(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して本発明に係るマルチコア光ファイバの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本明細書においては、カットオフ波長(λ
c)とは、ITU−T(国際電気通信連合)G.650.1で定義するファイバカットオフ波長をいう。また、その他、本明細書で特に定義しない用語についてはITU−T G.650.1における定義、測定方法に従うものとする。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るマルチコア光ファイバの模式的な断面図である。
図1に示すように、このマルチコア光ファイバ100は、2つのコア部1、2と、各コア部1、2の外周に位置するクラッド部3と、クラッド部3の外周に形成された被覆部4とを備えている。
【0021】
各コア部1、2とクラッド部3とは、いずれもたとえば石英系ガラスからなる。また、クラッド部3は、各コア部1、2の屈折率よりも低い屈折率を有する。たとえば、コア部1、2は、屈折率を高めるドーパントであるGeが添加された石英ガラスからなる。一方、クラッド部3は、屈折率調整用のドーパントを含まない純石英ガラスからなる。各コア部1、2の屈折率プロファイルとしては、ステップインデックス型を採用した。
【0022】
また、各コア部1、2の直径(コア径)は、いずれも3.55μmであり、各コア部1、2のクラッド部3に対する比屈折率差は、いずれも0.783%である。また、コア部1の中心軸とコア部2の中心軸との距離(離隔距離)は、78.4μmである。また、クラッド部3の外径は、コア部1、2を上記離隔距離で配置できるように適宜設定され、たとえば125〜200μmである。また、被覆部4の外径は、クラッド部3を保護できるように適宜設定され、たとえば250〜400μmである。
【0023】
ここで、比屈折率差Δは、コア部の最大屈折率をn1、クラッド部の屈折率をncとすると、下記式(1)で定義される。
Δ={(n1−nc)/nc}×100 [%]・・・・・(1)
また、コア径2aは、コア部とクラッド部との境界領域でΔの1/2の比屈折率差を有する位置における径として定義される。
【0024】
このマルチコア光ファイバ100は、各コア部1、2のコア径と比屈折率差とを、上記値に設定したことによって、各コア部1、2について、カットオフ波長が1.53μm以下の0.85μmとなり、波長1.55μmにおける直径20mmで巻いた場合の曲げ損失が10dB/mとなり、波長1.55μmにおける有効コア断面積が30μm
2以上の43.2μm
2となる。その結果、このマルチコア光ファイバ100は、0.85μm以上の広い波長帯域にわたって、この帯域内の波長の光信号をシングルモードで伝送することができる上、光伝送路として用いるためにケーブル構造にした場合においても発生する曲げ損失が実用的な値となる。また、光伝送の際に障害となる光学非線形性が十分に低い光ファイバとなり、大容量光伝送に適するものとなる。なお、以下では、直径20mmで巻いた場合の曲げ損失を単に曲げ損失と記載する。
【0025】
さらには、このマルチコア光ファイバ100は、コア部1とコア部2との離隔距離を、上記値に設定したことによって、全長を10km以上とした場合のコア部間での光のクロストークが波長1.55μmにおいて−35dB以下となるので、各コア部1、2において個別に伝送する光信号のクロストークが十分に低いものとなる。
【0026】
以下、このマルチコア光ファイバ100のクロストークについて具体的に説明する。マルチコア光ファイバ100の2つのコア部1、2が平行に存在するような導波路構造における、コア部間の光の干渉の大きさは、モード結合理論によって表される。すなわち、一方のコア部1に入射した光のうち、このコア部1を伝送する間にモード結合によって他方のコア部2に乗り移る光のパワーPは、伝送距離zと、2つのコア部間のモード結合定数χとを用いて、P=fsin
2(χz)で計算することができる。ここで、コア部1とコア部2とで、コア径および比屈折率差が同一の場合は、f=1である。したがって、z=π/(2χ)のときに、P=1となり、光のパワーの100%が一方のコア部から他方のコア部に乗り移ることとなる。このように光のパワーの100%が乗り移るまでの伝送距離は結合長Lと呼ばれる。すなわち、L=π/(2χ)である。なお、このモード結合定数χは、各コア部1、2のコア径、比屈折率差およびコア部1、2の離隔距離により定まる。
【0027】
ここで、このマルチコア光ファイバ100においては、設定された各コア部1、2のコア径および比屈折率差と、所望の全長とに対して、上記Pが0.03%以下になるように、コア部1とコア部2との離隔距離を設定している。その結果、上記所望の全長において、コア部間のクロストークが−35dB以下となり、2つのコア部を伝送する光信号のクロストークが十分に低いものとなっているのである。
【0028】
また、このマルチコア光ファイバ100は、コア部1、2とクラッド部3との屈折率差によって、コア部1、2に光信号を閉じ込めて伝送するものである。したがって、このマルチコア光ファイバ100は、空孔構造光ファイバのような緻密な圧力制御を必要とせず製造できるものであり、製造性が高いものである。
