(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
るつぼ内の単結晶原料の位置を検出し、該単結晶原料の位置に応じて前記ヒーターの上下方向の位置を制御するヒーター位置制御機構を有することを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の単結晶原料の溶融装置。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン単結晶やサファイア単結晶などの各種単結晶のインゴットを製造する方法として、チョクラルスキー法(CZ法)が知られている。
【0003】
そして、チョクラルスキー法による単結晶インゴットの製造は、例えば
図5に示すような、メインチャンバー410と、該メインチャンバー410の上部にゲートバルブ411を介してメインチャンバー410と連通可能に設置されたプルチャンバー420とを備える単結晶製造装置400を用いて実施される。具体的には、チョクラルスキー法による単結晶インゴット423の製造は、メインチャンバー410内に配設されたるつぼ412に単結晶原料を投入し、該るつぼ412内の単結晶原料をヒーター413で加熱して溶融させ単結晶原料融液414とした後、プルチャンバー420内に配設されたワイヤーロープ421の先端に取り付けられた種結晶422をるつぼ412中の単結晶原料融液414に接触させ、種結晶422を回転させながら引き上げることにより行われている。なお、この単結晶製造装置400では、メインチャンバー410の内部のヒーター413の外周側には保温筒415が配設されており、メインチャンバー410の内部下方には、断熱材416が配設されている。
【0004】
ここで、上記従来の単結晶製造装置では、るつぼの周囲に配設されたヒーターを用いてるつぼ内の単結晶原料を溶融しており、単結晶原料の溶融時にるつぼを介して単結晶原料を加熱する必要がある。そのため、単結晶原料の溶融に必要な時間が長くなると共に、るつぼの材質によってはるつぼが高温になることにより劣化(例えば、石英るつぼの場合には石英がクリストバライト化する)して引き上げた結晶が有転位化してしまうこともある。
【0005】
そして、上述したような単結晶原料の溶融時間およびるつぼ劣化の問題は、大量の単結晶原料を溶融させる必要がある大口径単結晶インゴットの製造(例えば直径300mm以上、特には直径400mm以上の単結晶シリコンインゴットの製造など)において特に顕著に現れている。
【0006】
そこで、単結晶原料の溶融に必要な時間を短縮し、且つ、るつぼの劣化を抑制することが可能な単結晶製造装置として、メインチャンバー内のるつぼ上方に、るつぼ内の単結晶原料を直接加熱することができるサブヒーターを更に配設した単結晶製造装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、メインチャンバー内のるつぼ上方にサブヒーターを設けた上記従来の単結晶製造装置では、メインチャンバー内の構造が複雑化すると共に、メインチャンバーごとにサブヒーターを配設しなければならないため、工場内で複数のメインチャンバーを用いて単結晶インゴットを大量生産する場合などには設備コストが増大するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、メインチャンバーの構造の複雑化および設備コストの増大を抑制しつつ、るつぼ内に投入した単結晶原料をるつぼ上方から直接加熱することが可能な単結晶原料の溶融装置
