【実施例】
【0068】
(実施例1)
水5kg中にFe
2O
3(平均粒径:0.6μm)を10.75kg、Mn
3O
4(平均粒径:2μm)を5.70kg、炭酸ストロンチウムを190g加え、還元剤としてカーボンブラックを45g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を70g、バインダーとしてポリビニルアルコールを33g添加して混合物とした。このときの固形分濃度を測定した結果、77重量%であった。この混合物を、湿式ビーズミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。このとき、粉砕強度、時間、回数等を制御し、スラリー中の体積粒径D
90の値を、12.0μmとなるように調整した。ここで、体積粒径D
90の測定については、レーザー回折式粒度分布測定装置は、日機装株式会社製のマイクロトラック、Model9320−X100を用いた。
【0069】
このスラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、乾燥造粒粉を得た。なお、このとき、目的の粒度分布以外の造粒粉は、ふるいにより除去した。
【0070】
この造粒粉について、焼成を行った。この場合、第一の焼成工程として、酸素濃度を20.0%とした雰囲気下の電気炉に投入し、850℃で1.0時間焼成した。その後、常温まで冷却した。そして、第二の焼成工程として、酸素濃度を1.5%とした雰囲気下の電気炉に投入し、1200℃で2.0時間焼成した。その後、常温まで冷却した。得られた焼成物に対して、330℃で加熱し、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施した。得られた焼成物を解粒後にふるいを用いて分級し、平均粒径を34.0μmとした。このようにして、実施例1に係るキャリア芯材を得た。なお、
図1は、実施例1に係るキャリア芯材に相当する。なお、
図1に示すレーザー顕微鏡写真は、キャリア芯材を3000倍に拡大したものである。以下、
図6に示すレーザー顕微鏡写真についても、同様である。
【0071】
なお、得られたキャリア芯材の組成については、Mn
1.07Fe
1.92Sr
0.01O
4で表されるものである。以下、全ての実施例、比較例の組成についても、同様である。
【0072】
次に、このようにして得られた実施例1に係るキャリア芯材について、シリコーン樹脂450重量部と、(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン9重量部とを、溶媒としてのトルエン450重量部に溶解してコート溶液を作製した。このコート溶液を、流動床型コーティング装置を用いて作製したキャリア芯材50000重量部に塗布し、温度300℃の電気炉で加熱して、実施例1に係る樹脂コーティングキャリアを得た。以下、全ての実施例、比較例についても同様にして、樹脂コーティングキャリアを得た。
【0073】
次にこのようにして得られた実施例1に係るキャリアと平均粒径5.0μm程度のトナーとを、ポットミルを用いて所定時間混合し、実施例1に係る二成分系の電子写真現像剤を得た。この場合、キャリアとトナーとをトナーの重量/トナーおよびキャリアの重量=5/100となるように調整した。以下、全ての実施例、比較例についても同様にして、現像剤を得た。
【0074】
得られた現像剤について、実機評価を行った。キャリア芯材の製造工程におけるパラメータ、および実機評価等について、表1、および表2に示す。
【0075】
(実施例2)
第一の焼成工程における焼成温度を1000℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2に係るキャリア芯材を得た。
【0076】
(実施例3)
第一の焼成工程における酸素濃度を10.0%とした以外は、実施例2と同様の方法で、実施例3に係るキャリア芯材を得た。
【0077】
(実施例4)
第二の焼成工程における酸素濃度を3.0%とした以外は、実施例2と同様の方法で、実施例4に係るキャリア芯材を得た。
【0078】
(実施例5)
スラリー化工程において体積粒径D
90を10.2μmとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例5に係るキャリア芯材を得た。
【0079】
(実施例6)
スラリー化工程において体積粒径D
90を13.1μmとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例6に係るキャリア芯材を得た。
【0080】
(実施例7)
第二の焼成工程における焼成温度を1150℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例7に係るキャリア芯材を得た。
【0081】
(比較例1)
スラリー化工程において体積粒径D
90を8.5μmとした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1に係るキャリア芯材を得た。
【0082】
(比較例2)
スラリー化工程において体積粒径D
90を15.0μmとした以外は、実施例2と同様の方法で、比較例2に係るキャリア芯材を得た。なお、この場合に得られたキャリア芯材の外観を示すレーザー顕微鏡写真を、
図6に示す。
【0083】
(比較例3)
