特許第5679102号(P5679102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5679102ジヒドロイソキサゾール置換安息香酸化合物の光学活性体とジアステレオマー塩及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679102
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】ジヒドロイソキサゾール置換安息香酸化合物の光学活性体とジアステレオマー塩及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 261/04 20060101AFI20150212BHJP
   C07B 57/00 20060101ALN20150212BHJP
【FI】
   C07D261/04CSP
   !C07B57/00 346
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-174135(P2010-174135)
(22)【出願日】2010年8月3日
(65)【公開番号】特開2011-51977(P2011-51977A)
(43)【公開日】2011年3月17日
【審査請求日】2013年4月25日
(31)【優先権主張番号】特願2009-180522(P2009-180522)
(32)【優先日】2009年8月3日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】的場 一隆
【審査官】 小川 由美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/001942(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/085216(WO,A1)
【文献】 特表2008−530078(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/058299(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/063910(WO,A1)
【文献】 実験化学講座,第4版22巻,208−209頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07DD,A01N
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

[式中、R1は、C1〜C6ハロアルキル又はC3〜C8ハロシクロアルキルを表し、
A1、A2、A3及びA4は、それぞれ独立にN又はC-Yを表し、
A5、A6及びA7は、それぞれ独立にN又はC-Xを表し、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、-SF5、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、ヒドロキシ(C1〜C6)ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ(C1〜C6)ハロアルキル、C1〜C6ハロアルコキシ(C1〜C6)ハロアルキル、C3〜C8ハロシクロアルキル、-OR2、-OSO2R2又は-S(O)rR2を表し、各々のXは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
R2は、C1〜C6アルキル、C1〜C4アルコキシ(C1〜C4)アルキル、C1〜C6ハロアルキル又はC1〜C3ハロアルコキシ(C1〜C3)ハロアルキルを表し、
Yは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、-NH2、-N(R4)R3を表し、各々のYは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
隣接する2つのYが一緒になって、A8=A9-A10=A11を形成していても良く、
A8、A9、A10及びA11は、それぞれ独立にN又はC-Y1を表し、
Y1は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、-NH2、-N(R4)R3を表し、各々のY1は互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
R3は、C1〜C6アルキル、-CHO、C1〜C6アルキルカルボニル、C1〜C6ハロアルキルカルボニル、C1〜C6アルコキシカルボニル、C1〜C6アルキルチオカルボニル、C1〜C6アルコキシチオカルボニル、C1〜C6アルキルジチオカルボニル、C1〜C6アルキルスルホニル又はC1〜C6ハロアルキルスルホニルを表し、
R4は、水素原子又はC1〜C6アルキルを表し、
rは、0〜2の整数を表す]で表される4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物と、光学活性なα−フェニルエチルアミンと溶液中で反応させ、次に晶析により一方のジアステレオマー塩を析出させ分離する、前記溶液に対して低溶解性のジアステレオマー塩の製造方法
【請求項2】
請求項1記載のジアステレオマー塩を酸により分解することによる、式(1)で表される4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物の光学活性体の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のジアステレオマー塩
【請求項4】
溶媒和分子を含む請求項3記載のジアステレオマー塩
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医農薬あるいは電子材料等の機能性材料として、もしくはその製造中間体として有用な4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物のジアステレオマー塩法による光学活性体とその製造方法、4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物の光学活性体と光学活性な塩基性化合物とを構成成分として有するジアステレオマー塩の製造方法とそのジアステレオマー塩に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物の光学活性体を製造する方法としては、特許文献1が知られている。
【0003】
