(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679967
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】複合波形周波数マッチング装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20150212BHJP
H03H 7/38 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H03H7/38 Z
【請求項の数】22
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-514775(P2011-514775)
(86)(22)【出願日】2009年6月17日
(65)【公表番号】特表2011-526405(P2011-526405A)
(43)【公表日】2011年10月6日
(86)【国際出願番号】US2009047675
(87)【国際公開番号】WO2009155352
(87)【国際公開日】20091223
【審査請求日】2012年5月18日
(31)【優先権主張番号】12/142,062
(32)【優先日】2008年6月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レミング・アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】クシ・アンドラス
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン・トーマス
【審査官】
鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−263587(JP,A)
【文献】
特開平07−029895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
C23C 16/00−16/56
H01L 21/205
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469
H01L 21/86
H03H 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合波形周波数マッチング装置であって、
互いに並列に接続される複数の無線周波数発生器であって、各無線周波数発生器が、任意の1つの低周波数生成無線周波数発生器により発生された周波数の整数倍となる高調波周波数を発生し、その結果、複合波形を生成するように構成される複数の無線周波数発生器と、
前記複数の無線周波数発生器の出力側に接続される複数の周波数スプリッタ回路と、
複数のマッチングネットワークであって、各マッチングネットワークは、入力側が前記複数の周波数スプリッタ回路の一つの出力側に接続され、出力側がプラズマチャンバに接続されるように構成される複数のマッチングネットワークと、
前記複数の無線周波数発生器の前記出力側と前記複数の周波数スプリッタ回路の入力側との間に接続される周波数分析器を備える、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項2】
複合波形周波数マッチング装置であって、
互いに並列に接続される複数の無線周波数発生器であって、各無線周波数発生器が、任意の1つの低周波数生成無線周波数発生器により発生された周波数の整数倍となる高調波周波数を発生し、その結果、複合波形を生成するように構成される複数の無線周波数発生器と、
前記複数の無線周波数発生器の出力側に接続される複数の周波数スプリッタ回路と、
複数のマッチングネットワークであって、各マッチングネットワークは、入力側が前記複数の周波数スプリッタ回路の一つの出力側に接続され、出力側がプラズマチャンバに接続されるように構成される複数のマッチングネットワークと、
前記複数の無線周波数発生器の前記出力側と前記複数の周波数スプリッタ回路の入力側との間に接続される抵抗素子であって、前記複数の周波数スプリッタ回路が、各々、高品質の値を出力可能なように選択される抵抗素子を備える、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項3】
複合波形周波数マッチング装置であって、
互いに並列に接続される複数の無線周波数発生器であって、各無線周波数発生器が、任意の1つの低周波数生成無線周波数発生器により発生された周波数の整数倍となる高調波周波数を発生し、その結果、複合波形を生成するように構成される複数の無線周波数発生器と、
前記複数の無線周波数発生器の出力側に接続される複数の周波数スプリッタ回路と、
複数のマッチングネットワークであって、各マッチングネットワークは、入力側が前記複数の周波数スプリッタ回路の一つの出力側に接続され、出力側がプラズマチャンバに接続されるように構成される複数のマッチングネットワークと、
を備え、
前記複数のマッチングネットワークが、複数の狭帯域増幅器から成る、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記複数の周波数スプリッタ回路に接続されるフィードフォワード・ループであって、求められた前記複合波形の構成周波数に基づいて、前記複数の周波数スプリッタ回路の各々の共振周波数を調整するように構成されるフィードフォワード・ループを備える、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記複数のマッチングネットワークに接続されるフィードフォワード・ループであって、求められた前記複合波形の構成周波数に基づいて、前記複数のマッチングネットワークの各々の共振周波数を調整するように構成されるフィードフォワード・ループを備える、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項6】
