(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5684752
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】ペリクル収納容器
(51)【国際特許分類】
G03F 1/66 20120101AFI20150226BHJP
B65D 85/86 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
G03F1/66
B65D85/38 R
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-75891(P2012-75891)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-205690(P2013-205690A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088306
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮 良雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126343
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 浩之
(72)【発明者】
【氏名】関原 一敏
【審査官】
新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−267179(JP,A)
【文献】
特開2007−274794(JP,A)
【文献】
特開2007−025183(JP,A)
【文献】
特開2008−280066(JP,A)
【文献】
特開2005−049765(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0213797(US,A1)
【文献】
特開2008−083618(JP,A)
【文献】
特開2005−170507(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0103669(US,A1)
【文献】
特開2011−203309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/66
B65D 85/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリクルを載置する四角形の樹脂製の容器本体と、その周縁部で嵌め合い係止して前記ペリクルを覆う樹脂製の蓋体とを具備し、
前記容器本体の外周縁に沿って形成された凸状リブの突出面が前記ペリクルの載置面に形成されているペリクル収納容器であって、
前記容器本体の外側底面で且つその外周縁と前記凸状リブとの間に取り付けられた補強体が、前記外周縁の各辺に沿って固着された直棒状体と前記容器本体の角部に配置されたL字状体とから構成され、前記枠状体の大きさが調整可能となるように、前記直棒状体とL字状体との取付位置が変更可能であることを特徴とするペリクル収納容器。
【請求項2】
前記L字状体は、その角部が平面又は曲面となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のペリクル収納容器。
【請求項3】
前記ペリクルが、少なくとも一辺の長さが500mm以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のペリクル収納容器。
【請求項4】
前記補強体の底面と前記容器本体の外側底面とが面一であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のペリクル収納容器。
【請求項5】
前記凸状リブで囲まれた容器本体の底面領域の各角部に、前記角部を形成する二本の凸状リブに両端部が接続される角部リブが形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のペリクル収納容器。
【請求項6】
前記容器本体の互いに対向する辺に取り付けられた前記補強体に、前記ペリクル収納容器の搬送に用いられる把持手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のペリクル収納容器。
【請求項7】
