特許第5682497号(P5682497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5682497表面実装型発光装置の製造方法及びリフレクター基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5682497
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】表面実装型発光装置の製造方法及びリフレクター基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/48 20100101AFI20150219BHJP
【FI】
   H01L33/00 400
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-166363(P2011-166363)
(22)【出願日】2011年7月29日
(65)【公開番号】特開2013-30648(P2013-30648A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2013年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】塩原 利夫
(72)【発明者】
【氏名】田口 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】柏木 努
【審査官】 吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−179269(JP,A)
【文献】 特開2010−182770(JP,A)
【文献】 特開2010−129698(JP,A)
【文献】 特開2007−131758(JP,A)
【文献】 特開2007−246894(JP,A)
【文献】 特開2010−031149(JP,A)
【文献】 特開2010−226091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、発光素子を搭載するための第一リードと、発光素子と電気的に接続される第二リードとを一体成形してなるリフレクターと、発光素子を被覆する封止樹脂組成物の硬化物とを有する表面実装型発光装置であって、リフレクターは熱硬化性樹脂組成物で成形され、底面と側面とを持つ凹部が形成されており、凹部の側面の樹脂壁厚みが30〜300μmで、封止樹脂組成物は硬化物の硬度がショアDで30以上ある熱硬化性樹脂組成物である表面実装型発光装置を得るためのリフレクター基板であって、発光素子を搭載するための第一リードと発光素子に電気的に接続される第二リードを有する金属リードフレームの第一及び第二リード間の空隙部分に、シリコーン樹脂組成物及びシリコーン・エポキシ混成樹脂組成物から選ばれる熱硬化性樹脂組成物が供給されて、金属リードフレーム上に、第一リード表面と第二リードの先端表面部分が露出した底面をなす凹形状を有する100〜300個のリフレクターとなる凹部がマトリックス状に配列され、かつ該リフレクターが個片化される際に凹部の側面の樹脂厚みが100〜300μmとなるように成形され、
更に各リフレクターの凹部に存在する第一リード上に発光素子が固定され、発光素子と第二リード先端とが電気的に接続されていると共に、封止樹脂組成物としてショアDで30以上の硬化物を与える硬化性シリコーン樹脂組成物で発光素子が封止されていることを特徴とする側面樹脂厚みが100〜300μmとなるリフレクターが個片化されるリフレクター基板。
【請求項2】
発光素子と、発光素子を搭載するための第一リードと、発光素子と電気的に接続される第二リードとを一体成形してなるリフレクターと、発光素子を被覆する封止樹脂組成物の硬化物とを有する表面実装型発光装置であって、リフレクターは熱硬化性樹脂組成物で成形され、底面と側面とを持つ凹部が形成されており、凹部の側面の樹脂壁厚みが30〜300μmで、封止樹脂組成物は硬化物の硬度がショアDで30以上ある熱硬化性樹脂組成物である表面実装型発光装置の製造方法であって、発光素子を搭載するための第一リードと発光素子に電気的に接続される第二リードを有する金属リードフレームの第一及び第二リード間の空隙部分に、シリコーン樹脂組成物及びシリコーン・エポキシ混成樹脂組成物から選ばれる熱硬化性樹脂組成物を供給し、金属リードフレーム上に、第一リード表面と第二リードの先端表面部分が露出した底面をなす凹形状を有する100〜300個のリフレクターとなる凹部がマトリックス状に配列され、かつ該リフレクターが個片化される際に凹部の側面の樹脂厚みが100〜300μmとなるようにリフレクター基板を成形し、各リフレクターの凹部に存在する第一リード上に発光素子を固定し、発光素子と第二リード先端とを電気的に接続し、封止樹脂組成物としてショアDで30以上の硬化物を与える硬化性シリコーン樹脂組成物で発光素子を封止し、その後、上記成形基板を切断して側面樹脂厚みが100〜300μmとなるようにリフレクターを個片化することを特徴とする表面実装型発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃強度に優れ、かつ優れた耐熱性、耐光性を有する表面実装型発光装置を製造する方法及びリフレクター基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)等の光半導体素子は、街頭ディスプレイや自動車ランプ、住宅用照明など種々のインジケータや光源として利用されるようになっている。LED用リフレクター材料として、ポリフタルアミド樹脂(PPA)等の熱可塑性樹脂が大量に使用されている。また、最近は酸無水物を硬化剤としたエポキシ樹脂等もリフレクター用材料として使用されてきている。一方、最近の液晶テレビのバックライトや一般照明用光源としてLED素子の高輝度化が急速にすすんでいる。この用途はLEDの信頼性や耐久性に対する要求も厳しく、従来からリフレクターとして使用されているPPA等の熱可塑性樹脂や液晶ポリマー、あるいはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂では熱と光を同時に受けるような環境で劣化が激しく、樹脂が変色し光の反射率が低下するためリフレクターとしては使用できない。
【0003】
LED用リフレクター材料としてシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用できることは既に特許文献1〜6、8,9に記載されている。また、マトリックスアレー型リフレクターについては特許文献7に記載されている。
【0004】
現在、上記の熱硬化性樹脂で製造されたLED用リフレクターが実用化されているが、リフレクターを形成する側面の壁の厚みが一層薄くなり、100μm程度のものが多くなってきた。従来から使用されているPPA等の熱可塑性樹脂や液晶ポリマーのリフレクターの場合、側面の厚みが薄くなっても樹脂そのものが強靭であることから大きな問題とはならなかった。
【0005】
これに対し、熱硬化性樹脂は一般に熱可塑性樹脂に比べ脆いことから、最近の熱硬化性樹脂で製造されたリフレクターは衝撃により容易に破壊されるといった不具合が発生し、大きな問題となっている。
なお、本発明に関連する従来技術として、上述した文献と共に下記文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−156704号公報
【特許文献2】特開2007−329219号公報
【特許文献3】特開2007−329249号公報
【特許文献4】特開2008−189827号公報
【特許文献5】特開2006−140207号公報
【特許文献6】特開2007−235085号公報
【特許文献7】特開2007−297601号公報
【特許文献8】特開2009−21394号公報
【特許文献9】特開2009−155415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を改善するため、種々検討した結果、熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるリフレクターと封止樹脂組成物としてショアDで30以上の硬化物硬度を持った熱硬化性樹脂組成物を使用することで、衝撃強度に優れ、かつ優れた耐熱性、耐光性を有する表面実装型発光装置を製造する方法及びリフレクター基板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、熱硬化性樹脂組成物で成形したリフレクターの凹部側面の壁厚みが薄くなると凹部に注入し硬化させたシリコーン樹脂組成物等の封止樹脂組成物の硬化物の硬度によって発光装置の耐衝撃強度が大きく影響されることを見出すと共に、熱硬化性樹脂組成物にて成形したリフレクターの壁厚みを30〜300μmとした場合、封止樹脂組成物の硬化物をショアD硬度30以上とすることにより、耐衝撃強度が高く、しかも接着性、耐変色性の良好な表面実装型発光装置が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記に示す表面実装型発光装置の製造方法及びリフレクター基板を提供する。
〔請求項1〕
