(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
乾湿式紡糸法は、重合体溶液(紡糸原液)を、口金の紡糸孔から一旦気相部(通常は、空気中)に吐出させることにより、繊維化した後、繊維を凝固浴中に導入し凝固せしめ、次いで、凝固浴から凝固した繊維を引き取り、繊維束を形成する。乾湿式紡糸法によれば、繊維の引き取りにより生じる繊維のドラフトが、気相部に集中するため、凝固浴における低張力下での繊維の凝固・ゲル化が可能となる。これにより、後工程での延伸性に優れた繊維束を得ることができる。乾湿式紡糸法によると、緻密度の優れた単繊維からなる繊維束を得ることができる。
【0003】
一方に、炭素繊維束の製造コストを低減させる要望がある。この要望を達成するための一つの手法として、炭素繊維束の製造に必要なアクリル系繊維束の生産性向上がある。この生産性向上のために、アクリル系繊維束の高速度紡糸、高密度紡糸(口金の紡糸孔の多ホール化)が、必要となる。
【0004】
しかし、高速度紡糸の場合、凝固浴中を通過する繊維束の走行速度が増大するため、繊維束の走行に随伴して流動する凝固液の流量が増大する。この随伴流の増大により、凝固浴中の凝固液の流動流量が更に増大し、凝固液の液面が盛り上がり、時には渦が発生する現象が生じる。この現象が生じると、口金直下の凝固液の液面揺れが大きくなる。この凝固液の液面揺れは、繊維束における単繊維の配列の乱れや単繊維の糸切れをもたらす。凝固液の液面の変動が著しい場合は、口金の紡糸孔が配列されている面(口金面)の一部あるいは全部が、凝固液に接触し、乾湿式紡糸ができなくなることがある。
【0005】
高密度紡糸、すなわち、口金の紡糸孔を多ホール化する場合、多ホール化のために、隣接する紡糸孔との間隔を狭くすると、前記の凝固液の液面揺れが大きくなった場合、紡糸孔により紡出された繊維が、一旦気相部を通過する間に、すなわち、繊維が凝固する前に、隣接する単繊維同士が接着する現象を生じる。
【0006】
このような問題を解決するために、例えば特開平1−183511号公報(特許文献1)には走行糸条を取り囲むような整流筒を設置する装置が開示されている。また同時に、この整流筒の上端を液面よりも上に露出するよう規定している。特開平7−207522号公報(特許文献2)では、多孔板で構成された整流板或いは波立ち防止板を、口金と紡糸糸条の引取り方向と反対側の凝固浴槽壁との間に、あるいは口金と凝固浴の引取り側のガイドとの間に複数枚、縦に配している。この場合も、特許文献1と同様、前記整流板あるいは波立ち防止板の上端部を凝固浴液面上に露出させている。
【0007】
また特開平11−350245号公報(特許文献3)では、紡糸口金の外周下方の凝固浴液面上にボールを浮かべ、凝固浴液面の波立ちを制御する方法が提案されている。さらに、特開2007−291594号公報(特許文献4)では、凝固浴中で漏斗状の整流板を介して下向きに走行し方向転換ガイドで折り返されて引取り側ガイドに案内される間の糸条に沿った凝固浴槽内に、前記糸条との間隔を20〜200mm隔てて、仕切板を設置する方法が提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の乾式紡糸装置の代表的な実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明に係る乾湿式紡糸装置の一実施形態を示しており、図中の符号1は紡出口金、2は紡出糸条、3は凝固浴中の方向転換ガイド、4は引取側ガイド、5は凝固浴槽、6は凝固流出受け槽、7は循環ポンプ、8は横整流板、8aは開口部である。
【0018】
図1〜
図4に示す2つの実施形態は、本発明の最も簡単な構成を備えており、
