(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成長用基板の上に、第1伝導型のIII族窒化物半導体層、発光層および前記第1伝導型とは異なる第2伝導型のIII族窒化物半導体層を順次積層して発光構造積層体を形成する発光構造積層体形成工程と、
前記成長用基板の一部が露出するよう、前記発光構造積層体の一部を除去することで、独立した複数個の発光構造部を形成する発光構造部形成工程と、
前記複数個の発光構造部上にオーミック電極層、および、導電性サポート体と接続するための接続層を形成する工程と、
前記接続層を介して下部電極を兼ねる導電性サポート体を形成する工程と、
前記成長用基板を前記複数個の発光構造部からリフトオフする剥離工程と、
前記発光構造部間で前記サポート体を切断することにより、各々がサポート部に支持された前記発光構造部を有する複数個のLEDチップに個片化する切断工程と、
を具え、前記発光構造部形成工程は、前記複数個の発光構造部の各々の平面が、円またはコーナーに丸みを有する4n角形状(nは正の整数とする。)となるよう、前記発光構造積層体の一部を除去することを含み、
前記発光構造積層体の一部の除去は前記剥離工程前に行い、
前記剥離工程前に、前記発光構造部間に位置するサポート体に該サポート体を貫通する複数の貫通溝または貫通孔を設け、
前記剥離工程は、ケミカルリフトオフ法を用いて行うことを特徴とするIII族窒化物半導体縦型構造LEDチップの製造方法。
【背景技術】
【0002】
一般に、III族元素とV族元素との化合物からなるIII−V族半導体は、発光ダイオード(LED)等のデバイスに広く用いられている。
【0003】
III族元素としてAl、Ga、Inを用い、V族元素としてPやAsを用いたGaP、GaAs、AlGaAs、AlInGaP等のIII−V族半導体のLEDにおいては、格子整合のため同種の単結晶基板上に成長を行う。たとえばAlGaAsのエピタキシャル成長の場合、Al組成全域に渡り、ほぼGaAsに格子整合するのでGaAs基板を用いるのが一般的である。
【0004】
GaPやGaAsはバルク単結晶成長時に伝導制御用の不純物を添加することで、良質で大口径(2インチ口径以上)かつ安価なn型あるいはp型導電性単結晶基板が工業生産されている。これらの導電性基板ならびに前記III−V族半導体層を積層して形成した発光構造積層体を一対の電極で挟み、電流を縦方向に流す縦型構造を採用することができる。
【0005】
一方、III族元素としてAl、Ga、In等を用い、V族元素としてNを用いたIII族窒化物半導体は、高融点で窒素の解離圧が高くバルク単結晶成長が困難であり、大口径で安価な導電性単結晶基板が無いという理由から、異種のサファイア基板上に成長させることにより形成するのが一般的である。
【0006】
しかしながら、サファイア基板は絶縁性であって電流が流れないため、従来は、サファイア基板上に順に成長させたn型のIII族窒化物半導体層、活性層(発光層)およびp型のIII族窒化物半導体層からなる発光構造積層体の一部を除去してn型のIII族窒化物半導体層を露出させ、この露出させたn型のIII族窒化物半導体層およびp型のIII族窒化物半導体層の上にn型電極およびp型電極をそれぞれ配置して、電流を横方向に流す横型構造を採用するのが通常であった。
【0007】
この場合、n電極形成部は活性層を除去するので、(1)発光部面積が減少してしまう、厚くても5μm程度のn型薄層を横方向に電流を流す必要があり直列抵抗が高くなり、(2)駆動電圧の上昇、(3)発熱の増大を招くという問題がある。また、サファイア基板は熱伝導率が低く、発光構造部で生じた熱の放熱が十分でなく、LED特性の(4)熱飽和の問題を生じ、高出力化には不利である。
【0008】
これに対し、近年、サファイア基板上に発光構造積層体を形成後、この発光構造積層体を導電性のサポート部で支持した後、サファイア基板をリフトオフして剥離し、これらサポート部と発光構造積層体を一対の電極で挟むことで、縦型構造のLEDチップを得る技術がさかんに研究開発されている。
【0009】
特許文献1は、LEDチップの側面を通じた光抽出効果を向上させ、発熱による素子の特性劣化を防止しその寿命を延長させるために、縦型構造を有するLEDチップ全体の平面形状を五角形以上の多角形または円形に形成する技術を開示している。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、側面を通じた光抽出効果はチップサイズが小さい場合に限定されるものと考えられる。すなわち、発光構造物層は通常5μmないし高々10μmであり、チップサイズが大型化すると発光構造物の全表面の面積に対する側面の面積比率が低下し、チップ内から側面を通じた光抽出の比率が低下するためである。