【0029】
すなわち、このマルチコア光ファイバ100は、たとえば以下のようにして製造できる。
図2は、
図1に示すマルチコア光ファイバ100の製造方法の一例を説明する説明図である。
図2に示すように、この製造方法においては、まず、2つのキャピラリー5を、クラッド部3と同じ材料からなるガラス管6内に配置する。このキャピラリー5は、コア部1または2を形成するためのコア領域5aと、クラッド部3を形成するためのクラッド領域5bとを有するものである。なお、このキャピラリー5としては、従来の光ファイバを製造するための光ファイバ母材を延伸したものを用いることができる。その後、ガラス管6内の隙間に、クラッド部3と同じ材料からなる充填用キャピラリー7〜10を充填し、光ファイバ母材200を作製する。なお、充填用キャピラリー7〜10の代わりにガラスの粉を充填してもよい。
【0030】
つぎに、この光ファイバ母材200を、所望のコア径ならびにコア部間の離隔距離を実現するように計算された外径を保ちつつ線引きすることで、緻密な圧力制御を行うこと無しに、
図1に示すマルチコア光ファイバ100を製造できる。なお、充填用キャピラリー7〜10の存在によって、線引き中に光ファイバの断面が円形から変形してしまうことが妨げられるので、光ファイバの外径の歪みを防ぐことができる。
【0031】
また、キャピラリー5として、ITU−TG.652.CもしくはG.652.Dにおいて定義される、波長1383nm近傍におけるOH基の光吸収による伝送損失が小さい光ファイバを製造するための光ファイバ母材を延伸したものを用いることもできる。これによって、Eバンド(約1360〜1460nm)の波長帯域を用いた光信号伝送にも好適なマルチコア光ファイバを製造することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態1に係るマルチコア光ファイバ100は、製造性が高く、大容量光伝送に適するマルチコア光ファイバとなる。
【0033】
なお、本発明に係るマルチコア光ファイバは、上記実施の形態1に限られない。すなわち、各コア部の直径が12μm以下であり、比屈折率差が0.2%以上であり、カットオフ波長が1.53μm以下であり、波長1.55μmにおいて曲げ損失が10dB/m以下かつ有効コア断面積が30μm
2以上であり、コア部間での光のクロストークが波長1.55μmにおいて−35dB以下となるように設定されているマルチコア光ファイバであれば、特に限定されない。以下、コア部の数が2の場合において、本発明に係るマルチコア光ファイバについて、FEM(Finite Element Method)シミュレーションを用いた計算によってより具体的に説明する。
【0034】
はじめに、コア部のコア径と比屈折率差とを設定した場合の有効コア断面積について説明する。
図3は、コア径と比屈折率差との組み合わせに対する、波長1.55μmにおける有効コア断面積を示す図である。
図3において、横軸の「2a」はコア径を示し、縦軸の「Δ」は比屈折率差を示している。
図3において、たとえばコア径が4μm、比屈折率差が1%であるデータ点は、有効コア断面積が20〜30μm
2の領域に位置している。この領域から、図上で右下の領域に行くにつれて、すなわちコア径を大きくし、比屈折率差を小さくするにつれて、有効コア断面積が大きくなる傾向にある。
【0035】
つぎに、コア径と比屈折率差とを設定した場合のカットオフ波長と曲げ損失とについて説明する。
図4は、コア径と比屈折率差との組み合わせに対するカットオフ波長と波長1.55μmにおける曲げ損失とを示す図である。
図4において、たとえば「λc:1.53μm」の実線は、カットオフ波長が1.53μmとなるコア径と比屈折率差との組み合わせを示している。また、たとえば「曲げ損失:10dB/m」の実線は、波長1.55μmにおける曲げ損失が10dB/mとなるコア径と比屈折率差との組み合わせを示している。なお、カットオフ波長については、光ファイバ伝送で用いる代表的な波長である1.53μm、1.31μm、1.0μm、0.85μmについて示しており、曲げ損失については、ケーブル構造にする場合に実用上十分と考えられている10dB/mと、さらに好適な値である0.5dB/mとについて示している。
図4に示すように、図上で左下の領域に行くにつれて、すなわちコア径を小さくし、比屈折率差を小さくするにつれて、カットオフ波長が短くなる傾向にある。また、図上で右上の領域に行くにつれて、すなわちコア径を大きくし、比屈折率差を大きくするにつれて、曲げ損失が小さくなる傾向にある。
【0036】
つぎに、
図5は、
図3と
図4をもとにして、カットオフ波長が1.53μm以下、波長1.55μmにおける曲げ損失が10dB/m以下、波長1.55μmにおける有効コア断面積が30μm
2以上となる領域Aを示す図である。すなわち、
図5に示す領域A内に存在するコア径と比屈折率差との組み合わせを選択すれば、上記カットオフ波長、曲げ損失、有効コア断面積の範囲を実現することができる。また、コア径と比屈折率差との組み合わせの選択により、カットオフ波長を1.31μm、1.0μm、0.85μmとすることができ、また、曲げ損失をより小さい0.5dB/m以下とすることができる。
【0037】
なお、
図5の領域Aは、数式で表すと、おおよそ、Δ≦1.05、かつ、Δ≦0.096134×(2a)
2−0.86034×(2a)+2.8176、かつ、Δ≦0.00049736×(2a)
4−0.021060×(2a)
3+0.34024×(2a)
2−2.5446×(2a)+7.8409、かつ、Δ≧1.6505×10
-5×(2a)
6−0.00081767×(2a)
5+0.016634×(2a)
4−0.17873×(2a)
3+1.0822×(2a)
2−3.6021×(2a)+5.7132となる。したがって、上記数式を満たすコア径2aと比屈折率差Δとの組み合わせを選択すれば、上記カットオフ波長、曲げ損失、有効コア断面積の範囲を実現することができる。
【0038】
つぎに、上記のように選択したコア径と比屈折率差との組み合わせを有する2つのコア部について、マルチコア光ファイバの全長を設定した場合に、コア部間での光のクロストークが波長1.55μmにおいて−35dBとなるようなコア部間の離隔距離を計算した。以下、このようなコア部間での光のクロストークが波長1.55μmにおいて−35dBとなるようなコア部間の離隔距離をコアピッチと記載する。
【0039】
図6は、計算例1〜15として、
図5に示す領域A内に存在するコア径と比屈折率差との組み合わせを選択した場合の、コア部が2つのマルチコア光ファイバの各種光学特性と、所定の全長に対するコアピッチとを示す図である。なお、
図6において、「λc」はカットオフ波長を示し、「Aeff」は波長1.55μmでの有効コア断面積を示し、波長分散、分散スロープは波長1.55μmでの値を示している。また、マルチコア光ファイバの全長の例として1m、10m、100m、1km、10km、100kmを示している。
【0040】
図6に示す計算例1〜15は、いずれも、コア径2aが12μm以下であり、比屈折率差Δが0.2%以上であるので、カットオフ波長が1.53μm以下、波長1.55μmにおいて曲げ損失が10dB/m以下かつ有効コア断面積が30μm
2以上という特性が実現されている。
【0041】
また、所定の全長に対して、コア部間の離隔距離をコアピッチ以上の値にすることによって、コア部間での光のクロストークを波長1.55μmにおいて−35dB以下とすることができる。たとえは、計算例1の場合は、全長が1mの場合には、コアピッチは46.5μmであるから、コア部間の離隔距離を46.5μm以上とすれば、コア部間のクロストークは−35dB以下となる。また、全長が100kmの場合には、コアピッチは86.4μmであるから、コア部間の離隔距離を86.4μm以上とすれば、コア部間のクロストークは−35dB以下となる。
【0042】
また、コア径2aを9.5μm以上とし、比屈折率差Δを0.3%とすれば、有効コア断面積Aeffを100μm
2以上とでき、光学非線形性をさらに低減できる。なお、この場合は、コア部間の離隔距離を、その全長に応じて44μm以上にすることにより、コア部間のクロストークは−35dB以下となる。
【0043】
たとえば、計算例4の場合は、コア径2aが9.5μm以上の11.72μmであり、比屈折率差Δが0.3%以下の0.238%であるので、有効コア断面積Aeffは100μm
2以上の129.8μm
2となる。また、コア部間の離隔距離を、1m以上の全長に応じて44μm以上である48.3μm以上とすれば、コア部間のクロストークは−35dB以下となる。
【0044】
また、たとえば、計算例9の場合も、コア径2aが9.5μmであり、比屈折率差Δが0.3%以下の0.280%であるので、有効コア断面積Aeffは100μm
2以上の100.9μm
2となる。また、コア部間の離隔距離を、1m以上の全長に応じて44μm以上である47.3μm以上とすれば、コア部間のクロストークは−35dB以下となる。
【0045】
また、計算例11の場合は、有効コア断面積Aeffは30μm
2以上の31.0μm
2となる。また、コア部間の離隔距離を、1m以上の全長に応じて27μm以上とすれば、コア部間のクロストークは−35dB以下となる。このように、本発明に係るマルチコア光ファイバでは、1m以上の全長に応じてコア部間の離隔距離を27μm以上にする必要がある。
【0046】
また、計算例12の場合は、コア径2aが9.5μm以上の10.5μmであり、比屈折率差Δが0.3%以下の0.296%であるので、有効コア断面積Aeffは100μm
2以上の104.3μm
2となる。また、コア部間の離隔距離を、1m以上の全長に応じて44μm以上とすれば、コア部間のクロストークは−35dB以下となる。
【0047】
また、計算例10、11、13、14の場合は、コア径2aが8.5μm以下、比屈折率差Δが0.4%以上である。この場合、所定の全長に対してはコアピッチが40μm以下となるため、コア部間の離隔距離を40μm以下と小さくできるので、コア部の高密度化が可能となる。
【0048】
また、計算例15の場合は、コア径2aを3μm、比屈折率差Δを0.980%以下として、所望のカットオフ波長、有効コア断面積、および曲げ損失を実現している。
【0049】
なお、波長分散および分散スロープの値については、計算例1〜15のいずれも、実用上問題のない範囲の値となっている。
【0050】
