特許第5687488号(P5687488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5687488
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】極端紫外光生成装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20150226BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   H01L21/30 531S
   H01L21/30 503G
   H05G2/00 K
【請求項の数】23
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2010-294239(P2010-294239)
(22)【出願日】2010年12月28日
(65)【公開番号】特開2011-192964(P2011-192964A)
(43)【公開日】2011年9月29日
【審査請求日】2013年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2010-36046(P2010-36046)
(32)【優先日】2010年2月22日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト/次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト(石特会計/EUV光源高信頼化技術開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】永井 伸治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 保
(72)【発明者】
【氏名】石原 孝信
(72)【発明者】
【氏名】若林 理
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−004001(JP,A)
【文献】 特開2004−327213(JP,A)
【文献】 特開2005−197081(JP,A)
【文献】 特開2008−277522(JP,A)
【文献】 特開2008−016753(JP,A)
【文献】 特表2009−510714(JP,A)
【文献】 特開2008−270149(JP,A)
【文献】 特開2009−260019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03FL 7/20
G21K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザシステムと共に用いられる極端紫外光生成装置であって、
前記レーザシステムから出力されるレーザ光を入射させるための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、
前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の前記レーザ光が照射される所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、
前記チャンバ内に配置される少なくとも1つの光学要素と、
前記所定の領域付近に磁場を生成するための磁場生成部と、
前記磁場の磁力線方向に配置され、前記レーザ光が前記ターゲット物質に照射された際に発生し磁力線に沿って流れるイオンを回収するためのイオン回収部と、
前記チャンバ内にエッチングガスを導入するガス導入部と、
を備え
前記磁力線に沿って流れる前記イオンは、所定の拡散幅を有するイオン流を形成し、
前記少なくとも1つの光学要素は、前記イオン流の実質的に端部から離間するよう配置される、
極端紫外光生成装置。
【請求項2】
レーザシステムと共に用いられる極端紫外光生成装置であって、
前記レーザシステムから出力されるレーザ光を入射させるための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、
前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の前記レーザ光が照射される所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、
前記チャンバ内に配置される少なくとも1つの光学要素と、
前記所定の領域付近に磁場を生成するための磁場生成部と、
前記磁場の磁力線方向に配置され、前記レーザ光が前記ターゲット物質に照射された際に発生し磁力線に沿って流れるイオンを回収するためのイオン回収部と、
前記チャンバ内にエッチングガスを導入するガス導入部と、
を備え
前記磁力線に沿って流れる前記イオンは、所定の拡散幅を有するイオン流を形成し、
前記ターゲット供給部は、その先端が前記イオン流の実質的に端部から離間するよう配置される、
極端紫外光生成装置。
【請求項3】
レーザシステムと共に用いられる極端紫外光生成装置であって、
前記レーザシステムから出力されるレーザ光を入射させるための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、
前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の前記レーザ光が照射される所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、
前記チャンバ内に配置される少なくとも1つの光学要素と、
前記所定の領域付近に磁場を生成するための磁場生成部と、
前記磁場の磁力線方向に配置され、前記レーザ光が前記ターゲット物質に照射された際に発生し磁力線に沿って流れるイオンを回収するためのイオン回収部と、
前記チャンバ内にエッチングガスを導入するガス導入部と、
を備え
前記磁力線に沿って流れる前記イオンは、所定の拡散幅を有するイオン流を形成し、
前記ガス導入部は、その先端が前記イオン流の実質的に端部から離間するよう配置される、
極端紫外光生成装置。
【請求項4】
前記所定の拡散幅は、前記磁場の強度分布と、前記チャンバ内の圧力と、前記イオンのエネルギーとによって求まる、請求項記載の極端紫外光生成装置。
【請求項5】
前記所定の拡散幅は、前記磁場の強度分布と、前記チャンバ内の圧力と、前記イオンのエネルギーとによって求まる、請求項記載の極端紫外光生成装置。
【請求項6】
前記所定の拡散幅は、前記磁場の強度分布と、前記チャンバ内の圧力と、前記イオンのエネルギーとによって求まる、請求項記載の極端紫外光生成装置。
【請求項7】
前記チャンバ内の圧力を検出する圧力検出器と、
前記エッチングガスの流量を検出する質量流量計と、
前記質量流量計の検出する値が所望のエッチング速度を達成するように前記エッチングガスの流量を制御するガス流量制御部と、
前記チャンバ内のガスを排気する排気装置と、
前記少なくとも1つの光学要素近傍に配置され、イオンを検出するイオンセンサと、
をさらに備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の極端紫外光生成装置。
【請求項8】
前記チャンバ内の圧力は、約0.5Pa以上約13Pa以下である、請求項記載の極端紫外光生成装置。
【請求項9】
前記エッチングガスの流量は、約25sccm以上約100sccm以下である、請求項記載の極端紫外光生成装置。
【請求項10】
前記ガス流量制御部は、前記圧力検出器で検出された前記圧力および前記イオンセンサで検出された値の少なくともいずれか一方に基づいて、前記ガス導入部から前記チャンバ内に導入される前記エッチングガスの流量を制御する、請求項記載の極端紫外光生成装置。
【請求項11】
前記磁場の強度を制御する磁場強度制御部と、
前記磁場生成部に電流を供給する電源と、
前記少なくとも1つの光学要素近傍に配置され、イオンを検出するイオンセンサと、
をさらに備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の極端紫外光生成装置。
【請求項12】
前記磁場の磁束密度を検出する磁気センサと、
