【実施例】
【0063】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれらに制限されるものではない。
【0064】
<参考例1>
架橋セルロース粒子の調製
Journal of Chromatography,195(1980)、221-230、特開昭55−44312号公報に記載された方法にしたがい、下記のようにしてチオシアン酸カルシウム60重量%水溶液に溶解させるセルロース濃度を6%(w/w)又は10%(w/w)とするセルロース粒子を製造した。
【0065】
(A)6%球状セルロース粒子の製造
(1)100gのチオシアン酸カルシウム60重量%水溶液に6.4gの結晶性セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:セオラスPH101)を加え、110〜120℃に加熱して溶解した。
(2)この溶液に界面活性剤としてソルビタンモノオレエート6gを添加し、130〜140℃に予め加熱したo−ジクロロベンゼン480ml中に滴下し、200〜300rpmにて攪拌分散した。
(3)次いで、上記分散液を40℃以下まで冷却し、メタノール190ml中に注ぎ、粒子の懸濁液を得た。
(4)この懸濁液を濾過分別し、粒子をメタノール190mlにて洗浄し、濾過分別した。この洗浄操作を数回行った。
(5)さらに大量の水で洗浄した後、目的とする球状セルロース粒子を得た。
(6)次いで、球状セルロース粒子をふるいにかけて、所望の粒子サイズ間隔(50〜150μm、平均粒子径100μm)にした。
【0066】
(B)10%球状セルロース粒子の製造
6.4gの結晶性セルロースを10.0gの結晶性セルロースを用いたことを除いて、上記6%球状セルロース粒子の製造と同様にして10%球状セルロース粒子を得た。
【0067】
次に、得られたセルロース粒子を、目開き54μm(線径0.04mm)と目開き125μm(線径0.088mm)の金網篩による篩操作で分級した。
分級後のセルロース粒子の平均粒子径は100μmであり、水膨潤度は、それぞれ、6%セルロース粒子で16.4ml/g、10%セルロース粒子で9.6ml/gであった。
【0068】
次いで、得られたセルロース粒子を下記の方法にしたがって架橋した。
【0069】
(A)架橋6%セルロース粒子の調製
(1)上記で得られた6%球状セルロース粒子100g(含水率10.8)を、121gの純水に60gのNa
2SO
4を溶解した液に加え、撹拌した。混合物の温度を50℃にして2時間撹拌を継続した。
(2)次に、この混合物に45重量%のNaOH水溶液3.3gとNaBH
40.5gとを加え、撹拌した。初期アルカリ濃度[NaOH]は0.69%(w/w)であった。
(3)50℃で混合物の撹拌を継続しながら、45重量%のNaOH水溶液48gと、エピクロロヒドリン50gとをそれぞれ25等分した量を、15分置きにおよそ6時間かけて添加した。
(4)添加終了後、この混合物を温度50℃で16時間反応させた。
(5)この混合物を温度40℃以下に冷却した後、酢酸2.6gを加え、中和した。
(6)反応混合物を濾過してゲルを回収し、純水で濾過洗浄し、目的の架橋6%セルロース粒子を得た。
【0070】
得られた架橋6%セルロース粒子の水膨潤度、平均粒子径、並びに、標準ポリエチレンオキシド(東ソー社製)SE−5(重量平均分子量4.3×10
4Da)又はSE−15(重量平均分子量1.5×10
5Da)を用いて純水を移動相として測定したKavは以下のとおりである。
水膨潤度 11.4ml/g
平均粒子径 100μm
ゲル分配係数Kav 0.38(SE−15)、0.60(SE−5)
【0071】
(B)架橋10%セルロース粒子の調製