前記容器本体の外側底面の全体を覆う板体が装着されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のペリクル収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペリクル収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIや超LSI等の半導体製造或は液晶ディスプレイ等の製造において、半導体ウエハー或いは液晶用原板に光を照射してパターンを作製するリソグラフィーの作業が行われる。この際に、フォトマスク或いはレチクルにゴミが付着していると、転写したパターンが変形したり、エッジがガサツいたものとなる他、下地が黒く汚れたりする等の現象が発生することがある。ゴミが光を吸収したり光を曲げてしまうからである。この作業は通常クリーンルームで行われているが、フォトマスクを常に清浄に保つことは難しく、透明なペリクル膜がペリクルフレームに貼着されたペリクルが使用されている。例えば、リソグラフィーの際に、ペリクルをフォトマスク上に載置して、フォトマスクへの異物付着を防止しつつ、焦点をフォトマスクのパターン上に合わせて露光することにより、ペリクル膜上に付着した異物に影響されることなく転写できる。
【0003】
一方、ペリクルは、それ自体に異物が付着すると、フォトマスクへの異物付着にも繋がり、高い清浄性が求められる。ペリクルの保管や輸送の際には、ペリクル収納容器が用いられる。ペリクル収納容器は、一般的に射出成型又は真空成形で成型した樹脂製のものが使用されている。樹脂製のペリクル収納容器は、表面が平滑で且つ発塵のおそれが少ないからである。
【0004】
ペリクル収納容器は、ペリクルを収容した内部を清浄状態に保持すべく、運搬等の際に外力が加わっても変形し難い剛性が要求される。しかし、樹脂製のペリクル収納容器では、剛性に限界があることから、下記特許文献1,2に記載されているように、容器本体の外面にアルミニウム合金の棒や角パイプ等の補強体を「日」又は「目」状に取り付けて剛性を確保することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−170507号公報
【特許文献2】特許第4391435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載されているように、樹脂製のペリクル収納容器に十分な剛性を付与すべく、容器本体の外面に多数の補強体を取り付けると、ペリクル収納容器の重量及び製造コストは増加する。このため、ペリクル収納容器に取り付ける補強体は必要最小限で十分な補強効果を得ることが求められている。
【0007】
樹脂製のペリクル収納容器は、上述したように射出成型又は真空成形で成型するため、成型後に成型応力が徐々に開放されて形状、寸法が経時変化する。経時変化は、ペリクル収納容器が大型になるほど大きくなる。経時変化したペリクル収納容器の容器本体に補強体を取り付ける際に、予め容器本体に形成しておいた取付孔に位置ずれが生じ、補強体の取り付けができなくなる事態も生じる。
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、経時変化した樹脂製の容器本体に必要最小限の補強体を簡単に取り付けることができ、軽量で且つ高剛性のペリクル収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載されたペリクル収納容器は、ペリクルを載置する四角形の樹脂製の容器本体と、その周縁部で嵌め合い係止して前記ペリクルを覆う樹脂製の蓋体とを具備し、前記容器本体の外周縁に沿って形成された凸状リブの突出面が前記ペリクルの載置面に形成されているペリクル収納容器であって、前記容器本体の外側底面で且つその外周縁と前記凸状リブとの間に取り付けられた補強体が、前記外周縁の各辺に沿って固着された直棒状体
と前記容器本体の角部に配置されたL字状体とから構成され、前記枠状体の大きさが調整可能となるように、前記直棒状体とL字状体との取付位置が変更可能であることを特徴とする。
【0011】
請求項
2に記載されたペリクル収納容器は、請求項
1に記載されているものであって、前記L字状体は、その角部が平面又は曲面となるように形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項
3に記載されたペリクル収納容器は、請求項1
又は請求項2に記載されているものであって、前記ペリクルが、少なくとも一辺の長さが500mm以上であることを特徴とする。
【0013】
請求項
4に記載されたペリクル収納容器は、請求項1〜