【0011】
その例として、縦型構造ではなく横型構造において、特許文献2の実施例1では、半径が60から140μmの円柱状に発光構造物を加工した際、円柱の半径すなわち曲率半径が小さいほうが側面からの光取り出し効率が向上し発光出力が大きくなる傾向があるとした。これは、350μm以下といった小型チップサイズ条件のもとでの各論的なものであり、チップサイズ大型化による高出力化とは相反するという問題がある。
【0012】
また、特許文献1に記載された技術は、発光構造部はIII族窒化物半導体からなる発光構造積層体状あるいはその上全面に反射性オーミックコンタクト層を形成したもので、個々のLEDチップに相当するサポート部を個々にめっきによる金属層で形成し、めっき金属をマスクにチップ間に露呈した発光構造部を乾式蝕刻法(ドライエッチング)で除去し、その後サファイア成長用基板をレーザーリフトオフ法で除去するものである。
【0013】
個々のサポート部および発光構造部が分離された状態でサファイア基板を除去すると、チップがバラバラとなるため、n型電極の作製などのその後の工程が複雑になるとともに歩留まりの低下が懸念される。
【0014】
また、LEDチップのサポート部は後工程たとえば実装工程でのハンドリングの都合上、一般に50から150μm程度の厚みが必要であり、めっきにより形成された金属サポート層は寸法精度、形状の維持が難しく、それをマスクとした発光構造部のエッチングは寸法精度や形状維持が困難なものとなる。さらには、反射性オーミック金属のエッチングも前記マスクを用いて行うので、発光構造積層体の側面に金属残渣が付着し、ショートやリーク電流の発生などLEDチップ特性への悪影響も懸念される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
LEDなどの縦型構造の窒化物半導体チップを作製するには、前述のようにレーザーでサファイア基板からエピタキシャル層を剥離するレーザーリフトオフ法や、金属バッファ層などをエッチングすることでサファイア基板からエピタキシャル層を剥離するケミカルリフトオフ法や、フォトケミカルリフトオフ法がある。いずれの方法も、エピタキシャル層をリフトオフするため、かつ窒化物半導体のエピタキシャル成長可能な物質層を成長用基板上に形成し、窒化物半導体を成長後に当該層をレーザーによる熱分解またはエッチングによって溶解することにより成長用基板からエピタキシャル層をリフトオフする方法である。なお、エピタキシャル層から成長用基板をリフトオフするという表現でも良い。
【0017】
図1(a)〜
図1(c)は、III族窒化物半導体において、リフトオフ法を用いて得られた縦型構造のLEDチップを説明するための図であり、
図1(a)は、個片化された1つのLEDチップの概略的な側面図を、
図1(b)は、個片化された1つのLEDチップの概略的な平面図を、
図1(c)は、個別のLEDチップに個片化する前の、複数の発光構造部が形成されたウエハの概略的な平面図を示したものである。
【0018】
図1(a)に示すように、縦型構造のLEDチップ200は、導電性サポート部
202、発光構造部
201および上部電極203を順に有し、通常、導電性サポート部
202および発光構造部
201は、
図1(b)に示すように、その平面が四角形状に形成される。これは、
図1(c)に示すように、発光構造部
201の平面が四角形状であれば、複数の発光構造部
201が形成された状態のウエハから個々のLEDチップ200に切断する際に、図中、鎖線で示されるような直角の二方向で直線的な切断を行えば良いため加工生産性が高く、また加工しろによる材料ロスが抑えられるためである。なお、この場合下部電極は導電性サポート部が兼ねている。
【0019】
本発明者らは、サファイア基板上に形成したIII族窒化物半導体からなる発光構造積層体をドライエッチングにより碁盤の目状にサファイア基板まで溝加工を行い、一次分離を行った。次いで基板形状の導電性サポート体を形成後に、リフトオフを行いサファイア基板を剥離させた。リフトオフ後の個々の発光構造積層体は、サポート体に一体的に支持されている。リフトオフされた個々の発光構造積層体にかなりの比率でクラックが導入されることが分かった。クラックは、サポート体に支持された発光構造積層体が、リフトオフでサファイア基板との結合から開放される際に入るようである。
【0020】