第一の焼成工程における焼成温度を1200℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例3に係るキャリア芯材を得た。
【0084】
(比較例4)
第一の焼成工程における酸素濃度を5.0%とした以外は、実施例2と同様の方法で、比較例4に係るキャリア芯材を得た。
【0085】
(比較例5)
第一の焼成工程における酸素濃度を7.0%とした以外は、実施例2と同様の方法で、比較例5に係るキャリア芯材を得た。
【0086】
(比較例6)
第一の焼成工程における酸素濃度を5.0%とし、第二の焼成工程における酸素濃度を5.0%とした以外は、実施例2と同様の方法で、比較例6に係るキャリア芯材を得た。
【0087】
(比較例7)
第二の焼成工程における焼成温度を1250℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例7に係るキャリア芯材を得た。
【0088】
(比較例8)
Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)を10.75kg、Mn
3O
4(平均粒径:2μm)を5.70kg、炭酸ストロンチウムを190g、カーボンブラック45gを十分に混合し、平均粒子径D
50が2.1μmになるように粉砕した。得られた混合物を、800℃で4.0時間仮焼し、得られた仮焼粉、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を60g、バインダーとしてポリビニルアルコール33gを水5kgに分散し、湿式ビーズミルにより粉砕処理し、スラリーの平均粒子径D
50が2.1μm、体積粒径D
90が15.8μmとなるように調整した。酸素濃度1.5%の電気炉に投入し、1300℃で一段階焼成し比較例8に係るキャリア芯材を得た。なお、この製造方法については、上記した特許文献1に記載の方法に準じたものである。
【0089】
(比較例9)
Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)を10.75kg、Mn
3O
4(平均粒径:2μm)を5.70kg、炭酸ストロンチウムを190g、カーボンブラック45gを十分に混合し、得られた混合物を、800℃で4.0時間仮焼し、その後平均粒子径D
50が1.4μmになるように粉砕した。得られた粉砕粉を水5kgに分散し、スプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、乾燥造粒粉を得た。この造粒粉を、第一の焼成工程として、酸素濃度20.0%の電気炉に投入し1200℃で3.0時間焼成した。次いで、第二の焼成工程として、得られた焼成物をさらに酸素濃度1.5%の電気炉に投入し、1200℃で2.0時間焼成し、比較例9に係るキャリア芯材を得た。なお、この製造方法については、上記した特許文献2に記載の方法に準じたものである。
【0090】
(比較例10)
第二の焼成工程における酸素濃度を0.5%とした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例10に係るキャリア芯材を得た。なお、この製造方法については、特開2013−25204号公報に記載の方法に準じたものである。
【0091】
(比較例11)
第一の焼成工程における焼成温度を500℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例11に係るキャリア芯材を得た。
【0092】
(比較例12)
第二の焼成工程における焼成温度を1000℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例12に係るキャリア芯材を得た。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
なお、参考までに、表1中には、キャリア芯材を構成する粒子群の最大高さRz、キャリア芯材を構成する粒子群の算術表面粗さRaも示している。
【0096】
ここで、キャリア芯材を構成する粒子群の要素の平均長さRSm、キャリア芯材を構成する粒子群の歪度(スキューネス)Rsk、キャリア芯材を構成する粒子群の最大高さRz、キャリア芯材を構成する粒子群の算術表面粗さRaについては、以下のように測定した。
【0097】
超深度カラー3D形状測定顕微鏡(VK−X100、株式会社キーエンス製)を用い、150倍対物レンズで表面を観察して求めた。具体的には、まず表面の平坦な粘着テープにキャリア芯材の粒子を固定し、150倍対物レンズで測定視野を決定した後、オートフォーカス機能を用いて焦点を粘着テープ面に調整し、オート撮影機能を用いてキャリア芯材の粒子表面の3次元形状を取り込んだ。
【0098】
各パラメータの測定には、装置付属のソフトウェアVK−H1XAを用いて行った。まず、前処理として、得られたキャリア芯材の粒子表面の3次元形状から解析に用いる部分の取り出しを行った。
図7は、キャリア芯材の粒子表面を示す概略図である。具体的には、キャリア芯材21の粒子表面22の中央部分に長さ15.0μmの水平方向に延びる線分23を引き、その上下に4本間隔で10本ずつ平行線を追加した場合の線分上にあたる粗さ曲線を、計21本分取り出した。
図7において、上側の10本の線分24a、下側の10本の線分24bを簡略的に示している。
【0099】
