(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ジアリーレン[b,d]フラン構造を有し、2つのアリーレン基のうち少なくとも一方がナフチレン骨格を有するものであり、かつ、2つのアリーレン基が何れもその芳香核上にグリシジルオキシ基を有することを特徴とするエポキシ化合物。
分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)と分子構造中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(P)とを酸触媒の存在下で反応させてフェノール中間体を得、次いで、得られたフェノール中間体とエピハロヒドリンとを反応させることを特徴とし、前記キノン構造を有する化合物(Q)又は前記分子構造中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(P)の少なくとも一方がナフタレン骨格を有するものであるエポキシ樹脂の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエポキシ化合物は、ジアリーレン[b,d]フラン構造を有し、2つのアリーレン基のうち少なくとも一方がナフチレン骨格を有するものであり、かつ、2つのアリーレン基が何れもその芳香核上にグリシジルオキシ基を有することを特徴とする。
【0020】
本発明のエポキシ化合物は、ジアリーレン[b,d]フラン構造という剛直かつ芳香環濃度の高い分子構造を有することから、硬化物における耐熱性や難燃性に優れる特徴を有する。一般に、硬化物における耐熱性を向上させるためには、芳香環をホルムアルデヒド等の結節剤で多官能化する方法が知られている。しかしながら、このような方法により多官能化された化合物は芳香環同士が1つの結合鎖のみで結節しているため、燃焼時に該結合が容易に開裂してしまい、難燃性が低いものであった。これに対し本発明のエポキシ化合物は、芳香環同士がエーテル結合と直接結合との2つの結合により固定されているため、これら2つの結合が燃焼時に容易に開裂せず、難燃性が高いものとなる。さらには、2つのアリーレン基のうち少なくとも一方がナフタレン骨格を有するものであることから、芳香環濃度が高いものとなり、極めて優れた難燃性を発現する。
【0021】
本発明のエポキシ化合物は、更に、反応性に優れ、硬化物における耐熱性及び難燃性により優れることから、ジアリーレン[b,d]フラン構造を有し、2つのアリーレン基のうち少なくとも一方がナフチレン骨格を有するものであり、2つのアリーレン基が何れもその芳香核上にグリシジルオキシ基を有するものであり、かつ、2つのアリーレン基のうち少なくとも一方が、フラン環を形成する酸素原子が結合する炭素原子のパラ位にグリシジルオキシ基を有するものであることが好ましい。
【0022】
このようなエポキシ化合物は、例えば、下記構造式(I)
【0023】
【化2】
[式中、Gはグリシジル基を表し、Arは下記構造式(i)又は(ii)
【0024】
【化3】
{{式(i)、(ii)中、Gはグリシジル基を表し、R
4、R
5はそれぞれ独立して炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、mは0〜4の整数、nは0〜3の整数である。m又はnが2以上の場合、複数のR
4、R
5は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。式(i)中のx、yはナフタレン環との結合点を示し、フラン環を形成するように互いに隣接する炭素に結合する。}
で表される構造部位である。Arが前記構造式(i)で表される構造部位である場合、R
1及びR
2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基の何れか、或いは、R
1とR
2とにより芳香環が形成される構造部位である。Arが前記構造式(ii)で表される構造部位である場合、R
1及びR
2は、R
1とR
2とにより芳香環が形成される構造部位である。また、R
3は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基の何れかである。]
で表されるものが挙げられる。
【0025】
前記一般式(I)で表される化合物は、例えば、分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)と、分子構造中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(P)とを、酸触媒条件下、40〜180℃の温度範囲で反応させてフェノール中間体を得、得られたフェノール中間体をエピハロヒドリンと反応させてグリシジルエーテル化する方法により製造されるものが挙げられる。
【0026】
ここで、本発明のエポキシ化合物は、ジアリーレン[b,d]フラン構造を有し、2つのアリーレン基のうち少なくとも一方がナフチレン骨格を有するものであることから、前記キノン構造を有する化合物(Q)又は前記分子構造中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(P)の少なくとも一方がナフタレン骨格を有するものである。
【0027】
また、このような方法により本発明のエポキシ化合物を製造する場合、反応条件により任意の成分を選択的に製造したり、複数種のエポキシ化合物の混合物であるエポキシ樹脂として製造したりすることが出来る。また、混合物であるエポキシ樹脂から任意の成分のみを単離して用いても良い。
【0028】
前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)は、例えば、下記構造式(Q1)又は(Q2)
【0029】
【化4】
[式(Q1)又は(Q2)中、R
6及びR
7はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、lは0〜3の整数、nは0〜4の整数である。lまたはnが2以上の場合、複数のR
6又はR
7は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。]
で表される化合物が挙げられ、具体的には、パラベンゾキノン、2−メチルベンゾキノン、2,3,5−トリメチル−ベンゾキノン、ナフトキノン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0030】
前記分子構造中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(P)は、例えば、下記構造式(P1)又は(P2)