(1)上記で得られた10%球状セルロース粒子100g(含水率6.3)を、282gの純水に104gのNa
2SO
4を溶解した液に加え、撹拌した。混合物の温度を50℃にして2時間撹拌を継続した。
(2)次に、この混合物に45重量%のNaOH水溶液5.7gとNaBH
40.9gとを加え、撹拌した。初期アルカリ濃度[NaOH]は0.69%w/wであった。
(3)50℃で混合物の撹拌を継続しながら、45重量%のNaOH水溶液83gと、エピクロロヒドリン85gとをそれぞれ25等分した量を、15分置きにおよそ6時間かけて添加した。
(4)添加終了後、この混合物を温度50℃で16時間反応させた。
(5)この混合物を温度40℃以下に冷却した後、酢酸4.0gを加え、中和した。
(6)反応混合物を濾過してゲルを回収し、純水で濾過洗浄し、目的の架橋10%セルロース粒子を得た。
【0072】
得られた架橋10%セルロース粒子の水膨潤度、平均粒子径、並びに、標準ポリエチレンオキシド(東ソー社製)SE−5(重量平均分子量4.3×10
4Da)又はSE−15(重量平均分子量1.5×10
5Da)を用いて純水を移動相として測定したKavは以下のとおりである。
水膨潤度 7.1ml/g
平均粒子径 100μm
ゲル分配係数Kav 0.27(SE−15)、0.47(SE−5)
【0073】
次に、架橋セルロース粒子に多糖類を付加させるために、下記の方法で架橋セルロース粒子にエポキシ基を導入した。
【0074】
<参考例2A>
架橋6%セルロース粒子のエポキシ化
1Lセパラブルフラスコに吸引ろ過した架橋6%セルロース粒子を200g入れた。そこへ純水160mlを入れ、蓋をして該フラスコを30℃の温浴へ浸した。フラスコ内の温度が30℃になったら、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム54g、純水133g)とエピクロロヒドリン120gとを加えて、30℃で2時間攪拌した。
2時間後、反応混合物を吸引ろ過し、得られた湿ゲルを3倍量の純水で5回洗浄した。
洗浄後、得られたゲルを吸引ろ過して余分な水分を除き、湿ゲルの状態で保存した。
【0075】
<参考例2B>
架橋10%セルロース粒子のエポキシ化
架橋6%セルロース粒子に代えて架橋10%セルロース粒子を用いたことを除いて、参考例2Aと同様の手順でエポキシ化反応を行った。
【0076】
次に、参考例2A又は2Bで得られたエポキシ化架橋セルロース粒子にデキストランを付加して多孔性セルロース系ゲルを得、さらにこれにスルホン化処理を行ってクロマトグラフィー用充填剤を得た。
【0077】
<実施例1>
500mlセパラブルフラスコに純水43gとデキストラン70(名糖産業、極限粘度0.23dL/g、重量平均分子量約70,000)32.0gを加え、室温で溶解するまで攪拌した。
溶解したらそこへ参考例2Aで得られた湿ゲル60gを加え、30℃で1時間攪拌した。次に、該フラスコに45%(w/w)水酸化ナトリウム水溶液を6.6g加え、そのまま30℃で18時間攪拌した。18時間後反応混合物を吸引ろ過し、得られた湿ゲルを3倍量の純水で5回洗浄した。洗浄後、湿ゲルを吸引ろ過して余分な水分を除き、湿ゲルの状態で保存した。標準ポリエチレンオキシド(東ソー社製)SE−5(重量平均分子量4.3×10
4)で純水を移動相に使用して求めたKavは0.30であった。参考例1(A)で得られた架橋6%セルロースのKavに対する割合は50%であった。また、得られた湿ゲルの単位体積あたりの乾燥重量は、架橋6%セルロース粒子の単位体積あたりの乾燥重量の1.06倍であった。