発光素子と、発光素子を搭載するための第一リードと、発光素子と電気的に接続される第二リードとを一体成形してなるリフレクターと、発光素子を被覆する封止樹脂組成物の硬化物とを有する表面実装型発光装置であって、リフレクターは熱硬化性樹脂組成物で成形され、底面と側面とを持つ凹部が形成されており、凹部の側面の樹脂壁厚みが30〜300μmで、封止樹脂組成物は硬化物の硬度がショアDで30以上ある熱硬化性樹脂組成物である表面実装型発光装置を得るためのリフレクター基板であって、発光素子を搭載するための第一リードと発光素子に電気的に接続される第二リードを有する金属リードフレームの第一及び第二リード間の空隙部分に、シリコーン樹脂組成物及びシリコーン・エポキシ混成樹脂組成物から選ばれる熱硬化性樹脂組成物が供給されて、金属リードフレーム上に、第一リード表面と第二リードの先端表面部分が露出した底面をなす凹形状を有する100〜300個のリフレクターとなる凹部がマトリックス状に配列され、かつ該リフレクターが個片化される際に凹部の側面の樹脂厚みが100〜300μmとなるように成形され、
更に各リフレクターの凹部に存在する第一リード上に発光素子が固定され、発光素子と第二リード先端とが電気的に接続されていると共に、封止樹脂組成物としてショアDで30以上の硬化物を与える硬化性シリコーン樹脂組成物で発光素子が封止されていることを特徴とする側面樹脂厚みが100〜300μmとなるリフレクターが個片化されるリフレクター基板。
〔請求項2〕
発光素子と、発光素子を搭載するための第一リードと、発光素子と電気的に接続される第二リードとを一体成形してなるリフレクターと、発光素子を被覆する封止樹脂組成物の硬化物とを有する表面実装型発光装置であって、リフレクターは熱硬化性樹脂組成物で成形され、底面と側面とを持つ凹部が形成されており、凹部の側面の樹脂壁厚みが30〜300μmで、封止樹脂組成物は硬化物の硬度がショアDで30以上ある熱硬化性樹脂組成物である表面実装型発光装置の製造方法であって、発光素子を搭載するための第一リードと発光素子に電気的に接続される第二リードを有する金属リードフレームの第一及び第二リード間の空隙部分に、シリコーン樹脂組成物及びシリコーン・エポキシ混成樹脂組成物から選ばれる熱硬化性樹脂組成物を供給し、金属リードフレーム上に、第一リード表面と第二リードの先端表面部分が露出した底面をなす凹形状を有する100〜300個のリフレクターとなる凹部がマトリックス状に配列され、かつ該リフレクターが個片化される際に凹部の側面の樹脂厚みが100〜300μmとなるようにリフレクター基板を成形し、各リフレクターの凹部に存在する第一リード上に発光素子を固定し、発光素子と第二リード先端とを電気的に接続し、封止樹脂組成物としてショアDで30以上の硬化物を与える硬化性シリコーン樹脂組成物で発光素子を封止し、その後、上記成形基板を切断して側面樹脂厚みが100〜300μmとなるようにリフレクターを個片化することを特徴とする表面実装型発光装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐衝撃強度が高く、かつ接着性、耐変色性の良好な表面実装型発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】成形後のマトリックス型リフレクターの一例を示す斜視図である。
図2】マトリックス型リフレクター基板をダイシングし個片化したリフレクターを示す平面図である。
図3図2のA−A線に沿った断面図である。
図4図2のB−B線に沿った断面図である。
図5】発光装置の破壊強度を測定する方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の表面実装型発光装置において、リフレクターは、熱硬化性樹脂組成物を成形することによって得られる。
本発明のリフレクターの形成に使用する熱硬化性樹脂組成物としては、エポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、更にはシリコーン樹脂とエポキシ樹脂の混成樹脂組成物等が例示される。
【0013】
エポキシ樹脂組成物としては、エポキシ樹脂として、ビスフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂等、硬化剤として、酸無水物、各種フェノール樹脂、各種アミン化合物等を使用することができる。
なかでも、エポキシ樹脂組成物としてトリアジン誘導体エポキシ樹脂、酸無水物、硬化促進剤を含有する熱硬化性樹脂組成物が耐熱性や耐光性が優れていることから特に望ましいものである。
【0014】
シリコーン樹脂組成物としては、縮合型や付加型の熱硬化性シリコーン樹脂組成物を代表的なものとして例示することができる。
【0015】
縮合型のシリコーン樹脂組成物としては、下記平均組成式(1)
1aSi(OR2b(OH)c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜20の一価の炭化水素基、R2は同一又は異種の炭素数1〜4の一価の炭化水素基を示し、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、0.801≦a+b+c<2を満たす数である。)