以上の計算例1〜15が示すように、本発明に係るマルチコア光ファイバにおいて、コア部の数を2とした場合に、カットオフ波長が1.53μm以下、波長1.55μmにおいて曲げ損失が10dB/m以下かつ有効コア断面積が30μm
2以上、所定の全長におけるコア部間での光のクロストークが波長1.55μmにおいて−35dB以下、という特性を実現できる。
【0051】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態2に係るマルチコア光ファイバは、コア部の数が7のものである。
【0052】
図7は、本実施の形態2に係るマルチコア光ファイバの模式的な断面図である。
図7に示すように、このマルチコア光ファイバ300は、7つのコア部11〜17と、各コア部11〜17の外周に位置するクラッド部18と、クラッド部18の外周に形成された被覆部19とを備えている。コア部11は、マルチコア光ファイバ300の中心軸の近傍に位置し、その他のコア部12〜17は、ほぼ正六角形の頂点に位置するように配置しており、かつコア部11と各コア部12〜17との離隔距離は同一の84.6μmとなっている。この離隔距離については後で詳述する。
【0053】
また、実施の形態1に係るマルチコア光ファイバ100の場合と同様に、各コア部11〜17とクラッド部18とは、いずれもたとえば石英系ガラスからなる。また、クラッド部18は、各コア部11〜17の屈折率よりも低い屈折率を有する。各コア部11〜17の屈折率プロファイルとしては、ステップインデックス型を採用した。
【0054】
また、マルチコア光ファイバ100の場合と同様に、各コア部11〜17のコア径は、いずれも3.55μmであり、各コア部11〜17の比屈折率差は、いずれも0.783%である。なお、比屈折率差およびコア径は、実施の形態1に係るマルチコア光ファイバ100と同様に定義される。その結果、このマルチコア光ファイバ300は、各コア部11〜17について、カットオフ波長が1.53μm以下の0.85μmとなり、波長1.55μmにおける曲げ損失が10dB/mとなり、波長1.55μmにおける有効コア断面積が43.2μm
2となる。したがって、このマルチコア光ファイバ300は、0.85μm以上の広い波長帯域にわたって、この帯域内の波長の光信号をシングルモードで伝送することができる上、ケーブル構造にした場合に発生する曲げ損失が実用的な値となる。また、光学非線形性が十分に低い光ファイバとなり、大容量光伝送に適するものとなる。
【0055】
なお、このマルチコア光ファイバ300は、各コア部11〜17のコア径および比屈折率差が、マルチコア光ファイバ100の場合と同様の値にしているので、各コア部11〜17についてのカットオフ波長、曲げ損失、有効コア断面積も、マルチコア光ファイバ100の場合と同様の値になっている。その理由は、これらの光学特性が、各コア部11〜17のコア径および比屈折率差によって決まるからである。
【0056】
一方、このマルチコア光ファイバ300は、マルチコア光ファイバ100の場合と比較して、或るコア部に隣接するコア部の数が多い。たとえば、コア部11に関しては、隣接するコア部はコア部12〜17であり、その数は6である。一方、各コア部12〜17に関しては、隣接するコア部の数は3であり、残りの3つのコア部は、隣接する3つのコア部よりも大きく離隔している。ここで、コア部間のクロストークは、離隔距離が大きくなるにつれて急激に減少するので、隣接するコア部とのクロストークのみを考慮すればよい。
【0057】
そこで、このマルチコア光ファイバ300においては、隣接するコア部の数が最も多く、クロストークが最も大きくなるコア部11におけるクロストークを勘案して、隣接するコア部間の離隔距離を設定している。具体的には、このマルチコア光ファイバ300においては、コア部11と各コア部12〜17との離隔距離を、上述した84.6μmに設定したことによって、全長を10km以上とした場合のコア部間での光のクロストークが波長1.55μmにおいて−35dB以下となるので、各コア部11〜17において個別に伝送する光信号の、コア部11におけるクロストークが十分に低いものとなる。また、他のコア部12〜17におけるクロストークについては、コア部11のクロストークよりも小さくなるので、確実に−35dB以下となる。
【0058】
このマルチコア光ファイバ300も、空孔構造光ファイバのような緻密な圧力制御を必要とせず製造できるものであり、製造性が高いものである。
図8は、
図7に示すマルチコア光ファイバ300の製造方法の一例を説明する説明図である。
図8に示すように、この製造方法においては、まず、7つのキャピラリー20を、クラッド部18と同じ材料からなるガラス管21内に配置する。このキャピラリー20は、コア部11〜17のいずれかを形成するためのコア領域20aと、クラッド部18を形成するためのクラッド領域20bとを有するものである。その後、ガラス管21内の隙間に、クラッド部18と同じ材料からなる充填用キャピラリー22、23を充填し、光ファイバ母材400を作製する。なお、充填用キャピラリー22、23の代わりにガラスの粉を充填してもよい。つぎに、この光ファイバ母材400を、所望のコア径ならびにコア部間の離隔距離を実現するように計算された外径を保ちつつ線引きすることで、緻密な圧力制御を行うこと無しに、