【0031】
【化5】
[式(P1)又は(P2)中、R
4及びR
5はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、mは0〜4の整数、pは0〜3の整数である。m又はpが2以上の場合、複数のR
4又はR
5は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。]
で表される化合物が挙げられ、具体的には、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0032】
前記前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)が前記構造式(Q1)で表される化合物である場合、前記分子構造中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(P)は前記構造式(P1)で表される化合物である。一方、前記前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)が前記構造式(Q2)で表される化合物である場合、前記分子構造中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(P)は前記構造式(P1)又は(P2)のどちらで表される化合物でも良い。
【0033】
前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)と前記分子構造中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(P)との反応は、酸触媒条件下で行うことにより、ジアリーレン[b、d]フラン構造を有する本発明のエポキシ化合物を高効率で製造することが出来る。ここで用いる酸触媒は例えば、塩酸、硫酸、リン酸、などの無機酸や、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸等が挙げられる。これら酸触媒の使用量は、前記キノン構造を有する化合物(Q)と前記分子構造中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(P)との合計質量に対し、5.0質量%以下の量で用いることが好ましい。
【0034】
また、該反応は無溶剤条件下で行うことが好ましいが、必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。ここで用いる有機溶媒は例えば、メチルセロソルブ、イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これら有機溶剤を用いる場合は、反応効率が向上することから、キノン構造を有する化合物(Q)と分子構造中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(P)との合計100質量部に対し、有機溶剤が50〜200質量部の範囲となる割合で用いることが好ましい
【0035】
前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)と前記分子構造中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(P)との反応終了後は、減圧乾燥するなどしてフェノール中間体を得ることが出来る。
【0036】
次に、フェノール中間体とエピハロヒドリンとの反応は、例えば、フェノール中間体中のフェノール性水酸基1モル対し、エピハロヒドリンが2〜10モルの範囲となる割合で両者を用い、フェノール性水酸基1モル対し0.9〜2.0モルの塩基性触媒を一括又は分割添加しながら20〜120℃の温度で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。ここで用いる塩基性触媒は固形でもその水溶液を使用してもよく、水溶液を使用する場合は、連続的に添加すると共に反応混合物中から減圧または常圧条件下で連続的に水及びエピハロヒドリン類を留出させ、これを分液して水は除去し、エピハロヒドリンは反応混合物中に連続的に戻す方法でもよい。
【0037】
なお、工業生産を行う際、エポキシ樹脂生産の初バッチでは仕込みに用いるエピハロヒドリン類の全てが新しいものであるが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリンと、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリンとを併用することが好ましい。この時、使用するエピハロヒドリンは特に限定されないが、例えばエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。なかでも工業的入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。
【0038】
また、前記塩基性触媒は、具体的には、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ樹脂合成反応の触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、具体的には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が挙げられる。これらの塩基性触媒は10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用してもよい。また、フェノール中間体とエピハロヒドリンとの反応は有機溶媒を併用することにより反応速度を高めることができる。ここで用いる有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ溶媒、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜2種以上を併用してもよい。
【0039】
反応終了後は、反応混合物を水洗した後、加熱減圧下での蒸留によって未反応のエピハロヒドリンや併用する有機溶媒を留去する。また、加水分解性ハロゲンの一層少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合の使用量はエポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜3.0質量部となる割合であることが好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより目的とする本発明のエポキシ化合物或いはエポキシ樹脂を得ることができる。
