それぞれ独立して前記保持シャフトを回転させるように構成されているていることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、3軸方向移動機構においてはX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向それぞれに移動ガイドを有し、チルト機構においてはチルトガイドを有し、ローテーション機構においてはローテーションガイドを有しているので、集光ミラーをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、チルト方向及びローテーション方向それぞれに独立して調整可能とすることができる。したがって、集光ミラーの位置調整を簡単化することができるとともに、その位置再現性を向上させることができ、調整時間を短縮することもできる。
【0010】
チルト機構によりチルト方向に位置調整された集光ミラーの姿勢を保持したまま、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びローテーション方向の位置調整を可能にするためには、前記3軸方向移動機構及び前記ローテーション機構が、前記チルト機構による回転移動に伴って移動するものであることが望ましい。
【0011】
チルト機構における集光ミラーのチルト方向の位置決めにおいて集光器装置の自重を利用可能にするとともに、頻繁に使用され得る3軸方向移動機構を操作し易くするためには、前記測定試料が収容されるチャンバに取り付けられる取付フランジを有し、前記取付フランジを挿通するように前記保持シャフトが設けられて、前記集光ミラーが前記チャンバ内に配置されるとともに、前記保持シャフトの外側端部が前記チャンバ外に延出するように構成されており、前記取付フランジに前記チルト機構が連結されるとともに、前記3軸方向移動機構が、前記保持シャフトの外側端部に設けられていることが望ましい。また、チルト機構を取付フランジ又はその近傍に連結することによって、チルト機構の回転軸をチャンバ側に位置させて集光ミラーのチルト方向の移動半径を小さくすることができ、集光ミラーのチルト方向の微調整を容易にすることもできる。
【0012】
上記同様に3軸方向移動機構を操作し易くするとともに、ローテーション機構をチルト機構近傍に配置することによって、5軸方向移動機構の構成を簡単にするためには、前記ローテーション機構が、前記チルト機構のチルトガイドによりチルト方向に移動するチルト可動体に連結されており、前記3軸方向移動機構が、前記ローテーション機構のローテーションガイドによりローテーション方向に移動するローテーション可動体に連結されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
このように構成した本発明によれば、集光ミラーの位置調整の簡単化、位置調整における位置再現性の向上、及び集光ミラーの調整時間の短縮を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の一実施形態に係る試料分析装置の模式的構成図である。
図2】同実施形態の集光器装置の斜視図である。
図3】同実施形態の集光器装置の側面図である。
図4】同実施形態の集光器装置の断面図である。
図5】同実施形態の保持シャフトの斜視図である。
図6】同実施形態の保持シャフトの具体的構成を示す図である。
図7】従来の集光器装置のチルト調整機構を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明に係る試料分析装置100の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
<装置構成>
本実施形態に係る試料分析装置100は、エネルギ線である電子線EBを半導体ウエハ等の測定試料W(以下、単に試料Wという。)に照射することにより試料Wから生じるカソードルミネッセンスCLを用いて、試料Wの微小領域における物性評価や半導体素子の解析を行うもの、いわゆるカソードルミネッセンス分析装置である。
【0017】
具体的にこのものは、図1に示すように、試料Wを収容する真空チャンバ2と、その真空チャンバ2内に収容された試料Wにエネルギ線である電子線EBを照射するエネルギ線照射系たる電子線照射装置3と、電子線EBの照射によって試料Wから発生するカソードルミネッセンスCLを分光し、検出する光検出部たる検出装置4と、その検出装置4からの出力信号を受信し、前記試料Wを評価等(例えば応力測定)するために所定の演算処理を行う情報処理装置5とを備えている。