および溶融方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の単結晶原料の溶融装置は、チョクラルスキー法による単結晶製造装置のメインチャンバー内のるつぼに投入された単結晶原料の溶融に用いる溶融装置であって、移動機構を有する本体部と、単結晶製造装置のメインチャンバーのゲートバルブに連結される下部開口端と、上部閉止端とを有する筒状体と、前記本体部に設けられ、前記下部開口端と前記ゲートバルブとが連結する連結位置と、前記下部開口端と前記ゲートバルブとが上下に離間した解除位置との間で前記筒状体を上下に昇降させる筒状体昇降機構と、前記筒状体の内部から下方に突出してるつぼ内の単結晶原料を加熱するヒーターと、前記本体部に設けられ、前記筒状体内の収容位置と、前記下部開口端よりも下方の単結晶原料加熱位置との間で前記ヒーターを上下に昇降させるヒーター昇降機構と、前記ヒーターへ電力を供給する電力供給源との接続部
と、前記筒状体の下部開口端と前記ゲートバルブとの連結を解除する際に筒状体の内部を加圧する加圧手段とを備え
、前記ヒーターの上方に、ヒーターと一体移動する熱遮蔽体を更に備え、前記熱遮蔽体が断熱材を有することを特徴とする。このように、本体部に移動機構を設けて溶融装置を移動可能とすれば、複数のメインチャンバー間で一台の溶融装置を共有することができるので、メインチャンバーごとにサブヒーターを配設する場合と比較して設備コストの増大を抑制することができる。また、筒状体と、筒状体昇降機構と、ヒーターと、ヒーター昇降機構とを設ければ、メインチャンバー内にサブヒーターを設けることなく、即ちメインチャンバー内の構造を複雑化することなく、メインチャンバーのるつぼ内の単結晶原料をるつぼ上方から直接加熱することができる。
また、加圧手段を設ければ、チャンバ内の雰囲気を減圧雰囲気または真空雰囲気としてから単結晶原料を溶融させ、その後ゲートバルブを閉じた場合であっても、筒状体の内部を加圧して、筒状体の下部開口端とゲートバルブとの連結を容易に解除することができる。更に、熱遮蔽体を設ければ、ヒーターから上方(筒状体側)への放熱を抑制して、単結晶原料をヒーターでより効率的に加熱することができると共に、筒状体がヒーターからの熱により劣化するのを防止することができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の単結晶原料の溶融方法は、チョクラルスキー法による単結晶製造装置のメインチャンバー内のるつぼに投入された単結晶原料を溶融する方法であって、上述した単結晶原料の溶融装置を使用して前記単結晶原料を溶融
し、前記単結晶原料を溶融した後、前記メインチャンバーのゲートバルブを閉じ、前記溶融装置の筒状体の下部開口端と、前記ゲートバルブとの連結を解除する解除工程を含み、前記解除を、前記筒状体の内部を加圧した後に行うことを特徴とする。
【0011】
ここで、本発明の単結晶原料の溶融装置は、前記筒状体が蛇腹構造を有しており、前記ヒーターが前記上部閉止端に対して固定されており、前記ヒーター昇降機構が、前記筒状体を伸縮させて前記ヒーターを上下に昇降させることが好ましい。蛇腹構造を有する筒状体を使用し、ヒーター昇降機構が筒状体を伸縮させることでヒーターを昇降させれば、装置を小型化して、装置を移動させる際の負担を低減することができるからである。
【0012】
また、本発明の単結晶原料の溶融装置は、
前記筒状体昇降機構が安全スイッチとして機能し、前記筒状体の下部開口端が前記解除位置に位置している場合には前記ヒーターへ電気が流れないようにすることが好ましい。
【0013】
更に、本発明の単結晶原料の溶融装置は、前記筒状体の内部にガスを供給するガス供給手段を備えることが好ましい。ガス供給手段を設ければ、単結晶原料を溶融する際に筒状体側からチャンバ内へとガスを流すことができるからである。
【0015】
そして、本発明の単結晶原料の溶融装置は、るつぼ内の単結晶原料の位置を検出し、該単結晶原料の位置に応じて前記ヒーターの上下方向の位置を制御するヒーター位置制御機構を有することが好ましい。ヒーター位置制御機構を設ければ、単結晶原料の一部が溶融してるつぼ内の単結晶原料の嵩密度が高くなり、るつぼ内の単結晶原料の位置が変化しても、ヒーターの位置を調整して単結晶原料を効率的に加熱することができるからである。