【0040】
前記構造式(I)で表される本発明のエポキシ化合物は、より具体的には、下記構造式(1)〜(4)
【0041】
【化6】
[式(1)〜(4)中、Gはグリシジル基を表し、R
4、R
5はそれぞれ独立して炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、mは0〜4の整数、pは0〜3の整数である。m又はpが2以上の場合、複数のR
4、R
5は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。また、式(1)〜(3)中のx、yはナフタレン環との結合点を示し、フラン環を形成するように互いに隣接する炭素に結合する。]
の何れかで表されるものが挙げられる。
【0042】
前記構造式(1)で表されるエポキシ化合物は、更に具体的には、下記構造式(1−1)〜(1−9)
【0043】
【化7】
[式(1−1)〜(1−9)中Gはグリシジル基である。]
の何れかで表されるエポキシ化合物等が挙げられる。
【0044】
前記構造式(1)で表されるエポキシ化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)としてパラベンゾキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物(P)として各種のジヒドロキシナフタレンを用い、前述の方法により製造することが出来る。このときパラベンゾキノンとジヒドロキシナフタレンの反応割合は、前記構造式(1)で表される化合物を高効率で製造できることから、パラベンゾキノン1モルに対し、ジヒドロキシナフタレンが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
【0045】
前記構造式(1−1)〜(1−9)の何れかで表されるエポキシ化合物の中でも、硬化物における耐熱性及び難燃性により優れることから、前記構造式(1−8)又は(1−9)で表される化合物が好ましい。即ち、分子構造中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物(P)として2,7−ジヒドロキシナフタレンを用いて得られるエポキシ化合物が好ましい。
【0046】
前記構造式(1)で表されるエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂は、更にこれら以外のエポキシ化合物を含有していても良い。中でも、耐熱性の高いエポキシ樹脂となることから、下記構造式(1’)
【0047】
【化8】
(式中Gはグリシジル基を表し、kは1〜3の整数である。)
で表される多官能化合物を含有していることが好ましい。この場合、エポキシ樹脂中の各成分の含有割合は、前記構造式(1)で表されるジナフト[b,d]フラン化合物の含有率がGPC測定における面積比率で5〜60%の範囲であり、かつ、前記構造式(1’)で表される多官能化合物の含有率がGPC測定における面積比率で10〜70%の範囲であることが好ましい。
【0048】
なお、本発明において、エポキシ樹脂中の各成分の含有率とは、下記の条件によるGPC測定データから算出される、エポキシ樹脂の全ピーク面積に対する前記各成分のピーク面積の割合である。
<GPC測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0049】
前記構造式(2)で表されるエポキシ化合物は、更に具体的には、下記構造式(2−1)〜(2−9)
【0050】
【化9】
[式(2−1)〜(2−9)中Gはグリシジル基である。]
の何れかで表されるエポキシ化合物等が挙げられる。
【0051】
前記構造式(2)で表されるエポキシ化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)として2,3,5−トリメチル−パラベンゾキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物(P)として各種のジヒドロキシナフタレンを用い、前述の方法により製造することが出来る。このとき2,3,5−トリメチル−パラベンゾキノンとジヒドロキシナフタレンの反応割合は、前記構造式(2)で表される化合物を高効率で製造できることから、2,3,5−トリメチル−パラベンゾキノン1モルに対し、ジヒドロキシナフタレンが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
【0052】
前記構造式(2−1)〜(2−9)の何れかで表されるエポキシ化合物の中でも、硬化物における耐熱性及び難燃性により優れることから、前記構造式(2−8)又は(2−9)で表される化合物が好ましい。即ち、分子構造中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物(P)として2,7−ジヒドロキシナフタレンを用いて得られるエポキシ化合物が好ましい。
【0053】
前記構造式(2)で表されるエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂は、更にこれら以外のエポキシ化合物を含有していても良い。中でも、耐熱性の高いエポキシ樹脂となることから、下記構造式(2’)
【0054】
【化10】
(式中Gはグリシジル基を表す。)
で表される多官能化合物を含有していることが好ましい。この場合、エポキシ樹脂中の各成分の含有割合は、前記構造式(2)で表されるジナフト[b,d]フラン化合物の含有率がGPC測定における面積比率で50〜95%の範囲であり、かつ、前記構造式(2’)で表される多官能化合物の含有率がGPC測定における面積比率で1〜50%の範囲であることが好ましい。
【0055】
前記構造式(3)で表されるエポキシ化合物は、更に具体的には、下記構造式(3−1)〜(3−9)
【0056】
【化11】
[式(3−1)〜(3−9)中Gはグリシジル基である。]
の何れかで表されるエポキシ化合物等が挙げられる。
【0057】
前記構造式(3)で表されるエポキシ化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)として1,4−ナフトキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物(P)として各種のジヒドロキシナフタレンを用い、前述の方法により製造することが出来る。このとき1,4−ナフトキノンとジヒドロキシナフタレンの反応割合は、前記構造式(1)で表される化合物を高効率で製造できることから、1,4−ナフトキノン1モルに対し、ジヒドロキシナフタレンが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