図7に示すマルチコア光ファイバ300を製造できる。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態2に係るマルチコア光ファイバ300は、製造性が高く、大容量光伝送に適するマルチコア光ファイバとなる。
【0060】
つぎに、上述したコア部の数が2のマルチコア光ファイバの場合と同様に、
図7に示すマルチコア光ファイバ300と同様に7つのコア部が配置された本発明に係るマルチコア光ファイバについて、FEMシミュレーションを用いた計算によってより具体的に説明する。
【0061】
まず、各コア部のコア径と比屈折率差との組み合わせについては、コア部の数が2の場合と同様に、
図5に示す領域A内に存在するコア径と比屈折率差との組み合わせを選択すれば、カットオフ波長が1.53μm以下、波長1.55μmにおける曲げ損失が10dB/m以下、波長1.55μmにおける有効コア断面積が30μm
2以上とすることができる。
【0062】
つぎに、上記のように選択したコア径と比屈折率差との組み合わせを有する7つのコア部について、マルチコア光ファイバの全長を設定した場合に、
図7のコア部11に対応するコア部における光のクロストークが波長1.55μmにおいて−35dBとなるようなコア部間の離隔距離(コアピッチ)を計算した。
【0063】
図9は、計算例16〜30として、
図5に示す領域A内に存在するコア径と比屈折率差との組み合わせを選択した場合の、コア部が7つのマルチコア光ファイバの各種光学特性と、所定の全長に対するコアピッチとを示す図である。なお、計算例16〜30のコア径2aおよび比屈折率差Δの値は、それぞれ
図6における計算例1〜15の場合と同じである。したがって、カットオフ波長λc、有効コア断面積Aeff、波長分散、分散スロープの値も計算例1〜15の場合と同じであり、コアピッチのみが計算例1〜15とは異なる。
【0064】
すなわち、
図9に示す計算例16〜30は、いずれも、コア径2aが12μm以下であり、比屈折率差Δが0.2%以上であるので、カットオフ波長が1.53μm以下、波長1.55μmにおいて曲げ損失が10dB/m以下かつ有効コア断面積が30μm
2以上という特性が実現されている。
【0065】
また、たとえば、計算例16の場合は、全長が1mの場合には、コアピッチは52.7μmであるから、コア部間の離隔距離を52.7μm以上とすれば、コア部間のクロストークは−35dB以下となる。また、全長が100kmの場合には、コアピッチは92.6μmであるから、コア部間の離隔距離を92.6μm以上とすれば、コア部間のクロストークは−35dB以下となる。
【0066】
また、コア径2aを9.5μm以上とし、比屈折率差Δを0.3%とすれば、有効コア断面積Aeffを100μm
2以上とでき、光学非線形性をさらに低減できる。なお、この場合は、コア部間の離隔距離を、その全長に応じて49μm以上にすることにより、コア部間のクロストークは−35dB以下となる。
【0067】
たとえば、計算例19の場合は、コア径2aが9.5μm以上の11.72μmであり、比屈折率差Δが0.3%以下の0.238%であるので、有効コア断面積Aeffは100μm
2以上の129.8μm
2となる。また、コア部間の離隔距離を、1m以上の全長に応じて49μm以上である54.3μm以上とすれば、コア部間のクロストークは−35dB以下となる。
【0068】
また、たとえば、計算例24の場合も、コア径2aが9.5μmであり、比屈折率差Δが0.3%以下の0.280%であるので、有効コア断面積Aeffは100μm
2以上の100.9μm
2となる。また、コア部間の離隔距離を、1m以上の全長に応じて49μm以上である53.2μm以上とすれば、コア部間のクロストークは−35dB以下となる。
【0069】
また、計算例26の場合は、有効コア断面積Aeffは30μm
2以上の31.0μm
2となる。また、コア部間の離隔距離を、1m以上の全長に応じて30μm以上とすれば、コア部間のクロストークは−35dB以下となる。このように、本発明に係るマルチコア光ファイバでは、コア部の数が7の場合は、1m以上の全長に応じてコア部間の離隔距離を30μm以上にする必要がある。
【0070】
また、計算例27の場合は、コア径2aが9.5μm以上の10.5μmであり、比屈折率差Δが0.3%以下の0.296%であるので、有効コア断面積Aeffは100μm
2以上の104.3μm
2となる。また、コア部間の離隔距離を、1m以上の全長に応じて49μm以上とすれば、コア部間のクロストークは−35dB以下となる。
【0071】
また、計算例25、26、28、29の場合は、コア径2aが8.5μm以下、比屈折率差Δが0.4%以上である。この場合、所定の全長に対してはコアピッチが40μm以下となるため、コア部間の離隔距離を40μm以下と小さくできるので、よりコア部の高密度化が可能となる。さらには、コア部間の離隔距離が40μm以下であれば、クラッド部の外径を標準のシングルモード光ファイバと同一の125μmとしても、7つのコア部を収容することができるので、標準のシングルモード光ファイバとの互換性の点で好ましい。
【0072】
また、計算例30の場合は、コア径2aを3μm、比屈折率差Δを0.980%以下として、所望のカットオフ波長、有効コア断面積、および曲げ損失を実現している。