請求項1に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記周波数分析器が、高速フーリエ変換を行なって、前記複合波形の構成周波数を求めるように構成される、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記複数のマッチングネットワークが、各々、前記複数の周波数スプリッタ回路の一つから入力される中心周波数のインピーダンスを前記プラズマチャンバの入力インピーダンスにマッチングさせるように構成される、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項8】
複合波形周波数マッチング装置であって、
互いに並列に接続される複数の無線周波数発生器であって、各無線周波数発生器が、任意の1つの低周波数生成無線周波数発生器により発生された周波数の整数倍となる高調波周波数を発生し、その結果、複合波形を生成するように構成される複数の無線周波数発生器と、
前記複数の無線周波数発生器の出力側に接続される周波数分析器と、
前記周波数分析器の出力側に接続される複数の周波数スプリッタ回路と、
複数のマッチングネットワークであって、各マッチングネットワークは、入力側が前記複数の周波数スプリッタ回路の一つの出力側に接続され、出力側がプラズマチャンバに接続されるように構成される複数のマッチングネットワークと、
を備える複合波形周波数マッチング装置。
【請求項9】
請求項8に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記複数の周波数スプリッタ回路に接続されるフィードフォワード・ループであって、求められた前記複合波形の構成周波数に基づいて、前記複数の周波数スプリッタ回路の各々の共振周波数を調整するように構成されるフィードフォワード・ループを備える、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項10】
請求項8に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記複数のマッチングネットワークに接続されるフィードフォワード・ループであって、求められた前記複合波形の構成周波数に基づいて、前記複数のマッチングネットワークの各々の共振周波数を調整するように構成されるフィードフォワード・ループを備える、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項11】
請求項8に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記複数のマッチングネットワークが、各々、前記複数の周波数スプリッタ回路の一つから入力される中心周波数のインピーダンスを前記プラズマチャンバの入力インピーダンスにマッチングさせるように構成される、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項12】
請求項8に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記複数の無線周波数発生器の前記出力側と前記複数の周波数スプリッタ回路の入力側との間に接続される抵抗素子であって、前記複数の周波数スプリッタ回路が、各々、高品質の値を出力可能なように選択される抵抗素子を備える、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項13】
請求項8に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記複数のマッチングネットワークが、複数の狭帯域増幅器から成る、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項14】
請求項8に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記周波数分析器が、高速フーリエ変換を行なって、前記複合波形の構成周波数を求めるように構成される、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項15】
複合波形周波数マッチング装置であって、
複合波形を生成するように構成される無線周波数発生器と、
前記無線周波数発生器の出力側に接続される複数の周波数スプリッタ回路と、
複数のマッチングネットワークであって、前記複数のマッチングネットワークは、各々、入力側が前記複数の周波数スプリッタ回路の一つの出力側に接続され、出力側がプラズマチャンバに接続されるように構成される複数のマッチングネットワークと、
前記無線周波数発生器の前記出力側と前記複数の周波数スプリッタ回路の入力側との間に接続される周波数分析器を備える、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項16】
複合波形周波数マッチング装置であって、
複合波形を生成するように構成される無線周波数発生器と、
前記無線周波数発生器の出力側に接続される複数の周波数スプリッタ回路と、
複数のマッチングネットワークであって、前記複数のマッチングネットワークは、各々、入力側が前記複数の周波数スプリッタ回路の一つの出力側に接続され、出力側がプラズマチャンバに接続されるように構成される複数のマッチングネットワークと、
前記無線周波数発生器の前記出力側と前記複数の周波数スプリッタ回路の入力側との間に接続される抵抗素子であって、前記複数の周波数スプリッタ回路の各々が高品質の値を出力可能なように選択される抵抗素子を備える、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項17】
複合波形周波数マッチング装置であって、
複合波形を生成するように構成される無線周波数発生器と、
前記無線周波数発生器の出力側に接続される複数の周波数スプリッタ回路と、
複数のマッチングネットワークであって、前記複数のマッチングネットワークは、各々、入力側が前記複数の周波数スプリッタ回路の一つの出力側に接続され、出力側がプラズマチャンバに接続されるように構成される複数のマッチングネットワークと、
を備え、
