特許第5692224号(P5692224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5692224酸化亜鉛焼結体タブレットおよびその製造方法
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  • 特許5692224-酸化亜鉛焼結体タブレットおよびその製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692224
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】酸化亜鉛焼結体タブレットおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/453 20060101AFI20150312BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20150312BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   C04B35/00 P
   C23C14/08 C
   C23C14/24 E
【請求項の数】9
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2012-515916(P2012-515916)
(86)(22)【出願日】2011年5月18日
(86)【国際出願番号】JP2011061461
(87)【国際公開番号】WO2011145665
(87)【国際公開日】20111124
【審査請求日】2012年10月26日
(31)【優先権主張番号】特願2010-117845(P2010-117845)
(32)【優先日】2010年5月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 健太郎
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−340468(JP,A)
【文献】 特開平03−050148(JP,A)
【文献】 特開2007−210807(JP,A)
【文献】 特開2004−175616(JP,A)
【文献】 特表2010−535431(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/018509(WO,A1)
【文献】 ISKANDAR F,Control of the morphology of nanostructured particles prepared by the spray drying of a nanoparticle sol.,J Colloid Interface Sci,2003年 9月15日,Vol.265 No.2 ,P.296-303
【文献】 ZHOU X D,Synthsis of PMMA-ceramics nanocomposites by spray process. ,J Mater Sci Lett ,2002年 4月 1日,Vol.21 No.7,P.577-580
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/453
C23C 14/00−14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空蒸着法に用いられる酸化亜鉛焼結体タブレットであって、
六方晶系の結晶構造を有する、酸化亜鉛またはドーパントを含む酸化亜鉛の焼結体からなり、CuKα線を使用したX線回折による(103)面、(110)面のそれぞれ積分強度をI(103)、I(110)としたとき、I(103)/(I(103)+I(110))で表される1軸加圧面の配向度が0.48以上であり、かつ、相対密度が50%以上70%以下である、酸化亜鉛焼結体タブレット。
【請求項2】
前記配向度が0.5以上である、請求項1に記載の酸化亜鉛焼結体タブレット。
【請求項3】
前記配向度が0.55以上である、請求項1に記載の酸化亜鉛焼結体タブレット。
【請求項4】
前記配向度が0.6以上である、請求項1に記載の酸化亜鉛焼結体タブレット。
【請求項5】
比抵抗が1×102Ω・cm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の酸化亜鉛焼結体タブレット。
【請求項6】
酸化亜鉛粉末、またはドーパントなる添加元素と酸化亜鉛との混合粉末からなる原料粉末を、原料粉末濃度が50質量%〜80質量%のスラリーとし、該スラリーを、スプレードライヤ装置を用いて、80℃〜100℃の温度で、一次粒子が環状に凝集することで形成されるドーナツ状の二次粒子の比率が50%以上となるように排風量を調整して噴霧乾燥することにより造粒粉末とし、該造粒粉末を1軸加圧成形して得た成形体を、常圧にて、800℃〜1300℃の温度で焼結させることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の酸化亜鉛焼結体タブレットの製造方法。
【請求項7】
前記焼結により得られた常圧焼結体を、圧力が1×10-4Pa以上1×10-3Pa以下の真空中にて、800℃〜1300℃の温度で、1分以上10分以下の時間保持し、還元処理することを特徴とする、請求項に記載の酸化亜鉛焼結体タブレットの製造方法。
【請求項8】
前記造粒粉末の一部を、800℃〜1300℃の温度で1時間〜30時間、仮焼する請求項に記載の酸化亜鉛焼結体タブレットの製造方法。
【請求項9】
前記仮焼後の造粒粉末と未仮焼の造粒粉末とを混合して使用する、請求項に記載の酸化亜鉛焼結体タブレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物透明導電膜を真空蒸着法で製造する際に、蒸発源として使用される酸化亜鉛焼結体タブレットと、この酸化亜鉛焼結体タブレットを得るための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物透明導電膜は、高い導電性と可視光領域での高い透過率とを有する。このため、酸化物透明導電膜は、太陽電池、液晶表示素子、その他の各種受光素子の電極などに利用されているばかりでなく、近赤外線領域の波長での反射吸収特性を生かして、自動車や建築物の窓ガラスなどに用いる熱線反射膜や、各種の帯電防止膜、冷凍ショーケースなどの防曇用の透明発熱体としても利用されている。
【0003】
酸化物透明導電膜には、アルミニウムやガリウムをドーパントとして含む酸化亜鉛(ZnO)、アンチモンやフッ素をドーパントとして含む酸化スズ(SnO2)、スズをドーパントとして含む酸化インジウム(In23)などが利用されている。特に、スズをドーパントとして含む酸化インジウム膜は、ITO(Indium Tin Oxide)膜とも称され、特に低抵抗の透明導電膜が容易に得られることから、広範に用いられている。
【0004】
これらの酸化物透明導電膜の製造方法としては、真空中で蒸発源を加熱し、蒸発した原料を基板上に堆積させる真空蒸着法、ターゲットにアルゴンイオンを衝突させて、ターゲットを構成する物質をたたき出し、対向する基板に堆積させるスパッタリング法、透明導電層形成用塗液を塗布する方法が用いられている。これらの中で、真空蒸着法およびスパッタリング法は、蒸気圧の低い材料を使用する際や、精密な膜厚制御を必要とする際に有効な手段であり、操作が非常に簡便であるため、工業的に広範に利用されている。
【0005】
これらのうちの真空蒸着法は、通常、圧力が10-3Pa〜10-2Pa程度の真空中で蒸発源である固体(または液体)を加熱して、気体分子や原子に一度分解した後、再び基板表面上に薄膜として凝縮させる方法である。蒸発源の加熱方式としては、抵抗加熱法(RH法)および電子ビーム加熱法(EB法、電子ビーム蒸着法)が一般的であるが、レーザ光による加熱法や高周波誘導加熱法などもある。また、フラッシュ蒸着法、アークプラズマ蒸着法、反応性蒸着法なども知られており、これらも真空蒸着法に含まれる。また、真空蒸着法の中で、高密度プラズマアシスト蒸着(HEPE)法などの蒸発物や反応ガスのイオン化を伴うものは、総称してイオンプレーティング法と称されている。
【0006】
ITO膜の製造においては、一般的に用いられているスパッタリング法のほか、電子ビーム蒸着法、高密度プラズマアシスト蒸着法などのイオンプレーティング法、その他の真空蒸着法もよく利用されており、真空蒸着法の蒸発源としては、ITOの焼結体からなるITOタブレット(ITOペレットとも称される)が用いられている。
【0007】
ただし、ITO膜は、その製造において所望の品質を得るのが容易であるものの、主原料のインジウムが希少金属で高価であるため、その低コスト化には限界がある。
【0008】
これに対して、酸化亜鉛、もしくはアルミニウムやガリウムなどをドーパントとして含む酸化亜鉛からなる酸化亜鉛透明導電膜は、主原料である亜鉛がきわめて低価格であり、かつ、光の透過率が高く、耐プラズマ性に優れていることから、薄膜シリコン太陽電池の電極として広く用いられている。また、酸化亜鉛の禁制帯幅は約3.4eVと広く、励起子エネルギが高いことから、近年、発光ダイオードへの応用も盛んに報告されている。さらには、透明薄膜トランジスタへの応用も期待されている。なお、ドーパントを含む酸化亜鉛透明導電膜において、亜鉛よりも価数の大きい元素である、アルミニウムやガリウムなどのホウ素族元素を含ませる理由は、これによって膜の比抵抗(電気抵抗率)を小さくできるためである。
【0009】
酸化亜鉛透明導電膜の製造においても、主にスパッタリング法が用いられている。スパッタリング法では、原料として酸化亜鉛焼結体のターゲットが用いられるが、均一性に優れた膜を得るために、さまざまな結晶配向性の酸化亜鉛焼結体ターゲットがこれまでに提案されている。たとえば、特許文献1では、(002)結晶配向性が(101)結晶配向性よりも大きな酸化亜鉛焼結体ターゲットが、特許文献2では、(101)結晶配向性が大きい酸化亜鉛焼結体ターゲットが、特許文献3では、(110)結晶配向性が大きい酸化亜鉛焼結体ターゲットがそれぞれ提案されている。
【0010】
