(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1番目のテンションローラがローラ胴体内に導入した冷却液により冷却される冷却ローラであり、偶数番目のテンションローラのうち少なくとも最上流側のテンションローラが凹状溝を有する、請求項1に記載の板ガラスの製造装置。
1番目のテンションローラが凹状溝を有する場合はそれ以降の奇数番目のテンションローラが、2番目のテンションローラが凹状溝を有する場合はそれ以降の偶数番目のテンションローラが、中央部の径に比べて小径の端部を有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の板ガラスの製造装置。
奇数番目のテンションローラの軸心の位置が、隣接する偶数番目のテンションローラの軸心の位置よりも低い位置にある、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の板ガラスの製造装置。
成形可能温度にあるガラスリボンを軸心が水平方向にかつガラスリボンの移動方向に対して直交して配置された複数のテンションローラの間を通して成形して成形不能温度のガラスリボンとする板ガラスの製造方法において、
成形可能温度にあるガラスリボンを、隣接するテンションローラの周面間隔をその周面間に存在するガラスリボンの厚さよりも広く隔離してガラスリボンの上下に交互に配置された複数のテンションローラの間に通して成形し、
ガラスリボンの幅方向両端部に、円周方向に形成された凹状溝を両端部に有するテンションローラによって略凸条部を形成し、
複数のテンションローラの少なくとも一部に蒸気発生テンションローラを使用し、ガラスリボンと蒸気発生テンションローラ周面との間に蒸気を介在させてガラスリボンをテンションローラで支持することを特徴とする板ガラスの製造方法。
成形可能温度にあるガラスリボンを、最初にガラスリボンの下側に設けられた凹状溝を有する蒸気発生テンションローラで支持し、次にガラスリボンの上側に設けられた蒸気発生テンションローラで支持する、請求項7に記載の板ガラスの製造方法。
成形可能温度にあるガラスリボンを、最初にガラスリボンの下側に設けられた冷却ローラで支持して冷却し、次にガラスリボンの上側に設けられた凹状溝を有する蒸気発生テンションローラで支持する、請求項7に記載の板ガラスの製造方法。
成形可能温度にあるガラスリボンを、最初にガラスリボンの下側に設けられた凹状溝を有する蒸気発生テンションローラで支持し、次にガラスリボンの上側に設けられた凹状溝を有する蒸気発生テンションローラで支持する、請求項7に記載の板ガラスの製造方法。
蒸気発生テンションローラをガラスリボンの移動方向に対して逆方向に回転させるか、または、順方向に回転させる場合はガラスリボンの移動速度の1.1倍以上の周速度で回転させる、請求項7乃至11のいずれか1項に記載の板ガラスの製造方法。
【背景技術】
【0002】
ガラスリボンの成形法として従来からアップドロー法、ダウンドロー法、フュージョン法、及び錫フロート法が周知であるが、その他、特開2001−180949号公報(以下、’949公報)、及び特開2006−28008号公報(以下、’008公報)に示されるように、溶融ガラス供給部から供給された溶融ガラスを、ローラによってガラスリボンに成形する板ガラスの製造装置も提案されている。なお、ここでいうガラスリボンとは、溶解炉から排出された直後の粘性の低い状態から形状がほぼ確定した後の板状のガラスが連続したリボン状のものをいう。
【0003】
’949公報、及び’008公報に開示された板ガラスの製造装置は、上下に配置された圧延ローラによって溶融ガラスを挟み込み、溶融ガラスをローラの圧力によって圧延することにより薄板状のガラスリボンに成形するものである。
【0004】
’949公報の圧延ローラは、ローラ胴体の周面が水を内部に包含可能なローラ基材で形成されるとともに、ローラの両端部が、水を含有しない基材で形成され、ローラ基材中に導入された水が、溶融ガラスの熱によりローラ周面から瞬間的に気化するように構成される。これにより、溶融ガラスとローラとの間に蒸気膜の薄層が形成されるとともに、蒸気膜の薄層による断熱層が形成されるため、溶融ガラスが急激に冷却されるのを防止することができる。また、溶融ガラスと両ローラとの間に蒸気膜の薄層が形成されることによって、ローラの面が溶融ガラスに直接接触しなくなることから、成形されたガラスリボンの面にローラの接触跡、皺、凸凹が転写しないという利点がある。
【0005】
’008公報の圧延ローラは、’949公報の圧延ローラと基本的に構造が同一であるが、上下に配置されたローラの一方における気体クッションの気体圧が、その一方のローラと溶融ガラスとの間のローラの軸に平行する線状の接触部が形成されるように調整されている。
【0006】
ここで圧延ローラとは、ガラスリボンの上下に水平方向に配置された一対のローラにおいて、2つのローラの中心軸を結んで形成される面とガラスリボンの面とが略垂直をなし、2つのローラの周面の最短距離が想定したガラスリボンの最終板厚にほぼ等しくなるように配置されたローラを指す。このような位置に一対のローラを配置することにより、ガラスリボンは上下のローラからローラ圧を受けて圧延される。すなわち、’949公報、及び’008公報の板ガラスの製造装置は、圧延方式のロールアウト法による製造装置に類似している。
【0007】
ところで、圧延ローラを使用する’949公報、及び’008公報の製造装置は、ガラスリボンに対して上下に配置されたローラを、基本的にガラスリボンに対して線状に対向させてガラスリボンを圧延する装置なので、ガラスリボンを薄板に成形する領域が線状と極めて小さく、そこで発生する蒸気は瞬時に飛散し、当該部分の蒸気膜を安定的に保持することが困難で、結果としてローラ表面の凹凸をガラスリボンに転写する問題があった。
【0008】
一方、特開2004−26534号公報(以下、’534公報)には、一対のテンションローラとガラスリボン成形装置とを備えた板ガラスの製造装置が開示されている。
【0009】
’534公報の製造装置は、ガラス溶解炉出口のリップ面から流下されたガラスリボンを、一対のテンションローラにS字状に巻き掛けることによりガラスリボンにテンションを付加し、かつ、一対のテンションローラを通過した、成形可能な温度のガラスリボンをさらにガラスリボン成形装置によって所定の厚さのガラスリボンに成形する装置である。
【0010】