前記複数のマッチングネットワークが、複数の狭帯域増幅器から成る、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか一項に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記複数の周波数スプリッタ回路に接続されるフィードフォワード・ループであって、求められた前記複合波形の構成周波数に基づいて、前記複数の周波数スプリッタ回路の各々の共振周波数を調整するように構成されるフィードフォワード・ループを備える、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項19】
請求項15〜17のいずれか一項に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記複数のマッチングネットワークに接続されるフィードフォワード・ループであって、求められた前記複合波形の構成周波数に基づいて、前記複数のマッチングネットワークの各々の共振周波数を調整するように構成されるフィードフォワード・ループを備える、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項20】
請求項15に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記周波数分析器が、高速フーリエ変換を行なって、前記複合波形の構成周波数を求めるように構成される、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項21】
請求項15〜17のいずれか一項に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記複数のマッチングネットワークの各々が、前記複数の周波数スプリッタ回路の一つから入力される中心周波数のインピーダンスを前記プラズマチャンバの入力インピーダンスにマッチングさせるように構成される、
複合波形周波数マッチング装置。
【請求項22】
請求項15〜17のいずれか一項に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記無線周波数発生器が、デジタル信号発生器である、
複合波形周波数マッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年6月19日に出願された米国特許出願番号12/142,062号に基づく優先権を主張するものである。前記出願の内容は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、半導体、データ・ストレージ、フラットパネル・ディスプレイやこれらに類似又はその他の産業で用いられる処理装置の分野に関する。より詳しくは、本発明は、プラズマ処理装置において、プラズマ負荷にRF(無線周波数)複合波形を効率的に結合させるシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
数10年前に集積回路(IC)デバイスが最初に導入されて以来、半導体デバイス形状(すなわち、集積回路設計)は飛躍的に小型化されている。ICは、2年ごとに一つの集積回路チップ上に搭載可能なデバイスの数が倍になるという「ムーアの法則」に概ね従っている。今日のIC製造設備では、65nm(0.065μm)というごく微細な寸法のフィーチャー(特徴的構造)を備えるデバイスが日常的に製造されている。さらに小型化したフィーチャーを有するデバイスもいずれ製造されるようになるであろう。
【0004】
大部分のIC製造設備では、製造工程の一部において、処理装置内でプラズマを用いて、半導体ウエハ等の基板と反応させている、又は、基板との反応を促進させている。無線周波数(RF)又はマイクロ波出力発生器は、半導体及び産業用プラズマ処理装置で広く用いられており、処理チャンバ内でプラズマを発生させる。プラズマ処理は、基板からの材料エッチング、基板への材料蒸着、基板表面の洗浄及び基板表面の改質等、広範囲で利用されている。
【0005】
図1に従来のプラズマ処理システム100の一部の断面図を示す。プラズマ処理システム100は、チャンバ壁101を有する真空チャンバ109を備える。チャンバ壁101の少なくとも一部がウィンドウ103になっており、ウィンドウ103は、通常、プラズマ処理システム100の動作周波数で高周波(RF)を透過させる石英やその他類似の物質から形成される。コイル115は、真空チャンバ109の外側に、ウィンドウ103を囲むように配置される。RF発生器119は、マッチングネットワーク117を介して、コイル115に接続されている。マッチングネットワーク117は、RF発生器119の出力インピーダンスを真空チャンバ109の入力インピーダンスとマッチングさせる手段として機能する。マッチングネットワーク117は、固定要素のみを含む構成でも、あるいは、様々な負荷条件に対してRF発生器119の動的インピーダンスマッチングを可能にする可変コンデンサ及び可変インダクタ等の要素を含む構成でもよい。
【0006】
プラズマ処理システム100におけるRF発生器119は、主要プラズマ発生部であり、真空チャンバ109内のプラズマに電圧を印加する。また、プラズマ内に存在する(図示しない)容量電極や(図示しない)誘導コイルによってもプラズマが発生する。
【0007】
複数の供給ガス貯蔵源105(1つしか図示されていない)から、処理ガスが真空チャンバ109に導入される。真空ポンプ107を用いて、真空チャンバ109内を、プラズマ処理システム100において実行される所定の処理(たとえば、プラズマエッチングやプラズマ蒸着)に適した真空レベルにする。さらに、真空ポンプ107を用いて、真空チャンバ109から処理ガスを排気させる。
【0008】