【0073】
以上の計算例16〜30が示すように、本発明に係るマルチコア光ファイバにおいて、コア部の数を7とした場合に、カットオフ波長が1.53μm以下、波長1.55μmにおいて曲げ損失が10dB/m以下かつ有効コア断面積が30μm
2以上、所定の全長におけるコア部間での光のクロストークが波長1.55μmにおいて−35dB以下、という特性を実現できる。
【0074】
つぎに、コア径が約10μm、コア部のクラッド部に対する比屈折率差が約0.3%であり、単一のコア部を備えるシングルモード光ファイバ(以下、シングルコアSMFと称する)であって、クラッド部の外径が異なる5種類のシングルコアSMFを製造し、そのマイクロベンド損失特性を測定した。なお、全ての光ファイバについて、被覆は従来のシングルコアSMFと同じく、62.5μmの厚さとしている。また、マイクロベンド損失は、番手が♯1000のサンドペーパが表面に巻かれたボビンに各光ファイバを巻きつけたときの伝送損失と、ボビンから解いて巻き束の状態とした各光ファイバの伝送損失とを測定し、これらの伝送損失の差として定義した(IEC(国際電気標準会議) TR62221 Method B参照)。
【0075】
図10は、クラッド部外径が147μm、125μm、107μm、91μm、76μmのシングルコアSMFのマイクロベンド損失スペクトルを示す図である。また、
図11は、波長1550nmにおける、クラッド部外径とマイクロベンド損失との関係を示す図である。
図10、11に示すように、クラッド部外径が小さくなるに従って、マイクロベンド損失は指数関数的に増大し、特に100μm以下の場合に急激に増大している。したがって、マイクロベンド損失を抑制するためには、シングルコアSMFの場合は、クラッド部外径が100μm、すなわち外半径が50μm以上であることが好ましい。また、このシングルコアSMFと同様の特性(コア径および比屈折率差)のコア部を有するマルチコア光ファイバの場合は、クラッド部の外周に最も近接しているコア部の中心と、クラッド部の外周との最短距離が50μm以上であることが好ましい。
【0076】
図12は、
図9に示した計算例26のマルチコア光ファイバと同様の特性のコア部を有するシングルコア光ファイバについて、波長1550nmにおける、クラッド部外径とマイクロベンド損失との関係を見積もった結果を示す図である。
図12に示すように、マイクロベンド損失は、特にクラッド部外径が60μm以下の場合に急激に増大している。したがって、計算例26のマルチコア光ファイバと同様の特性のコア部を有するマルチコア光ファイバの場合は、マイクロベンド損失を抑制するためには、クラッド部の外周に最も近接しているコア部の中心と、クラッド部の外周との最短距離が30μm以上であることが好ましい。
【0077】
なお、
図13は、マルチコア光ファイバにおいて、コア部間の離隔距離と、波長1550nmにおける、全長が100kmの場合のクロストークおよび規格化コア数との関係を示す図である。各コア部のコア径は10.4μm、比屈折率差は0.31%としている。規格化コア数は、クラッド部外径が125μmのシングルコアSMFの場合に規格化コア数の値が1になるように規格化をしている。
図13に示すように、例えば、コア部間の離隔距離を40μmから45μmに拡大することにより、クロストークは−15dBから−40dBへと大幅に低減するのに対し、規格化コア数は3.98から3.74へとわずかな変化に留まる。すなわち、コア部の高密度化の効果の低下を考慮したとしても、クロストークを低減するために、離隔距離を大きくすることは好ましい。
【0078】
(実施例1、2)
本発明の実施例1、2として、実際に7つのコア部が配置されたマルチコア光ファイバを製造した。具体的には、はじめに、純石英系製ガラス管内に、直径が約10mmであり純石英に対する比屈折率差が0.34%となるようにゲルマニウムを添加したコア部と、そのコア部の周囲にコア部の4倍程度の厚さで形成したクラッド部とを有するキャピラリーを、正六角状およびこの正六角形の中心位置に配置し、このガラス管とキャピラリーとの隙間に中実の純石英系ガラス製の充填用キャピラリーを多数充填し、ガラス母材を作製した。ガラス母材の直径(すなわち純石英系製ガラス管の直径)は、実施例1、2ともに47mmとした。
【0079】
なお、充填用キャピラリーを充填する際に、特定の位置の充填用キャピラリーを、中空の純石英系ガラス製キャピラリー管に置き換えて、コア部の位置を識別するためのマーカを形成するようにした。その後、このガラス母材を線引きし、実施例1、2に係るマルチコア光ファイバを製造した。製造したマルチコア光ファイバのクラッド部の外径については、実施例1が204.0μmであり、実施例2が209.9μmであり、被覆については、実施例1、2とも厚さが62.5μm程度になるように形成した。
【0080】
図14は、実施例1に係るマルチコア光ファイバの断面を示す模式図である。
図14において、破線で囲まれた丸い領域はコア部の位置を示している。また、符号A0は、コア部を示す符号である。また、黒丸状のものはマーカである。
図14に示すように、実施例1に係るマルチコア光ファイバは、マーカによって、クラッド部の周回りの特定の方向を識別でき、各コア部の位置をより確実に識別することができる。なお、実施例2についても、実施例1とコアピッチが異なる以外は同様であり、