前記磁場の強度を制御する磁場強度制御部と、
前記磁場生成部に電流を供給する電源と、
前記少なくとも1つの光学要素近傍に配置され、イオンを検出するイオンセンサと、
をさらに備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の極端紫外光生成装置。
【請求項13】
前記磁場の磁束密度は、約0.35T以上約2T以下である、請求項11記載の極端紫外光生成装置。
【請求項14】
前記磁場の磁束密度は、約0.35T以上約2T以下である、請求項12記載の極端紫外光生成装置。
【請求項15】
前記磁場強度制御部は、前記磁気センサで検出された磁束密度および前記イオンセンサで検出された値の少なくともいずれか一方に基づいて、前記磁場生成部に供給する電流を制御し、磁場強度を制御する、請求項12記載の極端紫外光生成装置。
【請求項16】
前記エッチングガスをラジカル化するラジカル源をさらに備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の極端紫外光生成装置。
【請求項17】
前記エッチングガスは水素ガスである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の極端紫外光生成装置。
【請求項18】
前記エッチングガスは水素ラジカルガスである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の極端紫外光生成装置。
【請求項19】
レーザシステムと共に用いられる極端紫外光生成装置であって、
前記レーザシステムから出力されるレーザ光を入射させるための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、
前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の前記レーザ光が照射される所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、
前記チャンバ内に配置される少なくとも1つの光学要素と、
前記所定の領域付近に磁場を生成するための磁場生成部と、
前記磁場の磁力線方向に配置され、前記レーザ光が前記ターゲット物質に照射された際に発生し磁力線に沿って流れるイオンを回収するためのイオン回収部と、
前記チャンバ内にエッチングガスを導入するガス導入部と、
を備え、
前記少なくとも1つの光学要素は、前記チャンバ内で前記ターゲット物質に前記レーザ光が照射されて放射される極端紫外光を集光する集光ミラーであり、
前記磁場生成部は、電流が供給されるコイルおよび該コイルから前記所定の領域方向に延伸する磁心を含み、
前記磁心の一部は、前記集光ミラーによって集光される極端紫外光におけるオブスキュレーション領域内に延伸する、
極端紫外光生成装置。
【請求項20】
前記磁心の表面にはコーティング膜が形成される、請求項19記載の極端紫外光生成装置。
【請求項21】
前記磁心は筒状であり、
前記イオン回収部は前記磁心の底部に配置される、
請求項19記載の極端紫外光生成装置。
【請求項22】
前記イオン回収部の表面にはコーティング膜が形成される、請求項21記載の極端紫外光生成装置。
【請求項23】
前記少なくとも1つの光学要素は、前記チャンバ内で前記ターゲット物質に前記レーザ光が照射されて放射される極端紫外光を計測する計測器である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の極端紫外光生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ターゲット物質にレーザ光を照射して極端紫外(EUV)光を生成する極端紫外光生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、70nm〜45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、たとえば32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度の極端紫外光生成装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザビームを照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP(Laser Produced Plasma:レーザ励起プラズマ)光生成装置と、放電によって生成されるプラズマを用いたDPP(Discharge Produced Plasma)光生成装置と、軌道放射光を用いたSR(Synchrotron Radiation)光生成装置との3種類がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−266234号公報
【特許文献2】特開2005−197456号公報
【特許文献3】米国特許第7355672号明細書
【概要】
【0005】
本開示の一態様に係る極端紫外光生成装置は、レーザシステムと共に用いられる極端紫外光生成装置であって、前記レーザシステムから出力されるレーザ光を入射させるための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の前記レーザ光が照射される所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、前記チャンバ内に配置される少なくとも1つの光学要素と、前記所定の領域付近に磁場を生成するための磁場生成部と、前記磁場の磁力線方向に配置され、前記レーザ光が前記ターゲット物質に照射された際に発生し磁力線に沿って流れるイオンを回収するためのイオン回収部と、前記チャンバ内にエッチングガスを導入するガス導入部と、を備えてもよい。
上記極端紫外光生成装置において、前記磁力線に沿って流れる前記イオンは、所定の拡散幅を有するイオン流を形成し、前記少なくとも1つの光学要素は、前記イオン流の実質的に端部から離間するよう配置されてもよい。
また、上記極端紫外光生成装置において、前記磁力線に沿って流れる前記イオンは、所定の拡散幅を有するイオン流を形成し、前記ターゲット供給部は、その先端が前記イオン流の実質的に端部から離間するよう配置されてもよい。
さらにまた、上記極端紫外光生成装置において、前記磁力線に沿って流れる前記イオンは、所定の拡散幅を有するイオン流を形成し、前記ガス導入部は、その先端が前記イオン流の実質的に端部から離間するよう配置されてもよい。
さらにまた、上記極端紫外光生成装置において、前記少なくとも1つの光学要素は、前記チャンバ内で前記ターゲット物質に前記レーザ光が照射されて放射される極端紫外光を集光する集光ミラーであり、前記磁場生成部は、電流が供給されるコイルおよび該コイルから前記所定の領域方向に延伸する磁心を含み、前記磁心の一部は、前記集光ミラーによって集光される極端紫外光におけるオブスキュレーション領域内に延伸してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本開示の実施の形態1によるEUV光生成装置および露光機の概略構成を示す模式断面図である。
図2図2は、本実施の形態1によるEUV光生成装置の概略構成を示す模式断面図である。
図3図3は、本実施の形態1によるEUV光生成装置の概略構成にエッチングガスを導入する装置とチャンバ内の圧力を検出するセンサを追加した模式断面図である。
図4図4は、エッチングガスを導入しない場合において磁束密度とSnの堆積速度と関係を示すグラフである。
図5図5は、水素ガスの流量とSnのEUV集光ミラー表面上でのエッチング速度の関係を示すグラフである。
図6図6は、本実施の形態1における水素ガス雰囲気中のSnイオンの軌跡を求めるモンテカルロシミュレーション(SRIM)の結果を示す図である。
図7図7は、本実施の形態1におけるXeガス雰囲気中のSnイオンの軌跡を求めるモンテカルロシミュレーション(SRIM)の結果を示す図である。
図8図8は、本実施の形態1においてモンテカルロシミュレーション(SRIM)で求めたチャンバ内圧力とSnイオンの拡散幅との関係を示すグラフである。