図2はクラックが導入された状況を上面から光学顕微鏡にて観察したものである。コーナー近傍から中央部に伸展するクラック帯が生じているのが分かる。(後述の表1に示す従来例であり、クラックの発生率は95.5%であった。)このような状態に至れば不良品として扱われ、歩留まり、コスト、生産性の面で大問題である。
【0021】
このようなクラック発生は研究開発途上ということもあり、特許文献や学術文献などによって公表はされていないが、縦型構造のIII族窒化物半導体LEDチップの量産化のためには解決すべき重要課題である。
【0022】
本発明の目的は、上記問題を解決し、発光構造部にクラックのない、高品質の縦型LEDチップおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)成長用基板の上に、第1伝導型のIII族窒化物半導体層、発光層および前記第1伝導型とは異なる第2伝導型のIII族窒化物半導体層を順次積層して発光構造積層体を形成する発光構造積層体形成工程と、前記成長用基板の一部が露出するよう、前記発光構造積層体の一部を除去することで、独立した複数個の発光構造部を形成する発光構造部形成工程と、前記複数個の発光構造部上にオーミック電極層、および、導電性サポート体と接続するための接続層を形成する工程と、前記接続層を介して下部電極を兼ねる導電性サポート体を形成する工程と、前記成長用基板を前記複数個の発光構造部からリフトオフする剥離工程と、前記発光構造部間で前記サポート体を切断することにより、各々がサポート部に支持された前記発光構造部を有する複数個のLEDチップに個片化する切断工程とを具え
、前記発光構造部形成工程は、前記複数個の発光構造部の各々の平面が、円またはコーナーに丸みを有する4n角形状(nは正の整数とする。)となるよう、前記発光構造積層体の一部を除去することを含
み、前記発光構造積層体の一部の除去は前記剥離工程前に行い、前記剥離工程前に、前記発光構造部間に位置するサポート体に該サポート体を貫通する複数の貫通溝または貫通孔を設け、前記剥離工程は、ケミカルリフトオフ法を用いて行うことを特徴とするIII族窒化物半導体縦型構造LEDチップの製造方法。
【0025】
(2)前記切断工程は、前記複数の貫通溝または貫通孔を通るよう行われる前記
(1)に記載のIII族窒化物半導体縦型構造LEDチップの製造方法。
【0028】
(3)前記導電性サポート体の形成工程は、接合法、湿式成膜法、乾式成膜法を用いて行われる上記(1)
または(2)に記載のIII族窒化物半導体縦型構造LEDチップの製造方法。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、発光構造部の平面を、円またはコーナーに丸みを有する4n角形状(nは正の整数である。つまり、4nとは4の倍数を意味する。)となるよう形成し、発光構造部に加わる応力を分散すること、および、サポート体に複数の貫通溝または貫通穴を形成して個々の発光構造積層体に関与するサポート体の範囲を擬似的に分割することで、サポート側から発光構造部に加わる応力の分散をはかり、個々の発光構造積層体に加わる応力を小さくすることにより、サポート体に支持された発光構造積層体がリフトオフ時にサファイア基板との結合から開放される際にクラックが入るのを回避し、クラック発生率を低減させて発光構造部にクラックのない、高品質の縦型LEDチップを歩留まりよく提供することができる。
【0038】
また、サファイア基板上のIII族窒化物半導体からなる発光構造積層体を個々のLEDチップサイズに合わせて1次分離を行うが、その後サポート部は連結された状態であるため、リフトオフにより成長基板を除去してもウエハ状態であるため後工程でのデバイス加工が実施できる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、本発明に従う縦型LEDの製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図3は、本発明に従う縦型LEDの製造方法のフローを模式的に示したものであって、説明の便宜上、厚さ方向が誇張して描かれている。
【0041】
本発明に従う縦型LEDの製造方法は、
図3に示すように、成長用基板101の上に、第1伝導型のIII族窒化物半導体層102、発光層103および第1伝導型とは異なる第2伝導型のIII族窒化物半導体層104を順次積層して発光構造積層体105を形成する発光構造積層体形成工程(
図3(a))と、成長用基板101の一部が露出するよう、発光構造積層体105の一部を除去することで、例えば島状に独立した複数個の発光構造部106を形成する発光構造部形成工程(
図3(b))と、これら複数個の発光構造部106を、下部電極を兼ねるサポート体107を形成する工程(