【0018】
以下、各部2〜5について図1を参照して説明する。
【0019】
真空チャンバ2は、電子線EBが照射される試料Wを収容する容器と、当該容器内を真空にする真空ポンプとを有する。また、真空チャンバ2は、試料Wが載置される試料台201と、この試料台201をXYZ方向に駆動する駆動機構(図示しない)とを備えている。
【0020】
電子線照射装置3は、例えば熱電界放出型の電子銃31と、電子銃31から射出された電子線EBを試料Wの所定部位に収束させるレンズ機構及び電子線EBを走査させるための走査機構等からなる電子線制御機構32と、電子銃31及び電子線制御機構32を内部に有する鏡筒33とを備えている。この鏡筒33の下端部は、前記真空チャンバ2の上壁に連続して設けられている。
【0021】
検出装置4は、集光ミラー41、光ファイバ42、分光部43及びセンシング部44を備えている。
【0022】
集光ミラー41は、鏡筒33及び試料Wの間に設けられ、試料Wから発生するカソードルミネッセンスCLを最小限の損失で集めて光ファイバ42に導くものである。この集光ミラー44は、鏡筒33で収束された電子線EBを通過させ、その電子線EBを試料Wに照射するための電子線通過孔と、その電子線通過孔の軸線上に焦点が設定されたミラー面とを有する。なお、ミラー面は、放物面鏡又は楕円面鏡などが考えられるが本実施形態では楕円面鏡を用いている。
【0023】
光ファイバ42は、集光ミラー41により集光されたカソードルミネッセンスCLを分光部43に転送するものである。この光ファイバ42の受光面である先端面は、集光ミラー41の焦点に配置されるとともに、後端部分が分光部43に接続される。
【0024】
分光部43は、前記集光ミラー41で集光されたカソードルミネッセンスCLを単色光に分離するもので、例えばモノクロメータを利用して構成している。センシング部44は、光検出部であり、前記分光部43で波長毎に複数に分光された各単色光の強度をそれぞれ測定し、各単色光の強度に応じた値の電流値(又は電圧値)を有する出力信号を出力する。
【0025】
情報処理装置5は、構造としては、CPU、メモリ、入出力インターフェイス、AD変換器、入力手段等からなる汎用又は専用のコンピュータである。そして、前記メモリの所定領域に格納してあるプログラムに基づいてCPUやその周辺機器が作動することにより、この情報処理装置5が、前記検出装置4からの出力信号を受信し、走査した各測定ポイントでの応力等を算出する。
【0026】
しかして本実施形態の試料分析装置100は、図2図4に示すように、集光ミラー41及び光ファイバ42を保持するとともに、集光ミラー41を5軸独立して調整可能な位置調整機能を有する集光器装置Xを備えている。
【0027】
この集光器装置Xは、前記集光ミラー41と、前記光ファイバ42と、それら集光ミラー41及び光ファイバ42を保持する保持シャフト6と、保持シャフト6を真空チャンバ2に取り付けるための取付フランジ7と、保持シャフト6及び取付フランジ7の間に介在して設けられて、保持シャフト6を直交する3軸方向(X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向)に移動させる3軸方向移動機構8と、保持シャフト6及び取付フランジ7の間に介在して設けられ、保持シャフト6をチルト方向に沿って回転させるチルト機構9と、保持シャフト6及び取付フランジ7の間に介在して設けられ、前記保持シャフト6をローテンション方向に沿って回転させるローテーション機構10とを有する。
【0028】
保持シャフト6は、図5及び図6に示すように、先端部に集光ミラー41が取り付けられるミラー保持部61と、ミラー保持部61の後端部に連結されるとともに、前記集光ミラー41により集光された光を受光する光ファイバ42を保持するシャフト本体62とを有する。なお、保持シャフト6により保持されている集光ミラー41及び光ファイバ42の相対位置関係は一定である。
【0029】
ミラー保持部61は、先端部に平面視概略コの字形状をなす保持枠611と当該保持枠611に連設された概略円筒状をなす保持部本体612とからなる。概略コの字形状の保持枠611の内部に集光ミラ41ーが固定される。具体的には、保持枠611の先端壁611aに集光ミラー41がねじ固定される。
【0030】