’534公報のテンションローラは、’949公報に開示されたローラと略同一構成であり、これらのテンションローラに蒸気膜の薄層を介してガラスリボンがS字状に巻き掛けられる。また、テンションローラの速度をガラスリボンの流下速度よりも高速に設定することでテンションローラとガラスリボンとの界面にファイア・ポリッシング作用を生じさせ、テンションローラを通過中のガラスリボンの両面をファイア・ポリッシングする。これにより、ガラスリボンの面に形成された前記リップ面の面性の転写跡やリップ面先端での脈動跡を消すことができるという利点がある。
【0011】
つまり、’534公報のテンションローラは、テンションローラ自体で溶融ガラスを想定した最終板厚のガラスリボンに成形するものではなく、ガラスリボンの面をファイア・ポリッシングする目的で配置されたものである。ガラスリボンの最終板厚への成形は、このテンションローラの後段に配置されたガラスリボン成形装置によって行われる。このため、テンションローラに供給される溶融ガラスは、テンションローラを通過する際に成形不能な温度まで冷却されないように、例えば’949公報、及び’008公報の溶融ガラスと比較して高温に調整されている。
【0012】
ここでテンションローラとは、圧延ローラの配置と異なり、ガラスリボンの移動方向に引っ張り力がかかるように、ガラスリボンをローラに掛け渡すように配置したローラである。この配置によって、ガラスリボンは、テンションローラの周面に所定長巻き掛けられ、ガラスリボンとローラとの対向面が大きくなり、有効にファイア・ポリシングされる。
【0013】
また、’534公報に開示されたガラスリボン成形装置は、水を内部に包含可能に形成された多数の支持体と、水を支持体に給液する給液装置と、支持体を周回させるベルトコンベアと、成形されたガラスリボンを搬送する搬送駆動ローラとによって構成されている。
【0014】
テンションローラから支持体上に供給されたガラスリボンは、支持体とガラスリボンとの間に形成される蒸気膜の薄層を介して支持体とともに移動されながら想定した最終板厚のガラスリボンに成形されていく。また、支持体上のガラスリボンを搬送方向に引っ張る引張力は、複数の搬送駆動ローラとガラスリボンとの摩擦抵抗によって発生するため、搬送駆動ローラの回転数を可変することにより、成形されるガラスリボンの板厚を制御することができる。
【0015】
ところで、ガラスリボン成形装置を通過中のガラスリボンを搬送方向に引っ張ると、その引張力によってガラスリボンの幅が狭くなり、成形されるガラスリボンの幅が所望の幅よりも狭くなるとともに板厚も所望の板厚よりも厚くなるという問題がある。
【0016】
特開2002−47020号公報(以下、’020公報)には、’534公報のガラスリボン成形装置が有する上記問題を解消した成形装置が開示されている。’020公報の成形装置は、ガラスリボンの幅方向の両端部付近を幅方向に収縮し難い形状に保持しつつ、溶融ガラスをガラスリボンに成形する装置である。具体的には、支持体の両側に凹状溝を形成し、この凹状溝にガラスリボンの幅方向の両端部を自重により折曲させることによって、ガラスリボンの平坦部が幅方向に収縮するのを防止している。この成形装置によれば、ガラスリボンを所望の幅と所望の板厚に成形できるという利点がある。
【0017】
しかしながら、’020公報に開示された板ガラスの製造装置は、多数の支持体、給液装置、ベルトコンベア、及び複数の搬送駆動ローラからなる大掛かりな成形装置が必要となるため装置設備が大型化するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述のように、圧延ローラを使用した’949公報、及び’008公報の製造装置は、圧延ローラによって溶融ガラスを最終板厚のガラスリボンに成形する装置なので、’534公報、及び’020公報に開示された成形装置が不要になり、装置設備が小型化するという利点があるが、ガラスリボンを薄板に成形する領域が線状と極めて小さく、当該部分の蒸気膜を安定的に保持することが難しく、ローラ表面の凹凸をガラスリボンに転写してしまうという欠点があった。
【0019】
一方で、’534公報、及び’020公報の製造装置は、溶融ガラスを一定の板厚のガラスリボンに成形できるという利点があり、また、’020公報の製造装置は所望の幅と所望の板厚のガラスリボンに成形できるという利点があるが、双方の製造装置は大掛かりな成形装置が必要となるので装置設備が大型化するという問題があった。
【0020】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、溶融ガラスを所望の幅と所望の板厚の表面品質の良好なガラスリボンに成形することができるとともに、装置設備を小型化することができる板ガラスの製造装置、及び板ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、連続した溶融ガラスの流れを成形可能温度のガラスリボンとして成形部に供給する溶融ガラスリボン供給部と、該溶融ガラスリボン供給部から供給された成形可能温度のガラスリボンを成形して成形不能温度のガラスリボンとする複数のテンションローラを備えた成形部と、前記成形部の下流側において成形不能温度のガラスリボンを搬出する搬出部とを備え、前記複数のテンションローラは、軸心が水平方向にかつガラスリボンの移動方向に対して直交して配置され、前記複数のテンションローラのうちガラスリボンの移動方向の上流側から奇数番目のテンションローラはガラスリボンの下面側に位置し、偶数番目のテンションローラはガラスリボンの上面側に位置し、前記複数のテンションローラの隣接する奇数番目とその下流の偶数番目のテンションローラにおいて、奇数番目テンションローラの周面の最高位置が偶数番目のテンションローラの周面の最低位置と同じ高さ又はそれよりも高い位置に配置され、かつ隣接する奇数番目と偶数番目のテンションローラの周面間の間隔が当該周面間に存在するガラスリボンの厚さよりも広く、前記複数のテンションローラの奇数番目のテンションローラのうち少なくとも最上流側のテンションローラ、偶数番目のテンションローラのうち少なくとも最上流側のテンションローラ、又は、奇数番目と偶数番目のテンションローラのうち少なくとも最上流側の2本のテンションローラが、両端部の円周方向にガラスリボンの両端部に略凸条部を形成させる凹状溝を有し、前記複数のテンションローラのすべてまたは1番目のテンションローラを除くすべてが、蒸気膜形成剤を内部に包含可能なローラ基材で形成され、該ローラ基材中に包含された蒸気膜形成剤から生じた蒸気がテンションローラ周面とガラスリボン表面との間に供給される構造を有する蒸気発生テンションローラであることを特徴とする板ガラスの製造装置を提供する。