また、本発明の単結晶原料の溶融方法は、前記メインチャンバーのゲートバルブと、前記溶融装置の筒状体の下部開口端とを連結する連結工程を含み、前記連結を、前記ゲートバルブを閉じた状態で行うことが好ましい
。
【発明の効果】
【0016】
本発明の単結晶原料の溶融装置
および溶融方法によれば、メインチャンバーの構造の複雑化および設備コストの増大を抑制しつつ、るつぼ内に投入した単結晶原料をるつぼ上方から直接加熱することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の単結晶原料の溶融装置は、チョクラルスキー法を用いてシリコン単結晶やサファイア単結晶などの各種単結晶のインゴットを製造する際に、単結晶製造装置のメインチャンバー内のるつぼに投入された単結晶原料の溶融に用いられる。そして、本発明の単結晶原料の溶融装置は、移動機構を有しており、複数のメインチャンバー間を移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0019】
ここで、本発明の単結晶原料の溶融装置の一例の構造を
図1に示す。
図1に示す単結晶原料の溶融装置100は、下部に車輪11を有する本体部1と、本体部1の上部に設けられた支持板昇降装置3と、支持板昇降装置3を介して本体部1の上部に設けられ、
図1では左方向に延在する支持板12と、本体部1とはオフセットした位置で支持板12上に設けられた筒状体2およびガイド支柱13とを備えている。また、溶融装置100の本体部1の内部には、溶融装置100の各部の動作を制御する制御装置9が設けられている。更に、溶融装置100の筒状体2の内部には、溶融装置100を用いて単結晶原料を溶融する際に筒状体2の内部から下方に突出して単結晶原料を加熱するヒーター4と、ヒーター4の上方に配設された熱遮蔽体6とが設けられている。また、溶融装置100は、本体部1に配設された電源プラグ7を介して溶融装置100の外部から供給された電力の一部をヒーター4に伝えるヒーター電力ライン61a,61bおよび水冷電極62a,62bと、本体部1に配設された冷却水供給口64を介して溶融装置100の外部から供給された冷却水を水冷電極62a,62bへ供給する冷却水ライン(図示せず)と、本体部1に配設されたガス供給口81を介して溶融装置100の外部から供給されたガスを筒状体2の内部へ導入するガスライン8とを備えている。
【0020】
本体部1の下部に設けられた車輪11は、溶融装置100を移動させる際に移動機構として機能するものである。そして、この溶融装置100は、車輪11を利用して複数のメインチャンバー間を容易に移動させることができる。
【0021】
筒状体2は、支持板12および支持板昇降装置3を介して本体部1に接続されている。また、筒状体2は、例えばステンレス材からなる蛇腹(ベローズ)構造を有しており、
図1では上下方向に伸縮可能に構成されている。そして、筒状体2の下部(支持板12側)は、支持板12を貫通して下方に開口する下部開口端21となっており、該下部開口端21は、溶融装置100を用いて単結晶原料を溶融する際に単結晶製造装置のメインチャンバーのゲートバルブに連結される。また、筒状体2の上部は、閉止板22により気密に閉止された上部閉止端となっており、該閉止板22は、ガイド支柱13に設けられた閉止板昇降装置5に接続されている。
【0022】
ここで、支持板昇降装置3は、本体部1に設けられており、筒状体2およびガイド支柱13などを支持する支持板12を
図1では上下方向に昇降移動させるものである。そして、この支持板昇降装置3は、本体部1内に設けたモーター等(図示せず)を用いて支持板12を昇降移動させることにより、筒状体2を、単結晶原料の溶融時に筒状体2の下部開口端21と単結晶製造装置のメインチャンバーのゲートバルブとが連結する連結位置と、筒状体2の下部開口端21とゲートバルブとが上下に離間した解除位置との間で昇降させる筒状体昇降機構として機能する。
【0023】