図3(c))と、成長用基板101を複数個の発光構造部106からリフトオフする剥離工程(
図3(d))と、発光構造部106間でサポート体107を107aのように切断(
図3(f))することにより、各々が発光構造部106を有する複数個のLEDチップ100に個片化する切断工程とを具える。なお、
図3(e)に示すように、剥離工程の後に、上部電極108を発光構造部の剥離面側に形成する工程を具えることができる。
【0042】
本発明者らは、発光構造部に生じるクラックについて観察すべく、
図1(b)に示すような、発光構造部の平面が正方形である縦型LED200を形成したところ、発光構造部202には、
図2に示すような多数のクラックが観察された。これらは、発光構造部202のコーナーの近傍から中央部へ向かって伸展していることがわかる。なお、
図3は、平面の一辺が1000μmの四角形状である発光構造部について、光学顕微鏡を用いて観察したものである。このような中央部へ向かって伸展するクラックは、一辺が500μm以上の大型チップサイズの発光構造部に、より顕著に発生する。
【0043】
本発明者らは、このようなクラックの発生形態について鋭意検討を行ったところ、クラックは、結晶学的なスベリ面やヘキ開面に依存するというよりも、むしろ、発光構造部やサポート部の形状に起因して発生するものであることを突き止めた。特に発光構造物のコーナー部近傍に多数のクラックが発生し易いことが判明した。これは、成長用基板を発光構造部から剥離する際に、成長用基板と発光構造部ならびに接続したサポート間の応力が発光構造部のコーナー部近傍に集中するといった応力分布に関係していると考えられる。
【0044】
したがって、本発明に従う縦型LEDチップの製造方法は、発光構造部形成工程(
図3(b))において、
図4に示すように、複数個の発光構造部106の各々の平面が、円またはコーナーに丸みを有する4n角形状(nは正の整数とする。)となるよう、発光構造積層体105の一部を除去することを含み、かかる構成を有することにより、発光構造部106に応力集中することを避け、クラックのない、高品質の縦型LEDチップを提供することができるものである。
【0045】
また、本発明に従う縦型LEDチップの製造方法は、導電性サポート形成工程(
図3(c))において、発光構造部間に位置するサポート体に、該サポート体を貫通する複数の貫通溝または貫通孔を設けて、個々の発光構造物に加わるサポート側からの応力を分散させ、かつ、発光構造物106のコーナー近傍に応力集中することを避け、クラックのない、高品質の縦型LEDチップを提供することができるものである。
【0046】
成長用基板101は、サファイア基板またはサファイア基板上にAlN膜を形成したAlNテンプレート基板を用いるのが好ましい。形成するリフトオフ層の種類やIII族窒化物半導体からなる発光構造積層体のAl、Ga、Inの組成、LEDチップの品質、コストなどにより適宜選択すればよい。
【0047】
リフトオフ層は、レーザーリフトオフ法ではGaNバッファ層がレーザーでの熱分解およびその後の再固着の回避(Gaの融点が29.7℃と低融点なため)ができる点で好ましく、ケミカルリフトオフ法ではCrNなどの金属バッファ層が化学選択エッチングで溶解できるので好ましい。前者の形成は後述のMOCVD装置内で、後者はスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法やMOCVD法で成膜するのが好ましい。
【0048】
発光構造積層体105は、第1伝導型をn型とし、第2伝導型をp型としてもよいし、この逆であってもよい。第1伝導型のIII族窒化物半導体層102、発光層103および第2伝導型のIII族窒化物半導体層104は、MOCVD法により例えば成長用基板101上にエピタキシャル成長させることができる。
【0049】
本発明に従う縦型LEDチップの製造方法により製造された発光構造部106は、その平面形状が、円またはコーナーに丸みを有する4n角形状(nは正の整数とする。)とし、このように4の倍数の頂点を有する多角形であることにより、
図4に鎖線で示されるように、導電性サポート体107を直交して切断することを想定した際に、内接した多角形が対称性を確保でき、加わる応力を均等に分散させることができる。さらに、発光構造部106の横断面の形状のコーナー部が丸みを有することで、発光構造部106が成長用基板101から離れサポート体107に移し替えられる際の、発光構造部106に加わる応力が分散され、クラックの発生をさらに抑制することができる。
【0050】