【0022】
本発明の板ガラスの製造装置によれば、溶融ガラスリボン供給部から、成形部のテンションローラのうち最上流の偶数番目及び奇数番目のテンションローラに溶融ガラスが供給されると、ガラスリボンの幅方向の両端部はその自重により、又はガラスリボンに付加されるテンションにより、前記テンションローラのうち一方又は両方のテンションローラの両端部に形成された凹状溝によって略凸状部が形成される。これによりガラスリボンは、その幅方向の収縮が阻止される。そして、このガラスリボンは、下流側の複数のテンションローラを通過中に成形不能な温度まで冷却されて、所望の幅と所望の板厚のガラスリボンに成形される。そして、このガラスリボンは、成形部を通過した後、そのまま搬出部によって搬出される。なお、ガラスリボン両端部の略凸状部とは、ガラスリボンの最端部からガラスリボンの中央方向に入ったところであってもよいし、ガラスリボンの最端部にあってもよい。
【0023】
すなわち、本発明によれば、テンションローラを使用することにより、圧延ローラを使用する’949公報、及び’008公報の欠点を解消でき、かつ、成形部のテンションローラに形成された凹状溝によって、溶融ガラスを所望の幅と所望の板厚のガラスリボンに成形することができる。また、’534公報、及び’020公報のような成形装置を不要とし、成形部を通過したガラスリボンを、構造の簡単な搬出部によって搬送するようにしたので、製造装置の設備が小型になる。
【0024】
また、本発明によれば、テンションローラにおいて、蒸気膜形成剤を内部に包含可能なローラ基材中に、常温付近では気体ではなく、ガラスのガラス転移点で気体である蒸気膜形成剤を液体状態で導入し、ガラスリボンの高熱で蒸気膜形成剤が気化した蒸気膜の薄層を介してガラスリボンにテンションを付加する。これにより、ガラスリボンとテンションローラとの間に蒸気膜の薄層による断熱層が形成されるので、溶融ガラスの急冷を防止することができるとともに、ローラ基材の面がガラスリボンに直接接触しないため、成形されたガラスリボンの面にローラ基材の面との接触跡や、ローラ基材の面の略凸凹が転写せず、品質的に良好なガラスリボンを成形できる。
【0025】
なお、搬出部としては、構造の簡単なローラコンベアを例示することができる。その他、ガラスリボンが略垂直方向に搬出される場合には、ガラスリボンの表裏面に接触するローラを例示することができる。
【0026】
また、凹状溝が形成される最上流の奇数番目又は偶数番目のテンションローラのうち一方のテンションローラとは、ガラスリボンの両端部で自重により略凸状部を形成させる場合においては、奇数番目のテンションローラを指し、一方、ガラスリボンにテンション(引張力)を付加して略凸状部を形成させる場合においては、偶数番目のテンションローラを指す。通常、ガラスリボンは、搬出部とガラスリボンとの摩擦抵抗によって引張力が付加された状態で成形部を通過しており、この引張力を、自重により略凸状部を形成させることが可能な力よりも大きくすることにより、上側のテンションローラの凹状溝によってガラスリボンの両端部に略凸状部を形成させることができる。
【0027】
また、本発明の板ガラスの製造装置において、1番目のテンションローラは凹状溝を有する蒸気発生テンションローラであってもよい。
【0028】
また、本発明の板ガラスの製造装置において、1番目のテンションローラはローラ胴体内部に導入した冷却液により冷却される冷却ローラであってもよく、偶数番目のテンションローラのうち少なくとも最上流側のテンションローラが凹状溝を有していてもよい。
【0029】
本発明によれば、最上流の奇数番目に配置されたテンションローラのみが、いわゆる冷却ローラでありローラ胴体内に導入された冷却液によってローラ胴体が冷却されているので、ガラスリボンは、冷却ローラの胴体の面に摺接されることにより直接冷却される。このようにガラスリボンを最上流の下側の冷却ローラのみによって直接冷却することにより、蒸気膜の薄層を介して溶融ガラスを冷却するテンションローラよりも約3倍の冷却能力を得ることができる。このため、ガラスリボンの下面のローラの凹凸の転写を冷却ローラよりも下流の蒸気膜を形成するテンションローラによって抑制しながら、しかもテンションローラの数を少なくして、装置をよりコンパクトにできる。
【0030】
また、本発明の板ガラスの製造装置において、1番目のテンションローラは凹状溝を有する場合はそれ以降の奇数番目のテンションローラが、2番目のテンションローラが凹状溝を有する場合はそれ以降の偶数番目のテンションローラが、中央部の径に比べて小径の端部を有していてもよい。
【0031】
また、本発明の板ガラスの製造装置において、奇数番目のテンションローラの軸心の位置は、隣接する偶数番目のテンションローラの軸心の位置よりも低い位置にあってもよい。
【0032】
また、本発明の板ガラスの製造装置において、蒸気発生テンションローラは、その周面に蒸気を逃がすための溝を有していてもよい。
【0033】
本発明は、成形可能温度にあるガラスリボンを軸心が水平方向にかつガラスリボンの移動方向に対して直交して配置された複数のテンションローラの間を通して成形して成形不能温度のガラスリボンとする板ガラスの製造方法において、成形可能温度にあるガラスリボンを、隣接するテンションローラの周面間隔をその周面間に存在するガラスリボンの厚さよりも広く隔離してガラスリボンの上下に交互に配置された複数のテンションローラの間に通して成形し、ガラスリボンの幅方向両端部に、円周方向に形成された凹状溝を両端部に有するテンションローラによって略凸条部を形成し、複数のテンションローラの少なくとも一部に蒸気発生テンションローラを使用し、ガラスリボンと蒸気発生テンションローラ周面との間に蒸気を介在させてガラスリボンをテンションローラで支持することを特徴とする板ガラスの製造方法を提供する。
【0034】
本発明の板ガラスの製造方法において、成形可能温度にあるガラスリボンを、最初にガラスリボンの下側に設けられた凹状溝を有する蒸気発生テンションローラで支持し、次にガラスリボンの上側に設けられた蒸気発生テンションローラで支持してもよい。
【0035】
本発明の板ガラスの製造方法において、成形可能温度にあるガラスリボンを、最初にガラスリボンの下側に設けられた冷却ローラで支持して冷却し、次にガラスリボンの上側に設けられた凹状溝を有する蒸気発生テンションローラで支持してもよい。
