特許第5691362号(P5691362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5691362熱硬化性着色組成物及びそれを焼成して得られる硬化膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5691362
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】熱硬化性着色組成物及びそれを焼成して得られる硬化膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/42 20060101AFI20150312BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20150312BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150312BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20150312BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20150312BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20150312BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20150312BHJP
【FI】
   C08G59/42
   C08L63/00 C
   C09D7/12
   C09D163/00
   G02F1/1335 500
   G02F1/13 101
   C09D11/00
【請求項の数】11
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2010-225781(P2010-225781)
(22)【出願日】2010年10月5日
(65)【公開番号】特開2012-77236(P2012-77236A)
(43)【公開日】2012年4月19日
【審査請求日】2013年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】王 平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 節男
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−060748(JP,A)
【文献】 特開2001−279045(JP,A)
【文献】 特開昭61−225244(JP,A)
【文献】 特開平07−133436(JP,A)
【文献】 特開2006−018252(JP,A)
【文献】 特開2007−169607(JP,A)
【文献】 特開2008−249867(JP,A)
【文献】 特開2002−086061(JP,A)
【文献】 特開昭61−221218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00
C08L 63/00
C08L 43/00
C08L 33/00
C08C 19/00− 19/44
C08F 6/00−246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(I)で表されるラジカル重合性モノマー(a1)100重量部および該モノマー(a1)以外のラジカル重合性モノマー(a2)20〜400重量部を重合して得られる共重合体0.5〜35重量%と、
(B)平均粒子径が30〜200nmである顔料1〜30重量%と、
(C)不飽和カルボン酸から導かれる構成単位1〜50重量%、不飽和カルボン酸無水物から導かれる構成単位0〜50重量%およびその他のモノマーに由来する構成単位0〜99重量%(ただし、3者の使用量の合計を100重量%とする。)を有する重合体(前記(A)共重合体を除く。)0.1〜35重量%
を含有し、
前記ラジカル重合性モノマー(a2)が、エポキシを有するラジカル重合性モノマーを含む、遮光性硬化膜を形成するための熱硬化性着色組成物:
【化1】
(式中、R1は水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルキルであり、
2、R3およびR4はそれぞれ独立に、水酸基、炭素数1〜5のアルコキシ、または-O(Si(CkH2k+1)2O)mSi(CpH2p+1)3であり(kは1〜5の整数であり、mは0〜10の整数であり、pは1〜5の整数である)、nは1〜5の整数である。)。
【請求項2】
前記式(I)において、R1がメチルであり、
2、R3およびR4がそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルコキシまたは-O(Si(CkH2k+1)2O)mSi(CpH2p+1)3であり(kは1〜5の整数であり、mは0〜10の整数であり、pは1〜5の整数である)、
nが2〜4の整数であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性着色組成物。
【請求項3】
前記ラジカル重合性モノマー(a1)が、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランおよび/または3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の熱硬化性着色組成物。
【請求項4】
前記エポキシを有するラジカル重合性モノマーが、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタンおよび3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項のいずれかに記載の熱硬化性着色組成物。
【請求項5】
前記不飽和カルボン酸が、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸およびフマル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記不飽和カルボン酸無水物が、無水マレイン酸、無水イタコン酸および無水シトラコン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の熱硬化性着色組成物。
【請求項6】
前記(C)重合体が、不飽和カルボン酸から導かれる構成単位5〜30重量%、不飽和カルボン酸無水物から導かれる構成単位0〜20重量%およびその他のモノマーに由来する構成単位50〜95重量%(ただし、3者の使用量の合計を100重量%とする。)を有し、かつ、該その他のモノマーがN置換マレイミドを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱硬化性着色組成物。
【請求項7】
さらに(D)溶剤を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の熱硬化性着色組成物。
【請求項8】
さらに、(E)カップリング剤及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加物を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の熱硬化性着色組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の熱硬化性着色組成物を基板上に塗布し、該基板上に形成された塗膜を焼成して得られる遮光性硬化膜。
【請求項10】
対向する一対の基板と、該一対の基板を所定幅に隔てるスペーサーと、前記一対の基板の間隙に封入された液晶材料とを有し、
前記基板上に請求項9に記載の遮光性硬化膜が形成されてなる液晶表示素子。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の熱硬化性着色組成物からなるインクジェット用インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等に形成された不良画素の輝点などの欠陥を修正するのに好適な熱硬化性着色組成物、当該組成物を用いて作製された液晶表示素子等に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルは大きくは表裏2枚の基板とその間の液晶材料から構成される。前記2枚の基板のうち、表側の基板上にブラックマトリクス(BM)とカラーフィルター、共通電極、場合によりスペーサが形成される。裏側のアレイ基板については、液晶側に、TFTなどのアクティブ素子とサブ画素となる電極がアレイ状に作りこまれている。これらの基板はいずれも薄膜を基板上に積層する工程と、該薄膜をパターンニングする工程等を繰り返すことにより製造される。
【0003】
そのため、欠陥のない完全な基板を作成するためには、各工程において各種設定条件を維持、管理するために多大な努力を要する。従って、場合によっては欠陥が発生することもある。
【0004】
又、近年液晶表示素子の大画面化に伴うパターン面積の増大に伴い、欠陥も生じやすくなり、このことが、品質・歩留まりを向上させたうえでの大量生産の実施に大きな影響を与えている。
【0005】
これらは液晶表示パネルの生産性に直結するので、これらの問題の解決の重要度が益々増しており、前記問題の解決のため、欠陥の内容によって、それぞれの修復技術が報告されている。
【0006】
例えば、カラーフィルター基板の製造工程中、あるいは材料中に存在する微小な異物などに起因して、ある程度の確率でパターン欠陥が生じる。パターン欠陥は大きく分けると突起がある黒欠陥と色抜けがある白欠陥の2つに分類される。生じたパターン欠陥が液晶表示装置の色特性に影響するたけではなく、特に突起がある欠陥では、カラーフィルターをTFT基板と貼り合わせ表示パネルを組んだ際に、カラーフィルター上に形成された黒欠陥である突起がTFT基板にまで到達してしまい短路を起し、重大な製品不良の原因になり得る。
【0007】
これらの修復方法として、黒欠陥については、レーザーで黒欠陥部の異物を取り除く方法が報告されている。しかし、レーザーの照射が過度に行われ、異物だけでなく画素まで除去してしまい、白欠陥が生じることがある。
【0008】