3のいずれか一項に記載されているものであって、前記補強体の底面と前記容器本体の外側底面とが面一であることを特徴とする。
【0014】
請求項
5に記載されたペリクル収納容器は、請求項1〜
4のいずれか一項に記載されているものであって、前記凸状リブで囲まれた容器本体の底面領域の各角部に、前記角部を形成する二本の凸状リブに両端部が接続される角部リブが形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項
6に記載されたペリクル収納容器は、請求項1〜
5のいずれか一項に記載されているものであって、前記容器本体の互いに対向する辺に取り付けられた前記補強体に、前記ペリクル収納容器の搬送に用いられる把持手段が設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項
7に記載されたペリクル収納容器は、請求項1〜
6のいずれか一項に記載されているものであって、前記容器本体の外側底面の全体を覆う板体が装着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、寸法等に経時変化が発生した樹脂製のペリクル収納容器に、必要最小限の補強体を簡単に取り付けることができ、軽量で且つ高剛性のペリクル収納容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るペリクル収納容器の一例を示す縦断面図及び部分拡大断面図である。
【
図3】
図2に示す容器本体14の矢印A−A面での断面図である。
【
図4】
図1に示す容器本体14の補強体として用いる一例を示す正面図である。
【
図5】
図4に示す補強体の角部を形成するL字状体26c、26dの斜視図である。
【
図6】容器本体14の補強体として用いる他の例を示す正面図及びその拡大図である。
【
図7】本発明に係るペリクル収納容器の他の例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るペリクル収納容器の一例を
図1に示す。
図1は、ペリクル収納容器10の縦断面図であり、ペリクル12が載置された長方形の樹脂製の容器本体14と樹脂製の蓋体16とは、周縁部で嵌め合い係止している。容器本体14と蓋体16とは、アクリル樹脂(PMMA樹脂)、アクリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネイト樹脂(PC樹脂)等の熱可塑性樹脂を用いて射出成型又は真空成形によって製造できる。特に、辺長が500mmを超える大型のペリクル12用の容器本体14及び蓋体16は真空成形で製造することが好ましい。容器本体14は異物検査のために黒色とすることが好ましく、蓋体16は内部を視認できるように透明又は半透明であることが好ましい。容器本体14及び蓋体16には、異物付着防止の観点から、帯電防止処理が施されていることが好ましい。
【0020】
容器本体14に載置されて蓋体16で覆われているペリクル12は、
図1に示すペリクル収納容器10の部分拡大図に示すように、アルミニウム、ステンレス、ポリエチレン等から成るペリクルフレーム12aの上端面に、ニトロセルロース、酢酸セルロース或いはフッ素樹脂等の透明なペリクル膜12bが貼り付け又は接着されている。更に、ペリクルフレーム12aの下端面には、フォトマスクに装着するためのポリブデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂等から成る粘着層と、粘着層を保護する離型層(セパレータ)とから成る複合層12cが設けられている。
【0021】
ペリクル12は、容器本体14の外周縁の近傍であって、外周縁に沿って形成された凸状リブ18の突出面18aに載置されている。凸状リブ18及び突出面18aは、容器本体14の平面図である
図2に示すように長方形である。突出面18aは、長辺方向の幅が短辺方向の幅よりも広く形成されている。長辺方向の突出面18aには、
図2に示す矢印A−A面での断面図である
図3に示すように複数の保持部材24が設けられている。保持部材24は、突出面18aに載置されたペリクル12を着脱自在に保持するものであり、突出面18aに載置されたペリクルフレーム12aの側面に形成された凹部(図示せず)に挿入されるピン24aと、ピン24aを挿脱自在に挿入されるピン支持体24bとから構成される。ピン支持体24bによれば、凸状リブ18の突出面18aに載置されたペリクル12は、保持部材24のピン24aをペリクルフレーム12aの側面の凹部に挿入することにより所定位置に固定でき、他方、ピン24aをピン支持体24bから引く抜くことによりペリクル12を解放できる。
