(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記突起の高さHと該突起相互間に形成される凹部相互の間隔Wとの比のH/Wが1/5から1/2の範囲であることを特徴とする請求項1または3に記載の物品の表面構造。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態に係わる内装品の一部を示す断面図、(b)は(a)の内装品表面の凸曲面部を拡大して示す断面図である。
【
図2】
図1(b)の内装品表面に設けてある突起の高さと突起相互の間隔との関係に基づく「しっとり感」の評価結果を示す説明図である。
【
図3】
図4の相関データを計測するために実施した実験説明図である。
【
図5】内装品を成形するための型の製造工程図で、(a)は内装品の表面形状と同形状の表面形状を備える木型を製作している状態、(b)は(a)の木型表面に微細な粒子を備えた表皮を貼付している状態、(c)は(b)の木型と凹形状の型との間の隙間にシリコンを充填している状態、をそれぞれ示す。
【
図6】
図5に続く型の製造工程図で、(a)は
図5(c)の充填したシリコン凝固後に木型を凹形状の型から外した状態、(b)は(a)の凹形状の型の表面に導電性の材料を流し入れて基本型を作製している状態、(c)は(b)で作製した基本型を脱型している状態である。
【
図7】
図6に続く型の製造工程図で、(a)は電鋳槽内にて
図6(c)で脱型した基本型の表面にニッケル層を積層させている状態、(b)は(a)で積層したニッケル層を電鋳型として基本型から外した状態、をそれぞれ示す。
【
図8】
図5〜
図7で製造した電鋳型を利用して内装品を製造する製造工程図で、(a)は電鋳型の表面に配管をセットした状態、(b)は(a)の電鋳型の下部に樹脂を収容したパウダボックスをセットした状態、(c)は(b)の電鋳型をパウダボックスとともに回転させている状態、をそれぞれ示す。
【
図9】
図8に続く内装品の製造工程図で、(a)は
図8(c)の作業により樹脂が溶融して電鋳型の表面に表皮が形成された状態、(b)は(a)のパウダボックスを電鋳型から外した状態、(c)は(b)の表皮を電鋳型から取り出して内装品とした状態、をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0010】
図1に示す物品としての内装品1は、例えば車両である自動車のコンソールボックスの表面やドアの内装面あるいはインストルメントパネルの表面に使用する。
【0011】
このような内装品1は、材質がPVCもしくはTPU,TPOなどの樹脂であり、
図1(a)に示すように表面に凸曲面2を複数有し、この各凸曲面2の表面に、
図1(b)に示すように微細な突起3を複数均一に形成してある。そして、この突起3は、以下に示す(1)〜(3)の条件を満たしている。
【0012】
(1) 突起3の高さHが5μm以上、32μm以下
(2) 突起3の高さHと突起3相互の間隔Pとの比H/Pが1/5から1/2の範囲、または突起3の高さHと突起3相互間に形成される凹部5相互の間隔Wとの比H/Wが1/5から1/2の範囲
(3) 突起3相互の間隔Pと凹部5相互の間隔Wとが同一(P=W)
【0013】
なお、上記した突起3は、球体をほぼ半分にした半球状を呈している。
【0014】
このような突起3を内装品1の表面に複数均一に形成することで、人が触ったときの触感が、しっとりとしたもの、つまり、つるつるとしたプラスチックや金属のような触感ではなく、またシボ模様のようなざらざらとした触感でもなく、多少の水分を含んでいるようで適度な摩擦感が得られるようなものである。
【0015】
図2は、突起3相互の間隔Pと突起3の高さHとの相互関係に対する「しっとり感」を、複数の評価者によって1〜5の5段階で評価した結果を示している。ここで、
図2中の二点鎖線で囲まれた上下に長い長方形の領域A内の5個のサンプルS1〜S5が、評価3.3以上で、「しっとり感」があると評価したものである。
【0016】
上記した領域A内の5個のサンプルS1〜S5のうち、図中で左下のサンプルS1は、突起高さH=6μm、突起相互の間隔P=30μm、つまりH/P=1/5である。また、領域A内の5個のサンプルS1〜S5のうち、図中で右上のサンプルS5は、突起高さH=32μm、突起相互の間隔P=64μm、つまりH/P=1/2である。
【0017】
したがって、H/P=1/5〜1/2の範囲、もしくは、H/W=1/5〜1/2の範囲で、「しっとり感」が得られることになる。
【0018】
また、上記した「しっとり感」が得られる突起3の高さHとしては、
図2中の領域Aを勘案して5μm以上、32μm以下が望ましい。
【0019】
したがって、本実施形態では、(1)突起高さHが5μm以上、32μm以下、(2)突起相互の間隔Pと突起相互間に形成される凹部相互の間隔Wとの少なくとも一方が、突起の高さHよりも大きい、とすることで、「しっとり感」を得ることができる。
【0020】
このようなしっとり感が得られる触感は、
図3のように力センサ6上に配置した製品サンプル7の表面を人が指9でなでたときの摩擦係数μが、一般的に0.55付近と言われている。
図4は突起高さHに対する摩擦係数μの関係を示しており、このような摩擦係数μ=0.55付近(
図4中での斜線部Bに相当)となる値に、上記した突起高さH=5μm〜32μmがほぼ対応している。
【0021】