白欠陥については、直接R(赤)、Y(黄)、B(青)の三色の着色剤を混合した、十分な遮光性を有する紫外線硬化性黒色インキによる修復法が特許文献1に報告された。色抜けは肉眼により視認されるが、黒色インキで前記色抜け部分を黒に着色した場合、その黒色部分は小さいため、肉眼によっては視認されない。しかし、この方法に使用されるインクの粘度は高く、また色抜け部分のみにインキを充填することは困難なため、そのインクが隣接する画素等のパターンと重なった部分が新たな突起になりやすい。
【0009】
さらに前記パターン欠陥の一例として、アレイ基板上TFT(薄膜トランジスタ)の形成工程中に生じた欠陥が挙げられる。これは、回路形成パターン上での修復が出来ず、前記アレイ基板を表示駆動した場合に、TFTに接続された画素電極に相当する画素が輝点(輝点欠陥)となって表示画面上で認識される欠陥である。
【0010】
この欠陥の修復方法として、修復する箇所にレーザーを照射し、形成される凹所にUV硬化性遮光性樹脂を充填する方法が特許文献2に報告された。しかしこの方法では、遮光性樹脂を充填するために、事前に充填箇所にテープでマスキングするなど多段階の工程が必要とされる。
【0011】
一方、修復する箇所に直接遮光性樹脂を充填する方法が試みられたが、後工程の、基板表面の汚れを拭き取る、溶剤で洗浄するなどの外因によって、充填した樹脂が剥がれやすいという問題点がある。これは、前記樹脂の耐薬品・溶剤性、耐磨耗性および基板との密着性が不十分であるからである。また前記方法には、前記樹脂の膜厚の調整が難しい等の問題点もある。
【0012】
又、上記TFT欠陥の修復は液晶パネルを形成後に行うことから、前記修復に熱硬化性遮光性樹脂を使用する場合、液晶に影響を与えない低温で前記樹脂を焼成することが必要とされる。そのような低温では十分に硬化しない樹脂も多く、そのような樹脂では、耐薬品性、耐磨耗性および基板との密着性に優れた硬化物を形成することができず、有効な修復ができない。
【0013】
前記の修復用樹脂を欠陥部に塗布する手段としては、上記のように修復箇所へ樹脂を充填する方法、ディスペンサによってペーストを必要量垂らす方法(特許文献3)、および先端が平面を形成している針状物の先端に樹脂を付着させ、それを欠陥部に押し付ける方法(特許文献4)などがある。
【0014】
しかしながら、これらの塗布手段では、それぞれの方式に適合する修復樹脂インクが必要であり、かつ前記塗布手段では微細着色パターンの修復に適用するには困難で、塗布適性が悪く、塗布膜厚の調整が難しい等などの問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第4313551号公報
【特許文献2】特開平5−181099号公報
【特許文献3】特開平11−142635号公報
【特許文献4】特開平8−182949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、遮光性が高く、耐薬品性、耐磨耗性および基板との密着性に優れ、さらに微細着色パターン欠陥修復にも適合する硬化膜を形成しうる、低温焼成可能な新規組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の構造を有する共重合体と、顔料と、遊離のカルボン酸基または酸無水物基を有する重合体とを含む熱硬化性着色組成物が、上記課題を解決しうる優れた特性を有することを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下のような熱硬化性着色組成物などを提供する。
【0018】
[1](A)一般式(I)で表されるラジカル重合性モノマー(a1)および該モノマー(a1)以外のラジカル重合性モノマー(a2)を重合して得られる共重合体と、
(B)顔料と、
(C)不飽和カルボン酸から導かれる構成単位および不飽和カルボン酸無水物から導かれる構成単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構成単位を有する重合体と
を含有する熱硬化性着色組成物:
【0019】
【化1】
(式中、R1は水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルキルであり、
2、R3およびR4はそれぞれ独立に、水酸基、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、または-O(Si(CkH2k+1)2O)mSi(CpH2p+1)3であり(kは1〜5の整数であり、mは0〜10の整数であり、pは1〜5の整数である)、nは1〜5の整数である。)。
【0020】
[2]前記ラジカル重合性モノマー(a2)が、エポキシを有するラジカル重合性モノマーを含むことを特徴とする[1]に記載の熱硬化性着色組成物。
[3]前記式(I)において、R1がメチルであり、
2、R3およびR4がそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のアルコキシまたは-O(Si(CkH2k+1)2O)mSi(CpH2p+1)3であり(kは1〜5の整数であり、mは0〜10の整数であり、pは1〜5の整数である)、
nが2〜4の整数であることを特徴とする[1]または[2]に記載の熱硬化性着色組成物。
【0021】
[4]前記ラジカル重合性モノマー(a1)が、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランおよび/または3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の熱硬化性着色組成物。
【0022】
[5]前記エポキシを有するラジカル重合性モノマーが、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタンおよび3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする[2]〜[4]のいずれかに記載の熱硬化性着色組成物。
【0023】
[6]前記不飽和カルボン酸が、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸およびフマル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記不飽和カルボン酸無水物が、無水マレイン酸、無水イタコン酸および無水シトラコン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱硬化性着色組成物。
【0024】
[7]さらに(D)溶剤を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の熱硬化性着色組成物。
[8]さらに、(E)エポキシ系樹脂用硬化剤、カップリング剤及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加物を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の熱硬化性着色組成物。
【0025】
[9][1]〜[8]のいずれかに記載の熱硬化性着色組成物を基板上に塗布し、該基板上に形成された塗膜を焼成して得られる硬化膜。
[10]対向する一対の基板と、該一対の基板を所定幅に隔てるスペーサーと、前記一対の基板の間隙に封入された液晶材料とを有し、
前記基板上に[9]に記載の硬化膜が形成されてなる液晶表示素子。
【発明の効果】
【0026】
本発明の熱硬化性着色組成物を硬化して得られる硬化膜は、高い遮光性、優れた耐薬品性、耐磨耗性および基板との密着性を有するため、微細着色パターン欠陥修復を含めた種々のパターン欠陥修復に適合する。さらに、前記組成物は低温焼成での硬化が可能のため、液晶パネルを形成した後のTFT欠陥の修復にも適合する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[1.熱硬化性着色組成物]
本発明の熱硬化性着色組成物は、(A)上記一般式(I)で表されるラジカル重合性モノマー(a1)および該モノマー(a1)以外のラジカル重合性モノマー(a2)を重合して得られる共重合体と、(B)顔料と、(C)不飽和カルボン酸から導かれる構成単位および不飽和カルボン酸無水物から導かれる構成単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構成単位を有する重合体とを含有する。
【0028】
本発明の熱硬化性着色組成物は、必要に応じ、(D)溶剤、(E)エポキシ系樹脂用硬化剤、カップリング剤および界面活性剤等の添加物等を含んでもよい。
本発明の熱硬化性着色組成物の粘度の適性範囲は特に限定されないが、25℃における粘度の範囲は、3〜200mPa・sであることが好ましい。より好ましくは5〜100mPa・sであり、最も好ましくは7〜50mPa・sである。
【0029】
また、該熱硬化性着色組成物をインクジェット用インクとして用いる場合には、その粘度の範囲は、インクジェット吐出温度において5〜40mPa・sであることが好ましい。より好ましくは7〜30mPa・sであり、最も好ましくは10〜20mPa・sである。
【0030】
本発明の熱硬化性着色組成物の粘度は、前記(A)共重合体、(B)顔料および(C)重合体の含有量や(D)溶剤の含有量、又は前記(A)共重合体もしくは(C)重合体の重量平均分子量を適宜調節することにより、上記範囲内とすることができる。
【0031】
〔1.1 (A)共重合体〕
上記(A)共重合体は、上記一般式(I)であらわされるラジカル重合性モノマー(a1)と、該モノマー(a1)以外のラジカル重合性モノマー(a2)とを重合して得られる共重合体である。すなわち、この(A)共重合体は、モノマーの混合物を重合させて得られる共重合体である。以下、これら各モノマーについて説明する。
【0032】
<1.1.1 一般式(I)で表されるラジカル重合性モノマー(a1)>
一般式(I)を再度以下に示す。
【0033】
【化2】
当該式で表されるラジカル重合性モノマー(a1)を使用して得られた(A)共重合体を用いると、低温での焼成によって十分に硬化した硬化膜が得られ、しかも耐薬品性、耐磨耗性および基板との密着性に優れた硬化膜を形成しうる熱硬化性着色組成物が得られる。さらに、後述するように一般に(B)顔料は溶剤に分散させた顔料分散液として、本発明の熱硬化性着色組成物を構成するその他の成分と混合するが、その際に、前記(A)共重合体が顔料分散液に対して優れた安定性を示し、これらが均一に混合される。
【0034】
上記式(I)において、R1は水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルキルであり、好ましくはメチルである。
またR2、R3およびR4はそれぞれ独立に、水酸基、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、または-O(Si(CkH2k+1)2O)mSi(CpH2p+1)3である(kは1〜5の整数であり、mは0〜10の整数であり、pは1〜5の整数である)。R2、R3およびR4は好ましくは、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のアルコキシまたは-O(Si(CkH2k+1)2O)mSi(CpH2p+1)3である(kは1〜5の整数であり、mは0〜10の整数であり、pは1〜5の整数である)。
【0035】
最後に、nは1〜5の整数であり、好ましくは2〜4の整数である。
一般式(I)で表されるラジカル重合性モノマー(a1)の好ましい具体例として、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランおよび3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランなどが挙げられる。
本発明において、前記ラジカル重合性モノマー(a1)は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
<1.1.2 モノマー(a1)以外のラジカル重合性モノマー(a2)>
本発明に使用される上記モノマー(a1)以外のラジカル重合性モノマー(a2)は、一般式(I)に該当せず、ラジカル重合性を有する限り特に限定されない。
【0037】
詳細は後述するが、(A)共重合体の(C)重合体との反応性を考慮すると、ラジカル重合性モノマー(a2)としては、エポキシを有するラジカル重合性モノマーが好ましい。なお、本明細書において「エポキシ」とは、オキシラン環を有する基およびオキセタン環を有する基を示す。
【0038】
前記エポキシを有するラジカル重合性モノマーの具体例として、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタンおよび3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタンなどが挙げられる。
【0039】
これらのラジカル重合性モノマーを使用して得られた(A)共重合体を用いると、低温での焼成により十分に硬化した硬化膜が得られ、耐薬品性、耐磨耗性および基板との密着性に優れた硬化膜を形成しうる熱硬化性着色組成物が得られる。
【0040】
上記具体例の中でも、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートおよび3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタンは入手が容易であり、本発明の熱硬化性着色組成物から得られる硬化膜の耐薬品性、基板との密着性および耐磨耗性が優れ、(A)共重合体の顔料分散液に対する安定性ならびに前記組成物のインクジェット吐出性・描画性を高める観点から好ましい。
また、以上説明したラジカル重合性モノマー(a2)は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
<1.1.3 (A)共重合体の含有量>
本発明の熱硬化性着色組成物中、(A)共重合体の含有量は、該組成物から得られる硬化膜の耐磨耗性の観点から、前記組成物全体の0.5〜35重量%であることが好ましく、1〜20重量%であることがさらに好ましい。
【0042】
〔1.2 (C)重合体〕
本発明に使用される上記(C)重合体は、不飽和カルボン酸から導かれる構成単位および不飽和カルボン酸無水物から導かれる構成単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構成単位を有する重合体である。不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物はラジカル重合性モノマーであり、これらの重合性二重結合がラジカル重合し、(C)重合体が得られる。なお、後述するように、(C)重合体は、後述するその他のモノマーに由来する構成単位を有してもよい。本発明の熱硬化性着色組成物は、このような(C)重合体を含有しているため、前記組成物から得られる硬化膜の、耐磨耗性および耐薬品性が優れたものとなる。
【0043】
なお、上記一般式(I)で表されるラジカル重合性モノマー(a1)と不飽和カルボン酸とを重合させて得られた共重合体のような、(A)共重合体にも(C)重合体にも該当しうる共重合体は、本明細書では(A)共重合体とみなすものとする。
【0044】
前記不飽和カルボン酸の具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、フマル酸などが挙げられる。
前記不飽和カルボン酸無水物の例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。
【0045】
また、前記(C)重合体は、ヒドロキシスチレン、または4−ヒドロキシフェニルビニルケトンなどから導かれる構成単位を有していてもよい。これらの構成単位を有する(C)重合体を用いることは、本発明の熱硬化性着色組成物の低温での高い硬化性の観点から好ましい。
【0046】
さらに、前記(C)重合体は、N置換マレイミドおよびジシクロペンタニルを含むラジカル重合性モノマーから導かれる構成単位を有していてもよい。これらのモノマーから導かれる構成単位を有する(C)重合体を用いると、本発明の熱硬化性着色組成物をインクジェット用インクとしてジェティングした際の吐出性および描画性が優れ、かつ前記組成物から得られる硬化膜の耐薬品性が優れている点で好ましい。
【0047】
上記N置換マレイミドの具体例として、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(4−アセチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(4−ジメチルアミノ−3,5−ジニトロフェニル)マレイミド、N−(1−アニリノナフチル−4)マレイミド、N−[4−(2−ベンズオキサゾリル)フェニル]マレイミドおよびN−(9−アクリジニル)マレイミドが挙げられる。
【0048】
また、上記ジシクロペンタニルを含むラジカル重合性モノマーの具体例として、ジシクロペンタニルアクリレートおよびジシクロペンタニルメタクリレートが挙げられる。
さらには、本発明の効果を損なわない範囲で、上記(C)重合体は、上記ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシフェニルビニルケトン、N置換マレイミド、ジシクロペンタニルを含むラジカル重合性モノマー以外のラジカル重合性モノマーから導かれる構成単位を含んでいてもよい。
【0049】
本発明に使用する(C)重合体の製造に当たっては、上記不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物を、1種単独で、または2種以上の混合物として使用してもよい。さらに、前記のその他のモノマーを使用する場合には、これらのモノマーは、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0050】
本発明の熱硬化性着色組成物中、(C)重合体の含有量は、耐溶剤性の観点から、該組成物全体の0.1〜35重量%であることが好ましく、1〜35重量%であることがさらに好ましい。
【0051】
〔1.3 (A)共重合体および(C)重合体の製造方法〕
(A)共重合体、(C)重合体の製造方法は、特に制限されないが、(A)共重合体は上記ラジカル重合性モノマー(a1)と上記ラジカル重合性モノマー(a2)との混合物を重合させて得ることができ、(C)重合体は、上記不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種、さらに必要に応じて上記で挙げたその他のモノマーの混合物を重合させて得ることができる。
【0052】
前記重合としては、溶剤を用いた溶液中でのラジカル重合が好ましい。重合温度は使用する重合開始剤からラジカルが十分発生する温度であれば特に限定されないが、通常50℃〜150℃の範囲である。重合時間も特に限定されないが、通常1〜24時間の範囲である。また、当該重合は、加圧、減圧又は大気圧のいずれの圧力下でも行うことができる。
【0053】
上記の重合反応に使用する溶剤としては、使用するモノマーおよび生成する(A)共重合体および(C)重合体を溶解する溶剤を用いることができる。当該溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルおよびN,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0054】
また、上記重合反応に使用する溶剤としては、上記した、モノマー等の溶解性が高い溶剤以外に、本発明の熱硬化性着色組成物をインクジェット用インクとしてジェッティングした際の吐出性および描画性、さらにノズルの詰まりを生じにくくする観点から、高沸点の溶剤を用いることもできる。すなわち、(A)共重合体および(C)重合体は、重合溶剤中に溶解した溶液の状態で得られるが、この溶液を、溶剤を含んだまま本発明の熱硬化性着色組成物の調製に用いてもよい。この場合、当該溶剤は、後述する(D)溶剤に該当する。
【0055】
当該溶剤の具体例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドンおよびN,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0056】
上記重合反応に用いられる溶剤は、1種単独、または2種以上の混合溶剤として使用できる。
(A)共重合体を製造する際には、ラジカル重合性モノマー(a1)100重量部に対して、ラジカル重合性モノマー(a2)を通常20〜400重量部、好ましくは40〜200重量部使用し、これらモノマーを重合させる。
【0057】
(C)重合体を製造する際には、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物及び上記したその他のラジカル重合性モノマーの重合に用いる使用量は、通常不飽和カルボン酸が1〜50重量%、不飽和カルボン酸無水物が0〜50重量%およびその他のラジカル重合性モノマーが0〜99重量%であり(ただし、3者の使用量の合計は100重量%である)、