さらに、50ml栓付三角フラスコへ得られた湿ゲル5gを入れた。そこへ硫酸ナトリウム(和光純薬)5g、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム0.98g、純水7.8g)を入れ、50℃のインキュベーターで30分攪拌した。30分後1、4−ブタンサルトン(和光純薬)1.41gを加え、50℃で6時間攪拌した。6時間後反応溶液を吸引ろ過し、得られたゲルを5倍量の純水で5回洗浄した。洗浄後、得られたゲルを吸引ろ過して余分な水分を除き、湿ゲルの状態で保存した。このようにして、リガンドとしてスルホン基を導入した湿ゲルを得た。この時のイオン交換容量は0.17mmol/mlであり、γ―グロブリン10%動的吸着容量は、146mg/mlであった。
【0078】
<実施例2>
デキストラン70を24.8gで実施したことを除いて、実施例1と同様にして湿ゲルを得た。標準ポリエチレンオキシド(東ソー社製)SE−5(重量平均分子量4.3×10
4)で純水を移動相に使用して求めたKavは0.37であった。参考例1(A)で得られた架橋6%セルロースのKavに対する割合は62%であった。また、得られた湿ゲルの単位体積あたりの乾燥重量は、架橋6%セルロース粒子の単位体積あたりの乾燥重量の1.09倍であった。
さらに、実施例1と同様に、1,4−ブタンサルトン1.28gを用いて、得られたゲルをスルホン化し、湿ゲルの状態で保存した。この時のイオン交換容量は0.13mmol/mlであり、γ―グロブリン10%動的吸着容量は122mg/mlであった。
【0079】
<実施例3>
デキストラン70に代えて高分子デキストランEH(名糖産業、極限粘度0.42dL/g、重量平均分子量約178,000〜218,000)17.5gを用いたことを除いて、実施例1と同様にして湿ゲルを得た。標準ポリエチレンオキシド(東ソー社製)SE−5(重量平均分子量4.3×10
4)で純水を移動相に使用して求めたKavは0.17であった。参考例1(A)で得られた架橋6%セルロースのKavに対する割合は28%であった。また、得られた湿ゲルの単位体積あたりの乾燥重量は、架橋6%セルロース粒子の単位体積あたりの乾燥重量の1.11倍であった。
さらに、実施例1と同様に、1,4−ブタンサルトン1.39gを用いて、得られたゲルをスルホン化し、湿ゲルの状態で保存した。この時のイオン交換容量は0.15mmol/mlであり、γ―グロブリン10%動的吸着容量は124mg/mlであった。
【0080】
<実施例4>
デキストラン70に代えて高分子デキストランEH33.0gを用いたことを除いて、実施例1と同様にして湿ゲルを得た。標準ポリエチレンオキシド(東ソー社製)SE−5(重量平均分子量4.3×10
4)で純水を移動相に使用して求めたKavは0.03であった。参考例1(A)で得られた架橋6%セルロースのKavに対する割合は5%であった。また、得られた湿ゲルの単位体積あたりの乾燥重量は、架橋6%セルロース粒子の単位体積あたりの乾燥重量の1.34倍であった。
さらに、実施例1と同様に、1,4−ブタンサルトン1.57gを用いて、得られたゲルをスルホン化し、湿ゲルの状態で保存した。この時のイオン交換容量は0.19mmol/mlであり、γ―グロブリン10%動的吸着容量は241mg/mlであった。
【0081】
<実施例5>
デキストラン70に代えてデキストランT500(Pharmacosmos、重量平均分子量500kDa、極限粘度0.64dL/g)10.9gを用いたことを除いて、実施例1と同様にして湿ゲルを得た。標準ポリエチレンオキシド(東ソー社製)SE−5(重量平均分子量4.3×10
4)で純水を移動相に使用して求めたKavは0.21であった。参考例1(A)で得られた架橋6%セルロースのKavに対する割合は35%であった。また、得られた湿ゲルの単位体積あたりの乾燥重量は、架橋6%セルロース粒子の単位体積あたりの乾燥重量の1.10倍であった。