また、一般的な方法として、ラセミ体の4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物を光学活性な担体を担持したカラムによる光学分割により光学活性体とする方法が考えられるが、生産性が高くなく、工業的生産には改善の余地があると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/063910号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ジアステレオマー塩法による4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物の光学活性体の製造方法と、4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物の光学活性体と光学活性な塩基性化合物とを構成成分として有するジアステレオマー塩の製造方法及びそのジアステレオマー塩を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、このような状況に鑑み、鋭意検討した結果、4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物の光学活性体と光学活性な塩基性化合物とを構成成分として有するジアステレオマー塩を見出し、このジアステレオマー塩を分解することにより、4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物の光学活性体を簡便に製造する方法を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
〔1〕
一般式(1):
【0007】
【化1】
【0008】
[式中、R1は、C1〜C6ハロアルキル又はC3〜C8ハロシクロアルキルを表し、
A1、A2、A3及びA4は、それぞれ独立にN又はC-Yを表し、
A5、A6および及びA7は、それぞれ独立にN又はC-Xを表し、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、-SF5、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、ヒドロキシ(C1〜C6)ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ(C1〜C6)ハロアルキル、C1〜C6ハロアルコキシ(C1〜C6)ハロアルキル、C3〜C8ハロシクロアルキル、-OR2、-OSO2R2又は-S(O)rR2を表し、各々のXは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
R2は、C1〜C6アルキル、C1〜C4アルコキシ(C1〜C4)アルキル、C1〜C6ハロアルキル又はC1〜C3ハロアルコキシ(C1〜C3)ハロアルキルを表し、
Yは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、-NH2、-N(R4)R3を表し、各々のYは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
隣接する2つのYが一緒になって、A8=A9-A10=A11を形成していても良く、
A8、A9、A10及びA11は、それぞれ独立にN又はC-Y1を表し、
Y1は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、-NH2、-N(R4)R3を表し、各々のY1は互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
R3は、C1〜C6アルキル、-CHO、C1〜C6アルキルカルボニル、C1〜C6ハロアルキルカルボニル、C1〜C6アルコキシカルボニル、C1〜C6アルキルチオカルボニル、C1〜C6アルコキシチオカルボニル、C1〜C6アルキルジチオカルボニル、C1〜C6アルキルスルホニル又はC1〜C6ハロアルキルスルホニルを表し、
R4は、水素原子又はC1〜C6アルキルを表し、
rは、0〜2の整数を表す] で表される4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物と、光学活性なα−フェニルエチルアミンと溶液中で反応させ、次に晶析により一方のジアステレオマー塩を析出させ分離する、前記溶液に対して低溶解性のジアステレオマー塩の製造方法
〔2〕
前記〔1〕に記載のジアステレオマー塩を酸により分解することによる、式(1)で表される4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物の光学活性体の製造方法。
【0009】
〔3〕
前記〔1〕記載のジアステレオマー
【0013】
〔4〕
溶媒和分子を含む前記〔3〕記載のジアステレオマー塩
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法により、医農薬あるいは電子材料等の機能性材料の製造中間体の合成に有用な4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物の光学活性体と4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物の光学活性体と光学活性な塩基性化合物とを構成成分として有するジアステレオマー塩を製造することができ、それをもって4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物の光学活性体の工業的生産に有益な方法を提供できる。
【0015】
さらに、本発明は農薬、特に国際公開第05/085216号パンフレット記載の農業害虫、ハダニ類、哺乳動物又は鳥類の内部もしくは外部寄生虫に対して優れた殺虫・殺ダニ活性を有する化合物及びその製造中間体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る反応を実施するには、例えば、反応器に式(1)で表される4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物と、トルエンに代表される溶媒と、光学活性な塩基性化合物とを仕込み、生じた固体を濾取し、ジアステレオマー塩を得ればよい。また、ろ液を濃縮し、該ジアステレオマー塩中の光学活性な4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物とは逆の立体化学をもつ光学活性な4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物を得ればよい。さらには、該ジアステレオマーを塩酸に代表される酸を用いて分解して、光学活性な4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物を得ればよい。
【0017】
なお、本願記載の4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物は、例えば、国際特許出願公開WO2009/001942号公報などに記載の方法で製造することができる。
【0018】
本願記載の式(1)で表される化合物は置換基によっては、E-体及びZ-体の幾何異性体が存在するが、本発明はこれらE-体、Z-体又はE-体及びZ-体を任意の割合で含む混合物を包含するものである。また、本願記載の化合物には、1個又は2個以上の不斉炭素原子の存在に起因する光学活性体が存在するが、本願記載の化合物は全ての光学活性体又はラセミ体を包含する。
【0019】