好ましくは不飽和カルボン酸が5〜30重量%、不飽和カルボン酸無水物が0〜20重量%およびその他のラジカル重合性モノマーが50〜95重量%である(ただし、3者の使用量の合計は100重量%である)。
【0058】
(A)共重合体および(C)重合体を合成する際に用いる重合開始剤としては、熱によりラジカルを発生する化合物が挙げられる。そのような化合物の例としては、アゾビスイソブチロニトリルおよび2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)等のアゾ系開始剤や、過酸化ベンゾイル等の過酸化物系開始剤が挙げられる。
【0059】
また、(A)共重合体および(C)重合体の分子量を調節するために、チオグリコール酸等の連鎖移動剤を適量添加してもよい。
例えばこのようにして製造される(A)共重合体および(C)重合体は、ポリスチレンを標準としたGPC分析で求めた重量平均分子量が1,000〜100,000の範囲であると、本発明の熱硬化性着色組成物の低温での硬化性が優れ、かつ、インクジェット用インクとしてジェッティングした際の吐出性および描画性が高くなり好ましい。
【0060】
さらに、重量平均分子量は1,000〜50,000であることが好ましく、1,000〜10,000であることがより好ましい。これらの範囲にあれば、(A)共重合体および(C)重合体の後述する(D)溶剤に対する溶解性が優れ、それらを含む本発明の熱硬化性着色組成物の粘度がより低くなるため、該組成物をインクジェット用インクとして使用し、ジェッティングした際に吐出精度が向上し、サテライトが抑制される。なお、サテライトとは、ジェッティングした際に、本滴の後方にできる微小滴のことである。
【0061】
前記重量平均分子量を測定する際の標準のポリスチレンとしては、例えば、分子量が500〜150,000のポリスチレン(例えばPolymer Laboratories製のPL2010−0102(S−M2−10)standard)を用いることができ、前記測定の際のカラムとしては、Shodex PLgel MIXED−D(Polymer Laboratories製)を用いることができ、前記測定の際の移動相としては、THFを用いることができる。このような条件で、前記重量平均分子量を測定することができる。
【0062】
〔1.4 (B)顔料〕
本発明の熱硬化性着色組成物に含まれる(B)顔料は、有機顔料と無機顔料のどちらでもよく、本発明の熱硬化性着色組成物の低温硬化性、ならびに該組成物から得られる硬化膜における耐薬品性、耐摩耗性、基板との密着性および遮光性等を向上させるために使用される。
【0063】
さらには、本発明では要求された遮光性に応じ、(B)顔料として種々の有機顔料および無機顔料が用いられる。そのような顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントブラック8、C.I.ピグメントブラック9、C.I.ピグメントブラック11、C.I.ピグメントホワイト6、チタンブラック、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ71などを挙げることができる。
【0064】
また本発明において、(B)顔料は、1種単独でも、2種以上の混合物であってもよい。
(B)顔料は粉末であるため、そのままでは本発明の熱硬化性着色組成物の構成成分たる(A)共重合体および(C)重合体とは均一に混合することが困難である。そのため、一般的に(B)顔料は一定量の溶剤に分散させて顔料分散液とし、(A)共重合体および(C)重合体と混合される。ここで使用される溶剤としては、上記の(A)共重合体および(C)重合体の製造において使用されるものとして挙げたのと同じ溶剤を挙げることができる。さらに(B)顔料の分散性を高めるため、一般的には顔料分散剤が併用される。
【0065】
本発明の熱硬化性着色組成物中の(B)顔料の平均粒子径(nm)は、通常20〜500nmである。さらに好ましくは30〜200nmであり、最も好ましくは30〜100nmである。なお、本明細書において前記平均粒子径は、大塚電子(株)ゼータ電位・粒径測定システムELS−Zseriesを使用して測定した体積平均粒子径である。
【0066】
平均粒子径が上記範囲内であると、本発明の熱硬化性着色組成物をインクジェット用インクとして用いた場合のインクジェットヘッドのノズル詰まりを有効に抑制することができ、さらに、(B)顔料の分散安定性を良好に保つこともできる。また、平均粒子径が上記範囲内であると、前記インクジェット用インクをジェッティングして得られた印刷物において、特定の光学特性、例えば所望の遮光性などを得ることができる。
本発明の熱硬化性着色組成物中、(B)顔料の含有量は、該組成物全体の1〜30重量%であることが好ましく、3〜20重量%であることがさらに好ましい。
【0067】
〔1.5 (D)溶剤〕
本発明の熱硬化性着色組成物をインクジェット用インクとして使用する場合、インクジェットヘッドのノズルの詰まりを生じにくくするために、前記組成物は(D)溶剤を含むことが好ましい。(D)溶剤の例としては、前記(A)共重合体および(C)重合体の製造において挙げたのと同様の溶剤が挙げられる。(D)溶剤としては、インクジェットヘッドのノズル表面が乾燥しにくく、目詰まりが発生しないように、180℃以上の沸点を有することが好ましく、180〜250℃の沸点を有することがさらに好ましい。
【0068】
そのような(D)溶剤の具体例としては、エチルアセテート、n−ブチルアセテート、イソブチルアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロヘキサノールアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、3−メトキシブタノール、3−メトキシブチルアセテート、1,3−ブチレングリコール、トリアセチン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトンおよびN−メチル−2−ピロリドンなどを挙げることができる。
【0069】
本発明においては、(D)溶剤は1種単独の溶剤であっても、2種以上の混合溶剤であってもよい。
また、本発明の熱硬化性着色組成物中の(D)溶剤の含有量は、該組成物の全量に対し、好ましくは95〜50重量%であり、より好ましくは90〜60重量%であり、最も好ましくは85〜65重量%である。
【0070】
(D)溶剤の含有量が上記範囲内であれば、該熱硬化性着色組成物の粘度が高いことによって生じるインクジェットヘッドのノズル詰まりが抑制され、連続ジェッティングが阻害されることはない。また、一回でジェッティングするインク量またはジェッティングの回数をより少なくしても、液晶表示装置の欠陥を修復するのに必要なインクジェット塗布膜厚を得ることができる。
【0071】
〔1.6 (E)添加物〕
本発明の熱硬化性着色組成物は、必要に応じて、上記で挙げた成分以外の(E)添加物を含有してもよい。
【0072】
これらの(E)添加物としては、例えば、上記(A)共重合体の合成モノマーとしてエポキシを有するラジカル重合性モノマー(a2)を使用する場合に、本発明の熱硬化性着色組成物から得られる硬化膜の耐熱性をより向上させるために用いられるエポキシ系樹脂用硬化剤、また前記硬化膜の、例えば基板との密着性を向上させるために用いられるカップリング剤、また前記硬化膜の、例えば下地基板への濡れ性を向上させるために用いられる界面活性剤などを挙げることができる。
【0073】
<1.6.1 エポキシ系樹脂用硬化剤>
前記エポキシ系樹脂用硬化剤としては、酸無水物、アミン、第四オニウム塩、クラウンエーテル錯体などを挙げることができる。
【0074】
エポキシ系樹脂用硬化剤として用いられる酸無水物としては、芳香族酸無水物、例えば、トリメリット酸無水物、フタル酸無水物など;脂環式酸無水物、例えばヘキサヒドロフタル酸無水物、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、リカシッドHNA100(商品名;新日本理化(株)製)など;脂肪族酸無水物、例えばマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物など;芳香族テトラカルボン酸二無水物、例えば3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4ージカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物またはエチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)など;脂環式テトラカルボン酸二無水物、例えばシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、またはシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物など;ならびに脂肪族テトラカルボン酸二無水物、例えばエタンテトラカルボン酸二無水物、またはブタンテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。
【0075】
エポキシ系樹脂用硬化剤として用いられるアミンとしては、脂肪族アミン、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなど;脂環族アミン、例えば、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンなど;芳香族アミン、例えば、ビスアミノフェノキシフェニルスルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなど;さらに、アミン変性品、例えば、ポリアミド、ケテミンなど;三級アミン、例えば、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリスジメチルアミノフェノール、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、4−(N,N−ジエチルアミノ)ピリジン、および1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデック−7−エン(DBU)などを挙げることができる。
【0076】
