(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部に金属材が設置されたコンクリートの表面にシート体を接着すること、及び、前記シート体の外側に前記シート体よりも伸縮性が低い形状保持部材を配置することを実施するシート体取り付け工程と、
前記シート体と前記コンクリートの表面との間に電気防食電極を配置する電気防食電極配置工程と、
前記シート体と前記コンクリートの表面との間に充填材を充填する充填工程と、を実施し、
前記シート体取り付け工程において、前記シート体及び前記形状保持部材を、前記シート体が前記形状保持部材の内面形状に沿って接触するように配置するコンクリート構造体の製造方法。
前記電気防食電極と前記コンクリートの表面との間に、絶縁部材を配置する絶縁部材配置工程を実施する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコンクリート構造体の製造方法。
前記形状保持部材が、前記充填材が充填される部分の外側にあたる位置の少なくとも一部、及び、前記コンクリートの表面と前記シート体とが接着される位置の外側にあたる位置の少なくとも一部に配置されている請求項5または6に記載のコンクリート構造体。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造体中の鉄筋などの金属材の腐食を防止するために、コンクリートにチタン等の耐食性金属からなる電気防食電極を設置し、電気防食電極を陽極、金属材を陰極として、電気防食電極と金属材との間に防食電流を供給する技術が知られている。
【0003】
電気防食電極をコンクリートに設置する方法としては、例えば、コンクリートの表面に電気防食電極を収容する溝を切削し、該溝内に電極を設置して、モルタルなどの充填材で電極を被覆する方法などが知られている。
しかし、かかる方法では、コンクリートの表面に電気防食電極を収容可能なサイズの溝を切削しなければならず、作業が煩雑である。また、コンクリートの切削によって粉塵や騒音が発生する。
【0004】
コンクリート表面に前述のような溝を切削することなく電気防食電極を設置してコンクリート構造体を製造する方法としては、例えば、特許文献1および特許文献2に記載されているような方法がある。
特許文献1には、コンクリートの表面に合成樹脂製あるいは金属製等の電気防食電極用の保持部材を取り付ける方法が記載されている。すなわち、前記保持部材は、内部に電気防食電極を収容可能な空間と、該空間内に充填材を充填可能な開口と、ネジ等の固定部材を挿入可能な貫通孔とを備えているものである。かかる保持部材は、前記貫通孔に固定部材を挿入して、該固定部材をコンクリート表面に設けた穴に挿入することで保持部材をコンクリート表面に固定し、保持部材の内部の空間に電気防食電極を設置して、さらに、上部に形成された開口から前記空間に充填材を充填して電気防食電極を覆ってから、前記開口を蓋体等で覆うことで、コンクリートの表面に電気防食電極を設置することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、一面側に接着部を備えた伸縮性を有する合成樹脂製のシート体に電気防食電極を固定し、該電気防食電極付きシート体を、前記電極が内側に配置されるようにコンクリート表面に接着し、さらに前記シート体とコンクリートの表面との間にモルタル等の充填材を充填して、コンクリートに電気防食電極を設置することが記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載されている保持部材は、前述のように固定部材を用いてコンクリート表面に取り付けられているため、固定部材を挿入した貫通孔の周囲等の隙間から充填材が漏れるおそれがある。そのため、前記保持部材を設置してから、コーキング材等を用いて隙間をシールする必要があり、作業が煩雑である。
【0007】
また、特許文献2に記載されている接着部を備えたシート体を用いる場合には、固定部材を挿入するための穴等が不要であるため、隙間から充填材が漏れるおそれは低いものの、伸縮性のあるシート体を用いているため、充填材を充填する際に、充填箇所付近においてシート材が外向きに必要以上に膨出(過膨出)しやすいという問題がある。かかる過膨出が生じると充填材が多く充填される部分が生じ、該部分においてシート体に圧が強くかかることになり、シート体がコンクリート表面から剥離しやすくなる。充填材が硬化するまでの間に前記シート体が剥がれた場合には、剥がれた箇所から充填材が流出するなどして電気防食電極の取り付け強度が低下するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、電気防食電極を容易に設置して電気防食電極を備えたコンクリート構造体とすることができ、且つ電気防食電極の取り付け強度を良好とすることができるコンクリート構造体の製造方法を提供することを課題とする。