図9図9は、本実施の形態1におけるプラズマ生成サイトとEUV光集光ミラーとイオン回収部との位置関係の一例を示す図である。
図10図10は、図9においてイオン回収部とEUV光集光ミラーとにそれぞれ入射するイオンデブリの量を測定する実験を説明するための図である。
図11図11は、図10においてチャンバ内を真空とした場合と低圧水素ガス雰囲気とした場合とのそれぞれで磁力線の中心上に配置したファラデーカップに流れた電流の時間変化を示す図である。
図12図12は、図10においてチャンバ内を真空とした場合と低圧水素ガス雰囲気とした場合とのそれぞれで磁力線の中心から外した位置に配置したファラデーカップに流れた電流の時間変化を示す図である。
図13図13は、図10においてチャンバ内の水素ガスの圧力を変化させた場合にそれぞれのファラデーカップで検出される電流の積分値を示す図である。
図14図14は、Snイオンの停止距離と水素ガス圧の関係を示すグラフである。
図15図15は、本実施の形態1におけるプラズマ生成サイトとEUV光集光ミラーとドロップレットジェネレータのノズルとの位置関係の一例を示す図である。
図16図16は、本実施の形態1におけるプラズマ生成サイトとEUV光集光ミラーと計測器との位置関係の一例を示す図である。
図17図17は、本実施の形態1におけるプラズマ生成サイトとEUV光集光ミラーとエッチングガス導入部との関係を示す図である。
図18図18は、本実施の形態1におけるプラズマ生成サイトとEUV光集光ミラーとラジカル源との位置関係の一例を示す図である。
図19図19は、本実施の形態1におけるプラズマ生成サイトとEUV光集光ミラーと静電引出し型ドロップレットジェネレータとの位置関係の一例を示す図である。
図20図20は、図19における静電引出し型ドロップレットジェネレータの概略構成を示す模式断面図である。
図21図21は、本実施の形態1におけるプラズマ生成サイトとEUV光集光ミラーと静電引出し加速型ドロップレットジェネレータとの位置関係の一例を示す図である。
図22図22は、図21における静電引出し加速型ドロップレットジェネレータの概略構成を示す模式断面図である。
図23図23は、本開示の実施の形態2によるEUV光生成装置の概略構成を示す模式断面図である。
図24図24は、本開示の実施の形態3によるEUV光生成装置の概略構成を示す模式断面図である。
図25図25は、本開示の実施の形態4によるEUV光生成装置の概略構成を示す模式断面図である。
図26図26は、本実施の形態4によるEUV光生成装置の図17と異なる断面における概略構成を示す模式断面図である。
図27図27は、図26におけるEUV光がA−A面に形成するファーフィールドパターンを示す図である。
図28図28は、本実施の形態4における磁心とオブスキュレーション領域との位置関係の一例を示す図である。
図29図29は、本実施の形態4におけるイオンビームと磁心とコイルとイオン回収部との位置関係の一例を示す図である。
図30図30は、本実施の形態5によるEUV光生成装置の概略構成においてコイルを1つとした場合の模式断面図である。
【実施の形態】
【0007】
以下、本開示を実施するための形態を図面を参照に詳細に説明する。なお、以下の説明において、各図は本開示の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎず、従って、本開示は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。また、各図では、構成の明瞭化のため、断面におけるハッチングの一部が省略されている。さらに、後述において例示する数値は、本開示の好適な例に過ぎず、従って、本開示は例示された数値に限定されるものではない。
【0008】
(実施の形態1)
まず、本開示の実施の形態1によるEUV光生成装置を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態1によるEUV光生成装置および露光機の概略構成を示す模式断面図である。図1に示すように、本実施の形態1によるEUV光生成装置1は、高気密のチャンバ10と、チャンバ10内の略中心に位置するプラズマ生成サイトP1へ向けて液滴状のターゲット物質(ドロップレットD)を供給するドロップレットジェネレータ16と、プラズマ生成サイトP1を通過したドロップレットDを回収するドロップレット回収部17と、を備える。なお、チャンバ10は、不図示の排気ポンプに接続されていてもよい。
【0009】
ドロップレットジェネレータ16は、溶融した溶融錫(溶融Sn)など、EUV光の生成材料となる液状のターゲット物質を蓄えるとともに、先端の開口がプラズマ生成サイトP1へ向けられたノズル16aを備える。ドロップレットジェネレータ16に蓄えられた液状のターゲット物質は、ノズル16aの先端よりプラズマ生成サイトP1へ向けて、液滴状のドロップレットDとして出力される。なお、ターゲット物質には、溶融Snに限らず、所望のEUV光の波長に応じて種々の溶融金属またはその他の物質を適用することができる。また、ターゲットには、液状のターゲットに限らず、固体ターゲットなどを用いてもよい。
【0010】
また、図1に示すように、EUV光生成装置1は、プラズマ生成サイトP1より放射されたEUV光を選択的に反射するEUV光集光ミラー12を備える。ここで、プラズマ生成サイトP1には、ドロップレットDがプラズマ生成サイトP1を通過するタイミングに合せて、不図示のドライバレーザ装置から出力されたレーザ光L1がウィンドウ11を介して入射する。レーザ光L1は、たとえばEUV光集光ミラー12の略中央に設けられた貫通孔12aを介して、EUV光集光ミラー12の背面側(反射面と反対側)からプラズマ生成サイトP1のドロップレットDに図示しない集光学系により集光される。これにより、ドロップレットDがプラズマ生成サイトP1付近でプラズマにイオン化し、このプラズマからEUV光L2が放射される。なお、ビーム軸AX上におけるEUV光集光ミラー12と反対側には、レーザ光L1が露光機100側へ入射するのを防止するビームダンパ18が設けられてもよい。
【0011】
プラズマ生成サイトP1から放射されたEUV光L2は、EUV光集光ミラー12によって選択的に反射される。ここで、EUV光集光ミラー12は、たとえば、第1焦点と第2焦点を有する回転楕円面の凹面形状であるとすると、第1の焦点の位置にはEUV光が発生するプラズマ生成サイトP1が位置し、反射されたEUV光が第2の焦点位置である中間集光点(IF:Intermediate Focus)に集光するようにEUV集光ミラーが配置されている。このような配置にすることによって、プラズマ発光サイトP1からEUV発光した像を中間集光点IFに結像させることができる。この中間集光点IFが、たとえば露光機100との接続部分である露光機接続部19内に位置するように配置されている。したがって、プラズマ生成サイトP1で発生したEUV光L2は、EUV光集光ミラー12で選択的に反射されることで、露光機接続部19内の中間集光点IFに集光する。なお、この実施例では、レーザ光L1のビーム軸とEUV光L2のビーム軸AXとは一致しているが、必ずしも一致している必要はない。ただし、プラズマ生成サイトP1および中間集光点IFは、EUVの発光像と軸が一致している必要がある。
【0012】
中間集光点IFに集光したEUV光L2は、その後、露光機100内へ導波される。露光機100内には、半導体基板やガラス基板等の処理対象であるワークW101を保持し且つ水平移動可能なステージ110と、入力されたEUV光L2の断面を転写対象のパターンに整形しつつステージ110上のワークW101へ集光する1つ以上のミラーM71〜M75および反射型マスクM73を含む露光学系と、が設けられる。したがって、ワークW101には、露光学系を経由したEUV光L2によるマスクM73のパターンが結像されることで、所望のパターンが転写される。詳細に説明すると、露光機100は、マスクM73を照明するための照明光学系と、マスクM73のマスクパターンを縮小投影してウエハなどのワークW101上に結像させるための縮小投影光学系と、からなる。照明光学系は、ミラーM71およびミラーM72からなり、反射型マスクM73を照明する。縮小投影光学系は、ミラーM74およびミラーM75からなり、反射型マスクM73のマスクパターンをワークW101上に結像させる。
