(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、当該基板と投影レンズの間に水を挿入しフォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明では、第1に
(A)下記一般式(1−1)で示されるトリアリールスルホニウム=2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロポキシ)プロパノアート、
(B)下記一般式(1−2)で示される酸発生剤の1種又は2種以上、
(C)酸不安定基で保護された酸性官能基を有するアルカリ現像液不溶又は難溶の樹脂であって、該酸不安定基が脱保護されたときにアルカリ現像液可溶となるベース樹脂、
(D)有機溶剤
を必須成分として含有することを特徴とするArF液浸露光用化学増幅ポジ型レジスト材料を提供する。
【化8】
(式中、Arはヘテロ原子を含んでもよい置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、複数のAr同士が直接、酸素原子、メチレン基、スルホン基、又はカルボニル基を介して結合していてもよい。)
【化9】
(式中、R
1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を表す。R
2は水素原子又はトリフルオロメチル基を表す。Arはヘテロ原子を含んでもよい置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、複数のAr同士が直接、又は酸素原子、メチレン基、スルホン基又はカルボニル基を介して結合していてもよい。)
【0016】
以下、下記一般式(1−1)で示されるスルホニウム塩を詳述する。
【化10】
【0017】
上記式(1−1)中、Arはヘテロ原子を含んでもよい置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、複数のAr同士が直接、酸素原子、メチレン基、スルホン基、又はカルボニル基を介して結合していてもよい。含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子が好ましく、酸素原子、フッ素原子がより好ましい。置換基としては、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基、水酸基、フルオロ基、クロル基、アルキル基の炭素数が1〜4のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数4〜10の単環又は多環のラクトン、炭素数1〜14の直鎖状、 分岐状又は環状のアルキルオキシカルボニルメトキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、炭素数1〜11のアシルオキシ基等が挙げられ、その置換数も任意であるが、置換されている場合には1又は2置換が好ましく、より好ましくは1置換である。より具体的に置換基を述べると、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、1,1−ジメチルエチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、1,1−ジメチルエトキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、N,N−ジメチルアミノ基、1,1−ジメチルエトキシカルボニルメトキシ基、1−メチルアダマンタン−1−イルオキシカルボニルメトキシ基、アセチル基、ピバロイルオキシ基、アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0018】
具体的にArで示される基を示すと、フェニル基、スルホニウムカチオンの硫黄原子との置換位置は任意であるがナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリル基、キシリル基、置換基の置換位置は任意であるがトリメチルフェニル基、エチルフェニル基、ビフェニリル基、メトキシフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、tert−ブチルフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、アセトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基、メチルナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ジヒドロキシナフチル基、メトキシナフチル基、ブトキシナフチル基、2,2,2−トリフルオロエトキシナフチル基、(2−メトキシエトキシ)ナフチル基を例示できるが、これらに限定されない。
【0019】
更には、置換基としてアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の重合可能な置換基を有するアリール基が挙げられ、具体的には4−アクリロイルオキシフェニル基、4−メタクリロイルオキシフェニル基、4−アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル基、4−メタクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル基、4−ビニルオキシフェニル基、4−ビニルフェニル基等が挙げられる。これらの中で好ましくはフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基である。
【0020】
複数のAr同士が直接、又は酸素原子、メチレン基、スルホン基又はカルボニル基を介して結合する場合には、ジベンゾチオフェン骨格、フェノキサチイン骨格の他、下記に示す部分構造を有する。
【化11】
(式中、破線は他のAr基との結合を示す。)
【0021】
より具体的にスルホニウムカチオンを示すと、トリフェニルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、3−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、3,4−ジ−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、10−フェニルフェノキサチイニウム、S−フェニルジベンゾチオフェニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−n−ヘキシルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム等が挙げられる。更には4−メタクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−アクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−メタクリロイルオキシフェニルジメチルスルホニウム、4−アクリロイルオキシフェニルジメチルスルホニウム、(4−メタクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム等が挙げられる。
より好ましくはトリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、10−フェニルフェノキサチイニウム、S−フェニルジベンゾチオフェニウム等が挙げられる。中でもより好ましくはトリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウムである。
【0022】
なお、スルホニウムカチオンにはアルキル基が直結した所謂アルキルスルホニウムカチオンもあるが、特に4−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウムカチオンのような高エネルギー線や求核剤に対して高活性なアルキルスルホニウムカチオンと2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロポキシ)プロパン酸アニオンとの組み合わせにおいては、それ自身又はレジスト溶液中での安定性が低いことが多く、好ましくない。安定性を持たせるには、上記一般式(1−1)のような所謂トリアリールスルホニウムカチオンであることが望ましい。