【0022】
容器本体14の凸状リブ18と外周縁との間には、
図1に示すように、容器本体14の外周部が折り返されて形成された凹部22が凸状リブ18に沿って設けられている。折り返しによって、容器本体14の周縁部の剛性、特に容器本体14の長辺方向及び短辺方向への曲げ変形に対する剛性を向上できる。更に、凹部22に蓋体16の外周縁が嵌め合い係止されたとき、蓋体16との接合強度が向上され、ペリクル収納容器10の全体の強度を向上できる。
【0023】
容器本体14の凸状リブ18で囲まれた底面領域には、
図1〜
図3に示すように、中央部にひし形リブ20aが形成されているとともに、直交する二本の凸状リブ18,18の角部に、両端部が凸状リブ18,18に接続される角部リブ20bが形成されている。ひし形リブ20a及び角部リブ20bは、容器本体14の対角線Xを横切っていることから、容器本体14の捩れ変形を効果的に防止できる。ひし形リブ20aと角部リブ20bとは、互いに交差していないことから、ひし形リブ20a及び角部リブ20bの側面が切断されず且つ接続部が変形の起点とならず、大きな補強効果を得ることができる。
【0024】
このようにリブ等で補強された容器本体14の外側底面に、補強体として
図4に示す長方形の枠状体26が取り付けられており、リブ等と相俟って容器本体14を補強して剛性を高めている。枠状体26は、従来の「日」又は「目」状の補強体に比較して軽量である。枠状体26の長辺を形成する直棒状体26aと短辺を形成する直棒状体26bとが板状のL字状体26c,26dによって連結されている。直棒状体26a,26bは、アルミニウム合金等の腐食し難く軽量で高剛性の材料によって形成され、横断面形状が四角形の中実体である。L字状体26c,26dは、鉄鋼製やステンレス鋼製のものが好ましく用いることができ、厚肉のものが採用可能であればアルミニウム合金製のものを用いることができる。L字状体26cは枠状体26の外側に配設され、L字状体26dは枠状体26の内側に配設される。直棒状体26a,26bとL字状体26c,26dとは、締結ボルト30,30によって締結されている。L字状体26c,26dには、
図5に示すように長孔32,32が形成されていることから、L字状体26c,26dと直棒状体26a,26bとの取付位置を調整できる。
【0025】
枠状体26の容器本体14への取り付けは、容器本体14の凹部22の外側底面に当接した直棒状体26a,26bのネジ穴34,34に、
図1及び
図3に示すように、凹部22の内側から挿入された取付ボルト28をねじ込むことによってなされる。取付ボルト28は、強度の観点から金属製のものが好ましく、締結面にフランジを設けたものが特に好ましい。取付ボルト28の容器本体14内への露出部分を樹脂で被覆し、且つ取付ボルト28の容器本体14との境界部分を有機溶剤等で溶解処理して、隙間からの発塵や緩みを防止することが好ましい。
【0026】
枠状体26の角部を構成するL字状体26c,26dには、容器本体14への取付手段は設けられておらず、締結ボルト30,30を緩めることによって、L字状体26c,26dを長穴32,32に沿って位置調整できる。このため、容器本体14の寸法が製造時のバラツキや経時変化によって変化していても、締結ボルト30,30を緩めてL字状体26c,26dを移動して直棒状体26a,26bとの位置関係を簡単に調整でき、枠状体26を変形した容器本体14の凹部22の外側底面に取り付けることができる。このように容器本体14の凹部22の底面側に取り付けられた枠状体26は、直棒状体26a,26bの底面が、
図1及び
図3に示すように容器本体14の外側底面と面一であり、ペリクル収納容器の運搬等の際に、枠状体26が他の物品等と接触しても、他の物品等を損傷させることがなく、且つ枠状体26が削れて発塵することも防止できる。
【0027】
枠状体26の短辺を形成し互いに対向する直棒状体26b,26bには、
図4に示すように把持手段としてのコ字状の取手37,37が取り付けられている。取手37,37は、ステンレス製の直棒状体26b,26bにボルト(図示せず)で締結されている。ペリクル収納容器の搬送を、取手37,37を把持して行うことにより、容器本体14及び/又は蓋体16を把持することによる変形等の発生を抑制でき、収容したペリクル12への異物付着の可能性を大幅に減少できる。取手37,37としては、板状の突起物であってもよく、また、枠状体26の他の場所に取り付けてもよい。
【0028】
枠状体26の角部を形成するL字状体26c,26dは、その角部が平面に切り落とされた面取り、又は曲面に加工されていることが好ましい。例えば、