【0013】
また、図2は、本実施の形態1によるEUV光生成装置の概略構成を示す模式断面図である。ただし、図2は、ビーム軸AXを含む断面であって、図1に示す断面とは異なる断面を示す。図2に示すように、EUV光生成装置1は、図1に示す構成に加え、チャンバ10外に配置された一対のマグネット14と、この一対のマグネット14が形成する磁場の磁力線MFの中心線上に配置された一対のイオン回収部13と、チャンバ内の圧力を低圧にするための排気ポンプ20とを備える。
【0014】
マグネット14は、たとえば超電導磁石などの磁場形成部であり、そのコイル14aに電流を流すことによって、0〜約2Tの範囲での磁場を大空間に定常的に形成することができる。この一対のマグネット14は、両者の中心を結ぶ線がプラズマ生成サイトP1を通るように、プラズマ生成サイトP1を挟む位置に配置される。したがって、プラズマ生成サイトP1付近で発生したSnイオンなどの帯電粒子(以下、単にイオンデブリという)は、プラズマ生成サイトP1を通るように形成された磁場にトラップされる。トラップされたイオンデブリは、磁場からのローレンツ力を受けることで、磁力線MFに巻きつくように回転しながら磁力線MFに沿って移動する。これにより、磁力線MFの向きに対して垂直な断面がある範囲に制限されたイオン流FLが形成される。このイオン流FLは、プラズマ生成サイトP1から離れる2つの方向へ向かって磁場方向に沿って流れる。
【0015】
また、一対のマグネット14が形成する磁場の磁力線MFの中心線上であって、プラズマ生成サイトP1を挟む位置には、一対のイオン回収部13が配置される。プラズマ生成サイトP1付近で発生してイオン流FLとなったイオンデブリは、磁場に拘束されつつ磁力線MFに沿って流れることで、いずれか一方のイオン回収部13に回収される。
【0016】
さらに、図2に示すように、EUV光生成装置1は、たとえばEUV光集光ミラー12の反射面など、チャンバ10内に配置された光学要素に向けて設置されたエッチングガス導入部15を備える。エッチングガス導入部15は、堆積したターゲット物質(Sn)をエッチングするエッチングガスをチャンバ10内に導入する。光学要素に堆積したターゲット物質は、エッチングガス導入部15から導入されたエッチングガスと反応することで除去される。このエッチングガスには、水素(H)ガスやF、ClおよびBrなどのハロゲンガスまたはそれらを含有するガスなどを用いることができる。そこで、たとえばターゲット物質にSnを用い、エッチングガスに水素ガスを用いた場合、光学要素に堆積したSnは、水素と反応して気体のSnHとなり、この結果、光学要素表面から除去される。なお、エッチングガスと反応して生成された気体(SnHなど)は、たとえばチャンバ10に連結された排気ポンプ20などによってチャンバ10外へ排出される。
【0017】
ここで、エッチングガス導入部15の放出口付近には、エッチングガスを解離(ラジカル化)するためのラジカル源が設けられてもよい。ラジカル源の例としては、プラズマ源やWフィラメント、マイクロ波などである。これにより、エッチングガスを、堆積したターゲット物質に対して反応性の高いラジカル粒子としてチャンバ10内に供給できる。これにより、チャンバ10内の光学要素に堆積したターゲット物質を効率よく除去することが可能となる。たとえばエッチングガスに水素ガスを用い、ターゲット物質にSnを用いた場合、水素ラジカルとSnとが効率よく反応して気体のSnHが生成される。ここで、実質的に、プラズマ生成サイトP1から発光する紫外線等の波長の光によって、水素ガスから水素ラジカルに変化させてもよい。
【0018】
図3は、本実施の形態1によるEUV光生成装置の概略構成にエッチングガスを導入する装置とチャンバ内の圧力を検出するセンサとを追加した模式断面図である。エッチングガスを導入する装置は、エッチングガスタンク24とエッチングガスの流量をコントロールする質量流量コントローラMFC22と、エッチングガス導入源15とからなる。そして、チャンバ10には、チャンバ内部の圧力を計測するための圧力センサ25が配管を介して設置されている。このEUV光生成装置1Aは、エッチングガスの流量を調節したり、排気ポンプの排気量を調節することにより、チャンバ10の内部の圧力を調節することができる。
【0019】
図4は、エッチングガスを導入しない場合において、プラズマ生成サイトP1に発生する磁束密度とEUV光集光ミラー12表面に堆積するSnの堆積速度との関係を示すグラフである。図4において、縦軸はSnの堆積速度、横軸は磁場の強さを示す磁束密度を示す。磁束密度が0Tから0.5Tの間においては、Sn堆積速度は単調減少した。一方、磁束密度0.5T以上の領域においては、Snの堆積速度が略一定となった。この結果より、磁束密度が0より大きく0.5Tの範囲では、イオンデブリが磁場によってトラップされていると考えられる。一方、磁束密度0.5T以上においては、磁場によってトラップできない電荷を有していない中性粒子や微粒子が堆積していると考えられる。
【0020】
そこで、この電荷を有していない中性粒子および微粒子により堆積したSnをエッチングするために、エッチングガスとして水素ラジカルを含む水素ガスを真空チャンバ内に導入した。本例では、水素ガスをラジカル化するためのラジカル源15Aを通過させることによって、水素ガスと水素ラジカルとの混合ガスをチャンバ内に導入した。
【0021】
図5に、水素ガスの流量とSnのEUV光集光ミラー12表面上でのエッチング速度との関係を示す。縦軸にSnのエッチング速度(nm/min)、横軸に水素ガスの質量流量(sccm)を示す。なお、チャンバ内部の圧力を10Pa以下とした条件のもとでSnのエッチング速度を計測した。たとえば、EUV光集光ミラー12表面でのSnの堆積速度が0.04nm/minである場合、水素ガスの質量流量を25sccmから131sccmの範囲に調節することによって、EUV光集光ミラー12表面上に堆積しなくなる。
【0022】
次に、チャンバ10内の圧力が増加すると磁場によるイオンのトラップ効果が低下することに関して記述する。チャンバ10内のガス圧(以下、チャンバ内圧力という)を高くすると、磁力線MFに沿って流れるイオンデブリとチャンバ10中の分子(または原子)との衝突が頻発する。この結果、磁場にトラップされつつ流れるイオンデブリが、磁力線MFに巻きつくように延びる軌道から大きく外れ、磁場の中心線に対して外側へ拡散してしまう。すなわち、チャンバ内圧力を高くするに連れて、磁場方向に流れるイオン流FLの断面積が大きくなる。また、さらに内圧が高くなるとイオンの移動の停止距離が短くなり、イオンが回収できなくなる。
【0023】
ここで、分子(または原子)との衝突によって生じるイオンデブリの拡散幅は、チャンバ10内の雰囲気ガス、主にチャンバ10内に導入されるエッチングガスのガス種とガス圧とに依存する。図6に、ガス圧が1Paであって、入射方向に磁束密度が0.6Tの磁場が印加された水素ガス雰囲気中に1keVのSnイオンが入射した場合のSnイオンの軌跡を求めるモンテカルロシミュレーション(SRIM)の結果を示す。また、図7には、圧力が0.01Paであって、入射方向に磁束密度が0.6Tの磁場が印加されたXeガス雰囲気中に1keVのSnイオンが入射した場合のSnイオンの軌跡を求めるモンテカルロシミュレーション(SRIM)の結果を示す。なお、図6および図7において、横軸は入射方向の距離、すなわち入射方向の移動距離を示し、縦軸は入射方向と垂直な移動距離、すなわち拡散幅σを示す。
【0024】
まず、図6に示すように、水素ガス雰囲気中に入射したSnイオンは、水素ガス中の移動距離が数100mm程度のときは略拡散していないものの、その後、水素ガス中を進むに連れてその拡散幅σが大きくなる。一方で、Xeガス雰囲気中に入射したSnイオンは、Xeガス中に入射した直後から大きく拡散し、その後あまり進まずに停止する。また、水素ガス中でのSnイオンの入射方向における停止距離が約6mであるのに対し、Xeガス中でのSnイオンの入射方向における停止距離の最大は約300mmと短い。これは、水素分子の質量がSnイオンの質量に対して十分に軽いため、衝突時のエネルギー損失が小さいのに対し、Xe原子の質量がSnイオンの質量と略同じであるため、衝突時のエネルギー損失が大きいことが要因である。このことから、イオンデブリの拡散を抑えるためには、エッチングガスとしては、水素ガスなどの比較的軽い分子(または原子)のガスを用いるとよいことが分かる。