【0058】
前記構造式(3−1)〜(3−9)の何れかで表されるエポキシ化合物の中でも、硬化物における耐熱性及び難燃性により優れることから、前記構造式(3−8)又は(3−9)で表される化合物が好ましい。即ち、分子構造中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物(P)として2,7−ジヒドロキシナフタレンを用いて得られるエポキシ化合物が好ましい。
【0059】
前記構造式(3)で表されるエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂は、これら以外のその他のエポキシ化合物を含有していても良い。エポキシ樹脂が前記構造式(3)で表されるジナフト[b,d]フラン化合物以外のその他のエポキシ化合物を含有する場合、エポキシ樹脂中の前記構造式(3)で表されるジナフト[b,d]フラン化合物の含有率は、GPC測定における面積比率で5〜70%の範囲であることが好ましい。
【0060】
その他のエポキシ化合物の具体例としては、耐熱性の高いエポキシ樹脂となることから、下記構造式(3’)又は(3”)
【0061】
【化12】
(式中Gはグリシジル基を表し、kは1又は2である。式(3”)中のx、yはナフタレン環との結合点を示し、フラン環を形成するように互いに隣接する炭素に結合する。)
で表される多官能化合物が好ましい。
【0062】
エポキシ樹脂が前記構造式(3’)で表される多官能化合物を含有する場合、その含有率はGPC測定における面積比率で2〜60%の範囲であることが好ましい。また、エポキシ樹脂が前記構造式(3”)で表される多官能化合物を含有する場合、その含有率はGPC測定における面積比率で2〜40%の範囲であることが好ましい。
【0063】
前記構造式(4)で表されるエポキシ化合物は、更に具体的には、下記構造式(4−1)〜(4−4)
【0064】
【化13】
[式(4−1)〜(4−4)中Gはグリシジル基である。]
の何れかで表されるエポキシ化合物等が挙げられる。
【0065】
前記構造式(4)で表されるエポキシ化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)として1,4−ナフトキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物(P)として各種のジヒドロキシベンゼンを用い、前述の方法により製造することが出来る。このとき1,4−ナフトキノンとジヒドロキシベンゼンの反応割合は、前記構造式(1)で表される化合物を高効率で製造できることから、1,4−ナフトキノン1モルに対し、ジヒドロキシベンゼンが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
【0066】
前記構造式(4−1)〜(4−4)の何れかで表されるエポキシ化合物の中でも、硬化物における耐熱性及び難燃性により優れることから、前記構造式(4−2)又は(4−3)で表される化合物が好ましい。即ち、分子構造中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物(P)として1,3−ジヒドロキシベンゼンを用いて得られるエポキシ化合物が好ましい。
【0067】
前記構造式(4)で表されるエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂は、更にこれら以外のエポキシ化合物を含有していても良い。中でも、耐熱性の高いエポキシ樹脂となることから、下記構造式(4’)
【0068】
【化14】
(式中Gはグリシジル基を表し、k、lはそれぞれ1又は2である。)
で表される多官能化合物を含有していることが好ましい。この場合、エポキシ樹脂中の各成分の含有割合は、前記構造式(4)で表されるジナフト[b,d]フラン化合物の含有率がGPC測定における面積比率で5〜70%の範囲であり、かつ、前記構造式(4’)で表される多官能化合物の含有率がGPC測定における面積比率で1〜60%の範囲であることが好ましい。
【0069】
これら例示したエポキシ化合物のうち、硬化物における耐熱性及び難燃性とのバランスに優れることから前記構造式(1)〜(3)の何れかで表されるエポキシ化合物が好ましく、前記構造式(3)で表されるエポキシ化合物が特に好ましい。
【0070】
前記本発明のエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂は、硬化性に優れることからそのエポキシ当量が140〜400g/当量の範囲であることが好ましい。また、溶融粘度は、150℃条件下で測定される値が0.1〜4.0dPa・sの範囲であることが好ましい。
【0071】
本発明の硬化性組成物は、以上詳述したエポキシ化合物又はこれを含むエポキシ樹脂と、硬化剤とを必須成分とするものである。
【0072】
ここで用いる硬化剤は、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などの各種の公知の硬化剤が挙げられる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF
3−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0073】
本発明の硬化性組成物において、エポキシ化合物又はエポキシ樹脂と、硬化剤との配合割合は、硬化性が高く、硬化物における耐熱性及び難燃性に優れる硬化性組成物となることから、エポキシ化合物又はエポキシ樹脂中のエポキシ基と、硬化剤中の活性水素原子との当量比(エポキシ基/活性水素原子)が1/0.5〜1/1.5となる割合であることが好ましい。
【0074】
本発明の硬化性組成物は、本発明のエポキシ化合物に加え、その他のエポキシ樹脂を含有しても良い。
【0075】
ここで用いるその他のエポキシ樹脂は、具体的には、2,7−ジグリシジルオキシナフタレン、α−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトール/β−ナフトール共縮合型ノボラックのポリグリシジルエーテル、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシ−1−ナフチル)アルカン等のナフタレン骨格含有エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール系化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;リン原子含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0076】