図14と同様の断面構造とすることができる。以下、実施例2に係るマルチコア光ファイバのコア部のうち、
図14に示した実施例1のコア部A0に相当する位置にあるコア部についても、コア部A0と呼ぶものとする。
【0081】
つぎに、実施例1、2に係るマルチコア光ファイバのコア部A0のコア径、比屈折率差、およびこれらのコア部の光学特性について説明する。
図15は、実施例1、2に係るマルチコア光ファイバのコア部A0の光学特性を示す図である。ここで、伝送損失、Aeffは波長1.55μmにおける値である。なお、コア径は全て8.3μmとし、クラッドに対するコア部の比屈折率差は0.34%とした。また、波長1.55μmにおける曲げ損失はいずれも10dB/m以下であった。
【0082】
また、
図16は、実施例1、2に係るマルチコア光ファイバのコア部A0の伝送損失スペクトルを示す図である。
図16において、線L1は実施例1のコア部A0のスペクトルを示し、線L2は実施例2のコア部A0のスペクトルを示している。線L1、L2に示すように、波長1300nm以上1700nm以下における伝送損失の顕著な増大はなかった。ただし、実施例1と実施例2を比較するとコアピッチの小さい実施例1のほうが若干伝送損失が大きくなっている。この原因はコア部間の光の干渉に伴う光パワーの減衰であると考えられ、伝送損失をより小さく抑えるためにはコアピッチは47.5μm以上であることが好ましい。
【0083】
つぎに、実施例1、2に係るマルチコア光ファイバのマイクロベンド損失特性を測定した。結果を
図17に示す。
図17において、線L3は実施例1のコア部A0のマイクロベンド損失を示し、線L4は実施例2のコア部A0のマイクロベンド損失を示している。
図17に示すように実施例1、2のいずれにおいても小さなマイクロベンド損失が得られている。なお、比較のためクラッド径が125μmのSMFのマイクロベンド損失を線L5として合わせて記載している。
【0084】
図18は実施例1、2に係るマルチコア光ファイバの波長1.55μmにおけるクロストークの条長依存性を示す図である。
図18に示すようにいずれのデータにおいてもコア部間での光のクロストークが波長1.55μmにおいて−35dB以下であり、各コア部において個別に伝送する光信号のクロストークが十分に低いものとなっている。
【0085】
なお、上記実施の形態は、コア部の数が2、7のものであるが、本発明はこれに限らず、コア部の数がたとえば3以上のマルチコア光ファイバに適用できる。この場合に、各コア部の隣接するコア部との離隔距離は、隣接するコア部の数に応じて、全長における該コア部間での光のクロストークが波長1.55μmにおいて−35dB以下となるように設定される。
【0086】
また、上記実施の形態は、全てのコア部のコア径および比屈折率差が同一の場合である。しかしながら、本発明はこれに限定されない。たとえば、各コア部のコア径または比屈折率差を互いに少しずつ異なるものにすることによって、上述した式P=fsin
2(χz)においてfが1より小さくなるため、全長における各コア部間での光のクロストークを一層小さくすることができる。あるいは、各コア部間の離隔距離を小さくすることができる。
【0087】
例えば、計算例22に示されたコア部で形成される三角格子の重心位置に、さらに計算例22のコア部からコア径を0.1μm変化させたコア部を配置させた場合、さらに配置したコア部とその周囲のコア部との間において、上述した式におけるfは1.5×10
−5となる。その結果、コア部間での光のクロストークは最大でも−48.2dBとなり、−35dBよりも小さくすることができる。そのため、コア部間の離隔距離を、100km伝送に必要な離隔距離である83.8μmの1/√3倍の48.4μmとしたとしても、光のクロストークを−35dB以下にすることが可能となる。
また、各コア部のコア径または比屈折率差を互いに少しずつ異なるものにする場合において、長手の揺らぎ等の影響により、コア径や比屈折率差が予想外に近づく場合もあることから、あらかじめ当初の設計よりも若干大きめの差を付けておくことも有効である。
なお、離隔距離が大きくなると、クロストークは減少するが、配置されるコア部の密度も低下する。コア部の密度の指標として、単位断面積あたりのコア部の数である規格化コア数を規定した場合に、離隔距離の増加に対するクロストークの減少と、規格化コア数の減少とを比較すると、クロストークの減少率のほうが大きい。すなわち、コア部の高密度化の効果の低下を考慮したとしても、クロストークを低減するために、離隔距離を大きくすることは好ましい。したがって、実際に得られるクロストーク値の調整のために、離隔距離を大きくすることも有効である。
【0088】
ところで、本発明に係るマルチコア光ファイバは、複数のコア部を備え、かつこれらを所定の離隔距離で配置するようにしているので、コア部の中には、クラッド部の外周との距離が近いものがある。このため、各コア部についてマイクロベンドの影響を考慮する必要がある。なお、マイクロベンド損失は、光ファイバに側圧が加えられたときに、この側圧を加えた物(たとえばボビン)の表面の微少な凹凸等によって光ファイバに微小な曲げが加えられることによる伝送損失の増加量として定義される。以下、マイクロベンドの影響について、参考例1、2として製造したマルチコア光ファイバをもとに説明する。