或いは、本願記載の式(1)で表される化合物のうちで、常法に従って金属塩にすることができるものは、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムといったアルカリ金属の塩、カルシウム、バリウム、マグネシウムといったアルカリ土類金属の塩又はアルミニウムの塩とすることができる。
【0020】
或いは、本願記載の式(1)で表される化合物のうちで、常法に従ってアミン塩にすることができるものは、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ベンジルアミン、アニリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ジベンジルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリベンジルアミンなどの塩とすることができる。
【0021】
次に、本明細書において示した各置換基の具体例を以下に示す。ここで、n-はノルマル、i-はイソ、s-はセカンダリー及びt-はターシャリーを各々意味し、Phはフェニルを意味する。
【0022】
本願記載の化合物におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。尚、本明細書中「ハロ」の表記もこれらのハロゲン原子を表す。
【0023】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0024】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルの表記は、炭素原子に結合した水素原子が、ハロゲン原子によって任意に置換された、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、このとき、2個以上のハロゲン原子によって置換されている場合、それらのハロゲン原子は互いに同一でも、又は互いに相異なっていてもよい。例えばフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、ジフルオロメチル基、クロロフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ブロモフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、ジクロロフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、ブロモクロロフルオロメチル基、ジブロモフルオロメチル基、2-フルオロエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2-クロロ-2-フルオロエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2-ブロモ-2-フルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエチル基、2-ブロモ-2-クロロ-2-フルオロエチル基、2-ブロモ-2,2-ジクロロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエチル基、2-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,2-ジクロロ-1,2,2-トリフルオロエチル基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、2-フルオロプロピル基、2-クロロプロピル基、2-ブロモプロピル基、2-クロロ-2-フルオロプロピル基、2,3-ジクロロプロピル基、2-ブロモ-3-フルオロプロピル基、3-ブロモ-2-クロロプロピル基、2,3-ジブロモプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-ブロモ-3,3-ジフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基、2,3-ジクロロ-1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2-フルオロ-1-メチルエチル基、2-クロロ-1-メチルエチル基、2-ブロモ-1-メチルエチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、2-フルオロブチル基、2-クロロブチル基、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブチル基、ノナフルオロブチル基、4-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブチル基、2-フルオロ-2-メチルプロピル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロピル基、2-クロロ-1,1-ジメチルエチル基、2-ブロモ-1,1-ジメチルエチル基、5-クロロ-2,2,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0025】
本明細書におけるシアノ(Ca〜Cb)アルキルの表記は、炭素原子に結合した水素原子が、シアノ基によって任意に置換された、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、例えばシアノメチル基、1-シアノエチル基、2-シアノエチル基、2-シアノプロピル基、3-シアノプロピル基、2-シアノブチル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0026】
本明細書におけるCa〜Cbシクロアルキルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる環状の炭化水素基を表し、3員環から6員環までの単環又は複合環構造を形成することが出来る。また、各々の環は指定の炭素原子数の範囲でアルキル基によって任意に置換されていてもよい。例えばシクロプロピル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、2,2-ジメチルシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラメチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、2-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2-メチルシクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0027】
