(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  10容量%留出温度が140℃以上かつ90容量%留出温度が380℃以下である原料油から炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素を製造する単環芳香族炭化水素の製造方法であって、
  前記原料油を、結晶性アルミノシリケートを含有する単環芳香族炭化水素製造用触媒を充填した分解改質反応器内に導入し、前記単環芳香族炭化水素製造用触媒に接触させ、反応させて、炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素を含む生成物を得る分解改質反応工程と、
  前記分解改質反応工程にて生成した生成物より分離された炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素を精製し、回収する精製回収工程と、
  前記分解改質反応工程にて生成した生成物より分離された炭素数9以上の重質留分を水素化する水素化反応工程と、
  前記水素化反応工程により得た重質留分の水素化反応物を前記分解改質反応工程に戻すリサイクル工程と、を有し、
  前記リサイクル工程では、前記原料油が前記分解改質反応器内にて前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間より、前記重質留分の水素化反応物が前記分解改質反応器内にて前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間の方が短くなるように、前記重質留分の水素化反応物を、前記分解改質反応器に対して前記原料油の導入位置とは異なる位置に導入することを特徴とする単環芳香族炭化水素の製造方法。
  10容量%留出温度が140℃以上かつ90容量%留出温度が380℃以下である原料油から炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素を製造する単環芳香族炭化水素の製造方法であって、
  前記原料油を、結晶性アルミノシリケートを含有する単環芳香族炭化水素製造用触媒を充填した分解改質反応器内に導入し、前記単環芳香族炭化水素製造用触媒に接触させ、反応させて、炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素を含む生成物を得る分解改質反応工程と、
  前記分解改質反応工程にて生成した生成物の一部を水素化する水素化反応工程と、
  前記水素化反応工程により得た水素化反応物を蒸留して、炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素を精製し、回収する精製回収工程と、
  前記精製回収工程にて炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素から分離、除去された炭素数9以上の重質留分を前記分解改質反応工程に戻すリサイクル工程と、を有し、
  前記リサイクル工程では、前記原料油が前記分解改質反応器内にて前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間より、前記重質留分が前記分解改質反応器内にて前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間の方が短くなるように、前記重質留分を、前記分解改質反応器に対して前記原料油の導入位置とは異なる位置に導入することを特徴とする単環芳香族炭化水素の製造方法。
  前記リサイクル工程では、前記原料油が前記分解改質反応器内にて前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間を100%とすると、前記重質留分の水素化反応物または前記重質留分が前記分解改質反応器内にて前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間が10%以上80%以下となるように、前記重質留分の水素化反応物または前記重質留分を、前記分解改質反応器に対して前記原料油の導入位置とは異なる位置に導入することを特徴とする請求項1又は2に記載の単環芳香族炭化水素の製造方法。
  前記分解改質反応工程にて使用する単環芳香族炭化水素製造用触媒に含有される結晶性アルミノシリケートが、中細孔ゼオライトおよび/または大細孔ゼオライトを主成分としたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の単環芳香族炭化水素の製造方法。
  前記分解改質反応工程にて得た生成物から、分解改質反応工程にて副生した水素を回収する水素回収工程と、該水素回収工程にて回収した水素を前記水素化反応工程に供給する水素供給工程と、を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の単環芳香族炭化水素の製造方法。
  
【発明を実施するための形態】
【0015】
「第1実施形態」
  本発明の単環芳香族炭化水素の製造方法の第1実施形態を説明する。
  本実施形態の単環芳香族炭化水素の製造方法は、原料油から炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素(以下、「単環芳香族炭化水素」と記す。)を製造する方法であって、以下の(a)〜(h)の工程を有する方法である。また、
図1は、この第1実施形態を説明するための、製造プラントの概略構成図である。
 
【0016】
(a)原料油を、単環芳香族炭化水素製造用触媒を充填した分解改質反応器10内に導入し、反応させて単環芳香族炭化水素を含む生成物を得る分解改質反応工程
(b)分解改質反応工程(分解改質反応器10)にて生成した生成物を、分離装置11によって複数の留分に分離する分離工程
(c)分離工程(分離装置11)にて分離した単環芳香族炭化水素を、精製回収装置12によって精製し、回収する精製回収工程
(d)分離工程(分離装置11)にて分離された留分より得られる炭素数9以上の重質留分(以下、「重質留分」と略す。)の一部を、系外に排出する重質留分排出工程
(e)重質留分排出工程にて系外に排出しなかった重質留分を、水素化反応器13によって水素化する水素化反応工程
(f)分離工程(分離装置11)にて分離したガス成分から、分解改質反応工程にて副生した水素を、水素回収装置14によって回収する水素回収工程
(g)水素回収工程(水素回収装置14)にて回収した水素を水素化反応工程(水素化反応器13)に供給する水素供給工程
(h)水素化反応工程(水素化反応器13)により得た重質留分の水素化反応物を、分解改質反応器10(分解改質反応工程)に対して、原料油の導入位置とは異なる位置に導入する(戻す)リサイクル工程
 
【0017】
  前記(a)〜(h)の工程のうち、(a),(c),(e),(h)の工程は本願請求項1に係る発明における必須の工程であり、(b),(d),(f),(g)の工程は任意の工程である。
  以下、各工程について具体的に説明する。
 
【0018】
<分解改質反応工程>
  分解改質反応工程では、原料油を、単環芳香族炭化水素製造用触媒を充填した分解改質反応器10内に導入し、前記単環芳香族炭化水素製造用触媒に接触させ、反応させる。これにより、原料油に含まれる飽和炭化水素を水素供与源とし、飽和炭化水素からの水素移行反応によって多環芳香族炭化水素を部分的に水素化し、開環させて単環芳香族炭化水素に転換する。また、原料油中もしくは分解過程で得られる飽和炭化水素を環化、脱水素することによっても単環芳香族炭化水素に転換できる。さらには、炭素数9以上の単環芳香族を分解することによって、炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素を得ることもできる。なお、生成物には、単環芳香族炭化水素以外にも、水素、メタン、エタン、LPG、炭素数9以上の重質留分などが含まれる。
 
【0019】
(原料油)
  本発明で使用される原料油は、10容量%留出温度が140℃以上かつ90容量%留出温度が380℃以下の油である。10容量%留出温度が140℃未満の油では、軽質のものから単環芳香族炭化水素を製造することになり、本発明の主旨にそぐわなくなる。また、90容量%留出温度が380℃を超える油を用いた場合には、単環芳香族炭化水素の収率が低くなる上に、単環芳香族炭化水素製造用触媒上へのコーク堆積量が増大して、触媒活性の急激な低下を引き起こす傾向にある。
  原料油の10容量%留出温度は150℃以上であることが好ましく、原料油の90容量%留出温度は360℃以下であることが好ましい。
 