また、閉止板昇降装置5は、ガイド支柱13、支持板12および支持板昇降装置3を介して本体部1と一体に設けられており、閉止板22をガイド支柱13に沿って
図1では上下方向に昇降移動させるものである。そして、この閉止板昇降装置5は、モーター等
(図示せず)を用いて閉止板22をガイド支柱13に沿って昇降移動させることにより、下部が支持板12に固定された蛇腹構造を有する筒状体2を上下方向に伸縮させることができる。
【0024】
ここで、閉止板22には、水冷電極62a,62bが気密に挿通されており、水冷電極62a,62bの先端(
図1では下側)には、石英板63、熱遮蔽体6およびヒーター4が設けられている。具体的には、
図2にヒーター4および熱遮蔽体6の近傍を拡大して示すように、水冷電極62a,62bの先端には、石英板63と、水冷電極62a,62bの先端にグラファイト製の棒を介して取り付けられたヒーター4と、石英板63とヒーター4との間で石英板63に固定された2枚の熱遮蔽板よりなる熱遮蔽体6とが設けられている。即ち、閉止板22を気密に挿通する水冷電極62a,62bの先端に設けられたヒーター4、熱遮蔽体6および石英板63は、筒状体2の上部閉止端である閉止板22に対して固定されている。なお、熱遮蔽板としては、板状の断熱材をグラファイト材でカバーしたものを使用することができる。また、水冷電極62a,62bとしては、例えば、中空二重管構造を有し、内部に冷却水を流すことができる電極を使用することができる。
【0025】
そのため、閉止板昇降装置5が閉止板22をガイド支柱13に沿って昇降移動(上下動)させると、筒状体2が伸縮すると共に、閉止板22の上下動に伴ってヒーター4、熱遮蔽体6および石英板63も一体的に上下動する。よって、閉止板昇降装置5は、ヒーター4を、筒状体2内の収容位置と、筒状体2の下部開口端21よりも下方の単結晶原料加熱位置(単結晶原料の溶融時にヒーター4で単結晶原料を加熱する位置)との間で上下に昇降させるヒーター昇降機構として機能する。
【0026】
また、この溶融装置100の本体部1には、電源プラグ7、冷却水供給口64およびガス供給口81が設けられている。そして、電源プラグ7、冷却水供給口64およびガス供給口81はそれぞれ、本体部1から引き出して溶融装置100が使用される工場内等に設けられている外部電源(外部電力供給源)、冷却水供給源およびガス供給源に接続し得るようにされている。なお、外部電源との接続部である電源プラグ7を介して外部電源から供給された電力は、本体部1を通って水冷電極62a,62bまで延在するヒーター電力ライン61a,61bを介してヒーター4の加熱に使用されると共に、支持板昇降装置3、閉止板昇降装置5および本体部1内の制御装置9の駆動にも使用される。また、冷却水供給口64から供給された冷却水は、本体部1を通って水冷電極62a,62bまで延在する冷却水ライン(図示せず)を通って水冷電極62a,62bへ供給される。更に、ガス供給口81から供給されたガスは、本体部1を通って支持板12上へと突出する本体側出口82と、筒状体2の閉止板22を気密に挿通する筒状体側入口83との間に設けられた可撓性を有するガスライン8を通って筒状体2内へと供給される。
【0027】
なお、筒状体2の内部へとガスを供給するガス供給口81およびガスライン8は、単結晶原料の溶融時に筒状体2を介してメインチャンバー内へとガスを供給し、メインチャンバー内の雰囲気を制御するためのガス供給手段として用いることができると共に、減圧雰囲気下または真空雰囲気下で単結晶原料の溶融を実施した後で筒状体2の下部開口端21とメインチャンバーのゲートバルブとの連結を解除する際などに、筒状体2の内部を加圧する加圧手段としても用いることができる。
【0028】
更に、溶融装置100の本体部1の内部には、コンピュータ等の制御装置9が設けられている。そして、この溶融装置100では、該制御装置9が、支持板昇降装置3、ヒーター4および閉止板昇降装置5などの動作を制御する。
【0029】