この酸化亜鉛透明導電膜においても、ITO膜と同様に、真空蒸着法による製造が検討されており、特許文献4〜7に開示されるような、さまざまなタイプの酸化亜鉛焼結体タブレットが提案されている。
【0011】
この真空蒸着法に用いる酸化亜鉛焼結体タブレットとしては、成膜時における割れやクラックの発生を防止する観点から、相対密度(理論密度に対する嵩密度の割合)が50%〜70%程度のものが使用されている。しかし、酸化亜鉛焼結体は、ITO焼結体と比較して高抵抗の材料であるため、スパッタリング法で用いるような90%以上の高い相対密度を有する焼結体ターゲットに比べると、相対密度が低い分だけ、焼結体タブレットの比抵抗値は高くなる。焼結体タブレットの比抵抗値が高くなると、プラズマビームや電子ビームによる均一な昇華が困難となり、この際に均一な蒸発ガスに混じって数μm〜1000μm程度の大きさで蒸着材料が飛散して蒸着膜に衝突するスプラッシュ現象が生じる場合がある。このスプラッシュ現象は、ピンホール欠陥などの、膜の欠陥の原因となる。したがって、このようなスプラッシュ現象の発生が抑制される、酸化亜鉛焼結体タブレットの実現が望まれている。
【0012】
特許文献4〜7に記載されているように、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造する際には、大気や窒素ガス雰囲気中で焼結をおこなっているが、特許文献4には、蒸着時の安定性の観点から、その導電性を向上させるために、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットをアルゴン雰囲気や真空などの還元性雰囲気中で熱処理することが有効であると記載されている。
【0013】
また、特許文献6には、X線回折分析における(100)面、(002)面および(101)面の回折ピークのうちの少なくともいずれかの半値幅を0.110°以下として、酸化亜鉛焼結体タブレットの結晶粒の粒子径を均一にすることで、スプラッシュ現象を抑制しうることが、特許文献7には、酸化亜鉛焼結体タブレット中の閉空孔を減少させることで、スプラッシュ現象を抑制しうることが、それぞれ記載されている。しかしながら、これらの技術では、スプラッシュ現象の抑制は、いまだ十分であるとはいえないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平6−88218号公報
【特許文献2】特開平6−340468号公報
【特許文献3】特開2002−121067号公報
【特許文献4】特開平6−248427号公報
【特許文献5】特開2006−117462号公報
【特許文献6】特開2007−56351号公報
【特許文献7】特開2007−56352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、一般的に成膜が不安定となる高抵抗のタブレットを含む、酸化亜鉛焼結体タブレットを用いて、真空蒸着法により成膜をおこなうに際して、スプラッシュ現象の発生を抑制し、ピンホールなどの欠陥のない酸化亜鉛透明導電膜が安定して得られる酸化亜鉛焼結体タブレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者が、上記の問題の解決を図るために鋭意研究をおこなったところ、特殊な製造条件で製造した酸化亜鉛の造粒粉末を1軸加圧成形して成形体を得て、この成形体を常圧焼結することにより得られる酸化亜鉛焼結体タブレットを用いることで、スプラッシュ現象が抑制されるとの知見が得られた。
【0017】
かかる酸化亜鉛焼結体タブレットの特徴は、昇華面となる1軸加圧面の結晶配向性に関し、(103)結晶配向性が大きい点にある。このように、酸化亜鉛焼結体タブレットの(103)結晶配向性を大きくすることにより、スプラッシュが抑制され、成膜安定性が向上するという顕著な効果が得られる。
【0018】
より具体的には、本発明の酸化亜鉛焼結体タブレットは、六方晶系の結晶構造を有する、酸化亜鉛またはドーパントを含む酸化亜鉛の焼結体からなり、CuKα線を使用したX線回折による(103)面、(110)面のそれぞれ積分強度をI(103)、I(110)としたとき、I(103)/(I(103)+I(110))で表される1軸加圧面の配向度が0.48以上であることを特徴としている。
【0019】
前記配向度は、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.55以上、最適には0.6以上である。
【0020】
また、本発明の酸化亜鉛焼結体タブレットは、比抵抗が1×102Ω・cm以下であることが好ましい。さらに、相対密度が50%以上70%以下であることが好ましい。
【0021】
本発明の酸化亜鉛焼結体タブレットは、ドーナツ状の二次粒子の比率が50%以上である、酸化亜鉛粉末またはドーパントとなる添加元素と酸化亜鉛との混合粉末からなる造粒粉末を加圧成形して得た成形体を、常圧にて、800℃〜1300℃の温度で焼結させることにより得られる。
【0022】
なお、前記焼結により得られた常圧焼結体に、圧力が1×10-4Pa以上1×10-3Pa以下の真空中にて、800℃〜1300℃の温度で、1分以上10分以下の時間保持する、還元処理を施すことが好ましい。
【0023】
特に、前記ドーナツ状の二次粒子からなる造粒粉末は、前記酸化亜鉛粉末または混合粉末の原料粉末をスラリーとし、該スラリーを、80℃〜100℃の温度で、排風量を前記ドーナツ状の二次粒子の比率が50%以上となるように調整して、噴霧乾燥させることにより得られる。
【0024】
この際、前記造粒粉末の一部を、800℃〜1300℃の温度で10時間〜30時間、仮焼することが好ましい。また、この場合、前記仮焼後の造粒粉末と未仮焼の造粒粉末とを混合して用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の酸化亜鉛焼結体タブレットを真空蒸着法による成膜に用いると、スプラッシュ現象の発生が抑制され、安定した放電による成膜が可能となるとともに、成膜時に膜の欠陥の原因となる破損物質の発生が防止され、破損物質の除去作業が不要になるなど、真空蒸着法による透明導電膜の成膜における生産性の著しい向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】六方晶系の結晶構造を有する酸化亜鉛系焼結体における(103)面と(101)面を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[酸化亜鉛焼結体タブレット]
(配向度)
本発明の酸化亜鉛系焼結体タブレットは、昇華面となる1軸加圧面における結晶配向性に関して、(103)結晶配向性が大きいという特徴を有している。CuKα線を使用したX線回折による(103)面、(110)面のピーク積分強度をI(103)、I(110)としたとき、I(103)/(I(103)+I(110))で表される1軸加圧面の配向度が0.48以上であれば、成膜時におけるスプラッシュが抑制される。
【0028】
従来用いられている通常の酸化亜鉛の造粒粉末を用いて製造された酸化亜鉛焼結体タブレットの場合、1軸加圧面の配向度は0.48を下回っている。しかし、本発明の酸化亜鉛焼結体タブレットでは、その1軸加圧面の配向度は、0.48以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.55以上、特に好ましくは0.6以上となっている。(103)結晶配向性が大きい焼結体ほど、焼結体の比抵抗は相対的に低くなり、スプラッシュ抑制により有利である。そして、このような高い配向度を有する面を昇華面に用いることで、スプラッシュの抑制された真空蒸着用の酸化亜鉛焼結体タブレットが実現できる。また、一般的に高抵抗の焼結体タブレットを成膜に用いた場合、昇華が不均一となり、成膜が安定しないが、本発明の焼結体タブレットを用いた場合、高抵抗の場合でも昇華の均一性が向上し、スプラッシュの抑制とともに安定した成膜が可能となるため、酸化亜鉛透明導電膜の生産性向上にきわめて有効である。なお、ここでいう真空蒸着は、電子ビーム蒸着法、高密度プラズマアシスト蒸着法などのイオンプレーティング法、その他の真空蒸着法を広く包含するものである。
【0029】
(103)結晶配向性が大きい、すなわち(103)面の面積ピーク比率が高いほど、成膜安定性の向上に有効である。一方、1軸加圧面の配向度が0.48未満であると、スプラッシュが発生しやすくなって量産用途に適用することができない。こうした理由については、いまだ解明されていないものの、次のようなことが考えられる。すなわち、酸化亜鉛のような結晶方位に応じた異方性がある材料においては、強い配向方向における導電性などの特性が向上することが一般的に知られている。本発明では、(103)面のようなc軸寄りの配向性を昇華面において高めている。このように、酸化亜鉛焼結体タブレットの(103)結晶配向性を高めることで、得られる酸化亜鉛焼結体タブレットの抵抗分布が著しく低減され、均一な昇華が可能となり、もってスプラッシュの発生が抑制されるものと考えられる。
【0030】
なお、(103)結晶配向性が大きい本発明の酸化亜鉛系焼結体タブレットは、その比抵抗が高い場合であっても、成膜安定性が向上することを最大の特徴としているが、この(103)結晶配向性が大きいということは、低抵抗のタブレットにおける成膜の安定性の向上にも有効である。すなわち、本発明は、酸化亜鉛のみから構成される酸化亜鉛焼結体タブレットに限られず、各種ドーパントを含む酸化亜鉛から構成される酸化亜鉛焼結体タブレットにも適用されうる。すなわち、(103)結晶配向性が大きい本発明の酸化亜鉛焼結体タブレットを作製する際に、主成分である酸化亜鉛に加えて、導電性を付与するためのドーパントとして、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどのホウ素族元素、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどのチタン族元素、モリブデン、タングステンなどのクロム族元素、バナジウム、ニオブ、タンタルなどのバナジウム族元素、セリウム、プラセオジム、ガドリニウムなどのランタノイド、さらにはイットリウム、スズ、ルテニウム、マグネシウム、イリジウム、およびビスマスの中から選ばれる1種以上の元素を添加してもよい。なお、これらのドーパントの添加量は、酸素以外の全元素に対して50原子%以下であるが、低抵抗化の観点から3原子%〜10原子%とすることが好ましい。