【0023】
本発明に用いる特定カルボン酸は、米国特許第3271341号明細書等に記載されている。カルボン酸やカルボン酸リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩を原料とし、上記一般式(1−1)で示されるスルホニウム塩のアニオンとして用いることができる。
スルホニウムカチオンの合成は公知であり、例えば特開2007−145797号公報、特開2009−7327号公報、特開2009−91350号公報を参考に合成できる。
重合可能なスルホニウムカチオンに関しては、特開平4−230645号公報、特開2005−84365号公報等を参考にすることができ、これら重合可能なスルホニウム塩は後述する高分子量体の構成成分のモノマーとして用いることができる。
上記の2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロポキシ)プロパン酸及びその塩とスルホニウムカチオンのイオン交換反応はジクロロメタン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル等の有機溶剤単独又は水を併用することで行うことができ、副生する塩成分を除去した後に再結晶やクロマトグラフィーなどの常法によって精製することができる。
【0024】
本発明で使用される、一般式(1−1)で示される特定カルボン酸=スルホニウム塩は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明のレジスト材料における、式(1−1)で示される特定カルボン酸=スルホニウム塩の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲であればいずれでもよいが、レジスト材料中の(C)ベース樹脂100質量部に対し0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜8質量部である。割合が多すぎる場合には感度の低下や解像性の劣化の問題が起きる可能性がある。
【0026】
次いで、下記一般式(1−2)で示される光酸発生剤について詳述する。
【化12】
(式中、R
1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を表す。R
2は水素原子又はトリフルオロメチル基を表す。Arはヘテロ原子を含んでもよい置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、複数のAr同士が直接、又は酸素原子、メチレン基、スルホン基又はカルボニル基を介して結合していてもよい。)
【0027】
一般式(1−2)中、R
1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を表す。R
1に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。R
1の炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよいが、炭素数6〜30であることが、微細パターン形成において高解像性を得る上ではより好ましい。R
1がアリール基である場合は、形成されるレジストパターンの側壁の滑らかさに劣ることがあり、好ましくない。R
1として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、3−シクロヘキセニル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−アダマンチルメチル基、ノルボルニル基、ノルボルニルメチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、テトラシクロドデカニルメチル基、ジシクロヘキシルメチル基、イコサニル基、アリル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、テトラヒドロフリル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メチルチオメチル基、アセトアミドメチル基、トリフルオロエチル基、(2−メトキシエトキシ)メチル基、アセトキシメチル基、2−カルボキシ−1−シクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、4−オキソ−1−アダマンチル基、3−オキソシクロヘキシル基を例示できるが、これらに限定されない。
【0028】
一般式(1−2)中、R
2は水素原子又はトリフルオロメチル基を表す。R
2がトリフルオロメチル基である場合、一般式(1−2)で示される酸発生剤の溶剤溶解性が優れ、より好ましい。
一般式(1−2)中のArに関しては、一般式(1−1)で説明したものと同様である。
一般式(1−2)のスルホニウム塩の合成に関しては、特開2007−145797号公報、特開2008−106045号公報、特開2009−7327号公報、特開2009−258695号公報に詳しい。
より具体的に好ましい光酸発生剤を例示する。
【0029】
【化13】
(式中、Acはアセチル基、Phはフェニル基を示す。)
【0030】
【化14】
(式中、Acはアセチル基、Phはフェニル基を示す。)
【0031】
上記式(1−2)で示される光酸発生剤の添加量は、レジスト材料中の(C)ベース樹脂100質量部に対し0.1〜40質量部、より好ましくは0.1〜20質量部であることが好ましい。少なすぎると低感度化し、それに起因して所望のパターンが得られず、また多すぎると解像性の劣化や、レジスト現像後又は剥離時において異物の問題が生じるおそれがある。
【0032】
次いで、下記一般式(1−3)で示される光酸発生剤について詳述する。
【化15】
(式中、R
1'は(C)成分のベース樹脂の主鎖を表す。R
2は水素原子又はトリフルオロメチル基を表す。Arはヘテロ原子を含んでもよい置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、複数のAr同士が直接、又は酸素原子、メチレン基、スルホン基又はカルボニル基を介して結合していてもよい。)
【0033】
一般式(1−3)中、R
1'はベース樹脂の主鎖を示すが、ビニル基又はイソプロペニル基に直接あるいは連結基を介して結合した単量体を、ベース樹脂製造の際に共重合させて、酸発生剤をベース樹脂に組み込むことが好ましい。
【0034】
この場合、上記式(1−3)の光酸発生剤としては、ベース樹脂、特に後述する一般式(3)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位と、下記一般式(4)〜(6)で示される繰り返し単位のいずれか1種以上を含む高分子化合物(ベース樹脂)に、下記一般式(7)で示される繰り返し単位として組み込むことが好ましい。
【化16】
(式中、R
3'は水素原子又はメチル基を示す。Lは単結合、又はエーテル結合(−O−)又はエステル結合(−COO−)を有してもよい好ましくは炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アリーレン基、これらの組み合わせ等の2価炭化水素基である。R
2、Arは上記の通りである。)
【0035】
ビニル基、イソプロペニル基と連結基を介して結合したアニオンの例を下記に示す。下記式は重合前の単量体であり、トリアリールスルホニウムカチオンは省略している。
【化17】
【0038】
一般式(1−3)中、R
2は水素原子又はトリフルオロメチル基を表す。R
2がトリフルオロメチル基である場合、一般式(1−3)で示される酸発生剤の溶剤溶解性が優れ、より好ましい。
一般式(1−3)中のArに関しては、一般式(1−1)で説明したものと同様である。
一般式(1−3)のスルホニウム塩の合成に関しては、特開2008−133448号公報、特開2009−217253号公報、特開2010−77404号公報、特開2010−116550号公報に詳しい。
【0039】
一般式(1−3)で示される酸発生剤において、R
1'は(C)ベース樹脂の主鎖を表し、式(1−3)の単位が後述するレジストベース樹脂中に含有される。この場合、酸発生剤からの発生酸がポリマーに結合しているため、酸拡散を高度に抑制可能であり、特に、パターンピッチ80nm以下の微細パターン形成を目指す際には好ましい。この場合の繰り返し単位として、より具体的には下記の繰り返し単位を例示できるが、これらに限定されない。
