(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワークを保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持されたワークを研削加工する加工手段と、を有し、該加工手段は、ワークに当接して研削を行うリング状に配設された砥石を有する研削工具と、該研削工具を下側先端面に支持する工具マウント、該工具マウントを支持する回転軸と、該回転軸を囲むハウジングと、を有する研削装置であって、
該回転軸には、液体を供給する液体源に連通する液体連通路が回転軸芯位置に上下に伸びるように形成され、
該工具マウントは、該液体連通路に連通する第1流路と、該第1流路の下側先端部から回転軸に対して放射方向に分岐して形成され、ワークに向かって液体を噴出する噴出口に連通する第2流路と、第2流路の中間部よりも回転軸側に位置し、該第2流路の中間部に気体を取り込む気体流入口と、該第2流路の中間部および該気体流入口を連通する流路と、を有し、
該液体源から供給された液体が、該回転軸の回転により該第2流路内で生成される遠心力によって該気体流入口から、該第2流路の中間部および該気体流入口とを連通する流路を介して取り込まれた気体と該第2流路内で混合され、該噴出口からワークに向かって混合流体が噴出すること
を特徴とする研削装置。
ワークを保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持されたワークを研削加工する加工手段と、を有し、該加工手段は、ワークに当接して研削を行うリング状に配設された砥石を有する研削工具と、該研削工具を下側先端面に支持する工具マウント、該工具マウントを支持する回転軸と、該回転軸を囲むハウジングと、を有する研削装置であって、
該回転軸には、液体を供給する液体源に連通する液体連通路が回転軸芯位置に上下に伸びるように形成され、
該工具マウントは、該回転軸側に延出して該液体連通路に連通する第1流路と、該第1流路の下側先端部から回転軸に対して放射方向に分岐して形成され、ワークに向かって液体を噴出する噴出口に連通する第2流路と、第2流路の中間部よりも回転軸側に位置し、該第2流路の中間部に気体を取り込む気体流入口と、該第2流路の中間部および該気体流入口を連通する流路と、を有し、
該液体源から供給された液体が、該回転軸の回転により該第2流路内で生成される遠心力によって該気体流入口から、該第2流路の中間部および該気体流入口とを連通する流路を介して取り込まれた気体と該第2流路内で混合され、該噴出口からワークに向かって混合流体が噴出すること
を特徴とする研削装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の研削装置は、研削時に発生する研削屑の除去や加工部の冷却等を目的として、水等の液体を半導体ウェーハに供給しながら半導体ウェーハの裏面を研削する。しかしながら、従来の研削装置では、研削時に発生する研削屑を十分に除去できないことがあった。研削時に発生する研削屑が十分に除去できない場合には、研削屑が回路表面に付着して回路の品質を低下させる可能性がある。このため、研削時に発生する研削屑の除去効果を向上させた研削装置の提供が望まれている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、研削時に発生する研削屑の除去効果を向上可能な研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る研削装置は、ワークを保持する保持テーブルと、保持テーブルに保持されたワークを研削加工する加工手段と、を有し、加工手段は、ワークに当接して研削を行うリング状に配設された砥石を有する研削工具と、研削工具を下側先端面に支持する工具マウント、工具マウントを支持する回転軸と、回転軸を囲むハウジングと、を有する研削装置であって、回転軸には、液体を供給する液体源に連通する液体連通路が回転軸芯位置に上下に伸びるように形成され、工具マウントは、液体連通路に連通する第1流路と、第1流路の下側先端部から回転軸に対して放射方向に分岐して形成され、ワークに向かって液体を噴出する噴出口に連通する第2流路と、
第2流路の中間部よりも回転軸側に位置し、該第2流路の中間部に気体を取り込む気体流入口と、
該第2流路の中間部および該気体流入口を連通する流路と、を有し、該液体源から供給された液体が、該回転軸の回転により該第2流路内で生成される遠心力によって該気体流入口から