図1に示す実施形態では、紡出口金1から紡出される多数本のフィラメント束からなる糸条2は、凝固浴中下方に走行し、凝固浴槽5の底面近くに配された方向転換ガイド3により、その走行方向を転換して、凝固浴槽5の前記紡出口金1から最も離れた位置にある側壁部の上端近傍の液面より上方に配された引取側ガイド4に向けて斜めに走行し、同引取側ガイド4を介して次工程へと水平に引き取られる。
【0019】
この実施形態によれば、前記紡出口金1から紡出された糸条2の走行途中を凝固浴中で取り囲むような開口部8aをもつ横整流板8が水平に配されている。本発明における横整流板8とは、糸条2の紡糸方向に略垂直な断面上に、紡出糸条2を取り囲むように配置され、糸条2の走行面を開口させた多孔板または無孔の板材から構成されている。その開口部8aの形状は、
図2に示すように円形断面でもよいし、或いは多角形断面でもよい。この横整流板8は、本発明の最も特徴ある構成部材の一つである。
【0020】
この横整流板8は、
図1及び
図2に示すように、図示せぬ支持部材をもって凝固浴中で支持固定されている。そのため、横整流板8の外周部と凝固浴槽5の内壁面との間には格別の邪魔部材は存在せず、横整流板8の外周部と凝固浴槽5の内壁面との間を凝固液が自由に流通する。一方、
図3及び
図4に示す実施形態では、横整流板8の上記引取側ガイド4の側の外周部を自由端として、その他の外周部を凝固浴槽5の側方内壁面まで延設させている。
【0021】
かかる構成により、これらの実施形態では紡出口金1から紡出された糸条2の走行により生じる凝固液の随伴流は、凝固浴槽5の底面にぶつかり、凝固浴槽5の側壁内面に向かい、同内面を上方へと逆流する。このとき、前記横整流板8が存在しないと、前記随伴流と逆流とがぶつかり合い乱流を生じさせて、液面随伴流に伴う凝固液面の揺れが派生し、口金と凝固液とが接触したり紡糸口金1から紡出する単繊維同士が接着したりして、安定した製糸に支障をきたす。
【0022】
図5〜
図7に示す3つの実施形態は、横整流板8が中央に有する開口部8aを連通部8bにより外部と連通させた例であって、横整流板8により糸条の周囲の50%以上の範囲を囲むとともに、前記連通部8bによって形成されるそれぞれの開口が、前記開口部8aの外周部分に占める割合を20%以下の範囲とした例である。
横整流板8により囲まれる前記糸条の周囲の範囲が50%以上80%未満の範囲である場合は、前記横整流板8を複数枚の板で構成して、前記それぞれの開口が、前記開口部8aの外周部分に占める割合を20%以下とする。
横整流板8を複数枚の板で構成する場合、各板は同じ形状であっても良いし異なる形状であっても良い。
【0023】
横整流板8により囲まれる前記糸条の周囲の範囲が80%以上であれば、液面揺れを抑制する点や横整流板が1枚の板で構成できるので構造上簡易になるので好ましく、100%がより好ましい。
【0024】
本実施形態では、上述のとおり横整流板8を紡出口金1の直下に配しているため、随伴流とそのはね返り流とが互いに勢いを打ち消し合うと同時に上方へと向かう混合流が横整流板8によって遮られ、横整流板8からその外周部へと向かうようになる。その結果、口金の周辺の凝固液には揺れが生じにくくなり、紡出口金1と凝固液との接触が防止され、安定した紡糸が可能となる。特に、
図3及び4に示した実施形態では、横整流板8によって下方から登ってくる乱流などを完全に遮るため、紡出口金1の下方周辺の液面に揺れが生ぜず、より安定した紡糸が可能となる。
【0025】
横整流板8の面と水平面とが、凝固浴外側方向に形成する角度は、75度以下であることが好ましい。前記角度であれば、はね返り流の速度を緩和、分散しやすくなり、その結果液面揺れを小さくできる。前記角度は、50度以下がより好ましく、30度以下がさらに好ましい。
【0026】