【0040】
【化20】
(式中、Phはフェニル基を示す。)
【0041】
一般式(1−3)に対応する繰り返し単位がレジストベース樹脂中に含有される場合の、一般式(1−3)に対応する繰り返し単位の含有率は、ベース樹脂中全繰り返し単位に対して、0.2〜20モル%とすることが好ましく、0.5〜15モル%とすることがより好ましい。含有率が低すぎると、導入効果が得られない場合があり、含有率が高すぎると、ベース樹脂の溶剤溶解性が低下し、塗布欠陥が増加する場合がある。
【0042】
本発明のレジスト材料に配合される、一般式(1−2)、(1−3)で示される酸発生剤において、アニオン部スルホナート基のα位はジフルオロメチレン基である。このため、これら酸発生剤からの発生酸はトリフルオロメタンスルホン酸等と同様の超強酸であり、露光部におけるレジストベース樹脂の分解反応を十分進行させることが可能となり、高い溶解コントラストを与える。加えて一般式(1−2)で示される酸発生剤の場合にはアニオン部のアシルオキシ基の存在により極性・分子量を増し、発生酸の揮発性・拡散速度を制御し、ひいては微細パターンの解像性向上に寄与するものである。一般式(1−3)で示される酸発生剤の場合には(C)成分のベース樹脂に取り込まれることにより発生酸の拡散を制御し、微細パターンの解像性向上に寄与するものである。一般式(1−2)、(1−3)中のR
1、R
2、Arの可能な選択肢の中から適切なものを選ぶことにより、本発明で使用される酸発生剤の透過率、酸発生効率、溶剤溶解性、極性、親水性、膜内分布、安定性、また、発生酸の酸性度、拡散速度、揮発性、ベース樹脂との親和性などの特性を、用いるレジストベース樹脂、露光方法などに応じて調節することができ、ひいては解像性能などのレジスト材料の性能を最適に調整することができるものである。
【0043】
本発明で使用される、一般式(1−2)、(1−3)で示される酸発生剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、露光波長における透過率が低い酸発生剤を用い、その添加量でレジスト膜中の透過率を制御することもできる。更に、必要に応じて、他の既知の酸発生剤と組み合わせて用いることも可能である。これに関しては後述する。
【0044】
次いで、(C)酸不安定基で保護された酸性官能基を有するアルカリ現像液不溶又は難溶の樹脂であって、該酸不安定基が脱保護されたときにアルカリ現像液可溶となるベース樹脂の詳述を行う。
【0045】
本発明で使用される(C)成分のベース樹脂は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、シクロオレフィンと無水マレイン酸との交互共重合系、更にビニルエーテル類又は(メタ)アクリル酸エステルを含む共重合系、ポリノルボルネン系、シクロオレフィン開環メタセシス重合系、シクロオレフィン開環メタセシス重合体水素添加物等が挙げられるが、これらの重合系ポリマーに限定されることはない。ベース樹脂は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。ポジ型レジスト材料の場合、カルボキシル基の水酸基を酸不安定基で置換することによって、未露光部の溶解速度を下げる場合が一般的である。
【0046】
また、本発明で使用される(C)成分のベース樹脂は、下記一般式(3)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位を必須として有することに加えて、下記一般式(4)〜(6)で示される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することができる。
【化21】
(式中、R
3は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R
4はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基を示す。XAは酸不安定基を示す。YLはラクトン構造を有する置換基を示す。ZAは水素原子、炭素数1〜15のフルオロアルキル基、又は炭素数1〜15のフルオロアルコール含有置換基を示す。)
なお、上述した式(1−3)で示される光酸発生剤を用いる場合、上記繰り返し単位に加えて、上記式(7)で示される繰り返し単位を共重合することができる。
【0047】
上記一般式(3)で示される繰り返し単位を含有する重合体は、酸の作用で分解してカルボン酸を発生し、アルカリ可溶性となる重合体を与える。酸不安定基XAとしては種々用いることができるが、具体的には下記一般式(L1)〜(L4)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【0049】
ここで、破線は結合手を示す(以下、同様)。
また、式(L1)において、R
L01、R
L02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等が例示できる。R
L03は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができる。具体的な直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等が例示できる。具体的な置換アルキル基としては、下記のものが例示できる。
【0051】
R
L01とR
L02、R
L01とR
L03、R
L02とR
L03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはR
L01、R
L02、R
L03のうち環形成に関与する基はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0052】
式(L2)において、R
L04は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(L1)で示される基を示し、三級アルキル基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示でき、トリアルキルシリル基としては、具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示でき、オキソアルキル基としては、具体的には3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示できる。yは0〜6の整数である。
【0053】
式(L3)において、R
L05は炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、置換されていてもよいアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示でき、置換されていてもよいアリール基としては、具体的にはフェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。m’は0又は1、n’は0、1、2、3のいずれかであり、2m’+n’=2又は3を満足する数である。
【0054】
式(L4)において、R
L06は炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはR
L05と同様のもの等が例示できる。R
L07〜R
L16はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の1価炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。R
L07〜R
L16はそれらの2個が互いに結合してそれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく(例えば、R
L07とR
L08、R
L07とR
L09、R
L07とR
L10、R
L08とR
L10、R
L09とR
L10、R
L11とR
L12、R
L13とR
L14等)、その場合にはその結合に関与するものは炭素数1〜15の2価炭化水素基を示し、具体的には上記1価炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、R