、該第2流路の中間部および該気体流入口とを連通する流路を介して取り込まれた気体と第2流路内で混合され、噴出口からワークに向かって混合流体が噴出することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る研削装置は、第2流路は、第1流路の下側先端部から中間部に通ずる液体導入路と、中間部から水平方向に延在した後に噴出口に連通する混合流路と、を有し、気体流入口は混合流路に連通することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る研削装置は、研削工具は、リング状に配設された砥石を支持する基台を有し、基台は、噴出口に連通する流路を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る研削装置は、ワークを保持する保持テーブルと、保持テーブルに保持されたワークを研削加工する加工手段と、を有し、加工手段は、ワークに当接して研削を行うリング状に配設された砥石を有する研削工具と、研削工具を下側先端面に支持する工具マウント、工具マウントを支持する回転軸と、回転軸を囲むハウジングと、を有する研削装置であって、回転軸には、液体を供給する液体源に連通する液体連通路が回転軸芯位置に上下に伸びるように形成され、工具マウントは、回転軸側に延出して液体連通路に連通する第1流路と、第1流路の下側先端部から回転軸に対して放射方向に分岐して形成され、ワークに向かって液体を噴出する噴出口に連通する第2流路と、
第2流路の中間部よりも回転軸側に位置し、該第2流路の中間部に気体を取り込む気体流入口と、
該第2流路の中間部および該気体流入口を連通する流路と、を有し、該液体源から供給された液体が、該回転軸の回転により該第2流路内で生成される遠心力によって該気体流入口から
、該第2流路の中間部および該気体流入口とを連通する流路を介して取り込まれた気体と該第2流路内で混合され、噴出口からワークに向かって混合流体が噴出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る研削装置によれば、液体の圧力と遠心力による圧力で圧縮された気泡が弾ける時に生じる衝撃波によって研削加工時に発生する研削屑が除去されるので、研削時に発生する研削屑の除去効果を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である研削装置の構成について説明する。
【0013】
〔研削装置の全体構成〕
始めに、
図1を参照して、本発明の一実施形態である研削装置の全体構成について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態である研削装置の構成を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態である研削装置1は、装置ハウジング2を備える。装置ハウジング2は、細長く延在する直方体状の主部21と、主部21の後端部(
図1における右端部)に設けられ、鉛直上方に延びる一対の直立壁22と、を有する。直立壁22の前面には、上下方向に延びる一対の案内レール221,221が設けられている。一対の案内レール221,221には、加工手段3が上下方向に移動可能に装着されている。
【0015】
加工手段3は、移動基台31と、移動基台31に装着されたスピンドルユニット4と、を備える。移動基台31の後面両側には、上下方向に延びる一対の脚部311,311が設けられている。一対の脚部311,311には、一対の案内レール221,221と摺動可能に係合する一対の被案内溝312,312が形成されている。移動基台31の前面には、前方に突出する支持部313が設けられ、支持部313には、スピンドルユニット4が取り付けられている。スピンドルユニット4の下面には、ボルト51によって研削工具5が締結されている。スピンドルユニット4及び研削工具5の構成についは後述する。スピンドルユニット4及び研削工具5は、本発明に係る加工手段として機能する。
【0016】
研削装置1は、スピンドルユニット4を一対の案内レール221,221に沿って上下方向に移動させる研削ユニット送り機構10を備える。研削ユニット送り機構10は、直立壁22の前側に配設され、鉛直上方に延びる雄ネジロッド101を備える。雄ネジロット101は、その上端部及び下端部が直立壁22に取り付けられた軸受部材102,103によって回転自在に支持されている。
【0017】
上側の軸受部材102には、雄ネジロッド101を回転駆動するパルスモータ104が配設されている。移動基台31の後面には、その軸方向中央部から後方に延びる図示しない貫通雌ネジ孔が形成されている。雄ネジロッド101は、図示しない貫通雄ネジ孔に螺合している。従って、パスモータ104が正転した場合、移動基台31、すなわち加工手段3は下降(前進)し、パルスモータ104が逆転した場合には、移動基台31,すなわち加工手段3は上昇(後進)する。
【0018】
