特許第5690581号(P5690581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690581
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】切削ブレード
(51)【国際特許分類】
   B24D 5/02 20060101AFI20150305BHJP
   B24D 5/16 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   B24D5/02 B
   B24D5/16
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-289844(P2010-289844)
(22)【出願日】2010年12月27日
(65)【公開番号】特開2012-135833(P2012-135833A)
(43)【公開日】2012年7月19日
【審査請求日】2013年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】笠井 康成
【審査官】 橋本 卓行
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第02719741(DE,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02230046(EP,A1)
【文献】 特開平06−262515(JP,A)
【文献】 特開2006−212748(JP,A)
【文献】 実開昭62−035764(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 5/02
B24D 5/16
B24B 27/06
H01L 21/78
B24B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に装着される切削ブレードであって、
該切削ブレードは、環状に形成された環状ブレードと、該環状ブレードが接着剤を介して装着される中央に開口部が形成された環状基台とから構成され、
該環状ブレードの外周部が該環状基台の外周部から突出しているとともに、該環状ブレードの内周部の内径が該開口部の内径と同等以上の大きさに形成され
該環状基台の開口部は、該回転軸の端部に形成されたブレードマウントを構成する円形フランジの中央から突出した支持軸に係合するように構成され、
該環状ブレードの内周部の内径は、該円形フランジの外周より小さく形成されていて、該環状基台は該ブレードの内周部内径よりも大きな径の部分で該ブレードに当接し、該環状ブレードは、該円形フランジに当接し、該支持軸の先端に形成された雄ねじに螺合する固定ナットによって該環状基台と該円形フランジとの間に締結される切削ブレード。
【請求項2】
前記環状ブレードは、レジンボンド砥石、ビトリファイドボンド砥石、メタルボンド砥石のいずれかである
請求項1に記載の切削ブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸に装着され、各種被加工物の切削に用いられる切削ブレードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成された半導体ウェーハは、回転可能な切削ブレードを備えた切削装置によって分割予定ラインが切削されて個々のデバイスに分割され、各種電子機器等に利用されている。また、複数のデバイスがパッケージングされた基板をデバイスごとに分割することにより構成されるパッケージデバイスも、回転可能な切削ブレードを備えた切削装置によって分割され、各種電子機器に利用されている。
【0003】
切削ブレードには、ダイヤモンド砥粒等をニッケルめっきで固めて構成される電鋳ハブブレード、ダイヤモンド砥粒等をレジンボンドで固めて構成されるレジンボンドブレード、ダイヤモンド砥粒等をメタルボンドで固めて構成されるメタルボンドブレード、ダイヤモンド砥粒等をビトリファイドボンドで固めて構成されるビトリファイドボンドプレートなどがあり、被加工物の特性に応じてこれらのブレードの中から適宜選択して被加工物を適正に切削している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−36291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電鋳ハブブレードは、アルミニウム基台にダイヤモンド砥粒をニッケルめっきで固定してアルミニウム基台と一体に構成されるため、回転軸に装着されたブレードマウントに対する着脱を容易に行うことができる。