L07〜R
L16は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい(例えば、R
L07とR
L09、R
L09とR
L15、R
L13とR
L15、R
L14とR
L15等)。
【0055】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基が例示できる。
【化24】
【0056】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0057】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0058】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−n−プロピルシクロペンチル基、1−イソプロピルシクロペンチル基、1−n−ブチルシクロペンチル基、1−sec−ブチルシクロペンチル基、1−シクロヘキシルシクロペンチル基、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル基、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル基、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル基、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル基等が例示できる。
【0059】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化25】
【0060】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)中、破線は結合位置及び結合方向を示す。R
L41はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)には、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るが、前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0061】
例えば、前記一般式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)、(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化26】
【0062】
また、上記一般式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化27】
【0063】
上記一般式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)及び(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
なお、式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する3級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50モル%以上であることが好ましく、exo比率が80モル%以上であることが更に好ましい。
【0065】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化29】
【0066】
また、炭素数4〜20の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基としては、具体的にはR
L04で挙げたものと同様のもの等が例示できる。
【0067】
前記一般式(3)で示される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化30】
【0073】
前記一般式(4)で示される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化36】
【0074】
前記一般式(5)で示される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化37】
【0077】
前記一般式(6)で示される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化40】
【0079】
更に、本発明の高分子化合物には、下記一般式で示されるスルホニウム塩(d1)、(d2)のいずれかを共重合することもできる。
【化42】
(式中、R
20、R
28は水素原子又はメチル基、R
21は単結合、フェニレン基、−O−R
33−、又は−C(=O)−Y−R
33−である。Yは酸素原子又はNH、R
33は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。R
22、R
23、R
29、R
30、R
31は同一又は異種の炭素数6〜12のアリール基を示し、アリール基の水素原子の一部が直鎖状、 分岐状又は環状の炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシル基やハロゲン原子、トリフルオロメチル基等で置換されていてもよく、互いの環が直接あるいはメチレン基、酸素原子、カルボニル基、スルホニル基、スルホン基等でつながれていてもよい。Z
0は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R
32−、又は−C(=O)−Z
1−R
32−である。Z
1は酸素原子又はNH、R
32は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。M
-は非求核性対向イオンを表す。)
【0080】
本発明のレジスト材料に用いられる高分子化合物は、上記以外の炭素−炭素二重結合を含有する単量体から得られる繰り返し単位、例えば、メタクリル酸メチル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデセン誘導体などの環状オレフィン類、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、その他の単量体から得られる繰り返し単位を含んでいてもよい。また、開環メタセシス重合体の水素添加物は特開2003−66612号公報に記載のものを用いることができる。
【0081】
本発明のレジスト材料に用いられる高分子化合物の重量平均分子量は、1,000〜500,000、好ましくは3,000〜100,000である。この範囲を外れると、エッチング耐性が極端に低下したり、露光前後の溶解速度差が確保できなくなって解像性が低下したりすることがある。分子量の測定方法はポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)が挙げられる。
【0082】
本発明のレジスト材料に用いられる(C)成分の高分子化合物において、各単量体から得られる各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば以下に示す範囲(モル%)とすることができるが、これに限定されるものではない。
(I)上記式(3)で示される構成単位の1種又は2種以上を1モル%以上50モル%以下、好ましくは5〜40モル%、より好ましくは10〜30モル%含有し、
(II)上記式(4)〜(6)で示される構成単位の1種又は2種以上を50〜99モル%、好ましくは60〜95モル%、より好ましくは70〜90モル%含有し、必要に応じ、
(III)上記式(d1)〜(d3)で示される構成単位の1種又は2種以上を0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%、より好ましくは0〜10モル%含有し、更に必要に応じ、
(IV)その他の単量体に基づく構成単位の1種又は2種以上を0〜80モル%、好ましくは0〜70モル%、より好ましくは0〜50モル%含有することができる。
【0083】
なお、式(1−3)の光酸発生剤として上記式(7)で示される繰り返し単位を含む場合、式(3)で示される繰り返し単位は1〜50モル%、好ましくは5〜40モル%、より好ましくは10〜30モル%、