次に、取り出した粗さ曲線は、キャリア芯材が略球形状であり、バックグラウンドとして一定の曲率を持っているため、バックグラウンドの補正として、最適な二次曲線をフィッティングし、粗さ曲線から差し引く補正を行った。この場合のカットオフ値λsを、0.25μm、カットオフ値λcを0.08mmとした。
【0100】
要素の平均長さRSmについては、粗さ曲線のうち、谷と山の組み合わせを一つの要素と規定し、それぞれの要素の長さの平均値を算出することによって求められる。
【0101】
歪度(スキューネス)Rskについては、粗さ曲線を以下の数1に示す式にあてはめて算出した。
【0102】
【数1】
【0103】
ここで、数1の式中、Rnは、基準長さ15μmにおけるn番目の山または谷の平均線との差異を示し、二乗平均平方根高さRqは以下の数2に示す式によって求められる。
【0104】
【数2】
【0105】
ここで、得られた歪度(スキューネス)Rskについては、その値が大きいほど、谷に位置する領域に偏ることを示すものである。
【0106】
最大高さRzについては、粗さ曲線の中で最も高い山の高さと最も深い谷の深さの和として求めた。
【0107】
算術平均粗さRaについては、粗さ曲線の絶対値の平均を示したものであり、以下の数3に示す式によって求められる。
【0108】
【数3】
【0109】
ここで、1rは、粗さ曲線の長さを示す。
【0110】
これら要素の平均長さRSm、歪度(スキューネス)Rsk、最大高さRz、算術平均粗さRaの測定については、JIS B0601(2001年度版)に準拠して行われるものである。
【0111】
また、解析に用いるキャリア芯材の平均粒子径については、32.0〜34.0μmに限定した。このように測定対象となるキャリア芯材の平均粒子径を狭い範囲に限定することで、曲率補正の際に生じる残渣による誤差を小さくすることができる。
【0112】
なお、各パラメータの平均値として、30粒子の平均値を用いることとした。
【0113】
実機評価については、以下のように行った。上記した方法で得られた各実施例、比較例に係る現像剤を用い、セットする現像剤の量を500gとし、現像域で交流バイアスを印加するよう改良したデジタル反転現像方式を採用する70枚機(70cpm)相当のものを評価機として使用した。
【0114】
キャリア飛散の評価については、以下のように行った。白紙を1000枚印刷し、1000枚目の用紙における黒点の数を目視で判断した。黒点が見られない場合を「◎」(優秀)、発見された黒点の数が1〜5個の場合を「○」(良好)、発見された黒点の数が6〜10個の場合を「△」(やや劣悪)、発見された黒点の数が11個以上の場合を「×」(劣悪)と判断した。
【0115】
また、メモリ画像の評価については、以下のように行った。文字およびベタ黒画像を1000枚印刷し、1000枚目における用紙のベタ画像部を目視で判断した。ベタ画像を良好に再現している場合を「◎」(優秀)、ごくわずかに擦れがあるが、実使用上問題のないレベルの場合を「○」(良好)、わずかに印字が読み取れるレベルの場合を「△」(やや劣悪)、印字が鮮明に読み取れるレベルの場合を「×」(劣悪)と判断した。
【0116】
帯電量変化については、以下のように行った。上記したメモリ画像の評価前に、現像スリーブの中央部分の磁気ブラシを吸引して評価前現像剤を得た。そして、得られた評価前現像剤について、帯電量を測定した。その後、メモリ画像の評価後に、再び同じ場所において評価後現像剤を得、同様に、帯電量を測定した。そして、評価前、すなわち、印刷前の帯電量から評価後、すなわち、印刷後の帯電量を差し引いた値を評価前の帯電量で除して、百分率を算出した。すなわち、(印刷前の帯電量−印刷後の帯電量)/印刷後の帯電量×100という式で、帯電量変化を算出した。そして、帯電量変化が3%以下である場合を「◎」(優秀)、帯電量変化が4〜7%である場合を「○」(良好)、帯電量変化が8〜12%である場合を「△」(やや劣悪)、帯電量変化が13%以上である場合を「×」(劣悪)と判断した。
【0117】
ここで、帯電量の測定について説明する。帯電量の測定には、日本パイオテク株式会社製のSTC−1−C1型を用い、得られた現像剤について、吸引圧力5.0kPa、吸引用メッシュをSUS製の795meshで行った。同一サンプルについて2回の測定を行い、これらの平均値を各コア帯電量とした。コア帯電量の算出式については、コア帯電量(μC(クーロン)/g)=実測電荷(nC)×10
3×係数(1.0083×10
−3)÷トナー重量(吸引前重量(g)−吸引後重量(g))となる。この場合、測定した雰囲気としては、常温常湿環境、具体的には、25℃、相対湿度50%の雰囲気で行った。
【0118】
なお、上記した実施例1〜実施例7、比較例1〜比較例12について、横軸にキャリア芯材を構成する粒子群の要素の平均長さRSmの平均、縦軸にキャリア芯材を構成する粒子群の歪度(スキューネス)Rskの平均を取り、プロットしたグラフを、参考までに
図8に示す。
図8中、実施例を黒菱形印、比較例を黒四角印で示している。
【0119】
表1および表2を参照して、実施例1〜実施例4の場合、キャリア飛散、メモリ画像、帯電量変化の各パラメータについて、いずれも「◎」(優秀)の評価か「〇」(良好)の評価である。
【0120】
これに対し、比較例1〜比較例12については、少なくとも上記した各パラメータのうちの一つが「△」(やや劣悪)か「×」(劣悪)を含む評価である。
【0121】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。