シャフト本体62は、概略円筒形状をなし、内部に光ファイバ42を収容するものである。また、シャフト本体62の先端部には透光窓62Wが設けられており、当該透光窓62Wを介して集光ミラー41からの集光光が光ファイバ42の受光面に入射する。なお、透光窓62Wは、石英ガラス(SiO)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化リチウム(LiF)など、目的の波長に合わせて適宜選択可能である。また、シャフト本体62の後端部には、3軸方向移動機構8(詳細にはZ軸方向移動機構83の可動体832)に固定されるフランジ62Fが設けられている。
【0031】
ここで集光ミラー41の焦点と光ファイバ42の受光面との位置決め構造について説明する。本実施形態では、集光ミラー41が取り付けられるミラー保持部61の先端壁611aと、シャフト本体62の透光窓62Wとの距離を、集光ミラー41の焦点距離に合わせて設定する。また、集光ミラー41に設けられた固定用ねじ孔と、ミラー保持部61の先端壁611aに設けられた位置決め固定用ピンとを最適な機械精度で製作する。そして、集光ミラー41を先端壁611aに固定するだけで、集光ミラー41の焦点が光ファイバ42の受光面と一致するように構成している。これにより、集光ミラー41と光ファイバ42の受光面との光軸調整及び組み立て誤差を可及的に低減する構成としている。
【0032】
取付フランジ7は、真空チャンバ2の側壁に設けられた取付孔に取り付けられるものである。この取付フランジ7には、保持シャフト6、3軸方向移動機構8、チルト機構9及びローテーション機構10が一体的に設けられている。そして、取付フランジ7を真空チャンバ2に固定することにより、保持シャフト6、3軸方向移動機構8、チルト機構9及びローテーション機構10が真空チャンバ2に取り付けられる。
【0033】
具体的に取付フランジ7は、概略回転体形状をなす円筒形状をなし、真空チャンバ2の側壁にねじ固定されるフランジ部71と、当該フランジ部71の後端面に連続して設けられた円筒部72とを有する。そして、この円筒部72に後述するチルト機構9が設けられる。また、この取付フランジ7を挿通するように保持シャフト6が配置されて、保持シャフト6の先端部に設けられた集光ミラー41が真空チャンバ2内に配置され、保持シャフト6の後端部がチャンバ2外に延出するように構成されている。そして、この保持シャフト6の後端部に3軸方向移動機構8が設けられる。
【0034】
なお、取付フランジ7は、集光器装置Xに対して着脱可能に構成されており、この取付フランジ7を交換することで、種々のタイプの真空チャンバ2に対応可能としている。これにより、取付フランジ7を交換するだけで、集光器装置Xのその他の部分に変更を加えることなく、種々のタイプの真空チャンバ2に対応させることができ、また、その変更を迅速かつ簡便に行うことができる。したがって生産性及び汎用性を向上させることができる。
【0035】
チルト機構9は、電子線EBの照射方向(Z軸方向)及び保持シャフト6の中心軸6P(Y軸方向)に直交する回転軸9R周りに回転可能にするチルトガイドを有し、保持シャフト6を当該チルトガイドに沿って回転軸9R周りに回転させるものである(図3参照)。このチルト機構9は、集光ミラー41をチルト中心位置に対して例えば±2度のチルト範囲で調整可能にするものである。
【0036】
具体的にチルト機構9は、図4に示すように、取付フランジ7に連続して設けられており、取付フランジ7が固定されるフランジ固定部91と、このフランジ固定部91に対して回転軸9Rを介して回転自在に設けられたチルト可動体92と、当該チルト可動体92をフランジ固定部91(取付フランジ7)に対して回転軸9Rを中心として回転させるためのチルト駆動部(不図示)とを備えている。回転軸9Rは、チルトガイドの機能を有し、電子線EBの照射方向(Z軸方向)及び保持シャフト6の中心軸6P(Y軸方向)に直交する方向に沿って設けられている。具体的には、回転軸9Rによる保持シャフト6の回転中心と保持シャフト6の中心軸6Pとが交差するように、回転軸9Rが設けられている(図3又は図4参照)。
【0037】
チルト駆動部は、チルト可動部92にY軸方向に形成された雌ねじ貫通孔と、当該雌ねじ貫通孔に螺合する調節ねじとにより構成されている。この調整ねじの先端部は、フランジ固定部91に接触するように設けられている。そして、当該調節ねじを締緩させることによって、チルト可動部92がフランジ固定部91に対して回転軸9Rを中心に回転するように構成されている。
【0038】
ローテーション機構10は、保持シャフト6の中心軸6P(Y軸方向)周りに回転可能にするローテーションガイドを有し、保持シャフト6を当該ローテーションガイドに沿って中心軸6P周りに回転させるものである。このローテーション機構10は、集光ミラー41をローテーション中心位置に対して例えば±0.5度の回転範囲で調整可能にするものである。