そして、上記一例の単結晶原料の溶融装置100を用いれば、例えば
図3A,
図3B,
図4A,
図4Bを用いて以下に説明するようにして、単結晶製造装置のメインチャンバー内のるつぼに投入した単結晶原料を溶融し、単結晶を製造することができる。
【0030】
ここで、溶融装置100を適用する単結晶製造装置としては、
図3A〜
図4Bに示すような、内部にるつぼ210を配設したメインチャンバー200、単結晶の引き上げ機構を有するプルチャンバー300、および、メインチャンバー200の上部の開口に設けられたゲートバルブ280上とメインチャンバー200の
図3A〜
図4Bでは左側の位置との間でプルチャンバー300を旋回および昇降させるプルチャンバー旋回昇降装置330を備える装置を挙げることができる。
【0031】
なお、メインチャンバー200の内部には、単結晶原料220を収容するための石英るつぼ210aおよび石英るつぼ210aを支持する黒鉛るつぼ210bよりなるるつぼ210と、るつぼ210の周囲に配設されてるつぼ210内の単結晶原料220を加熱するサイドヒーター230と、るつぼ210の下部に設けられてるつぼ210を例えば円周方向に回転させるるつぼ回転機構211とが配設されている。また、メインチャンバー200の内部のサイドヒーター230の外周側には保温筒240が配設されており、メインチャンバー200の内部下方には、断熱材250が配設されている。更に、メインチャンバー200内のるつぼ210の上方には、単結晶原料220の溶融時や単結晶の引き上げ時にメインチャンバー内に流すガスの流れを整える整流筒260が配設されている。なお、このメインチャンバー200には、任意に、るつぼ210の下方からるつぼ210内の単結晶原料220を加熱する下部ヒーターを設けても良い。また、メインチャンバー200には、任意に、るつぼ210内へ単結晶原料220を追加投入するための既知の原料投入装置を設けても良い。
【0032】
また、プルチャンバー300は、単結晶を育成するための種結晶311が先端に取り付けられているワイヤーロープ310と、ワイヤーロープ310を巻き取って種結晶311および該種結晶311上に成長した単結晶を引き上げる引き上げ機構321と、該引き上げ機構321をるつぼ210の回転方向とは反対の方向に回転させて、ワイヤーロープ310、種結晶311および該種結晶311上に成長した単結晶をるつぼ210と反対の方向に回転させる回転機構320とを備えている。
【0033】
そして、溶融装置100を用いたメインチャンバー200内の単結晶原料220の溶融は、例えば以下のようにして行われる。
【0034】
まず、
図3A(a)に示すように、車輪11を利用して溶融装置100を所定の位置まで移動させ、
図3A(b)に示すように、単結晶原料220を溶融させるメインチャンバー200のゲートバルブ280の上方に溶融装置100の筒状体2の下部開口端21を位置させる。
【0035】
次に、
図3A(b)に示すように、電源プラグ7、冷却水供給口64およびガス供給口81を本体部1から引き出して、外部電源P(外部電力供給源)、冷却水供給源Wおよびガス供給源Gに接続する。そして、支持板昇降装置3を用いて支持板12と共に筒状体2を連結位置まで下降させ、溶融装置100の筒状体2の下部開口端21と、メインチャンバー200のゲートバルブ280とを連結させる。なお、下部開口端21とゲートバルブ280との連結時には、ゲートバルブ280を閉じていても良いし、開いていても良いが、メインチャンバー200内への塵などの混入を防止する観点からは、ゲートバルブ280は閉じていることが好ましい。
【0036】
その後、ゲートバルブ280を開き、溶融装置100の筒状体2とメインチャンバー200とを連通させる。そして、メインチャンバー200に設けられた排気装置(図示せず)を用いてメインチャンバー200内および筒状体2内を真空雰囲気とするか、減圧条件下(20〜30Torr)でガス供給口81およびガスライン8を介して筒状体2内へとアルゴン(Ar)ガスを連続的に供給してメインチャンバー200内および筒状体2内をAr雰囲気とする。