上記発光構造部形成工程において、発光構造積層体105の一部の除去には、ドライエッチング法を用いるのが好ましい。これは、III族窒化物半導体層で構成される発光構造積層体105のエッチングの終点を再現性良く制御できるからである。また、隣接する発光構造部106が繋がった状態であると、例えばレーザーリフトオフ法を用いて成長用基板101を剥離する場合、上述したGaN層等を熱分解させた際に発生する窒素ガスの逃げ道が無く、発光構造部106にクラックや破裂破壊が生じ、また、化学エッチング液で上述した金属バッファ層を溶解するケミカルリフトオフ法やフォトケミカルリフトオフ法を用いる場合には、エッチング液が金属層に給液されず、リフトオフができなくなってしまうため、この除去は、成長用基板101の一部が露出するまで行うものとする。
【0051】
図には示されないが、上記サポート体形成工程は、複数個の発光構造部106とサポート体107とを、複数個の発光構造部106の各々と接するオーミック電極層、およびサポート体107と接する接続層を介して形成するのが好ましい。また、オーミック電極層と接続層との間にさらに反射層を形成するか、オーミック電極層が反射層の機能を兼ねることがより好ましい。これらの層形成には、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式成膜法を用いることができる。
【0052】
上記オーミック電極層は、仕事関数の大きな金属、例えばPd、Pt,Rh、Auなどの貴金属やCo,Niにより形成されることができる。
また、反射層としては、Rh等の反射率が高いため、上記オーミック電極層との兼用も可能だが、発光領域が緑から青色の場合にはAgやAl層等を、紫外線領域ではRhやRu層等を用いるのがより好ましい。
また、接続層は、サポート体107の形成方法にもよるが、接合法、例えば加熱圧着によりサポート体107を接合する場合、Au、Au−Sn、ハンダ等とすることができる。
【0053】
なお、サポート体107としては、導電性シリコン基板やCuW合金基板、Mo基板などが熱膨張係数、熱伝導率の面で適している。また、サポート体107は、湿式あるいは乾式めっきにより形成することもできる。たとえばCuまたはAuの電気めっきでは、接続層としてCu、Auなどを用いることができる。
【0054】
上面から見た導電性サポート部107aの平面が発光構造部106よりも大きく端部が50μm以上露呈していることが好ましい。また、導電性サポート部107aの横断面の形状が四角形または八角形を基本構成とするのが好ましい。基本構成とするとは、ダイシング後のサポート部の辺やコーナー部の一部にくぼみや突起部を有していても良いという意味であり、ダイシング前の導電性サポート体107に孔や溝を形成しても良いことを意味している。
すなわち、
図5(a)および
図6(a)に一例として示されるように、発光構造部106間に位置するサポート体107の部分には、サポート体107を貫通する複数の貫通溝109または貫通孔110が設けられるのが好ましい。サポート体に孔や溝を設けることにより、1つの発光構造部に関与するサポート体の領域を擬似的に分割し、発光構造部に加わるサポート部側からの応力を緩和、分散させることができるからである。
【0055】
また、ケミカルリフトオフ法やフォトケミカルリフトオフ法を用い、化学エッチング液で金属層を溶解してリフトオフを行う場合には、発光構造部106間の溝111(エッチングチャンネル)以外にも、サポート体107に貫通溝109や貫通孔110を形成することにより、エッチング液の給排液を効果的に行うことができ、金属層のエッチング速度を向上させることができる副次的な効果も生じる。
【0056】
なお、上記サポート体107の貫通溝109や貫通孔110は、Si基板を用いた場合にはドライエッチング、CuやAuめっきによって形成する場合には厚膜フォトレジストでマスクして溝や孔を形成したが、上記発光構造部106の間の分離溝と対向するのが当然好ましい。貫通溝109や貫通孔110が発光構造部106の下に位置してしまうと応力分布が均等でなくなり、クラック発生を助長したりサポート部が欠損したりするため放熱性を悪化させてしまうおそれがあるためである。
【0057】
上記剥離工程は、上記リフトオフ層をレーザーリフトオフ法、ケミカルリフトオフ法またはフォトケミカルリフトオフ法で除去し、成長用基板101と発光構造物106間の剥離を行うのが好ましい。
【0058】
また、剥離工程により露呈した発光構造部106の面は、ウエット洗浄で清浄化されるのが好ましい。次いで、ドライエッチングまたは、およびウエットエッチングで所定量削り、レジストをマスクとしたリフトオフ法によりn型オーミック電極、ボンディングパッド電極を形成する。電極材としてはAl、Cr、Ti、Ni、Pt、Auなどが用いられ、オーミック電極、ボンディングパッドにはPt、Auなどをカバー層として成膜して、配線抵抗の低減とワイヤーボンドの密着性を向上させる。なお、発光構造部106の側面ならびに表面には、SiO