基板113(たとえば、半導体ウエハ)は、静電チャック(ESC)111等の基板支持部により、真空チャンバ109内に保持される。ESC111は、プラズマ処理システム100内でカソードとして作用して、静電ポテンシャル(電位)を発生させ、処理の間、基板113をその位置で保持することにより、基板113の裏面とだけ接触する機械的クランプに起因する問題を生じることがない。ESC111は、基板113とESC111に逆の電荷を誘導することにより、両者の間に静電気引力を発生させる。したがって、ESC111と基板113の間にキャパシタンス(静電容量)が生じる。キャパシタンスが十分に大きければ、高周波数で処理が実行される際に、ESC111と基板113との間のRF電圧降下が小さくなる。
【0009】
プラズマ処理システム100は、さらに、真空チャンバ109内にアノード(直接図示はしていないが、アノードは、通常、チャンバ壁101及び/又はチャンバ上面により形成される)を備える。基板113を処理するために、複数の供給ガス貯蔵源105の一つ又は複数から真空チャンバ内に反応ガスを供給する。RF発生器119により発生させた単一の正弦波周波数を用いてアノード及び(カソードとして作用する)ESC111を駆動させて、反応ガスをプラズマに励起させる。単一周波数は通常13.56MHzであるが、100kHzから2.45GHzの範囲の単一周波数もよく用いられ、さらに、他の単一周波数を用いることもできる。もっと具体的に説明すると、単一周波数の正弦波RF信号を、比較的高い出力レベルで、たとえば、3キロワットで、チャンバ内の反応ガスに印加する。RF出力によって反応ガスを励起させて、真空チャンバ109内で、処理対象の基板113に周囲にプラズマを発生させる。プラズマ反応ガス処理は、エッチングや化学蒸着に通常用いられる。
【0010】
最近では、真空チャンバ内におけるプラズマ励起に、複数の正弦波周波数が用いられている。このようなシステムでは、カソード/アノード・バイアス回路を第1のRF周波数で駆動し、真空チャンバに近接するアンテナ又はコイルを第2のRF周波数で駆動する。RF発振器、プリアンプ(前置増幅器)、パワーアンプ(出力増幅器)、伝送線及びマッチングネットワークから構成され、各プラズマ励起回路に高出力レベルで異なる正弦波RF周波数を供給する個別のRF出力供給システムに各回路が接続される。重複する発振器やその他関連回路構造は高価で複雑である。他のシステムで、第1の周波数と第2の周波数の両方を一つの電極に供給すると、両方の周波数を同時にはマッチングできないため、出力伝達が減少してしまう場合がある。
【0011】
出力源と負荷(すなわち、プラズマに結合する要素)のインピーダンスがマッチングしていない場合には、負荷に供給される(又は負荷に吸収される)出力の反射が生じ、出力伝達を最大化することができない。したがって、負荷で吸収又は反射される出力量を制御することが重要となる。さらに、インピーダンスの不一致は、出力源や出力源に接続される他の構成要素に悪影響を及ぼす。多くの場合、負荷インピーダンス(すなわち、プラズマ結合要素の入力インピーダンス)は、結合するプラズマ状態又は条件に依存し、かつ、プラズマ状態は処理の間に変動するため、負荷インピーダンスを予め求めることができない。したがって、多くのプラズマ処理システムは、RF出力源とプラズマ結合要素との間に備えられるマッチングネットワークを用いて、入力インピーダンスと出力インピーダンスのマッチングを行なう。マッチングネットワークを用いて、プラズマに供給されるRF出力量を最大化し、バイアス出力の振幅と相を制御する。
【0012】
最近の研究により、プラズマ反応器のイオンエネルギーの調整が半導体ウエハ処理に有利に働くことがわかってきた。無線周波数(RF)複合波形を発生させて、プラズマ反応器のバイアス電極に供給することにより、発生させるプラズマに所望の効果を与えることができる。RF複合波形は、10以上の高調波周波数が含まれるものでも、(基本周波数と位相シフトした第2高調波周波数の)2つだけという少ない数の周波数を含むものでもよい。
【0013】
ただし、複合波形には、高調波周波数が存在するため、プラズマ負荷とマッチングさせるのが難しい。上述した従来のマッチングシステムでは、単一周波数のRF波形をプラズマチャンバとマッチングさせることしかできず、異なる周波数から成る複合波形に適した帯域幅を与えることはできなかった。さらに、見かけのプラズマ負荷のインピーダンスは、入力波形の周波数に依存する。そのため、各高調波周波数のインピーダンスをプラズマ発生器に効率的にマッチングさせるためには、複合波形をプラズマ反応器にマッチングさせるシステムが必要となる。
【発明の概要】
【0014】
一つの態様において、開示される複合波形周波数マッチング装置は、互いに並列に接続される複数の無線周波数発生器を備える。複数の無線周波数発生器の各々は、任意の1つの低周波数生成無線周波数発生器により発生された周波数の整数倍となる高調波周波数を発生し、その結果、複合波形を生成するように構成される。複数の周波数スプリッタ回路は、複数の無線周波数発生器の出力側に接続される。複数のマッチングネットワークの各々は、入力側が複数の周波数スプリッタ回路の一つの出力側に接続され、出力側がプラズマチャンバに接続されるように構成される。
本発明の一形態では、上記複合波形周波数マッチング装置は、更に、前記複数の無線周波数発生器の前記出力側と前記複数の周波数スプリッタ回路の入力側との間に接続される周波数分析器を備える。
他の形態では、上記複合波形周波数マッチング装置は、更に、前記複数の無線周波数発生器の前記出力側と前記複数の周波数スプリッタ回路の入力側との間に接続される抵抗素子であって、前記複数の周波数スプリッタ回路が、各々、高品質の値を出力可能なように選択される抵抗素子を備える、
更に他の形態では、上記複合波形周波数マッチング装置において、前記複数のマッチングネットワークが、複数の狭帯域増幅器から成る。
【0015】
別の態様において、開示される複合波形周波数マッチング装置は、互いに並列に接続される複数の無線周波数発生器を備える。複数の無線周波数発生器の各々は、その前段のより低周波数を生成する無線周波数発生器により発生された周波数の整数倍となる高調波周波数を発生し、その結果、複合波形を生成するように構成される。複数の無線周波数発生器の出力側には周波数分析器が接続され、周波数分析器の出力側には、複数の周波数スプリッタ回路が接続される。複数のマッチングネットワークの各々は、入力側が複数の周波数スプリッタ回路の一つの出力側に接続され、出力側がプラズマチャンバに接続されるように構成される。