式(4)〜(6)で示される繰り返し単位の1種又は2種以上を合計で48.2〜98.8モル%、好ましくは59.5〜94.5モル%、より好ましくは69.5〜89.5モル%、
式(7)で示される繰り返し単位を0.2〜20モル%、好ましくは0.5〜15モル%とすることが好ましい。
【0084】
上記高分子化合物は1種に限らず2種以上を添加することができる。複数種の高分子化合物を用いることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0085】
本発明で使用される(D)成分の有機溶剤としては、ベース樹脂、酸発生剤、特定カルボン酸=スルホニウム塩、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
本発明では、これらの有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れている1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン及びその混合溶剤が好ましく使用される。
有機溶剤の使用量は、ベース樹脂100質量部に対して200〜5,000質量部、特に400〜3,000質量部が好適である。
【0087】
また、その他の添加剤として
(E)クエンチャー、
更に必要により
(S)水不溶又は難溶でアルカリ現像液可溶な界面活性剤、及び/又は水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤(疎水性樹脂)等を含有することができる。
(E)成分のクエンチャーや(S)水不溶又は難溶でアルカリ現像液可溶な界面活性剤、及び/又は水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤、更には上記光酸発生剤以外の光酸発生剤、(F)有機酸誘導体及び/又はフッ素置換アルコールなどの詳細については、特開2009−269953号公報又は特開2010−215608号公報等の記載に詳しい。
【0088】
上記一般式(1−2)で示される光酸発生剤以外の他の光酸発生剤を添加する場合は、紫外線、遠紫外線、電子線、EUV、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線等の高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでもかまわない。好適な光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシジカルボキシイミド、O−アリ−ルスルホニルオキシム、O−アルキルスルホニルオキシム等の光酸発生剤等がある。以下に詳述するが、これらは単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0089】
スルホニウム塩は、スルホニウムカチオンとスルホネートあるいはビス(置換アルキルスルホニル)イミド、トリス(置換アルキルスルホニル)メチドの塩であり、スルホニウムカチオンとしては上記式(1−2)で説明したスルホニウムカチオンを挙げることができる。スルホネートとしては、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ヘプタフルオロプロパンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、トリデカフルオロヘキサンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、1,1−ジフルオロ−2−ナフチルエタンスルホネート、1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(ノルボルナン−2−イル)エタンスルホネート、1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−3−エン−8−イル)エタンスルホネート、2−ベンゾイルオキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート、1,1−ジフルオロ−2−トシルオキシエタンスルホネート、アダマンタンメトキシカルボニルジフルオロメタンスルホネート、1−(3−ヒドロキシメチルアダマンタン)メトキシカルボニルジフルオロメタンスルホネート、メトキシカルボニルジフルオロメタンスルホネート、1−(ヘキサヒドロ−2−オキソ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−6−イルオキシカルボニル)ジフルオロメタンスルホネート、4−オキソ−1−アダマンチルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホネート等が挙げられ、ビス(置換アルキルスルホニル)イミドとしてはビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミド、パーフルオロ(1,3−プロピレンビススルホニル)イミド等が挙げられ、トリス(置換アルキルスルホニル)メチドとしてはトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドが挙げられ、これらの組み合わせのスルホニウム塩が挙げられる。
【0090】
ヨードニウム塩、N−スルホニルオキシジカルボキシイミド型光酸発生剤、O−アリールスルホニルオキシム化合物あるいはO−アルキルスルホニルオキシム化合物(オキシムスルホネート)型光酸発生剤については特開2009−269953号公報に記載の化合物が挙げられる。
中でも好ましく用いられるその他の酸発生剤としてはトリフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリフェニルスルホニウム パーフルオロ(1,3−プロピレンビススルホニル)イミド、トリフェニルスルホニウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、N−ノナフルオロブタンスルホニルオキシ−1,8−ナフタレンジカルボキシイミド、2−(2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシイミノ)ブチル)フルオレン、2−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシイミノ)ペンチル)フルオレン等が挙げられる。
【0091】
なお、他の酸発生剤を配合する場合、他の酸発生剤の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲であればいずれでもよいが、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し0〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部である。光酸発生剤の割合が多すぎる場合には、解像性の劣化や、現像/レジスト膜剥離時の異物の問題が起きる可能性がある。この他の酸発生剤は、単独でも2種以上混合して用いることもできる。
【0092】
式(1−2)で示される酸発生剤と他の酸発生剤との合計配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0.1〜40質量部、特に1〜20質量部が好ましい。
【0093】
(E)成分のクエンチャーは、光酸発生剤より発生する酸などがレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物が適しており、このようなクエンチャーの配合により、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上させることができる。
また、これらクエンチャーを添加することで基板密着性を向上させることもできる。
【0094】
このようなクエンチャーとしては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等が好適に用いられる。
この場合、これらの中で、エーテル、カルボニル、エステル、アルコール等の極性官能基を有する三級アミン類、アミンオキシド類、ベンズイミダゾール類、アニリン類などが好ましく用いられる。
【0095】