【0039】
具体的にローテーション機構10は、図4に示すように、チルト機構9のチルト可動体92に連結して設けられており、チルト可動体92に固定されるガイド本体101と、当該ガイド本体101に対して保持シャフト6の中心軸6Pを回転中心として回転するローテーション可動体102と、当該ローテーション可動体102をガイド本体101に対して中心軸6Pを回転中心として回転させるためのローテーション駆動部103とを備えている。ガイド本体101には、ローテーション可動体102を保持シャフト6の中心軸6Pを回転中心として回転させるためのスライド溝101Mを有している。このスライド溝101Mは、中心軸6Pを中心とする部分円弧状のものであり、当該スライド溝101Mをローテーション可動体102が摺動することによって保持シャフト6が中心軸6P周りに回転する。このスライド溝101Mがローテーションガイドである。なお、図4中の符号104は、ローテーション可動体102の摺動を可能にしつつスライド溝101Mからの抜脱を防止するための留めねじである。
【0040】
ローテーション駆動部103は、ガイド本体101にX軸方向に形成された雌ねじ貫通孔と、当該雌ねじ貫通孔に螺合する調整ねじとにより構成されている。この調整ねじの先端部は、ローテーション可動部に接触するように設けられている。そして、当該調整ねじを締緩させることによって、ローテーション可動体102がガイド本体101に対して摺動するように構成されている。
【0041】
3軸方向移動機構8は、直交するX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向それぞれに移動可能にする移動ガイドを有し、前記保持シャフト6を当該直交3軸方向に移動させるものである。具体的に3軸方向移動機構8は、図4に示すように、X方向移動機構81、Y軸方向移動機構82及びZ軸方向移動機構83からなる。
【0042】
Y軸方向移動機構82は、保持シャフト6をY軸方向(保持シャフト6の中心軸6P)に沿って移動させるものであり、このY軸方向移動機構82により集光ミラー41を測定位置と当該測定位置から離間した退避位置との間で移動させるものであり、測定位置と離間位置との距離は、例えば110mmである。なお、測定位置とは、集光ミラー41の電子線通過孔と電子線EBの中心軸とが略一致し、測定するための位置である。退避位置とは、集光ミラー41が電子線照射装置3(対物レンズ)と試料Wとの間から離間し、測定しない位置である。
【0043】
具体的にY軸方向移動機構82は、図4に示すように、ローテーション機構10のローテーション可動体102に連結して設けられており、ローテーション可動体102に固定されてY軸方向に延設されたY軸移動ガイド821と、当該Y軸移動ガイド821に沿ってスライド移動するY軸可動体822と、Y軸移動ガイド821に沿ってY軸可動体822をスライド移動させるためのY軸駆動部823とを備えている。Y軸移動ガイド821は、ローテーション可動体102から外側に延設された2本のレール部材である。また、Y軸可動体822は、前記2本のレール部材821が挿入される貫通孔を有しており、当該レール部材821に沿ってスライド移動する。Y軸駆動部823は、送りねじ機構を用いたものであり、レール部材821の間に当該部材821に平行に設けられたねじ軸823aと、当該ねじ軸823aに螺合するとともにY軸可動体822に連結されるナット823bと、ねじ軸823aを手動にて回転させるための回転ノブ823cとを備えている。そして、この回転ノブ823cを回転させることにより、Y軸可動体822がレール部材821に沿ってY軸方向に移動する。
【0044】
X軸方向移動機構81は、保持シャフト6をX軸方向(Y軸方向に直交し、水平に延びる軸)に沿って移動させるものである。このX軸方向調整機構81は、集光ミラー41をX軸方向に沿って例えば±2mmの範囲で調整可能にするものである。
【0045】