で示されるようなシリコーン樹脂と縮合触媒を含むものが代表的なものである。
【0016】
付加型シリコーン樹脂組成物は、ビニル基を含有するシリコーン樹脂、硬化剤としてヒドロシリル基を有するシリコーン樹脂、白金触媒を含むシリコーン樹脂組成物を挙げることができる。
【0017】
シリコーン・エポキシ混成樹脂組成物としては、トリアジン誘導体エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、酸無水物、硬化促進剤を含む熱硬化性エポキシ・シリコーン樹脂組成物が硬化性に優れ、耐熱性、耐光性に優れると共に、良好な強度を有することから望ましい。
【0018】
この場合、成形性や良好な硬化物物性を得るために、予めエポキシ樹脂及び/又は一分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するシリコーン樹脂と酸無水物を予備反応させ、重合度を高めたものを使用することもできる。
【0019】
特に500nm以下の光を発光する高輝度の発光素子を搭載するリフレクターには、シリコーン樹脂やシリコーン樹脂とエポキシ樹脂等の混成樹脂を使用する。エポキシ樹脂や熱可塑性のポリフタルアミド等を使用すると発光時の発熱や短波長の光により樹脂が分解し、変色することで光反射率が低下し、光の取り出し効率が低下する。
【0020】
このため、耐熱性や耐光性が最も優れているシリコーン樹脂が望ましいものである。シリコーン樹脂の中でもメチル基含有量の多いシリコーン樹脂がよい。
【0021】
本発明に係るリフレクター形成用熱硬化性樹脂組成物には、無機充填剤を配合することができる。無機充填剤としては、通常樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、ガラス繊維、三酸化アンチモン等が挙げられる。これら無機充填剤の平均粒径や形状は特に限定されないが、平均粒径は通常5〜40μmである。なお、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。特に溶融シリカ、溶融球状シリカが用いられ、その粒径は特に限定されるものではないが、成形性、流動性からみて、平均粒径は4〜40μm、特には7〜35μmが好ましい。
【0022】
以上のようなリフレクター形成用熱硬化性樹脂組成物としては、市販の熱硬化性樹脂組成物を使用することができる。
【0023】
なお、リフレクターの強度、靭性を高めるために、リフレクター形成用熱硬化性樹脂組成物には、下記のようなものを配合することもできる。例えば、ガラス繊維やホウ珪酸ガラス、ロックウールのような非晶質繊維、アルミナ繊維のような多結晶繊維、チタン酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸ガラス、ホウ酸アルミニウムのような単結晶繊維、更には硫酸マグネシウム、炭化珪素、窒化珪素等が挙げられ、どのタイプでも構わない。
無機充填剤の配合量は、樹脂100質量部に対して50〜1200質量部、特には300〜1000質量部であることが好ましい。
【0024】
白色のリフレクターを得るためには、下記のような白色顔料を併用してもよい。
白色顔料としては二酸化チタンを用いることが好ましく、この二酸化チタンの単位格子はルチル型、アナタース型、ブルカイト型のどれでも構わないが、ルチル型が好ましく使用される。また、平均粒径や形状も限定されないが、平均粒径は通常0.05〜5.0μmである。上記二酸化チタンは、樹脂や無機充填剤との相溶性、分散性を高めるため、AlやSi等の含水酸化物などで予め表面処理することができる。
【0025】
また、白色顔料(白色着色剤)として、二酸化チタン以外にチタン酸カリウム、酸化ジルコン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等を単独で又は二酸化チタンと併用して使用することもできる。
白色顔料の配合量は、樹脂100質量部に対して10〜500質量部、特には50〜300質量部であることが好ましい。
【0026】
上記無機充填剤は、樹脂と無機充填剤との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等のカップリング剤で予め表面処理したものを配合してもよい。
【0027】
このようなカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いることが好ましい。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0028】