2やSiNなどの保護膜を付与しても良い。
【0059】
上記切断工程では、発光構造部106間を例えばブレードダイサーやレーザーダイサーを用いて切断するが、発光構造部106に熱や破砕ダメージが入るのを防止するため、一般には発光構造部106は導電性サポート部107aの平面外周よりも内側に寄せるが、通常10から30μm程度である。
【0060】
また、切断工程は、複数の貫通溝109または貫通孔110を通るよう行われるのが好ましい。すなわち、本発明の縦型LEDは、上述した縦型LEDの製造方法を用いて、サポート部の複数の側面のうち少なくとも1つの側面が、貫通溝109または貫通孔110の壁部の一部であるものとすることができる。
図6(b)および
図7(b)は、切断工程後の縦型LEDの概略的な側面図を示したものであり、サポート部107の斜線部は、切断部分を、それ以外は上記貫通溝109または貫通孔110の壁部の一部であることを示すものである。
【0061】
つまり、ダイシング後の分離面はサポート部の一部であり、チップ時のサポート部の側面側の一部に切断面を有しない非切断面が含まれる事が好ましい。ここで、上記「切断面」とは、切断工程においてダイサー等によって直接切断された面のことをいい、例えば上述した貫通溝や貫通孔を通るように導電性サポート体107が切断された場合、これら貫通溝や貫通孔の壁部に対応する面は、ブレードやレーザーが触れていない非切断面である。したがって、このような非切断面と、上記切断面とは、その表面形状が異なる。
切断面はブレード切削面またはレーザーによる溶解面となる。非切断面はドライエッチング面やレジストマスクを除去した後の面である。非切断面は、たとえばケミカルリフトオフや電極形成時にエッチング液に接触する場合がある。粗さなどで一概に定義することは困難だが、光学顕微鏡等で切断面と非切断面との表面状態の差を観察することができる。
【0062】
次に、本発明に従う縦型LEDの実施形態について図面を参照しながら説明する。
本発明に従う縦型LEDは、一例として
図4に示されるように、サポート部107aと、このサポート部107a上に設けられた第2伝導型III族窒化物半導体層、第2伝導型III族窒化物半導体層の上に設けられた発光層、および、発光層の上に設けられた第2伝導型とは異なる伝導型の第1伝導型III族窒化物半導体層を有する発光構造部106とを一対の電極で挟んだ構造を有し、発光構造部106の平面形状が、円またはコーナーに丸みを有する4n角形状(nは正の整数とする。)であり、かつサポート部107aの平面は、発光構造部106の平面よりも大きくかつ異なる形状を有し、かかる構成を有することにより、発光構造部106にクラックが少なく、高品質の縦型LEDを提供することができるものである。
【0063】
なお、図および以下の説明は、便宜的に縦と横の辺の長さが等しい円や正方形などの正4n角形を基準にしているが、縦と横の長さが異なる場合でも同様の効果がある。楕円や長方形などの場合は、アスペクト比が3:1を越えない範囲で、縦、横のそれぞれが以下に記載する条件を満たせばよい。
【0064】
コーナーに丸みを有する4n角形状の一辺の直線部の長さをL
1は、下記の式を満たすのが好ましい。
L
1≦0.8L
0
但し、L
0は、4n角形状がコーナーに丸みを有さない場合の4n角形状の一辺の長さとする。
【0065】
ここで、本発明のコーナーの丸みとは曲率半径Rを持つ円弧であることが好ましい。LEDのチップサイズや成長用基板、バッファ層、発光構造部、サポート部の構造によって、クラックを抑制するために必要なRの下限値が異なってくるが、本発明では、一般的なフォトマスク上の面取り量またはフォトリソグラフィー工程で発生するコーナー部の鈍りによって形成される丸みの範囲を超えて、意図してコーナーの丸みを形成する。
【0066】
n角形が辺の長さWの正方形に内接する場合、多角形の辺の長さL
0は
L
0=W×tan(180°/N)
であり、コーナーの丸みの曲率半径Rの円弧がコーナーで交わる辺に内接する場合、面取り後の辺(直線部)の長さL
1は
L
1=L
0−2×R/tan((180°−360°/N)/2)
であり、L
1とL
0の比率L
1/L
0は
L
1/L
0=1−2×R/W/tan((180°−360°/N)/2)/tan(180°/N)
=1−2×R/W/tan(90°−180°/N)/tan(180°/N)
=1−2×R/W