また、電気防食電極を容易に設置することができ且つ電気防食電極の取り付け強度が良好であるコンクリート構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるコンクリート構造体の製造方法は、内部に金属材が設置されたコンクリートの表面にシート体を接着すること、及び、前記シート体の外側に前記シート体よりも伸縮性が低い形状保持部材を配置することを実施するシート体取り付け工程と、前記シート体と前記コンクリートの表面との間に電気防食電極を配置する電気防食電極配置工程と、前記シート体と前記コンクリートの表面との間に充填材を充填する充填工程と、を実施
し、前記シート体取り付け工程において、前記シート体及び前記形状保持部材を、前記シート体が前記形状保持部材の内面形状に沿って接触するように配置する。
【0011】
本発明のコンクリート構造体の製造方法によれば、内部に金属材が設置されたコンクリートの表面にシート体を接着すること、及び、前記シート体の外側に前記シート体よりも伸縮性が低い形状保持部材を配置することを実施するシート体取り付け工程と、前記シート体と前記コンクリートの表面との間に電気防食電極を配置する電気防食電極配置工程と、前記シート体と前記コンクリートの表面との間に充填材を充填する充填工程とを実施するため、コンクリートの表面を切削する必要がなく、且つ、シート体の取り付け後にコーキング材等でシールする作業等を行う必要がなく、容易に電気防食電極を設置することができる。また、前記シート体の外側に前記シート体よりも伸縮性の低い形状保持部材を備えているため、シート体とコンクリートの表面との間に充填材を充填した際に、シート体が過膨出することを前記形状保持部材によって抑制できる。従って、充填材を均一に充填することができ、シート体の一部に高い圧がかかり剥離しやすくなることを抑制できる。その結果、シート体が剥離して充填材が流出することなどによる電気防食電極の取り付け強度の低下を抑制できる。
【0012】
また、本発明の他のコンクリート構造体の製造方法は、内部に金属材が設置されたコンクリートの表面に電気防食電極を配置する電気防食電極配置工程と、前記電気防食電極が配置された前記コンクリートの表面に、前記電気防食電極を覆うようにシート体を接着すること、及び、前記シート体の外側に前記シート体よりも伸縮性が低い形状保持部材を配置することを実施するシート体取り付け工程と、前記シート体と前記コンクリートの表面との間に充填材を充填する充填工程と、を実施
し、前記シート体取り付け工程において、前記シート体及び前記形状保持部材を、前記シート体が前記形状保持部材の内面形状に沿って接触するように配置する。
【0013】
また、本発明の他のコンクリート構造体の製造方法は、シート体の一面側に電気防食電極を配置すること、及び、前記シート体の他面側に前記シート体よりも伸縮性が低い形状保持部材を配置することを実施する一体化工程と、前記電気防食電極及び形状保持部材が配置された前記シート体を内部に金属材が設置されたコンクリートの表面に、前記形状保持部材が外側に配置されるように前記シート体を接着するシート体取り付け工程と、前記シート体と前記コンクリートの表面との間に充填材を充填する充填工程と、を実施
し、前記一体化工程において、前記シート体及び前記形状保持部材を、前記シート体が前記形状保持部材の内面形状に沿って接触するように配置する。
【0014】
本発明の好ましい態様として、前記電気防食電極と前記コンクリートの表面との間に、絶縁部材を配置する絶縁部材配置工程を実施してもよい。
【0015】
前記電気防食電極と前記コンクリートの表面との間に、絶縁部材を配置する場合には、コンクリート表面に導電性の異物等が存在している場合、あるいは、金属材の一部が露出している場合に、電気防食電極と、前記導電性の異物等とを接触させることなく、電気防食電極を設置することができる。
【0016】
尚、本発明でいう絶縁部材とは、体積固有抵抗値が1オーム・cm以上程度の部材をいう。
【0017】
本発明にかかるコンクリート構造体は、内部に金属材が設置されたコンクリートと、
前記コンクリートの表面に配置された電気防食電極と、前記電気防食電極の外側を被覆するように前記コンクリートの表面に接着されたシート体と、前記シート体と前記コンクリートの表面との間に充填材が充填されて形成された充填部と、前記シート体の外側に配置され且つ前記シート体よりも伸縮性が低い形状保持部材と、を備え、