【0036】
本発明の板ガラスの製造方法において、成形可能温度にあるガラスリボンを、最初にガラスリボンの下側に設けられた凹状溝を有する蒸気発生テンションローラで支持し、次にガラスリボンの上側に設けられた凹状溝を有する蒸気発生テンションローラで支持してもよい。
【0037】
本発明の板ガラスの製造方法において、最初のテンションローラに接する直前の位置のガラスリボンの温度が、成形可能な約10
2.0〜3.9Pa・s相当温度にあり、最後のテンションローラに接した直後の位置のガラスリボンの温度が、成形不能な約10
6.4Pa・s相当温度にあってもよい。
【0038】
本発明の板ガラスの製造方法において、蒸気発生テンションローラをガラスリボンの移動方向に対して逆方向に回転させるか、または、順方向に回転させる場合はガラスリボンの移動速度の1.1倍以上の周速度で回転させてもよい。
【0039】
本発明の板ガラスの製造方法において、成形不能温度となったガラスリボンを徐冷し、その後切断してもよい。
【0040】
本発明は、前述の板ガラスの製造装置の搬出部より搬出されたガラスリボンを徐冷し、その後切断することを特徴とする板ガラスの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0041】
以上説明したように本発明の板ガラスの製造装置、及び板ガラスの製造方法によれば、溶融ガラスを所望の幅と所望の板厚のガラスリボンに成形することができ、かつ、装置設備を小型化することができる。
【0042】
また、本発明の板ガラスの製造装置、及び板ガラスの製造方法によれば、品質的に良好な板ガラスを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、添付図面に従って本発明に係る板ガラスの製造装置、及び板ガラスの製造方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0045】
図1は、第一の実施の形態の板ガラスの製造装置を説明するための参考として用いた板ガラスの製造装置10の側面図であり、
図2は、
図1に示した板ガラスの製造装置10の要部拡大斜視図である。
【0046】
この製造装置10は、溶融ガラスGの上流側から下流側に向けてガラス溶解炉(溶融ガラス供給部)12、成形装置(成形部)14、及びローラ搬出装置(搬出部)16が順に配置されて構成されている。また、成形されたガラスリボンを徐冷する徐冷炉17がローラ搬出部16の下流側に設置され、その下流側に徐令したガラスリボンを切断する切断手段100が設置されている。この徐冷炉17を通過中に、ガラスリボンが略室温まで冷却され、その後、ガラスリボンが所定サイズに切断され、板ガラスが製造される。すなわち、板ガラスの製造装置10に徐冷炉17、切断手段100を含ませることにより、実施の形態の板ガラスの製造装置が構成されている。なお、徐冷炉17と切断手段100は、公知技術の装置でよく、その形態は問わない。
【0047】
ガラス溶解炉12は、板ガラスとなる所定のガラス原料を溶解するとともに溶解温度を制御して成形に好適な粘度範囲と温度範囲の溶融ガラスGを調製し貯留する槽である。溶融ガラスGの粘度と温度とは相関関係があるため、ガラス溶解炉12内の溶融ガラスGの粘度は、溶融ガラスGの温度を加熱設備で調整することによって管理される。また、ガラス溶解炉12におけるガラスの溶解は、ガラス組成にもよるが、例えばソーダ・ライムガラスの場合は、約1450〜1550°C(粘性で10
0.7〜1.0Pa・s)の温度範囲でガラスの泡欠点、組成のバラツキ、その他の欠点が解消されるように十分な時間をかけて行なわれる。
【0048】
ガラス溶解炉12によって温度及び粘度が調整された溶融ガラスGは、ガラス溶解炉12の出口のリップ面13から連続した溶融ガラスの流れとなって成形可能温度のガラスリボンとして成形装置14に供給され、成形装置14によってガラスリボンGLに成形される。
【0049】
なお、ガラスとしてソーダ・ライムガラスを例示すると、成形装置14に供給される溶融ガラスGの温度は10
2.0〜3.9Pa・s相当の温度である約930〜1200°Cが好ましい。溶融ガラスGの温度がこの範囲にあれば、成形を開始するにあたって十分に柔らかく、ガラスの温度が高すぎない。ガラスの失透を制御するためには、約1000〜1100(粘度10
2.6〜3.3Pa・s)に温度調整された溶融ガラスGが成形装置14に供給されることがより好ましい。また、ガラス溶解炉12は、その供給部がリップ式であるが、ダウンドロー法のスリット形状或いはフュージョン法の桶形状を用いてもよい。すなわち、本発明の溶融ガラス供給部は、リボン状の溶融ガラスを成形装置14に供給可能なものであれば、その形態は問わない。
【0050】
成形装置14は、複数のテンションローラ18、20、22、24、26から構成されており、ガラス溶解炉12のリップ面13から流下したガラスリボンGLがこれらのテンションローラ18〜26に順に巻き掛けられる。
【0051】
ここで、テンションローラ18、20、22、24、26は、軸心が水平方向にかつガラスリボンGLの移動方向に対して直交して配置されている。また、複数のテンションローラのうちガラスリボンGLの移動方向の上流側から奇数番目のテンションローラ18、22、26がガラスリボンGLの下面側に位置し、偶数番目のテンションローラ20、24がガラスリボンの上面側に位置する。さらに、隣接する奇数番目とその下流の偶数番目のテンションローラ18と20又は22と24において、奇数番目のテンションローラ18又は22の周面の最高位置が偶数番目のテンションローラ20又は24の周面の最低位置と同じ高さ又はそれよりも高い位置に配置され、かつ隣接する奇数番目と偶数番目のテンションローラ18と20又は22と24の周面間の最近接距離が当該周面間に存在するガラスリボンGLの厚さよりも大きくなる。なお、奇数番目のテンションローラ18又は22の軸心の位置が、隣接する偶数番目のテンションローラ20又は24の軸心の位置よりも低い位置にあることが好ましい。
【0052】
また、これらのテンションローラ18〜26は、図示しない回転駆動源により
図1の矢印方向に回転される。これにより、溶融ガラスGは、テンションローラ18〜26からテンションが付加されつつ冷却されてガラスリボンGLに成形されていく。また、成形装置14の最下流の下側に配置されたテンションローラ26には、それと対をなす上側のテンションローラが配置されていないが、この上側のテンションローラを配置することも可能である。この場合、成形装置14には、上下三対のテンションローラが配置されることになる。また、これらのテンションローラ18〜26によるガラスリボンGLの通過路の長さは、テンションローラ26を通過した直後のガラスリボンGLの温度が、成形不能な約10