ここで、リン原子含有エポキシ樹脂としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下、「HCA」と略記する。)のエポキシ化物、HCAとキノン類とを反応させて得られるフェノール樹脂のエポキシ化物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をHCAで変性したエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂をHCAで変性したエポキシ樹脂、また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を及びHCAとキノン類とを反応させて得られるフェノール樹脂で変成して得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0077】
これらその他のエポキシ樹脂を用いる場合には、本発明のエポキシ化合物の特徴である硬化物における耐熱性及び難燃性に優れる効果が十分に発揮されることから、全エポキシ樹脂成分中、本発明のエポキシ化合物が50質量%以上となる範囲で用いることが好ましい。
【0078】
また、これらその他のエポキシ樹脂を用いる場合、硬化性組成物の配合割合は、硬化性が高く、硬化物における耐熱性及び難燃性に優れる硬化性組成物となることから、全エポキシ成分中のエポキシ基と、前記硬化剤中の活性水素原子との当量比(エポキシ基/活性水素原子)が1/0.5〜1/1.5となる割合であることが好ましい。
【0079】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、イミダゾール化合物では2−エチル−4−メチルイミダゾール、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0080】
以上詳述した本発明の硬化性組成物は、用途や所望の性能に応じて、更に、その他の添加剤成分を含有していても良い。具体的には、難燃性をさらに向上させる目的で、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
【0081】
前記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0082】
前記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
【0083】
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0084】
前記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
【0085】
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、及びその他の添加剤や充填材等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0086】
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
【0087】
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
【0088】
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(i)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(ii)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール系化合物と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(iii)前記(ii)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(iv)前記(ii)、(iii)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0089】
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
【0090】
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、その他の添加剤や充填材等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0091】
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0092】
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0093】
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、及びその他の添加剤や充填材等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0094】
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
【0095】
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0096】
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0097】
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
【0098】
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
【0099】
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
【0100】
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO
2−MgO−H
2O、PbO−B
2O
3系、ZnO−P
2O
5−MgO系、P
2O
5−B
2O
3−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V