三級アミン類のうち、より好ましくは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2〜20の脂肪族カルボン酸=2−モルホリノエチルエステル、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2〜10のアルキル基を有するトリアルキルアミンが挙げられる。これらの炭素原子に結合する水素原子の一部がヒドロキシル基に置換されていてもよく、エーテル結合、エステル結合を有していてもよい。より具体的には2−メトキシ酢酸2−モルホリノエチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−モルホリノエチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−モルホリノエチル、ヘキサン酸2−モルホリノエチル、オクタン酸2−モルホリノエチル、デカン酸2−モルホリノエチル、ラウリン酸2−モルホリノエチル、ミリスチン酸2−モルホリノエチル、パルミチン酸2−モルホリノエチル、ステアリン酸2−モルホリノエチル、シクロヘキサンカルボン酸2−モルホリノエチル、アダマンタンカルボン酸2−モルホリノエチル、4−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]モルホリン、4−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]モルホリン、4−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]モルホリン、トリス(2−メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシエトキシ)エチル}アミン、卜リス(2−アセトキシエチル)アミン、トリス(2−プロピオニルオキシエチル)アミン、トリス(2−ブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−イソブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−バレリルオキシエチル)アミン、トリス(2−ピバロイルオキシエチル)アミンなどが挙げられる。
【0096】
ベンズイミダゾール類のうち、より好ましくはベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、1−(2−アセトキシエトキシ)ベンズイミダゾール、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)ベンズイミダゾールが用いられる。
【0097】
アニリン類のうち、より具体的にアニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、トリメチルアニリン、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,6−ジニトロアニリン、3,5−ジニトロアニリン、N,N−ジメチルトルイジン等が好ましく用いられる。
【0098】
また一級あるいは二級アミンをtBOC(tert−ブトキシカルボニル)保護化した化合物が挙げられる。また、特開2007−298569号公報、特開2010−20204号公報などに記載の化合物も好ましく用いることができる。
【0099】
なお、これらクエンチャーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、配合量は、ベース樹脂100質量部に対し0.001〜8質量部、特に0.01〜4質量部が好ましい。配合量が0.001質量部より少ないと配合効果がなく、8質量部を超えると感度が低下しすぎる場合がある。
【0100】
本発明のレジスト材料中には界面活性剤(S)成分を添加することができ、特開2010−215608号公報や特開2011−16746号公報に記載の(S)定義成分を参照することができる。
水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤としては、上記公報記載の界面活性剤の中でもFC−4430,サーフロンS−381,サーフィノールE1004,KH−20,KH−30、及び下記構造式(surf−1)にて示したオキセタン開環重合物が好適である。これらは単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【化43】
ここで、R、Rf、A、B、C、m、nは、上述の記載に拘わらず、上記式(surf−1)のみに適用される。Rは2〜4価の炭素数2〜5の脂肪族基を示し、具体的には2価のものとしてエチレン、1,4−ブチレン、1,2−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン、1,5−ペンチレンが挙げられ、3価又は4価のものとしては下記のものが挙げられる。
【化44】
(式中、破線は結合手を示し、それぞれグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから派生した部分構造である。)
【0101】
これらの中で好ましく用いられるのは、1,4−ブチレン又は2,2−ジメチル−1,3−プロピレンである。Rfはトリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基を示し、好ましくはトリフルオロメチル基である。mは0〜3の整数、nは1〜4の整数であり、nとmの和はRの価数を示し、2〜4の整数である。Aは1、Bは2〜25の整数、Cは0〜10の整数を示す。好ましくはBは4〜20の整数、Cは0又は1である。また、上記構造の各構成単位はその並びを規定したものではなくブロック的でもランダム的に結合してもよい。部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤の製造に関しては米国特許第5650483号明細書などに詳しい。
【0102】
水不溶又は難溶でアルカリ現像液可溶な界面活性剤は、ArF液浸露光においてレジスト保護膜を用いない場合、スピンコート後のレジスト表面に配向することによって水のしみ込みやリーチングを低減させる機能を有し、レジスト膜からの水溶性成分の溶出を抑えて露光装置へのダメージを下げるために有用であり、また露光後、ポストベーク後のアルカリ現像時には可溶化し欠陥の原因となる異物にもなり難いため有用である。この界面活性剤は水不溶又は難溶でアルカリ現像液可溶な性質であり、疎水性樹脂とも呼ばれ、特に撥水性が高く滑水性を向上させるものが好ましい。このような高分子型の界面活性剤は下記に示すことができる。
【0103】
【化45】
(式中、R
114はそれぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基、R
115はそれぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基を示し、同一単量体内のR
115はそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、合計して炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基又はフッ素化アルキレン基を示す。R
116はフッ素原子又は水素原子、又はR
117と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数の和が3〜10の非芳香環を形成してもよい。R
117は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基で、1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。R
118は1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基で、R
117とR
118が結合してこれらが結合する炭素原子と共に非芳香環を形成していてもよく、その場合、R
117、R
118及びこれらが結合する炭素原子とで炭素数の総和が2〜12の3価の有機基を表す。R
119は単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基、R
120は同一でも異なってもよく、単結合、−O−、又は−CR
114R
114−である。R
