特許第5682837号(P5682837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5682837プリプレグ、繊維強化複合材料とその製造方法、エポキシ樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5682837
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】プリプレグ、繊維強化複合材料とその製造方法、エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20150219BHJP
   C08G 59/30 20060101ALI20150219BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20150219BHJP
【FI】
   C08J5/24CFC
   C08G59/30
   C08G59/68
【請求項の数】11
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-556328(P2012-556328)
(86)(22)【出願日】2012年11月29日
(86)【国際出願番号】JP2012080950
(87)【国際公開番号】WO2013081058
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2012年12月17日
(31)【優先権主張番号】特願2011-260732(P2011-260732)
(32)【優先日】2011年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-260733(P2011-260733)
(32)【優先日】2011年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】福原 康裕
(72)【発明者】
【氏名】牛山 久也
(72)【発明者】
【氏名】金子 学
【審査官】 阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−197706(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/081060(WO,A1)
【文献】 特開2007−246668(JP,A)
【文献】 特開2011−116843(JP,A)
【文献】 特開2012−092297(JP,A)
【文献】 米国特許第05464910(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00
C08G 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維とエポキシ樹脂組成物とを含むプリプレグであって、
前記エポキシ樹脂組成物が、成分A、成分B及び成分Dを含み、
前記エポキシ樹脂組成物中の前記成分A及び前記成分Dの合計の含有量が、前記エポキシ樹脂組成物100質量部に対して、70〜98質量部である、プリプレグ。
成分A:分子内に硫黄原子を有さないエポキシ樹脂
成分B:下記式(1)で表されるイミダゾール化合
成分D:分子内に下記式(3)で表される構造を含むエポキシ樹脂
【化1】
(式中、Rは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、ヒドロキシメチル基を表し、Rは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又は水素原子を表す。)
【化2】
【請求項2】
前記エポキシ樹脂組成物中の前記成分Bの含有量が、前記成分Aおよび前記成分Dの合計100質量部に対して、2〜40質量部である、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂組成物中の前記成分Aと前記成分Dの質量比が、成分A:成分Dで、95:5〜10:90である、請求項1又は2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記成分Dが、下記式(4)で表される構造を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【化3】
【請求項5】
前記成分Dが、エポキシ樹脂と分子内に少なくとも一つの硫黄原子を有するアミン化合物との反応生成物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂組成物が、さらに下記成分Cを含む請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリプレグ。
成分C:下記式(2)で表されるイミダゾール化合物
【化4】
(式中、Rは炭素原子を1個以上含む有機基を表し、R〜Rは水素原子又はメチル基又はエチル基を表す。)
【請求項7】
40℃に予熱した金型で挟んで、1MPaに加圧し、5分間保持して得られる硬化物のG’Tgが150℃以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のプリプレグを硬化させて得られる繊維強化複合材料。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のプリプレグを、金型内で、100〜150℃、1〜15MPaの条件下で1〜20分間保持する工程を含む、繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項10】
成分A、成分B及び成分Dを含むエポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物中の前記成分A及び前記成分Dの合計の含有量が、前記エポキシ樹脂組成物100質量部に対して、70〜98質量部である、エポキシ樹脂組成物。
成分A:分子内に硫黄原子を有さないエポキシ樹脂
成分B:下記式(1)で表されるイミダゾール化合物
成分D:分子内に下記式(3)で表される構造を含むエポキシ樹脂
【化5】
(式中、Rは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、ヒドロキシメチル基を表し、Rは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又は水素原子を表す。)
【化6】
【請求項11】
前記エポキシ樹脂組成物を強化繊維束に含浸して得られるプリプレグを、140℃に予熱した金型で挟んで、1MPaに加圧し、5分間保持して得られる硬化物のG’Tgが150℃以上である、請求項10に記載のエポキシ樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形に好適なプリプレグ、そのプリプレグを用いた繊維強化複合材料とその製造方法に関する。また、本発明はそのプリプレグに用いるのに好適なエポキシ樹脂組成物に関する。本発明は、2011年11月29日に日本国に出願された、特願2011−260732号、及び特願2011−260733号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化複合材料は、その優れた力学物性などから、航空機、自動車、産業用途に幅広く用いられている。近年、その使用実績を積むに従い、炭素繊維強化複合材料の適用範囲はますます拡がってきている。かかる複合材料を構成するマトリックス樹脂には、成形性に優れること、高温環境にあっても高度の機械強度を発現することが必要とされる。マトリックス樹脂には、含浸性や耐熱性に優れる熱硬化性樹脂が用いられることが多く、このような熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ビスマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が使用されている。このうち、エポキシ樹脂は、耐熱性、成形性に優れており、それを用いた炭素繊維複合材料に高度の機械強度が得られるため、幅広く使用されている。