2O
5−TeO
2系、Al
2O
3−H
2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
【0101】
前記無機系難燃剤の配合量は、無機系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、及びその他の添加剤や充填材等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.5〜50質量部の範囲で配合することが好ましく、特に5〜30質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0102】
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
【0103】
前記有機金属塩系難燃剤の配合量は、有機金属塩系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、及びその他の添加剤や充填材等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0104】
この他、本発明の硬化性組成物は必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0105】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて無機質充填材を配合することができる。本発明のエポキシ化合物及びエポキシ樹脂は溶融粘度が低い特徴を有することから、無機質充填剤の配合量を高めることが可能であり、このような硬化性組成物は特に半導体封止材料用途に好適に用いることが出来る。
【0106】
前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。中でも、無機質充填材をより多く配合することが可能となることから、前記溶融シリカが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ、硬化性組成物の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いることが好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性組成物100質量部中、0.5〜95質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0107】
この他、本発明の硬化性組成物を導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0108】
本発明の硬化性組成物をプリント配線基板用ワニスに調整する場合には、有機溶剤を配合することが好ましい。ここで使用し得る前記有機溶剤は、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、また、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、有機溶剤として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0109】
本発明の硬化性組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。エポキシ樹成分、硬化剤、更に必要により硬化促進剤の配合された本発明の硬化性組成物は、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。該硬化物は、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0110】
本発明のエポキシ化合物は硬化物における耐熱性及び難燃性に優れることから、各種電子材料用途に用いることが出来る。中でも、特に半導体封止材料用途として好適に用いることが出来る。
【0111】
該半導体封止材料は、例えば、本発明のエポキシ化合物を含むエポキシ成分、硬化剤、及び充填材等の配合物を、押出機、ニーダー、ロール等を用いて均一になるまで十分に混合する方法により調整することが出来る。ここで用いる充填材は前記した無機充填材が挙げられ、前述の通り、硬化性組成物100質量部中、0.5〜95質量部の範囲で用いることが好ましい。中でも、難燃性や耐湿性、耐半田クラック性が向上し、線膨張係数を低減できることから、70〜95質量部の範囲で用いることが好ましく、80〜95質量部の範囲で用いることが特に好ましい。
【0112】
得られた半導体封止材料を用いて半導体パッケージを成型する方法は、例えば、該半導体封止材料を注型或いはトランスファー成形機、射出成型機などを用いて成形し、更に50〜200℃の温度条件下で2〜10時間加熱する方法が挙げられ、このような方法により、成形物である半導体装置を得ることが出来る。
【0113】
また、本発明のエポキシ化合物を用いてプリント回路基板を製造するには、本発明のエポキシ化合物、硬化剤、有機溶剤、その他添加剤等を含むワニス状の硬化性組成物を、補強基材に含浸し銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。ここで使用し得る補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状の硬化性組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この時用いる硬化性組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とするプリント回路基板を得ることができる。
【実施例】
【0114】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、150℃における溶融粘度及びGPC、NMR、MSスペクトルは以下の条件にて測定した。
【0115】
溶融粘度測定法:ASTM D4287に準拠し、150℃における溶融粘度をICI粘度計にて測定した。
【0116】
GPC:測定条件は以下の通り。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0117】
13C−NMR:測定条件は以下の通り。
装置:日本電子(株)製 AL−400
測定モード:SGNNE(NOE消去の1H完全デカップリング法)
溶媒 :ジメチルスルホキシド
パルス角度:45°パルス
試料濃度 :30wt%
積算回数 :10000回
【0118】