121は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、同一単量体内のR
115と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜6の非芳香環を形成してもよい。R
122は1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、又は1,4−ブチレン基を示し、Rfは炭素数3〜6の直鎖状のパーフルオロアルキル基、又は3H−パーフルオロプロピル基、4H−パーフルオロブチル基、5H−パーフルオロペンチル基、又は6H−パーフルオロヘキシル基を示す。X
2はそれぞれ同一でも異なってもよく、−C(=O)−O−、−O−、又は−C(=O)−R
123−C(=O)−O−であり、R
123は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基である。また、0≦(a’−1)<1、0≦(a’−2)<1、0≦(a’−3)<1、0<(a’−1)+(a’−2)+(a’−3)<1、0≦b’<1、0≦c’<1であり、0<(a’−1)+(a’−2)+(a’−3)+b’+c’≦1である。)
より具体的に上記単位を示す。
【0105】
これら水不溶又は難溶でアルカリ現像液可溶な界面活性剤は特開2008−122932号公報、特開2010−134012号公報、特開2010−107695号公報、特開2009−276363号公報、特開2009−192784号公報、特開2009−191151号公報、特開2009−98638号公報、特開2011−250105号公報、特開2011−42789号公報も参照できる。
【0106】
上記高分子型の界面活性剤の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜50,000、より好ましくは2,000〜20,000である。この範囲から外れる場合は、表面改質効果が十分でなかったり、現像欠陥を生じたりすることがある。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値を示す。添加量は、レジスト材料のベース樹脂100質量部に対して0.001〜20質量部、好ましくは0.01〜10質量部の範囲である。これらは特開2010−215608号公報に詳しい。
【0107】
また、本発明のレジスト材料に、酸により分解し酸を発生する化合物(酸増殖化合物)を添加してもよい。これらの化合物については特開2009−269953号公報又は特開2010−215608号公報を参照できる。
【0108】
本発明のレジスト材料における酸増殖化合物の添加量としては、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。添加量が多すぎる場合は拡散の制御が難しく、解像性の劣化、パターン形状の劣化が起こる。
【0109】
更に、有機酸誘導体、酸の作用によりアルカリ現像液への溶解性が変化する重量平均分子量3,000以下の化合物(溶解阻止剤)の添加は任意であるが、上記各成分と同様に特開2009−269953号公報又は特開2010−215608号公報に記載の化合物を参照できる。
【0110】
本発明では、更に上述したレジスト材料を用いたパターン形成方法を提供する。
本発明のレジスト材料を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えば、集積回路製造用の基板(Si,SiO
2,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜等)にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間プリベークする。次いで目的のパターンを形成するためのマスクを上記のレジスト膜上にかざし、マスクとレジスト膜の間を液浸するImmersion法(液浸露光法)を採用し、ArFエキシマレーザーを露光量1〜200mJ/cm
2、好ましくは10〜100mJ/cm
2となるように照射する。
この場合には水に不溶な保護膜をレジスト膜状に用いることも可能である。次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜140℃、1〜3分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【0111】
上述した水に不溶な保護膜はレジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられ、大きく分けて2種類ある。1種類はレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型と、もう1種類はアルカリ現像液に可溶でレジスト膜可溶部の除去と共に保護膜を除去するアルカリ可溶型である。
後者は、特に水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。
【0112】
上述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料とすることもできる。
【0113】
また、パターン形成方法の手段として、フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤などの抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0114】
更に、ArFリソグラフィーの32nmまでの延命技術として、ダブルパターニング法が挙げられる。ダブルパターニング法としては、1回目の露光とエッチングで1:3トレンチパターンの下地を加工し、位置をずらして2回目の露光によって1:3トレンチパターンを形成して1:1のパターンを形成するトレンチ法、1回目の露光とエッチングで1:3孤立残しパターンの第1の下地を加工し、位置をずらして2回目の露光によって1:3孤立残しパターンを第1の下地の下に形成された第2の下地を加工してピッチが半分の1:1のパターンを形成するライン法が挙げられる。
【0115】
なお、本発明のパターン形成方法の現像液には上述のように0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用いることができるが、有機溶剤を用いて未露光部を現像/溶解させるネガティブトーン現像の手法を用いてもよい。
【0116】
この有機溶剤現像には現像液として2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上を用いることができる。
【実施例】
【0117】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0118】
[合成例1]
トリフェニルスルホニウム=2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロポキシ)プロパノアート(PAG−1)の合成
2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロポキシ)プロパン酸6.6g(0.02モル)とトリフェニルスルホニウムクロリド水溶液(0.03モル相当)とメチルイソブチルケトン60gとジクロロメタン25gを加えて有機層を分取した。次いで有機層を水50gで3回洗浄し、有機層の溶剤を減圧除去した後にジイソプロピルエーテルを加えて結晶化を行った。濾過乾燥して4.2gの白色結晶を得た。収率35%。得られた目的物のスペクトルデータを以下に示す。
【0119】
IR(cm
-1):3471、1705、1477、1449、1375、1300、1233、1194、1142、1075、1029、998、987、797、749、720、683。
1H−NMR(500MHz、CDCl
3中):δ=7.6〜7.8(15H、m)ppm。
19F−NMR(470MHz、CDCl
3中):
図1参照
【0120】
[合成例2]4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム=2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロポキシ)プロパノアート(PAG−2)の合成