【0020】
  なお、ここでいう10容量%留出温度、90容量%留出温度とは、JIS  K2254「石油製品−蒸留試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
  10容量%留出温度が140℃以上かつ90容量%留出温度が380℃以下である原料油としては、例えば、流動接触分解装置で生成する分解軽油(LCO)、LCOの水素化精製油、石炭液化油、重質油水素化分解精製油、直留灯油、直留軽油、コーカー灯油、コーカー軽油およびオイルサンド水素化分解精製油などが挙げられる。
  多環芳香族炭化水素は、反応性が低く本発明の分解改質反応工程では、単環芳香族炭化水素に転換されにくい物質ではあるが、一方で水素化反応工程にて水素化されるとナフテノベンゼン類に転換され、次いで分解改質反応工程にリサイクル供給されることで単環芳香族炭化水素に転換可能である。多環芳香族炭化水素の中でも3環以上の芳香族炭化水素は、水素化反応工程において多くの水素を消費し、かつ水素化反応物であっても分解改質反応工程における反応性が低いため、多く含むことは好ましくない。従って、原料油中の3環以上の芳香族炭化水素は25容量%以下であることが好ましく、15容量%以下であることがより好ましい。
  なお、水素化反応工程でナフテノベンゼンに転換される2環芳香族炭化水素を含有し、かつ3環以上の芳香族炭化水素を削減するための原料油としては、例えば原料油の90容量%留出温度が330℃以下であることがより好ましい。
  また、ここでいう多環芳香族炭化水素とは、JPI−5S−49「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠して測定、あるいはFIDガスクロマトグラフ法または2次元ガスクロマトグラフ法にて分析される2環芳香族炭化水素含有量(2環芳香族分)、および3環以上の芳香族炭化水素含有量(3環以上の芳香族分)の合計値を意味する。以降、多環芳香族炭化水素、2環芳香族炭化水素、3環以上の芳香族炭化水素の含有量が容量%で示されている場合は、JPI−5S−49に準拠して測定されたものであり、質量%で示されている場合は、FIDガスクロマトグラフ法または2次元ガスクロマトグラフ法に基づいて測定されたものである。
 
【0021】
(反応方式)
  原料油を単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触、反応させる際の反応方式、すなわち、前記分解改質反応器10の反応方式としては、固定床、移動床、流動床等が挙げられる。本発明においては、重質分を原料とするため、触媒に付着したコーク分を連続的に除去可能で、かつ安定的に反応を行うことができる流動床が好ましく、反応器と再生器との間を触媒が循環し、連続的に反応−再生を繰り返すことができる、連続再生式流動床が特に好ましい。また、この反応方式としては、原料と触媒とが共に移動する管中で接触反応を行うライザークラッキングと、流動する触媒層の中で行うベッドクラッキング等が知られている。これらの反応方式では、ベッドクラッキングの方がライザークラッキングに比べて装置構成を簡易にできるため、本発明の分解改質反応器(分解改質反応工程)では、ベッドクラッキング方式がより好適に採用される。なお、後述する別の実施形態では、固定床方式の分解改質反応器を用いた例を示す。
  単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する際の原料油は、気相状態であることが好ましい。また、原料は、必要に応じてガスによって希釈してもよい。
 
【0022】
(単環芳香族炭化水素製造用触媒)
  単環芳香族炭化水素製造用触媒は、結晶性アルミノシリケートを含有する。
 
【0023】
[結晶性アルミノシリケート]
  結晶アルミノシリケートは、単環芳香族炭化水素の収率をより高くできることから、中細孔ゼオライトおよび/または大細孔ゼオライトであることが好ましい。
  中細孔ゼオライトは、10員環の骨格構造を有するゼオライトであり、中細孔ゼオライトとしては、例えば、AEL型、EUO型、FER型、HEU型、MEL型、MFI型、NES型、TON型、WEI型の結晶構造のゼオライトが挙げられる。これらの中でも、単環芳香族炭化水素の収率をより高くできることから、MFI型が好ましい。
  大細孔ゼオライトは、12員環の骨格構造を有するゼオライトであり、大細孔ゼオライトとしては、例えば、AFI型、ATO型、BEA型、CON型、FAU型、GME型、LTL型、MOR型、MTW型、OFF型の結晶構造のゼオライトが挙げられる。これらの中でも、工業的に使用できる点では、BEA型、FAU型、MOR型が好ましく、単環芳香族炭化水素の収率をより高くできることから、BEA型が好ましい。
 
【0024】
  結晶性アルミノシリケートは、中細孔ゼオライトおよび大細孔ゼオライト以外に、10員環以下の骨格構造を有する小細孔ゼオライト、14員環以上の骨格構造を有する超大細孔ゼオライトを含有してもよい。
  ここで、小細孔ゼオライトとしては、例えば、ANA型、CHA型、ERI型、GIS型、KFI型、LTA型、NAT型、PAU型、YUG型の結晶構造のゼオライトが挙げられる。
  超大細孔ゼオライトとしては、例えば、CLO型、VPI型の結晶構造のゼオライトが挙げられる。
 
【0025】
  本実施形態では、分解改質反応工程を流動床の反応としているため、単環芳香族炭化水素製造用触媒における結晶性アルミノシリケートの含有量は、単環芳香族炭化水素製造用触媒全体を100質量%とした際の20〜60質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましく、35〜60質量%がさらに好ましい。結晶性アルミノシリケートの含有量が20質量%以上であれば、単環芳香族炭化水素の収率を充分に高くできる。結晶性アルミノシリケートの含有量が60質量%を超えると、触媒に配合できるバインダーの含有量が少なくなり、流動床用として適さないものになることがある。
  なお、後述する実施形態で示すように、分解改質反応工程を固定床の反応とする場合、単環芳香族炭化水素製造用触媒における結晶性アルミノシリケートの含有量は、単環芳香族炭化水素製造用触媒全体を100質量%とした際の60〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%がさらに好ましい。結晶性アルミノシリケートの含有量が60質量%以上であれば、単環芳香族炭化水素の収率を充分に高くできる。
 
【0026】
[リン、ホウ素]
  単環芳香族炭化水素製造用触媒においては、リンおよび/またはホウ素を含有することが好ましい。単環芳香族炭化水素製造用触媒がリンおよび/またはホウ素を含有すれば、単環芳香族炭化水素の収率の経時的な低下を防止でき、また、触媒表面のコーク生成を抑制できる。
 