強化繊維とマトリックス樹脂とからなるFRP:Fiber Reinforced Plastics(以下、「繊維強化複合材料」と言うこともある)を得る具体的な方法としては、特許文献1に記載のオートクレーブを用いた方法、特許文献2に記載の真空バッグによる方法、または特許文献3に記載の圧縮成形法などが知られている。
しかしながら、これら特許文献1〜3に記載の方法は、プリプレグを積層し、目的の形状に賦型した後、約160℃以上の温度で、約2〜6時間加熱硬化を行う必要があった。即ち、これら特許文献1〜3に記載の方法は、高温及び長時間での処理が必要とされた。
一方、特許文献4に記載の高温高圧下でのハイサイクルプレス成形は、その生産性の高さから、自動車用途に多用される成形方法として知られている。
ハイサイクルプレス成形で、製品の大量生産を可能にする為には、比較的低温で、すなわち、100〜150℃程度で、数分から30分程度加熱することで、硬化を完了させることが求められる。
この時、硬化後のマトリックス樹脂のガラス転移温度が高ければ、加熱硬化後の成形体を冷却せずに取り出した場合であっても、成形体が変形することが無いため、成形サイクルを更に短くすることが出来る。そのため、硬化後のマトリックス樹脂には、より高いガラス転移温度を有することが求められる。
また、マトリックス樹脂のガラス転移温度を高めることで、焼付け塗装の温度を高くした場合であっても成形体が変形することがないため、加熱硬化後の成形体に幅広い塗装条件を適用できる。このような理由からも、硬化後のマトリックス樹脂には、より高いガラス転移温度を有することが求められている。
マトリックス樹脂のガラス転移温度が高いと、高温環境において、繊維強化複合材料が高い機械強度を発現できることも知られている。
熱硬化性樹脂をマトリックスとしたプリプレグをハイサイクルプレス成形する際、プリプレグの樹脂温度が上昇することにより樹脂粘度が極端に低下するような場合がある。このような場合には、金型の構造によっては激しく樹脂が流出し、得られた成形品の表面に樹脂が不足した樹脂枯れのような外観不良、又は繊維蛇行等の性能上の不良が発生する、あるいは、金型内のエジェクターピンやエアー弁等への樹脂流入による金型の動作不良等の成形上の問題が生じることがある。そのため、熱硬化性樹脂をマトリックスとしたプリプレグをハイサイクルプレス成形する際、品質と生産性を向上させるために、金型内における樹脂の流動を調整する方法が求められている。
特許文献5には高粘度のエポキシ樹脂をマトリックス樹脂として用いる方法、エポキシ樹脂に熱可塑性樹脂を添加することで、樹脂の流動を調整する方法が開示されている。
しかし、特許文献5に記載の高粘度のエポキシ樹脂を用いる方法は、常温(25℃)における樹脂粘度も高くなる。そのため、積層作業等の常温でのプリプレグの取り扱い性が著しく低下する。また、エポキシ樹脂に汎用の熱可塑性樹脂を添加する方法は、前記熱可塑性樹脂のエポキシ樹脂への溶解性が低く、また得られるエポキシ樹脂組成物のガラス転移温度(以下、「Tg」と記載することもある。)の低下、硬化速度の低下等をもたらすため、ハイサイクルプレス成形に適用することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−128778号公報
【特許文献2】特開2002−159613号公報
【特許文献3】特開平10−95048号公報
【特許文献4】国際公開第2004/48435号公報
【特許文献5】特開2005−213352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、プレス成形、特にハイサイクルプレス成形に好適な強化繊維とエポキシ樹脂組成物からなるプリプレグであって、常温における保存安定性に優れ、比較的低温、かつ短い時間で加熱硬化することができ、硬化樹脂が高い耐熱性を有するエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ、加熱加圧硬化時における樹脂の過剰な流動を抑制することができるプリプレグを提供することを目的とする。また、本発明は、前記プリプレグを用いた繊維強化複合材料と、生産性に優れた繊維強化複合材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが、上記課題を解決するため鋭意研究を進めた結果、強化繊維とエポキシ樹脂組成物とを含むプリプレグであって、140℃に予熱した金型で前記プリプレグを挟んで、1MPaに加圧し、5分間保持して得られる硬化物のG’Tgが150℃以上となるプリプレグによって課題を解決できることを見出した。
更に本発明者らは、以下の構成を有するエポキシ樹脂組成物と強化繊維を含むプリプレグによって、上記課題がより好ましく解決できることを見出した。
すなわち、下記成分Aと成分Bを含むエポキシ樹脂組成物であって、成分Cと成分Dの少なくとも一つを含むエポキシ樹脂組成物。
成分A:分子内に硫黄原子を有さないエポキシ樹脂
成分B:下記式(1)の構造を有するイミダゾール化合物
成分C:下記式(2)の構造を有するイミダゾール化合物
成分D:分子内に少なくとも一つの硫黄原子を有するエポキシ樹脂
【化1】


(式中、Rはアルキル基、ヒドロキシメチル基を表し、Rはアルキル基又は水素原子を表す。)
【化2】

(式中、Rは炭素原子を1個以上含む有機基を表し、R〜Rは水素原子又はメチル基又はエチル基を表す。)
【0006】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]強化繊維とエポキシ樹脂組成物とを含むプリプレグであって、140℃に予熱した金型で前記プリプレグを挟んで、1MPaに加圧し、5分間保持して得られる硬化物のG’Tgが150℃以上となる、プリプレグ;
[2]前記エポキシ樹脂組成物が、成分Aと成分Bを含有するエポキシ樹脂組成物であって、成分C又は成分Dのうち、少なくとも1つの成分を含むエポキシ樹脂組成物である、[1]に記載のプリプレグ;
成分A:分子内に硫黄原子を有さないエポキシ樹脂
成分B:下記式(1)で表されるイミダゾール化合物
成分C:下記式(2)で表されるイミダゾール化合物
成分D:分子内に少なくとも1つの硫黄原子を有するエポキシ樹脂
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、ヒドロキシメチル基を表し、Rは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又は水素原子を表す。)
【化4】

(式中、Rは炭素を1個以上含む有機基を表し、R〜Rは水素原子又はメチル基又はエチル基を表す。)
[3]前記成分Aが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、イソシアネート変性したオキサゾリドン環を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、これらエポキシ樹脂の変性物、ブロム化エポキシ樹脂、からなる群より選択される少なくとも1種以上のエポキシ樹脂である、[1]又は[2]に記載のプリプレグ;
[4]前記成分CのRが−CHの構造又は−CHORの構造を有する基(但しRは炭素原子を1個以上含む有機基を表す)であることが好ましく、−CHORの構造を有する基(但しRは置換基を有しても良いアリール基を表す)である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のプリプレグ;