【0031】
また、低抵抗化の目的により、常圧における焼結後に、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットに還元処理を施してもよい。
【0032】
なお、酸化亜鉛のみからなる焼結体タブレットにおいては、好ましくは純度99.9%以上、さらに好ましくは純度99.99%以上であることが好ましい。ただし、上記の純度となる範囲で不可避的不純物が存在することは許容される。
【0033】
(相対密度)
本発明の酸化亜鉛焼結体タブレットでは、従来の真空蒸着用の酸化亜鉛焼結体タブレットと同様に、成膜時の割れやクラックの発生を防止する観点から、その相対密度(理論密度に対する嵩密度の割合)を50%〜70%としている。ここで、相対密度を算出する際に用いられる酸化亜鉛の理論密度は、5.78g/cm3である。
【0034】
この範囲の相対密度とするためは、後述する酸化亜鉛焼結体タブレットの製造工程のうち、仮焼および/または焼結工程における焼成条件を規制すればよい。
【0035】
(比抵抗)
本発明の酸化亜鉛焼結体タブレットは、上記したドーパントを含まない場合には、その比抵抗は密度にもよるが1.0×105Ω・cm〜1.0×109Ω・cm程度となる。このような高抵抗の場合にも、本発明の酸化亜鉛焼結体タブレットは、昇華面における(103)結晶配向性が大きいことに起因して、昇華の均一性が向上し、スプラッシュ現象が発生しにくくなる。
【0036】
ただし、(103)結晶配向性が大きいことに加えて、本発明の酸化亜鉛系焼結体タブレットにおいては、安定した放電を持続させるために、その比抵抗を1×102Ω・cm以下とすることが好ましく、10Ω・cm以下とすることがさらに好ましい。少なくとも1×102Ω・cm以下の比抵抗の酸化亜鉛系焼結体タブレットを使用すると、局所加熱が排除され、均一に材料が加熱されるため、スプラッシュ現象の発生がさらに抑制される。
【0037】
このように比抵抗を1×102Ω・cm以下とするためには、常圧における焼結後に、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットに還元処理を施せばよい。本発明においても、比抵抗は低いほど好ましいが、酸化亜鉛焼結体タブレットの相対密度が70%以下であることを前提とすると、その比抵抗の下限は、現時点では5×10-1Ω・cm程度である。
【0038】
ただし、上記ドーパントの添加により、この比抵抗をさらに低減させることは可能である。ドーパントの種類、添加量により異なるが、その添加により、相対密度が50%以上70%以下である酸化亜鉛焼結体タブレットにおける比抵抗を、3×10-1Ω・cm以下、好ましくは5.0×10-3Ω・cm〜1.0×10-4Ω・cm程度まで低下させることができる。
【0039】
なお、本発明においては、比抵抗は四探針法を用いて計測した値であり、具体的には、四探針法抵抗率計ロレスタEP(株式会社三菱化学アナリテック製、MCP−T360型)を使用して計測したものである。
[酸化亜鉛焼結体タブレットの製造方法]
(ドーナツ状の二次粒子の製造)
以上のような優れた特性を有する、酸化亜鉛焼結体タブレットは、本発明者が研究を重ねた結果、ドーナツ状の二次粒子の比率が50%以上である造粒粉末を焼結体材料として用いることにより得られるとの知見が得られたのである。なお、このドーナツ状の二次粒子の比率は、好ましくは60%以上、さらに好ましくは68%以上、最適には78%以上とする。
【0040】
従来の一般的なセラミックの製造においては、密度の低下を招くなどの理由から、このようなドーナツ状の二次粒子を多く含む造粒粉末は、焼結体材料としては用いられていない。一般的なスプレードライヤ造粒においては球状の造粒粉末が得られるが、かかる球状の造粒粉末を焼結体材料に用いた場合、得られる酸化亜鉛焼結体タブレットの1軸加圧面の配向度は0.48を下回ることとなる。ドーナツ状の二次粒子の比率を、50%以上とすることでこの1軸加圧面の配向度は0.48以上と、60%以上とすることで0.50以上と、さらに68%以上とすることで0.55以上と、そして78%以上とすることで0.60以上とすることができる。
【0041】
ドーナツ状の二次粒子は、一次粒子が環状に凝集することにより形成され、スプレードライヤによる造粒過程において、スラリー中の水分蒸発速度を調整することにより得られる。また、ここでのドーナツ状二次粒子とは、環状部分の厚みが均一に揃った形状でも、環状部分の厚みが不均一で、いわゆる球体に貫通する穴が形成されている形状の粒子でもよい。このような粒子が多い造粒粉末を使用することにより、(103)結晶配向性の大きい酸化亜鉛焼結体タブレットが得られる。
【0042】
スプレードライヤを用いる造粒においては、噴霧されたスラリー中の水分が蒸発する過程で、その液滴表面張力によりスラリー中の粒子が液滴表面に引き付けられる。これにより、噴霧されたスラリー中の粒子濃度分布においては、液滴表面で粒子濃度が濃くなる。このようにしてドーナツ状の二次粒子が生成されることになるが、この現象を発生させるためには、水分蒸発速度を調節する必要がある。すなわち、酸化亜鉛についてスプレードライヤ造粒をおこなう際に、適正なチャンバ温度、気流などの条件を選定して、二次粒子形状のドーナツ化を促進する必要がある。
【0043】
なお、このドーナツ状の二次粒子の粒径は、焼結性の均一化の観点から、10μm〜100μmの範囲内とする。この粒径は、後述する造粒条件を規制することにより、この範囲内のものとすることができる。
【0044】
(原料粉末)
まず、酸化亜鉛粉末、またはドーパントとなる添加元素と酸化亜鉛との混合粉末からなる原料粉末を用意する。最初に用意される原料粉末については、焼結性の均一化の観点から、平均粒径が1μm以下のものを用いることが好ましい。また、粒度分布測定による累積重量が90%となるときの粒径(D90)が1.0μm以上2.0μm以下となる原料粉末を用いることにより、得られる焼結体の寸法や密度などがより安定し、歩留まりよく製造を行うことが可能となる。
【0045】
(仮焼)
本発明の酸化亜鉛焼結体タブレットの製造では、原料粉末を仮焼した仮焼粉末と、未仮焼の原料粉末とを混合したものを、焼結体材料とすることが好ましい。なお、混合方法は特に限定されることなく、公知の技術を利用することができる。
【0046】
原料粉末の一部を仮焼粉末とすることにより、相対密度が50%〜70%の焼結体タブレットを得やすくなる。なお、仮焼粉末を作製する際は、800℃〜1300℃、好ましくは900℃〜1200℃の温度で仮焼する。仮焼温度が800℃未満では、粒子の粒成長がほとんど進行しないために仮焼する効果が得られず、また、仮焼温度が1300℃を超えると、亜鉛が揮発し、所定の酸化亜鉛組成からずれてしまったり、後工程の焼成時に過剰に粒成長してしまったりするため、好ましくない。仮焼時間は、1時間〜30時間であり、好ましくは、10時間〜20時間である。仮焼粉末の未仮焼粉末に対する使用量は、酸化亜鉛焼結体タブレットにおける所望の相対密度に応じて任意に決定されるが、30質量%〜90質量%とすることが好ましい。
【0047】
なお、仮焼工程では、原料粉末を直接仮焼して仮焼粉末を得てもよいが、原料粉末を造粒した後、仮焼して仮焼造粒粉末を得る方が、仮焼後に粉末が強固に固まってしまうことが少ないため、好ましい。
【0048】
(造粒)
次に、上記の原料粉末を、純水と、ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどの有機バインダ、ポリカルボン酸アンモニウム塩、アクリル酸系アミン塩などの分散剤とともに、原料粉末濃度が50質量%〜80質量%、好ましくは65〜75質量%、好適には70質量%程度となるように混合し、スラリーを作製する。なお、混合方法は特に限定されることなく、公知の技術を利用することができる。
【0049】
次に、該スラリーを、スプレードライヤ装置を用いて、噴霧および乾燥させることにより、造粒粉末を得る。この場合、乾燥温度は80℃以上100℃以下にすることが望ましい。乾燥温度が80℃未満になると、十分に乾燥した造粒粉末を得ることができない。乾燥が不十分で水分量が多いと、次の成形工程ないしは焼結工程で、成形体もしくはタブレットに割れが発生する可能性が高くなる。また、乾燥温度が100℃を超えると、急速にスラリーの乾燥が進行するため、二次粒子破壊などが生じて、二次粒子形状の制御が困難となるうえ、ドーナツ状の二次粒子が生成される比率が低くなる。
【0050】
また、造粒の際には、スプレードライヤの排風量を調整する必要がある。この排風量に関しては、造粒をおこなうスプレードライヤ装置に依存するため、それぞれの装置に応じて、チャンバ内で噴霧されたスラリー中の粒子がドーナツ状に配列しやすい環境となるように適宜調整を図る必要がある。
【0051】
たとえば、スプレードライヤ装置(大川原化工機株式会社製、ODL−20型)を用いた場合、その排風量を25m3/分以下とすることが望ましく、排風量が25m3/分を超えると、前述したように、二次粒子形状の制御が困難となり、かつ、ドーナツ状の二次粒子が生成される比率が低くなる。なお、下限についてもその装置に依拠し、装置として機能する最小の排風量まで適用可能である。これらの条件を満たすことで、ドーナツ状の二次粒子比率が50%以上のスプレードライヤ造粒粉末を製造することが可能となる。
【0052】
なお、ドーナツ状の二次粒子比率は、電子顕微鏡にて得られた造粒粉末を観察し、ドーナツ状の二次粒子の個数および全体の二次粒子の個数を測定し、(ドーナツ状の二次粒子の個数)/(全体の二次粒子の個数)の式を用いることにより算出される。
【0053】
(成形)
次に、造粒粉末からなる焼結体材料粉末を、たとえば、金型中で加圧する機械プレス法などにより1軸加圧成形して、成形体を得る。該成形体を得る工程では、造粒粉末を49MPa(0.5tonf/cm2)以上147MPa(1.5tonf/cm2)以下の圧力で成形すると、所望の相対密度の焼結体タブレットが得られやすく望ましい。また、原料として使用している仮焼粉末の使用量と、該仮焼粉末の熱処理温度と、後工程での焼結温度を一定にすることで、焼結時の各タブレットの収縮率をほぼ同一にコントロールできる。
