特許第5690599号(P5690599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690599
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/04 20060101AFI20150305BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   B24B41/04
   H01L21/78 F
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-10519(P2011-10519)
(22)【出願日】2011年1月21日
(65)【公開番号】特開2012-148386(P2012-148386A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2013年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】小野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】前杢 芳雄
【審査官】 橋本 卓行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−254318(JP,A)
【文献】 特開平10−058320(JP,A)
【文献】 特開平11−239956(JP,A)
【文献】 特開2003−124155(JP,A)
【文献】 特開2005−349549(JP,A)
【文献】 特開2008−302481(JP,A)
【文献】 特開2010−197088(JP,A)
【文献】 特開2011−98400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/04
H01L 21/301
B23Q 1/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持手段と、
該保持手段に保持されたワークを切削加工する切削ブレードと、該切削ブレードが装着され回転可能なスピンドルと、該スピンドルを囲むスピンドルカバーと、該切削ブレードの回転軸を該保持手段に保持されたワークの表面に対して傾斜させる傾斜機構と、を含む切削加工手段と、
該保持手段と該切削加工手段とを加工進行方向と該加工進行方向に交わる割り出し方向とに相対的に移動させる移動手段と、
を有する切削加工装置であって、
該傾斜機構は、
該加工進行方向を回転軸として該スピンドルカバーを回転可能に連結する連結部を有するスピンドル支持部と、
該割り出し方向において該連結部が配設された位置と異なった位置に配設され、該スピンドルカバーを該切削ブレードが該保持手段側に回転する方向に付勢する付勢部と、
該割り出し方向において該連結部が配設された位置を基準として該付勢部が配設された位置側に配設され、該スピンドルカバーを該切削ブレードが該保持手段から離れる側に回転する方向に、該付勢部による付勢よりも大きな力を加える外力付与部と、
を有し、
該外力付与部は、
該スピンドル支持部もしくはスピンドルカバーの一方に配設された接触部材と、
該スピンドル支持部もしくはスピンドルカバーの一方に配設され、該接触部材を該割り出し方向に沿って移動させる移動部と、
該スピンドル支持部もしくはスピンドルカバーの他方に配設され、該接触部材に接触した該接触部材の移動方向に対して傾斜した被接触面が形成された被接触部材と、
を有し、
該外力付与部によって該スピンドルカバーを該連結部を回転軸として該スピンドル支持部に対して回転させることによって該切削ブレードの回転軸を該保持手段に保持されたワークの表面に対して傾斜させる切削加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を切削する切削ブレードを備え、切削ブレードが被加工物に対して切り込む際の角度を可変とした切削加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の被加工物(ワーク)を切削する切削装置では、保持手段においてワークを保持し、高速回転する切削ブレードと保持手段とを相対移動させながらワークに対して切削ブレードを切り込ませて切断を行っている。ワークの種類によっては、ワークの表面と直角な面に対して傾斜する切断面が形成されるように切削を行うこともあるため、切削ブレードの回転軸を傾斜させる機構を有する切削装置も提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された切削装置では、鉛直方向に配設された雄ネジロッドを回転させることにより移動雌ネジブロックを鉛直方向に移動させ、これによって移動雌ねじブロックの係合穴に係合した係合突起を鉛直方向に移動させて係合突起と一体に形成されたスピンドルユニット支持部材を傾斜させ、スピンドルに装着された切削ブレードを傾斜させる構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−124155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載された切削装置では、係合穴と係合突起との間のバックラッシュに起因し、スピンドルカバーの傾斜角度を正確に制御することが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点にかんがみてなされたものであり、その目的は、切削加工装置において、バックラッシュのないスピンドル傾斜機構を実現し、切削ブレードの傾斜を正確に制御可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ワークを保持する保持手段と、保持手段に保持されたワークを切削加工する切削ブレードと、切削ブレードが装着され回転可能なスピンドルと、スピンドルを囲むスピンドルカバーと、