[5]前記エポキシ樹脂組成物中の前記成分Bの含有量が、前記成分Aおよび前記成分Dの合計100質量部に対して、2〜40質量部である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のプリプレグ;
[6]前記エポキシ樹脂組成物中の前記成分Bの含有量が、前記成分Aおよび前記成分Dの合計100質量部に対して、3〜25質量部である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のプリプレグ;
[7]前記エポキシ樹脂組成物中の前記成分Bの含有量が、前記成分Aおよび前記成分Dの合計100質量部に対して、3〜15質量部である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のプリプレグ;
[8]前記エポキシ樹脂組成物が、成分A、成分B、及び少なくとも成分Cを含有するエポキシ樹脂組成物であって、前記成分Cがマイクロカプセル封入されたイミダゾール化合物である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載のプリプレグ;
[9]前記エポキシ樹脂組成物中の前記成分Cの含有量が、前記成分Aおよび前記成分Dの合計100質量部に対して、1〜6質量部である、[8]に記載のプリプレグ;
[10]前記エポキシ樹脂組成物中の前記成分Cの含有量が、前記成分Aおよび前記成分Dの合計100質量部に対して、1.5〜4質量部である、[8]に記載のプリプレグ;
[11]前記エポキシ樹脂組成物が、成分A、成分B、及び少なくとも成分Dを含有するエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂組成物中の前記成分Aと前記成分Dの質量比が、成分A:成分Dで、95:5〜10:90である、[1]〜[10]のいずれか一項に記載のプリプレグ;
[12]前記エポキシ樹脂組成物中の前記成分Aと前記成分Dの質量比が、成分A:成分Dで、80:20〜12:88である、[1]〜[11]のいずれか一項に記載のプリプレグ;
[13]前記エポキシ樹脂組成物中の前記成分Aと前記成分Dの質量比が、成分A:成分Dで、60:40〜13:87である、[1]〜[12]のいずれか一項に記載のプリプレグ;
[14]前記成分Dが、分子内に下記式(3)で表される構造を含む、[11]〜[13]のいずれか一項に記載のプリプレグ;
【化5】

[15]前記成分Dが、下記式(4)で表される構造を含む、[11]〜[14]のいずれか一項に記載のプリプレグ;
【化6】

[16]前記成分Dが、エポキシ樹脂と分子内に少なくとも一つの硫黄原子を有するアミン化合物との反応生成物を含む、[11]〜[15]のいずれか一項に記載のプリプレグ;
[17]前記エポキシ樹脂組成物が、成分C及び成分Dを含む[1]〜[16]のいずれか一項に記載のプリプレグ;
[18][1]〜[17]のいずれか一項に記載のプリプレグを硬化させて得られる繊維強化複合材料;
[19][1]〜[17]のいずれか一項に記載のプリプレグを、金型内で、100〜150℃、1〜15MPaの条件下で1〜20分間保持する工程を含む、繊維強化複合材料の製造方法。
[20]エポキシ樹脂組成物であって、該エポキシ樹脂組成物を強化繊維束に含浸して得られるプリプレグを、140℃に予熱した金型で挟んで、1MPaに加圧し、5分間保持して得られる硬化物のG’Tgが150℃以上である、エポキシ樹脂組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プレス成形、特にハイサイクルプレス成形に好適なプリプレグを得ることができる。また、常温における保存安定性に優れ、比較的低温、かつ短い時間で加熱硬化することができ、硬化後の樹脂が高い耐熱性を有するプリプレグを得ることができる。
また、本発明のプリプレグを用いて製造された繊維強化複合材料は、加熱加圧硬化時における樹脂の過剰の流動を抑制することができるため、表面外観、繊維蛇行等の性能上の不良が生じにくい。従って、生産性の高い繊維強化複合材料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料の製造に用いるプレス成型用金型が、開いている状態を示す断面図である。
図1B】本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料の製造に用いるプレス成型用金型が、閉じている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の好ましい実施の形態について説明するが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではない。
本発明の要旨は、強化繊維とエポキシ樹脂組成物とを含むプリプレグであって、140℃に予熱した金型で前記プリプレグを挟んで、1MPaに加圧し、5分間保持して得られる硬化物のG’Tgが150℃以上となる、プリプレグである。
【0010】
本発明のプリプレグは強化繊維とエポキシ樹脂組成物を含むものである。前記エポキシ樹脂組成物としては特に限定されないが、前記エポキシ樹脂組成物を強化繊維束に含浸して得られるプリプレグを、140℃に予熱した金型で挟んで、1MPaに加圧し、5分間保持して得られる硬化物のG’Tgが150℃以上となるものが好ましい。また、このような方法により測定されるG’Tgが160℃以上であれば、繊維強化複合材料の焼付け塗装条件が自由度を増す、すなわち、140℃のような条件で焼き付け塗装を行うことができるためより好ましい。
このようなエポキシ樹脂組成物としては、成分Aと成分Bを含有するエポキシ樹脂組成物であって、成分C又は成分Dのうち、少なくとも1つの成分を含むエポキシ樹脂組成物であることが好ましい。
成分A:分子内に硫黄原子を有さないエポキシ樹脂
成分B:下記式(1)で表されるイミダゾール化合物
成分C:下記式(2)で表されるイミダゾール化合物
成分D:分子内に少なくとも1つの硫黄原子を有するエポキシ樹脂
【化7】

(式中、Rは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、ヒドロキシメチル基を表し、Rは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又は水素原子を表す。)
【化8】

(式中、Rは炭素原子を1個以上含む有機基を表し、R〜Rは水素原子又はメチル基又はエチル基を表す。)
前記成分Cすなわち式(2)で表されるイミダゾール化合物において、Rは、−CHの構造又は−CHORの構造を有する基(但しRは炭素原子を1個以上含む有機基を表す)であることが好ましく、−CHORの構造を有する基(但しRは置換基を有しても良いアリール基を表す)であることがより好ましい。
【0011】
<エポキシ樹脂組成物>
(成分A)
本発明のプリプレグの好ましい実施形態において、エポキシ樹脂組成物としては、成分Aと成分Bを含有するエポキシ樹脂組成物であって、成分C又は成分Dのうち、少なくとも1つの成分を含むエポキシ樹脂組成物であることが好ましい。前記成分Aとして分子内に硫黄原子を有さない1種類以上のエポキシ樹脂を用いる。本発明の成分Aとして用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、2官能性エポキシ樹脂ではビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、あるいはこれらを変性したエポキシ樹脂、例えばイソシアネート変性したオキサゾリドン環を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。3官能以上の多官能性エポキシ樹脂としては例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノールのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンやトリス(グリシジルオキシフェニルメタン)やメチレンビス(ジグリジジルオキシ)ナフタレンのようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂及びこれらを変性したエポキシ樹脂やこれらのエポキシ樹脂の臭素化物である、ブロム化エポキシ樹脂、等が挙げられるが、これらに限定はされるものではない。また、成分Aとして、これらエポキシ樹脂を2種類以上組み合わせて用いてもよい。