【0025】
また、図8に、本実施の形態1においてモンテカルロシミュレーション(SRIM)で求めたチャンバ内圧力とSnイオンの拡散幅との関係を示す。図8において、ラインLh1は、雰囲気ガスに水素ガスを用い、入射方向におけるSnイオンの移動距離を100mmとした場合の拡散幅σのチャンバ内圧力依存性を示し、ラインLh2は、雰囲気ガスに水素ガスを用い、入射方向におけるSnイオンの移動距離を200mmとした場合の拡散幅σのチャンバ内圧力依存性を示す。また、ラインLxe1は、雰囲気ガスにXeガスを用い、入射方向におけるSnイオンの移動距離を100mmとした場合の拡散幅σのチャンバ内圧力依存性を示し、ラインLxe2は、雰囲気ガスにXeガスを用い、入射方向におけるSnイオンの移動距離を200mmとした場合の拡散幅σのチャンバ内圧力依存性を示す。
【0026】
図8に示すように、雰囲気ガスに水素ガスを用いた場合、拡散幅σが1mm以下となるのは、入射方向における移動距離が100mmであればチャンバ内圧力が6×10−1Pa程度以下、200mmであれば3Pa程度以下のときである。一方、雰囲気ガスにXeガスを用いた場合、拡散幅σが1mm以下となるのは、入射方向における移動距離が100mmであればチャンバ内圧力が3.5×10−4Pa程度以下、200mmであれば8×10−5Pa程度以下のときである。ここで、水素ガスのSnイオンに対する重さの比は、XeガスのSnイオンに対する重さの比に比べて十分に小さい。このため、雰囲気ガスに水素ガスを用いた場合、雰囲気ガスにXeガスを用いた場合よりチャンバ内圧力を4桁程度高くしたとしても、Xeガスを用いた場合と略同じ拡散幅σが得られる。すなわち、水素ガスを用いた場合の方がXeガスを用いた場合よりも、拡散幅σを増加させることなくチャンバ内圧力を高くすることができる。このことから、より効率的に堆積したSnを除去するためには、水素ガスまたは水素ラジカルをエッチングガスに用いた方がよいことが分かる。なお、Xeガスは、Snと反応しないため、エッチングガスとして使用できない。しかし、高いエネルギーを有するSnデブリを停止させることを目的とした場合は有効である。
【0027】
そこで、本実施の形態1では、プラズマ生成サイトP1付近に形成する磁場の磁束密度Bと、プラズマ生成サイトP1に対するEUV光集光ミラー12およびイオン回収部13の位置関係とを以下のようにアレンジする。図9は、本実施の形態1におけるプラズマ生成サイトP1とEUV光集光ミラー12とイオン回収部13との位置関係の一例を示す図である。図9に示す例では、エッチングガスに水素ガスを用い、ターゲット物質にSnを用い、プラズマ生成サイトP1付近に形成される磁場の磁束密度Bを0.6Tとし、EUV光集光ミラー12の半径r1を200mmとし、磁力線MFと垂直方向におけるイオン流FLの端とEUV光集光ミラー12の端部との距離l1を6mmとする。なお、磁束密度を0.6Tとした場合の真空状態でのイオン流FLの半径r2は25mmである。また、安全率を含むSnイオンの拡散幅をw1hとする。
【0028】
この条件において、たとえば安全率を3(W1h=3σ)とし、チャンバ内圧力を10Paとすると、SnイオンがEUV光集光ミラー12に入射する確率が、1.35×10−3と、十分に小さい値となる。また、たとえば安全率を6(W1h=6σ)とし、チャンバ内圧力を4Paとすると、SnイオンがEUV光集光ミラー12に入射する確率が、1.78×10−10と、さらに改善される。さらに、たとえば安全率を9(W1h=9σ)とし、チャンバ内圧力を2Paとすると、SnイオンがEUV光集光ミラー12に入射する確率が、1.13×10−19と、無視できる程度に非常に小さな値となる。
【0029】
そこで、図9に示す条件において、イオン回収部13に入射するイオンデブリとEUV光集光ミラー12に入射するイオンデブリとを測定した。図10は、図9においてイオン回収部とEUV光集光ミラーとにそれぞれ入射するイオンデブリの量を測定する実験を説明するための図である。図10に示すように、この実験では、イオン回収部13の代わりにファラデーカップF1が配置されるとともに、EUV光集光ミラー12の端部の代わりにファラデーカップF2が配置される。なお、ファラデーカップF1は、図10に示すように、EUV光集光ミラー12の端に対応する箇所に配置されてもよい。また、図11は、図10においてチャンバ内を真空とした場合と低圧水素ガス雰囲気とした場合とのそれぞれで磁力線の中心上に配置したファラデーカップ(F1)に流れた電流の時間変化を示す図であり、図12は、図10においてチャンバ内を真空とした場合と低圧水素ガス雰囲気とした場合とのそれぞれで磁力線の中心から外した位置に配置したファラデーカップ(F2)に流れた電流の時間変化を示す図である。
【0030】
図11におけるラインL11は、チャンバ10内を真空とし、磁束密度0.6T磁場を発生させた場合のファラデーカップF1の検出波形を示す。この条件では、ファラデーカップF1では比較的値が大きく且つ時間的に短いパルス状の電流が検出された。一方、図12のラインL22は、同じ条件でのファラデーカップF2の検出波形を示す。この条件では、ファラデーカップF2ではパルス状の電流が検出される。このことから、チャンバ内を真空にすることによって、ほとんどのイオンがファラデーカップF1に到達することが分かる。一方、EUV光集光ミラー12の位置の方向に相当するファラデーカップF2にはイオンが到達しない。これは、高エネルギーのSnのイオンデブリはEUV光集光ミラー12に入射しないことを示している。いいかえれば、ファラデーカップF1で検出される電流量と比較して、ファラデーカップF2で検出される電流量が十分に小さいことから、ほとんどのイオンデブリをファラデーカップF1(イオン回収部13に相当)で回収できることが分かる。
【0031】
逆に、図11におけるラインL12は、チャンバ10内に水素ガスを導入して圧力を上げた場合、磁束密度0.6T磁場を発生させた場合のファラデーカップのF1の検出波形を示す。この条件では、ファラデーカップF1では比較的値が大きく且つ時間的に短いパルス状の電流が検出された。一方、図12のラインL21は、同じ条件で場合のファラデーカップのF2の検出波形の例を示す。この条件では、ファラデーカップF2では小さなパルス状の電流が検出される。この場合は、EUV集光ミラーにSnのイオンデブリが入射する場合に相当する。
【0032】
また、図13に、図10においてチャンバ内の水素ガスの圧力を変化させた場合にそれぞれのファラデーカップで検出される電流の積分値を示す。図13に示すように、水素ガスの圧力が8Paを超えるまで、図10のファラデーカップF1およびF2で検出される電流量の積分値は略変化しない。これは、図9に示すような磁束密度Bに対する位置関係とすることで、水素ガスのチャンバ内圧力が少なくとも8Paを超えるまでは、発生したイオンデブリのほとんどをイオン回収部13で回収できることを意味している。したがって、エッチングガスに水素ガスを用いた場合、チャンバ10内の水素ガス圧を少なくとも8Pa以下とすることで、プラズマ生成サイトP1付近で発生したイオンデブリを磁場を用いて回収しつつ、チャンバ10内の光学要素表面にターゲット物質の層が形成されるのを防止できる。以上の実験結果は、シミュレーション結果と略一致した。
【0033】
次に、図14は、Snイオンの平均停止距離と水素ガス圧との関係を示すグラフである。縦軸に平均停止距離(mm)、横軸に水素ガス圧力(Pa)をそれぞれ示す。水素ガス圧が高くなればなるほど、平均停止距離d1は短くなる。たとえば、プラズマ生成サイトP1から200mmの位置でSnイオンを磁場でトラップしてSnを回収するためには、水素ガス圧が15Pa以下である必要がある。また、プラズマ生成サイトP1から46mmの位置でSnイオンを磁場でトラップしてSnを回収するためには、水素ガス圧が100Pa以下とする必要がある。
【0034】