【0016】
さらに別の態様において、開示される複合波形周波数マッチング装置は、複合波形を生成するように構成される無線周波数発生器と、無線周波数発生器の出力側に接続される複数の周波数スプリッタ回路と、複数のマッチングネットワークと、を備える。複数のマッチングネットワークの各々は、入力側が複数の周波数スプリッタ回路の一つの出力側に接続され、出力側がプラズマチャンバに接続されるように構成される。
本発明の一形態では、上記複合波形周波数マッチング装置は、更に、前記無線周波数発生器の前記出力側と前記複数の周波数スプリッタ回路の入力側との間に接続される周波数分析器を備える。
他の一形態では、上記複合波形周波数マッチング装置は、更に、前記無線周波数発生器の前記出力側と前記複数の周波数スプリッタ回路の入力側との間に接続される抵抗素子であって、前記複数の周波数スプリッタ回路の各々が高品質の値を出力可能なように選択される抵抗素子を備える。
更に他の形態では、上記複合波形周波数マッチング装置において、前記複数のマッチングネットワークが、複数の狭帯域増幅器から成る。
なお、本発明は、以下の適用例としても実現可能である。
[適用例1]
複合波形周波数マッチング装置であって、
互いに並列に接続される複数の無線周波数発生器であって、各無線周波数発生器が、任意の1つの低周波数生成無線周波数発生器により発生された周波数の整数倍となる高調波周波数を発生し、その結果、複合波形を生成するように構成される複数の無線周波数発生器と、
前記複数の無線周波数発生器の出力側に接続される複数の周波数スプリッタ回路と、
複数のマッチングネットワークであって、各マッチングネットワークは、入力側が前記複数の周波数スプリッタ回路の一つの出力側に接続され、出力側がプラズマチャンバに接続されるように構成される複数のマッチングネットワークと、
を備える複合波形周波数マッチング装置。
[適用例2]
適用例1に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記複数の無線周波数発生器の前記出力側と前記複数の周波数スプリッタ回路の入力側との間に接続される周波数分析器を備える、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例3]
適用例2に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記複数の周波数スプリッタ回路に接続されるフィードフォワード・ループであって、求められた前記複合波形の構成周波数に基づいて、前記複数の周波数スプリッタ回路の各々の共振周波数を調整するように構成されるフィードフォワード・ループを備える、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例4]
適用例2に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記複数のマッチングネットワークに接続されるフィードフォワード・ループであって、求められた前記複合波形の構成周波数に基づいて、前記複数のマッチングネットワークの各々の共振周波数を調整するように構成されるフィードフォワード・ループを備える、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例5]
適用例2に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記周波数分析器が、高速フーリエ変換を行なって、前記複合波形の構成周波数を求めるように構成される、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例6]
適用例1に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記複数のマッチングネットワークが、各々、前記複数の周波数スプリッタ回路の一つから入力される中心周波数のインピーダンスを前記プラズマチャンバの入力インピーダンスにマッチングさせるように構成される、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例7]
適用例1に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記複数の無線周波数発生器の前記出力側と前記複数の周波数スプリッタ回路の入力側との間に接続される抵抗素子であって、前記複数の周波数スプリッタ回路が、各々、高品質の値を出力可能なように選択される抵抗素子を備える、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例8]
適用例1に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記複数のマッチングネットワークが、複数の狭帯域増幅器から成る、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例9]
複合波形周波数マッチング装置であって、
互いに並列に接続される複数の無線周波数発生器であって、各無線周波数発生器が、任意の1つの低周波数生成無線周波数発生器により発生された周波数の整数倍となる高調波周波数を発生し、その結果、複合波形を生成するように構成される複数の無線周波数発生器と、
前記複数の無線周波数発生器の出力側に接続される周波数分析器と、
前記周波数分析器の出力側に接続される複数の周波数スプリッタ回路と、
複数のマッチングネットワークであって、各マッチングネットワークは、入力側が前記複数の周波数スプリッタ回路の一つの出力側に接続され、出力側がプラズマチャンバに接続されるように構成される複数のマッチングネットワークと、
を備える複合波形周波数マッチング装置。
[適用例10]