【0027】
  単環芳香族炭化水素製造用触媒にリンを含有させる方法としては、例えば、イオン交換法、含浸法等により、結晶性アルミノシリケートまたは結晶性アルミノガロシリケートまたは結晶性アルミノジンコシリケートにリンを担持する方法、ゼオライト合成時にリン化合物を含有させて結晶性アルミノシリケートの骨格内の一部をリンと置き換える方法、ゼオライト合成時にリンを含有した結晶促進剤を用いる方法、などが挙げられる。その際に用いるリン酸イオン含有水溶液は特に限定されないが、リン酸、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよびその他の水溶性リン酸塩などを任意の濃度で水に溶解させて調製したものを好ましく使用できる。
  単環芳香族炭化水素製造用触媒にホウ素を含有させる方法としては、例えば、イオン交換法、含浸法等により、結晶性アルミノシリケートまたは結晶性アルミノガロシリケートまたは結晶性アルミノジンコシリケートにホウ素を担持する方法、ゼオライト合成時にホウ素化合物を含有させて結晶性アルミノシリケートの骨格内の一部をホウ素と置き換える方法、ゼオライト合成時にホウ素を含有した結晶促進剤を用いる方法、などが挙げられる。
 
【0028】
  単環芳香族炭化水素製造用触媒におけるリンおよびホウ素の含有量は、触媒全重量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、さらには、下限は0.5質量%以上がより好ましく、上限は9質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下が特に好ましい。触媒全重量に対するリンの含有量が0.1質量%以上であることで、経時的な単環芳香族炭化水素の収率低下を防止でき、10質量%以下であることで、単環芳香族炭化水素の収率を高くできる。
 
【0029】
[ガリウム、亜鉛]
  単環芳香族炭化水素製造用触媒には、必要に応じて、ガリウムおよび/または亜鉛を含有させることができる。ガリウムおよび/または亜鉛を含有させれば、単環芳香族炭化水素の生成割合をより多くできる。
 
【0030】
  単環芳香族炭化水素製造用触媒におけるガリウム含有の形態としては、結晶性アルミノシリケートの格子骨格内にガリウムが組み込まれたもの(結晶性アルミノガロシリケート)、結晶性アルミノシリケートにガリウムが担持されたもの(ガリウム担持結晶性アルミノシリケート)、その両方を含んだものが挙げられる。
  単環芳香族炭化水素製造用触媒における亜鉛含有の形態としては、結晶性アルミノシリケートの格子骨格内に亜鉛が組み込まれたもの(結晶性アルミノジンコシリケート)、結晶性アルミノシリケートに亜鉛が担持されたもの(亜鉛担持結晶性アルミノシリケート)、その両方を含んだものが挙げられる。
 
【0031】
  結晶性アルミノガロシリケート、結晶性アルミノジンコシリケートは、SiO
4、AlO
4およびGaO
4構造が骨格中に存在する構造を有する。また、結晶性アルミノガロシリケート、結晶性アルミノジンコシリケートは、例えば、水熱合成によるゲル結晶化、結晶性アルミノシリケートの格子骨格中にガリウムまたは亜鉛を挿入する方法、または結晶性ガロシリケートまたは結晶性ジンコシリケートの格子骨格中にアルミニウムを挿入する方法により得られる。
 
【0032】
  ガリウム担持結晶性アルミノシリケートは、結晶性アルミノシリケートにガリウムをイオン交換法、含浸法等の公知の方法によって担持したものである。その際に用いるガリウム源としては、特に限定されないが、硝酸ガリウム、塩化ガリウム等のガリウム塩、酸化ガリウム等が挙げられる。
  亜鉛担持結晶性アルミノシリケートは、結晶性アルミノシリケートに亜鉛をイオン交換法、含浸法等の公知の方法によって担持したものである。その際に用いる亜鉛源としては、特に限定されないが、硝酸亜鉛、塩化亜鉛等の亜鉛塩、酸化亜鉛等が挙げられる。
 
【0033】
  単環芳香族炭化水素製造用触媒がガリウムおよび/または亜鉛を含有する場合、単環芳香族炭化水素製造用触媒におけるガリウムおよび亜鉛の含有量は、触媒全体を100質量%とした際の0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.05〜2.0質量%であることがより好ましい。ガリウムおよび亜鉛の含有量が0.01質量%以上であれば、単環芳香族炭化水素の生成割合をより多くでき、5.0質量%以下であれば、単環芳香族炭化水素の収率をより高くできる。
 
【0034】
[形状]
  単環芳香族炭化水素製造用触媒は、反応形式に応じて、例えば、粉末状、粒状、ペレット状等にされる。例えば、本実施形態のように流動床の場合には粉末状にされ、別の実施形態のように固定床の場合には粒状またはペレット状にされる。流動床で用いる触媒の平均粒子径は30〜180μmが好ましく、50〜100μmがより好ましい。また、流動床で用いる触媒のかさ密度は0.4〜1.8g/ccが好ましく、0.5〜1.0g/ccがより好ましい。
  なお、平均粒子径はふるいによる分級によって得た粒径分布において50質量%となる粒径を表し、かさ密度はJIS規格R9301−2−3の方法により測定した値である。
  粒状またはペレット状の触媒を得る場合には、必要に応じて、バインダーとして触媒に不活性な酸化物を配合した後、各種成形機を用いて成形すればよい。
 
【0035】
  単環芳香族炭化水素製造用触媒がバインダー等の無機酸化物を含有する場合、バインダーとしてリンを含むものを用いても構わない。
 
【0036】
(反応温度)
  原料油を単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触、反応させる際の反応温度については、特に制限されないものの、400〜650℃とすることが好ましい。反応温度の下限は400℃以上であれば原料油を容易に反応させることができ、より好ましくは450℃以上である。また、反応温度の上限は650℃以下であれば単環芳香族炭化水素の収率を十分に高くでき、より好ましくは600℃以下である。
 
【0037】
(反応圧力)
  原料油および後述するリサイクル油を単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触、反応させる際の反応圧力は、1.5MPaG以下とすることが好ましく、1.0MPaG以下とすることがより好ましい。反応圧力が1.5MPaG以下であれば、軽質ガスの副生を抑制できる上に、反応装置の耐圧性を低くできる。
 
【0038】
(接触時間)
  原料油と単環芳香族炭化水素製造用触媒との接触時間は、実質的に所望する反応が進行すれば特に制限はされないが、例えば、単環芳香族炭化水素製造用触媒上のガス通過時間で1〜300秒が好ましく、さらに下限は5秒以上、上限は150秒以下がより好ましい。接触時間が1秒以上であれば、確実に反応させることができ、接触時間が300秒以下であれば、コーキング等による触媒への炭素質の蓄積を抑制できる。または分解による軽質ガスの発生量を抑制できる。
  本実施形態では、原料油が分解改質反応器10内にて単環芳香族炭化水素製造用触媒との接触する時間、すなわち前記の単環芳香族炭化水素製造用触媒上のガス通過時間が例えば1〜300秒となるように、分解改質反応器10に対する原料油の導入位置が、反応器10の底部に設定されている。
 