【0089】
(参考例1、2)
本発明の参考例1、2として、各コア部のコア径および比屈折率差を互いに少しずつ異なるマルチコア光ファイバを製造した。具体的には、はじめに、純石英系製ガラス管内に、直径が約7mmであり純石英に対する比屈折率差が0.3%となるようにゲルマニウムを添加したコア部と、そのコア部の周囲にコア部の4倍程度の厚さで形成したクラッド部とを有するキャピラリーを、正六角状およびこの正六角形の中心位置に配置し、このガラス管とキャピラリーとの隙間に中実の純石英系ガラス製の充填用キャピラリーを多数充填し、ガラス母材を作製した。ガラス母材の直径(すなわち純石英系製ガラス管の直径)については、参考例1は24mm、参考例2は36mmとした。
【0090】
なお、充填用キャピラリーを充填する際に、特定の位置の充填用キャピラリーを、中空の純石英系ガラス製キャピラリー管に置き換えて、コア部の位置を識別するためのマーカを形成するようにした。その後、このガラス母材を線引きし、参考例1、2に係るマルチコア光ファイバを製造した。製造したマルチコア光ファイバのクラッド部の外径については、参考例1が141μmであり、参考例2が215μmであった。また、被覆については、参考例1、2とも厚さが62.5μm程度になるように形成した。
【0091】
図19は、参考例1に係るマルチコア光ファイバの断面を示す模式図である。また、
図20は、参考例2に係るマルチコア光ファイバの断面を示す模式図である。
図19、20において、破線で囲まれた丸い領域はコア部の位置を示している。また、符号A1〜C1、A2〜C2は、コア部を示す符号である。また、黒丸状のものはマーカである。
図19、20に示すように、参考例1、2に係るマルチコア光ファイバは、マーカによって、クラッド部の周回りの特定の方向を識別でき、各コア部の位置をより確実に識別することができる。
【0092】
つぎに、参考例1、2に係るマルチコア光ファイバのコア部A1〜C1、A2〜C2のコア径、比屈折率差、およびこれらのコア部の光学特性について説明する。
図21は、参考例1、2に係るマルチコア光ファイバのコア部A1〜C1、A2〜C2のコア径、比屈折率差、およびこれらのコア部の光学特性を示す図である。なお、
図21におけるλ
ccとは、ITU−T(国際電気通信連合)G.650.1で定義するケーブルカットオフ波長を意味する。また、伝送損失、波長分散、分散スロープ、Aeff、曲げ損失は波長1.55μmにおける値である。
【0093】
また、
図22は、参考例1、2に係るマルチコア光ファイバのコア部A1〜C1、A2〜C2の伝送損失スペクトルを示す図である。
図22において、線L6〜L8はコア部A1〜C1のスペクトルを示し、線L9〜L11はコア部A2〜C2のスペクトルを示している。線L9〜L11に示すように、クラッド外径が215μmと大きい参考例2の場合は、波長1600nm以上における伝送損失の顕著な増大はなかった。
【0094】
これに対して、線L6〜L8に示すように、クラッド外径が141μmと小さい参考例1の場合は、波長1600nm以上において伝送損失の顕著な増大が観測された。とくに、よりクラッド部の外周に近いコア部B1、C1については、より顕著な伝送損失の増大が観測された。この長波長帯域における伝送損失の顕著な増大は、コア部とクラッド部の外周との距離が近接したことによって、伝送損失の成分であるマイクロベンド損失が増大したためと考えられる。
【0095】
また、
図23は、参考例3として製造したマルチコア光ファイバの断面を示す模式図である。
図23において、破線で囲まれた丸い領域はコア部の位置を示している。また、符号A3〜C3は、コア部を示す符号である。また、黒丸状のものはマーカである。各コア部の特性については、符号A3のコア径が10.6μm、符号B3のコア径が10.4μm、符号C3のコア径が10.2μmであり、比屈折率差はいずれも0.31%としている。また、コア部間の離隔距離は46μmである。
図24は、参考例1、2に係るマルチコア光ファイバのコア部A3〜C3のコア径、比屈折率差、およびこれらのコア部の光学特性を示す図である。なお、
図24における伝送損失、波長分散、分散スロープ、Aeff、曲げ損失は波長1.55μmにおける値である。
【0096】
また、
図25は、参考例3に係るマルチコア光ファイバのコア部A3〜C3の伝送損失スペクトルおよびシングルコアSMFの伝送損失スペクトルを示す図である。なお、シングルコアSMFのコア部のコア径は10.4μm、比屈折率差は0.31%である。
図25に示すように、マルチコア光ファイバの各コア部の伝送損失スペクトルは、シングルコアSMFの伝送損失スペクトルと略同様の特性となっている。
【0097】
また、
図26は、参考例3に係るマルチコア光ファイバのコア部B3またはコア部C3と、これらのコア部の周囲のコア部とのクロストークの、マルチコア光ファイバの長さ依存性を示す図である。なお、波長は1550nmである。また、
図26中の実線は最小自乗法による近似直線である。
図26に示すように、参考例3に係るマルチコア光ファイバは、全長が3.5kmの場合に−38dBのクロストークが得られており、全長がさらに短い場合にはさらに低いクロストークが得られている。