6.4Pa・s相当温度となるように設定されている。すなわち、成形装置14において、ガラスリボンは、10
2.0〜6.4Pa・s相当温度(ソーダ・ライムガラスでは、750〜1200°C)となるように制御される。この範囲であれば、成形性の点で問題がなく、ガラスリボンの温度が高すぎないので成形時間が長くならず、テンションローラの数が多くなることもない。より好ましくは、10
2.9〜6.4Pa・s相当温度(ソーダ・ライムガラスでは、750〜1050°C)となるように制御される。さらに好ましくは、10
2.9〜5.5Pa・s相当温度(ソーダ・ライムガラスでは、800〜1050°C)となるように制御される。
【0053】
ソーダ・ライムガラスを例にとって説明すると、約10
6.2Pa・s相当温度は約760℃であるが、実施の形態の成形装置14では、テンションローラ26を通過した直後のガラスリボンGLの温度が約750℃になるように前記通過路の長さが設定されている。
【0054】
したがって、実施の形態の成形装置14によれば、1番目と2番目のテンションローラ18、20に供給された約930〜1200°CのガラスリボンGLは、成形装置14を通過中に冷却されてガラスリボンGLに成形されていき、そして、5番目のテンションローラ26を通過した直後において、約750℃の成形不能な最終板厚のガラスリボンGLに成形される。なお、ガラスリボンGLの前記通過路の長さは、ガラスリボンGLの温度、テンションローラ18〜26に対するガラスリボンGLの巻き付け長さ(ガラスリボンと各ローラとの対向長さ)、及びテンションローラの台数に基づいて適宜設定されるものである。すなわち、テンションローラの台数は
図1、
図2に示した5台に限定されるものではない。ガラスリボンが1番目と2番目のテンションローラだけで、所定の板厚にでき、さらに成形装置14の下流でのガラスリボンの温度が成形不能な温度に冷却できれば、一対のテンションローラでもよい。
【0055】
成形装置14によって成形されたガラスリボンGLは、成形装置14の後段に配置されたローラ搬出装置16の複数本のローラ28、28…にその下面が接触された状態で、この製造装置10の外部に搬出される。成形装置14を通過したガラスリボンGLは、成形不能な温度まで冷却されているため、複数本のローラ28、28…によりローラ表面の凹凸の転写なしに接触搬送が可能となる。なお、ローラ28、28…は、図示しない回転駆動源により矢印方向に回転される。また、
図1では成形後のガラスリボンを水平に取り出しているが、成形後のガラスリボンを略垂直方向に取り出す場合も本発明の範囲である。この場合には、ガラスリボンの表裏面にローラを接触させて搬出すればよい。
【0056】
ところで、成形装置14のテンションローラ18〜26は、ガラスリボンGLが側面視で蛇行して通過するように、そのガラスリボンの通過路を挟んで上下に、かつ各々の軸心18A、20A、22A、24A、26AがガラスリボンGLの移動方向に対して略垂直かつ水平方向に配置されている。
【0057】
更に、
図2の如く、奇数番目のテンションローラ18、22、26のうち最上流側の1番目のテンションローラ18の両端部(
図2では一端部のみ図示)の円周方向には、ガラス溶解炉12から供給されたガラスリボンGLの両端部に自重によって略凸状部Aを形成させる凹状溝30が形成されている。この凹状溝30の深さは、1〜10mmが好ましく、2〜7mmがより好ましく、3〜4mmがさらに好ましい。この凹状溝30の幅は、10〜100mmが好ましく、20〜80mmがより好ましく、30〜60mmがさらに好ましい。なお、ガラスリボンの両端部に形成される略凸状部Aは、
図2のようにガラスリボンの最端部からガラスリボンの中央方向に入ったところであってもよいし、ガラスリボンの最端部にあってもよい。略凸状部がガラスリボンの最端部にない場合は、略凸状部が最端部からガラスリボン中央方向に100mm以下の位置にあることが好ましい。また、テンションローラ18以降の奇数番目のテンションローラ22、26の両端部の円周方向に、同様の凹状溝が形成されてもよい。
【0058】
第一の実施の形態でのテンションローラ18、20、22、24、26は、後述するように全て蒸気膜形成剤を内部に包含可能なローラ基材からなり、該ローラ基材中に包含された蒸気膜形成剤から生じた蒸気がテンションローラ周面とガラスリボン表面との間に供給される構造を有する蒸気発生テンションローラである。
【0059】
次に、前記の如く構成された板ガラスの製造装置10の作用について説明する。
【0060】
ガラス溶解炉12の出口のリップ面13から、成形装置14の最上流側に配置された1番目と2番目のテンションローラ18、20に溶融ガラスGが供給されると、ガラスリボンGLの幅方向の両端部はその自重によって、1番目のテンションローラ18の両端部に形成された凹状溝30にガラスリボンGLの端部が垂れ下がっていき略凸状部が形成される。
図2では、凹状溝30によって形成されたガラスリボンGLの略凸状部Aが断面で示されている。この略凸状部Aは、勿論であるがガラスリボンGLの下面で、かつガラスリボンGLの移動方向に沿って連続形成される。これによりガラスリボンGLは、凹状溝30に係合される略凸状部Aがその両端部に形成されるため、その幅方向の収縮が阻止される。そして、このガラスリボンGLは、下流側のテンションローラ22、24、26を通過中に、前述の如く成形不能な温度まで冷却されていき、所望の幅と所望の板厚のガラスリボンGLに成形される。そして、このガラスリボンGLは、成形装置14を通過した後、成形不能な温度(約750度)まで冷却されているため、そのままローラ搬出装置16の複数本のローラ28、28…にその下面が接触された状態で搬出される。
図1のF
1は、ガラスリボンGLの引張力を示しており、この引張力F
1はローラ搬出装置16の複数本のローラ28、28…とガラスリボンGLとの間の摩擦抵抗、又はローラ搬出装置16の後段に配置されたプル装置(不図示)によって生じている。
【0061】