【0039】
  一方、リサイクル油、すなわち
図1において水素化反応器13(水素化反応工程)により得た重質留分の水素化反応物と、単環芳香族炭化水素製造用触媒との接触時間は、前記の原料油より短くなるようにする。つまり、原料油が分解改質反応器10内にて前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間より、リサイクル油(前記重質留分の水素化反応物)が分解改質反応器10内にて前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間の方が短くなるようにする。
 
【0040】
  これは、水素化反応器13(水素化反応工程)によって得られた重質留分の水素化反応物は、水素化反応により重質留分中の多環芳香族炭化水素が部分的に水素化されナフテノベンゼンに転換されることなどにより、原料油に比べ反応性が向上しており、触媒との接触時間がより短時間であっても単環芳香族炭化水素が十分な量生成され得ることによる。むしろ、原料油と同じ接触時間(反応時間)にすると、反応性の高いリサイクル油は過分解の割合が多くなってガスの生成量が増加する。一方、ガス生成量の増加を抑えるべく、原料油の接触時間も短くすると、原料油の分解反応が十分に進まなくなるおそれがある。
 
【0041】
  そこで、本実施形態では、分解改質反応器10内にて単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間が、原料油よりリサイクル油の方が短くなるようにしている。具体的には、原料油が分解改質反応器10内にて単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間を100%とすると、リサイクル油が分解改質反応器10内にて単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間が、10%以上80%以下となるようにするのが好ましい。10%未満になると、リサイクル油の単環芳香族炭化水素製造用触媒に対する接触時間が短くなり、このリサイクル油からの単環芳香族炭化水素の生成が十分でなくなるおそれがある。一方、80%を超えると、原料油よりリサイクル油の接触時間の方を短くすることによる効果が十分に得られなくなるおそれがある。
 
【0042】
  すなわち、分解改質反応器10内でのリサイクル油の接触時間を原料油の接触時間より短くすると、必然的に分解改質反応器10内でのリサイクル油の滞留時間が短くなる。分解改質反応器10の設計上必要となる容積は、主に単環芳香族炭化水素製造用触媒の充填量と、分解改質反応器10内での原料油およびリサイクル油の滞留量とによって決まる。原料油やリサイクル油の滞留量は、分解改質反応器10に導入する単位時間あたりの量と、滞留時間との積によって求まる。したがって、リサイクル油の滞留時間を原料油の滞留時間に比べて短くした分、リサイクル油の滞留量を、滞留時間が原料油の滞留時間と同じ場合に比べて少なくすることができる。
 
【0043】
  つまり、分解改質反応器10に導入する原料油の単位時間あたりの量と、リサイクル油の単位時間あたりの量とをそれぞれ一定にすると、本実施形態では、リサイクル油の滞留時間を原料油の滞留時間に比べて短くした分、これらの滞留時間を同じにした場合に比べて、分解改質反応器10の容積を少なくすることができる。したがって、分解改質反応器10を小型化することができる。
  ところが、前記したようにリサイクル油が分解改質反応器10内にて単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間が原料油の80%を超えると、分解改質反応器10を小型化できる効果が小となり、小型化による装置コストの低減効果が低くなってしまう。
 
【0044】
  分解改質反応器10内でのリサイクル油の接触時間を原料油の接触時間より短くするには、本実施形態では流動床方式で単段構成の分解改質反応器10を用いているため、リサイクル油を、分解改質反応器10に対する前記原料油の導入位置(反応器10の底部)より下流側(
図1に示すように反応器10の中央部)に導入するよう、その導入位置を設定する。すると、リサイクル油は原料油に比べて分解改質反応器10内での流路が短くなるため、分解改質反応器10内での単環芳香族炭化水素製造用触媒に対する接触時間も短くなる。
 
【0045】
  なお、各油の接触時間、すなわち滞留時間は、各油の単位時間あたりの流量と、流路長とによって決まる。ただし、各油の単位時間あたりの流量は、原料油だけが流れるとき(リサイクル油の導入位置より下方)と、リサイクル油が合流して共に流れるとき(リサイクル油の導入位置より上方)とで異なる。
 
【0046】
<分離工程>
  分離工程では、分解改質反応工程(分解改質反応器10)にて生成した生成物を、分離装置11によって複数の留分に分離する。
  分離装置11としては、公知の蒸留装置、気液分離装置が用いられる。蒸留装置の一例としては、ストリッパーのような多段蒸留装置により複数の留分を蒸留分離できるものが挙げられる。気液分離装置の一例としては、気液分離槽と、該気液分離槽に生成物を導入する生成物導入管と、前記気液分離槽の上部に設けられたガス成分流出管と、前記気液分離槽の下部に設けられた液成分流出管とを具備するものが挙げられる。
 
【0047】
  分離工程(分離装置11)では、少なくともガス成分と液体留分とを分離することが好ましく、該液体留分は、さらに複数の留分に分離されていてもよい。分離工程の例としては、主として炭素数4以下の成分(例えば、水素、メタン、エタン、LPG等)を含むガス成分と液体留分に分離する形態、炭素数2以下の成分(例えば、水素、メタン、エタン)を含むガス成分と液体留分に分離する形態、前記液体留分をさらにLPG、単環芳香族炭化水素を含む留分、重質留分に分けて分離する形態、前記液体留分をさらにLPG、単環芳香族炭化水素を含む留分、複数の重質留分に分けて分離する形態等が挙げられる。
 
【0048】
<精製回収工程>
  精製回収工程は、分離工程(分離装置11)にて得られた単環芳香族炭化水素を、精製回収装置12によって精製し、回収する。
  精製回収工程としては、前記分離工程で液体留分を分留していない場合には、単環芳香族炭化水素よりも重質の留分を分離、除去して単環芳香族炭化水素、またはベンゼン/トルエン/キシレンを回収する工程を適用できる。前記分離工程で単環芳香族炭化水素よりも重質の留分を分離している場合には、ベンゼン/トルエン/キシレンを回収する工程を適用できる。ここで、単環芳香族炭化水素よりも重質の留分は、炭素数9以上の重質留分であり、多環芳香族炭化水素を主成分とし、特にナフタレン、アルキルナフタレン類を多く含んでいる。
 
