【実施例】
【0028】
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。
<試験サンプルの合成>
(試験サンプル1−A)
温度計、窒素導入管、減圧用の吸入管及び攪拌機を付した容量1000mlの4つ口フラスコに、チオジプロピオン酸178g(1モル)及び分岐トリデシルアルコール(商品名:トリデカノール、販売元:協和発酵ケミカル株式会社)430g(2.15モル)を入れ、更に触媒として硫酸を0.6g系内に添加した。窒素置換後、攪拌しながら系内の圧力を1.4×10
4Paに減圧し、系内の温度を150℃まで昇温して5時間減圧反応を行った。その後更に系内の圧力を3.0×10
3Paまで減圧して150℃で3時間反応を行ってエステル化反応を完結させた。その後2質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを系内に添加し、30℃で30分間攪拌後、静置して油水分離して触媒を除去した。このアルカリ水洗工程を3回繰り返し、系内に残存する酸成分を全て除去した後、純水300gで同様に水洗した。水洗後、系を100℃に昇温し、3.0×10
3Paで1時間脱水処理して試験サンプル1−Aを得た。試験サンプル1−Aの酸価は0であった。
【0029】
(試験サンプル1−B)
温度計、窒素導入管、減圧用の吸入管及び攪拌機を付した容量1000mlの4つ口フラスコに、チオジプロピオン酸178g(1モル)及び分岐トリデシルアルコール(商品名:トリデカノール、販売元:協和発酵ケミカル株式会社)200g(1モル)を入れ、更に触媒として硫酸を0.5g系内に添加した。窒素置換後、攪拌しながら系内の圧力を1.4×10
4Paに減圧し、系内の温度を150℃まで昇温して5時間減圧反応を行った。その後更に系内の圧力を3.0×10
3Paまで減圧して150℃で3時間反応を行ってエステル化反応を完結させた。その後2質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを系内に添加し、30℃で30分間攪拌後、静置して油水分離して触媒を除去し、更に純水を300g加え同様に水洗を行った。水洗後、100℃、3.0×10
3Paで1時間脱水処理して試験サンプル1−Bを得た。試験サンプル1−Bの酸価は156mgKOH/gであった。
【0030】
(その他のサンプル)
上記の試験サンプル1−A及び試験サンプル1−Bと同様の製造方法で、アルコールの種類を変えて合成を行い、試験サンプル2−A、試験サンプル2−B、試験サンプル3−A及び試験サンプル3−Bを合成した。各試験サンプルの構造は下記に記してある。なお、使用した分岐オクタデシルアルコールはファインオキソコール180(商品名)(販売元:日産化学工業株式会社)であった。
【0031】
試験サンプル1−A:チオジプロピオン酸ジ分岐トリデシルエステル(一般式(1)においてR
1及びR
4はいずれも分岐トリデシル基、R
2及びR
3はいずれもエチレン基)、酸価0
試験サンプル1−B:チオジプロピオン酸モノ分岐トリデシルエステル(一般式(2)においてR
5は分岐トリデシル基、R
6及びR
7はいずれもエチレン基)、酸価156mgKOH/g
試験サンプル2−A:チオジプロピオン酸ジ分岐オクタデシルエステル(一般式(1)においてR
1及びR
4はいずれも分岐オクタデシル基、R
2及びR
3はいずれもエチレン基)、酸価0
試験サンプル2−B:チオジプロピオン酸モノ分岐オクタデシルエステル(一般式(2)においてR
5は分岐オクタデシル基、R
6及びR
7はいずれもエチレン基)、酸価124mgKOH/g
試験サンプル3−A:チオジプロピオン酸ジベンジルエステル(一般式(1)においてR
1及びR
4はいずれもベンジル基、R
2及びR
3はいずれもエチレン基)、酸価0
試験サンプル3−B:チオジプロピオン酸モノベンジルエステル(一般式(2)においてR
5はベンジル基、R
6及びR
7はいずれもエチレン基)、酸価193mgKOH/g
【0032】
(試験サンプル4)
温度計、窒素導入管、減圧用の吸入管及び攪拌機を付した容量1000mlの4つ口フラスコに、チオジプロピオン酸178g(1モル)及び分岐トリデシルアルコール(商品名:トリデカノール、販売元:協和発酵ケミカル株式会社)400g(2モル)を入れ、更に触媒として硫酸を0.6g系内に添加した。窒素置換後、攪拌しながら系内の圧力を1.4×10
4Paに減圧し、系内の温度を150℃まで昇温して5時間減圧反応を行った。その後2質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを系内に添加し、30℃で30分間攪拌後、静置して油水分離して触媒を除去し、更に100℃、3.0×10
3Paで1時間脱水処理して試験サンプル4を得た。試験サンプル4の酸価は0.1mgKOH/gであった。
【0033】
<試験油の作成>
上記の試験サンプルを使って、酸価を調整したサンプルを作成した後、基油に溶解させて試験油を作成した。なお、使用した基油の性状は、動粘度4.24mm
2/秒(100℃)、19.65mm
2/秒(40℃)、粘度指数=126の鉱物油系潤滑基油である。