以上のように、本実施の形態1では、イオンデブリの拡散する範囲内にEUV光集光ミラー12等の光学要素が含まれないように、光学要素とイオン流FLの端との距離を調節するとともに、チャンバ10内におけるエッチングガスの圧力を最適化する。これによって、プラズマ生成サイトP1付近で発生したイオンデブリを磁場を用いて回収しつつ、チャンバ10内の光学要素表面にターゲット物質の層が形成されるのを防止できる。
【0035】
また、上記の説明では、拡散したイオンデブリをEUV光集光ミラー12に入射させない場合を例に挙げた。ただし、これに限るものではない。図15は、本実施の形態1におけるプラズマ生成サイトとEUV光集光ミラーとドロップレットジェネレータのノズルとの位置関係の一例を示す図である。たとえばドロップレットジェネレータ16のノズル16a先端は、プラズマ生成サイトP1へ位置およびタイミングの精度よくドロップレットDを供給するために、図15に示すように、できるだけプラズマ生成サイトP1へ近づけることが好ましい。ただし、ノズル16aの先端にイオンデブリが堆積すると、このノズル16a先端からドロップレットDが正確に出力されなくなる場合がある。そこで本実施の形態1では、図15に示すように、イオンデブリの拡散する範囲内にノズル16a先端が配置されないように、イオン流FLの端とノズル16a先端との距離l2を調節するとともに、チャンバ10内におけるエッチングガスの圧力を最適化する。なお、本実施例ではターゲットの出力方向が磁場の方向に対して斜めの場合の実施例を示したが。この実施例に限定されることなく、ターゲットの出力方向と磁場の方向が略垂直な関係で配置して、イオンデブリがノズル16aのターゲット物質射出孔に到達しないように配置すればよい。
【0036】
さらに、図16は、本実施の形態1におけるプラズマ生成サイトとEUV光集光ミラーと計測器との位置関係の一例を示す図である。プラズマ生成サイトP1から放射されたEUV光L2の光強度等を計測する計測器M1についても、その計測精度を向上させるためには、できるだけプラズマ生成サイトP1へ近づけることが好ましい。そこで本実施の形態1では、図16に示すように、イオンデブリの拡散する範囲内に計測器M1の先端が配置されないように、イオン流FLの端と計測器M1の先端との距離l3を調節するとともに、チャンバ10内におけるエッチングガスの圧力を最適化する。なお、本実施の形態では光強度を計測するための計測器M1の場合の例を示したが、この例に限定されることなく、チャンバ内部に配置されているセンサであれば如何なるものも適用することができる。たとえば、ターゲットの位置を検出する検出器でもよい。
【0037】
さらにまた、図17は、本実施の形態1におけるプラズマ生成サイトとEUV光集光ミラーとエッチングガス導入部との関係を示す図である。プラズマ生成サイトP1付近で発生したイオンデブリは、プラズマ生成サイトP1付近に配置された光学要素に堆積し易い。このため、チャンバ10内にエッチングガスを導入するエッチングガス導入部15は、必然的にプラズマ生成サイトP1付近に配置されることが好ましい。そこで本実施の形態1では、図17に示すように、イオンデブリの拡散する範囲内にエッチングガス導入部15の先端が配置されないように、イオン流FLの端とエッチングガス導入部15の先端との距離l4を調節するとともに、チャンバ10内におけるエッチングガスの圧力を最適化する。なお、このエッチングガス導入部15は、水素ラジカルなどをチャンバ10内に導入するラジカル導入ポートであってもよい。
【0038】
さらにまた、図18は、本実施の形態1におけるプラズマ生成サイトとEUV光集光ミラーとラジカル源との位置関係の一例を示す図である。上述したように、チャンバ10内に導入されるエッチングガスは、ターゲット物質との反応性が高いラジカルであることが好ましい。そこで本実施の形態1では、図18に示すように、エッチングガス導入部15の先端にラジカル源15Aを配置してもよい。これにより、エッチングガス導入部15から供給されたエッチングガスをラジカル源15Aにてラジカル化してチャンバ10内に導入することが可能となる。ただし、図17を用いて示したように、チャンバ10内にエッチングガスを導入する部分(ラジカル源15A)はプラズマ生成サイトP1付近に配置されることが好ましい。そこで本実施の形態1では、図18に示すように、イオンデブリの拡散する範囲内にラジカル源15Aの先端が配置されないように、イオン流FLの端とラジカル源15Aの先端との距離l5を調節するとともに、チャンバ10内におけるエッチングガスの圧力を最適化する。
【0039】
さらにまた、図19は、本実施の形態1におけるプラズマ生成サイトとEUV光集光ミラーと静電引出し型ドロップレットジェネレータとの位置関係の一例を示す図である。本実施の形態1によるドロップレットジェネレータ16は、図20に示すような、静電引出し型ドロップレットジェネレータ16Aに置き換えることができる。図20に、図19における静電引出し型ドロップレットジェネレータの概略構成を示す。図20に示すように、静電引出し型ドロップレットジェネレータ16Aは、液体状の溶融Snを蓄えるタンク16−1と、タンク16−1から突出するノズル16a内部の溶融Snを接地電位にする電極16cと、電極16cと離間しつつ対向配置された引出し電極16bと、を備える。タンク16−1内の溶融Snは、たとえばタンク16−1周囲に設けられたヒータ16−2によってその融点以上に温められていてもよい。また、引出し電極16bは、絶縁体16dによって、電極16cから離間して固定される。この構成において、引出し電極16bに数kV程度のパルス状の電圧を入力することで、ノズル16aの先端からオンデマンドでドロップレットDを引き出すことが可能となる。
【0040】
なお、静電引出し型ドロップレットジェネレータ16Aを用いた場合でも、ドロップレットジェネレータ16を用いた場合と同様に、ノズル16a先端をできるだけプラズマ生成サイトP1へ近づけることが好ましい。そこで本実施の形態1では、図19に示すように、イオンデブリの拡散する範囲内にノズル16aよりも先方に位置する引出し電極16bが配置されないように、イオン流FLの端と引出し電極16bとの距離l6を調節するとともに、チャンバ10内におけるエッチングガスの圧力を最適化する。
【0041】
また、図21に、本実施の形態1におけるプラズマ生成サイトとEUV光集光ミラーと静電引出し加速型ドロップレットジェネレータとの位置関係の一例を示す。本実施の形態1によるドロップレットジェネレータ16は、図22に示すような、静電引出し加速型ドロップレットジェネレータ16Bに置き換えることも可能である。図22に、図21における静電引出し加速型ドロップレットジェネレータの概略構成を示す。図22に示すように、静電引出し加速型ドロップレットジェネレータ16Bは、図20に示す静電引出し型ドロップレットジェネレータ16Aと同様の構成に加え、引出し電極16bよりも先方に配置された加速電極16eを備える。この構成において、引出し電極16bに数kV程度のパルス状の電圧を入力するとともに、加速電極16eにたとえば数十kVまたはそれ以上の電圧を印加することで、ノズル16aの先端からオンデマンドで引き出したドロップレットDを加速させることが可能となる。
【0042】
以上のような静電引き出し型のドロップレットジェネレータ16Aを用いた場合やドロップレットを帯電させて加速させる場合、ドロップレットジェネレータのノズル穴に対向する電極に約数kVの高電圧を印加する必要がある。ただし、チャンバ10内部のガス圧力が高いと、ガス中で絶縁破壊を起こすため、高い電圧を印加できない。このような理由により、チャンバ10内部に高電圧が印加される要素がある場合、ガス圧力の上限値を制限する必要がある。たとえば、上記のような静電引き出し型のドロップレットジェネレータ16Aや、加速電極16eを使用する場合は、チャンバ内圧力を約0.2Pa以下にすることが望ましい。
【0043】
なお、静電引出し加速型ドロップレットジェネレータ16Bを用いた場合でも、ドロップレットジェネレータ16を用いた場合と同様に、ノズル16a先端をできるだけプラズマ生成サイトP1へ近づけることが好ましい。そこで本実施の形態1では、図21に示すように、イオンデブリの拡散する範囲内にノズル16aよりも先方に位置する加速電極16eが配置されないように、イオン流FLの端と加速電極16eとの距離l7を調節するとともに、チャンバ10内におけるエッチングガスの圧力を最適化する。