【0054】
したがって、焼結体タブレットの寸法は、プレス成形での成形体寸法を調整することで決定できる。なお、プレス成形での金型は、内面のエッジ部分をC面取りの形状にすることによって、成形体の外面のエッジ部分にC面取りを施すと、この成形体や、この成形体を焼結させた焼結体タブレットを取り扱う際に、欠けなどの破損を防ぐことができ、好ましい。
【0055】
(焼結)
次に、上記成形体を常圧で焼結することにより、酸化亜鉛またはドーパントを含む酸化亜鉛からなる焼結体タブレットを得る。この際の焼結温度は、800℃〜1300℃の範囲内とする。この範囲では、焼結温度の上昇に伴い、より高い相対密度、より低い比抵抗のものが得られる傾向となる。なお、焼結温度が800℃未満では、焼結が進行せず、機械的な強度の弱い常圧焼結体タブレットになる。また、焼結収縮が十分進んでいないために、焼結したタブレットの密度や寸法のばらつきが大きくなる。一方、焼結温度が1300℃を超えると、亜鉛が揮発し、所定の酸化亜鉛組成からずれてしまうことになる。この観点から、上記焼結温度を900℃〜1100℃の範囲内とすることが好ましい。また、焼結を行う際の昇温速度に関しては、添加している有機分が蒸発する際の蒸気圧を考慮し、昇温中の割れを防ぐ目的で1.0℃/分とすることが好ましい。
【0056】
なお、焼成雰囲気は、常圧であれば、大気中、窒素ガス、アルゴン、酸素中の雰囲気のいずれをも採用できる。また、焼結時間は、焼成炉など焼成条件により任意であるが、成形体が十分に焼結し、かつ過焼結とならない時間を設定すればよい。通常は、10時間〜20時間であり、好ましくは、15時間〜20時間である。20時間を超えて焼結すると、焼結時間に応じて生産コストが増加するとともに、亜鉛の揮発も発生する。
【0057】
(真空還元)
本発明の製造工程においては、前記焼結により得られた常圧焼結体タブレットに対して、真空中にて還元処理をおこなってもよい。この場合は、還元圧力を1×10-3Pa以下とし、還元温度を800℃〜1300℃の範囲内とする。焼結条件と同様に、この範囲では、還元温度の上昇に伴い、より高い相対密度およびより低い比抵抗を得られる傾向となる。
【0058】
また、この際、上記の還元温度までの昇温速度を1.0℃/分〜10.0℃/分の範囲内とする。焼結体の還元処理時には、有機分の蒸発を考慮する必要がないものの、昇温速度が1.0℃/分未満では、生産性の低下を招き、一方、10.0℃/分を超えると熱衝撃に耐えられなくなった焼結体に割れが生じ、歩留まりが低下する可能性が生じる。
【0059】
真空中にて還元処理を施すことにより、焼結体タブレットの内部に酸素欠損が生じ、キャリア生成により導電性が付与され、焼結体タブレットの比抵抗を1×102Ω・cm以下とすることができる。これにより、真空蒸着法による成膜時の放電中にスプラッシュ現象などがほとんど発生することなく、放電および昇華がさらに安定するようになる。これにより、成膜速度が向上するため、還元処理は成膜時の生産性においても有効な手法である。
【0060】
なお、還元温度が800℃未満では、焼結体タブレットの内部まで還元が進行せず、還元処理の効果が十分に得られず、この焼結体タブレットの導電性の向上が不十分となるため、還元処理という工程をあえて追加するという効果がなくなり、逆に生産性の低下を招くという結果が生じる。一方、還元温度が1300℃を超えると、焼結体タブレットの表面で酸化亜鉛が揮発し、表面が高抵抗の脆弱層となり、生産性を大きく損なう。この観点から、上記還元温度を900℃〜1100℃の範囲内とすることが好ましい。
【0061】
また、還元圧力を1×10-3Paよりも高くすると、焼結体タブレットの内部まで還元が進行せず、焼結体タブレットの導電性が不十分となる。ただし、真空処理時間などの効率性やコストを考慮すると、還元圧力を1×10-4Pa以上とすることが好ましい。
【0062】
還元処理の時間は、処理条件により任意であり、焼結体タブレットの内部まで十分に還元がなされ、かつ亜鉛の揮発が抑制できる時間を設定すればよい。還元処理の効率性、生産コストを考慮すると、通常は、1分〜1時間であり、好ましくは、1分〜10分とする。
【0063】
なお、この還元工程は、高抵抗である酸化亜鉛のみからなる焼結体タブレットの製造に特に適用される。また、ドーパントを含む相対的に低抵抗の酸化亜鉛焼結体タブレットの製造にも適用して、さらなる低抵抗化を図ってもよい。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
まず、原料粉末として、平均粒径が1μm以下の酸化亜鉛粉末を所定量秤量し、用意した。
【0065】
原料粉末の中から60質量%分取し、この粉末を純水、分散剤としてのポリカルボン酸アンモニウム塩とともに、粉末濃度が60質量%となるように調合し、混合タンク内でスラリーを作製した。そして、該スラリーを、スプレードライヤ装置(大川原化工機株式会社製、ODL−20型)を用いて噴霧および乾燥させる第1段の造粒工程により造粒粉末を得た。装置チャンバの出口温度を90℃、排風量を15m3/分としたところ、造粒粉末の粒径は300μm以下の造粒粉末を得た。
【0066】
この造粒粉末を、大気圧焼結炉にて、1000℃で20時間焼成し、焼成後粉砕することにより、粒径が300μm以下の仮焼粉末を得た。そして、該仮焼粉末と、最初に用意した未仮焼の原料粉末とを混合することにより、仮焼粉末と未仮焼粉末との混合粉末を得た。
【0067】
該混合粉末を、再度、純水、有機バインダとしてのポリビニルアルコール、分散剤としてのポリカルボン酸アンモニウム塩とともに、粉末濃度が70質量%となるように調合し、混合タンク内でスラリーを作製した。そして、該スラリーを、同じスプレードライヤ装置を用いて、装置チャンバの出口温度を90℃、排風量を15m3/分として噴霧および乾燥させる第2段の造粒工程により、粒径が300μm以下である造粒粉末からなる焼結体材料粉末を得た。この焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は60%であった。
【0068】
次に、該焼結体材料粉末を、成形プレス機(三庄インダストリー株式会社製、ウエーブ成形プレス機)の金型中で、90MPa(0.92tonf/cm2)の圧力で1軸加圧成形することにより、直径30mm、高さ40mmの円柱状の成形体を、200個得た。
【0069】
さらに、得られた200個の成形体を、それぞれ電気炉にて、常圧の大気中で焼結させることにより、200個の酸化亜鉛からなる常圧焼結体タブレットを得た。この際の焼結温度は1000℃、焼結時間は20時間とした。
【0070】
そして、得られた200個の常圧焼結体タブレットを、それぞれ黒鉛容器内に設置し、圧力1×10-3Paの真空中にて、5℃/分の昇温速度で1000℃(最高到達温度)まで加熱し、この温度で3分保持する還元処理を施すことにより、200個の酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。
【0071】
<検査・評価>
[相対密度]
この酸化亜鉛焼結体タブレットの理論密度は、酸化亜鉛の密度である5.78g/cm3となる。一方、得られた200個の焼結体タブレットのすべてについて、直径、高さ、重量を測定して嵩密度を得て、前記理論密度に対する相対密度を算出した結果、その相対密度の平均値は60%であった。
【0072】
[比抵抗]
50個の試料について、四探針法抵抗率計ロレスタEP(株式会社三菱化学アナリテック製、MCP−T360型)を用いて、表面の比抵抗を測定したところ、比抵抗の平均値は8.5Ω・cmであった。
【0073】
[X線回折]
試料のうちの2個を試験片とし、X線回折装置(スペクトリス株式会社製、X‘Pert−PRO/MPD)を用いてCuKα線を使用したX線解析(XRD)測定を実施した。その結果、得られた(103)面、(110)面のそれぞれ積分強度をI(103)、I(110)としたとき、I(103)/(I(103)+I(110))で表される1軸加圧面の配向度を算出したところ、0.513であった。
【0074】
なお、本実施例の酸化亜鉛焼結体タブレットから得られたX線回折ピークについては、前述の酸化亜鉛焼結体ターゲットに関する特許文献1〜3で言及されている回折に着目して、その結晶配向性との比較をおこなった。特許文献1に記載されている結晶配向性の特徴には該当しておらず、(002)結晶配向性が(101)結晶配向性より小さかった。また、特許文献2のI(101)/(I(100)+I(002)+I(101))で表される結晶配向性について調べてみると0.5と、その特徴である0.55以上には該当しておらず、さらに、特許文献3のI(110)/(I(110)+I(002)+I(101))で表される結晶配向性について調べてみると0.2と、その特徴である0.24以上には該当していなかった。このように、上述の特許文献1〜3で言及されている回折ピークに該当していなくとも、本発明の知見による(103)結晶配向性を高くしている場合には、成膜時にスプラッシュ現象などを発生させることのない、生産性の高い酸化亜鉛焼結体タブレットとなることを確認した。
【0075】
[蒸着試験]
50個の試料について、真空蒸着装置に連続的に供給しつつ、それぞれの試料について電子ビームを照射して蒸着をおこなった。その結果、すべての焼結体タブレットについて、成膜時のスプラッシュ現象は発生せず、放電は安定していた。
【0076】
実施例1の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0077】
(実施例2)
第2段の造粒工程において、チャンバの出口温度を80℃、排風量を15m3/分として造粒粉末を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、造粒粉末からなる焼結体材料粉末を得た。この焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は72%であった。得られた焼結体材料を用い、成形以降の工程はすべて実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。
【0078】