ハウジング2の主部21には、チャックテーブル機構11が配設されている。チャックテーブル機構11は、保持テーブル12と、保持テーブル12の周囲を覆うカバー部材13と、カバー部材13の前後に配設された蛇腹手段14,15と、を備える。保持テーブル12は、図示しない回転手段によって回転されるものであり、図示しない吸引手段を作動することによってその上面にワークWを吸引保持するように構成されている。
【0019】
ワークWは、特に限定されないが、例えばシリコンウェーハやGaAsウェーハ等の半導体ウェーハ、セラミックス,ガラス,サファイア(Al
2O
3)等の無機材料基板、板状金属や樹脂の延性材料、ミクロンオーダーからサブミクロンオーダーの平坦度(TTV:Total Thickness Variation:ワーク被研削面を基準面として厚み方向に測定した高さのワーク被研削面全面における最大値と最小値の差)が要求される各種加工材料等を例示することができる。
【0020】
保持テーブル12は、図示しない保持テーブル移動手段によってワーク載置域24と研削工具5と対向する研削域25との間で移動される。蛇腹手段14,15は、キャンパス布等の適宜材料によって形成されている。蛇腹手段14の前端は主部21の前面壁に固定され、後端はハウジング2の直立壁22の前面に固定されている。保持テーブル12が矢印23aで示す方向に移動する場合、蛇腹手段14及び蛇腹手段15はそれぞれ伸長及び収縮し、保持テーブル12が矢印23bで示す方向に移動する場合には、蛇腹手段14及び蛇腹手段15はそれぞれ収縮及び伸長する。
【0021】
〔スピンドルユニットの構成〕
次に、
図2を参照して、スピンドルユニット4の構成について説明する。
【0022】
図2は、スピンドルユニット4の構成を示す縦断側面図である。
図2に示すように、スピンドルユニット4は、
図1に示す支持部313に装着されたハウジング41と、ハウジング41に回転自在に支持された回転軸42と、回転軸42を回転駆動するための電動モータ43と、を備える。
【0023】
ハウジング41は、略円筒状に形成され、軸方向に貫通する軸孔411を備える。回転軸42は、軸孔411に挿通してハウジング41に配設される。回転軸42は、ハウジング41に形成されたエアー導入口412及び気体軸受413を介して軸孔411の内壁との間に供給される高圧エアーによって、ハウジング41に回転自在に支持される。
【0024】
回転軸42の下端部は、ハウジング41の下端から突出するように配設され、回転軸42の下端部には、工具マウント44が設けられている。工具マウント44の構成については後述する。回転軸42の軸芯位置には、上下方向に延びる液体連通路421が形成されている。液体連通路421の上端部は、液体を供給する液体源に連通し、その下端部は、工具マウント44の軸中心位置に形成された第1流路441に連通している。
【0025】
電動モータ43は、永久磁石式モータにより構成され、回転軸42に形成された永久磁石からなるロータ431と、ロータ431の外周側においてハウジング41に配設されたステータコイル432と、を備える。ロータ431は、後述する電力供給手段45からステータコイル432に交流電力を供給することにより回転し、ロータ431の回転に伴いロータ431が装着された回転軸42が回転する。電力供給手段45は、交流電源451と、制御回路452と、を備える。制御回路452は、電動モータ43のステータコイル432に交流電源451の交流電力を供給する。
【0026】
〔工具マウントの構成〕
次に、
図3及び
図4を参照して、工具マウント44の構成について説明する。
【0027】
図3は、工具マウント44と研削工具5との構成を示す部分拡大断面図であり、
図4は、工具マウント44と研削工具5との構成を示す下面図である。
図3に示すように、工具マウント44は、回転軸42の下端に一体に円盤状に形成されている。工具マウント44の内部には、第1流路441と、第2流路442と、気体流入口443と、が形成されている。第1流路441は、回転軸42の液体連通路421に連通し、工具マウント44内部を上下方向に延びる。
【0028】
第2流路442は、第1流路441の下端先端部から放射方向(径外方向)に複数(本実施形態では8つ)に分岐して形成され、保持テーブル12に保持されたワークWに向かって液体を噴射する噴射口522に連通する。なお本実施形態では、第2流路442は、
図4に示すように、周方向に45度間隔で配置することによって8つに分岐されているが、本発明は本実施形態に限定されることはなく、例えば周方向に60度間隔で配置することによって6つに分岐させるようにしてもよい。
【0029】
第2流路442は、第1流路441の下端先端部から中間部445に通じる液体導入路442aと、中間部445から水平方向(径外方向)に延在した後に噴出口522に通じる混合流路442bと、を有する。気体流入口443は、第2流路442の中間部445に連通し、焼結材443aを介して中間部445に外気等の気体を導入する。焼結材443aは、青銅等の材料により形成され、気体流入口443から中間部445側に流入する気体の容量を調整する。