リフレクター形成用熱硬化性樹脂組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、樹脂の性質を改善する目的で種々のシリコーンパウダー、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、脂肪酸エステル,グリセリン酸エステル,ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸カルシウム等の内部離型剤などの添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加配合することができる。
【0029】
上記のような熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物の350〜800nmでの光反射率は初期値で80%以上であることが好ましい。より望ましくは90%以上である。
【0030】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いてリフレクターを成形する最も一般的な方法としては、低圧トランスファー成形や圧縮成形法が挙げられる。なお、本発明の樹脂組成物の成形温度は130〜185℃で30〜180秒間行うことが望ましい。後硬化は150〜185℃で1〜8時間行ってもよい。
【0031】
本発明で使用する発光素子搭載用表面実装型リフレクターの一実施形態を図1〜4に示す。
リフレクター1としては、発光素子2を搭載するための第一リード(ダイパッド)11と発光素子2と電気的に接続される第二リード(発光素子電極と外部電極とを接続するためのリード)12を有する金属リードフレーム10の第一及び第二リード間の空隙部分に上記熱硬化性樹脂組成物を供給し、第一リード表面と第二リードの先端表面部分が露出した底面をなす凹形状を形成するように成形する。このように熱硬化性樹脂組成物で成形されたリフレクターは、金属リードフレーム上に100〜300個程度マトリックス状にリフレクターとなる凹部が配列された状態で成形された基板が例示される。
【0032】
マトリックス状に配列したリフレクター基板の場合は、リフレクター基板を切断する前に、それぞれのリフレクターの凹部に存在する第一リード(ダイパッド)11上に発光素子2をシリコーンダイボンド剤を用いて固定し、例えば150℃で1時間加熱することで発光素子を固着させることができる。その後、金線3で発光素子2と第二リード12先端を電気的に接続し、封止樹脂組成物4として、透明なシリコーン樹脂組成物、シリコーン・エポキシ混成樹脂組成物、蛍光体等を配合したシリコーン樹脂組成物などをポッティングによりリフレクターの凹部に流し込み、例えば120℃で1時間、更に150℃で2時間加熱硬化させることで封止する。この種の封止樹脂組成物による封止はポッティングによる方法、あるいはトランスファー成形や圧縮成形等の封止方法を用いることでレンズ形状などを同時に形成することもできる。
【0033】
その後、ダイシング、レーザー加工、ウォータージェット加工等でマトリックス状に配列した成形基板を切断し、リフレクターを個片、単体化する。
【0034】
このようにして得ることができる本発明の光素子用リフレクターは、発光素子と、発光素子を搭載するための第一リードと、発光素子と電気的に接続される第二リードとを一体成形してなる熱硬化性樹脂組成物で成形され、底面と側面とを持つ凹部が形成されている。マトリックス状に成形する場合、単位面積当たりできるだけ多数のリフレクターを製造するにはリフレクターの凹部の側面の樹脂厚みを薄くする必要がある。そのため、通常は凹部の側面の樹脂壁厚みが50〜500μmのものである。50μmより薄いと樹脂厚が薄すぎて取り扱い時に割れやすく、500μmより厚いと単位面積当たりの取り個数が減少してしまうことからコストが高くなる。望ましくは100〜300μmである。
【0035】
本発明においては、前述したように、高輝度LED等の発光素子の封止を行う封止樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂組成物を用いる。この封止用熱硬化性樹脂組成物としては、シリコーン樹脂組成物、シリコーン・エポキシ混成樹脂組成物等を用いることができ、特に伸びのあるシリコーン樹脂組成物が好ましい。
【0036】
熱硬化性のシリコーン樹脂組成物としては、ジメチルシリコーン、メチル・フェニル系シリコーン樹脂など各種のシリコーン樹脂を主成分とするものがあり、樹脂の構造によっては硬化物硬度がショアAで測定できるやわらかいものや、ショアDで測定できる硬いものまでを製造することができる。この場合、硬化型としては、付加硬化型、有機過酸化物硬化型等のいずれのものでもよく、硬化型に応じた公知の硬化剤が使用し得る。