前記シート体が前記形状保持部材の内面形状に沿って接触するように配置されている。
【0018】
コンクリート構造体にかかる本発明の一態様として、前記シート体は両面側に接着部を備えており、前記シート体の一面側の接着部を介して前記コンクリートの表面に前記シート体が接着されており、前記シート体の他面側の接着部を介して前記シート体と前記形状保持部材とが接着されていてもよい。
【0019】
前記シート体は両面側に接着部を備えており、前記シート体の一面側の接着部を介して前記コンクリートの表面に前記シート体が接着されており、前記シート体の他面側の接着部を介して前記シート体と前記形状保持部材とが接着されている場合には、前記シート体の一面側の接着部によって、コンクリートの表面へシート体を取り付けることができると同時に、他面側の接着部によってシート体と前記形状保持部材とを取り付けることができる。従って、シート体および形状保持部材をコンクリートの表面に取り付ける作業が容易に行なえる。
【0020】
コンクリート構造体にかかる本発明の一態様として、前記形状保持部材が、前記充填材が充填される部分の外側にあたる位置の少なくとも一部、及び、前記コンクリートの表面と前記シート体とが接着される位置の外側にあたる位置の少なくとも一部に配置されていてもよい。
【0021】
前記形状保持部材が、前記充填材が充填される部分の外側にあたる位置の少なくとも一部、及び、前記コンクリートの表面と前記シート体とが接着される位置の外側にあたる位置の少なくとも一部に配置されている場合には、充填材が充填されている部分の外側において前記形状保持部材が存在することで、充填時のシート体の過膨出を抑制しうると同時に、コンクリートの表面と接着されている位置においてもシート体の外側に形状保持部材が存在することによって、シート体とコンクリートの表面との間の接着が剥がれることを抑制しうる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電気防食電極を容易に設置して電気防食電極を備えたコンクリート構造体とすることができ、且つ電気防食電極の取り付け強度を良好とすることができるコンクリート構造体の製造方法を提供することができる。
また、電気防食電極を容易に設置することができ且つ電気防食電極の取り付け強度が良好であるコンクリート構造体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るコンクリート構造体の製造方法およびコンクリート構造体の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
まず、本実施形態のコンクリート構造体について説明する。
本実施形態のコンクリート構造体100は、
図1および
図2に示すように、内部に金属材11が設置されたコンクリート10と、前記コンクリート10の表面に配置された電気防食電極1と、前記電気防食電極1の外側を被覆するように前記コンクリート10の表面に接着されたシート体2と、前記シート体2と前記コンクリート10の表面との間に充填材が充填されて形成された充填部4と、前記シート体2の外側に配置され且つ前記シート体2よりも伸縮性が低い形状保持部材3とを備えている。
【0025】
前記電気防食電極1は金属からなる陽極電極である。材質としては、陽極として用いられ且つ耐食性を有する金属であれば特に限定されるものではなく、例えば、白金メッキチタン製電極、高珪素鋳鉄製電極、黒鉛製電極、フェライト製電極または金属酸化物製電極等が挙げられる。
【0026】
前記電気防食電極1の形状は、例えば、棒状あるいは帯状などの長尺状のものが挙げられる。特に、エキスパンドメタル状の網目を有する金属体を用いることが好ましい。
尚、エキスパンドメタル状とは、JIS G 3351に規定されたエキスパンドメタルの形状、またはこれと同様の形状をいう。
本実施形態では、帯状のエキスパンドメタルからなる電気防食電極1の平面部がコンクリートの表面と平行になるような方向に電気防食電極1が配置されている。
【0027】
前記シート体2は、
図2に示すように一方向が長手となる矩形状のシートである。
本実施形態においては、前記シート体2の両面側に接着部5a、5bが形成されており、前記シート体2は、前記シート体2の一面側の接着部5aを介して前記コンクリート10の表面に接着されており、前記シート体2と前記形状保持部材3とは、前記シート体2の他面側の接着部5bを介して接着されている。
具体的には、前記接着部5a、5bのうち一面側の接着部5aは、前記シート体2とコンクリート10の表面とを接着するように、少なくとも前記シート体2の短手方向(幅方向)の両端部であって長手方向と平行な方向に延びる端縁部の全長にわたって形成されている。