本明細書におけるCa〜Cbハロシクロアルキルの表記は、炭素原子に結合した水素原子が、ハロゲン原子によって任意に置換された、炭素原子数がa〜b個よりなる環状の炭化水素基を表し、3員環から6員環までの単環又は複合環構造を形成することが出来る。また、各々の環は指定の炭素原子数の範囲でアルキル基によって任意に置換されていてもよく、ハロゲン原子による置換は環構造部分であっても、側鎖部分であっても、或いはそれらの両方であってもよく、さらに、2個以上のハロゲン原子によって置換されている場合、それらのハロゲン原子は互いに同一でも、又は互いに相異なっていてもよい。例えば2,2-ジフルオロシクロプロピル基、2,2-ジクロロシクロプロピル基、2,2-ジブロモシクロプロピル基、2,2-ジフルオロ-1-メチルシクロプロピル基、2,2-ジクロロ-1-メチルシクロプロピル基、2,2-ジブロモ-1-メチルシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロブチル基、2-(トリフルオロメチル)シクロヘキシル基、3-(トリフルオロメチル)シクロヘキシル基、4-(トリフルオロメチル)シクロヘキシル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0028】
本明細書におけるCa〜Cbアルケニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状で、且つ分子内に1個又は2個以上の二重結合を有する不飽和炭化水素基を表し、例えばビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチルエテニル基、2-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、2-ペンテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、2-ヘキセニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2,4-ジメチル-2,6-ヘプタジエニル基、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0029】
本明細書におけるCa〜Cbアルキニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状で、且つ分子内に1個又は2個以上の三重結合を有する不飽和炭化水素基を表し、例えばエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、2-ペンチニル基、1-メチル-2-ブチニル基、1,1-ジメチル-2-プロピニル基、2-ヘキシニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0030】
本明細書におけるCa〜Cbアルコキシの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-O-基を表し、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、i-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、i-ブチルオキシ基、s-ブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0031】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルコキシの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-O-基を表し、例えばジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロジフルオロメトキシ基、ブロモジフルオロメトキシ基、2-フルオロエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、1,1,2,2,-テトラフルオロエトキシ基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、2-ブロモ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、2,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,2-トリクロロ-1,1-ジフルオロエトキシ基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルオキシ基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルオキシ基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エトキシ基、ヘプタフルオロプロピルオキシ基、2-ブロモ-1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルオキシ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0032】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルチオの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-S-基を表し、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、i-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、i-ブチルチオ基、s-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0033】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルチオの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-S-基を表し、例えばジフルオロメチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、クロロジフルオロメチルチオ基、ブロモジフルオロメチルチオ基、2,2,2-トリフルオロエチルチオ基、1,1,2,2-テトラフルオロエチルチオ基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルチオ基、ペンタフルオロエチルチオ基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチルチオ基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルチオ基、ヘプタフルオロプロピルチオ基、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルチオ基、ノナフルオロブチルチオ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0034】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルスルホニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-SO2-基を表し、例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n-プロピルスルホニル基、i-プロピルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、i-ブチルスルホニル基、s-ブチルスルホニル基、t-ブチルスルホニル基、n-ペンチルスルホニル基、n-ヘキシルスルホニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0035】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルスルホニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-SO2-基を表し、例えばジフルオロメチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、クロロジフルオロメチルスルホニル基、ブロモジフルオロメチルスルホニル基、2,2,2-トリフルオロエチルスルホニル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチルスルホニル基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルスルホニル基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチルスルホニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0036】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-C(O)-基を表し、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、2-メチルブタノイル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0037】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-C(O)-基を表し、例えばフルオロアセチル基、クロロアセチル基、ジフルオロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、クロロジフルオロアセチル基、ブロモジフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ペンタフルオロプロピオニル基、ヘプタフルオロブタノイル基、3-クロロ-2,2-ジメチルプロパノイル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0038】
本明細書におけるCa〜Cbアルコキシカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-O-C(O)-基を表し、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、 n-プロピルオキシカルボニル基、i-プロピルオキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、i-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0039】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルチオカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-S-C(O)-基を表し、例えばメチルチオ-C(O)-基、エチルチオ-C(O)-基、n-プロピルチオ-C(O)-基、i-プロピルチオ-C(O)-基、n-ブチルチオ-C(O)-基、i-ブチルチオ-C(O)-基、t-ブチルチオ-C(O)-基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0040】
本明細書におけるCa〜Cbアルコキシチオカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-O-C(S)-基を表し、例えばメトキシ-C(S)-基、エトキシ-C(S)-基、n-プロピルオキシ-C(S)-基、i-プロピルオキシ-C(S)-基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0041】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルジチオカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-S-C(S)-基を表し、例えばメチルチオ-C(S)-基、エチルチオ-C(S)-基、n-プロピルチオ-C(S)-基、i-プロピルチオ-C(S)-基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0042】
本明細書におけるCa〜Cbアルコキシ(Cd〜Ce)アルキルの表記は、前記の意味である任意のCa〜Cbアルコキシ基によって、炭素原子に結合した水素原子が任意に置換された炭素原子数がd〜e個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0043】
本明細書におけるヒドロキシ(Cd〜Ce)ハロアルキル、Ca〜Cbアルコキシ(Cd〜Ce)ハロアルキル又はCa〜Cbハロアルコキシ(Cd〜Ce)ハロアルキルの表記は、それぞれ前記の意味である任意のCa〜Cbアルコキシ基、Ca〜Cbハロアルコキシ基又は水酸基によって炭素原子に結合した水素原子又はハロゲン原子が任意に置換された炭素原子数がd〜e個よりなる前記の意味であるハロアルキル基を表し、例えば2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ジフルオロ(メトキシ)メチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-メトキシ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ジフルオロ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-1-(トリフルオロメチル)エチル基、3-(1,2-ジクロロ-1,2,2-トリフルオロエトキシ)-1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロピル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0044】