しかし、レジンボンドブレード、メタルボンドブレード、ビトリファイドボンドブレードなどの基台と一体化されていないブレードは、回転軸に装着された固定フランジにブレードを挿入し着脱フランジとでブレードを挟みこむように取り付けるため、電鋳ハブブレードから基台と一体化されていないブレードに交換する際に、回転軸に装着されたブレードマウントと固定フランジとを交換しなければならず、作業性が悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、ブレードマウントと固定フランジとを交換することなく切削ブレードを交換できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転軸に装着される切削ブレードに関するもので、切削ブレードは、環状に形成された環状ブレードと、環状ブレードが接着剤を介して装着される中央に開口部が形成された環状基台とから構成され、環状ブレードの外周部が環状基台の外周部から突出しているとともに、環状ブレードの内周部の内径が開口部の内径と同等以上の大きさに形成され、該環状基台の開口部は、該回転軸の端部に形成されたブレードマウントを構成する円形フランジの中央から突出した支持軸に係合するように構成され、前記環状ブレードの内周部の内径は、該円形フランジの外周より小さく形成されていて、該環状基台は該ブレードの内周部内径よりも大きな径の部分で該ブレードに当接し、該環状ブレードは、該円形フランジに当接し、該支持軸の先端に形成された雄ねじに螺合する固定ナットによって該環状基台と該円形フランジとの間に締結される
【0008】
上記切削ブレードにおいて、環状ブレードには、例えば、レジンボンド砥石、ビトリファイドボンド砥石、メタルボンド砥石がある。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る切削ブレードは、環状に形成された環状ブレードと環状基台とが接着剤を介して一体化され、環状基台の中央部には開口部が形成され、環状ブレードの外周部が環状基台の外周部から突出しているとともに、環状ブレードの内周部の内径が開口部の内径と同等以上の大きさに形成されているため、回転軸への電鋳ハブブレードの装着用に使用されるブレードマウントに直接装着することが可能となり、ブレードマウントと固定フランジとを交換する必要がなく、作業性が向上する。また、環状ブレードは、円形フランジに当接し、支持軸の先端に形成された雄ねじに固定ナットが螺合して締結されるため、環状基台と円形フランジとによって挟持され接着剤の強度を補うことができ、環状基台から環状ブレードが脱落することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】切削ブレードを示す分解斜視図である。
図2】切削ブレードを示す斜視図である。
図3】切削ブレードを示す断面図である。
図4】回転軸、切削ブレード及び固定ナットを示す分解斜視図である。
図5】回転軸に切削ブレードが装着され固定ナットで固定された状態を示す斜視図である。
図6】回転軸に切削ブレードが装着され固定ナットで固定された状態を示す断面図である。
図7】回転軸、電鋳ハブブレード及び固定ナットを示す分解斜視図である。
図8】切削装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す切削ブレード1は、環状に形成され中央部に円形の孔20が形成された環状ブレード2と、中央部に開口部30が形成された環状基台3とから構成される。
【0012】
環状ブレード2は、レジンボンド砥石、ビトリファイドボンド砥石、メタルボンド砥石のいずれかによって構成され、内周部21と外周部22とを有している。レジンボンド砥石、ビトリファイドボンド砥石、メタルボンド砥石の製法例は以下のとおりである。
【0013】
(レジンボンド砥石の製法例)
フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等からなるレジンボンドに対し、粒径5μmのダイヤモンド砥粒を体積比で10〜20%混入するとともに、粒径1μmのSic粒をフィラーとして体積比で25〜35%混入し、180〜200℃の焼結温度で7〜8時間焼結し、200μm厚のレジンボンド砥石を形成する。
【0014】
(メタルボンド砥石の製法例)
銅と錫を主成分とし、コバルト、ニッケル等をわずかに混入させたメタルボンドに対し、粒径5μmのダイヤモンド砥粒を体積比で10〜20%混入するとともに、粒径1μmのSic粒をフィラーとして体積比で25〜35%混入し、600〜700℃の焼結温度で1時間焼結し、200μm厚のメタルボンド砥石を形成する。
【0015】
(ビトリファイドボンドの製法例)