以上のように、本実施形態における内装品1は、前述した条件(1)〜(3)を満たすことで、表面に極めて微細な突起3を複数均一に設けていることになり、これによりしっとりとした触感を得ることができる。
【0022】
また、本実施形態では、突起3相互の間隔Pが、突起3の高さHよりも大きい、としている。このため、突起3は高さHが比較的低いことになって、しっとりとした触感を持たせることができる。
【0023】
また、本実施形態では、突起3相互間に形成される凹部5相互の間隔Wが、突起3の高さHよりも大きい、としている。このため、突起3は高さHが比較的低いことになって、しっとりとした触感を持たせることができる。
【0024】
また、本実施形態では、特に
図1(b)に示すように内装品1の表面を凸曲面2として、該凸曲面2上に前記した極めて微細な突起3を複数均一に設けることで、より一層「しっとり感」を実感することが可能となる。凸曲面2の場合には、平面や凹曲面に比較して、人の指先や手の平など肌で触れたときに、よりやわらかく感じる傾向にあるので、「しっとり感」がより強く感じるようになる。
【0025】
次に、上記した内装品1を成形する際に使用する型の製造工程について、
図5〜
図7に基づき説明する。まず、
図5(a)に示すように、加工用工具11を用いNC加工によって内装品1の表面形状と同形状の表面形状を備える木型13を製作する。続いて、この製作した木型13の表面に、
図5(b)に示すように、PVCやレザーからなる表皮15を貼付する。
【0026】
なお、この表皮15の表面には、あらかじめ粒径30μm程度のPPもしくはアクリルなどからなる粒子17を接着剤にて貼り付けておく。この粒子17の表皮15への接着方法としては、接着剤を塗布した表皮15上に多量の粒子17を振り掛け、それら粒子17の接着剤上に積層された余分な粒子17を刷毛やブラシを用いて掃くようにようにして除去する。これにより、必要最小限の粒子17が接着剤上に張り付くようにしてほぼ均一にむらなく貼り付けることができる。
【0027】
その後、
図5(c)に示す、木型13の表面形状にほぼ整合する凹形状の型19を用意し、この際、凹形状の型19の外周端部には突部19aを形成し、この突部19aを木型13の外周部に当接させることで、これら各型19,13相互間に隙間21を形成する。そして、この隙間21にシリコン吐出ノズル23から液状のシリコン25を吐出して充填し、木型13の表面形状(粒子17)を型取りする(製品形状の反転)。
【0028】
なお、上記した凹形状の型19は、例えば、後述する
図8,
図9のパウダスラッシュ成形によって作製する。
【0029】
上記隙間21へのシリコン25の充填が完了し、このシリコン25が凝固したら、
図5(c)に示す粒子17を表面に備える木型13を、
図6(a)のように凹形状の型19から外す。このときシリコン25は、木型13側の粒子17に比較して摩擦係数の大きい型19側に付着した状態となる。そして、型19の表面に付着しているシリコン25の表面には、前記
図5(b)に示した粒子17相当の微細な凹部25aが形成されることになる。
【0030】
次に、
図6(b)に示すように、導電性の材料(ニッケルが蒸着できるものであればよい)をシリコン25の表面に流し込み、基本型27を作製する。その後、この作製した基本型27を
図6(c)に示すように脱型する。この脱型作業は、基本型27の表面に密着しているシリコン25が柔らいため容易にできる。なお、この基本型27の表面は、前述した微細な突起3を有する内装品1の表面形状に対応している。
【0031】
続いて、上記した基本型27を、
図7(a)のように、溶解したニッケル29を収容している電鋳槽31に浸漬し、基本型27の表面にニッケル層33を積層させる。ニッケル層33の厚さが、15mm程度となった時点で基本型27を電鋳槽31から引き上げ、
図7(b)に示すように、基本型27からニッケル層33を引き離すことで、このニッケル層33からなる電鋳型33Aが完成する。
【0032】
この電鋳型33Aの基本型27に接触していた表面は、前記した内装品1の突起3に対応する凹部33Aaを備えることになる。
【0033】
そして、上記完成した電鋳型33Aを利用して内装品1などの製品を製造する。この製造には、
図8,
図9に示すように、パウダスラッシュ成形方法を適用する。すなわち、まず
図8(a)に示すように、前記
図7(b)で得られた電鋳型33Aの表面に配管35をセットするとともに、
図8(b)に示すように、電鋳型33Aの下部にPVCやTPOなどのパウダ状の樹脂37を収容したパウダボックス39をセットする。
【0034】
上記
図8(b)の状態で、配管35に例えば加熱した液体を流すことで、電鋳型33Aを200℃程度に加熱し、その後
図8(c)のように電鋳型33Aをパウダボックス39とともに回転させる。この回転により電鋳型33Aに接触した部分の樹脂37が溶融し、電鋳型33Aに張り付いた状態となる。この張り付いた樹脂37は、
図9(a)に示すように、電鋳型33Aの表面に表皮37Aとして形成される。
【0035】
次に、
図9(b)のようにパウダボックス39を電鋳型33Aから外した状態で配管35に例えば冷却水を流すことで、電鋳型33Aを冷却し、冷却後に
図9(c)に示すように、表皮37Aを電鋳型33Aから取り出して内装品1となる。
【0036】
なお、上記した実施形態では、物品として自動車における内装品1を例にとって説明したが、内装品1に限らず、例えば一般家庭内などにおける、人が触れる部位を備える物品であれば、本発明を適用することができる。