得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に検査をおこなったところ、相対密度の平均値は60%、比抵抗の平均値は5.7Ω・cmであった。
【0079】
また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.578であった。
【0080】
さらに、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットを用いて蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、放電は安定していた。
【0081】
実施例2の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0082】
(実施例3)
第2段の造粒工程において、チャンバの出口温度を90℃、排風量を5m3/分として造粒粉末を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、造粒粉末からなる焼結体材料粉末を得た。この焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は68%であった。得られた焼結体材料を用い、成形以降の工程はすべて実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。
【0083】
得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に検査をおこなった。相対密度の平均値は61%、比抵抗の平均値は6.2Ω・cmであった。
【0084】
また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.551であった。
【0085】
さらに、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、放電は安定していた。
【0086】
実施例3の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0087】
(実施例4)
第2段の造粒工程において、チャンバの出口温度を80℃、排風量を5m3/分として造粒粉末を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、造粒粉末からなる焼結体材料粉末を得た。この焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は79%であった。得られた焼結体材料を用い、成形以降の工程はすべて実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。
【0088】
得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に検査をおこなったところ、相対密度の平均値は61%、比抵抗の平均値は5.5Ω・cmであった。
【0089】
また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.605であった。
【0090】
さらに、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットを用いて蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、放電は安定していた。
【0091】
実施例4の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0092】
(実施例5)
第2段の造粒工程において、チャンバの出口温度を100℃、排風量を15m3/分として造粒粉末を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、造粒粉末からなる焼結体材料粉末を得た。この焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は54%であった。得られた焼結体材料を用い、成形以降の工程はすべて実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。
【0093】
得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に検査をおこなったところ、相対密度の平均値は60%、比抵抗の平均値は6.1Ω・cmであった。
【0094】
また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.490であった。
【0095】
さらに、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットを用いて蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、放電は安定していた。
【0096】
実施例5の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0097】
(実施例6)
第2段の造粒工程において、チャンバの出口温度を90℃、排風量を25m3/分として造粒粉末を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、造粒粉末からなる焼結体材料粉末を得た。この焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は55%であった。得られた焼結体材料を用い、成形以降の工程はすべて実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。
【0098】
得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に検査をおこなったところ、相対密度の平均値は60%、比抵抗の平均値は6.5Ω・cmであった。
【0099】
また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.496であった。
【0100】
さらに、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットを用いて蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、放電は安定していた。
【0101】
実施例6の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0102】
(実施例7)
第2段の造粒工程において、チャンバの出口温度を100℃、排風量を25m3/分として造粒粉末を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、造粒粉末からなる焼結体材料粉末を得た。この焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は51%であった。得られた焼結体材料を用い、成形以降の工程はすべて実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。
【0103】
得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に検査をおこなったところ、相対密度の平均値は60%、比抵抗の平均値は6.2Ω・cmであった。
【0104】
また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.487であった。
【0105】
さらに、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットを用いて蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、放電は安定していた。
【0106】
実施例7の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0107】
(実施例8)
焼結温度を800℃に変えた点以外は、実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。
【0108】
得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に検査をおこなったところ、相対密度の平均値は59%、比抵抗の平均値は1.2×10Ω・cmであった。
【0109】
また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.506であった。
【0110】
さらに、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットを用いて蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、放電は安定していた。
【0111】
実施例8の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0112】
(実施例9)
焼結温度を1300℃に変えた点以外は、実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。
【0113】
得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に検査をおこなったところ、相対密度の平均値は62%、比抵抗の平均値は6.3Ω・cmであった。
【0114】
また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.516であった。
【0115】
さらに、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットを用いて蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、放電は安定していた。
【0116】
実施例9の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0117】
(実施例10)