【0037】
次に、
図3B(a)に示すように、閉止板昇降装置5を用いて閉止板22を下降させて、
図3B(b)に示すように、筒状体2を収縮させると共にヒーター4を単結晶原料加熱位置まで下降させる。なお、ヒーター4の下降時には、熱遮蔽体6および石英板63もヒーター4と一体的に下降する。
【0038】
ここで、単結晶原料加熱位置は、予め定めた所定の位置としても良いが、単結晶原料220に更に近い位置からヒーター4で単結晶原料220を加熱する観点からは、カメラ等の既知の単結晶原料位置検出手段(図示せず)を用いて単結晶原料220の上端位置を検出し、検出された単結晶原料220の上端位置に応じてヒーター4の上下方向の位置を制御するヒーター位置制御機構(図示せず)により定められる位置とすることが好ましい。このように、るつぼ210内の単結晶原料220の上端位置を検出し、単結晶原料220の上端位置に応じて単結晶原料加熱位置を決定してヒーター4の位置を制御すれば、特に大量の単結晶原料を溶融する場合(例えば、直径300mm以上、特には直径400mm以上、より具体的には直径450mmの単結晶インゴットを製造する場合)などに、単結晶原料の一部が溶融して嵩密度が変化することにより単結晶原料の上端位置が経時変化しても、常に単結晶原料220に近い位置からヒーター4で単結晶原料220を加熱することができるからである。
【0039】
そして、
図3B(b)に示すように、ヒーター4を単結晶原料加熱位置まで下降させた後、ヒーター4とサイドヒーター230とを用いてるつぼ210内の単結晶原料220を溶融する。なお、単結晶原料220の溶融はヒーター4のみを用いて実施しても良いが、より迅速に単結晶原料220を溶融する観点からは、サイドヒーター230を併用することが好ましい。因みに、ヒーター4との併用時のサイドヒーター230の出力(即ち、サイドヒーター230から供給される熱量)は、サイドヒーター230のみで単結晶原料を溶融する場合よりも低くすることができる。
【0040】
次に、るつぼ210内の単結晶原料220が完全に溶融した後、制御装置9を用いてヒーター4への電力の供給を停止する。そして、
図4A(a)に示すように、閉止板昇降装置5を用いて閉止板22を上昇させて、筒状体2を伸張させると共にヒーター4を筒状体2内の収容位置まで上昇させる。なお、ヒーター4の上昇時には、熱遮蔽体6および石英板63もヒーター4と一体的に上昇する。因みに、単結晶原料を融液状態で維持するため、サイドヒーター230での加熱は継続する。
【0041】
その後、ゲートバルブ280を閉じて、筒状体2の内部とメインチャンバー200内とを空間的に隔離する。ここで、筒状体2の内部はメインチャンバー200内と同様の雰囲気(真空雰囲気または減圧雰囲気)となっている。従って、筒状体2をゲートバルブ280から切り離す前に、ガス供給口81およびガスライン8を介して筒状体2内へとアルゴンガスを供給して、筒状体2内を大気圧まで加圧する。なお、筒状体2内の加圧は、ガス供給口81を介して供給するガスの種類を既知の手段で切り換え、ガス供給口81から大気を供給して実施しても良い。
【0042】
次に、
図4A(b)に示すように、支持板昇降装置3を用いて、支持板12と共に筒状体2を、下部開口端21とゲートバルブ280とが上下に離間した解除位置まで上昇させ、溶融装置100の筒状体2の下部開口端21と、メインチャンバー200のゲートバルブ280との連結を解除する。そして、電源プラグ7、冷却水供給口64およびガス供給口81を外部電源P(外部電力供給源)、冷却水供給源Wおよびガス供給源Gから取り外した後、
図4B(a)に示すように、メインチャンバー200から切り離された溶融装置100を移動させる。なお、溶融装置100は、引き続き他のメインチャンバー内の単結晶原料の溶融に使用することができる。
【0043】
そして最後に、