図5に示すようにL字状体26c,26dの角部を平面36,36に形成することによって、容器本体14が捩れ方向に変形する際に、平面36,36が抵抗面となるから、面36は高さと長さとを可及的に長くするように形成することが好ましい。具体的には、高さ20〜50mmで長さ40〜100mmの面36を形成することが好ましい。
【0029】
図4に示す補強体としての枠状体26は、一辺が500mm以上の大型のペリクル12を載置する大型の樹脂製の容器本体14に寸法等に経時変化が生じても、容器本体14に取り付けることができる。枠状体26のL字状体26c,26dを移動させて直棒状体26a,26bとの位置関係を調整し、枠状体26の大きさを調整できるからである。しかも、補強体としての枠状体26は、従来の「日」又は「目」状の補強体に比較して軽量であり、枠状体26が取り付けられた容器本体14を具備するペリクル収容容器10は軽量で且つ高剛性のものとなる。
【0030】
また、別の実施態様として、容器本体14の背面図である
図6に示すように、容器本体14の各角部に互いに独立して固着された板状のL字状体38を補強体として用いることができる。L字状体38も、凹部22の底面側に、凹部22の内側から取付ボルト28によって固着されている。L字状体38で各角部が補強された容器本体14は捩れ方向の変形に対して十分に対抗できる。特に、
図6(b)に示すL字状体38のように、角部を平面38aに形成することにより、容器本体14を捩れ方向に変形にする応力に対して平面38aが抵抗面となり好ましい。また、L字状体38は、他のL字状体38と独立して容器本体14に取り付けられるから、径時変化等による容器本体14の寸法ズレが生じていても、角部に簡単に取り付けることができる。更に、各L字状体38には、コ字状の取手37が設けられており、ペリクル収納容器を搬送等する際に、容器本体14に偏荷重を加えることなく取り扱うことができる。
【0031】
図1〜
図6に示す容器本体14の外側底面には、凸状リブ18、ひし形リブ20a、角部リブ20b等による凹部が開口しており、ペリクル収納容器10のローラ搬送は採用できなかった。凹部とローラとの噛み合いによる衝撃により容器本体14が変形するおそれがあるからである。
図7に示すように容器本体14の外側底面の全面に板体40を枠状体26又はL字状体38に取り付けることにより、容器本体14の外側底面を平滑面にでき、ペリクル収納容器10のローラ搬送を採用できる。更に、容器本体14の外側底面を平滑面とすることによって、ペリクル収納容器10を傾斜する際に、真空吸着を利用できる。板体40は、容器本体10の補強材でなくてよく、厚さ2〜8mmの樹脂製のものを用いることができる。樹脂としては、アクリル樹脂(PMMA樹脂)、アクリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネイト樹脂(PC樹脂)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)を用いることとができる。かかる板体40の枠状体26又はL字状体38への取り付けは、ボルト、両面テープ、接着剤を用いて行うことができる。また、容器本体14の中央部及びその近傍に撓みや浮等が存在する場合、その部分と板体40とを両面テープや接着剤を用いて接合することが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
帯電防止処理が施されたアクリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)製の厚さ5mmのシート材を用い、真空成形法により
図1に示す長方形状の容器本体14及びこれと外周縁で嵌め合い係止する蓋体16を製作した。シート材としては、容器本体14用として黒色のものを用い、蓋体16用として透明のものを用いた。容器本体14は、その外周縁の近傍であって、外周縁に沿って長方形の凸状リブ18が形成されている。この凸状リブ18の突出面18aはペリクル12の搭載面である。突出面18aの長辺方向の幅は短辺方向の幅よりも広く形成されており、ペリクル12の保持部材24が設けられている。更に、凸状リブ18と外周縁との間には、容器本体14の外周部が折り返されて形成された凹部22が凸状リブ18に沿って設けられている。凸状リブ18で囲まれた底面領域には、中央部にひし形リブ20aが形成されている共に、直交する二本の凸状リブ18,18の角部に、両端部が凸状リブ18,18に接続される角部リブ20bが形成されている。ひし形リブ20a及び角部リブ20bは、容器本体14の対角線Xを横切っている。容器本体14の凹部22に蓋体16の外周縁を嵌め合い係止したペリクル収納容器10は、外形1350mm×1550mm、高さ120mmのものとなった。