【0044】
以上のように、本実施の形態1における光学要素には、EUV光集光ミラー12に限らず、チャンバ10内に配置される種々の光学要素が含まれる。さらに、ターゲットの発生するターゲット発生ノズルや各種センサ、エッチングガス導入部等のチャンバ内部に配置される要素が含まれる。
【0045】
(実施の形態2)
つぎに、本開示の実施の形態2によるEUV光生成装置を、図面を参照して詳細に説明する。図23は、本実施の形態2によるEUV光生成装置の概略構成を示す模式断面図である。図23に示すように、本実施の形態2によるEUV光生成装置2は、上述の実施の形態1によるEUV光生成装置1と同様の構成に加え、イオン回収部13に近接配置されたイオンセンサ21と、エッチングガスを蓄えるガスタンク24とエッチングガス導入部15との間に配置されてエッチングガス導入部15からチャンバ10内に導入されるエッチングガスの流量を制御するマスフローコントローラ(MFC)22と、イオンセンサ21で検出されたイオン量に基づいてMFC22を制御するコントローラ23と、チャンバ10内のガスを排出する排気ポンプ20と、チャンバ内圧力を検出する圧力センサ25とを備える。なお、ガスタンク24は、上述の実施の形態1では省略したが、EUV光生成装置1にも設けられている。また、MFC22およびコントローラ23は、チャンバ10内のガス圧が、イオンデブリの拡散幅が磁場にトラップされつつ流れるイオン流FLの端から光学要素までの距離よりも短くなるガス圧となるように、エッチングガスの流量を調節するとともに、排気ポンプ20を制御することで排気ガスの排気速度を制御する。
【0046】
イオンセンサ21は、チャンバ10内のガス(主にエッチングガス)で拡散したためにイオン回収部13に入射できなかったイオンデブリの量を検出する。このため、イオンセンサ21は、イオン回収部13の隣であってできるだけ近接した位置に配置される。コントローラ23は、イオンセンサ21でイオンが検出された場合、またはイオンセンサ21で検出されたイオン量が予め設定しておいたしきい値を超えた場合、MFC22を制御することで、ガスタンク24からエッチングガス導入部15に流れ込むエッチングガスの流量を一時的に低減する。これにより、チャンバ10内に導入されるエッチングガスの量を調節してチャンバ内圧力を低下させることが可能なる。この結果、磁場にトラップされたイオンデブリの拡散幅が低減され、イオン回収部13外に流れるイオンデブリの量が低下する。あるいは、エッチングガスの流量を制御するマスフローコントローラ(MFC)22の流量を一定にしておいて、排気ポンプ20の排気量を制御する。
【0047】
このように、実際にイオン回収部13外に流れるイオンデブリの量に基づいてチャンバ10内のガス圧を最適化することで、プラズマ生成サイトP1付近で発生したイオンデブリをより確実にイオン回収部13で回収することが可能となる。これによって、プラズマ生成サイトP1付近で発生したイオンデブリを磁場を用いて回収しつつ、チャンバ10内の光学要素表面にターゲット物質の層が形成されるのをより確実に防止できる。
【0048】
なお、上記の説明では、イオンセンサ21をイオン回収部13に近接配置してイオン回収部13外に流れるイオンデブリの量を検出した。ただし、これに限らず、たとえばEUV光集光ミラー12やドロップレットジェネレータ16のノズル16aや計測器M1やエッチングガス導入部15やラジカル源15Aなどの各種光学要素に、コントローラ23に接続されたイオンセンサ21を近接配置することで、これら光学要素に入射するイオンデブリの量を検出してもよい。イオンの検出結果に基づいて、MFC22もしくは排気ポンプ20またはその両方を用いてチャンバ内圧力を制御してもよい。
【0049】
(実施の形態3)
つぎに、本開示の実施の形態3によるEUV光生成装置を、図面を参照して詳細に説明する。図24は、本実施の形態3によるEUV光生成装置の概略構成を示す模式断面図である。図24に示すように、本実施の形態3によるEUV光生成装置3は、上述の実施の形態2によるEUV光生成装置2と同様の構成に加え、一対のマグネット14それぞれに接続されたマグネットコントローラ31を備える。マグネットコントローラ31およびコントローラ23は、プラズマ生成サイトP1付近に形成される磁場の磁束密度が、イオンデブリの拡散幅が磁場に拘束されつつ流れるイオン流FLの端から光学要素までの距離よりも短くなる磁束密度となるように、磁場の強度を調節する磁場強度制御部として機能する。この場合、コイル14aに流す電流値とプラズマ生成サイトP1付近に形成される磁場の磁束密度との相関を予め計測しておき、所望の磁束密度となるようコイル14aに流す電流値を制御するとよい。なお、磁束密度を計測するために図示しない磁気センサをマグネット14の周辺部に配置してもよい。磁気センサを設置する場合、マグネットコントローラ31は磁気センサによる磁束密度検出値に基づいて、磁場の強度を調整してもよい。この場合、磁気センサによって計測される部位の磁束密度とプラズマ生成サイトP1付近に形成される磁場の磁束密度との相関を予め計測しておき、所望の磁束密度となるようコイル14aに流す電流値を制御するとよい。
【0050】
マグネットコントローラ31は、コントローラ23からの制御の下、一対のマグネット14が形成する磁場の強度を制御する。すなわち、コントローラ23は、イオンセンサ21でイオンが検出された場合、またはイオンセンサ21で検出されたイオン量が予め設定しておいたしきい値を超えた場合、MFC22を制御してガスタンク24からエッチングガス導入部15に流れ込むエッチングガスの流量を一時的に低減するとともに、マグネットコントローラ31を制御することで、プラズマ生成サイトP1付近に形成される磁場の強度を強くする。これにより、チャンバ10内に導入されるエッチングガスの量を調節してチャンバ内圧力を低下させつつ、磁束密度を高めてイオンデブリの拡散幅を小さくすることが可能となる。この結果、磁場にトラップされたイオンデブリの拡散幅が低減され、イオン回収部13外に流れるイオンデブリの量が低下する。
【0051】
このように、実際にイオン回収部13外に流れるイオンデブリの量に基づいてチャンバ10内のガス圧および磁束密度を最適化することで、プラズマ生成サイトP1付近で発生したイオンデブリをより確実にイオン回収部13で回収することが可能となる。これによって、プラズマ生成サイトP1付近で発生したイオンデブリを磁場を用いて回収しつつ、チャンバ10内の光学要素表面にターゲット物質の層が形成されるのをより確実に防止できる。
【0052】
なお、上記の説明では、イオンセンサ21をイオン回収部13に近接配置してイオン回収部13外に流れるイオンデブリの量を検出した。ただし、これに限らず、たとえばEUV光集光ミラー12やドロップレットジェネレータ16のノズル16aや計測器M1やエッチングガス導入部15やラジカル源15Aなどの各種光学要素に、コントローラ23に接続されたイオンセンサ21を近接配置することで、これら光学要素に入射するイオンデブリの量を検出してもよい。
【0053】
(実施の形態4)
つぎに、本開示の実施の形態4によるEUV光生成装置を、図面を参照して詳細に説明する。図25および図26は、本実施の形態4によるEUV光生成装置の概略構成を示す模式断面図である。ただし、図26は、ビーム軸AXを含む断面であって、図25に示す断面とは異なる断面を示す。
【0054】
図25および図26に示すように、本実施の形態4によるEUV光生成装置4は、上述の実施の形態1〜3のいずれかによるEUV光生成装置と同様の構成において、プラズマ生成サイトP1付近に磁場を形成するコイル14aが、チャンバ10内に配置されている。なお、チャンバ10は、気密性を保持するためのゲートバルブ49を介して露光機接続部19に接続されている。また、EUV光生成装置4は、各コイル14aのボア内からプラズマ生成サイトP1へ向けてそれぞれ筒状に延伸する磁心42を備える。これにより、プラズマ生成サイトP1近傍に集中して強い磁場を形成することが可能となる。この結果、周囲の計測器等への磁場の影響を低減して、プラズマ生成サイトP1近傍に強い磁場を形成することが可能となる。
【0055】