このように構成されたガラスリボンの形態の製造装置10によれば、テンションローラ18〜26を使用することにより、圧延ローラを使用する’949公報、及び’008公報の欠点を解消することができる。また、成形装置14の1番目のテンションローラ18に形成された凹状溝30によって、ガラスリボンGLの両端部に略凸状部が形成されて、溶融ガラスGを所望の幅と所望の板厚のガラスリボンGLに成形することができる。更に、成形装置14を通過したガラスリボンGLを、構造の簡単なローラ搬出装置16によって接触状態で搬送するため、’534公報、及び’020公報のような成形装置を不要としたので、製造装置の設備が小型になるという効果がある。
【0062】
なお、
図1及び
図2のように成形装置14において、ガラスリボンGLの通過路の1番目のテンションローラのみが上記凹状溝30を有する場合には、1番目のテンションローラ以降である奇数番目のテンションローラ22、26の両端部に、ガラスリボンGLの略凸状部Aをテンションローラ22、26のローラ本体部22B、26Bから逃がすための小径部22C、26Cが形成されていることが好ましい。この小径部22C、26Cは、ローラ中央のローラ本体部22B、26Bよりも小径で構成されており、ローラ本体部22B、26Bとの段差は、略凸状部Aの高さと同じに設定されている。これにより、略凸状部Aが形成されているガラスリボンGLの両端部を除く面、すなわち、製品となる面がローラ本体部22B、26Bによって安定的に搬送される。また、略凸状部Aが形成されているガラスリボンGLの両端部は、製造装置10の後段で切断されて再利用される。
【0063】
図3は、第二の実施の形態の板ガラスの製造装置を説明するための参考として用いた板ガラスの製造装置40の側面図であり、
図4は、
図3に示した板ガラスの製造装置40の要部拡大斜視図である。なお、
図1、
図2に示した板ガラスの製造装置10と同一又は類似の部材については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0064】
この製造装置40は、ガラス溶解炉12、成形装置42、ローラ搬出装置16、徐冷炉17、及び切断手段100から構成されている。
【0065】
成形装置42も
図1の成形装置14と同様に、複数のテンションローラ44、46、48、50、52から構成されており、ガラス溶解炉12のリップ面13から流下したガラスリボンGLがこれらのテンションローラ44〜52に順に巻き掛けられる。
【0066】
ここで、テンションローラ44、46、48、50、52は、軸心が水平方向にかつガラスリボンGLの移動方向に対して直交して配置されている。また、複数のテンションローラのうちガラスリボンGLの移動方向の上流側から奇数番目のテンションローラ44、48、52がガラスリボンGLの下面側に位置し、偶数番目のテンションローラ46、50がガラスリボンの上面側に位置する。さらに、隣接する奇数番目とその下流の偶数番目のテンションローラ44と46又は48と50において、奇数番目のテンションローラ44又は48の周面の最高位置が偶数番目のテンションローラ46又は50の周面の最低位置と同じ高さ又はそれよりも高い位置に配置され、かつ隣接する奇数番目と偶数番目のテンションローラ44と46又は48と50の周面間の最近接距離が当該周面間に存在するガラスリボンGLの厚さよりも大きくなる。なお、奇数番目のテンションローラ44又は48の軸心の位置が、隣接する偶数番目のテンションローラ46又は50の軸心の位置よりも低い位置にあることが好ましい。
【0067】
なお、成形装置42の最下流の下側に配置されたテンションローラ52には、それと対をなす上側のテンションローラが配置されていないが、この上側のテンションローラを配置することも可能である。また、これらのテンションローラ44〜52によるガラスリボンGLの通過路の長さも、テンションローラ52を通過した直後のガラスリボンGLの温度が、成形不能な約10
6.4Pa・s相当温度、又は約750℃となるように設定されている。更に、テンションローラ44〜52は、ガラスリボンGLが側面視で蛇行して通過するように、その通過路を挟んで上下に、かつ各々の軸心44A、46A、48A、50A、52Aがガラスリボンの移動方向に略垂直かつ水平方向に配置されている。
【0068】
一方、
図4の如く、偶数番目に配置されたテンションローラ46、50のうち最上流側に配置された2番目のテンションローラ46の両端部(
図4では一端部のみ図示)の円周方向には、ガラス溶解炉12から供給されたガラスリボンGLの両端部に、ガラスリボンGLの引張力F
2によって略凸状部Bを形成させる凹状溝54が形成されている。なお、テンションローラ46以降の偶数番目のテンションローラ50の両端部の円周方向に、同様の凹状溝が形成されてもよい。また、ガラスリボンGLの両端部に形成される略凸状部Bは、
図4のようにガラスリボンの最端部からガラスリボンの中央方向に入ったところであってもよいし、ガラスリボンの最端部にあってもよい。略凸状部がガラスリボンの最端部にない場合は、略凸状部が最端部からガラスリボン中央方向に100mm以下の位置にあることが好ましい。
【0069】
すなわち、第二の実施の形態の板ガラスの製造装置40は、ガラスリボンGLの引張力F
2を、
図1に示した製造装置10の引張力F
1よりも大きくし、2番目のテンションローラの凹状溝54によって、ガラスリボンGLの両端部に強制的に略凸状部を形成させるものである。
【0070】
第二の実施の形態でのテンションローラ46、48、50、52は、後述する蒸気発生テンションローラである。一方、テンションローラ44は、蒸気発生テンションローラであっても、後述する冷却ローラであってもよい。
【0071】
次に、前記の如く構成された板ガラスの製造装置40の作用について説明する。
【0072】
ガラス溶解炉12の出口のリップ面13から、成形装置42の1番目と2番目に配置されたテンションローラ44、46に溶融ガラスGが供給されると、ガラスリボンGLの引張力F
2によって、ガラスリボンGLの幅方向の両端部に、2番目のテンションローラ46の両端部に形成された凹状溝54によって強制的に略凸状部が形成される。
図4では、凹状溝54に折曲されたガラスリボンGLの略凸状部Bが断面で示されている。略凸状部Bは、ガラスリボンGLの上面でガラスリボンGLの通過方向に沿って連続形成される。これによりガラスリボンGLは、凹状溝54に係合される略凸状部Bがその両端部に形成されるため、その幅方向の収縮が阻止される。そして、このガラスリボンGLは、下流側のテンションローラ48〜52を通過中に、前述の如く成形不能な温度まで冷却されて、所望の幅と所望の板厚のガラスリボンに成形される。さらに、このガラスリボンGLは、成形不能な温度まで冷却されて、ローラ搬出装置16の複数本のローラ28、28…にその下面が接触された状態で搬出される。