二酸化珪素(SiO)を主成分とし長石をわずかに混入させたビトリファイドボンドに対し、粒径5μmのダイヤモンド砥粒を体積比で10〜20%混入するとともに、粒径1μmのSic粒をフィラーとして体積比で25〜35%混入し、700〜800℃の焼結温度で1時間焼結し、200μm厚のビトリファイドボンド砥石を形成する。
【0016】
環状基台3は、アルミニウム等によって形成されており、環状ブレード2に対面する面である表面31と、表面31の反対側の面である裏面32とを有し、中央部には、表面31から裏面32にかけて貫通する円形の開口部30が形成されている。裏面32側は面取りされ、面取りされていない側面が外周部33を形成している。
【0017】
接着剤を介して環状ブレード2と環状基台3の表面31とを貼り合わせることにより、図2に示す切削ブレード1となる。接着剤としては、例えば株式会社隆成コミュニティから販売されているオートウェルド(AW−20Z)を使用することができる。
【0018】
図3に示すように、環状ブレード2の外周部22は、環状基台3の外周部33よりも径方向外周側に突出している。また、環状ブレード2の内周部21の内径R1は、環状基台3の開口部30の内径R2と同等以上の大きさに形成されている。図3の例では、内径R1が内径R2よりも大きく形成されている。
【0019】
このように構成される切削ブレード1は、例えば図4に示す回転軸4に装着されて使用される。回転軸4には、切削ブレード1を支持するためのブレードマウント5が形成されている。このブレードマウント5は、環状ブレード2の一方の面を支持する円形フランジ50と、円形フランジ50の中央から回転軸4の軸方向に延びる支持軸51と、支持軸51に形成された雄ねじ52とから構成される。
【0020】
支持軸51には、切削ブレード1の孔20及び開口部30が挿入される。このとき、切削ブレード1は、環状ブレード2側から挿入され、環状ブレード2が円形フランジ50に当接するまで挿入される。そして、図5に示すように、雄ねじ52に固定ナット53を螺合させて締結することにより、切削ブレード1が円形フランジ50と固定ナット53とによって挟持される。
【0021】
切削ブレード1が円形フランジ50と固定ナット53とによって挟持された状態では、図6に示すように、環状ブレード2の内周部21の内径R1は、円形フランジ50の外周部50aの外形R3よりも小さく形成されている。
【0022】
固定ナット53を緩めて切削ブレード1をブレードマウント5から取り外すと、図7に示すように、ブレードマウント5に電鋳ハブブレード6を装着することができる。電鋳ハブブレード6は、アルミニウム基台60とダイヤモンド砥粒をニッケルめっきで固定した切り刃61とが一体に形成されて構成される。
【0023】
この電鋳ハブブレード6も、切り刃61が円形フランジ50に当接するまで挿入され、雄ねじ52に固定ナット53を螺合させて締結することにより、円形フランジ50と固定ナット53とによって挟持される。
【0024】
このように、ブレードマウント5によって切削ブレード1及びハブブレード6を支持することができるため、ハブブレード6を切削ブレード1に交換する際にも、従来のように、ブレードマウント5を固定フランジに交換する必要がない。また、環状ブレード2は、円形フランジ50に当接し、雄ねじ52に固定ナット53が螺合して締結されるため、環状基台3と円形フランジ50とによって環状ブレード2が挟持され、接着剤の強度を補うことができ、環状基台3から環状ブレード2が脱落するのを防止することができる。
【0025】
このようにして回転軸4に装着された切削ブレード1は、例えば図8に示す切削装置7において使用される。この切削装置7においては、保持手段70に保持された被加工物に対して切削手段71による切削が行われる。
【0026】
保持手段70は、回転可能であるとともにX方向に移動可能となっている。一方、切削手段71は、Y方向及びZ方向に移動可能となっている。切削手段71には、回転軸4を備えており、回転軸4には切削ブレード1またはハブブレード6を装着することができる。
【0027】
被加工物Wは、テープTを介してリング状のフレームFに支持され、保持手段70に保持される。そして、保持手段70がX方向に移動するとともに、切削ブレード1(6)が高速回転しながら切削手段71が降下し、切削ブレード1(6)が被加工物Wに切り込むことにより、被加工物Wが切削される。
【符号の説明】
【0028】
1:切削ブレード
2:環状ブレード 20:孔 21:内周部 22:外周部
3:環状基台 30:開口部 31:表面 32:裏面 33:外周部
4:回転軸
5:ブレードマウント 50:円形フランジ 50a:外周部
51:支持軸 52:雄ねじ 53:固定ナット
6:電鋳ハブブレード 60:アルミニウム基台 61:切り刃
7:切削装置 70:保持手段 71:切削手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8