中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が特に好適に使用できる。また、これらエポキシ樹脂の分子量は、200〜3000が好ましく、300〜2000がより好ましい。分子量が200〜3000であれば、エポキシ樹脂組成物の製造が容易であるため好ましい。ここで、分子量とは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量のことを指す。
また、成分Aとして用いるエポキシ樹脂のエポキシ当量は、50〜1000g/eqが好ましく、90〜700g/eqがより好ましい。成分Aとして用いるエポキシ樹脂のエポキシ当量が、50〜1000g/eqであれば、硬化物の架橋構造が均一であるため好ましい。ここで、エポキシ当量とは、エポキシ基1個あたりのエポキシ樹脂の分子量のことを意味する。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等を成分Aとして用いた場合は、剛直性の高い分子構造を有するエポキシ樹脂を成分Aとして用いた場合と比較して、成形品、すなわち、本発明のエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂として有する繊維強化複合材料の機械強度が向上するという更なる効果を得ることができる。これは、剛直性の高い分子構造を有するエポキシ樹脂は、短時間で硬化させて高い密度の架橋構造を生じると、架橋体網目構造に歪みが生じやすくなるのに対し、上述したエポキシ樹脂を成分Aとして用いると、そのような問題が起こる可能性が低いためである。
【0012】
(成分B)
本発明のプリプレグの好ましい実施形態において、成分Bは、下記式(1)で表されるイミダゾール化合物である。
【化9】

(式中、Rは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、ヒドロキシメチル基を表し、Rは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又は水素原子を表す。)
このイミダゾール化合物はエポキシ樹脂の硬化剤としてはたらき、成分Cまたは成分Dと組み合わせてエポキシ樹脂組成物に配合することにより、エポキシ樹脂組成物を、短時間で硬化させることができる。
成分Bとして用いられる上記式(1)で表されるイミダゾール化合物の例としては、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ベンジル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−パラトルイル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−メタトルイル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−メタトルイル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−パラトルイル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等の、1H−イミダゾールの5位の水素をヒドロキシメチル基で、かつ、2位の水素をフェニル基またはトルイル基で置換したイミダゾール化合物が挙げられる。このうち、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−パラトルイル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−メタトルイル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−メタトルイル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−パラトルイル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールがより好ましい。また、成分Bとして、これらイミダゾール化合物を2種類以上組み合わせて用いてもよい。
本発明のプリプレグの好ましい実施形態においては、エポキシ樹脂組成物中の成分Bの含有量が、エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂(成分A、または、成分Dを含む場合には成分Dと成分Aとの合計)100質量部に対して2〜40質量部、より好ましくは3〜25質量部、更に好ましくは3〜15質量部である、エポキシ樹脂組成物を用いる事が好ましい。成分Bの含有量が2質量部以上であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進することができる。また、硬化樹脂が高い耐熱性を有するため好ましい。
また、上記式(1)で表されるイミダゾール化合物は室温(25℃)の条件下では結晶性固体であり、100℃以下ではエポキシ樹脂への溶解性は低い。従って、成分Bとしては、100μm以下、特に、20μm以下の体積平均粒径を有する粉体であることが好ましい。成分Bの体積平均粒径が100μm以下であれば、エポキシ樹脂組成物中に良好に分散して、硬化反応を促進することができるため好ましい。
【0013】
(成分C)
本発明のプリプレグの好ましい実施形態における成分Cは、下記式(2)で表されるイミダゾール化合物である。
【化10】

(式中、Rは炭素原子を1個以上含む有機基を表し、R〜Rは水素原子又はメチル基又はエチル基を表す。)
このうち、Rは、−CHの構造又は−CHORの構造を有する基(但しRは炭素原子を1個以上含む有機基を表す)であることが好ましく、−CHORの構造を有する基(但しRは置換基を有しても良いアリール基を表す)であることが特に好ましい。
このイミダゾール化合物はエポキシ樹脂の低温硬化剤としてはたらき、成分Bと組み合わせてエポキシ樹脂組成物中に配合することにより、エポキシ樹脂組成物を、短時間で硬化させることができる。また、一般にハイサイクルプレス成形を行なう場合、プリプレグの樹脂温度の上昇に伴って、樹脂粘度が低下する。そのため、金型の構造によっては、金型から樹脂が激しく流出することがある。しかしながら、エポキシ樹脂組成物中に成分Cを含有する本発明のプリプレグは、低温すなわち70〜110℃硬化反応が始まり、プリプレグの樹脂温度の上昇の途中、すなわち、プリプレグの樹脂温度が約70〜110℃と低い状態から、エポキシ樹脂組成物の架橋反応が素早く進行するため、樹脂粘度の低下が抑制され金型からの樹脂の流出を抑制することができる。
成分Cとして用いられる上記式(2)で表されるイミダゾール化合物の例としては、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾールや、グリシジルエーテル型のエポキシ樹脂と2−メチルイミダゾールを反応させて得られるアダクト化合物が挙げられる。中でもアリールグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂と2−メチルイミダゾールを反応させて得られるアダクト化合物は、エポキシ樹脂組成物の硬化物の物性を優れたものとすることができるので好ましい。また、成分Cとしてこれらイミダゾール化合物を2種類以上組み合わせて用いてもよい。