さらに、実施例1と同様に、1,4−ブタンサルトン1.29gを用いて得られたゲルをスルホン化し、湿ゲルの状態で保存した。この時のイオン交換容量は0.14mmol/mlであり、γ―グロブリン10%動的吸着容量は117mg/mlであった。
【0082】
<実施例6>
デキストラン70に代えてデキストランT500を17.3g用いたことを除いて、実施例1と同様にして湿ゲルを得た。標準ポリエチレンオキシド(東ソー社製)SE−5(重量平均分子量4.3×10
4)で純水を移動相に使用して求めたKavは0.17であった。参考例1(A)で得られた架橋6%セルロースのKavに対する割合は28%であった。また、得られた湿ゲルの単位体積あたりの乾燥重量は、架橋6%セルロース粒子の単位体積あたりの乾燥重量の1.22倍であった。
さらに、実施例1と同様に、1,4−ブタンサルトン1.41gを用いて、得られたゲルをスルホン化し、湿ゲルの状態で保存した。この時のイオン交換容量は0.14mmol/mlであり、γ―グロブリン10%動的吸着容量は199mg/mlであった。
【0083】
<実施例7>
デキストラン70に代えてデキストランT500を24.5g用いたことを除いて、実施例1と同様にして湿ゲルを得た。標準ポリエチレンオキシド(東ソー社製)SE−5(重量平均分子量4.3×10
4)で純水を移動相に使用して求めたKavは0.02であった。参考例1(A)で得られた架橋6%セルロースのKavに対する割合は3%であった。また、得られた湿ゲルの単位体積あたりの乾燥重量は、架橋6%セルロース粒子の単位体積あたりの乾燥重量の1.34倍であった。
さらに、実施例1と同様に、1,4−ブタンサルトン1.55gを用いて得られたゲルをスルホン化し、湿ゲルの状態で保存した。この時のイオン交換容量は0.17mmol/mlであり、γ―グロブリン10%動的吸着容量は217mg/mlであった。
【0084】
<比較例1>
デキストラン70に代えてデキストラン40(名糖産業、極限粘度0.17dL/g、重量平均分子量約40,000)33gを用いたことを除いて、実施例1と同様にして湿ゲルを得た。標準ポリエチテンオキシド(東ソー社製)SE−5(重量平均分子量4.3×10
4)で純水を移動相に使用して求めたKavは0.42であった。参考例1(A)で得られた架橋6%セルロースのKavに対する割合は70%であった。また、得られた湿ゲルの単位体積あたりの乾燥重量は、架橋6%セルロース粒子の単位体積あたりの乾燥重量の1.10倍であった。
さらに、実施例1と同様に、1、4−ブタンスルトン1.29gを用いて得られたゲルをスルホン化し、湿ゲルの状態で保存した。この時のイオン交換容量は0.13mmol/mlであり、γ―グロブリン10%動的吸着容量は101mg/mlであった。
【0085】
<比較例2>
デキストラン70(名糖産業、極限粘度0.23dL/g、重量平均分子量約70,000)17.5gを用いたことを除いて、実施例1と同様にして湿ゲルを得た。標準ポリエチレンオキシド(東ソー社製)SE−5(重量平均分子量4.3×10
4)で純水を移動相に使用して求めたKavは0.43であった。参考例1(A)で得られた架橋6%セルロースのKavに対する割合は72%であった。また、得られた湿ゲルの単位体積あたりの乾燥重量は、架橋6%セルロース粒子の単位体積あたりの乾燥重量の1.04倍であった。
さらに、実施例1と同様に、1,4−ブタンサルトン1.23gを用いて得られたゲルをスルホン化し、湿ゲルの状態で保存した。この時のイオン交換容量は0.13mmol/mlであり、γ―グロブリン10%動的吸着容量は70mg/mlであった。
【0086】
<比較例3>