適用例9に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記複数の周波数スプリッタ回路に接続されるフィードフォワード・ループであって、求められた前記複合波形の構成周波数に基づいて、前記複数の周波数スプリッタ回路の各々の共振周波数を調整するように構成されるフィードフォワード・ループを備える、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例11]
適用例9に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記複数のマッチングネットワークに接続されるフィードフォワード・ループであって、求められた前記複合波形の構成周波数に基づいて、前記複数のマッチングネットワークの各々の共振周波数を調整するように構成されるフィードフォワード・ループを備える、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例12]
適用例9に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記複数のマッチングネットワークが、各々、前記複数の周波数スプリッタ回路の一つから入力される中心周波数のインピーダンスを前記プラズマチャンバの入力インピーダンスにマッチングさせるように構成される、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例13]
適用例9に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記複数の無線周波数発生器の前記出力側と前記複数の周波数スプリッタ回路の入力側との間に接続される抵抗素子であって、前記複数の周波数スプリッタ回路が、各々、高品質の値を出力可能なように選択される抵抗素子を備える、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例14]
適用例9に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記複数のマッチングネットワークが、複数の狭帯域増幅器から成る、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例15]
適用例9に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記周波数分析器が、高速フーリエ変換を行なって、前記複合波形の構成周波数を求めるように構成される、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例16]
複合波形周波数マッチング装置であって、
複合波形を生成するように構成される無線周波数発生器と、
前記無線周波数発生器の出力側に接続される複数の周波数スプリッタ回路と、
複数のマッチングネットワークであって、前記複数のマッチングネットワークは、各々、入力側が前記複数の周波数スプリッタ回路の一つの出力側に接続され、出力側がプラズマチャンバに接続されるように構成される複数のマッチングネットワークと、
を備える複合波形周波数マッチング装置。
[適用例17]
適用例16に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記無線周波数発生器の前記出力側と前記複数の周波数スプリッタ回路の入力側との間に接続される周波数分析器を備える、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例18]
適用例17に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記複数の周波数スプリッタ回路に接続されるフィードフォワード・ループであって、求められた前記複合波形の構成周波数に基づいて、前記複数の周波数スプリッタ回路の各々の共振周波数を調整するように構成されるフィードフォワード・ループを備える、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例19]
適用例17に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記複数のマッチングネットワークに接続されるフィードフォワード・ループであって、求められた前記複合波形の構成周波数に基づいて、前記複数のマッチングネットワークの各々の共振周波数を調整するように構成されるフィードフォワード・ループを備える、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例20]
適用例17に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記周波数分析器が、高速フーリエ変換を行なって、前記複合波形の構成周波数を求めるように構成される、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例21]
適用例16に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記複数のマッチングネットワークの各々が、前記複数の周波数スプリッタ回路の一つから入力される中心周波数のインピーダンスを前記プラズマチャンバの入力インピーダンスにマッチングさせるように構成される、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例22]
適用例16に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、さらに、
前記無線周波数発生器の前記出力側と前記複数の周波数スプリッタ回路の入力側との間に接続される抵抗素子であって、前記複数の周波数スプリッタ回路の各々が高品質の値を出力可能なように選択される抵抗素子を備える、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例23]
適用例16に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記無線周波数発生器が、デジタル信号発生器である、
複合波形周波数マッチング装置。
[適用例24]