図4B(b)に示すように、プルチャンバー旋回昇降装置330を用いてプルチャンバー300をメインチャンバー200のゲートバルブ280に連結させた後、プルチャンバー300に配設されている既知の排気装置(図示せず)を用いてプルチャンバー300内をメインチャンバー200内と同等の圧力まで減圧し、ゲートバルブ280を開く。そして、ワイヤーロープ310の先端に取り付けた種結晶311をるつぼ210内の単結晶原料の融液に接触させ、単結晶の引き上げを開始する。
【0044】
このように、上記一例の単結晶原料の溶融装置100は、本体部1に設けた車輪11により移動可能に構成されているので、複数のメインチャンバー間で一台の溶融装置100を共有することができる。従って、各メインチャンバーの内部上方にサブヒーターを配設する場合と比較して設備コストの増大を抑制することができる。また、溶融装置100によれば、支持板昇降装置3を用いて筒状体2をメインチャンバー200に連結させた後、閉止板昇降装置5を用いてヒーター4を単結晶原料加熱位置まで下降させることにより、メインチャンバー200の内部上方にサブヒーターを設けることなく、るつぼ210内の単結晶原料220を上方から直接加熱することができる。従って、メインチャンバー200の内部構造が複雑化するのを防止して、メインチャンバー200のるつぼ210の上方に整流筒260や、原料投入装置を配設するスペースを確保することができる。また、サイドヒーター230のみを用いて単結晶原料を溶融する場合と比較して、単結晶原料の溶融に必要な時間を短縮することができると共に、サイドヒーター230でるつぼを強熱する必要がないので、石英るつぼを用いた場合であっても、るつぼが高温になることで劣化して引き上げた結晶が有転位化してしまうのを抑制することもできる。
【0045】
更に、この溶融装置100によれば、ガス供給口81およびガス供給ライン8などを用いて筒状体2の内部にガスを流すことができるので、単結晶原料220を溶融する際に筒状体2側からチャンバ200内へとアルゴンガス等を流すことができる。従って、アルゴン雰囲気下で単結晶原料の溶融を実施することができると共に、多結晶シリコンや単結晶シリコンなどのシリコン原料を単結晶原料として溶融する場合であっても、溶融した単結晶原料から発生するSiOガスをアルゴンガスの流れ(下向流)に乗せて排気することができる。また、筒状体2の下部開口端21とメインチャンバー200のゲートバルブ280との連結を解除して筒状体2をゲートバルブ280から切り離す際に、筒状体2の内部をアルゴンガスで加圧することができるので、下部開口端21とゲートバルブ280との連結を容易に解除することができる。
【0046】
また、この溶融装置100によれば、ヒーター4の上方に、ヒーター4と一体的に移動する熱遮蔽体6を設けているので、ヒーター4で単結晶原料220を加熱する際に、ヒーター4から上方(筒状体2側)への放熱を抑制して、単結晶原料220をより効率的に短時間で溶融することができると共に、筒状体2がヒーター4からの熱により劣化するのを防止することができる。
【0047】
更に、この溶融装置100によれば、ヒーター4を閉止板22に対して固定し、蛇腹構造を有する筒状体2を伸縮させつつ閉止板22を昇降させることでヒーター4を昇降させているので、水冷電極62a,62bを筒状体2の内部に押し込んでヒーター4を昇降させる場合と比較して水冷電極の長さを短くし、装置を小型化することができる。また、この溶融装置100によれば、電源プラグ7、冷却水供給口64およびガス供給口81を引き出し可能に本体部1に配設しているので、筒状体2からヒーター電力ライン、冷却水ラインおよびガスラインを直接延在させる場合と比較して装置を小型化することができる。
【0048】
以上、本発明の単結晶原料の溶融装置について一例を用いて説明したが、本発明の単結晶原料の溶融装置は、上記一例に限定されることはなく、本発明の単結晶原料の溶融装置には、適宜変更を加えることができる。