封止樹脂組成物としては、耐熱性、耐候性、耐光性に優れ、かつ透明性に優れた硬化物を与えるものが望ましく、また封止樹脂組成物には、フィラー、ガラス繊維、拡散材、顔料、発光素子からの光を吸収し、波長変換する蛍光体等からなる群から選択される1種以上を混合することもできる。
【0037】
上記封止用熱硬化性樹脂組成物としては、その硬化物のショアD硬度が30以上、好ましくは30〜70、更に好ましくは30〜60のものを使用する。
即ち、従来から多用されている熱可塑性樹脂製のリフレクターを使用した発光装置の封止樹脂組成物としては、硬化物の硬度がショアDで30未満のものが耐クラック性やワイヤオープン等の信頼性を維持するために使用されているが、本発明では、熱硬化性樹脂で製造されたリフレクターを使用する場合、発光素子を保護する封止樹脂としてショアDで30以上の硬度をもったものでなければならない。ショアDで30未満のもので封止した発光装置は外部の衝撃により容易に装置が破壊されてしまう。
【0038】
この場合、上記熱硬化性樹脂組成物、特にシリコーン樹脂組成物としては、市販品を使用することができ、市販品の中から硬化物のショアD硬度が上記値のものを選択して使用することができる。
【0039】
本発明の表面実装型発光装置は、リフレクターがシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂でできていることから耐熱性、耐光性が優れており、従来のポリフタルアミド(PPA)等の熱可塑性樹脂でできているものに比べ高輝度のLEDを収納し、高電流を流しても発光装置の劣化はない。そのため、照明器具、ディスプレイ、液晶テレビのバックライトユニット等に利用できる。
【0040】
本発明では熱硬化性樹脂で製造されたリフレクターは、リードフレームと強固に接着しているため熱可塑性樹脂に比べてワイヤへの影響も少なく、従来使えなかった硬度の樹脂でも信頼性に問題がないものである。
【実施例】
【0041】
以下、合成例、参考例、実施例及び比較例で本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、Meはメチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を示す。
【0042】
[合成例1]
メチルトリクロロシラン100質量部、トルエン200質量部を1Lのフラスコに入れ、これらの混合液に、氷冷下で水8質量部、及びイソプロピルアルコール60質量部の混合液を滴下した。フラスコ内液温−5〜0℃で5〜20時間かけて滴下し、その後得られた反応液を加熱して還流温度で20分間撹拌した。それから該反応液を室温まで冷却し、水12質量部を30℃以下の温度で30分間かけて滴下し、その後20分間撹拌した。得られた混合液に更に水25質量部を滴下後、40〜45℃で60分間撹拌した。こうして得た混合液に水200質量部を加えて分離した有機層を採取した。この有機層を中性になるまで洗浄し、その後共沸脱水、濾過、減圧ストリップに供することにより、下記式(2)で示される無色透明の固体(融点76℃)として36.0質量部の熱硬化性オルガノポリシロキサン(A−1)を得た。
(CH31.0Si(OC370.07(OH)0.101.4 (2)
【0043】
[合成例2]
ジメチルジクロロシラン129質量部、オクタメチルサイクリックシロキサン1483質量部を混合し、発煙硝酸26質量部を滴下し、30〜35℃にて2時間撹拌後、45〜55℃で16時間撹拌し、冷却を行い、下記式(3)で示される両末端ジクロロ直鎖状ポリジメチルシロキサン1,548質量部を得た。
ClMe2SiO(Me2SiO)19SiMe2Cl (3)
(塩素含有率は0.13mol/100g、25℃における動粘度は25mm2/s。)
次いで、水350質量部を5Lのフラスコに入れ、上記式(3)で示される両末端ジクロロ直鎖状ポリジメチルシロキサン34.7質量部、トリクロロフェニルシラン58.9質量部、メチルビニルジクロロシラン6.4質量部及びトルエン65.7質量部の混合液を滴下した。フラスコ内液温25〜40℃で3〜5時間かけて滴下し、その後得られた反応液を25〜40℃で60分間撹拌した。該混合液から有機層を採取し、該有機層を中性になるまで洗浄した後、共沸脱水を行い、不揮発分を50%に調整した。これに28質量%アンモニア水を0.3質量部加え、25〜40℃で30分間撹拌した後、共沸脱水を行った。その後、氷酢酸0.06質量部を加えて液性を酸性にし、再度共沸脱水を行った。得られた溶液を濾過、減圧ストリップに供することにより、下記式(4)で示される無色透明の固体を67.5質量部得た。
[(Me2SiO)210.57(PhSiO1.50.37(MeViSiO)0.06 (4)
【0044】
[参考例]
リフレクターの製造(1)