適用例16に記載の複合波形周波数マッチング装置であって、
前記複数のマッチングネットワークが、複数の狭帯域増幅器から成る、
複合波形周波数マッチング装置。
【図面の簡単な説明】
【0017】
添付の図面は、以下の説明する本発明の実施例を例示するものに過ぎず、本発明の範囲を限定すると見なされるものではない。
【
図1】保持装置を備える従来のプラズマ処理チャンバの一部の概略を示す断面図。
【
図2】基本周波数と4つの高調波周波数の相対的な振幅を表わすスペクトル周波数領域グラフ。
【
図3】バンドパスフィルタと、対応する複合波形バイアス電圧用のマッチングネットワークと、を備える回路の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の様々な実施例は、複数の周波数(すなわち、複合波形)から成るRF(無線周波数)信号をプラズマチャンバにマッチングさせて、信号の反射を最小限に抑えると同時に出力伝達を最大化するように構成される。これにより、高度な半導体処理に用いられるプラズマ反応器において、複合周波数を用いてイオンエネルギーを調整することが可能になる。
【0019】
本発明は、複合波形を有するバイアス電圧の処理に特に適している。たとえば、電圧がパルスピークまで上昇した後に、パルスピークレベルより低い第1電圧レベルからさらに低い第2電圧レベルまで降下するように、複合波形を調整してもよい。(図示しない)DC阻止コンデンサに複合波形を印加する時間と、各サイクルにおける電圧降下の割合と、を選択することにより、処理チャンバ内に置かれた基板上のイオン蓄積の影響を補償して実質的に相殺し、電圧のパルスピーク間で、基板上のDC自己バイアス電圧をほぼ一定に維持することができる。基板における複合波形のサイクルには、プラズマから基板に電子が吸引される期間である狭電圧パルス期間と、DC阻止コンデンサにより保持される基板の自己バイアスに起因する、それに続くほぼ一定のDCバイアス電圧期間と、が含まれる。バイアス電圧の各サイクルが単一の狭電圧パルスピークとそれに続く電圧降下とを含む場合、基板表面におけるイオンのイオンエネルギー分布関数は、特定のイオンエネルギー値を中心とした単一の狭ピークを与える。DC阻止コンデンサに印加したバイアス電圧の各サイクルが、2つの狭電圧パルスピークを有し、各パルスピーク後に電圧が降下するような構成でもよい。この場合、2つの電圧パルスピーク間の時間間隔、電圧パルスピークの高さ、及びパルスピーク間の電圧降下率を選択することにより、基板のバイアス電圧の各サイクルが2つの電圧パルスを含み、値が異なる2つのほぼ一定のDC電圧値を与える2つのDC自己バイアス電圧が各パルスに続くように形成できる。このようなバイアス電圧に基づくイオンエネルギー分布関数は、2つの特定イオンエネルギー値を中心とする2つのイオン流束ピークを与える一方で、他のイオンエネルギー値におけるイオン流束はほぼゼロになる。
【0020】
当業者であれば、同時に生成される多数の周波数から成る上述したような複合波形を容易に想定することができるであろう。個々の周波数の振幅の整合性をとるために、プラズマチャンバとのインピーダンス・マッチングを各周波数で個別に行なう必要がある。ただし、いったんスペクトル周波数領域が既知になれば、インピーダンス・マッチングを適宜行なえばよい。
【0021】
図2に示すスペクトル周波数領域グラフ200では、生成されるRFバイアス電圧信号の基本周波数201(すなわち、第1高調波)は400kHzである。400kHzの基本周波数(f
0)正弦波は、従来のプラズマ発生システムで用いられている一般的なRF入力信号である。スペクトル周波数領域グラフ200において、(図示しない)入力複合波形により、ほぼ同じ電圧振幅値の第2高調波周波数(f
1)203、第3高調波周波数(f
2)205、第4高調波周波数(f
3)207及び第5高調波周波数(f
4)205が生成される。当業者には自明のことであるが、処理の種類によっては、必要性に応じて、電圧振幅値を異なる値としてもよい。スペクトル周波数領域グラフ200の物理的な実装例を、
図3を参照して、以下に説明する。
【0022】
図3に示すフィルタ回路300は、一組のフィルタを用いて、入力された複合波形を構成要素である高調波周波数に分割する。構成要素である各高調波周波数を、個別にプラズマ負荷とマッチングするようにしてもよい。図示した例のフィルタ回路300は、一組のバンドパスフィルタから構成されているが、当業者に自明のように、同様のフィルタリング機能を有する回路を、当技術分野で周知の様々な種類のフィルタ、たとえば、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタや当技術分野で周知の種々のフィルタ部(T型、π型等)から形成されるノッチ・フィルタ等から構成するようにしてもよい。
【0023】
フィルタ回路300は、複数のRF発生器301と、任意選択的に備えられる周波数分析器303と、複数の周波数スプリッタ回路305と、複数のマッチングネットワーク307と、容量成分323Aと抵抗成分323Bとから通常形成される無効負荷を備えるプラズマチャンバ309の回路構成と、を備える。
【0024】
一実施例において、プラズマチャンバ309の容量成分323Aの値は、100ピコファラッド(pF)であり、抵抗成分の値は50オームである。容量成分のインピーダンスZ
Cは、下記の式1に示すように、容量Cに反比例する。ここで、ω
0は入力高調波信号の角周波数を示す。容量成分323Aの値がかなり小さいため、インピーダンスは、容量成分323Aの値と角周波数の両方に強く依存する。したがって、プラズマチャンバ309全体のインピーダンスは、駆動周波数に依存する。広い帯域の周波数を用いるため、以下に説明するように、各マッチングネットワーク307は、入力側と出力側で有意に異なるインピーダンスレベルの調整を行なう必要がある。
【0026】
複数のRF発生器301として、任意の個数(図示した例では5個)の発生器を用いることができ、各発生器は、一つのRFバイアス電圧を発生させる。複数のRF発生器301の出力を、(図示していないが、当技術分野で周知の)加算器を用いて合計するようにしてもよい。あるいは、複数のRF発生器301の代わりに、(図示しない)一つのデジタル信号発生器、たとえば、当技術分野で周知の高出力フーリエ信号発生器、を用いてもよい。