【0049】
<重質留分排出工程>
  重質留分排出工程では、分離工程(分離装置11)にて分離された留分より得られた炭素数9以上の重質留分の一部を一定量抜き出して系外に排出する。
  重質留分排出工程を有さない場合には、リサイクル量が多くなるにつれて、重質留分中の低反応性成分が増えることになるが、本実施形態例では、重質留分排出工程を有して重質留分を一定量排出するため、重質留分中の低反応性成分の増加を抑制することができる。そのため、単環芳香族炭化水素収率の経時的な低下を防止できる。
  ただし、系外に排出する重質留分の量は、重質留分の90質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。系外に排出する重質留分の量を重質留分の90質量%以下にすれば、充分にリサイクルできるため、単環芳香族炭化水素の収率をより高くできる。
  系外に排出する重質留分としては、より重質な炭化水素を抜き出すことが好ましい。例えば、3環芳香族炭化水素を多く含む留分はリサイクルしても単環芳香族炭化水素に転換することが他の留分に比べ相対的に困難であるため、系外に排出することにより、単環芳香族炭化水素収率の経時的な低下を防止できる。なお、系外に排出する重質留分は燃料基材等に利用することができる。
 
【0050】
<水素化反応工程>
  水素化反応工程では、重質留分排出工程にて系外に排出しなかった重質留分を、水素化反応器13によって水素化する。具体的には、重質留分と水素とを水素化反応器13に供給し、水素化触媒を用いて、重質留分に含まれる多環芳香族炭化水素の少なくとも一部を水素化処理する。
  多環芳香族炭化水素は、芳香環が平均1つ以下になるまで水素化することが好ましい。
例えば、ナフタレンはテトラリン(ナフテノベンゼン)になるまで水素化することが好ましい。芳香環が平均1つ以下になるまで水素化すれば、分解改質反応工程(分解改質反応器10)に戻した際に単環芳香族炭化水素に容易に変換される。
 
【0051】
  また、単環芳香族炭化水素の収率をより向上させることができるため、水素化反応工程では、得られる重質留分の水素化反応物における多環芳香族炭化水素の含有量を40質量%以下にすることが好ましく、25質量%以下にすることがより好ましく、15質量%以下にすることがさらに好ましい。水素化反応物における多環芳香族炭化水素の含有量は、原料油の多環芳香族炭化水素含有量より少ないことが好ましく、水素化触媒量を増やすことや、反応圧力を高くすることによって減少させることができる。ただし、多環芳香族炭化水素の全部を飽和炭化水素になるまで水素化する必要はない。過剰な水素化は、水素消費量の増加、発熱量の増大を招く傾向にある。
 
【0052】
  本実施形態例では、水素として、分解改質反応工程(分解改質反応器10)にて副生したものを利用することも可能である。すなわち、分離工程(分離装置11)にて得たガス成分から、後述する水素回収工程(水素回収装置14)にて水素を回収し、水素供給工程にて、回収した水素を水素化反応工程(水素化反応器13)に供給する。
 
【0053】
  水素化反応器13(水素化反応工程)の反応方式としては、固定床を好ましく挙げることができる。
  水素化触媒としては、公知の水素化触媒(例えば、ニッケル触媒、パラジウム触媒、ニッケル−モリブデン系触媒、コバルト−モリブデン系触媒、ニッケル−コバルト−モリブデン系触媒、ニッケル−タングステン系触媒等)を用いることができる。
  水素化反応温度は、使用する水素化触媒によっても異なるものの、通常は100〜450℃、より好ましくは200〜400℃、さらに好ましくは250〜380℃の範囲とされる。
  水素化反応圧力については、使用する水素化触媒や原料によっても異なるが、0.7MPaから13MPaの範囲とすることが好ましく、1MPaから10MPaとすることがより好ましく、1MPaから7MPaとすることが特に好ましい。水素化反応圧力を13MPa以下にすれば、耐用圧力の低い水素化反応器を使用でき、設備費を低減できる。
  一方、水素化反応圧力は、水素化反応の収率の点からは、0.7MPa以上であることが好ましい。
  水素消費量は3000scfb(506Nm
3/m
3)以下であることが好ましく、2500scfb(422Nm
3/m
3)以下であることがより好ましく、1500scfb(253Nm
3/m
3)以下であることがさらに好ましい。一方、水素消費量は、水素化反応の収率の点からは、300scfb(50Nm
3/m
3)以上であることが好ましい。
  液空間速度(LHSV)は、0.1h
−1以上20h
−1以下にすることが好ましく、0.2h
−1以上10h
−1以下にすることがより好ましい。LHSVを20h
−1以下とすれば、より低い水素化反応圧力にて多環芳香族炭化水素を十分に水素化することができる。一方、0.1
−1以上とすることで、水素化反応器の大型化を避けることができる。
 
【0054】
<水素回収工程>
  水素回収工程では、分離工程(分離装置11)にて得たガス成分から、分解改質反応工程(分解改質反応器10)にて副生した水素を、水素回収装置14によって回収する。
  水素を回収する方法としては、分離工程にて得たガス成分に含まれる水素とそれ以外のガスとを分離できれば特に制限はなく、例えば、圧力変動吸着法(PSA法)、深冷分離法、膜分離法などが挙げられる。したがって、水素回収装置14としては、これらの方法に基づいて水素を回収する装置(例えばPSA装置)が用いられる。
  通常、水素回収工程にて回収される水素の量は、重質留分を水素化するのに必要な量より多くなる。
 
【0055】
<水素供給工程>
  水素供給工程では、水素回収工程(水素回収装置14)にて得た水素を水素化反応工程(水素化反応器13)に供給する。その際の水素供給量は、水素化反応工程に供給する重質留分量に応じて調整される。また、必要であれば、水素圧力を調節する。
本実施形態のように水素供給工程を有すれば、前記分解改質反応工程(分解改質反応器10)にて副生した水素を用いて重質留分を水素化できる。本単環芳香族炭化水素の製造方法において使用する水素の一部もしくは全量を副生水素にて賄うことにより、外部からの水素供給の一部もしくは全てを削減することが可能となる。
 
【0056】
<リサイクル工程>
  リサイクル工程では、水素化反応工程(水素化反応器13)により得た重質留分の水素化反応物をリサイクル油として、分解改質反応器10(分解改質反応工程)に対し、原料油の導入位置とは異なる位置に導入する(戻す)。すなわち、原料油が分解改質反応器10内にて前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間より、リサイクル油(前記重質留分の水素化反応物)が分解改質反応器10内にて前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間の方が短くなるように、リサイクル油を、分解改質反応器10に対する前記原料油の導入位置より下流側に導入する。
 
【0057】
  リサイクル油を分解改質反応器10(分解改質反応工程)に戻すことにより、副生物であった重質留分も原料にして単環芳香族炭化水素を得ることができる。そのため、副生物量を削減できる上に、単環芳香族炭化水素の生成量を増やすことができる。また、水素化によって飽和炭化水素も生成するため、分解改質反応工程における水素移行反応を促進させることもできる。これらのことから、原料油の供給量に対する総括的な単環芳香族炭化水素の収率を向上させることができる。なお、水素化処理せずに重質留分をそのまま分解改質反応器10に戻した場合には、多環芳香族炭化水素の反応性が低いため、単環芳香族炭化水素の収率はほとんど向上しない。
 