切削ブレードの回転軸を保持手段に保持されたワークの表面に対して傾斜させる傾斜機構とを含む切削加工手段と、保持手段と切削加工手段とを加工進行方向と加工進行方向に交わる割り出し方向とに相対的に移動させる移動手段とを有する切削加工装置に関し、傾斜機構は、加工進行方向を回転軸としてスピンドルカバーを回転可能に連結する連結部を有するスピンドル支持部と、割り出し方向において連結部が配設された位置と異なった位置に配設されスピンドルカバーを切削ブレードが保持手段側に回転する方向に付勢する付勢部と、割り出し方向において連結部が配設された位置を基準として付勢部が配設された位置側に配設されスピンドルカバーを切削ブレードが保持手段から離れる側に回転する方向に付勢部による付勢よりも大きな力を加える外力付与部とを有し、外力付与部は、スピンドル支持部もしくはスピンドルカバーの一方に配設された接触部材と、スピンドル支持部もしくはスピンドルカバーの一方に配設され接触部材を割り出し方向に沿って移動させる移動部と、スピンドル支持部もしくはスピンドルカバーの他方に配設され接触部材に接触した接触部材の移動方向に対して傾斜した被接触面が形成された被接触部材とを有し、外力付与部によってスピンドルカバーを連結部を回転軸としてスピンドル支持部に対して回転させることによって切削ブレードの回転軸を保持手段に保持されたワークの表面に対して傾斜させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、切削ブレードが保持手段側に回転する方向に向けてスピンドルカバーを付勢する付勢部を設け、切削ブレードがワークの表面に対していずれの方向に傾く場合でも、常にスピンドルカバーに対して付勢力が働く構成としたため、バックラッシュを回避し、切削ブレードの傾斜角度を正確に制御することが可能となる。
【0009】
また、外力付与部を構成する移動部が接触部材を割り出し方向に沿って移動させ、接触部材がスピンドル支持部もしくはスピンドルカバーの一方に配設され、接触部材の移動方向に対して傾斜した被接触面が形成された被接触部材がスピンドル支持部もしくはスピンドルカバーの他方に配設された構成とすることで、スピンドルの割り出し方向と接触部材の移動方向とが一致するため、外力付与部を無駄なスペースを使用しない構造とすることができ、これにより接触部材の移動距離を長くとることが可能となり、傾斜の分解能を高めることも容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】切削加工装置の一例を示す正面図である。
図2】切削ブレードがワークから遠ざかる方向にスピンドルを傾斜させた状態を示す正面図である。
図3】切削ブレードがワークに近づく方向にスピンドルを傾斜させた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す切削加工装置1は、切削対象の被加工物(ワーク)Wを保持する保持する保持手段2と、保持手段2に保持されたワークWに対して切削加工を施す切削加工手段3とを備えている。保持手段2と切削加工手段3とは、移動手段8によって駆動されて加工進行方向(X方向)と加工進行方向に交わる割り出し方向(Y方向)とに相対的に移動可能となっている。さらに、保持手段2と切削加工手段3とは、移動手段8によって駆動されて加工進行方向(X方向)及び割り出し方向(Y方向)に交わるワークの厚み方向(Z方向)にも相対的に移動可能となっている。例えば、保持手段2が加工進行方向に移動し、切削加工手段3が割り出し方向及びワークの切り込み方向に移動する構成となっている。
【0012】
切削加工手段3は、保持手段2に保持されたワークに作用して切削加工する切削ブレード30と、切削ブレード30が装着され回転可能なスピンドル31と、スピンドル31を囲んだ状態で回転可能に支持するスピンドルカバー32と、切削ブレード30の回転軸300を保持手段2に保持されたワークWの表面W1に対して傾斜させる傾斜機構33と、スピンドル31及び切削ブレード30を回転させるモータ34を備えている。
【0013】
切削ブレード30は、スピンドル31に装着され、ナット35をスピンドル31の先端に形成された雄ねじに締結することにより、スピンドル31に固定されている。切削ブレード30は、スピンドル31の回転軸と同様に割り出し方向の回転軸300を有している。切削ブレード30は、フランジ部301によって挟持されており、割り出し方向の厚み(例えば数十μm程度)を有している。
【0014】
傾斜機構33は、スピンドル31、スピンドルカバー32及び切削ブレード30を支持するスピンドル支持部4を備えている。スピンドル支持部4は、加工進行方向を回転軸としてスピンドルカバー32を回転可能に連結する連結部40を有しており、スピンドルカバー32は、連結部40の回転軸400を回転中心として回転することにより傾斜可能となっている。そして、スピンドルカバー32が傾斜することにより、スピンドル31も同様に傾斜し、スピンドル31に装着された切削ブレード30もワークWの表面W1に対して傾斜する。
【0015】
傾斜機構33は、スピンドルカバー32を切削ブレード30が保持手段2に近づく側に回転する方向に付勢する付勢部5を備えている。図示の例における付勢部5は、例えばテンションスプリングにより構成され、上方に向けて付勢されている。付勢部5は、連結部40が配設された位置とは割り出し方向において異なった位置に配置されている。付勢部5の上端50はスピンドル支持部4に回転可能に連結され、下端51はスピンドルカバー32に回転可能に連結されている。
【0016】
傾斜機構33には、スピンドルカバー32を切削ブレード30が保持手段2から離れる側に回転する方向に、付勢部5による付勢力よりも大きな力を加える外力付与部6を備えている。外力付与部6は、連結部40が配設された位置を基準として、割り出し方向において付勢部5が配設された位置側に配設されている。
【0017】