【0027】
一実施例において、複数のRF発生器301が、以下の表1に示す周波数を持つ
図2のスペクトル周波数領域グラフ200を生成可能な構成としてもよい。
【0029】
任意選択的に備えられる周波数分析器303は、入力された複合波形を分析して、元の入力波形の周波数領域表現を生成する。すなわち、任意選択的に備えられる周波数分析器303は、入力された周波数を複合波形の個々の周波数表現すなわち周波数成分に分割する。
【0030】
たとえば、方形波は、デジタル信号処理用途を含む様々な種類の電子回路で用いられる一般的な非正弦波形である。方形波自体は、本来非正弦波であるが、実際には、正弦波の奇数次高調波の無限級数から成っている。同様に、のこぎり波形は、正弦波の奇数次及び偶数次高調波の無限級数から成っている。
【0031】
入力波形にかかわらず、任意選択的に備えられる周波数分析器303は、入力複合波形を形成する個々の周波数成分を、それら各高調波周波数の振幅と共に識別することができる。一実施例において、任意選択的に備えられる周波数分析器303は、当技術分野で周知の高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムに基づくものでもよい。
【0032】
任意選択的に備えられる周波数分析器303を、後述するように、各マッチングネットワーク307に(図示しない)フィードフォワード・ループを与えるように構成するものでもよい。また、任意選択的に備えられる周波数分析器303を、さらに、各周波数スプリッタ回路305に(図示しない)フィードフォワード・ループを与えるように構成してもよい。この結果、複合波形の各部の実際の構成周波数を二種類の回路に供給することになり、回路の完全な調整が可能になる。フィードフォワード・ループは、能動フィルタ及び/又は可変誘導及び容量成分を用いて、各種類の回路の調整を行なうことができる。このような能動フィルタ及び個々の可変成分は、当技術分野で周知である。
【0033】
各構成周波数が既知で一定であるような実施形態では、任意選択的に備えられる周波数分析器303は不要となる場合もある。
【0034】
レジスタ(抵抗器)311は、複数のインダクタ(313A、315A、...321A)及びコンデンサ(313B、315B、...321B)と直列に配置される。複数のインダクタ(313A、315A、...321A)及びコンデンサ(313B、315B、...321B)の各組み合わせにより、複数のマッチングネットワーク307の入力側に接続される複数の周波数スプリッタ回路305の各フィルタが形成される。当業者には自明のことであるが、任意の数のレジスタ、コンデンサ及びインダクタを種々の構成で用いて、同様の機能を有するフィルタスプリッタ回路を形成することができる。さらに、フィルタ構成によっては、さまざまな種類の伝送線や能動フィルタ(たとえば、当技術分野で周知の電動コンデンサ及び類似の構成部材)を用いることもできる。
【0035】
一般に、高品質すなわち高Qマッチングネットワークを用いて、出力伝達を最大にすると共に、複数のRF発生器301からプラズマチャンバ309の回路構成への反射を最小限に抑える。フィルタの品質(Q)評価は、中心周波数と比較して狭い周波数帯域を選択または拒否するフィルタの能力に基づく。したがって、フィルタのQ評価は、−3dBにおける周波数帯域幅に対する中心周波数の比率で表わされる。すなわち、直列接続RLC回路のQ評価は下記の式2で表わされる。ここで、Rは、直列抵抗値であり、Lは直列インダクタンス値である。下記の支配方程式からわかるように、小さな直列抵抗値を選択することにより、高Q値が得られる。フィルタ回路300の一実施例において、レジスタ311の抵抗値を0.001オームとすると、マッチングネットワークのQ値が高くなる。以下の表2に、所定の高調波周波数に対する共振周波数のインダクタンス値及びキャパシタンス(静電容量)値を、Q評価値及び0.001オームの直列抵抗に対する帯域幅と共に示す。
【0038】
さらに、
図3に示すように、複数のマッチングネットワーク307は、本明細書で挙げた様々なフィルタ成分を備えるものでもよく、さらに、様々な種類の能動マッチングフィルタを備えるものでもよい。複数のマッチングネットワーク307が、L型、T型、π型等、様々な種類の受動フィルタや直線やカスケード形に配置されるこれらの型の組み合わせを備えるようにしてもよい。これらの型は、各々、当技術分野で周知である。また、能動フィルタ及び増幅器(たとえば、調節可能な狭帯域増幅器)を単独で、または、別の構成部材と組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0039】
以上、本発明をいくつかの実施例を参照して説明してきたが、当業者には自明のように、特許請求の範囲に記載する本発明の要旨の範囲内で、さまざまな変形や変更が可能である。
【0040】
複数種類の回路を所定の配置で構成した実施例を説明してきたが、当業者に自明のように、これら回路の種類や配置構成は変更可能であり、上述の実施例は、RFバイアス電圧マッチングの新規な概念を説明するための例示に過ぎない。たとえば、当業者には自明のことであるが、各周波数スプリッタ回路を、各周波数用のマッチングネットワークの回路と組み合わせてもよい。さらに、当業者に自明のように、本明細書で説明した技術及び回路構成は、複合駆動波形を用いるマッチングネットワークを必要とする任意のシステムに適用可能である。半導体産業分野におけるプラズマチャンバへの適用例は、当業者に対して、本発明を説明する目的で例示したに過ぎない。
【0041】
さらに、本明細書における用語「半導体」は、データ・ストレージ、フラットパネル・ディスプレイやこれに類似又はその他の産業分野を含むものと解釈される。上記及びその他の様々な実施形態は本発明の要旨の範囲内であり、明細書及び図面は本発明を何ら限定するものではなく、例示するものに過ぎない。