還元処理温度(最高到達温度)を800℃に変えた点以外は、実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。
【0118】
得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に検査をおこなったところ、相対密度の平均値は59%、比抵抗の平均値は.2.5×10Ω・cmであった。
【0119】
また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.505であった。
【0120】
さらに、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットを用いて蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、放電は安定していた。
【0121】
実施例10の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0122】
(実施例11)
還元処理温度(最高到達温度)を1300℃に変えた点以外は、実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。
【0123】
得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に検査をおこなったところ、相対密度の平均値は61%、比抵抗の平均値は6.0Ω・cmであった。
【0124】
また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.511であった。
【0125】
さらに、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットを用いて蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、放電は安定していた。
【0126】
実施例11の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0127】
(実施例12)
還元処理を実施しなかった点以外は、実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。
【0128】
得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に検査をおこなったところ、相対密度の平均値は60%、比抵抗の平均値は3.2×105Ω・cmであった。
【0129】
また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.510であった。
【0130】
さらに、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットを用いて蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、放電は安定していた。
【0131】
実施例12の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0132】
(比較例1)
第2段の造粒工程において、チャンバの出口温度を110℃、排風量を15m3/分として造粒粉末を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、造粒粉末からなる焼結体材料粉末を得た。この焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は25%であった。得られた焼結体材料を用い、成形以降の工程はすべて実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。
【0133】
得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に検査をおこなったところ、相対密度の平均値は61%、比抵抗の平均値は7.5Ω・cmであった。
【0134】
また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.462であった。
【0135】
さらに、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットを用いて蒸着試験をおこなったところ、スプラッシュ現象が発生し、放電は不安定であった。
【0136】
比較例1の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0137】
(比較例2)
第2段の造粒工程において、チャンバの出口温度を70℃、排風量を15m3/分として造粒粉末を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、造粒粉末からなる焼結体材料粉末を得た。この焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は53%であったが、十分に乾燥した焼結体材料粉末が得られず、その水分量が高いために成形工程で得られた成形体200個のうち84個にクラックが発生した。したがって、この条件では生産性が大きく悪化すると判断し、ここで作製を中止した。
【0138】
比較例2の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0139】
(比較例3)
第2段の造粒工程において、チャンバの出口温度を90℃、排風量を28m3/分として造粒粉末を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、造粒粉末からなる焼結体材料粉末を得た。この焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は42%であった。得られた焼結体材料を用い、成形以降の工程はすべて実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。
【0140】
得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に検査をおこなったところ、相対密度の平均値は60%、比抵抗の平均値は7.4Ω・cmであった。
【0141】
また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.471であった。
【0142】
さらに、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットを用いて蒸着試験をおこなったところ、スプラッシュ現象が発生し、放電は不安定であった。
【0143】
比較例3の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0144】
(比較例4)
最大粒子径が75μm以下で平均粒子径が10μmであり、約1400℃で3時間仮焼した酸化亜鉛粉末を65質量%と、最大粒子径が20μm以下で平均粒子径が約1μmの未仮焼の酸化亜鉛粉末を35質量%となるようそれぞれ秤量し、これらをボールミルによって乾式混合した。得られた混合粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は0%であった。この混合粉末からなる焼結体材料粉末を用いて、成形以降の工程はすべて実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。
【0145】
得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて実施例1と同様に検査をおこなったところ、相対密度の平均値は60%、比抵抗の平均値は9.1Ω・cmであった。
【0146】
また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.475であった。
【0147】
さらに、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットを用いて蒸着試験をおこなったところ、スプラッシュ現象が発生し、放電は不安定であった。
【0148】
比較例4の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0149】
(比較例5)
最大粒子径が110μm以下で平均粒子径が5μmであり、約900℃で3時間仮焼した酸化亜鉛粉末を焼結体材料粉末として用い、成形以降の工程はすべて実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。このとき用いた焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は0%であった。また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に検査をおこなったところ、相対密度の平均値は60%、比抵抗の平均値は8.8Ω・cmであった。
【0150】
また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.472であった。
【0151】
さらに、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットを用いて蒸着試験をおこなったところ、スプラッシュ現象が発生し、放電は不安定であった。
【0152】
比較例5の製造条件を表1に、その検査および試験の結果(評価)を表2にそれぞれ示す。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
(実施例13〜15)
原料粉末として、平均粒径が1μm以下の酸化亜鉛粉末と、平均粒径が2μm以下の酸化ガリウム粉末とを、それぞれ「亜鉛:ガリウム=97原子%:3.0原子%」(実施例13)、「亜鉛:ガリウム=90原子%:10原子%」(実施例14)、「亜鉛:ガリウム=50原子%:50原子%」(実施例15)の割合となるように、所定量秤量し、用意した。
【0156】
その中から、酸化亜鉛粉末と酸化ガリウム粉末のそれぞれについて60質量%ずつ分取し、実施例1の第1段の造粒工程と同様にして造粒粉末を得た。