エポキシ系樹脂用硬化剤として用いられる第四オニウム塩としては、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、n−ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムブロマイド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルジメチルベンジルアンモニウムブロマイド、セチルピリジウムサルフェート、テトラエチルアンモニウムアセテート、トリメチルベンジルアンモニウムベンゾエート、トリメチルベンジルアンモニウムボレート、5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネニウムクロライド、および5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネウムテトラフルオロボレート等の第四アンモニウム塩類、並びにテトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムアイオダイド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、トリフェニルメトキシメチルホスホニウムクロライド、トリフェニルメチルカルボニルメチルホスホニウムクロライド、トリフェニルエトキシカルボニルメチルホスホニウムクロライド、トリオクチリベンジルホウホニウムクロライド、トリオクチルメチルホスホニウムクロライド、トリオクチルエチルホスホニウムアセテート、テトラオクチルホスホニウムクロライド、およびトリオクチルエチルホスホニウムジメチルホスフェートなどの第四ホスホニウム塩類などを挙げることができる。
【0077】
エポキシ系樹脂用硬化剤として用いられるクラウンエーテル錯体としては、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、シス−ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6、21−クラウン−7、または24−クラウン−8などと、KF、KCl、KBr、CsF、CsCl、CsBr、チオシアン酸カリウム、ナトリウムフェノキサイド、カリウムフェノキサイド、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、酢酸ナトリウム、または酢酸カリウムなどの無機塩類もしくは有機塩類との錯体を挙げることができる。
【0078】
これらの中でも本発明の熱硬化性着色組成物の硬化性及び保存安定性に影響を与えにくい、3,3'−ジアミノジフェニルスルホンおよびビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンなどが好ましく、さらに、3,3'−ジアミノジフェニルスルホンなどが特に好ましい。
【0079】
また、本発明の熱硬化性着色組成物中のエポキシ系樹脂用硬化剤の含有量は、添加する(A)共重合体の含有量によって決まる。エポキシ系樹脂用硬化剤の含有量は、本発明の熱硬化性着色組成物中に含まれる(A)共重合体100重量部に対し、好ましくは0.1〜20重量部であり、より好ましくは0.1〜10重量部であり、最も好ましくは0.1〜5重量部である。
【0080】
<1.6.2 カップリング剤>
上記カップリング剤としては、例えばシラン系、アルミニウム系またはチタネート系などの化合物を用いることができる。
【0081】
具体的には、シラン系の化合物としては、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、および3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができ、
アルミニウム系の化合物としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどを挙げることができ、
チタネート系の化合物としては、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネートなどを挙げることができる。
【0082】
これらの中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどが、本発明の熱硬化性着色組成物から得られる硬化膜の基板との密着性を向上させる効果が大きいため好ましい。
【0083】
カップリング剤を使用する場合には、その使用量は、本発明の熱硬化性着色組成物の固形分100重量部に対し、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部とされる。
【0084】
<1.6.3 界面活性剤>
上記界面活性剤としては、例えばシリコン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、またはフッ素系界面活性剤などを用いることができる。
【0085】
具体的には、シリコン系界面活性剤としては、Byk−300、Byk−306、Byk−335、Byk−310、Byk−341、Byk−344、およびByk−370(それぞれ商品名;ビックケミー・ジャパン(株)製)などが挙げられ、
アクリル系界面活性剤としては、Byk−354、Byk−358、およびByk−361(それぞれ商品名;ビックケミー・ジャパン(株)製)などが挙げられ、
フッ素系界面活性剤としては、DFX−18、フタージェント250、またはフタージェント251(それぞれ商品名;ネオス(株)製)、F470,F475,F479,F553,F554,F477,MCF350(それぞれ商品名;DIC(株)製)などを挙げることができる。
【0086】
界面活性剤を使用する場合には、その使用量は、本発明の熱硬化性着色組成物全体(100重量%)に対し、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.01〜1重量%、さらに好ましくは0.01〜0.5重量%とされる。
【0087】
〔1.7 熱硬化性着色組成物の調製方法〕
本発明の熱硬化性着色組成物は、以上説明した(A)共重合体、(B)顔料および(C)重合体を必須成分とし、これらに、さらに必要に応じて(D)溶剤や他の(E)添加物を公知の方法により混合し、好ましくは(B)顔料の粒子径を整えるため、孔径1.0〜5.0μmのフィルターで、前記混合により得られた混合液を濾過することで、調製することができる。
【0088】
[2 熱硬化性着色組成物の塗膜を焼成して得られる硬化膜]
本発明の熱硬化性着色組成物は、スピンコート、ロールコート、スリットコート等の公知の方法により、ガラス等の基板上に塗布する方法に適する。
【0089】
さらに、本発明の熱硬化性着色組成物が(D)溶剤を含有する場合には、当該組成物は、ジェッティングした時のインクジェット特性が優れたインクジェット用インクとして使用することができる。そのため前記組成物は、必要な箇所のみに塗布する場合の印刷法、例えば、インクジェット印刷法などに最適である。
【0090】
そして上記のいずれかの方法により基板上に塗布された本発明の熱硬化性着色組成物の塗膜を焼成することにより、硬化膜が形成される。本発明の特徴として、100〜120℃で60〜120分という低温条件での焼成が可能である。なお、焼成条件をより高い温度および長時間に変更しても、得られる硬化膜の特性には特に影響がない。
【0091】
前記組成物の硬化原理は特に限定されないが、一例として加熱により組成物中の(A)共重合体及び(C)重合体が硬化する。その結果、前記組成物の製膜後の硬化膜の遮光性、耐磨耗性及び耐薬品性が優れたものとなる。
【0092】
さらに、焼成(加熱)により(A)共重合体と(C)重合体とが反応して3次元化し、架橋構造を形成することによって(ただし硬化原理はこれに限定されない)、ジェッティング時の優れたインクジェット特性を維持しながら、前記組成物の製膜後の焼成により得られる硬化膜の遮光性、耐磨耗性及び耐薬品性がさらに向上する。
【0093】
この場合、本発明の熱硬化性着色組成物における(B)顔料の使用量(B重量部)、(A)共重合体の使用量(A重量部)、および(C)重合体の使用量(C重量部)の重量割合には、下記数式(1)および数式(2)の関係が成立することが好ましい。重量割合がこの範囲内であれば、本発明の熱硬化性着色組成物をジェッティングした時のインクジェット特性、前記組成物の製膜後の焼成により得られる硬化膜の遮光性、耐磨耗性、耐薬品性および基板との密着性のバランスが良好である。
【0094】
0.05≦B/(A+C)≦5.0・・・・(1)
0.02≦C/A≦5.0・・・・・・・・(2)
数式(1)の「B/(A+C)」は、より好ましくは0.1〜3.0であり、さらに好ましくは0.5〜1.0である。また、数式(2)の「C/A」は、より好ましくは0.05〜5.0である。
【0095】
[3 熱硬化性着色組成物より形成された硬化膜の用途]
上記のようにして形成された硬化膜は、顔料を含有しているため、遮光性に優れている。従って、本発明の熱硬化性着色組成物は、用いられる顔料によって、必要に応じた遮光性を有する硬化膜(遮光性硬化膜)を形成するのに最適である。ここで、遮光性硬化膜とは、例えば、液晶表示装置に形成された不良画素の輝点などの欠陥の修復(修正)のために設ける膜などを言う。
【0096】
[背景技術]でも述べたように、TFT欠陥の修復は液晶パネルを形成後に行うことから、液晶に影響を与えない低温で欠陥修復材料を焼成することが求められる。本発明の熱硬化性着色組成物は、前記のように低温での焼成が可能である。
【0097】
また液晶表示装置等の製造工程においては、基板表面の汚れをふき取る、薬品で洗浄するなどの操作が行われるため、欠陥修復材料の焼成物には、耐磨耗性、耐薬品性および基板との密着性に優れることが求められる。
【0098】
以上説明したように、本発明の熱硬化性着色組成物から得られる硬化膜は、これらすべての特性に優れているため、前記組成物は広く液晶表示装置等の欠陥の修復材料として好適である。
さらに本発明の熱硬化性着色組成物はインクジェット方式で塗布することができるため、前記硬化膜は、微細着色パターン欠陥の修復にも好適である。
【0099】
[4 液晶表示素子及び固体撮像素子]
本発明の液晶表示素子は、互いに対向して配置される一対の基板と、これら基板間を所定幅に規制するスペーサーと、前記基板同士の間隙に封入された液晶材料(封入部分を液晶層と称する)とを有する液晶表示素子であり、前記基板上に、本発明の硬化膜が形成されていることを特徴としている。
【0100】
なお、前記スペーサーとは、前記液晶層の厚さを一定に保持するために、感光性樹脂転写材料等を用いて形成されるものである。