【0049】
具体的には、筒状体は、蛇腹構造を有さない円筒体としても良く、この場合には、閉止板に気密に挿通された水冷電極を上下動させることによりヒーターを昇降させることができる。また、電源プラグ、冷却水供給口およびガス供給口は、本体部1に設けなくても良い。
【0050】
更に、筒状体には、筒状体の内部と外部とを連通可能にするリークバルブを設けても良い。リークバルブを設ければ、筒状体をゲートバルブから切り離す際に、リークバルブを開くだけで筒状体の内部を大気圧まで加圧することができる。
【0051】
また、支持板昇降装置を安全スイッチとして機能させて、支持板昇降装置が上昇している状態の場合(即ち、
図3A(b)に示すように筒状体2の下部開口端21が解除位置に位置している場合)にはヒーターへ電気が流れないようにしても良い。このようにすれば、ヒーターへの不要な電力供給を防止することができると共に、不慮の事故の発生を防止することもできる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
図1に示す単結晶原料の溶融装置を用いて、
図3A〜
図4Bに示すようにして、単結晶原料としてのシリコン原料を石英るつぼ内で溶融し、直径300mmのシリコン単結晶の引き上げを行った。なお、シリコン原料の溶融条件は表1に示す条件とし、単結晶の引き上げは、3つの異なるメインチャンバーを用いて合計9回行った。
そして、シリコン原料の溶融に要した平均時間およびシリコン単結晶の製造歩留まり(=(得られたシリコン単結晶の重量/原料チャージ量)×100%)を求めた。結果を表1に示す。
【0054】
(従来例1)
図1に示す単結晶原料の溶融装置を使用せず、メインチャンバー内に設けられたサイドヒーターのみを用いてシリコン原料を石英るつぼ内で溶融し、直径300mmのシリコン単結晶の引き上げを行った。なお、シリコン原料の溶融条件は表1に示す条件とし、単結晶の引き上げは、3つの異なるメインチャンバーを用いて合計9回行った。
そして、シリコン原料の溶融に要した平均時間およびシリコン単結晶の製造歩留まりを求めた。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1より、実施例1では、従来例1と同じ電力消費量でも、より短時間でシリコン原料を溶融させ得ることが分かる。また、実施例1は従来例1よりも歩留まりが高く(即ち、従来例1よりも引き上げた結晶の有転位化が抑制されており)、るつぼの劣化が抑制されていることが分かる。
【0057】
(実施例2〜3)
シリコン原料の溶融条件を表2に示すように変更し、引き上げるシリコン単結晶の直径を450mmにすると共に、単結晶の引き上げ回数を合計10回とした以外は、実施例1と同様にしてシリコン原料の溶融およびシリコン単結晶の引き上げを行った。
そして、シリコン原料の溶融に要した平均時間およびシリコン単結晶の製造歩留まりを実施例1と同様にして求めた。結果を表2に示す。
【0058】
(従来例2)
シリコン原料の溶融条件を表2に示すように変更し、引き上げるシリコン単結晶の直径を450mmにすると共に、単結晶の引き上げ回数を合計10回とした以外は、従来例1と同様にしてシリコン原料の溶融およびシリコン単結晶の引き上げを行った。
そして、シリコン原料の溶融に要した平均時間およびシリコン単結晶の製造歩留まりを実施例1と同様にして求めた。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2より、実施例2では、従来例2と同じ電力消費量でも、より短時間でシリコン原料を溶融させ得ることが分かる。また、実施例2は従来例2よりも歩留まりが高く(即ち、従来例2よりも引き上げた結晶の有転位化が抑制されており)、るつぼの劣化が抑制されていることが分かる。また、ヒーターの出力を増加させた実施例3では、実施例2と殆ど同じシリコン単結晶製造歩留まりで、シリコン原料の溶融に必要な時間を大幅に短縮し得ることが分かる。