MS :日本電子株式会社製 二重収束型質量分析装置「AX505H(FD505H)」
【0119】
実施例1 エポキシ樹脂(1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレン160質量部(1.0モル)、1,4−ナフトキノン158質量部(1.0モル)、パラトルエンスルホン酸6質量部、メチルイソブチルケトン318質量部を仕込み、撹拌しながら室温から120℃まで昇温した。120℃に到達した後、3時間攪拌して反応させた。反応終了後中和し、150℃まで加熱して減圧下乾燥し、フェノール中間体(1)300質量部を得た。得られたフェノール中間体(1)のGPCチャートを
図1に示す。フェノール中間体(1)の水酸基当量は137g/当量であった。
【0120】
次いで、温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら上記反応で得られたフェノール中間体(1)137質量部(水酸基1.0当量)、エピクロルヒドリン463質量部(5.0モル)、n−ブタノール53質量部を仕込み攪拌しながら溶解させた。50℃に昇温した後に、20%水酸化ナトリウム水溶液220質量部(1.10モル)を3時間要して添加し、その後更に50℃で1時間反応させた。反応終了後、攪拌を停止して下層に溜まった水層を除去し、攪拌を再開して150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン300質量部とn−ブタノール50質量部とを加え溶解させた。更にこの溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液15質量部を添加して80℃で2時間反応させた後、洗浄液のpHが中性となるまで水100質量部で水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して目的のエポキシ樹脂(1)180質量部を得た。得られたエポキシ樹脂(1)のGPCチャートを
図2に示す。エポキシ樹脂(1)のエポキシ当量は198g/当量、溶融粘度は1.6dPa・sであった。GPCチャートから算出される、前記構造式(3)で表されるジナフト[b,d]フラン化合物に相当する成分の含有量は47.4%、前記構造式(3’)で表されkの値が1である2核体化合物に相当する成分の含有量は9.5%、前記構造式(3”)で表される3核体化合物に相当する成分の含有量は17.7%であった。
【0121】
実施例2 エポキシ樹脂(2)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレン160質量部(1.0モル)、1,4−ナフトキノン158質量部(1.0モル)、パラトルエンスルホン酸6質量部、イソプロピルアルコール333質量部を仕込み、撹拌しながら室温から80℃まで昇温した。80℃に到達した後、3時間攪拌して反応させた。反応終了後中和し、150℃まで加熱して減圧下乾燥し、フェノール中間体(2)295質量部を得た。得られたフェノール中間体(2)のGPCチャートを
図3に示す。フェノール中間体(2)の水酸基当量は119g/当量であった。
【0122】
次いで、温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら上記反応で得られたフェノール中間体(2)119質量部(水酸基1.0当量)、エピクロルヒドリン463質量部(5.0モル)、n−ブタノール53質量部を仕込み攪拌しながら溶解させた。50℃に昇温した後に、20%水酸化ナトリウム水溶液220質量部(1.10モル)を3時間要して添加し、その後更に50℃で1時間反応させた。反応終了後、攪拌を停止して下層に溜まった水層を除去し、攪拌を再開して150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン300質量部とn−ブタノール50質量部とを加え溶解させた。更にこの溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液15質量部を添加して80℃で2時間反応させた後、洗浄液のpHが中性となるまで水100質量部で水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して目的のエポキシ樹脂(2)160質量部を得た。得られたエポキシ樹脂(2)のGPCチャートを
図4に、13C−NMRスペクトルを
図5、およびMSスペクトルを
図6に示す。エポキシ樹脂(2)のエポキシ当量は183g/当量、溶融粘度は0.9dPa・sであった。MSスペクトルから前記構造式(3)で表されるジナフト[b,d]フラン化合物に相当する412のピーク、前記構造式(3’)で表されkの値が1である2核体化合物に相当する542のピーク、前記構造式(3”)で表される3核体化合物に相当する682のピークが検出された。GPCチャートから算出される、前記構造式(3)で表されるジナフト[b,d]フラン化合物に相当する成分の含有量は43.4%、前記構造式(3’)で表されkの値が1である2核体化合物に相当する成分の含有量は19.3%、前記構造式(3”)で表される3核体化合物に相当する成分の含有量は18.6%であった。
【0123】
実施例3 エポキシ樹脂(3)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレン160質量部(1.0モル)、2,3,5−トリメチル−パラベンゾキノン150質量部(1.0モル)、パラトルエンスルホン酸6質量部、メチルイソブチルケトン310質量部を仕込み、撹拌しながら室温から120℃まで昇温した。120℃に到達した後、3時間攪拌して反応させた。反応終了後中和し、析出した結晶を水200質量部で3回洗浄後、減圧下乾燥し、フェノール中間体(3)290質量部を得た。得られたフェノール中間体(3)のGPCチャートを
図7に、13CNMRスペクトルを
図8、およびMSスペクトルを
図9に示す。フェノール中間体(3)の水酸基当量は148g/当量であった。
【0124】