前記一面側の接着部5aは、前記端縁部のみに形成されていてもよく、あるいはシート体2の一面側全面に形成されていてもよい。
前記接着部5a、5bのうち他面側の接着部5bは、前記シート体2の他面側すなわち形状保持部材3が取り付けられる面側(コンクリートの表面に取り付けられた場合の外側)に形成されている。
前記他面側の接着部5bは、シート体2の前記他面側の全面に形成されていてもよく、あるいは部分的に形成されていてもよい。
【0028】
前記接着部5a、5bは、例えば、ゴム系、エポキシ系、シアノアクリル系、ビニル系、シリコーンゴム系、その他の樹脂系等の接着剤を前記シート体の各箇所に塗布することで形成されている。
あるいは接着性を有するシート、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレン、塩化ビニル製フィルム等をシート体に接着する、あるいは溶着することなどで形成されている。
【0029】
前記シート体2の材質は特に限定されるものではないが、コンクリートの表面に接着する際に、コンクリート表面の形状に追随して密着可能な程度の伸縮性および柔軟性を有する材質であることが好ましい。
例えば、アイオノマー樹脂製フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等の樹脂シート、ブチルゴムシート等のゴムシート、あるいは、その他の材質からなる絶縁シートとして市販されているシート等が挙げられる。
【0030】
前記形状保持部材3は、下方(コンクリートの表面に設置する側)が開口している断面視略台形状の長尺部材である。
前記形状保持部材3は前記シート体2よりも伸縮性の低い部材であって、前記シート体2の内部に充填材が充填された場合に、シート体2が外向きに必要以上に膨出すること(過膨出)を抑制できる部材である。
前記形状保持部材3の材質は前記のような部材であれば、特に限定されるものではないが、絶縁性材料であることが好ましい。例えば、塩化ビニル、ポリアミド等の合成樹脂材料、セラミックス等の不良導電性材料、チタン等の腐食性環境において表面に緻密な酸化皮膜を形成し電極としては機能しなくなる金属材料、あるいはコンクリート等が挙げられる。中でも、塩化ビニルは、加工が容易であり、低コストで且つ市販品として入手しやすいため観点から好ましい。
【0031】
本実施形態において、前記形状保持部材3は、前記充填部4の外側にあたる位置の少なくとも一部、及び、前記コンクリート10の表面と前記シート体2とが接着されている位置の外側にあたる位置の少なくとも一部に配置されている。
具体的には、
図1に示すように、前記形状保持部材3は、前記シート体2の外側であって、内部に充填材が充填されている充填部4の上面の全面を覆っており、且つ、シート体2とコンクリート10の表面とが接着されている両端部2a,2bの一部21a,21bを覆っている。
【0032】
前記シート体2は、他面側が前記形状保持部材3の内面形状に沿って接触するように、前記形状保持部材3の内面に取り付けられている。
尚、シート体2と、形状保持部材3とは、接着部5bを介して全面的に接着されていてもよく、部分的に接着されていてもよい。
前記形状保持部材3の短手方向の両端部からは、シート体2の前記接着部5aが形成されている前記両端部2a、2bが突出している。
【0033】
前記シート体2および形状保持部材3の上面には、
図2に示すように、充填材を充填するための充填口7が形成されていてもよい。
また、前記シート体2には、エア抜き用の孔が形成されていてもよい。
【0034】
前記充填材は、前記電気防食電極1を固定するためにシート体2とコンクリート10の表面との間に充填されて、前記充填部4を形成している。
前記充填材としては、充填後に固化することで電気防食電極を固定可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、モルタルやセメントペースト等のセメントを含む充填材が、コンクリートの表面と一体化しやすく且つコンクリートと同等のイオン導電性を有するため、好ましい。
【0035】
本実施形態において、前記電気防食電極1と前記コンクリート10の表面との間には絶縁部材8が配置されている。
具体的には、前記電気防食電極1が直接コンクリート表面に接触しないように、長尺状の前記絶縁部材8が配置されている。
かかる絶縁部材8が配置されている場合には、例えば、コンクリートの表面に、導電性の異物等が存在している場合でも、前記電気防食電極1と該異物とが接触して、コンクリート中の金属材との間に流れるべき防食電流を阻害することを防止することができる。