【0058】
  また、原料油が分解改質反応器10内にて単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間より、リサイクル油が分解改質反応器10内にて前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間の方が短くなるように、リサイクル油を分解改質反応器10に導入するので、原料油に比べ反応性に富む成分が多いリサイクル油を、分解改質反応器10内にて過剰に分解改質反応させることなく、適正に反応させることができる。これにより、単環芳香族炭化水素の収率を向上させることができる。また、分解改質反応を過剰に行うことで過分解が多く起こり、プロパンやエタン等の軽質炭化水素ガスの生成量が増大するのを抑制することができる。
  さらに、分解改質反応器10内でのリサイクル油の滞留時間を原料油の滞留時間に比べて短くするので、これらの滞留時間を同じにした場合に比べて、分解改質反応器10の容積を少なくすることができる。したがって、分解改質反応器10を小型化することにより、装置コストや運転コストを低減することができる。
 
【0059】
「第2実施形態」
  本発明の単環芳香族炭化水素の製造方法の第2実施形態を説明する。
  本実施形態の単環芳香族炭化水素の製造方法は、第1実施形態と同様に、原料油から炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素(以下、「単環芳香族炭化水素」と記す。)を製造する方法である。この第2実施形態が第1実施形態と異なるところは、第1実施形態では分解改質反応工程において流動床方式の分解改質反応器10を用いていたのに対し、第2実施形態では
図2に示すように、固定床方式で複数段構成の分解改質反応器20を用いている点である。
 
【0060】
  分解改質反応器20は、本実施形態では反応器を二段構成とした固定床方式のもので、上流側に位置する前段反応器21と、下流側に位置する後段反応器22とからなっている。これら前段反応器21、後段反応器22には、いずれにも前記第1実施形態において説明した単環芳香族炭化水素製造用触媒が、固定床方式で充填されている。これら前段反応器21と後段反応器22との間には、接続管23が設けられている。これにより、前段反応器21から導出された分解改質反応の生成物は、接続管23を通って後段反応器22に移送され、この後段反応器22内にてさらに分解改質反応がなされるようになっている。
 
【0061】
  本実施形態でも、第1実施形態と同様に、リサイクル工程によって分解改質反応工程(分解改質反応器20)にリサイクル油を戻す。すなわち、原料油が分解改質反応器20内にて前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間より、リサイクル油が分解改質反応器20内にて前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間の方が短くなるように、リサイクル油を戻す。その際、本実施形態では、前段反応器21(最前段の反応器)に原料油を導入する。また、リサイクル油を、前段反応器21より後段側の反応器、すなわち後段反応器22に導入するべく、接続管23内(例えば接続管23中に設けた貯留槽内)に供給する。
 
【0062】
  これにより、原料油は、前段反応器21、後段反応器22の両方で前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触し、分解改質反応するのに対し、リサイクル油は、後段反応器22のみで前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触し、分解改質反応する。
  したがって、第1実施形態と同様に、原料油が分解改質反応器20内にて単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間より、リサイクル油が分解改質反応器20内にて前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間の方が短くなる。このように、リサイクル油の接触時間の方が短くなるように分解改質反応器20に導入するので、リサイクル油を、分解改質反応器20内にて過剰に分解改質反応させることなく、適正に反応させることができる。よって、単環芳香族炭化水素の収率を向上させることができ、また、過分解によってガスの生成量が増大するのを抑制することができる。
  さらに、分解改質反応器20内でのリサイクル油の滞留時間を原料油の滞留時間に比べて短くするので、分解改質反応器20を小型化することにより、装置コストや運転コストを低減することができる。
 
【0063】
  なお、本実施形態では、分解改質分解改質反応器20を二段構成としたが、三段以上の構成としてもよい。その場合にも、最前段の反応器に原料油を導入し、最前段より後段側の反応器にリサイクル油を導入するのが好ましい。
 
【0064】
「第3実施形態」
  本発明の単環芳香族炭化水素の製造方法の第3実施形態を説明する。
  本実施形態例の単環芳香族炭化水素の製造方法は、原料油から単環芳香族炭化水素を製造する方法であって、以下の(i)〜(p)の工程を有する方法である。また、
図3は、この第3実施形態を説明するための、製造プラントの概略構成図である。
 
【0065】
(i)原料油を、単環芳香族炭化水素製造用触媒を充填した分解改質反応器10内に導入し、反応させて単環芳香族炭化水素を含む生成物を得る分解改質反応工程
(j)分解改質反応工程(分解改質反応器10)にて生成した生成物を、分離装置11によってガス成分と液成分とに分離する分離工程
(k)分離工程(分離装置11)にて分離した液成分の一部を、水素化反応器13によって水素化する水素化反応工程
(l)分離工程(分離装置11)にて分離したガス成分から、分解改質反応工程にて副生した水素を、水素回収装置14によって回収する水素回収工程
(m)水素回収工程(水素回収装置14)にて回収した水素を水素化反応工程(水素化反応器13)に供給する水素供給工程
(n)水素化反応工程にて得た水素化反応物を精製回収装置12によって精製し、回収する精製回収工程
(o)精製回収工程(精製回収装置12)にて単環芳香族炭化水素から分離、除去された重質留分の一部を系外に排出する重質留分排出工程
(p)重質留分排出工程にて系外に排出しなかった重質留分を、分解改質反応器10(分解改質反応工程)に対して、原料油の導入位置とは異なる位置に導入する(戻す)リサイクル工程
  上記(i)〜(p)の工程のうち、(i),(k),(n),(p)の工程は本願請求項2に係る発明における必須の工程であり、(j),(l),(m),(o)の工程は任意の工程である。
 
【0066】
  (i)分解改質反応器10による分解改質反応工程は、第1実施形態例における(a)分解改質反応工程と同様に行うことができる。
  (j)分離装置11による分離工程は、第1実施形態例における(b)分離工程と同様に行うことができる。
  (l)水素回収装置14による水素回収工程は、第1実施形態例における(f)水素回収工程と同様に行うことができる。
  (m)水素供給工程は、第1実施形態例における(g)水素供給工程と同様に行うことができる。
 
【0067】
  本実施形態例における(k)水素化反応工程では、第1実施形態における(e)水素化反応工程と同様の水素化触媒を用いることができる。
  また、(k)水素化反応工程では、第1実施形態における(e)水素化反応工程とは異なり、分離工程にて得た液成分の全てを水素化反応器に通すため、得られた単環芳香族炭化水素も水素化することになる。しかし、単環芳香族炭化水素の水素化は本発明の目的に反する。そのため、水素化反応工程においては、水素化による単環芳香族炭化水素の損失量が、水素化反応工程前の単環芳香族炭化水素の量を100質量%とした際の5質量%以下にすることが好ましい。上記損失量にするための反応条件は、概ね第1実施形態における反応条件の範囲内にあるが、単環芳香族炭化水素の過度の水素化を避けるため、第1の実施形態に比べて高温とするのが好ましい。
  例えば、水素化反応温度は、使用する水素化触媒によっても異なるが、通常は250〜450℃、より好ましくは300〜400℃、さらに好ましくは320〜380℃の範囲とされる。
 