成分Cは、エポキシ樹脂組成物を100℃以下で硬化させる性能を有すると共に、熱潜在性を賦与されたものが好ましい。ここで、「熱潜在性」とは、熱履歴を与える前はエポキシ樹脂との反応性を有さず、特定の温度以上でかつ特定の時間以上の熱履歴を与えられた後は低い温度においてもエポキシ樹脂との高い反応性を示す性質のことを意味する。
本発明においては、成分Cがマイクロカプセルに封入されてエポキシ樹脂中に分散された潜在性硬化剤であることが好ましく、更にマイクロカプセルの皮膜が架橋高分子から構成されるものがより好ましい。ここで、成分Cを分散させるエポキシ樹脂としては、本発明の成分A、又は成分Dと同じであってもよく、異なっていてもよい。このようなエポキシ樹脂としては、マイクロカプセルの安定性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂であることが好ましい。
成分Cをマイクロカプセルに封入する方法としては特に限定されないが、マイクロカプセルのシェル層の均一性の観点から、界面重合法、in situ重合法又は有機溶液系からの相分離法の方法を用いることが好ましい。
成分Cの硬化性能、すなわち、エポキシ樹脂組成物を硬化させることができる温度については、以下の手順で判断することができる。まず、エポキシ当量184〜194g/eqの液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、三菱化学(株)社製jER828)100質量部と成分C7質量部とを均一に混合して成分Cを含有するエポキシ樹脂組成物を調製する。その後、前記エポキシ樹脂組成物を、示差走査熱量測定装置(以下、「DSC」と記載する)で10℃/分の昇温速度条件によって硬化させて、発熱挙動を測定する。前記エポキシ樹脂組成物のDSCチャートにおいて、ベースラインから発熱カーブが離れ、最初の変曲点における接線がベースラインと交わる点の温度(発熱開始温度)が100℃以下である場合、この成分Cは100℃以下での硬化性能を有すると判断することができる。同様に、DSCチャート上でベースラインから発熱カーブが離れ、発熱開始温度が90℃以下である場合、この成分Cは90℃以下での硬化性能を有すると判断することができる。
本発明のプリプレグの好ましい実施形態においては、90℃以下での硬化性能を有する低温硬化剤を、成分Cとして含有するエポキシ樹脂組成物を用いることがより好ましい。
成分Cをエポキシ樹脂組成物中に含有させるのに好適に用いることができる、成分Cがマイクロカプセルに封入されてエポキシ樹脂中に分散された、100℃以下での硬化性能を有する硬化剤マスターバッチとしては、旭化成イーマテリアルズ社製の硬化剤マスターバッチであるノバキュアHX3721やHX3722、HX3742、HX3748等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明においては、エポキシ樹脂組成物中の成分Cの含有量は、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂(成分A、または、成分Dを含む場合には成分Dと成分Aとの合計)100質量部に対して1〜6質量部であることが好ましく、1.5〜4質量部がより好ましい。成分Cの含有量が1質量部以上であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化反応速度が速く、硬化時の樹脂の流出を抑制できるため好ましい。
【0014】
(成分D)
本発明のプリプレグの好ましい実施形態において、成分Dは、分子内に少なくとも一つの硫黄原子を有するエポキシ樹脂である。分子内に少なくとも一つの硫黄原子を有するエポキシ樹脂としては、ビスフェノールS型エポキシ樹脂や、チオ骨格を有するエポキシ樹脂があり、これらを本発明における成分Dとして用いることができる。また、成分Dとして下記式(3)の構造を含むエポキシ樹脂を用いてもよい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂と分子内に少なくとも一つの硫黄原子を有するアミン化合物との反応生成物が挙げられる。すなわち、成分Dとして、エポキシ樹脂と分子内に少なくとも一つの硫黄原子を有するアミン化合物との反応生成物を含んでいてもよい。
【化11】

分子内に少なくとも一つの硫黄原子を有するアミン化合物としては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルサルファイド、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルサルファイド、及びこれらの誘導体等が挙げられる。このうち、硬化樹脂の耐熱性の観点から、ジアミノジフェニルスルフォンを用いることが好ましく、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォンを用いることがより好ましい。
前記アミン化合物と反応させるエポキシ樹脂としては、成分Aと同じであってもよく、異なっていてもよい。
エポキシ樹脂と分子内に少なくとも一つの硫黄原子を有するアミン化合物との反応生成物を得る方法としては、エポキシ樹脂と、分子内に少なくとも一つの硫黄原子を有するアミン化合物、例えば、前記式(3)で表される構造を有するアミン化合物とを、100:3〜100:30、好ましくは、100:5〜100:20の比率で混合し、130〜200℃、好ましくは140〜170℃で加熱して反応させる方法が挙げられる。この方法を用いた場合、未反応のエポキシ樹脂や前記アミン化合物が、反応生成物中に残留することがあるが、これら残留物を取り除く必要は特にない。
本発明のプリプレグの好ましい実施形態において、成分Dとして、エポキシ樹脂と分子内に少なくとも一つの硫黄原子を有するアミン化合物との反応生成物を含むエポキシ樹脂組成物を用いることで、前記エポキシ樹脂組成物の粘度を調整することができるため好ましい。すなわち、エポキシ樹脂と分子内に少なくとも一つの硫黄原子を有するアミン化合物との反応条件を調整する、例えば、高温長時間とすることで、得られる反応生成物の粘度を高く、低温短時間とすることで、得られる反応生成物の粘度を低くコントロールすることができる。従って、所望の粘度を有する前記反応生成物を含むエポキシ樹脂を、成分Dとしてエポキシ樹脂組成物中に配合することで、エポキシ樹脂組成物の粘度を調整することができる。
【0015】
また、成分Dとして、分子内に少なくとも一つの硫黄原子を有するエポキシ樹脂であって、下記式(4)で表される構造を含むエポキシ樹脂を用いてもよい。
【化12】

このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と前述の分子内に少なくとも一つの硫黄原子を有するアミン化合物との反応生成物が挙げられる。
本発明のプリプレグの好ましい実施形態においてエポキシ樹脂組成物中に成分Dを含有する場合、その含有量は、成分Aと成分Dの質量比で95:5〜10:90であることが好ましく、80:20〜12:88であることがより好ましく、60:40〜13:87であることが更に好ましい。成分Aと成分Dの質量比が、95:5〜10:90であれば、硬化後の樹脂の耐熱性が高くなるため好ましい。
本発明のプリプレグの好ましい実施形態において、エポキシ樹脂組成物中の成分Aと成分Dの合計の含有量は、エポキシ樹脂組成物100質量部に対して、70〜98質量部が好ましく、80〜98質量部がより好ましい。エポキシ樹脂組成物中の成分Aの含有量が、70〜98質量部であれば、硬化物に密な架橋構造が生成するため好ましい。
【0016】
(硬化助剤)