【0036】
前記絶縁部材8の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、体積固有抵抗値が
1オーム・cm以上程度の材質であることが好ましい。
かかる体積固有抵抗値を有する材質であれば、金属性の異物がコンクリート表面に存在している場合でも、防食電流を阻害することを防止できる。
具体的には、エポキシ系、ゴム系、アクリル系、シアノアクリル系のシート材等が挙げられる。尚、前記シート材は、両面あるいは一面に接着層が備えられた接着シートであってもよい。
【0037】
尚、前記絶縁部材8は、電気防食電極1の下面全面を覆うように配置されていてもよく、あるいは、電気防食電極1の下面の一部に存在するように配置されていてもよい。さらには、前記絶縁部材8を配置されていない構成であってもよい。
【0038】
次に、前記のようなコンクリート構造体100を得るためのコンクリート構造体の製造方法について説明する。
【0039】
〔実施形態1〕
コンクリート構造体の製造方法に係る本発明の第1の実施形態にかかるコンクリート構造体100の製造方法は、内部に金属材11が設置されたコンクリート10の表面にシート体2を接着すること、及び、前記シート体2の外側に前記シート体2よりも伸縮性が低い形状保持部材3を配置することを実施するシート体取り付け工程と、前記シート体2と前記コンクリート10の表面との間に電気防食電極1を配置する電気防食電極配置工程と、前記シート体2と前記コンクリート10の表面との間に充填材を充填する充填工程と、を実施する方法である。
【0040】
(シート体取り付け工程)
本実施形態のコンクリート構造体の製造方法では、まず、内部に金属材11が設置されたコンクリート10の表面にシート体2を接着すること、及び、前記シート体2の外側に前記シート体2よりも伸縮性が低い形状保持部材3を配置することを実施するシート体取り付け工程を実施する。
【0041】
本実施形態において電気防食電極を設置するコンクリートは、橋梁、道路等のような既設のコンクリート構造体のコンクリートであってもよい。
前記コンクリート10の表面は、予め、洗浄処理、あるいは、コンクリートサンダー等を用いて粗面化する処理等のような処理を施しておいてもよい。かかる処理を施すことで表面にシート体を接着しやすくなる。
【0042】
本実施形態において電気防食電極を設置するコンクリート10には、内部に鋼材等の金属材11が設置されている。各金属材11には、
図2に示すように外部電源Bの−側が接続されており、電気防食電極1との間に電圧をかけて、金属材11と、電気防食電極1との間に防食電流を流すように構成されている。
【0043】
本実施形態において、前記シート体2は両面側に接着部5a、5bを備えており、前記シート体2の一面側の接着部5aを介して前記コンクリート10の表面に前記シート体2を接着し、前記シート体2の他面側の接着部5bを介して前記シート体2と前記形状保持部材3とを接着することで前記シート体2の外側に前記形状保持部材3を配置することが好ましい。本実施形態においては、前記シート体2を、長手方向の両端部あるいは一方の端部が開口するように接着することが好ましい。
【0044】
本実施形態において、コンクリート10の表面に前記シート体2を接着すること、及び、前記シート体2の外側に前記形状保持部材3を配置することは、いずれを先に実施してもよい。
例えば、前記シート体2と前記形状保持部材3とを、予めシート体2の他面側の接着部5bを介して取り付けておき、
図2に示すようにシート体2と形状保持部材3とが一体化されている状態で、前記コンクリート10の表面に取り付けてもよい。
前記コンクリート10表面に取り付ける方法は、前記シート体2の一面側の前記両端部2a,2bに形成された前記接着部5aをコンクリート10の表面に接着する。
あるいは、前記シート体2の両端部2a、2bに、接着剤を塗布して、該接着剤によってシート体2をコンクリート表面に接着してもよい。
このように、形状保持部材3をシート体2に配置してから、該シート体2をコンクリート10の表面に接着する場合には、作業現場で、形状保持部材3とシート体とを取り付ける作業を行なう必要がないため、作業が容易にできるという利点を有する。
【0045】
または、まず、前記シート体2を、前記両端部2a,2bに形成された前記接着部5aを介してコンクリート10の表面に接着し、その後、前記形状保持部材3を、前記シート体2の他面側の接着部5bを介して前記シート体の外側に配置してもよい。
【0046】