【0068】
  (n)精製回収工程では、精製回収装置12によって単環芳香族炭化水素、またはベンゼン/トルエン/キシレンを回収すると共に、単環芳香族炭化水素よりも重質留分を分離、除去する。ここで、単環芳香族炭化水素よりも重質の留分は、炭素数9以上の重質留分であり、多環芳香族炭化水素の水素化反応物および水素化されなかった多環芳香族炭化水素を主成分として含む。
 
【0069】
  (o)重質留分排出工程においても、第1実施形態における(d)重質留分排出工程と同様に、系外に排出する重質留分の量は、重質留分の90質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
 
【0070】
  (p)リサイクル工程では、系外に排出しなかった重質留分の水素化反応物を原料油に混合して、分解改質反応工程に戻す。
  本実施形態例においても、水素化反応工程(水素化反応器13)で水素化され、さらに精製回収工程(精製回収装置12)によって単環芳香族炭化水素から分離された重質留分をリサイクル油として、分解改質反応器10(分解改質反応工程)に対し、原料油の導入位置とは異なる位置に導入する(戻す)。すなわち、第1実施形態と同様に、原料油が分解改質反応器10内にて前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間より、リサイクル油(前記重質留分の水素化反応物)が分解改質反応器10内にて前記単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間の方が短くなるように、リサイクル油を、分解改質反応器10に対する前記原料油の導入位置より下流側に導入する。
 
【0071】
  これにより、原料油に比べ反応性に富む成分が多いリサイクル油を、分解改質反応器10内にて過剰に分解改質反応させることなく、適正に反応させることができる。したがって、単環芳香族炭化水素の収率を向上させることができる。また、分解改質反応を過剰に行うことで過分解が多く起こり、プロパンやエタン等の軽質炭化水素ガスの生成量が増大するのを抑制することができる。
  さらに、分解改質反応器10内でのリサイクル油の滞留時間を原料油の滞留時間に比べて短くするので、これらの滞留時間を同じにした場合に比べて、分解改質反応器10の容積を少なくすることができる。したがって、分解改質反応器10を小型化することにより、装置コストや運転コストを低減することができる。
 
【0072】
  また、重質留分の水素化反応物を分解改質反応工程に戻すため、副生物であった重質留分も原料にして単環芳香族炭化水素を得ることができる。そのため、副生物量を削減できる上に、単環芳香族炭化水素の生成量を増やすことができる。また、分解改質反応工程における水素移行反応を促進させることもできる。よって、原料油の供給量に対する総括的な単環芳香族炭化水素の収率を向上させることができる。
 
【0073】
「他の実施形態例」
  なお、本発明は前記第1ないし第3実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
  例えば、第3実施形態において、流動床方式の分解改質反応器10を第2実施形態における固定床方式の分解改質反応器20に代えてもよい。その場合には、第2実施形態と同様に、最前段の反応器に原料油を導入し、最前段より後段側の反応器にリサイクル油を導入するのが好ましい。
 
【0074】
  また、第1実施形態、第3実施形態では、分解改質反応器として、流動床方式で単段構成のものを用いたが、流動床方式で複数段構成のものを用いてもよい。その場合には、固定床方式の場合と同様に、最前段の反応器に原料油を導入し、最前段より後段側の反応器にリサイクル油を導入するのが好ましい。
  また、前記実施形態において水素化反応工程で使用する水素としては、分解改質反応工程にて副生したものでなくてもよい。例えば、公知の水素製造方法で得た水素を利用してもよいし、他の接触分解方法にて副生した水素を利用してもよい。
  また、第1実施形態や第2実施形態において、重質留分排出工程を水素化反応工程の後に設けてもよい。
 
【実施例】
【0075】
  図1、
図2に示した製造プラントによる単環芳香族炭化水素(BTX)の製造例を、実施例1〜5として以下に示す。また、比較例1、2、参考例1〜8も以下に示す。
(参考例1)
  
図1に示した製造プラントによってリサイクル油(重質留分の水素化反応物)を製造した。
  原料油として、表1に示すLCO(10容量%留出温度224.5℃、90容量%留出温度が349.5℃)を用いた。流動床方式の分解改質反応器10では、単環芳香族炭化水素製造用触媒として、ガリウム0.2質量%およびリン0.7質量%を担持したMFI型ゼオライトにバインダーを含有させたものを用いた。そして、反応温度538℃、反応圧力0.3MPaG、窒素を導入しLCOと触媒に含まれるゼオライト成分との接触時間が24秒となるように調整した条件で反応させて、分解改質を行った。分解改質後に回収された重質留分は、原料油を100質量%とすると、約40質量%であった。また、分解改質後に回収され、さらに精製回収されて得られた単環芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン)の量は、原料油(LCO)を100質量%とすると、36質量%であった。
  次いで、上記重質留分を、市販のニッケル−モリブデン触媒を用い、水素化温度350℃、水素化圧力5MPaG、LHSV=0.5h
−1の条件で水素化した。得られた水素化反応物を、リサイクル油として後述する参考例4〜8および実施例1〜5に供する。各条件および結果を表2に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
(参考例2〜4)
  原料油の、分解改質反応器10での単環芳香族炭化水素製造用触媒に含まれるゼオライト成分との接触時間を12秒、8秒、4秒とした。その他は参考例1と同様にして分解改質を行い、単環芳香族炭化水素の製造を行った。精製回収されて得られた単環芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン)の量は、原料油(LCO)を100質量%とすると、それぞれ33質量%、28質量%、20質量%であった。各条件および結果を表2に示す。
【0079】
(参考例5〜8)
  参考例1で得られたリサイクル油(重質留分の水素化反応物)を、接触時間のみを変えて参考例1と同じ条件で分解改質反応器10にて分解改質を行った。なお、リサイクル油の分解改質反応器10への供給量は、参考例1において分解改質反応器10に導入した原料油の供給量を100質量部とすると、リサイクル油の供給量は40質量部である。分解改質後に回収され、さらに精製回収されて得られた単環芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン)の量は、リサイクル油を100質量%とすると、それぞれ50質量%、52質量%、49質量%、47質量%であった。各条件および結果を表2に示す。
【0080】
(実施例1)
  