具体的にX軸方向移動機構81は、図4に示すように、Y軸方向移動機構82のY軸可動部822に連結して設けられており、Y軸可動体822に固定されてX軸方向に延設されたX軸移動ガイド811と、当該X軸移動ガイド811に沿ってスライド移動するX軸可動体812と、X軸移動ガイド811に沿ってX軸可動体812をスライド移動させるためのX軸駆動部813とを備えている。X軸移動ガイド811は、例えばクロスローラガイドやリニアガイドを用いて構成される。X軸駆動部813は、送りねじ機構を用いたものであり、X軸移動ガイド811又はX軸可動体812の一方にX軸方向に沿って設けられたねじと、他方に設けられて前記ねじに螺合するナットとからなる。そして、このねじをドライバ又は六角レンチ等の工具を用いて締緩することによって、X軸可動体812がX軸移動ガイド811に沿ってX軸方向に移動する。なお、図2の符号C1は、X軸方向移動機構及びZ軸方向移動機構を収容するカバーCに設けられた、X軸駆動部813を操作するための操作孔である。
【0046】
Z軸方向移動機構83は、保持シャフト6をZ軸方向(保持シャフト6の中心軸6Pに直交し、鉛直平面を形成する軸)に沿って移動させるものである。このX軸方向調整機構81は、集光ミラー41をZ軸方向に沿って例えば±2mmの範囲で調整可能にするものである。
【0047】
具体的にZ軸方向移動機構83は、図4に示すように、X軸方向移動機構81のX軸可動部812に連結して設けられており、X軸可動体812に固定されてZ軸方向に延設されたZ軸移動ガイド831と、当該Z軸向移動ガイド831に沿ってスライド移動するZ軸可動体832と、Z軸移動ガイド831に沿ってZ軸可動体832をスライド移動させるためのZ軸駆動部833とを備えている。Z軸移動ガイド831は、例えばクロスローラガイドやリニアガイドを用いて構成される。Z軸駆動部833は、送りねじ機構を用いたものであり、Z軸移動ガイド831又はZ軸可動体832の一方にZ軸方向に沿って設けられたねじと、他方に設けられて前記ねじに螺合するナットとからなる。そして、このねじをドライバ又は六角レンチ等の工具を用いて締緩することによって、Z軸可動体832がZ軸移動ガイド831に沿ってZ軸方向に移動する。なお、図2の符号C2は、カバーCに設けられた、Z軸駆動部833を操作するための操作孔である。
【0048】
そして、このZ軸可動部832に前記保持シャフト6のフランジ62Fが固定されている。また、チルト機構9のチルト可動体92と保持シャフト6のフランジ62Fとの間には、当該保持シャフト6の周囲を気密に覆う溶接ベローズ等のベローズ部11が設けられている。この溶接ベローズ11により気密性を保ちながらも保持シャフト6の進退移動を可能にしている。
【0049】
以上の構成により、チルト機構9を操作することにより、チルト可動体92に一体的に接続されているローテーション機構10、3軸方向移動機構8及び保持シャフト6がチルト方向に移動する。またローテーション機構10を操作することにより、ローテーション可動体102に一体的に接続されている3軸方向移動機構8及び保持シャフト6がローテーション方向に移動する。Y軸方向移動機構82を操作することにより、Y軸可動体822に一体的に接続されたX軸方向移動機構81、Z軸方向移動機構83及び保持シャフト6がY軸方向に移動する。またX軸方向移動機構81を操作することにより、X軸可動体812に一体的に接続されているZ軸方向移動機構83及び保持シャフト6がX軸方向に移動する。そしてZ軸方向移動機構83を操作することにより、Z軸可動体832に一体的に接続されている保持シャフト6がZ軸方向に移動する。
【0050】
次に上記5軸調整機構8〜10を用いた集光ミラー41の位置調整手法の一例について説明する。
【0051】
1.電子顕微鏡3と集光ミラー41との調整
まず、電子顕微鏡3の光軸、具体的には対物レンズの光軸と、集光ミラー41の電子線通過孔との位置調整を行う。この位置決め調整には、X軸方向移動機構81及びY軸方向移動機構82を用いた2軸の水平移動(X軸方向、Y軸方向)により行う。これにより集光ミラー41を対物レンズと試料Wとの間に挿入したことにより生じる電子顕微鏡3の非点収差を軽減することができる。
【0052】
2.試料Wと集光ミラー41との調整
集光ミラー41は焦点距離があるため予め設定された倍率で結像される。このため集光ミラー41の光軸調整は、電子顕微鏡3と集光ミラー41との調整に使用する2軸(X軸方向、Y軸方向)に加えて3軸(Z軸方向、チルト方向、ローテーション方向)を調整する必要がある。
【0053】
まず、上述したようにX軸方向移動機構81及びY軸方向移動機構82を用いて電子顕微鏡3の対物レンズの光軸と集光ミラー41の電子線通過孔との位置調整を行う。これは、電子顕微鏡3の光学的配置とカソードルミネッセンスの光学的配置を考慮して調整される。次に、Z軸方向移動機構83を用いて集光ミラー41の高さ位置の調整を行い、集光ミラー41と試料Wとの距離を調整する。そして、チルト機構9及びローテーション機構10を用いて、集光ミラー41の頂点位置等の試料と集光ミラー41との位置関係を調整する。そして、これらの調整操作を繰り返すことにより、集光ミラー41の位置の最適化を行う。