【0034】
製作した容器本体14の補強体となる
図4に示す枠状体26を形成する直棒状体26a,26bとL字状体26c,26dとを作製した。直棒状体26a,26bはアルミニウム合金(A6061)製の平角棒(断面10mm×30mm)を用い、ネジ孔34及びL字状体26c,26dを取り付けるネジ孔(直棒状体26a,26bの側面)を機械加工により形成した。更に、短辺側の直棒状体26bの外側側面には、
ステンレス鋼(SUS304)製のコ字状の取手37を取り付けた。L字状体26c,26dは、ステンレス鋼(SUS304)の冷間圧延板(厚さ3mm)を曲げ加工し、角部を平面36に形成すると共に、ネジ孔として長孔32を形成した。更に、直棒状体26a,26bを容器本体14に取り付ける取付ボルト28としては、ステンレス鋼(SUS304)製の六角孔付きボルトをABS樹脂中にインサート成形して製作したフランジ付き六角ボルトを用いた。
【0035】
作製した直棒状体26a,26b及びL字状体26c,26dを容器本体14に取り付ける際には、容器本体14の凹部22の直線状部分の外側底面に、ネジ孔34と凹部22の底部のネジ孔とが一致するように当接した直棒状体26a,26bを、凹部22の内側から取付ボルト28を挿入して取り付けた。取り付け後、容器本体14と接触する取付ボルト28のフランジ外縁部を溶剤(MEK)により隙間がなくなるよう溶解処理を施した。次いで、
図5に示すL字状体26c,26dを、長孔32と直棒状体26a,26bの側面に形成したネジ孔とが一致するように移動調整し、直棒状体26a,26bに締結ボルト30で接続して枠状体26とした。容器本体14に取り付けられた枠状体26の底面は、容器本体14の外側底面と面一であった。尚、作製した容器本体14には、設計よりも長辺方向で+5mm、短辺方向で+3mmの寸法ズレが生じていたが、問題なく枠状体26の大きさを調整して容器本体14に取り付けることができた。
【0036】
枠状体26で補強された容器本体14及び蓋体16をClass10のクリーンルームに搬入し、界面活性剤と純水で良く洗浄した後、完全に乾燥させた。次いで、容器本体14の凸状リブ18の突出面18aに、予め暗室内で集光ランプによる異物検査を施したペリクル12を載置して、保持部材24によって固定した。ペリクル12は、外寸1392mm×1146mm、内寸1370mm×1124mm、高さ5mmであって、アルミニウム合金(A5052)製のペリクルフレーム12a(厚さ3.8mm、表面黒色アルマイト処理)に、厚さ約3μmのフッ素樹脂から成るペリクル膜12bをマスク粘着剤及びペリクル膜接着剤であるシリコーン樹脂で接着したものである。このようにペリクル12を載置し固定した容器本体14に、蓋体16を注意深く嵌合し密閉して、ペリクル12が収容されたペリクル収納容器10を得た。
【0037】
更に、ペリクル収納容器10の周縁部を幅40mmのポリ塩化ビニル(PVC)製粘着テープにて貼り付け固定し、内部が清浄にクリーニングされた帯電防止処理ポリエチレン(PE)製袋にて2重に梱包し、内部にクッション材を配した強化ダンボール製梱包箱に収納した。このように梱包した状態で、群馬から福岡まで(群馬県⇔東京はトラック、東京⇔福岡間は航空機)を往復させる輸送テストを行った。輸送テスト後に、梱包を解いて取り出されたペリクル収納容器10をクリーンルームに搬入し、内部の確認を行った結果、ペリクル12に異物の付着は全く見られず、極めて清浄な状態が維持されていた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係るペリクル収納容器は、半導体装置用のペリクルの収納容器及び保管容器として用いることができ、半導体装置用のペリクルよりも大型の液晶用のペリクルの収納容器及び保管容器として用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
10はペリクル収納容器、12はペリクル、12aはペリクルフレーム、12bはペリクル膜、12cは複合層、14は容器本体、16は蓋体、18は凸状リブ、18aは突出面、20aはひし形リブ、20bは角部リブ、22は凹部、24は保持部材、24aはピン、24bはピン支持体、26は枠状体、26a,26bは直棒状体、26c,26d,38はL字状体、28は取付ボルト、30は締結ボルト、32は長孔、34はネジ孔、36,38aは平面、37は取手、40は板体、Xは対角線である。