合成例1の熱硬化性シリコーン樹脂80質量部、合成例2の20質量部、酸化チタンはルチル型R−45M(堺化学工業(株)製商品名、平均粒径0.29μm)160質量部、溶融球状シリカはMSR−4500TN((株)龍森製商品名、平均粒径45μm)540質量部、触媒1質量部、離型剤はステアリン酸カルシウム1質量部を配合し、均一に混合した後、熱二本ロールで混練することで白色のシリコーン樹脂組成物を得た。
このシリコーン樹脂組成物で全面銀メッキした銅リードフレームを用い、図1のマトリックスタイプの凹型リフレクター(1)を下記の成形条件でトランスファー成形し作製した。
成形条件は下記の通り。
成形温度:170℃、成形圧力:70kg/cm2、成形時間:3分間
更にポストキュアを170℃で2時間行った。
【0045】
リフレクターの製造(2)
合成例1の熱硬化性シリコーン樹脂37質量部、トリアジン誘導体エポキシ樹脂(トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート(TEPIC−S:日産化学(株)製商品名、エポキシ当量100))28質量部、酸無水物(炭素炭素二重結合不含有酸無水物:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(リカシッドMH:新日本理化(株)製商品名))35質量部、酸化チタンはルチル型R−45M(堺化学工業(株)製商品名、平均粒径0.29μm)160質量部、溶融球状シリカはMSR−4500TN((株)龍森製商品名、平均粒径45μm)540質量部、触媒1質量部、離型剤はステアリン酸カルシウム1質量部を配合し、均一に混合した後、熱二本ロールで混練することで白色のシリコーン樹脂組成物を得た。
このシリコーン樹脂組成物で全面銀メッキした銅リードフレームを用い、図1のマトリックスタイプの凹型リフレクター(2)を下記の成形条件でトランスファー成形し作製した。
成形条件は下記の通り。
成形温度:170℃、成形圧力:70kg/cm2、成形時間:3分間
更にポストキュアを170℃で2時間行った。
【0046】
[実施例及び比較例]
成形したマトリックスタイプのリフレクターのそれぞれの凹状の底辺に露出したリードフレーム上に青色LED素子をシリコーンダイボンド剤(品名:LPS632D、信越化学工業(株)製)で接着固定し、金線でもう一方のリード部と素子電極を電気的に接続した。その後、表1に示した硬化物の硬度が異なるシリコーン封止樹脂組成物をLED素子が配置された凹部開口部内にそれぞれ注入し、120℃で1時間、更に150℃で1時間硬化させ、封止した。
このマトリックスタイプのリフレクターをダイシングすることで個片化した。
個片化したリフレクターの側面の厚みをダイシングすることで100μm、200μm、300μmになるように切断した。リフレクターの側面の厚みを40μmで切断しようとしたが、厚みが薄すぎてダイシング時に側面にクラックが発生し、40μmの厚みのリフレクターは製造できなかった。
また、比較のため、従来のポリフタルアミド(PPA)で製造したリフレクターで側面の厚みが100μmのリフレクターを使用して同様の発光装置を製造した。
【0047】
【表1】

※ KJR9022、LPS5400、LPS5547F、LPS5555F、KJR632は、いずれも信越化学工業(株)製のシリコーン樹脂組成物である。
【0048】
シリコーン樹脂組成物の特性は、120℃で1時間、150℃で1時間硬化させた後、室温で測定した。
【0049】
発光装置の破壊強度の測定方法
図5に示したように、実施例、比較例で製造した発光装置20の底面を接着剤21で基板22に固定し、リフレクターの側面をプッシュ・プルゲージで加圧することで破壊強度を測定した。加圧速度は100μm/秒で測定した。結果を表2に示す。
【0050】
リフロー後の接着と変色の評価
これら個片型した実施例1〜7、比較例1〜3で組み立てた発光装置を用い、25℃,80%の雰囲気中に48時間放置した後、260℃のリフロー炉に3回通した。その後、リフレクター表面や素子表面と封止樹脂との接着不良を調べた。また、リフロー後のリフレクター表面の変色も観察した。
また、−40℃/30分→100℃/30分のヒートショックを行い、信頼性を測定した。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

(リフロー、ヒートショック試験は各n=10で行い、不良率を表す。)
※ 比較例2,3のリフローの不良モードはAgメッキ面との剥離であり、ヒートショックの不良モードはワイヤオープンであった。
【符号の説明】
【0052】
1 リフレクター
2 発光素子
3 金線
4 発光素子を保護する熱硬化性樹脂組成物
10 金属リードフレーム
11 第一リード
12 第二リード
20 発光装置
21 接着剤
22 基板
図1
図2
図3
図4
図5