【0054】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る試料分析装置100によれば、3軸方向移動機構8においてはX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向それぞれに移動ガイド811、821、831を有し、チルト機構9においてはチルトガイドである回転軸9Rを有し、ローテーション機構10においてはローテーションガイドであるスライド溝101Mを有しているので、集光ミラー41をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、チルト方向及びローテーション方向それぞれに独立して調整可能とすることができる。したがって、ユーザは自分の意図した方向のみに集光ミラー41を移動させることができるので、集光ミラー41の位置調整を簡単化することができるとともに、その位置再現性を向上させることができ、調整時間を短縮することもできる。
【0055】
また、取付フランジ6にチルト機構9及びローテーション機構10を設けており、保持シャフトの外側端部に3軸方向移動機構8を設けていることから、チルト機構9における集光ミラー41の位置決めにおいて3軸方向移動機構8の重量を利用することができ、チルト機構9の構成を簡単にすることができる。同時に、3軸方向移動機構8を真空チャンバ2から離間して設けることになるので、頻繁に使用され得る3軸方向移動機構8を操作し易くすることができる。
【0056】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0057】
例えば、チルト機構、ローテーション機構及び3軸方向移動機構の配置態様は前記実施形態に限られず、それらの配置を適宜変更しても良い。例えばチルト機構のみを取付フランジに設け、ローテーション機構及び3軸方向移動機構を保持シャフトの後端部に設けても良い。また、Y軸方向移動機構のみを保持シャフトの後端部に設けて、チルト機構、ローテーション機構及びX、Z軸方向移動機構を取付フランジに設けても良い。なお、Y軸方向移動機構は、集光ミラーを測定位置及び退避位置の間で進退移動させるものであるため、保持シャフトの後端部側に設けることが好ましい。
【0058】
また、前記実施形態のチルト機構は振動等の外乱影響を可及的に低減するため、ばねを用いずにユニットの自重とチルト駆動部のねじの進退とによりチルト調整するものであったが、例えば振動等の外乱影響が無視できる測定等に用いるものであれば、自重ではなく又はそれに加えてばねの弾性復帰力を用いるものであっても良い。
【0059】
さらに、前記実施形態の機構は全て手動で行うものであったが、それら機構のうち少なくとも一部をステッピングモータ等のアクチュエータを用いて駆動するものであっても良い。
【0060】
その上、前記実施形態ではエネルギ線として電子線を照射するものをであったが、その他、例えばX線、イオンビーム等を照射するものであっても良い。
【0061】
加えて、前記実施形態ではカソードルミネッセンスを測定するものであったが、その他、例えばフォトルミネッセンス、ラマン光等を測定するものであっても良い。
【0062】
さらにその上、X軸方向移動機構及びZ軸方向移動機構を収容するカバーを取り外して、X軸方向移動機構及びZ軸方向移動機構を調整する場合には、カバーには操作孔を設ける必要はない。
【0063】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
100 ・・・試料分析装置
2 ・・・真空チャンバ
3 ・・・エネルギ線照射系(電子線照射装置)
W ・・・測定試料
X ・・・集光器装置
41 ・・・集光ミラー
6 ・・・保持シャフト
811 ・・・X軸移動ガイド
81 ・・・X軸方向移動機構
821 ・・・Y軸移動ガイド
82 ・・・Y軸方向移動機構
831 ・・・Z軸移動ガイド
83 ・・・Z軸方向移動機構
9 ・・・チルト機構
9R ・・・チルトガイド(回転軸)
92 ・・・チルト可動体
10 ・・・ローテーション機構
101M・・・ローテーションガイド(スライド溝)
6P ・・・保持シャフトの中心軸
102 ・・・ローテーション可動体
7 ・・・取付フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7