本願記載の化合物において、Xで表される置換基としては、好ましくは水素原子、ハロゲン原子及びC1〜C4ハロアルキルが挙げられ、より好ましくは水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子及びトリフルオロメチルが挙げられる。このときXで表される置換基の数を表すmが2以上の整数を表すとき、各々のXは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよい。
【0045】
本願記載の化合物において、Xで表される置換基の数を表すmとしては、好ましくは1、2及び3が挙げられる。
【0046】
本願記載の化合物において、Xで表される置換基の位置としては、より好ましくはR1が結合する炭素との結合位置に対して、メタ位及びパラ位が挙げられる。
【0047】
本願記載の化合物において、Yで表される置換基としては、好ましくはハロゲン原子、ニトロ、C1〜C4アルキル及びC1〜C4ハロアルキルが挙げられ、より好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ、メチル、エチル及びトリフルオロメチルが挙げられる。このとき、nが2の整数を表すとき、各々のYは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよい。
【0048】
本願記載の化合物において、Yで表される置換基の数を表すnとしては、より好ましくは0及び1が挙げられる。
【0049】
本願記載の化合物において、Yで表される置換基の位置としては、より好ましくは−COOHとの結合位置に対して、オルト位が挙げられる。
【0050】
本願記載の化合物において、Y1で表される置換基としては、好ましくは水素原子が挙げられる。
【0051】
本願記載の化合物において、R1で表される置換基としては、好ましくはC1〜C4ハロアルキルが挙げられ、より好ましくはジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル及びトリフルオロメチルが挙げられ、極めて好ましくはクロロジフルオロメチル及びトリフルオロメチルが挙げられる。
【0052】
本願記載の化合物において、R2で表される置換基としては、好ましくはC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ(C1〜C4)アルキル及びC1〜C4ハロアルキルが挙げられ、より好ましくは、メチル、エチル、メトキシメチル、メトキシエチル、エトキシメチル及びトリフルオロメチルが挙げられる。
【0053】
本願記載の化合物において、R3で表される置換基としては、好ましくは-CHO、C1〜C4アルキルカルボニル及びC1〜C4アルコキシカルボニルが挙げられ、より好ましくは、ホルミル、アセチル、プロピオニル、メトキシカルボニル及びエトキシカルボニルが挙げられる。
【0054】
本願記載の化合物において、R4で表される置換基としては、好ましくは水素原子が挙げられる。
【0055】
本願記載の化合物において、R5で表される置換基としては、好ましくはメチル、エチル及びイソプロピルが挙げられる。
本願記載の化合物において、R6で表される置換基としては、好ましくは水素原子、メチル、エチル、ヒドロキシメチル、メトキシカルボニル及びエトキシカルボニルが挙げられる。
本願記載の化合物において、R7で表される置換基としては、好ましくは水素原子、メチル、エチル及びシクロプロピルが挙げられる。
本願記載の化合物において、Zで表される置換基としては、好ましくは水素原子、ハロゲン原子及びC1〜C4ハロアルキルが挙げられ、より好ましくは水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子及びトリフルオロメチルが挙げられる。このときZで表される置換基の数を表すpが2以上の整数を表すとき、各々のZは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよい。
【0056】
本願記載の化合物において、Zで表される置換基の数を表すpとしては、好ましくは1、2及び3が挙げられる。
【0057】
本願記載の式(2)で表される光学活性な塩基性化合物としては、リシン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸類、α−フェニルエチルアミン、3−メチル−2−フェニルブチルアミン、フェニルアラニノール、バリノール、シンコニン、シンコニジン、キニン、キニジン等のアミン類、2−(1−メトキシエチル)ピリジン、2−(1,2−ジメチルプロピル)ピリジン等のピリジン類、N−(6,7−ジヒドロ−3H−ジナフト[2,1−e:1´,2´−g][1,3]ジアゾニン−5(4H)−イリデン)−1,1−ジフェニルメタナミン、2−(1,3−ジメチル−4,5−ジフェニルイミダゾリジン−2−イリデンアミノ)−3−フェニルプロパン−1−オール、(1R,2S,2aS,4R,7R,8aS)−1,2−ジメトキシ−4,7−(6´−メチル−2´−テトラヒドロピラニル)−2,2a,3,4,5,7,8,8a−オクタヒドロ−1H−5,6,8b−トリアザアセナフチレン ハイドロクロライド等のグアニジン類が挙げられ、α−フェニルエチルアミン、3−メチル−2−フェニルブチルアミン、フェニルアラニノール、バリノール、シンコニン、シンコニジン、キニン、キニジン等のアミン類が好ましく、中でもα−フェニルエチルアミン、3−メチル−2−フェニルブチルアミン等が好ましい。
【0058】
本発明のジアステレオマー塩を析出させる工程、該ジアステレオマー塩を分離する工程、及び該分離したジアステレオマー塩を分解する工程に使用できる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン又はメシチレン等のハロゲン原子で置換されてもよい芳香族炭化水素類、若しくはn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、塩化メチレン又は1,2−ジクロロエタン等のハロゲン原子で置換されてもよい脂肪族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、N, N−ジメチルホルムアミド、N, N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン等のアミン類、ニトロメタン、ニトロエタン、水、超臨界流体等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0059】
斯かる溶媒の使用量は特に限定されないが、ジアステレオマー塩を析出させる工程においては4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物1重量部に対して、該ジアステレオマー塩を分離する工程、及び該分離したジアステレオマー塩を分解する工程においてはジアステレオマー塩1重量部に対して、通常0.01〜100重量部、好ましくは0.05〜50重量部、特に好ましくは0.1〜15重量部である。
【0060】