【0157】
この造粒粉末を、大気圧焼結炉にて、1200℃で20時間焼成し、焼成後粉砕することにより、粒径が300μm以下の仮焼粉末を得た。
【0158】
そして、該仮焼粉末と、最初に用意した未仮焼の原料粉末とを混合することにより、仮焼粉末と未仮焼粉末との混合粉末を得た後、実施例1の第2段の造粒工程と同様にして、粒径が300μm以下である造粒粉末からなる焼結体材料粉末を得た。この焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率はそれぞれ60%(実施例13)、57%(実施例14)、52%(実施例15)であった。
【0159】
得られた焼結体材料を用い、成形以降の工程については、焼結温度および還元処理温度を1100℃としたこと以外は、すべて実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛焼結体タブレットを製造した。
【0160】
ここで、酸化ガリウムを含む酸化亜鉛系焼結体タブレットにおける酸化ガリウム量は、それぞれ3.2質量%(実施例13)、10.7質量%(実施例14)、51.9質量%(実施例15)であるので、当該焼結体タブレットの理論密度は、酸化亜鉛および酸化ガリウムの密度がそれぞれ5.78g/cm3、6.16g/cm3であるから、それぞれ5.79g/cm3(実施例13)、5.82g/cm3(実施例14)、5.97g/cm3(実施例15)となる。得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に検査を行ったところ、相対密度の平均値はいずれも60%、比抵抗の平均値は6.6×10-4Ω・cm(実施例13)、8.9×10-4Ω・cm(実施例14)、3.1×10-3Ω・cm(実施例15)であった。
【0161】
また、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットについて、実施例1と同様に、1軸加圧面の配向度を算出したところ、0.498(実施例13)、0.495(実施例14)、0.492(実施例15)であった。
【0162】
さらに、得られた酸化亜鉛焼結体タブレットを用いて蒸着試験をおこなったところ、実施例13から15においては、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、放電は安定していた。
【0163】
実施例13〜15の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0164】
(実施例16)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化ホウ素粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は59%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は60%であり、比抵抗の平均値は6.8×10-3Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.508であった。
【0165】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0166】
実施例16の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0167】
(実施例17)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化アルミニウム粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は61%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は60%であり、比抵抗の平均値は3.1×10-2Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.510であった。
【0168】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0169】
実施例17の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0170】
(実施例18)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化インジウム粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は58%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は60%であり、比抵抗の平均値は4.1×10-3Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.501であった。
【0171】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0172】
実施例18の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0173】
(実施例19)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化チタン粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は58%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は60%であり、比抵抗の平均値は1.2×10-3Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.508であった。
【0174】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0175】
実施例19の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0176】
(実施例20)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化ジルコニウム粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は57%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は59%であり、比抵抗の平均値は4.5×10-2Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.492であった。
【0177】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0178】
実施例20の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0179】
(実施例21)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化ハフニウム粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は59%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は59%であり、比抵抗の平均値は7.2×10-2Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.500であった。
【0180】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0181】
実施例21の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0182】
(実施例22)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化モリブデン粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は61%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は61%であり、比抵抗の平均値は2.2×10-3Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.498であった。
【0183】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0184】
実施例22の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0185】
(実施例23)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化タングステン粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は60%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は60%であり、比抵抗の平均値は9.4×10-4Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.510であった。
【0186】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0187】
実施例23の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0188】
(実施例24)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化バナジウム粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は56%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は60%であり、比抵抗の平均値は8.6×10-2Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.505であった。