となってWとRで決まり、Nにはよらないことになる。
【0067】
本発明は、面取り前の多角形の辺の長さL
0と面取後の辺の直線部の長さL
1の比率L
1/L
0が0.8以下さらに好ましくは0.7以下とすることで、クラック発生を大幅に抑制することができる。
【0068】
また、サポート部107aの平面は、発光構造部106よりも大きく、かつ端部が50μm以上露呈していることが好ましい。また、サポート部107aの平面形状は、四角形または八角形を基本構成とするのが好ましい。基本構成とするとは、切断工程後のサポート部107の辺やコーナー部の一部にくぼみや突起部を有していても良いという意味であり、切断工程前のサポート体107に貫通溝109や貫通孔110を形成しても良いことを意味している。サポート体107に貫通溝109や貫通孔110を設けることにより、サポート体107の貫通溝109や貫通孔110が、半導体発光構造部に加わる応力を緩和させ、クラックの発生防止に寄与するためである。
【0069】
なお、
図1〜
図6は、代表的な実施形態の例を示したものであって、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
[実験例]
【0070】
(実験例1〜8)
実験例1〜8は、サファイア基板上に、リフトオフ層(CrN層、厚さ:18nm)を形成後、n型III族窒化物半導体層(GaN層、厚さ:7μm)、発光層(InGaN系MQW層、厚さ:0.1μm)、p型III族窒化物半導体層(GaN層、厚さ:0.2μm)を順次積層して発光構造積層体を形成し、その後、サファイア基板の一部が露出するよう、発光構造積層体の一部を除去することで、横断面の形状が、正方形、コーナーに丸みを有する正方形、または円となるよう、
島状に独立した複数個の発光構造部を形成した。コーナーに丸みを付与する前の正方形の一辺の長さL
0、コーナーの曲率半径R、丸み付与後の一辺の直線部の長さL
1、L
0に対するL
1の比率L
1/L
0は、表1に示す。
【0072】
各々の発光構造部の上に、オーミック電極層(Rh,厚さ:0.1μm)、接続層(Au−Sn合金,厚さ:1.5μm)を形成し、また、貼り合わされるボロンドープp型導電性シリコン基板の両面に、Ti/Ptのオーミックコンタクトを形成し、さらに、上記発光構造部と貼り合わされる側に、接続層(Au−Sn合金層,厚さ:1.0μm)を形成し、両者を加熱プレスすることで貼り合せた。
【0073】
その後、ケミカルリフト法を用いてサファイア基板を剥離した。なお、エッチング液として硝酸第二セリウムアンモン溶液を用いた。この溶液は、シリコン基板や上記の各種金属層は腐蝕せずに、金属層のみをエッチングすることができるので好適である。
【0074】
(実験例9〜14)
発光構造積層体の一部を除去することで、横断面の形状が、正八角形、コーナーに丸みを有する正八角形、または円となるよう、島状に独立した複数個の発光構造部を形成したこと以外は、上記実験例と同様な方法によりサファイア基板を剥離した。
【0075】
(実験例15〜22)
発光構造積層体の一部を除去することで、横断面の形状が、正十二角形、コーナーに丸みを有する正十二角形、または円となるよう、島状に独立した複数個の発光構造部を形成したこと以外は、上記実験例と同様な方法によりサファイア基板を剥離した。
【0076】
(従来例ならびに実験例23〜25)
発光構造積層体の一部を除去することで、横断面の形状が、正方形(従来例)または円となるよう、島状に独立した複数個の発光構造部を形成した。発光構造部の幅Wは1000μmであり、コーナーに丸みを付与する前の正方形の一辺の長さL
0、コーナーの曲率半径R、丸み付与後の一辺の直線部の長さL
1、L
0に対するL
1の比率L
1/L
0は、表1に示す。また、個々の素子の配置は碁盤の目状の升目内とした。素子間のピッチは1250μmである。
【0077】
実験例24および25について、個別の発光構造部のp層上にオーミック電極層(NiOならびにAg)を形成し、次いで分離溝にフォトレジストを埋め込むとともに個々の発光構造物のp−オーミック電極層部は開口して、サポート体と接続するための接続層(Ni/Au/Cu)を形成した。次いで後述のCuめっきの際に成膜を防止するため厚膜レジストによるピラーの形成を行った。形成位置は
図5(a)のように発光構造部を取り囲む升目の辺上または
図6(a)のように辺の交差点位置とした。なおピラー形成位置の接続層はエッチングにより予め除去した。
【0078】