デキストラン70に代えて高分子デキストランEH(名糖産業、極限粘度0.42dL/g、重量平均分子量約200,000)11.0gを用いたことを除いて、実施例1と同様にして湿ゲルを得た。標準ポリエチレンオキシド(東ソー社製)SE−5(重量平均分子量4.3×10
4)で純水を移動相に使用して求めたKavは0.32であった。参考例1の架橋6%セルロースのKavに対する割合は53%であった。また、得られた湿ゲルの単位体積あたりの乾燥重量は、架橋6%セルロース粒子の単位体積あたりの乾燥重量の1.05倍であった。
さらに、実施例1と同様に、1,4−ブタンサルトン1.26gを用いて得られたゲルをスルホン化し、湿ゲルの状態で保存した。この時のイオン交換容量は0.12mmol/mlであり、γ―グロブリン10%動的吸着容量は76mg/mlであった。
【0087】
実施例1〜7及び比較例1〜3の結果を表1にまとめた。
【表1】
【0088】
表1に示したとおり、実施例で得られた多孔性セルロース系ゲルのγ−グロブリン吸着量は、比較例のものと比べて顕著に高い数値を示した。
【0089】
なお、上記実施例及び比較例において、γ−グロブリン10%動的吸着容量、Kav、デキストラン付加前後の乾燥重量の変化量、イオン交換容量及び平均粒子径は、下記の測定法1〜5にしたがって求めた。
【0090】
[測定法1]
γ−グロブリンを用いた動的吸着容量の測定
(1)使用機器及び試薬
LCシステム : BioLogicLP(BIORAD)
バッファー : 酢酸バッファーPH4.3、0.05MNaCl
抗体 : γ―グロブリン、人血清由来(和光純薬)
カラム : ガラスカラム内径5mm、長さ50mm(EYELA)
(2)測定方法
まず抗体をバッファーに溶かし1mg/mlの抗体溶液を作製した。そしてカラムにイオン交換基を付加したゲルを隙間のないよう充填した。次にカラムをシステムに接続しバッファーを用いて、カラム流出液のUV(紫外線吸光度、280nm)と電気伝導度が一定になるまで流速1ml/分で平衡化した。その後、ベースラインのUVをゼロにした。バイパスラインから抗体溶液を流しカラムへの流路を抗体溶液で置換した。次にバイパスラインからカラムへのラインへ切り変え、カラムに抗体溶液を流速1ml/minで流した。カラム流出液のUVをモニターし、カラム流出液のUVが、予め測定しておいた抗体溶液のUVの10%に達した時点で抗体溶液を流すのを止めた。以下の式により10%動的吸着容量を求めた。尚、この分析は20℃の部屋で行った。
{抗体溶液濃度(mg/ml)×抗体溶液を流し始めてから終えるまでの時間(min)×流速(ml/min)−空カラム容量}/カラム体積=10%動的吸着容量(mg/ml)
【0091】
[測定法2]
多孔性セルロースゲルのゲル分配係数Kavの測定
(1)使用機器及び試薬
カラム : エンプティカラム1/4×4.0mm I.D×300mm、
10F(東ソー)
リザーバー : パッカ・3/8(東ソー)
ポンプ : POMP P−500 (Pharmacia)
圧力計 : AP−53A(KEYENCE)
【0092】
(2)カラム充填法
カラムとリザーバーを接続しカラム下部にエンドフィッティングを接続した。Kavを測定するゲルを減圧濾過した湿ゲルの状態で15g計りとり、50mlビーカーへ入れた。そこへ超純水20ml加え軽く攪拌した。粒子またはゲルが溶液に分散した状態でリザーバーの壁を伝わらせるようにカラムへゆっくり加えた。ビーカーへ残ったゲルは少量の超純水ですすぎゆっくりとカラムへ加えた。その後リザーバーの上部ぎりぎりまで超純水を加えリザーバーの蓋をした。リザーバー上部へアダプターを接続しポンプで超純水を送液した。送液ラインの途中に圧力計を接続しておき圧力をモニターした。圧力が0.3MPaになるまで流速を上げ、その後30分超純水を流しながら充填した。充填が終わったらポンプを止めアダプターとリザーバーの蓋を外した。次にリザーバーの中の超純水をピペットで吸いだした。リザーバーを外し、カラムからはみ出したゲルを除きエンドフィッティングを接続した。