液晶表示素子における液晶としては、STN型、TN型、GH型、ECB型、強誘電性液晶、反強誘電性液晶、VA型、MVA型、ASM型、IPS型、OCB型、AFFS型その他種々のものが好適に挙げられる。IPS型、MVA型、AFFS型、OCB型等のセルギャップ均一性が特に要求される方式に対しては、均一性に優れたフォトスペーサーを用いることが好ましい。
【0101】
本発明の液晶表示素子の基本的な構成態様としては、
1)薄膜トランジスタ(TFT)等の駆動素子と画素電極(導電層)とが配列形成された駆動側基板と、本発明の硬化膜を有するカラーフィルター及び対向電極(導電層)を備えたカラーフィルター側基板とをスペーサーを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成したもの、
2)本発明の硬化膜を有するカラーフィルターが前記駆動側基板上に直接形成されたカラーフィルター一体型駆動基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをスペーサーを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成したもの
などを挙げることができる。本発明の液晶表示素子は、各種液晶表示機器に好適に適用することができる。
【0102】
また、本発明の硬化膜は、固体撮像素子の製造工程における修復工程などにも使用することができる。そのようにして製造された固体撮像素子は、例えば、転送電極およびフォトダイオードを設けたシリコンウエハーの上、すなわち転送電極またはフォトダイオードのうち、シリコンウエハーからの高さが高い方の上に、カラーフィルターを、シリコンウエハー全体を覆うように設け(積層し)、前記カラーフィルター上の少なくとも一部に本発明の硬化膜を形成し(例えば前記カラーフィルターに生じた欠陥を修復するために形成される)、ついでマイクロレンズを積層することにより製造することができる。固体撮像素子としては、光学縮小系を持たない密着型もしくは完全密着型の固体撮像素子(イメ−ジセンサ)および光学縮小系を持つ固体撮像素子(CCD固体撮像素子)の双方を採用することができる。
【実施例】
【0103】
次に本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0104】
[合成例1](A1)共重合体の合成
攪拌器付4つ口フラスコに、重合溶剤としてジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、ラジカル重合性モノマー(a1)として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ラジカル重合性モノマー(a2)として、グリシジルメタクリレート、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)を下記の重量で仕込み、105℃の重合温度で4時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート(DEGBEA) 150.0g
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 44.4g
グリシジルメタクリレート 55.6g
2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル) 20.0g。
【0105】
反応液を室温まで冷却し、(A1)共重合体溶液を得た。
溶液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により前記(A1)共重合体の重量平均分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は3,000であった。
【0106】
[合成例2](A2)共重合体の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で攪拌器付4つ口フラスコに仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。
ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DPMA) 150.0g
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 40.0g
グリシジルメタクリレート 50.0g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 10.0g
2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル) 15.0g。
【0107】
合成例1と同様の処理を行い、得られた(A2)共重合体のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は2,800であった。
【0108】
[合成例3](A3)共重合体の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で攪拌器付4つ口フラスコに仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。
【0109】
ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(DB) 150.0g
3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン 40.0g
グリシジルメタクリレート 20.0g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 5.0g
ジシクロペンタニルメタクリレート 35.0g
2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル) 8.0g
【0110】
合成例1と同様の処理を行い、得られた(A3)共重合体のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は6,600であった。
【0111】
[合成例4](A4)共重合体の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で攪拌器付4つ口フラスコに仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート(DEGBEA) 150.0g
3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン 30.0g
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 39.0g
グリシジルメタクリレート 25.0g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 6.0g
2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル) 15.0g。
【0112】
合成例1と同様の処理を行い、得られた(A4)共重合体のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は4,800であった。
【0113】
[合成例5](C1)重合体の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で攪拌器付4つ口フラスコに仕込み、105℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。なお、下記モノマーにおいて、メタクリル酸が不飽和カルボン酸である。以下の合成例6〜8においても同様である。
ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート(DEGBEA) 300.0g
ジシクロペンタニルメタクリレート 40.0g
N−シクロヘキシルマレイミド 35.0g
メタクリル酸 25.0g
2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル) 20.0g。
【0114】
合成例1と同様の処理を行い、(C1)重合体のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は3,100であった。
【0115】
[合成例6](C2)重合体の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で攪拌器付4つ口フラスコに仕込み、110℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。
ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DPMA) 200.0g
ジシクロペンタニルメタクリレート 43.0g
N−シクロヘキシルマレイミド 33.0g
メトキシポリエチレングリコールメタクリレート 2.0g
メタクリル酸 22.0g
2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル) 15.0g。
【0116】
合成例1と同様の処理を行い、(C2)重合体のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は2,700であった。
【0117】
[合成例7](C3)重合体の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で攪拌器付4つ口フラスコに仕込み、80℃の重合温度で5時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(DB) 200.0g
スチレン 60.0g
N−シクロヘキシルマレイミド 25.0g
メタクリル酸 15.0g
2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル) 4.0g。
【0118】
合成例1と同様の処理を行い、(C3)重合体のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は3,600であった。
【0119】
[合成例8](C4)重合体の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で攪拌器付4つ口フラスコに仕込み、80℃の重合温度で1.5時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(EDM) 200.0g