【0073】
したがって、この板ガラスの製造装置40も、
図1、
図2に示した板ガラスの製造装置10と同様の効果を得ることができる。
【0074】
なお、
図3及び
図4のように成形装置42において、2番目のテンションローラ46のみが凹状溝54を有する場合には、それ以降の偶数番目である4番目のテンションローラ50の両端部に、ガラスリボンGLの略凸状部Bをテンションローラ50のローラ本体部50Bから逃がすための小径部50Cが形成されていることが好ましい。
【0075】
図5は、第一の実施の形態のガラスリボンの製造装置10の成形装置14(
図1、
図2参照)の構成を示した要部拡大側面図である。
図5では、成形装置14のテンションローラ18〜26(テンションローラ24、26は不図示)が全て蒸気発生テンションローラであることを示している。
【0076】
以下に、蒸気発生テンションローラの構成を、テンションローラ18を例にとって説明する。
【0077】
テンションローラ18は
図6の断面図で示すように、ローラ胴体の周面が蒸気膜形成剤を内部に包含可能なローラ基材60で形成されるとともに、ローラ両端(凹状溝30を含む)も、蒸気膜形成剤を内部に包含可能な基材62、62で形成され、矢印の如くローラ基材60、及び基材62、62中に導入された蒸気膜形成剤64が、溶融ガラスであるガラスリボンGLの高熱により、ローラ周面から気化するように構成される。これにより、ガラスリボンGLとテンションローラ18との間には、
図5の如く蒸気膜の薄層66が安定的に形成される。
【0078】
テンションローラ18に蒸気膜形成剤を供給する方法としては、テンションローラ18の回転軸68と内周面部70との間に形成される中心空洞部72に供給することで、基材60、62全体に浸透するようにしてもよく、或いはテンションローラ18のガラスリボンGLに面していない側に湿潤ローラ(図示せず)を接触配置して、湿潤ローラに供給した蒸気膜形成剤がテンションローラ18に移動するようにしてもよい。また、ノズルを用いて蒸気膜形成剤をテンションローラ18の表面にスプレーするスプレー方式でもよい。要は、テンションローラ18の基材60、62中に蒸気膜形成剤が十分に含有されるように供給できる方法であればよい。
【0079】
基材60、62としては、液体を内部に包含しうる材質又は構造であり、例えば多孔質のポーラス体や繊維質体の材料のものを好適に使用できる。ポーラス体の場合には、連通孔であることが好ましい。また、ポーラス体の表面には、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.1mm以下、更に好ましくは30μm以下の孔径の微細な孔を有することが好ましい。これにより、ガラスリボンGLに対する孔形状の転写を防止することができる。また、ポーラス体は、蒸気膜形成剤64と親液性(例えば、水でいうならば親水性)の高い材質であることが好ましい。
【0080】
基材60、62の基本となる材料としては、多孔質親水性カーボンが特に好適であるが、その他の例えば、セルロース、紙、木、竹等の天然物由来の高分子材料、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム等の合成高分子系材料、炭素系材料等が好適に使用できる。また、鉄、ステンレス鋼、白金等の金属材料、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物を主成分とするセラミックス材料等も使用できる。なお、基材60、62の成形面は、微細な孔や繊維状の凸凹以外は非常に平滑であってもよく、逆に一定の凸凹があってもよい。
【0081】
使用する蒸気膜形成剤64としては、常温において液体で、且つガラス転移点では気体である有機物、無機物の各種の物質を使用することができる。また、基材60、62への供給の操作性の点から、融点が40°C以下で、大気圧下における沸点が50〜500°C、更に好ましくは300°C以下のものがよい。更に、蒸気膜形成剤64が気化した蒸気がガラスに悪影響を与える程に化学的に反応せず、毒性が低く、使用される温度で不燃性であることが好ましく、代表的なものとして水を例示することができる。
【0082】
このように、蒸気膜形成剤64としては、ガラスリボンGLの高熱によって瞬間的に気化し、安定的な蒸気膜の薄層66を形成することができる液体を適切に選択することが必要である。高熱で瞬間的に気化することにより形成された蒸気膜の薄層66の熱伝導性は、液体や固体の熱伝導性と比較して著しく小さいため、ガラスリボンGLに対して断熱的な環境を形成することができる。蒸気膜の薄層66の厚さは、小さすぎるとテンションローラ18とガラスリボンGLとが直接接触する場合があり、また、断熱層の形成に不十分となり、更にテンションローラ18の表面の凸凹の影響を受け易くなるので、最小で10μm以上、好ましくは50μm以上が必要である。また、蒸気膜の薄層66が厚すぎるとテンションローラ18の圧力が伝わり難くなるため、その厚さは500μm以下、好適には200μm以下が好ましい。
【0083】
また、蒸気膜形成剤64としては、上記したように種々のものを使用可能であるが、通常は水が操作性、入手の容易さ、安全性等の面で好適である。また、基材60、62が多孔質のポーラス体の場合には、その多孔模様がガラスリボンGLに転写しないように、テンションローラ18の周速をガラスリボンGLの搬送速度よりも約1.1倍以上速くすることが好ましく、テンションローラ18の回転方向をガラスリボンGLの搬送方向に対して逆方向することがさらに好ましい。テンションローラ18の周速をガラスリボンGLの搬送速度よりも約1.1倍以上速くすることにより、ガラスリボンの面に対する蒸気膜の更新頻度が高くなり、ガラスリボン面の品質がよくなる。テンションローラ18を逆方向に回転させた場合、この効果はさらに高くなる。また、テンションローラ18とガラスリボンGLとは、蒸気膜の薄層66を介して非接触であるので、引張力F
1によるガラスリボンGLの搬送に問題は生じない。
【0084】