【0030】
本実施形態では、気体流入口443から中間部445側に流入する気体の容量を調整するために気体流入口443に焼結材443aを配置したが、焼結材443aの代わりに、空気は通すが水は通さないフィルターや、水が通りにくい微小孔を有する部材を用いてもよい。また、気体流入口443に部材を配置する代わりに、気体が流入する管路の径の大きさを調整することによって、気体流入口443から中間部445側に流入する気体の容量を調整するようにしてもよい。
【0031】
〔研削工具の構成〕
次に、
図3及び
図4を参照して、研削工具5の構成について説明する。
【0032】
研削工具5は、締結ボルト51(
図1参照)によって工具マウント44の下面に着脱可能に締結され、基台52と、砥石53と、を備える。基台52は、工具マウント44に対応する大きさに形成されたリング状の部材であり、締結ボルト51によって工具マウント44の下側外周面に着脱可能に締結される。基台52は、工具マウント44の混合流路442bと連通する流路521を備える。混合流路442bから供給された液体と気体との混合流体は、流路521を通じて保持テーブル12に保持されたワークWに向かって噴射口522から噴射される。砥石53は、基台52の下面の噴射口522より外周側にリング状に複数装着され、ワークWに当接してワークW表面の研削加工を行う。
【0033】
〔研削装置の作用〕
次に、本実施形態の研削装置1の作用について説明する。
【0034】
ワークWに対して研削加工を施す場合には、始めに、研削装置1のワーク載置域24に位置付けられた保持テーブル12上にワークWを載置する。なおワークWが半導体ウェーハである場合、デバイスが形成された表面には保護テープTが貼り付けられているので、この保護テープT側をチャックテーブル12に載置する。保持テーブル12に載置されたワークWは、図示しない吸引手段によって保持テーブル12上に吸引保持される。そして、図示しない保持テーブル移動手段を作動させることにより、保持テーブル12を矢印23aで示す方向に移動させ、研削域25に位置付ける。そして、砥石53の外周縁が保持テーブル12の回転中心、すなわちワークWの中心位置を通過するように位置付ける。
【0035】
このような位置関係に位置付けた後、保持テーブル12を例えば300rpmの回転速度で回転させると共に、研削工具5を同一方向に例えば600rpmの回転速度で回転させる。すなわち、電力供給手段45からステータコイル432に交流電力を供給することにより、電動モータ43が回転して回転軸42が回転し、回転軸42の先端に取り付けられた工具マウント44が回転する。そして、工具マウント44を加工させて砥石47をワークWの上面である裏面に所定の圧力で押圧する。この結果、ワークWの裏面全面が研削される。
【0036】
この時、砥石47による研削加工部には液体と気体との混合流体が供給される。すなわち、上述の位置付けを行った後、回転軸42の液体連通路421に液体源から液体が供給される。液体連通路421に供給された液体は、工具マウント44の回転に伴い発生する遠心力によって、第1流路441,液体導入路442a,及び中間部445の順に流れる。一方、第2流路442の中間部445に
は、気体流入口443からの気体が導入される。これにより、液体導入路442aから供給された液体と気体流入口443から導入された気体とは、中間部445において混合され、遠心力による圧力で圧縮された気泡を含む液体と気体との混合流体が生成される。
【0037】
中間部445において生成された混合流体は、工具マウント44の回転に伴い発生する遠心力によって、混合流路442b,流路521の順に流れ、噴射522からワークW表面に向かって噴射される。これにより、砥石52による研削加工部には、液体と気体との混合流体が供給され、液体の圧力と遠心力による圧力で圧縮された気泡が弾ける時に生じる衝撃波によって研削加工時に発生する研削屑が除去される。従って、この研削装置1によれば、液体のみを供給する従来までの研削装置と比較して、研削時に発生する研削屑の除去効果を向上させることができる。
【0038】
なお、上述の通り、中間部445及び混合流路442bは、遠心力の力によって気体を圧縮して液体に混合させる部位であるので、気体流入口443から導入された気体が遠心力の力をより大きく受け、気泡が弾ける時に生じる衝撃波を大きくするために、中間部445及び混合流路442bの管径は気体流入口443の管径より大きくすることが望ましい。
【0039】
また、本実施形態では、液体連通路421に連通する第1流路441は工具マウント44側に形成されているが、
図5に示すように、第1流路441を回転軸42側に延出させて液体連通路421に連通させると共に、液体導入路442aを設けずに第1流路441と混合流路442bの接続部を中間部445とするようにしてもよい。