外力付与部6は、連結部40の回転軸400を回転中心としてスピンドルカバー32をスピンドル支持部4に対して回転させることによって、切削ブレード30の回転軸300を保持手段2に保持されたワークWの表面W1に対して傾斜させる機能を有する。
【0018】
外力付与部6は、割り出し方向の回転軸を有し正逆回転可能なボールネジ60と、カップリング61を介してボールネジ60と接続されたモータ62と、ボールネジ60に螺合するナットを内部に備えボールネジ60の回転により割り出し方向に駆動される接触部材支持部63とを備えている。例えば、ボールネジ60を正方向に回転させることにより接触部材支持部63が図1における左方向に移動し、ボールネジ60を逆方向に回転することにより接触部材支持部63が図1における右方向に移動する構成となっている。
【0019】
接触部材支持部63は、円板状に形成された接触部材630を回転可能に支持しており、接触部材630も接触部材支持部63と同方向に移動する構成となっている。ボールネジ60とカップリング61とモータ62とで、接触部材630を割り出し方向に沿って移動させる移動部64が構成されている。図示の例における接触部材630は、スピンドル支持部4に配設されている。
【0020】
スピンドルカバー32には、接触部材630の割り出し方向への移動を案内する被接触部材7が連結されている。被接触部材7には、接触部材630の移動方向である割り出し方向に対してワークWの厚み方向に傾斜した被接触面70が形成されている。被接触面70は、被接触部材7の始点部320に近づくほどスピンドルカバー32に近づく様な傾斜を有している。
【0021】
このように構成される切削加工装置1において、保持手段2に保持されたワークWの切削時は、移動手段8による制御の下で、保持手段2と切削加工手段3とを割り出し方向に相対移動させて切削ブレード30を割り出し方向の所定箇所に位置付けた後、保持手段2と切削加工手段3とをワークの厚み方向に移動させることにより切削ブレード30をワークWに対して相対的に降下させ、保持手段2と切削加工手段3とを加工進行方向に移動させることにより、高速回転する切削ブレード30をワークWの表面W1側から切り込ませて切削を行う。
【0022】
図1に示したように、切削ブレード30の回転軸300が割り出し方向と一致する状態、すなわち、切削ブレード30の面方向30aがワークの切り込み方向と一致する状態では、接触部材支持部63がボールネジ60のほぼ中央に位置し、接触部材630も被接触面70のほぼ中央に位置している。
【0023】
この状態から、切削ブレード30の面方向30aを傾斜させる場合は、外力付与部6による制御によって連結部40を中心としてスピンドルカバー32をいずれかの方向に回転させて傾斜させる。
【0024】
例えば、図2に示すように、切削ブレード30がワークWから遠ざかる方向(矢印A方向)にスピンドルカバー32を回転させる場合は、外力付与部6のボールネジ60を正回転させることにより接触部材支持部63を図2における左方向(矢印B方向)に駆動する。そうすると、接触部材630が被接触部7を下方に押圧するため、付勢部5が付勢力に抗して伸張しつつ、支点部320を支点としてスピンドルカバー32の後部側(切削ブレード30から離れた側:図における左側)が降下する。そして、連結部40の回転軸400を回転中心としてスピンドルカバー32の前部側(切削ブレード30に近い側:図における右側)が持ち上げられ、切削ブレード30の面方向30aの角度が変化する。
【0025】
一方、例えば、図3に示すように、切削ブレード30がワークWに近づく方向(矢印C方向)にスピンドルカバー32を回転させる場合は、外力付与部6のボールネジ60を逆回転させることにより接触部材支持部63を図3における右方向(矢印D方向)に駆動する。そうすると、付勢力によって付勢部5が伸縮し、支点部320を支点としてスピンドルカバー32の後部側が上昇する。そして、連結部40の回転軸400を回転中心としてスピンドルカバー32の前部側が降下し、切削ブレード30の面方向30aの角度が変化する。
【0026】
このようにして切削ブレード30を傾斜させる際には、付勢部5によってスピンドルカバー32が切削ブレード30が保持手段2側に回転する方向に常に付勢されており、切削ブレード30をワーク2に対していずれの方向に傾斜させる場合でも、常にスピンドルカバー32に対して付勢力が働く。したがって、バックラッシュを回避し、切削ブレードの傾斜角度を正確に制御することが可能となる。
【0027】
また、外力付与部6を構成するボールネジ60を割り出し方向に配設することにより、スピンドル31の割り出し方向と接触部材630の移動方向とが一致するため、外力付与部6を無駄なスペースを使用しない構成とすることができる。そして、ボールネジ60を割り出し方向に配設することによって、ボールネジ60を長くすることが容易となるため、切削ブレード30の傾斜の分解能を高くすることが可能となる。
【0028】
なお、本実施形態では、接触部材630及び接触部材630を割り出し方向に沿って移動させる移動部64をスピンドル支持部4側に配設し、被接触部材7をスピンドルカバー32側に配設した構成としたが、接触部材630及び移動部64をスピンドルカバー32側に配設し、被接触部材7をスピンドル支持部4側に配設するようにしてもよい。すなわち、接触部材630及び移動部64がスピンドル支持部4もしくはスピンドルカバー32の一方に配設され、被接触部材7がスピンドル支持部4もしくはスピンドルカバー32の他方に配設されていればよい。
【符号の説明】
【0029】
1:切削加工装置
2:保持手段
3:切削加工手段
30:切削ブレード 31:スピンドル
32:スピンドルカバー 320:支点部
33:傾斜機構
34:モータ 35:ナット
4:スピンドル支持部
40:連結部 400:回転軸
5:付勢部
6:外力付与部
60:ボールネジ 61:カップリング 62:モータ
63:接触部材支持部 630:接触部材
64:移動部
7:被接触部材 70:被接触面
8:移動手段
W:ワーク W1:表面
図1
図2
図3