【0189】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0190】
実施例24の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0191】
(実施例25)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化ニオブ粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は60%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は62%であり、比抵抗の平均値は8.1×10-2Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.511であった。
【0192】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0193】
実施例25の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0194】
(実施例26)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化タンタル粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は59%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は60%であり、比抵抗の平均値は3.5×10-3Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.504であった。
【0195】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0196】
実施例26の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0197】
(実施例27)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化セリウム粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は58%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は59%であり、比抵抗の平均値は6.9×10-2Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.497であった。
【0198】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0199】
実施例27の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0200】
(実施例28)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化プラセオジム粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は59%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は60%であり、比抵抗の平均値は1.0×10-1Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.511であった。
【0201】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0202】
実施例28の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0203】
(実施例29)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化ガドリニウム粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は62%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は60%であり、比抵抗の平均値は2.0×10-1Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.502であった。
【0204】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0205】
実施例29の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0206】
(実施例30)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化イットリウム粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は59%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は58%であり、比抵抗の平均値は9.2×10-2Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.502であった。
【0207】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0208】
実施例30の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0209】
(実施例31)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化スズ粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は60%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は59%であり、比抵抗の平均値は2.1×10-2Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.508であった。
【0210】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0211】
実施例31の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0212】
(実施例32)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化ルテニウム粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は59%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は60%であり、比抵抗の平均値は5.0×10-2Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.509であった。
【0213】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0214】
実施例32の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0215】
(実施例33)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化マグネシウム粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は63%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は62%であり、比抵抗の平均値は2.8×10-3Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.501であった。
【0216】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0217】
実施例33の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0218】
(実施例34)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化イリジウム粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は60%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は60%であり、比抵抗の平均値は8.8×10-2Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.510であった。
【0219】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0220】
実施例34の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0221】
(実施例35)
原料粉末として酸化ガリウムの代わりに酸化ビスマス粉末を使用したこと以外は、実施例13と同様の条件で、酸化亜鉛系焼結体タブレットを製造した。この際、焼結体材料粉末を構成する二次粒子のうち、ドーナツ状の二次粒子の個数比率は56%であり、得られた焼結体について、実施例13と同様に導出した理論密度と検査結果から算出した相対密度の平均値は58%であり、比抵抗の平均値は2.2×10-1Ω・cmであった。また、得られた焼結体タブレットについて、実施例1と同様に配向度を算出したところ、0.503であった。
【0222】
この結果、得られた酸化亜鉛系焼結体タブレットを用いて実施例1と同様に蒸着試験をおこなったところ、欠けやクラックの発生、スプラッシュ現象の発生はいずれもなく、安定成膜に対する良好な効果を示した。
【0223】
実施例35の製造条件を表3に、その検査および試験の結果(評価)を表4にそれぞれ示す。
【0224】
【表3】
【0225】
【表4】

図1