試験油1:試験サンプル1−A(酸価0)を0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油2:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価0.005mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油3:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価0.01mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油4:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価0.05mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油5:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価0.1mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油6:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価0.2mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油7:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価0.3mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油8:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価0.4mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油9:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価0.5mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油10:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価1mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油11:試験サンプル2−Aと試験サンプル2−Bを配合して、酸価0.1mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油12:試験サンプル3−Aと試験サンプル3−Bを配合して、酸価0.1mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油13:試験サンプル4(酸価0.1mgKOH/g)を0.5質量%になるように基油に溶解させた。
なお、試験油1、2、9、10および14が比較品である。
【0034】
<摩耗試験>
バウデンレーベン試験機HHS2000(新東科学株式会社製)を用いて摩擦特性試験を行なった。SUJ2製試験球とSUJ2製試験板をバウデンレーベン試験機の所定の位置にセットし、表1に記載した各試験油を2つの試験片の間に50μl流し込んだ。その後荷重1000g、摺動速度20mm/sの条件で試験を開始し、摺動距離40m時のSUJ2製試験球の摩耗痕径(磨耗痕の直径)を測定した。摩擦痕系が小さいもの程、摩耗防止効果が大きいことを示す。結果を表1に示す。
【0035】
<保存安定性試験>
試験油1〜13に使用した試験サンプル(試験油2〜12は試験サンプルの混合品、試験油1は試験サンプル1−A、試験油13は試験サンプル4)100gを150mlの蓋付きのガラス管に入れて密封し、50℃の恒温槽に1ヶ月間放置し、1ヵ月後の試験サンプルの酸価を測定した。結果を表1に示す。なお表1における試験油1〜13は、それぞれの試験油に使用した試験サンプルの意味である。
【0036】
<酸化安定性試験>
JIS K−2514の方法に準拠して行った。具体的には、圧力計を備えた容量100mlの耐圧ボンベの中に、試験油50g、水5g、及び触媒として直径1.6mmの銅線3mをコンパクトに丸めたものを入れ、密封した後ボンベ内の圧力が620kPaになるまで酸素を圧入する。このボンベを150℃の恒温槽内で、30℃の角度を保持したまま毎分100回転で回転させる。最初、ボンベ内の圧力は温度がかかることで増加していくが、酸化劣化が始まると酸素を吸収してボンベ内の圧力は低下する。圧力を経時で測定し、圧力が最高になったときから175kPaに低下するまでの時間を求め、これを酸化劣化の誘導期間とした。誘導期間が長いほど酸化防止性能が良好な試験油である。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
以上の摩耗試験及び保存安定性試験の結果をグラフにした。
図1が摩耗試験結果であり、
図2が保存安定性試験結果(上昇値)である。
磨耗試験の結果より、酸価0及び酸価0.005mgKOH/gの試験油1及び2は、添加剤未添加の基油(試験油14)より耐摩耗性が悪化しているが、酸価が0.01以上の試験油は、明らかに耐摩耗性能が向上していることがわかる。一方、保存安定性試験においては、酸価が高くなるほど保存安定性が悪くなるが、保存試験前の試験サンプルの酸価が0.4mgKOH/gを超えたところで保存安定性が急激に悪化している。また、酸価安定性については、全ての試験サンプルで変化はなかった。