本発明のプリプレグの好ましい実施形態においては、エポキシ樹脂組成物中の成分B、又は成分Cの硬化活性を高めるために、本発明の趣旨を損なわない範囲で適当な硬化助剤を組み合わせたエポキシ樹脂組成物を用いてもよい。成分B、又は成分Cと硬化助剤を組み合わせたエポキシ樹脂組成物を用いることで、前記プリプレグをより短時間で硬化させることができるため、繊維強化複合材料の製造において都合がよい。一方、エポキシ樹脂組成物中の硬化助剤の添加量が多すぎると、硬化後の樹脂組成物の耐熱性が低下したり、プリプレグの保存安定性が悪くなったりするため少量の添加にとどめておく必要がある。
硬化助剤の例としては、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)、3−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエンのような尿素誘導体や、三級アミンや、三フッ化ホウ素モノエチルアミン、三塩化ホウ素アミン錯体などのアミン錯体が挙げられる。
【0017】
(その他の硬化剤)
また、本発明のプリプレグの好ましい実施形態においては、本発明の趣旨を損なわない範囲で、成分Bにも成分Cにも該当しない「その他の硬化剤」を組み合わせたエポキシ樹脂組成物を用いてもよい。一般に低温における硬化性に優れる「その他の硬化剤」はエポキシ樹脂組成物とプリプレグのライフ、すなわち、プリプレグのタック性と柔軟性を保持したまま保存可能な期間を短くするため少量の添加にとどめておく必要がある。
【0018】
(添加剤)
また、本発明においては、添加剤として、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーおよびエラストマーからなる群から選ばれる1種以上の樹脂を添加したエポキシ樹脂組成物を用いてもよい。このような添加剤は、エポキシ樹脂組成物の粘弾性を変化させて、粘度、貯蔵弾性率およびチキソトロープ性を適正化するだけでなく、エポキシ樹脂組成物の硬化物の靭性を向上させる役割がある。エポキシ樹脂組成物中に添加する熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、及びエラストマーからなる1種以上の樹脂は、単独で添加されていてもよく、2種以上が添加されていてもよい。また、この熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、及びエラストマーからなる1種以上の樹脂を、微粒子、長繊維、短繊維、織物、不織布、メッシュ、パルプなどの形状でプリプレグの表層に配置してもよい。このような状態で、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、及びエラストマーからなる1種以上の樹脂を本発明のプリプレグの表層に配置した場合、前記プリプレグを硬化して得られる繊維強化複合材料の層間剥離を抑制することができる。
本発明において、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーおよびエラストマーからなる群から選ばれる1種以上の樹脂を添加したエポキシ樹脂組成物を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の前記添加剤の含有量は、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂(成分A、または、エポキシ樹脂組成物中に成分Dを含む場合には成分Dと成分Aとの合計)100質量部に対して、1〜15質量部が好ましく、2〜10質量部がより好ましい。エポキシ樹脂組成物中の添加剤の含有量が、1〜15質量部であれば、エポキシ樹脂組成物への添加が容易であるため好ましい。本発明において、2種以上の添加剤が添加されたエポキシ樹脂組成物を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の複数の添加剤の含有量が、上記範囲内にあるエポキシ樹脂組成物を用いることが好ましい。
本発明において、熱可塑性樹脂としては、主鎖に、炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結合およびカルボニル結合からなる群から選ばれた結合を有する熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。これらのうち、例えば、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリアラミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンのようなエンジニアリングプラスチックに属する熱可塑性樹脂の一群がより好ましく用いられる。このうち、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンなどが特に好ましく使用される。これら添加剤を用いることで、エポキシ樹脂組成物の硬化樹脂の耐熱性が向上するため好ましい。また、エポキシ樹脂組成物の硬化物の靭性向上、および硬化樹脂の耐環境性維持の観点から、これらの熱可塑性樹脂が熱硬化性樹脂との反応性の官能基を有することが好ましい。このような官能基としては、カルボキシル基、アミノ基および水酸基などが挙げられる。
【0019】
<エポキシ樹脂組成物の製造方法>
本発明のプリプレグに用いるエポキシ樹脂組成物は、従来公知の方法で製造することが出来る。例えば、ガラスフラスコ、ニーダー、プラネタリーミキサー、一般的な撹拌加熱釜、攪拌加圧加熱釜等を用いて製造することが好ましい。
本発明のプリプレグに用いるエポキシ樹脂組成物は、例えば、以下の工程を有する製造方法により製造される事が好ましい。
工程(1):エポキシ樹脂(成分A、または、成分Dを含む場合には成分Dと成分Aとの合計)、及び熱可塑性樹脂等の添加剤を溶解容器に仕込み、70〜150℃で、1〜6時間加熱混合して、エポキシ樹脂主剤を得る工程。
工程(2):前記エポキシ樹脂主剤を50〜70℃に冷却した後、成分B、および/または成分C、その他の硬化剤、硬化助剤を添加し、50〜70℃で0.5〜2時間混合して、エポキシ樹脂組成物を得る工程。
【0020】
<プリプレグの製造>
本発明のプリプレグは、エポキシ樹脂組成物を強化繊維束に含浸させる方法により製造することができる。本発明のプリプレグの製造方法において、エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させる方法としては、エポキシ樹脂組成物を剥離紙等の担持シートに塗布してフィルムとして、強化繊維束や強化繊維束からなるシートと合わせ、適度に加圧加温、すなわち、80〜120℃に加温しニップロールに挟んで加圧することで強化繊維束に含浸させる方法、本発明のエポキシ樹脂組成物を強化繊維束や強化繊維束からなるシートに直接塗布して、同様に加圧加温することで強化繊維束に含浸させる方法も用いることができる。
本発明のプリプレグは、室温での保存安定性に優れ、また、適度なタック、すなわち、プリプレグとプリプレグまたはプリプレグと成形型表面の粘着性と剥離の容易性を有しており複雑な形状をした繊維強化複合材料に好適に用いることができる。
【0021】
(強化繊維)
本発明のエポキシ樹脂組成物と組み合わせる強化繊維には特に制限は無く、炭素繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、有機繊維、ボロン繊維、スチール繊維などを、トウ、クロス、チョップドファイバー、マットなどの形態で使用することができる。
これらの強化繊維のうち、炭素繊維や黒鉛繊維は比弾性率が良好、すなわち、繊維方向弾性率が200GPa以上で、繊維強化複合材料の軽量化に大きな効果が認められるため好ましい。また、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維または黒鉛繊維を用いることができる。
【0022】
<繊維強化複合材料>
本発明のプリプレグを特定の条件で加熱加圧硬化することにより、繊維強化複合材料を得ることができる。