多孔性セルロース粒子のゲル分配係数Kavの求め方も、上記多孔性セルロースゲルの方法と同様である。
【0093】
(3)Kav測定装置
システム : SCL−10APVP(SHIMAZU)
ワークステーション : CLASS−VP(SHIMAZU)
RI検出器 : RID−10A(SHIMAZU)
ポンプ : LC−10AT(SHIMAZU)
オートインジェクター : SIL−10ADVP(SHIMAZU)
【0094】
(4)Kav測定サンプル
1.デキストランT2000(Pharmacia)
2.SE−70(東ソー)分子量5.8×10
5
3.SE−30(東ソー)分子量3.0×10
5
4.SE−15(東ソー)分子量1.5×10
5
5.SE−8(東ソー)分子量1.01×10
5
6.SE−5(東ソー)分子量4.3×10
4
7.SE−2(東ソー)分子量2.77×10
4
8.PEG19000(SCIENTIFIC POLYMER PRODUCTS)分子量19700
9.PEG8650(POLYMER LABORATORIES)分子量8650
10.PEG4120(POLYMER LABORATORIES)分子量4120
【0095】
(5)Kav導出式
Kav=(Ve−V
0)/ (Vt−V
0)
[式中、Veはサンプルの保持容量(ml)、Vtは空カラム体積(ml)、V
0はデキストランT2000保持容量(ml)である。]
【0096】
(6)測定結果
Kavプロットの一例を
図1に示す。
【0097】
[測定法3]
デキストラン付加前後の乾燥重量変化量の測定
参考例1で得られた架橋セルロース粒子10.0gを50ml栓付メスシリンダーに加え、さらに純水を50mlの線まで加え、栓をして体積が変わらなくなるまで静置する。体積が変わらなくなったらゲルの体積をメスシリンダーの目盛りから読み取る。
次いで、メスシリンダーからゲルを取り出して、ゲルの全量を、80℃のオーブンで16時間乾燥させた後、乾燥ゲルの重量を測定する。得られた測定値から、下記の式にしたがって、架橋セルロース粒子の単位体積あたりの乾燥重量を求めることができる。
単位体積あたりの乾燥重量(g/ml)=ゲルの乾燥重量(g)÷ゲルの体積(ml)
デキストラン付加反応後の湿ゲルについても同様にして単位体積あたりの乾燥重量(g/ml)を求め、架橋セルロース粒子の単位体積あたりの乾燥重量に対する乾燥重量変化を算出する。
【0098】
[測定法4]
イオン交換容量測定法
ブタンサルトンを付加した湿ゲル1mlをビーカーに秤量し、0.5mol/l塩酸(和光純薬)を加えて3分間攪拌した。その後、吸引濾過により塩酸を取り除き、さらに純水で洗浄した。
洗浄したゲル1mlをビーカーに加え、0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液(和光純薬)3mlとフェノールフタレイン溶液1滴を加えた。この溶液に、0.1mol/l塩酸(和光純薬)を溶液の色が透明になるまで加えた。透明になるまで加えた塩酸量をXmlとすると、ゲル1mlあたりのイオン交換容量(IEC)は、次式
(0.1×3/1000−0.1×X/1000)×1000 (mmol/ml)
で求めることができる。
【0099】
[測定法5]
平均粒子径の測定
スライドグラスに湿潤セルロース粒子を取り、光学顕微鏡を用いて倍率100倍で撮影した写真から任意に200粒子の直径を測定し、その平均値を平均粒子径とした。