次いで、温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら上記反応で得られたフェノール中間体(3)148質量部(水酸基1.0当量)、エピクロルヒドリン463質量部(5.0モル)、n−ブタノール53質量部を仕込み攪拌しながら溶解させた。50℃に昇温した後に、20%水酸化ナトリウム水溶液220質量部(1.10モル)を3時間要して添加し、その後更に50℃で1時間反応させた。反応終了後、攪拌を停止して下層に溜まった水層を除去し、攪拌を再開して150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン300質量部とn−ブタノール50質量部とを加え溶解させた。更にこの溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液15質量部を添加して80℃で2時間反応させた後、洗浄液のpHが中性となるまで水100質量部で水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して目的のエポキシ樹脂(3)190質量部を得た。得られたエポキシ樹脂(3)のGPCチャートを
図10に示す。エポキシ樹脂(10)のエポキシ当量は215g/当量であった。GPCチャートから算出される、前記構造式(2)で表されるジアリーレン[b,d]フラン化合物に相当する成分の含有量は82.4%であった。
【0125】
実施例4 エポキシ樹脂(4)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、1,5−ジヒドロキシナフタレン160質量部(1.0モル)、1,4−ナフトキノン158質量部(1.0モル)、パラトルエンスルホン酸6質量部、イソプロピルアルコール333質量部を仕込み、撹拌しながら室温から80℃まで昇温した。80℃に到達した後、3時間攪拌して反応させた。反応終了後中和し、150℃まで加熱して減圧下乾燥し、フェノール中間体(4)292質量部を得た。得られたフェノール中間体(4)のGPCチャートを
図11に示す。フェノール中間体(4)の水酸基当量は132g/当量であった。
【0126】
次いで、温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら上記反応で得られたフェノール中間体(4)132質量部(水酸基1.0当量)、エピクロルヒドリン463質量部(5.0モル)、n−ブタノール53質量部を仕込み攪拌しながら溶解させた。50℃に昇温した後に、20%水酸化ナトリウム水溶液220質量部(1.10モル)を3時間要して添加し、その後更に50℃で1時間反応させた。反応終了後、攪拌を停止して下層に溜まった水層を除去し、攪拌を再開して150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン300質量部とn−ブタノール50質量部とを加え溶解させた。更にこの溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液15質量部を添加して80℃で2時間反応させた後、洗浄液のpHが中性となるまで水100質量部で水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して目的のエポキシ樹脂(4)175質量部を得た。得られたエポキシ樹脂(4)のGPCチャートを
図12に示す。エポキシ樹脂(4)のエポキシ当量は202g/当量、溶融粘度は1.2dPa・sであった。GPCチャートから算出される前記構造式(3)で表されるジナフト[b,d]フラン化合物に相当する成分の含有量は23.6%であった。
【0127】
実施例5〜8及び比較例1
先で得たエポキシ樹脂(1)〜(4)について、下記の要領で各種評価試験を行った。比較対象サンプルとして、以下のエポキシ樹脂を用いた。
エポキシ樹脂(1’):特許文献1の実施例1記載のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製「NC−3000」エポキシ当量274g/当量)
【0128】
<耐熱性の評価>
1)評価サンプルの作成
前記エポキシ樹脂(1)〜(4)、(1’)の何れかと、硬化剤としてフェノールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製「TD−2131」水酸基当量104g/当量)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(以下「TPP」と略記する。)を用い、下記表1に示す組成で配合して硬化性組成物を得た。これを11cm×9cm×2.4mmの型枠に流し込み、プレスで150℃の温度で10分間成型した後、型枠から成型物を取り出し、次いで、175℃の温度で5時間後硬化させて評価サンプルを得た。
2)ガラス転移温度の測定
粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用い、前記評価サンプルについて弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度を測定し、これをガラス転移温度として評価した。結果を表1に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
<難燃性の評価>
1)評価サンプルの作成
前記エポキシ樹脂(1)〜(4)、(1’)の何れかと、硬化剤としてフェノールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製「TD−2131」水酸基当量104g/当量)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(以下「TPP」と略記する。)、無機充填材として球状シリカ(電気化学株式会社製「FB−5604」)、シランカップリング剤としてカップリング剤(信越化学株式会社製「KBM−403」)、カルナウバワックス(株式会社セラリカ野田製「PEARL WAX No.1−P」)、カーボンブラックを、下記表2に示す組成で配合し、2本ロールを用いて85℃の温度で5分間溶融混練して硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物を用い、トランスファー成形機にて幅12.7mm、長さ127mm、厚み1.6mm大のサンプルを175℃の温度で90秒成形した後、175℃の温度で5時間後硬化して評価用サンプルを得た。
2)難燃性の評価
先で得た厚さ1.6mmの評価用サンプル5本を用い、UL−94試験法に準拠して燃焼試験を行った。結果を表2に示す。
難燃試験クラス
*1:1回の接炎における最大燃焼時間(秒)
*2:試験片5本の合計燃焼時間(秒)
【0131】
【表2】
硬化物における耐熱性及び難燃性に優れるエポキシ化合物、これを含有するエポキシ樹脂、硬化性組成物とその硬化物、及び半導体封止材料を提供する。ジアリーレン[b、d]フラン構造を有し、2つのアリーレン基のうち少なくとも一方がナフチレン骨格を有するものであり、かつ、2つのアリーレン基が何れもその芳香核上にグリシジルオキシ基を有することを特徴とするエポキシ化合物。