本実施形態のシート体取り付け工程においては、前記形状保持部材3を、前記充填材が充填される部分の外側にあたる位置の少なくとも一部、及び、前記コンクリート10の表面と前記シート体2とが接着される位置の外側にあたる位置の少なくとも一部に配置することが好ましい。
すなわち、具体的には、前記シート体2の外側であって、充填材が充填された後に充填部4の上面の全面を覆い、且つ、シート体2とコンクリート10の表面とが接着されている両端部2a,2bの一部21a,21bにおいて、シート体2を外側から保持するように、充填工程に先立って前記形状保持部材3を前記シート体2に配置することが好ましい。
【0047】
(電気防食電極配置工程)
次に、前記シート体と前記コンクリートの表面との間に電気防食電極を配置する電気防食電極配置工程を実施する。
電気防食電極1は、前記シート体2の長手方向の一端部の開口から内部に挿入して、配置してもよい。
【0048】
尚、本電気防食電極配置工程において、あるいは、先立って、前記電気防食電極1と前記コンクリート10の表面の間に前記絶縁部材8を配置する絶縁部材配置工程を実施してもよい。
すなわち、電気防食電極配置工程において、あるいは、先立って、前記電気防食電極1と絶縁部材8とを接着等で固定しておき、電気防食電極配置工程において、前記電気防食電極1と前記絶縁部材8とを同時に、前記絶縁部材8が前記コンクリート10の表面と接触するように配置してもよい。
【0049】
あるいは、電気防食電極配置工程において、まず、コンクリート10の表面の電気防食電極を配置する予定の位置に、前記絶縁部材8を配置してから、前記電気防食電極1を該絶縁部材8の外側に配置することで、前記シート体2と前記コンクリート10の表面との間に電気防食電極1を配置してもよい。
【0050】
いずれの場合でも、前記コンクリート10が、橋梁の下面、コンクリート構造体の側壁のように、表面が上向きの面ではない場合には、前記電気防食電極1または絶縁部材8を接着剤等でコンクリートの表面に仮留めしてもよい。
【0051】
尚、電気防食電極1は、前記外部電源Bの+側と接続して、前記金属材11との間に電圧をかけるようにすることが必要である。本実施形態ではディストリビュータDを介して前記外部電源Bと電気防食電極1とを接続する。
【0052】
(充填工程)
さらに、前記シート体2と前記コンクリート10の表面との間に充填材を充填する充填工程を実施する。
充填材は、前記充填口7から前記シート体2の内側に充填する。
あるいは、コンクリート10の表面がコンクリート構造体の側壁等のように、垂直方向の面等の場合には、前記シート体2の長手方向の一方の端部の開口部から、充填材を充填してもよい。
あるいは、前記形状保持部材3およびシート体2の上面をカッターなどの切断器具を用いて一部を切断し、かかる切断部から充填材を充填してもよい。
【0053】
この時、シート体2の外側において、シート体2よりも伸縮性の低い前記形状保持部材3が存在することで、前記シート体2の内面から充填材によって外向きに力がかかっても、シート体2の外向きへの過膨出が抑制される。
よって、充填材を充填する際に、例えば、前記充填口7箇所付近等のように充填材が滞留しやすい位置においてシート体が過膨出し充填材が多く滞留して部分的に大きい力がかかることがなく、シート体2が剥がれやすくなることを抑制できる。
さらに、本実施形態の前記形状保持部材3は、シート体2の、コンクリート10の表面とが接着されている両端部2a,2bの一部21a,21bにおいて前記シート体2を外側から保持するため、より、シート体2が剥がれにくくなる。その結果、充填材が硬化する前にシート体2の内部から流出して、電気防食電極1の取り付け強度が低下することを抑制できる。
さらに、充填材を均一にシート体2とコンクリート表面との間に充填することができ、充填材が充填された充填部4において硬化体の量を均一化することができる。よって、部分的に充填材の量が少なくなることが抑制でき、内部の電気防食電極1の取り付け強度をより良好にすることができる。
【0054】
尚、本実施形態では、シート体取り付け工程を実施してから、電気防食電極配置工程を実施したが、シート体取り付け工程および電気防食電極配置工程はこの順に実施することに限られない。
すなわち、内部に金属材が設置されたコンクリートの表面に電気防食電極を配置する電気防食電極配置工程と、前記電気防食電極が配置された前記コンクリートの表面に、前記電気防食電極を覆うようにシート体を接着すること、及び、前記シート体の外側に前記シート体よりも伸縮性が低い形状保持部材を配置することを実施するシート体取り付け工程と、前記シート体と前記コンクリートの表面との間に充填材を充填する充填工程とを実施してもよい。
【0055】