図1に示した製造プラントによって単環芳香族炭化水素(BTX)を製造した。
  原料油として、表1に示すLCO(10容量%留出温度224.5℃、90容量%留出温度が349.5℃)を用いた。また、リサイクル油として、前記の参考例1で製造した重質留分の水素化反応物を用いた。
  流動床方式の分解改質反応器10に導入する原料油の供給量を100質量部とし、これに対するリサイクル油の供給量を40質量部とした。なお、分解改質反応器10では、単環芳香族炭化水素製造用触媒として、ガリウム0.2質量%およびリン0.7質量%を担持したMFI型ゼオライトにバインダーを含有させたものを用いた。
【0081】
  分解改質反応器10での反応条件としては、反応温度538℃、反応圧力0.3MPaG、窒素を導入しLCOと触媒に含まれるゼオライト成分との接触時間が24秒となるように調整した。一方、重質留分(リサイクル油)については分解改質反応器10への導入位置を原料油より下流側にすることで、その単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触する時間を18秒とした。このようにしてそれぞれを反応させ、単環芳香族炭化水素の製造を行った。
  その結果、得られた単環芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン)の量(BTX収率)は、原料油(LCO)とリサイクル油との合計量を100質量%とすると、40質量%であった。各条件および結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
(実施例2)
  分解改質反応器10での反応条件として、重質留分(リサイクル油)の単環芳香族炭化水素製造用触媒に含まれるゼオライト成分と接触する時間を12秒として反応させた。その他は実施例1と同様にして単環芳香族炭化水素の製造を行った。
  その結果、得られた単環芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン)の量(BTX収率)は、原料油(LCO)とリサイクル油との合計量を100質量%とすると、42質量%であった。各条件および結果を表3に示す。
【0084】
(実施例3)
  分解改質反応器10での反応条件として、重質留分(リサイクル油)の単環芳香族炭化水素製造用触媒に含まれるゼオライト成分と接触する時間を8秒として反応させた。その他は実施例1と同様にして単環芳香族炭化水素の製造を行った。
  その結果、得られた単環芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン)の量(BTX収率)は、原料油(LCO)とリサイクル油との合計量を100質量%とすると、40質量%であった。各条件および結果を表3に示す。
【0085】
(実施例4)
  分解改質反応器10での反応条件として、重質留分(リサイクル油)の単環芳香族炭化水素製造用触媒に含まれるゼオライト成分と接触する時間を4秒として反応させた。その他は実施例1と同様にして単環芳香族炭化水素の製造を行った。
  その結果、得られた単環芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン)の量(BTX収率)は、原料油(LCO)とリサイクル油との合計量を100質量%とすると、40質量%であった。また、
図1の製造プラントにおいて、水素回収装置14によって得られたガスの収率を調べたところ、9質量%であった。各条件および結果を表3に示す。
【0086】
(実施例5)
  
図2に示した製造プラントによって単環芳香族炭化水素(BTX)を製造した。
  原料油として、表1に示すLCOを用いた。また、リサイクル油として、水素化反応器13から導出された重質留分を用いた。固定床方式の分解改質反応器20に導入する原料油の供給量を100質量部とし、これに対するリサイクル油の供給量を40質量部とした。なお、分解改質反応器20では、単環芳香族炭化水素製造用触媒として、ガリウム0.2質量%およびリン0.7質量%を担持したMFI型ゼオライトにバインダーを含有させたものを用いた。
【0087】
  分解改質反応器20での反応条件としては、前段反応器21、後段反応器22共に、反応温度538℃、反応圧力0.3MPaG、窒素を導入しLCOと触媒に含まれるゼオライト成分との接触時間が8秒となるよう調整した。一方、重質留分(リサイクル油)については、分解改質反応器20への導入位置を接続管23、すなわち後段反応器22とし、原料油より後段側にすることで、その単環芳香族炭化水素製造用触媒に含まれるゼオライト成分と接触する時間を3秒とした。このようにしてそれぞれを反応させ、単環芳香族炭化水素の製造を行った。
  その結果、得られた単環芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン)の量(BTX収率)は、原料油(LCO)とリサイクル油との合計量を100質量%とすると、38質量%であった。各条件および結果を表3に示す。
【0088】
(比較例1)
  
図1に示した製造プラントによって単環芳香族炭化水素(BTX)を製造した。
  分解改質反応器10への重質留分(リサイクル油)の導入位置を、原料油と同じ位置とし、これによって重質留分(リサイクル油)の単環芳香族炭化水素製造用触媒に含まれるゼオライト成分と接触する時間を、原料油の接触時間と同じ24秒とした。その他は実施例1と同様にして単環芳香族炭化水素の製造を行った。
  その結果、得られた単環芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン)の量(BTX収率)は、原料油(LCO)とリサイクル油との合計量を100質量%とすると、39質量%であった。また、また、
図1の製造プラントにおいて、水素回収装置14によって得られたガスの収率を調べたところ、11質量%であった。各条件および結果を表3に示す。
【0089】
(比較例2)
  
図2に示した製造プラントによって単環芳香族炭化水素(BTX)を製造した。
  原料油の単環芳香族炭化水素製造用触媒に含まれるゼオライト成分と接触する時間を8秒とした。また、分解改質反応器20への重質留分(リサイクル油)の導入位置を、原料油と同じ位置とし、これによって重質留分(リサイクル油)の単環芳香族炭化水素製造用触媒に含まれるゼオライト成分と接触する時間を、原料油の接触時間と同じ8秒とした。その他は実施例5と同様にして単環芳香族炭化水素の製造を行った。
  その結果、得られた単環芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン)の量(BTX収率)は、原料油(LCO)とリサイクル油との合計量を100質量%とすると、37質量%であった。各条件および結果を表3に示す。
【0090】
  以上の結果より、以下のことが分かった。
  流動床において、リサイクル油(重質留分)の接触時間を原料油より短くした実施例1〜4では、接触時間を同じにした比較例1と同等以上のBTX収率が得られた。また、固定床において、リサイクル油(重質留分)の接触時間を原料油より短くした実施例5では、接触時間を同じにした比較例2より高いBTX収率が得られた。
  実施例1〜4では、比較例1に対してリサイクル油(重質留分)の接触時間、すなわち分解改質反応器内での滞留時間が短くなる。そこで、リサイクル油(重質留分)の滞留時間(接触時間)に基づいて、分解改質反応器の必要な容積を計算によって求めたところ、表3に示したように、比較例1を100とした場合に、実施例1では91、実施例2では86、実施例3では80、実施例4では76となった。したがって、リサイクル油の滞留時間(接触時間)を短くするほど、分解改質反応器の必要な容積が少なくなり、分解改質反応器を小型化することができる。
  実施例4では、比較例1に比べてガス収率が低く、したがって比較例1に比べて過分解が抑制されている。