本発明プリプレグを用いて、繊維強化複合材料を製造する方法としては、オートクレーブ成形や、真空バグ成形や、プレス成形等が挙げられる。このうち、本発明のプリプレグにおいて好ましく用いられるエポキシ樹脂組成物の特徴を生かして、生産性が高く、良質な繊維強化複合材料が得られるという観点から、プレス成型法が好ましい。プレス成型法で繊維強化複合材料を製造する場合、本発明のプリプレグ、または本発明のプリプレグを積層したプリフォームを、予め硬化温度に調整した金型に挟んで加熱加圧する工程を含むことが好ましい。
プレス成型時の金型内の温度は、100〜150℃が好ましい。また、1〜15MPaの条件下で1〜20分間硬化させることが好ましい。
【0023】
前記条件のプレス成形法により、繊維強化複合材料を製造する場合、プレス成型後の繊維強化複合材料を金型から取り出す際の望ましくない変形を避けるため、硬化後の繊維複合材料のガラス転移温度、特に、貯蔵剛性率が低下し始める温度として決定されるG’Tgが、成形時の金型の温度より高いことが好ましい。すなわち、エポキシ樹脂組成物を強化繊維束に含浸して得られるプリプレグを、140℃に予熱した金型で挟んで、1MPaに加圧し、5分間保持して得られる繊維強化複合材料のG’Tgが150℃以上であることが好ましい。すなわち、本発明のプリプレグは、強化繊維とエポキシ樹脂組成物とを含むプリプレグであって、140℃に予熱した金型で前記プリプレグを挟んで、1MPaに加圧し、5分間保持して得られる硬化物のG’Tgが150℃以上となるプリプレグを用いて、繊維強化複合材料を製造する事が好ましい。ここで、G’Tgとは、硬化物の動的粘弾性測定によって得られる貯蔵剛性率(G’)の温度依存性により、後述の方法によって決定されるガラス転移温度のことを意味する。
また、本発明のプリプレグから得られた繊維強化複合材料の用途は特に限定されないが、航空機用構造材料をはじめとして、自動車用途、船舶用途、スポーツ用途、その他の風車やロールなどの一般産業用途に使用できる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
(1)エポキシ樹脂組成物の調製
成分Aとして、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量189g/eq、三菱化学(株)製、商品名jER828)(表1中に、「A−1」として表記)50質量部、成分Dとして、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(エポキシ当量300g/eq、DIC(株)製、商品名EXA−1514)(表1中に、「D−1」として表記)50質量部、添加剤として、ポリエーテルスルホン(質量平均分子量32,000、BASF(株)製、商品名ウルトラゾーンE2020P)(表1中に、「Z−2」として表記)5部をガラスフラスコに投入し、100℃にて加熱混合することで均一なエポキシ樹脂主剤を得た。次に、得られたエポキシ樹脂主剤を60℃以下に冷却した後に、成分Bとして、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業(株)製、商品名2P4MHZ−PW)(表1中に、「B−1」として表記)10質量部、成分Cとして、HX3722(硬化剤成分含有量35%、旭化成イーマテリアルズ(株)製、商品名ノバキュアHX3722)(表1中に、「C−1」として表記)5質量部を添加し、60℃で混合することによって均一に分散させ、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0026】
(2)硬化樹脂板の作製
得られたエポキシ樹脂組成物を2mm厚のポリテトラフルオロエチレンのスペーサーを挟んだ2枚の4mm厚のガラス板の間に注入し、ガラス表面の温度が140℃となる条件で、10分間熱風循環式恒温炉にて加熱した後に冷却して、硬化樹脂板を得た。
【0027】
(3)プリプレグの製造
(1)で得られたエポキシ樹脂組成物をコンマコーターで離型紙上に樹脂目付133g/mで均一に塗布して樹脂層を形成した。ついで、前記樹脂層に三菱レイヨン(株)製3K平織り炭素繊維クロスTR3110Mを貼り付けた後、温度80℃、設定圧力0.4MPaの条件でフュージングプレス(アサヒ繊維機械工業(株)製、JR−600S、処理長1340mm、設定圧力はシリンダー圧)で加熱及び加圧してエポキシ樹脂組成物を炭素繊維に含浸させ、繊維目付が200g/m、樹脂含有率が40質量%のプレス成形用プリプレグを作製した。
【0028】
(4)繊維強化複合材料の製造
(3)で得られたプレス成形用プリプレグを縦298mm×298mmに切断し、縦糸の繊維方向が0°と90°が交互になるように5枚積層したプリフォーム(厚さ1.1mm、層体積97.7cm、片面表面積888cm)を用意した。
プレス成型用金型は、図1A図1Bに例示した金型1を用いた。金型1の下型3のプリフォームと接触する面(繊維強化複合材料の厚み部分と接触する面を除く)の表面積は900cmであった。
まず、金型1の上型2及び下型3を予め140℃に加熱し、下型3上に前記プリフォームを配置し、すぐに上型2を降ろして金型1を閉め、1MPaの圧力をかけて5分間加熱加圧した。その後、金型1から成型物を取り出して繊維強化複合材料を得た。
金型シアエッジからの樹脂流出率は以下式により算出した。
樹脂流出率(%)=(W1−W2)/W1×100
但し、 W1:硬化前のプリフォームの質量(g)
W2:成形物(バリ除去後)の質量(g)
【0029】
(5)耐熱性(ガラス転移温度:G’Tg)の測定
(2)で得られた樹脂板、(4)で得られた繊維強化複合材料を試験片(長さ55mm×幅12.5mm)に加工し、TAインストルメンツ社製レオメーターARES−RDAを用いて、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/分で、logG’を温度に対してプロットし、logG’の平坦領域の近似直線と、logG’が急激に低下する領域の近似直線との交点の温度をガラス転移温度(G’Tg)として記録した。
【0030】
(6)プリプレグのライフの評価
(3)で得られたプリプレグのライフは、プリプレグを温度23±2℃、湿度50±5%の実験室内で3週間静置した後に、指先による触感で試験し、以下の判断基準で評価した。
A:タック性、柔軟性ともに適度である為扱いやすいことを示す。
B:タックが弱い、もしくは柔軟性に欠ける為に扱いにくいことを示す。
C:タック性、柔軟性が非常に悪い為に扱いにくいことを示す。
【0031】
(実施例1〜25、参考例1〜3、比較例1〜25)
実施例1〜25、参考例1〜3、および比較例1〜25は、エポキシ樹脂組成物の組成を、表1〜4に記載の内容に変更した以外は、全て実施例1と同じ操作にて繊維強化複合材料を製造し、この繊維強化複合材料の物性測定を行った。表1〜表4中、「成分Bの含有量」とは、エポキシ樹脂組成物中の成分Bの合計量を意味する。また、「成分Cの含有量」とは、エポキシ樹脂組成物中の成分Cの合計量を意味する。成分Cとしてマイクロカプセルに封入されたマスターバッチ型硬化剤を用いている場合は、前記マスターバッチ型硬化剤の配合量に硬化剤成分含有量(%)を乗じて計算した値の合計量を、成分Cの含有量として記載した。
【0032】
表1〜表4中の略号は下記の通りである。
成分A:分子内に硫黄原子を有さないエポキシ樹脂
A−1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量189g/eq、三菱化学(株)製、商品名:jER828)
A−2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量475g/eq、三菱化学(株)製、商品名:jER1001)
A−3:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量265g/eq、DIC(株)製、商品名:HP7200)