本発明のジアステレオマー塩を分解する反応に使用できる酸としては、例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸等のハロゲン化水素酸、硝酸、硫酸、燐酸、塩素酸、過塩素酸等の無機酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、フマール酸、酒石酸、蓚酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、マンデル酸、アスコルビン酸、乳酸、グルコン酸、クエン酸等のカルボン酸又はグルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0061】
斯かる酸の使用量は特に限定されないが、ジアステレオマー塩1モルに対して、通常0.01〜100倍モル、好ましくは0.05〜50倍モル、特に好ましくは0.5〜10倍モルである。
【実施例】
【0062】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらのみによって限定されるものではない。
【0063】
また各実施例で得られた化合物の絶対配置は、実施例3に記載したX線結晶構造解析によって確認した(S)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸を標準物質として、そのHPLCでの保持時間の比較で決定した。
【0064】

〔実施例1〕
(S)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸と(L)−(−)−α−フェニルエチルアミンのジアステレオマー塩の合成
ラセミ体の4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸2.09g、トルエン10g、酢酸エチル5gを仕込み、54℃で撹拌した。そこに(L)−(−)−α−フェニルエチルアミン0.304gを加え、1時間で4℃まで冷却した。生じた固体を減圧下濾取し、固体をトルエン/酢酸エチル=5/1の溶液5mlで洗浄した。減圧下乾燥し、白色固体として(S)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸と(L)−(−)−α−フェニルエチルアミンのジアステレオマー塩1.03gを得た。1H-NMRより白色固体は4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸とα−フェニルエチルアミンの1対1の塩であることがわかった。
【0065】
得られたジアステレオマー塩とろ液を、キラルHPLCカラムを付けた高速液体クロマトグラフィーで分析し、ジアステレオマー塩では(S)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸と(R)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸が保持時間12.9分/24.8分=95/5であり、ろ液では保持時間12.9分/23.4分=19/81であることを確認した(分析条件は、キラルHPLCカラム:Chiralpak AD-H 4.6×250mm、溶離液:ヘキサン/エタノール=4/1、流速:0.40mL/min、オーブン温度:30℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。
1H NMR (CDCl3, Me4Si, 300MHz) δ 7.96 (d, J=9.0Hz, 1H), 7.52 (m, 4H), 7.43 (t, J=1.8Hz, 1H), 7.23-7.36 (m, 5H), 4.16 (q, J=6.6Hz, 1H), 4.12 (d, J=17.7Hz, 1H), 3.75 (d, J=17.4Hz, 1H), 2.63 (s, 3H) , 1.43 (d, J=6.6Hz, 3H)。
【0066】

〔実施例2〕
(R)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸と(D)−(+)−α−フェニルエチルアミンのジアステレオマー塩の合成
〔実施例2−1〕
ラセミ体の4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸0.209g、トルエン2mL、酢酸エチル1mLを仕込み、室温で撹拌した。そこに(D)−(+)−α−フェニルエチルアミン0.0136gを加え、一晩撹拌した。生じた固体を減圧下濾取し、固体をヘキサン1mLで洗浄した。減圧下乾燥し、白色固体として(R)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸と(D)−(+)−α−フェニルエチルアミンのジアステレオマー塩0.0405gを得た。1H-NMRより白色固体は4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸とα−フェニルエチルアミンの1対1の塩であることがわかった。
【0067】
得られたジアステレオマー塩とろ液を、キラルHPLCカラムを付けた高速液体クロマトグラフィーで分析し、ジアステレオマー塩では(S)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸と(R)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸が保持時間13.5分/22.5分=1.6/98.4であり、ろ液では保持時間12.4分/22.3分=63/37であることを確認した(分析条件は、キラルHPLCカラム:Chiralpak AD-H 4.6×250mm、溶離液:ヘキサン/エタノール=4/1、流速:0.40mL/min、オーブン温度:30℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。
【0068】

〔実施例2−2〕
ラセミ体の4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸0.209g、トルエン2mL、酢酸エチル1mLを仕込み、室温で撹拌した。そこに(D)−(+)−α−フェニルエチルアミン0.0360gを加え、一晩撹拌した。生じた固体を減圧下濾取し、固体をヘキサン1mLで洗浄した。減圧下乾燥し、白色固体として(R)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸と(D)−(+)−α−フェニルエチルアミンのジアステレオマー塩0.1588gを得た。1H-NMRより白色固体は4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸とα−フェニルエチルアミンの1対1の塩であることがわかった。
【0069】
得られたジアステレオマー塩とろ液を、キラルHPLCカラムを付けた高速液体クロマトグラフィーで分析し、ジアステレオマー塩では(S)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸と(R)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸が保持時間13.2分/22.7分=6/94であり、ろ液では保持時間12.3分/22.5分=89/11であることを確認した(分析条件は、キラルHPLCカラム:Chiralpak AD-H 4.6×250mm、溶離液:ヘキサン/エタノール=4/1、流速:0.40mL/min、オーブン温度:30℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。