【0100】
<実施例8>
10%架橋ゲルの実施例
架橋6%セルロース粒子の代わりに参考例2Bで得られた架橋10%セルロース粒子を用い、デキストラン70を54g用いたことを除いて、実施例1と同様にして湿ゲルを得た。この時のデキストラン付加量は16.3mg/mlであった。標準ポリエチレンオキシド(東ソー社製)SE−5(重量平均分子量4.3×10
4)で純水を移動相に使用して求めたKavは0.24であった。参考例1(B)で得られた架橋10%セルロースのKavに対する割合は51%であった。また、得られた湿ゲルの単位体積あたりの乾燥重量は、架橋10%セルロース粒子の単位体積あたりの乾燥重量の1.10倍であった。
50ml栓付三角フラスコへ得られた湿ゲル5gを加え、そこへ硫酸ナトリウム(和光純薬)5g、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム1.55g、純水15.37g)を入れ50℃のインキュベーターで30分攪拌した。30分後、1、4−ブタンサルトン(和光純薬)4.11gを加え、50℃で6時間攪拌した。6時間後、反応混合物を吸引ろ過し、得られたゲルを5倍量の純水で5回洗浄した。洗浄後のゲルを吸引ろ過して余分な水分を除き、湿ゲルの状態で保存した。この時のイオン交換容量は0.28mmol/mlであり、γ―グロブリン10%動的吸着容量は125mg/mlであった。
上記の結果から、10%架橋セルロース粒子を用いても、6%架橋セルロース粒子を用いた場合と同様に免疫グロブリンを効率よく分離精製することができるクロマトグラフィー用充填剤が得られることが実証された。
【0101】
<実施例9>
500mlセパラブルフラスコに純水40gとプルラン(林原社製、化粧品用プルラン、極限粘度0.73dL/g)24gを加え、室温で溶解するまで攪拌した。
溶解したらそこへ参考例2Aで得られた湿ゲル60gを加え、30℃で1時間攪拌した。次に、該フラスコに45%(w/w)水酸化ナトリウム水溶液を6.4g加え、そのまま30℃で18時間攪拌した。18時間後反応混合物を吸引ろ過し、得られた湿ゲルを3倍量の純水で5回洗浄した。洗浄後、湿ゲルを吸引ろ過して余分な水分を除き、湿ゲルの状態で保存した。得られた湿ゲルの単位体積あたりの乾燥重量は、架橋6%セルロース粒子の単位体積あたり乾燥重量の1.24倍であった。
【0102】
さらに、50ml栓付三角フラスコへ得られた湿ゲル8gを入れた。そこへ硫酸ナトリウム(和光純薬)8.9g、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム1.8g、純水15g)を入れ、50℃のインキュベーターで30分攪拌した。30分後1、4−ブタンサルトン(和光純薬)1.2gを加え、50℃で6時間攪拌した。6時間後反応溶液を吸引ろ過し、得られたゲルを5倍量の純水で5回洗浄した。洗浄後、得られたゲルを吸引ろ過して余分な水分を除き、湿ゲルの状態で保存した。このようにして、リガンドとしてスルホン基を導入した湿ゲルを得た。この時のイオン交換容量は0.13mmol/mlであり、γ―グロブリン10%動的吸着容量は、178 mg/mlであった。
【0103】
実施例6との比較から判るように、デキストランの代わりの多糖類にプルランを用いてもγ−グロブリン吸着量は高い値を示した。
【0104】
<実施例10−1>
硫酸エステルのリガンド導入