グリシジルメタクリレート 92.0g
メタクリル酸 8.0g
2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル) 4.0g。
【0120】
合成例1と同様の処理を行い、(C4)重合体のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は8,500であった。
【0121】
[比較合成例1](M1)共重合体の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で攪拌器付4つ口フラスコに仕込み、100℃の重合温度で3時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート(DEGBEA) 150.0g
グリシジルメタクリレート 80.0g
メタクリル酸−n−ブチル 20.0g
2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル) 10.0g。
【0122】
合成例1と同様の処理を行い、得られた(M1)共重合体のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は3,300であった。
【0123】
[比較合成例2](M2)共重合体の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、100℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。
ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DPMA) 200.0g
グリシジルメタクリレート 40.0g
N−シクロヘキシルマレイミド 30.0g
N−フェニルマレイミド 30.0g
2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル) 10.0g。
【0124】
合成例1と同様の処理を行い、得られた(M2)共重合体のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は2,900であった。
【0125】
[比較合成例3](M3)重合体の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で攪拌器付4つ口フラスコに仕込み、100℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(DB) 200.0g
グリシジルメタクリレート 100.0g
2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル) 10.0g。
【0126】
合成例1と同様の処理を行い、得られた(M3)重合体のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は4,100であった。
【0127】
[比較合成例4](M4)共重合体の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で攪拌器付4つ口フラスコに仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート(DEGBEA) 150.0g
グリシジルメタクリレート 30.0g
N−シクロヘキシルマレイミド 40.0g
ベンジルメタクリレート 10.0g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 20.0g
2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル) 10.0g。
【0128】
合成例1と同様の処理を行い、得られた(M4)共重合体のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は5,300であった。
【0129】
<顔料分散液の調製例1>(B1)カーボンブラック分散液
30gのDEGBEA(ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート)に顔料分散剤としてスチレン−無水マレイン酸共重合体(酸価175、重量平均分子量3500)およびスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体(酸価200、重量平均分子量8000)を合計で6g溶解し、得られた溶液にカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7、平均一次粒子径0.030μm、粉状)20gを加えて、3本ロールミルで混練した後、混合液に44gのDEGBEAと400gの直径0.5mmのジルコニアビーズを加えてサンドミルで20時間攪拌した。得られた液を孔径1μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターで濾過して(B1)カーボンブラック分散液を得た。
【0130】
<顔料分散液の調製例2>(B2)カーボンブラック分散液
30gのDPMA(ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)に顔料分散剤としてスチレン−無水マレイン酸共重合体(酸価175、重量平均分子量3500)およびスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体(酸価200、重量平均分子量8000)を合計で6g溶解し、得られた溶液にカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7、平均一次粒子径0.030μm、粉状)20gを加えて、3本ロールミルで混練した後、混合液に44gのDPMAと400gの直径0.5mmのジルコニアビーズを加えてサンドミルで20時間攪拌した。得られた液を孔径1μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターで濾過して(B2)カーボンブラック分散液を得た。
【0131】
<顔料分散液の調製例3>(B3)カーボンブラック分散液
30gのDB(ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル)に顔料分散剤としてスチレン−無水マレイン酸共重合体(酸価175、重量平均分子量3500)およびスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体(酸価200、重量平均分子量8000)を合計で6g溶解し、得られた溶液にカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7、平均一次粒子径0.030μm、粉状)20gを加えて3本ロールミルで混練した後、混合液に44gのDBと400gの直径0.5mmのジルコニアビーズを加えてサンドミルで10時間攪拌した。得られた液を孔径1μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターで濾過して(B3)カーボンブラック分散液を得た。
【0132】
<顔料分散液の調製例4>(B4)カーボンブラック分散液
30gのDEGBEA(ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート)に顔料分散剤としてスチレン−無水マレイン酸共重合体(酸価175、重量平均分子量3500)およびスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体(酸価200、重量平均分子量8000)を合計で6g溶解し、得られた溶液にカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7、平均一次粒子径0.030μm、粉状)20gを加えて3本ロールミルで混練した後、混合液に44gのDEGBEAと400gの直径0.5mmのジルコニアビーズを加えてサンドミルで30時間攪拌した。得られた液を孔径1μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターで濾過して(B4)カーボンブラック分散液を得た。
【0133】
<熱硬化性着色組成物の調製例及びその評価>
以上のようにして得られた(A)共重合体(合成例1〜4)、(C)重合体(合成例5〜8)、(M)(共)重合体(比較合成例1〜4)及び(B)顔料分散液(調製例1〜4)を用いて熱硬化性着色組成物(実施例1〜4、比較例1〜5)を調製すると共に、該熱硬化性着色組成物について各種の評価を行った。
【0134】
[実施例1(熱硬化性着色組成物)]
下記成分を混合し、混合液を孔径2μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターで濾過して、粘度13.3mPa・s、顔料の平均粒子径79nm、粒度分布1.42の熱硬化性着色組成物を得た。該組成物の粘度はE型粘度計(商品名;VISCONIC END(株)東京計器製)を使用して25℃で測定し(以下同じ)、また、前記組成物中の顔料の平均粒子径(μm)及び粒度分布(Mv/Mn)は、大塚電子(株)ゼータ電位・粒径測定システムELS−Zseriesを使用して測定した(以下同じ)。
ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート(DEGBEA) 1.50g
(A1)共重合体(40重量%溶液) 1.00g
(B1)顔料分散液 5.00g
(C1)重合体(25重量%溶液) 5.00g
Byk−344(商品名;ビックケミー・ジャパン(株)製) 0.05g。
【0135】
(A1)共重合体および(C1)重合体について設けた括弧書きは、それぞれの共重合体含有溶液中における共重合体の含有量(濃度)を示す。但し、合成時に用いた重合開始剤の重量は無視し、計算には含めていない。以下同様である。
【0136】
この熱硬化性着色組成物を用いて、ジェッティングした時のインクジェット特性(ジェッティング特性)、当該組成物を基板に塗布し、形成された塗膜を焼成して得られる硬化膜の耐薬品性、遮光性及び耐磨耗性を以下の評価方法で評価した。評価結果を後記の表1に示す。なお、硬化膜の基板との密着性は、硬化膜の耐薬品性や耐磨耗性に大きく影響する要因であるので、耐薬品性および耐磨耗性に優れる硬化膜は、基板との密着性にも優れる。