【0070】

〔実施例2−3〕
ラセミ体の4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸0.209g、トルエン2mL、酢酸エチル1mLを仕込み、室温で撹拌した。そこに(D)−(+)−α−フェニルエチルアミン0.0426gを加え、一晩撹拌した。生じた固体を減圧下濾取し、固体をヘキサン1mLで洗浄した。減圧下乾燥し、白色固体として(R)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸と(D)−(+)−α−フェニルエチルアミンのジアステレオマー塩0.1856gを得た。1H-NMRより白色固体は4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸とα−フェニルエチルアミンの1対1の塩であることがわかった。
【0071】
得られたジアステレオマー塩とろ液を、キラルHPLCカラムを付けた高速液体クロマトグラフィーで分析し、ジアステレオマー塩では(S)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸と(R)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸が保持時間12.8分/22.7分=20/80であり、ろ液では保持時間12.3分/22.9分=90/10であることを確認した(分析条件は、キラルHPLCカラム:Chiralpak AD-H 4.6×250mm、溶離液:ヘキサン/エタノール=4/1、流速:0.40mL/min、オーブン温度:30℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。
【0072】

〔実施例3〕
(S)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸と(L)−(−)−α−フェニルエチルアミンのジアステレオマー塩の再晶析

実施例1で得た(S)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸と(L)−(−)−α−フェニルエチルアミンのジアステレオマー塩0.50gに酢酸エチル8mLとエタノール6mLを加え、50℃に加熱し、均一な溶液とした。撹拌しながら温度を下げていき、析出した結晶を氷冷下で10分間撹拌した後、ろ過した。結晶は乾燥後0.13gあった。
【0073】
得られたジアステレオマー塩を、キラルHPLCカラムを付けた高速液体クロマトグラフィーで分析し、ジアステレオマー塩は(S)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸と(R)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸が保持時間8.5分/13.4分=99.1/0.9であることを確認した(分析条件は、キラルHPLCカラム:Chiralpak AD-H 4.6×250mm、溶離液:ヘキサン/0.8vol%トリフルオロ酢酸入りエタノール=3/1、流速:0.50mL/min、オーブン温度:30℃、検出:280nmの波長によるUV検出器)。
1H NMR (DMSO-d6, Me4Si, 300MHz) δ 7.56-7.66 (m, 3H), 7.24-7.52 (m, 7H), 4.16-4.38 (m, 3H), 2.48 (s, 3H) , 1.39 (d, J=6.9Hz, 3H)。
融点は189-192℃。
【0074】
また得られた結晶を、X線結晶構造解析を行うことで、4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸の絶対配置が(S)であることを確認した。測定時の絶対構造パラメーター(absolute structure parameter)の値は0.10であった、

〔実施例4〕
(S)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸と(L)−(−)−α−フェニルエチルアミンのジアステレオマー塩の分解

実施例1で得た(S)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸と(L)−(−)−α−フェニルエチルアミンのジアステレオマー塩0.50gに酢酸エチル10mLとトルエン15mLを加え、さらに精製水3mLと35%塩酸0.53gを混合した希塩酸を加え、50℃に加熱した。それを分液し、有機層に、精製水3mLと35%塩酸0.53gを混合した希塩酸を加え、混合した後、分液した。有機層に精製水3mLを加え、混合した後、分液した。有機層から溶媒を減圧下に留去し、減圧乾燥後、0.44gのアモルファス状物を得た。1H-NMRより4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸であった。
【0075】
得られたアモルファス状物を、キラルHPLCカラムを付けた高速液体クロマトグラフィーで分析し、アモルファス状物は(S)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸と(R)−4−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−2−メチル安息香酸が保持時間8.3分/11.8分=91/9であることを確認した(分析条件は、キラルHPLCカラム:Chiralpak AD-H 4.6×250mm、溶離液:ヘキサン/0.8vol%トリフルオロ酢酸入りエタノール=3/1、流速:0.50mL/min、オーブン温度:30℃、検出:280nmの波長によるUV検出器)。
1H NMR (CDCl3, Me4Si, 300MHz) δ 8.09 (m, 1H), 7.40-7.60 (m, 5H), 4.41 (br, 1H), 4.10 (d, J=17.4Hz, 1H), 3.71 (d, J=17.4Hz, 1H), 2.68 (s, 3H)。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のジアステレオマー塩法による4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物の光学活性体の製造方法及び4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物の光学活性体と光学活性な塩基性化合物とを構成成分として有するジアステレオマー塩の製造方法及びそのジアステレオマー塩は、農薬、医薬、機能材料の製造中間体として有用な化合物であるイソキサゾリン化合物及びその中間体の光学活性体の製造方法として有用である。