2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロポキシ)プロパノアート13.2g(0.04モル)と4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムブロミド水溶液(0.06モル相当)を用いる以外は合成例1と同様にして9.5gの白色結晶を得た。収率37%。得られた目的物のスペクトルデータを以下に示す。
【0121】
IR(cm
-1):3410、3059、2962、2869、2659、1621、1477、1446、1382、1268、1072、997、836、750、686。
1H−NMR(500MHz、CDCl
3中):δ=1.3(9H、s)、7.5〜7.6(8H、m)、7.7〜7.9(6H、m)ppm。
【0122】
[実施例1−1〜6及び比較例1−1〜3]
上記合成例で示した光酸発生剤と下記ポリマーA、ポリマーB又はポリマーCをベース樹脂として使用し、表1に示す組成で下記界面活性剤A(オムノバ社製)0.01質量%を含む溶剤中に溶解してレジスト材料を調合し、更にレジスト材料を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過することにより、レジスト液をそれぞれ調製した。
なお、表1において、溶剤及びクエンチャー、光酸発生剤、アルカリ可溶型界面活性剤(SF−1)は下記の通りである。
【0123】
【化47】
【0124】
PAG−1、PAG−2:上述の通り
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
GBL:γ−ブチロラクトン
CyHO:シクロヘキサノン
PAG−A:トリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート
PAG−B:4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート
PAG−C:4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム 2−(4−オキソアダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート
PAG−X:トリフェニルスルホニウム ノナフルオロ−1−ブタンスルホネート
PAG−Y:トリフェニルスルホニウム 10−カンファースルホネート
PAG−Z:トリフェニルスルホニウム ヘプタフルオロ−1−プロパノエート
BASE−1:2,6−ジイソプロピルアニリン
【0125】
SF−1:下記ポリマー1(特開2008−122932号公報に記載の化合物)
ポリ(メタクリル酸=3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−2−トリフルオロメチルプロピル・メタクリル酸=1,1,1−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−6−メチル−2−トリフルオロメチルヘプタ−4−イル)
重量平均分子量(Mw)=7,300、分散度(Mw/Mn)=1.86
【化48】
界面活性剤A:3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキセタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール共重合物(オムノバ社製)(構造式を以下に示す。)
【化49】
【0126】
【表1】
【0127】
レジスト材料の評価
[実施例2−1〜6及び比較例2−1〜3]
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学工業(株)製、ARC−29A)を塗布し、200℃で60秒間ベークして作製した反射防止膜(100nm膜厚)基板上にレジスト溶液をスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、90nm膜厚のレジスト膜を作製した。これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S610C、NA=1.30、二重極、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて液浸露光し、任意の温度で60秒間ベーク(PEB)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で60秒間現像を行った。
【0128】
(評価方法)
レジストの評価は、40nmの1:1ラインアンドスペースパターンを対象とし、電子顕微鏡にて観察、ライン寸法幅が40nmとなる露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm
2)とした。最適露光量におけるパターン形状を比較し、以下の基準により良否を判別した。
良好:パターンが矩形であり、側壁の垂直性が高い。
不良:パターン側壁の傾斜が大きいテーパー形状、又はトップロスによるトップラ
ウンディング形状。
更に、40nmの1:1ラインアンドスペースのライン部の線幅変動をSEMにより測定し、ライン幅ラフネス(LWR)とした(30点測定、3σ値を算出)。LWR値が小さいほど、ラインパターンの揺らぎがなく、良好である。
本評価方法においては、良:3.0nm以下、悪:3.1nm以上とした。
また、露光量を大きくすることでライン寸法を細らせた場合に、ラインが倒れずに解像する最小寸法を求め、倒れ限界(nm)とした。数値が小さいほど倒れ耐性が高く、好ましい。
本評価方法においては、良好:33nm以下、不良:34nm以上とした。
次いで、現像後に形成されたパターン中の欠陥数を欠陥検査装置KLA2800(KLA−Tencor(株)製)により検査し、次式に従って欠陥密度を求めた。
欠陥密度(個/cm
2)=検出された総欠陥数/検査面積
形成したパターン:40nmの1:1ラインアンドスペースの繰り返しパターン
欠陥検査条件:光源UV、検査ピクセルサイズ0.28μm、セルツーセルモード
本評価方法においては、良好:0.05個/cm
2未満、不良:0.05個/cm
2以上とした。
(評価結果)
上記表1に示した本発明のレジスト材料及び比較レジスト材料のPEB温度及び評価結果を下記表2に示す。
【0129】
【表2】
【0130】
上記表2に示した結果より、本発明の特定のスルホニウム塩を含有するレジスト材料がが、良好なパターン形状とLER、倒れ耐性に有効であり、欠陥密度も低いことが確認できた。
【0131】
レジスト膜溶出量の測定
[実施例3−1,2及び4−1,2、比較例3−1,2及び4−1,2]
実施例1と同様にして下記表3に示す組成で調製したレジスト材料の液浸水への溶出量を測定した。各レジスト材料(R−07〜09)及び比較例(R−104)を各々スピンコート法によってシリコン基板上に塗布し、100℃で60秒間ベークし、厚さ100nmのフォトレジスト膜を作製した。露光した後ではPAGの光反応が起こって陽イオンが検出されなくなるため、未露光のフォトレジスト膜について評価を行った。
【0132】
【表3】
【0133】
次いで、このフォトレジスト膜からWEXA−2システム(IMEC)を用いて溶出液を回収した。深さ5mm、長さ50mmの5つのスリットが設定されたステージに、フォトレジスト膜を真空吸着させ、シリンジポンプ(Harvad Apparatus社製)を用いて、スリット毎に表4に示す異なる流量と流速条件で溶出液を回収した。この溶出液中の光酸発生剤(PAG)の陽イオン成分濃度をAgilent社製LC−MS分析装置にて定量した。
【0134】
【表4】
【0135】
それぞれのスリットから測定した陽イオン濃度と液浸時間から溶出量と液浸時間の関係を下記式に近似させ、定数A,Bを求めた。
溶出量:Y=A×B×exp(−Bt)
飽和溶出量:A(mol/cm
2)、時定数:B(s
-1)、液浸時間:t(s)
t=0のときの陽イオン初期溶解速度:A×B(mol/cm
2・s)の測定結果を下記表5に示す。なお、上記公式及び算出方法はProc. SPIE, 6154, 186 (2006)を参照した。
【0136】
【表5】
【0137】
表5の結果より、本発明のレジスト材料は水を用いた液浸露光に際しても陽イオンの溶出がないことが確認された。液浸露光によるパターン形状の変化が少なく、露光機へのダメージが少ないことが期待される。