A−4:トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(エポキシ当量169g/eq、三菱化学(株)製、商品名:jER1032)
A−5:ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂(エポキシ当量120g/eq、三菱化学(株)製、商品名:jER604)
A−6:液状フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量177g/eq、三菱化学(株)製、商品名:jER152)
A−7:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量168g/eq、三菱化学(株)製、商品名:jER807)
A−8:ナフタレン骨格エポキシ樹脂(エポキシ当量150g/eq、DIC(株)製、商品名:HP4032)
A−9:オキサゾリドン環を有するエポキシ樹脂(エポキシ当量189g/eq 、旭化成イーマテリアルズ(株)製、商品名:AER4152)
【0033】
成分B:式(1)で表されるイミダゾール化合物
B−1:2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業(株)製、商品名:2P4MHZ−PW)
B−2:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業(株)製、商品名:2PHZ−PW)
【0034】
成分C:式(2)で表されるイミダゾール化合物
マイクロカプセルに封入された成分Cを含む以下のマスターバッチ型硬化剤を用いた。
C−1:HX3722(硬化剤成分含有量35%、旭化成イーマテリアルズ(株)製、商品名:ノバキュアHX3722)
C−2:HX3748(硬化剤成分含有量35%、旭化成イーマテリアルズ(株)製、商品名:ノバキュアHX3748)
【0035】
成分D:分子内に少なくともとも一つの硫黄原子を有するエポキシ樹脂
D−1:ビスフェノールS型エポキシ樹脂(エポキシ当量300g/eq、DIC(株)製、商品名:EXA−1514)
D−2:A−1と4,4’−ジアミノジフェニルスルフォンとの反応物:
A−1と4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン(和歌山精化工業(株)製、商品名:セイカキュアーS)とをA−1/4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン=100/9の質量比で室温にて混合した後に150℃にて混合加熱して得た反応物であって、エポキシ樹脂と分子内に少なくとも一つの硫黄原子を有するアミン化合物との反応生成物を主成分とする混合物(エポキシ当量266g/eq)
【0036】
硬化助剤(X):
X−1:3−フェニル−1,1−ジメチルウレア(ピイ・ティ・アイ・ジャパン(株)製、商品名:オミキュア94)
X−2:1,1’−(4−メチル−1,3−フェニレン)ビス(3,3−ジメチルウレア)(ピイ・ティ・アイ・ジャパン(株)製、商品名:オミキュア24)
X−3:4,4’−メチレンビス(フェニルジメチルウレア)(ピイ・ティ・アイ・ジャパン(株)製、商品名:オミキュア52)
【0037】
その他の硬化剤(Y):
Y−1:2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]―エチル−s−トリアジン(四国化成工業(株)製、商品名:C11Z−A)
Y−2:2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン イソシアヌル酸付加物(四国化成工業(株)製、商品名:2MA−OK)
Y−3:ジシアンジアミド(三菱化学(株)製、商品名:DICY15)
Y−4:2−メチルイミダゾール(四国化成工業(株)製、商品名:2MZ−H)
Y−5:1,2−ジメチルイミダゾール(四国化成工業(株)製、商品名:1,2DMZ)
Y−6:2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(四国化成工業(株)製、商品名:2MZ−A)
Y−7:N−ベンジル−2−メチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)
Y−8:1−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール(日本合成化学工業(株)製)
Y−9:イソフタル酸ジヒドラジド(大塚化学(株)製、商品名:IDH−S)
【0038】
添加剤として用いる熱可塑性樹脂(Z):
Z−1:フェノキシ樹脂(新日鐵化学(株)製、商品名フェノトートYP−50S、質量平均分子量50,000〜70,000)
Z−2:ポリエーテルスルホン(BASF(株)製、商品名ウルトラゾーンE2020P、質量平均分子量32,000)
【0039】
3K平織り炭素繊維クロス:三菱レイヨン(株)製、商品名TR3110M
【0040】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0041】
表1〜4からわかるように、実施例1〜13、参考例1〜3でそれぞれ得られたプリプレグは保存安定性に優れていた。また、これら実施例1〜13、参考例1〜3は高いG’Tgを示し、このことからも、本発明のプリプレグから製造された繊維強化複合材料は、高い耐熱性を有する事が分かった。
一方、硬化後の繊維強化複合材料のG’Tgが低い比較例1では、脱型時の成形品の剛性が低いため、脱型操作中に成型品が変形した。従って、比較例1では、良好な成型品を得るために、成型品の脱型前に冷却しなければならず、ハイサイクルで繊維強化複合材料の成型を行うことは困難であった。
また、成分Cと成分Dのいずれも含んでいない比較例1、12、及び18〜20では耐熱性(G’Tg)が低く、また比較例1、2では、加熱加圧硬化時に過剰量の樹脂が流出した。また、成分Bを含んでない比較例4〜11、21〜25では、耐熱性が低かった。更に、成分Cも含まない比較例7、8では、加熱加圧硬化時に過剰量の樹脂が流動した。比較例3、13〜17では、その他の硬化剤、硬化助剤の添加量が多いため、プリプレグの保存安定性が低かった。
一方、実施例24、25と比べて、実施例23、及び14は耐熱性が高く、このうち、実施例14の耐熱性が最も高かった。また比較例24と比べて、実施例15はより耐熱性が高くなることが分かった。このことから、エポキシ樹脂組成物中の成分Bの添加量は、エポキシ樹脂100質量部(成分Dを含む場合は、成分Dと成分Aとの合計量100質量部)に対して2〜40質量部であることが好ましいことが分かる。
実施例11と比べ実施例は樹脂流出量が0.9%と少なく好ましく、実施例は樹脂流出量が0.8%と更に少なく好ましかった。また実施例11と比べ参考例2は樹脂流出量が1.2%と少なく好ましかった。これらの実験結果から、成分Cの含有量は、エポキシ樹脂100質量部(成分Dを含む場合は、成分Dと成分Aとの合計量100質量部)に対して、1〜6質量部であることが好ましいことが分かった。
実施例22と比べ実施例20は耐熱性が高く好ましく、実施例14は耐熱性がより高く好ましかった。また実施例17に比べ実施例は耐熱性が好ましかった。これらの実験結果から、成分Dの添加量は、成分A:成分Dの質量比で、95:5〜10:90であることが好ましいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のプリプレグは、プレス成形、特にハイサイクルプレス成形に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 金型
2 上型
3 下型
4 雌型シアエッジ部
5 雄型シアエッジ部
6 成形材料
図1A
図1B