このような蒸気発生テンションローラであるテンションローラ18を成形装置14に適用することによって、ガラスリボンGLとテンションローラ18との間に蒸気膜の薄層66による断熱層が形成されるので、ガラスリボンGLの急冷を防止することができる。また、基材60、62の周面がガラスリボンGLに直接接触しないため、成形されたガラスリボンGLの面に基材60、62の周面との接触跡や、基材60、62の周面の凸凹は転写しない。よって、蒸気膜形発生テンションローラであるテンションローラ18を使用することによって、品質的に良好なガラスリボンGLを成形でき、この結果、徐冷炉17を通過した板ガラスも品質的に良好となる。
【0085】
なお、下流側に配置された全てのテンションローラ20〜26も蒸気発生テンションローラとすることにより、ガラスリボンGLの上下両面とテンションローラ20〜26との間に蒸気膜の薄層66が形成されるので、各々のテンションローラ20〜26の基材60、62の周面がガラスリボンGLに直接接触しない。これによって、成形されたガラスリボンGLの上下の両面に基材60、62の周面との接触跡や、基材60、62の周面の凸凹が転写しないので、品質的に良好なガラスリボンGLを成形できる。
【0086】
図7は、第二の実施の形態の板ガラスの製造装置40(
図3、
図4参照)の成形装置42の構成を示した要部拡大側面図である。
図7では、成形装置42のテンションローラ46〜52(テンションローラ50、52は不図示)が蒸気発生テンションローラであることを、最上流側の奇数番目のテンションローラである1番目のテンションローラ44が冷却ローラであることを示している。
【0087】
冷却ローラであるテンションローラ44は、筒状のローラ胴体内に冷却液が導入されることによって、ローラ胴体が冷却されている。よって、テンションローラ44に巻き掛けられる、高熱のガラスリボンGLは、テンションローラ44のローラ胴体の周面に摺接されることにより直接冷却される。
【0088】
このように、ガラス溶解炉を出た直後の高熱のガラスリボンGLを冷却ローラであるテンションローラ44のみによって直接冷却することにより、蒸気膜の薄層66を介してガラスリボンGLを冷却するテンションローラ18(
図5参照)よりも約3倍の冷却能力を得ることができ、成形装置42におけるガラスリボンGLの通過長を短縮することができる。なお、この冷却ローラに起因する凹凸によって、ガラスリボン表面の品質の低下が懸念されるが、実際にはそれよりも下流に蒸気膜を形成するテンションローラがあるので、これらテンションローラによるファイア・ポリッシュ効果により表面品質の改善が可能である。したがって、従来の蒸気膜を形成しない圧延ローラのみによる成形に比べて、ガラスリボン表面の品質の低下を抑制又は防止できる。また、蒸気膜形成用のテンションローラ46は上側に配置されているため、ガラスリボンGLの引張力F
2により、テンションローラ46の凹状溝54でガラスリボンGLの両端部において強制的に略凸状部Bを形成する。
【0089】
なお、テンションローラ44は、蒸気発生テンションローラでもよい。この場合は、前述の冷却ローラの場合の高い冷却効果は得られないが、ガラスリボンGL下面の品質は、第一の実施の形態と同様に高いものが得られる。
【0090】
図8は、第三の実施の形態の板ガラスの製造装置80の成形装置82の構成を示した要部拡大図である。この成形装置82は、最上流側の奇数番目のテンションローラとして、
図5に示したテンションローラ18を適用し、最上流側の偶数番目のテンションローラとして、
図7に示したテンションローラ46を適用したものである。
【0091】
すなわちこの成形装置82は、最上流の1番目と2番目のテンションローラとして、その両端部に凹状溝30、54が形成されたテンションローラ18、46を使用したものである。成形装置82を通過するガラスリボンGLの引張力を適宜調整することにより、ガラスリボンGLの下面側には、凹状溝30によって略凸状部Aが形成されるとともに、凹状溝54によって略凸状部Bが形成される。なお、ガラスリボンの両端部に形成される略凸状部は、
図8のようにガラスリボンの最端部からガラスリボンの中央方向に入ったところであってもよいし、ガラスリボンの最端部にあってもよい。このようにガラスリボンGLの下面に略凸状部Aを形成するとともに、ガラスリボンGLの上面に略凸状部Bを形成することにより、ガラスリボンGLの幅方向の収縮が上下の凹状溝30、54によって確実に規制されるので、ガラスリボンGLを所望の幅と所望の板厚のガラスリボンに形成することが容易になる。なお、テンションローラ18、46以降のテンションローラも同様に凹状溝を有してもよい。
【0092】
図9は、ローラ基材60の周面に1本の蒸気逃げ溝84が螺旋状に形成されたテンションローラ18(46)の斜視図、
図10はローラ基材60の表面に蒸気逃げ溝86、86…がその軸方向に沿って複数本形成されたテンションローラ18(46)の斜視図である。
【0093】
テンションローラ18(46)とガラスリボンGLとの間に連続して発生する蒸気が、その間に滞留すると、滞留した蒸気の圧力によってガラスリボンGLが変形する(膨らむ)という問題が生じやすい。そこで、
図9、
図10の如くローラ基材60の周面に蒸気逃げ溝84、86を形成することにより、テンションローラ18(46)とガラスリボンGLとの間に発生した蒸気は、蒸気逃げ溝84、86に沿って、テンションローラ18(46)とガラスリボンGLとの間から外部に排出される。これにより、蒸気の滞留を防止できるので、ガラスリボンGLの前記変形を防止することができる。
【0094】
なお、
図9の蒸気逃げ溝84と、
図10の蒸気逃げ溝86とを比較すると、双方の蒸気逃げ溝84、86はともに、ガラスリボンGLの幅方向において蒸気膜の圧力分布を均一にさせる効果があるが、螺旋状の蒸気逃げ溝84は、ローラ基材80の円周方向に形成されているため、軸方向に沿って形成されている直線状の蒸気逃げ溝86と比較して、単位面積当たりの蒸気逃げ率が高い。なお、蒸気逃げ溝84、86の溝深さは1〜3mmが好ましく、溝幅も1〜3mmが好ましい。
【0095】
以上説明した板ガラスの製造装置、板ガラスの製造方法によって成形されるガラスリボンGLは、FPD(Flat Panel Display)用のガラス基板、建材用のガラス板、その他用途のガラス板として使用可能である。
【0096】
なお、実施の形態では、ソーダ・ライムガラスを例示したが、アルカリ成分を含まないガラスであっても適用できる。
【0097】
本出願を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2009年7月9日出願の日本特許出願(特願2009-162752)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。