次いで、硫酸銅系の電解液を用いてCuを80μm電気めっきしサポート体を形成した。液温は25〜30℃の範囲で、成膜速度は25μm/hrであった。次いで、ピラー部ならびに分離溝に埋め込んだレジストを薬液洗浄により除去し、サポート体の上下に貫通する溝・孔を形成した。なお、
図5(a)に示す貫通溝50の幅は70μm、長さを900μmとして四辺に形成した。
図6(a)に示す貫通孔60は四角柱状としその辺の長さは410μmとした。その後、選択エッチング液により金属層を溶解除去して、成長用サファイア基板を分離して発光構造部をサポート体側に移し替えた。なお、従来例ならびに実験例23については、別途ピラーを形成せず、ピラー位置の接続層の除去も行わないで、全面にCuめっきを行った。
【0079】
(評価)
実験例1〜22について、サファイア基板を発光構造部から剥離することで露出した発光構造部の表面を光学顕微鏡観察し、クラックの発生状況ならびにウエハ面内でのクラック発生率を調べた。特徴として、クラックは、
図10(a)に示すような、コーナー周辺からチップ中央に向けて伸展する形態、または
図10(b)に示すような、コーナー周辺近傍に発生する形態であり、直線状の辺の部分での発生はなかった。これらコーナー周辺からチップ中央に向かうクラックおよびコーナー周辺近傍のクラックの発生率を表1および
図7〜
図9に示す。なお、
図7は、実験例1〜8の結果を、
図8は実験例9〜14の結果を、
図9は実験例15〜22の結果をそれぞれ示したものである。
【0080】
表1および
図7〜9から分かるとおり、本発明に従う実験例2〜8、10〜14および16〜22は、比較例である実験例1、9および15と比較して、コーナーから中央方向へ向かうクラックおよびコーナーに沿ったクラックの発生の少なくとも一方を抑制することができていることがわかる。
【0081】
また、従来例ならびに実験例23〜25についても、サファイア基板を剥離することで露出した発光構造部の表面を光学顕微鏡観察し、クラックの発生状況ならびにウエハ面内でのクラック発生率を調べた。これらコーナー周辺からチップ中央に向かうクラックおよびコーナー周辺近傍のクラックの発生率も表1に示す。
【0082】
上記の結果は、複数の発光構造部間に位置するサポート体に上下に貫通する貫通溝または貫通孔を設けることで、サファイア基板剥離時にサポート体から発光構造部へ加わる応力が分散されたことを示している。また、実験例23〜25の試料において、金属層のエッチング所要時間は、上下貫通溝・孔が無い場合には35時間であった。一方、上下貫通溝・孔を形成した場合には両者とも6時間であり、クラック発生の抑制面だけでなく、生産性向上面でも多大な効果が認められた。
【0083】
次に、サファイア基板を剥離することにより露出した発光構造部を清浄化し、n型オーミック電極・ワイヤーボンディングパッド電極として、Ti/Al/Ni/Auを真空蒸着法で形成し、
図5(a)および
図6(a)に鎖線で示した切断箇所をレーザーダイサーにより切断して個片化した。加工しろ(カーフロス)は11〜18とした。ブレードダイサーの場合、貫通溝・孔の位置で切断送り速度を変更するのは現実不可能であるが、レーザーダイサーでは切断する必要がない上下貫通部はスキップさせることができるので、交点位置の貫通孔の場合50%、升目の辺の位置に貫通溝を形成した場合には60%切断時間を短縮することができた。
【0084】
これにより、LEDチップのサポート部は
図5(b)の側面図で示すように、未切断部を側面に含む。個片化後のサポート形状は、
図5(c)に示すように、四角形を基本形状としたものになる。また、
図6は交点位置の貫通孔の場合であり、正方形の支持基板のコーナー部が欠損した状態であるが、貫通孔の形状は円柱状、角柱状とでしてもよく、個片化後のサポート形状は、
図6(c)に示すように、八角形を基本形状としたものになる。この場合も、
図6(b)に示すように側面に切断部および切断しない部分を有する。またこれらは、発光構造部の平面形状とサポート部の平面形形状が異なり、サポート部は発光構造部よりも端面が大きく露呈した好ましい構造である。
【0085】
したがって、表1および
図7〜
図9からわかるように、本発明に従う実験例2〜8、10〜14、16〜22、および24〜25は、従来例ならびに、比較例である実験例1、9、15、23と比較して、コーナーから中央方向へ向かうクラックおよびコーナーに沿ったクラックの発生のいずれか一方を効果的に抑制することができる。
【0086】
以上、実施例実験例2〜8、10〜14、16〜22、および24〜25は、コーナーに丸みを有する4n角形形状である横断面の、n=1、2、3の例を示した。nが4以上ではさらに交差角が広がりコーナーに丸みを施せばしだいに円に漸近することになり、実質的には円と考えても良い。