また、電気防食電極配置工程を実施してから、その後前記充填工程を実施することには限定されるものではない。例えば、前記充填工程を実施してから、前記電気防食電極配置工程を実施してもよい。
この場合には、まず、コンクリート表面に接着されたシート体と、コンクリート表面との間に充填材を充填し、該充填材が硬化する前に、電気防食電極を充填材に挿入することで、コンクリートの表面とシート体との間に電気防食電極を配置する。
【0056】
〔実施形態2〕
コンクリート構造体の製造方法に係る本発明の第2の実施形態にかかるコンクリート構造体の製造方法は、シート体の一面側に電気防食電極を配置すること、及び、前記シート体の他面側に前記シート体よりも伸縮性が低い形状保持部材を配置することを実施する一体化工程と、前記電気防食電極及び形状保持部材が配置された前記シート体を内部に金属材が設置されたコンクリートの表面に、前記形状保持部材が外側に配置されるように前記シート体を接着するシート体取り付け工程と、前記シート体と前記コンクリートの表面との間に充填材を充填する充填工程と、を実施する。
【0057】
(一体化工程)
本実施形態では、まず、シート体の一面側に電気防食電極を取り付け、前記シート体の他面側に前記シート体よりも伸縮性が低い形状保持部材を配置することを実施する一体化工程を実施する。
前記電気防食電極を前記シート体に取り付ける手段は特に限定されるものではないが、例えば、前記シート体の一面側の全面に前記接着部を形成し、該一面側の接着部の中央部に電気防食電極を接着すること等が挙げられる。この場合、前記シート体の幅方向の両端部には、前記コンクリート表面にシート体を接着するための接着部が露出するように電気防食電極を取り付けることが必要である。すなわち、前記シート体の幅は、前記電気防食電極の幅よりも広いことが必要である。
【0058】
(シート体取り付け工程)
次に、前記電気防食電極及び形状保持部材が配置された前記シート体を内部に金属材が設置されたコンクリートの表面に、前記形状保持部材が外側に配置されるように前記シート体を接着するシート体取り付け工程を実施する。
この時、前記シート体の一面側の接着部であって、前記電気防食電極が取り付けられていない両端部の接着部をコンクリートの表面に接着する。
【0059】
(充填工程)
その後、前記実施形態1と同様にして、前記シート体と前記コンクリートの表面との間に充填材を充填する充填工程を実施する。
本実施形態のコンクリート構造体の製造方法では、前記のように、シート体、形状保持部材および電気防食電極を一体化する一体化工程を実施して、その後シート体をコンクリート表面に取り付けるため、一度にシート体、形状保持部材および電気防食電極をコンクリート表面に取り付けることができ、電気防食電極配置工程を別途実施する必要がないというメリットがある。
【0060】
尚、本実施形態において、前記一体化工程で、前記絶縁部材を、電気防食電極と共に前記シート体に取り付けてもよい。あるいは、別途前記絶縁部材配置工程を実施してもよい。
【0061】
〔その他の実施形態〕
前記各実施形態では、前記形状保持部材3を、前記シート体2の外側であって、内部に充填材が充填されている部分(充填部)の上面の全面を覆うように配置したが、形状保持部材を充填部の上面全面を覆うように配置することに限定されるものではない。例えば、長手方向において所定間隔を有して形状保持部材を配置して、シート体の外側において部分的に形状保持部材が配置されているような構成であってもよい。かかる構成である場合には、充填口付近等のように特に充填材が滞留しやすい箇所のシート体の外側に形状保持部材を配置することが好ましい。
【0062】
さらに、前記各実施形態では下方が開口している断面視略台形状の形状保持部材を用いたが、形状保持部材の断面視形状はこれに限定されるものではなく、例えば、
図3(a)に示すような断面視三角形状、あるいは同図(b)に示すような断面視コの字形状、あるいは同図(c)に示すような断面視半円形等の形状の形状保持部材を用いてもよい。
【0063】
さらに、前記各実施形態では電気防食電極として、帯状のエキスパンドメタルからなる電気防食電極を用い、前記帯状体の平面部がコンクリートの表面と平行になるように配置したが、電気防食電極の配置はこれに限られるものではない。例えば、
図3(a)(b)に示すように、帯状の電極を幅方向(短手方向)において二つに折り曲げた状態で設置してもよく、あるいは、
図3(c)に示すように、コンクリート表面に対して垂直になるような方向に設置してもよい。
【0064】
尚、前記各実施形態にかかるコンクリート構造体及びコンクリート構造体の製造方法は以上のとおりであるが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。