実施例4に記載した方法と同様にして高分子デキストランEHと反応させて得た湿ゲル100gに300gのメタノールを加え室温で10分間攪拌した後、吸引ろ過した。この作業を5回繰り返すことによりメタノール置換ゲルを得た。このゲルを水分含量が2.5%(w/w)になるまで50〜60℃にて真空乾燥した。500mlセパラブルフラスコにピリジン200gを攪拌しながら10℃以下まで冷却後、窒素雰囲気下、クロロスルホン酸4gを滴下した。滴下終了後、10℃以下で1時間反応させた後、65℃まで加熱した。65℃到達後、前記乾燥させたゲル30gを投入し、攪拌下4時間反応させた。反応終了後、25℃にて一晩放置し、その後、20%w/wNaOHを添加して中和した。反応混合物をろ過してゲルを回収し、純水で中性になるまで洗浄し、硫酸エステル基をリガンドに持つ湿ゲルを得た。
【0105】
<実施例10−2>
実施例10−1の湿ゲルの下記測定法6に従って測定したリゾチームの吸着量は、ゲル1mlあたり97mgであった。またこのゲルの下記測定法7に従って求めた硫酸化度(硫黄含量)は22200ppmであった。
【0106】
本実施例のデキストランが付加されてなる多孔性セルロースゲルはリガンドを例えば硫酸エステルとするクロマトグラフィー用充填剤としての利用も可能である。本実施例のゲルはデキストランが硫酸エステル化されたリガンドであるため、ヘパリンゲル代替のクロマトグラフィー用充填剤としての利用も可能である。
【0107】
[測定法6]
リゾチーム吸着量の測定
内径7mmのカラムに上記実施例10−1の湿ゲルを1ml充填し0.05Mトリス塩酸緩衝液(pH9.5)で50ml/hの流量で0.6時間平衡化した。濃度が5.0mg/mlになるようにリゾチーム(和光純薬社製)に0.05Mトリス塩酸緩衝液(pH9.5)を加え溶解し、この溶液100mlを前記の充填ゲルに50ml/hの流量で通液し、リゾチームを充填ゲルに吸着させた。さらに、充填ゲルを0.05Mトリス塩酸緩衝液(pH9.5)で50ml/hの流量で50ml洗浄した。これら、リゾチーム溶液と洗浄液の充填ゲル通過液を全量回収し、250mlにメスアップした。充填ゲルにおけるリゾチーム吸着量は吸着前後の280nmの吸光度より計算されたリゾチームの差し引きによって求めた。具体的には、それぞれのリゾチーム溶液を10倍希釈した溶液の、280nmの吸光度は下記の通りであった。
5.0mg/mlリゾチーム溶液の吸光度 A280=1.250
充填ゲルの通過液+洗浄液の吸光度 A280=0.397
リゾチーム吸着量(mg/ml−gel)=
5.0x100−5.0x(0.397/01.250)x250=103
【0108】
[測定法7]
硫酸化度(硫黄含量)の測定
硫黄含量は、「イオンクロマトグラフィー法」(文献名:改訂5版分析化学便覧p30(社団法人 日本分析化学会編)にしたがい、次に記載の方法によって求めた。60℃で16〜20時間真空乾燥したサンプルを乳鉢ですりつぶし、更に、105℃にて2時間乾燥した。この乾燥試料0.05gに2Mの塩酸2.5mlを加え、110℃にて16時間加水分解した。氷冷後、上澄液を1ml採取し、2Mの水酸化ナトリウム水溶液で中和し、25mlにメスアップした。カラムに横河電気社製ICS−A−23を用い、オーブン温度40℃、溶離液に3mM Na
2CO
3溶液、除去液に15mM 硫酸をそれぞれ1ml/minの流量の条件で使用し、横河電機社製IC7000イオンクロマトアナライザーを用いて分析し、さらに後述の標準溶液から作成した検量線を基にSO
4濃度を求めた。ブランク値は乾燥試料を加えずに同様に操作し時の値とした。SO
4標準液(関東化学社製 陰イオン混合標準液IV)より2μg/ml液を本測定法の標準溶液とし、更に段階希釈し、同様の条件でイオンクロマトアナライザーにて分析し、検量線を作成した。イオン含量は以下の式により求めた。
硫黄含量(ppm)=(X試料−Xブランク)x25x2.5x0.3333/0.05(試料量 g)
上記式中、X試料、XブランクはSO
4標準液による検量線から求めた濃度(ppm)である。