また、先端がプラズマ生成サイトP1を挟んで対向する磁心42が形成する磁場は、その磁力線の中心がプラズマ生成サイトP1を通り且つその方向が筒状の磁心42の中心線と一致する。そこで、各磁心42の内部であって各コイル14aのボア中心に、イオン回収部13を配置する。さらに、少なくとも各磁心42におけるプラズマ生成サイトP1側の開口の直径は、イオン流FLの端とEUV光集光ミラー12の端部との位置関係と同様に、イオン流FLの直径にイオンデブリの拡散幅を加算した値よりも広い。これにより、プラズマ生成サイトP1付近で発生したイオンデブリを確実に磁心42の内部に導き入れることが可能となる。この結果、プラズマ生成サイトP1付近で発生したイオンデブリを、プラズマ生成サイトP1近傍に集中して形成した磁場でトラップし、その後、磁心42の底部に配置されたイオン回収部13で回収することが可能となる。
【0056】
以上のような構成とすることで、より強い磁場を用いてイオンデブリをトラップできるため、チャンバ10内のエッチングガスの圧力を高めたとしても、イオンデブリの拡散幅を抑えることが可能となる。この結果、プラズマ生成サイトP1付近で発生したイオンデブリを磁場を用いて回収する構成において、チャンバ10内の光学要素表面にターゲット物質の層が形成されるのをより確実に防止することが可能となる。この実施の形態では、プラズマ生成サイトP1の近傍に磁心42を近づけることができるため、エッチングガスの圧力を高く設定しても、イオンデブリをトラップすることが可能である。たとえば、水素ガスまたは水素ラジカルを含むエッチングガスを使用する場合、100Paまでチャンバ内圧力を上げても、イオンデブリをトラップして回収し、かつ、EUV光集光ミラー12に堆積したSnをエッチングすることが可能となる。
【0057】
また、チャンバ10の内部に配置された磁心42は、オブスキュレーション領域E1外に配置されたコイル14aからオブスキュレーション領域E1内にまで延伸する。ここで、図27に、図26におけるEUV光がA−A面に形成するファーフィールドパターンを示す。図27に示すように、EUV光L2は、その中心軸AXと垂直な断面において、オブスキュレーション領域E1を含む。オブスキュレーション領域E1とは、EUV光集光ミラー12によって集光されるEUV光L2が露光機100において利用されない角度範囲に対応する領域のことをいう。この説明では、露光機100において利用されない角度範囲に含まれる3次元的な体積領域をオブスキュレーション領域E1とする。
【0058】
このオブスキュレーション領域E1のEUV光L2は、上述のように、露光機100における露光に用いられない。このため、このオブスキレーション領域E1のEUV光L2が露光機100に入力されないとしても、露光機100の露光性能やスループットは全く影響されない。そこで本実施の形態4では、図28に示すように、このオブスキュレーション領域E1内にまで磁心42を延伸させる。これにより、磁心42の先端をよりプラズマ生成サイトP1に接近させることが可能となる。この結果、プラズマ生成サイトP1近傍のより狭い範囲に強い磁場を形成することが可能となる。なお、図28は、本実施の形態4における磁心とオブスキュレーション領域との位置関係の一例を示す図である。
【0059】
また、たとえばオブスキュレーション領域E1内にまで延伸する磁心42は、図29に示すように、その表面が、W(タングステン)、Sn(錫)、Ru(ルテニウム)、Mo(モリブデン)、Si(シリコン)、C(カーボン)など、イオンデブリによってスパッタされ難い材料よりなるコーティング膜42cにてコーティングされていることが好ましい。また、Snに対して濡れ性が高いCuまたはTiでコーティングしてもよい。これにより、磁心42がスパッタされて、チャンバ10内に磁心42の材料よりなるデブリが発生することを回避できる。なお、図29は、本実施の形態4におけるイオンビームと磁心とコイルとイオン回収部との位置関係の一例を示す図である。
【0060】
さらに、図29に示すように、イオン回収部13も、コーティング膜42cと同様の材料よりなるコーティング膜13cにてコーティングされていることが好ましい。これにより、イオン回収部13自体がスパッタされてしまうことを防止することが可能となる。
【0061】
その他の構成は、上述した実施の形態1〜3のいずれかと同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。なお、図25および図26における駆動レーザLD10は、上述の各実施の形態においてその説明が省略された構成である。ただし、各実施の形態に設けられ得るものであって、レーザ光L1の光源である。
【0062】
(実施の形態5)
本開示の実施の形態5によるEUV光生成装置を、図面を参照して詳細に説明する。図30は、本実施の形態5によるEUV光生成装置の概略構成を示す模式断面図である。図30に示すように、本実施の形態5によるEUV光生成装置5は、上述の実施の形態2によるEUV光生成装置2と同様の構成において、1つのマグネット14のみを備える。すなわち、本実施の形態5は、1つのマグネット14よりなるシングルコイルによってプラズマ生成サイトP1に磁場を生成する場合の例を示す。
【0063】
プラズマ生成サイトP1においてプラズマが生成されると、イオンは磁場にトラップされ、磁場の方向に移動する。プラズマ生成サイトP1に対してマグネット14側では、磁束密度が高くなる。一方、プラズマ生成サイトP1に対してマグネット14が配置されていない側では、磁束密度が小さくなる。そこで、この磁束密度の状態に応じて、プラズマ生成サイトP1に対してマグネット14が配置されていない側のイオン回収部13を、プラズマ生成サイトP1に対してマグネット14側のイオン回収部13よりも開口径が大きなイオン回収部13Aに置き換える。このように本実施の形態5では、イオン回収部13とイオン回収部13Aの開口を調節して設置される。
【0064】
ただし、この実施の形態5では、イオン回収部13とイオン回収部13Aの開口径が異なる場合に限らず、イオン回収部13の開口と同じものをイオン回収部13Aに配置してもよい。このような構成とした場合、コントローラ33は、チャンバ10の内部の圧力を圧力センサ25の信号によって検出して、エッチングガスの流量をMFC22により制御したり、排気ポンプ20によって排気量を制御して、エッチングガスの圧力を所望の圧力に制御する。
【0065】
また、上記実施の形態およびその変形例は本開示を実施するための例にすぎず、本開示はこれらに限定されるものではなく、仕様等に応じて種々変形することは本開示の範囲内であり、更に本開示の範囲内において、他の様々な実施の形態が可能であることは上記記載から自明である。例えば各実施の形態に対して適宜例示した変形例は、他の実施の形態に対して適用することも可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
1、1A、2、3、4、5 EUV光生成装置
10 チャンバ
11 ウィンドウ
12 EUV光集光ミラー
12a 貫通孔
13、13A イオン回収部
13c、42c コーティング膜
14 マグネット
14a コイル
15 エッチングガス導入部
15A ラジカル源
16 ドロップレットジェネレータ
16−1 タンク
16−2 ヒータ
16A 静電引出し型ドロップレットジェネレータ
16B 静電引出し加速型ドロップレットジェネレータ
16a ノズル
16b 引出し電極
16c 電極
16d 絶縁体
16e 加速電極
18 ビームダンパ
19 露光機接続部
20 排気ポンプ
21 イオンセンサ
22 マスフローコントローラ(MFC)
23 コントローラ
24 ガスタンク
25 圧力センサ
31 マグネットコントローラ
42 磁心
100 露光機
AX 光軸
D ドロップレット
E1 オブスキュレーション領域
F1、F2 ファラデーカップ
FL イオン流
IF 中間集光点
L1 レーザ光
L2 EUV光
LD10 駆動レーザ
M1 計測器
M71〜M74 ミラー
M75 反射型マスク
MF 磁力線
P1 プラズマ生成サイト
W101 ワーク
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