【0137】
(ジェッティング特性の評価方法)
熱硬化性着色組成物を、FUJIFILM Dimatix社製のDMP−2831で、10pl用のヘッドを用いて、吐出電圧が21Vで30℃の条件下で、ガラス基板に塗布し、ドットパターンを形成した。ジェッティング時の液柱が垂直方向に吐出され、サテライトが発生しなかった場合を「G」、液柱が隣の液柱と接触する、またはサテライトが発生した場合を「NG」とした。なお、「G」又は「NG」は、それぞれ「Good」又は「No Good」の略である(以下同じ)。
【0138】
(耐薬品性の評価方法)
透明ガラス基板に、スピンコートで熱硬化性着色組成物を塗布し、基板上に形成された塗膜を80℃で3分プレベーク後、120℃で60分焼成することによって、膜厚1.5μmの硬化膜を形成した。この硬化膜に、下記の処理を別々に施した後、各処理前の膜厚に対する各処理後の膜厚の比率(残膜率)を耐薬品性として測定した。各処理後の残膜率が95%以上の場合を「G」とし、各処理後の残膜率が95%未満の場合を「NG」とした。なお、各処理後の残膜率=(各処理後の膜厚÷各処理前の膜厚)×100である。
【0139】
IPA処理:超音波水槽を使用しないで、前記硬化膜をイソプロピルアルコール中に25℃で10分間浸漬。
IPA+US処理:超音波水槽(出力100W,発振周波数:27KHz)を使用して、前記硬化膜をイソプロピルアルコール中に25℃で10分間浸漬。
なお、残膜率測定は、KLA TENCOR(株)製の商品名P−15の段差・表面あらさ・微細形状測定装置(highly sensitive surface profiler)を用いて行った。
【0140】
(遮光性の評価方法)
透明ガラス基板上に、前記(耐薬品性の評価方法)におけるのと同様にして、膜厚1.5μmの硬化膜を形成した。この硬化膜に光を照射し、透過光の明度(Y)を測定し、光学濃度(OD値)を、式OD=−log10(Y/100)に従い計算し、OD値が3以上の場合を「G」とし、OD値が3未満の場合を「NG」とした。明度(Y)の測定は、日本分光株式会社紫外可視近赤外分光光度計V−670を用いて行った。
【0141】
(耐磨耗性の評価方法)
透明ガラス基板上に、前記(耐薬品性の評価方法)におけるのと同様にして、膜厚1.5μmの硬化膜を形成した。綿棒にEtOHをつけ、透明ガラス基板上に製膜した硬化膜を擦った。これにより膜がなくなるまでの回数が50回以上の場合を「G」とし、50回未満の場合を「NG」とした。
【0142】
[実施例2(熱硬化性着色組成物)]
下記成分を混合し、混合液を孔径2μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターで濾過して、粘度12.8mPa・s、顔料の平均粒子径73nm、粒度分布1.26の熱硬化性着色組成物を得た。
ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DPMA) 2.70g
(A2)共重合体(40重量%溶液) 1.00g
(B2)顔料分散液 5.00g
(C2)重合体(33.3重量%溶液) 4.00g
Byk−344(商品名;ビックケミー・ジャパン(株)製) 0.05g。
【0143】
この熱硬化性着色組成物を用いて、実施例1と同様にして、ジェッティング特性、耐薬品性、遮光性及び耐磨耗性を評価した。評価結果を後記の表1に示す。
【0144】
[実施例3(熱硬化性着色組成物)]
下記成分を混合し、混合液を孔径2μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターで濾過して、粘度14.5mPa・s、顔料の平均粒子径110nm、粒度分布1.57の熱硬化性着色組成物を得た。
ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(DB) 2.50g
(A3)共重合体(40重量%溶液) 1.30g
(B3)顔料分散液 5.00g
(C3)重合体(33.3重量%溶液) 4.00g
F−475(商品名;DIC(株)製) 0.05g。
【0145】
この熱硬化性着色組成物を用いて、実施例1と同様にして、ジェッティング特性、耐薬品性、遮光性及び耐磨耗性を評価した。評価結果を後記の表1に示す。
【0146】
[実施例4(熱硬化性着色組成物)]
下記成分を混合し、混合液を孔径2μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターで濾過して、粘度11.9mPa・s、顔料の平均粒子径50nm、粒度分布1.73の熱硬化性着色組成物を得た。
ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート(DEGBEA) 2.50g
(A4)共重合体(40重量%溶液) 1.10g
(B4)顔料分散液 5.00g
(C4)重合体(33.3重量%溶液) 4.00g
F−475(商品名;DIC(株)製) 0.05g。
【0147】
この熱硬化性着色組成物を用いて、実施例1と同様にして、ジェッティング特性、耐薬品性、遮光性及び耐磨耗性を評価した。評価結果を後記の表1に示す。
【0148】
[比較例1(熱硬化性着色組成物)]
下記成分を混合し、混合液を孔径2μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターで濾過して、粘度13.2mPa・s、顔料の平均粒子径79nm、粒度分布1.42の熱硬化性着色組成物を得た。
ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート(DEGBEA) 1.50g
(M1)共重合体(40重量%溶液) 1.00g
(B1)顔料分散液 5.00g
(C1)重合体(25重量%溶液) 5.00g
Byk−344(商品名;ビックケミー・ジャパン(株)製) 0.05g。
【0149】
この熱硬化性着色組成物を用いて、実施例1と同様にして、ジェッティング特性、耐薬品性、遮光性及び耐磨耗性を評価した。評価結果を後記の表1に示す。
【0150】
[比較例2(熱硬化性着色組成物)]
下記成分を混合し、混合液を孔径2μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターで濾過して、粘度12.8mPa・s、顔料の平均粒子径73nm、粒度分布1.26の熱硬化性着色組成物を得た。
ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DPMA) 2.70g
(M2)共重合体(33.3重量%溶液) 1.00g
(B2)顔料分散液 5.00g
(C2)重合体(33.3重量%溶液) 4.00g
Byk−344(商品名;ビックケミー・ジャパン(株)製) 0.05g。
【0151】
この熱硬化性着色組成物を用いて、実施例1と同様にして、ジェッティング特性、耐薬品性、遮光性及び耐磨耗性を評価した。評価結果を後記の表1に示す。
【0152】
[比較例3(熱硬化性着色組成物)]
下記成分を混合し、混合液を孔径2μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターで濾過して、粘度13.8mPa・s、顔料の平均粒子径110nm、粒度分布1.57の熱硬化性着色組成物を得た。
ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(DB) 2.50g
(M3)重合体(33.3重量%溶液) 1.30g
(B3)顔料分散液 5.00g
(C3)重合体(33.3重量%溶液) 4.00g
F−475(商品名;DIC(株)製) 0.05g。
【0153】
この熱硬化性着色組成物を用いて、実施例1と同様にして、ジェッティング特性、耐薬品性、遮光性及び耐磨耗性を評価した。評価結果を後記の表1に示す。
【0154】
[比較例4(熱硬化性着色組成物)]
下記成分を混合し、混合液を孔径2μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターで濾過して、粘度12.4mPa・s、顔料の平均粒子径50nm、粒度分布1.73の熱硬化性着色組成物を得た。
ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート(DEGBEA) 2.50g
(M4)共重合体(40重量%溶液) 1.10g
(B4)顔料分散液 5.00g
(C4)重合体(33.3重量%溶液) 4.00g
F−475(商品名;DIC(株)製) 0.05g。
【0155】
この熱硬化性着色組成物を用いて、ジェッティング特性、耐薬品性、遮光性及び耐磨耗性を評価した。評価結果を後記の表1に示す。
【0156】
[比較例5(熱硬化性着色組成物)]
下記成分を混合し、混合液を孔径2μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターで濾過して、粘度11.8mPa・s、顔料の平均粒子径50nm、粒度分布1.73の熱硬化性着色組成物を得た。
ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート(DEGBEA) 3.50g
(M4)共重合体(40重量%溶液) 4.10g
(B4)顔料分散液 5.00g
F−475(商品名;DIC(株)製) 0.05g。
【0157】
この熱硬化性着色組成物を用いて、ジェッティング特性、耐薬品性、遮光性及び耐磨耗性を評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0158】
【表1】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜4の熱硬化性着色組成物はジェッティング特性が良好であり、その硬化膜は耐薬品性、遮光性および耐磨耗性のすべてに優れていることが判る。一方、比較例1〜5の熱硬化性着色組成物の硬化膜は耐磨耗性が不良であり、組成物のジェッティング特性および硬化膜の耐薬品性が不良であるものも散見される。特に比較例5は、(C)重合体を含有しない熱硬化性着色組成物を使用した例であるが、耐薬品性および耐磨耗性が極めて不良である。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の熱硬化性着色組成物を用いて、耐薬品性、遮光性及び耐磨耗性に優れた硬化膜を製造することができる。当該硬化膜は、液晶表示装置における欠陥の修復用途に好適である。