横整流板8を構成する板の水平方向の幅寸法(以降、単に横幅寸法という。)は次のように定義される。「横整流板8を構成する板の横幅寸法」とは、「紡出される糸条の中心軸から該板の外周部までの最短距離(A)から、この方向と同じ鉛直面内における、紡出される糸条の中心軸から開口部8a外周部までの最短距離(B)を減じたもの。ただし、前記鉛直面内に連通部8bが存在する場合には、この連通部8bが横整流板8を構成する板であると仮定して計算する。」である。
横整流板8を構成する板の横幅寸法は、凝固浴槽5の底面ではね返り、凝固浴槽5の側壁面に沿って、紡出方向とは反対の方向、つまり凝固浴槽5の凝固液面に向かって逆流してくるはね返り流の速度を緩和、分散しやすくするために必要な幅寸法を、5mm以上とすることが好ましい。更に均一な整流効果をもたらすためには10mm以上とすることがより好ましい。なお、板の横幅の寸法には特に上限はなく、凝固浴槽5の大きさに応じて適宜設定すればよい。
【0027】
横整流板8を構成する板は、糸条2の走行面を開口させてあり、凝固浴槽5の側壁面に沿って逆流してくる随伴流を抑制するためには、既述したとおり、糸条2の引取り方向を除く凝固浴槽5の側壁の内面まで延びていることが好ましい。
【0028】
横整流板8を構成する板の高さ方向の設置位置は、凝固浴槽5の底面ではね返り、凝固浴槽5内の側壁面に沿って、紡出糸条2の紡糸方向と反対方向、つまり凝固浴液面に向かって逆流してくる随伴流が凝固液の液面に到達する前に緩和、分散しやすくするためには、凝固浴の液面高さをゼロ点として深さ方向に0mmよりも深い位置に設置するのが好ましい。また、液面から500mmまでの深さであれば、逆流してくる随伴流の速度をより緩和し、分散させ、液面揺れの大きさを抑制することができより好ましい。また、走行する糸条2と横整流板8を構成する板との適正な距離を保ち、逆流してくる随伴流の速度をより緩和、分散し、液面揺れを小さくするためには、深さ方向に10mm以上200mm以下の位置に設置するのが好ましく、50mm以上150mm以下がさらに好ましい。
【0029】
横整流板8を構成する板と糸条2との最短距離は、双方の接触による繊維のダメージを防ぐため、5mm以上離すのが好ましい。また、横整流板8と糸条2との最短距離が100mm以下であれば、凝固液の液面に向かって逆流してくる随伴流を効果的に緩和、分散させ、液面揺れを小さくすることができるため好ましい。なお、本発明における横整流板8と糸条2との最短距離は、双方の接触を回避し、逆流してくる随伴流を整流する上で、10mm〜50mmとすることがより好ましい。
【0030】
横整流板8を構成する板は、無孔板材であっても良く、多孔板であっても良いが、はね返り流の流れを緩和する点で多孔板が好ましい。多孔板としては、パンチングメタルや金網を用いることが好ましい。
多孔板としてパンチングメタルを用いる場合、無孔の板材に比べて逆流してくる随伴流の速度を緩和、分散できることから、その開口率は5%以上が好ましい。また、開口率が95%以下であれば、パンチングメタルを設置しない場合よりも液面揺れを抑制する効果が生じるため好ましい。更に均一な整流効果をもたらすためには20%以上70%以下の開口率とすることがより好ましい。孔の直径は0.5mm〜50mmの範囲に設定するのがより好ましく、1mm以上10mm以下がさらに好ましい。
【0031】
横整流板8を構成する多孔板として金網を用いる場合、パンチングメタルを用いる場合と同様に、無孔の板材に比べて逆流してくる随伴流の速度を緩和、分散しやすくなる。金網の網目は800メッシュ以下が好ましい。また、2メッシュ以上あれば、金網を設置しない場合よりも液面揺れを抑制する効果が生じる。更に均一な整流効果をもたらすためには10メッシュ以上400メッシュ以下とすることがより好ましく、20メッシュ以上200メッシュ以下がさらに好ましい。
【0032】
横整流板8を構成する多孔板としては、前述のようにパンチングメタル、金網などが挙げられるが、形状保持性を有する多孔材質であればよく、これらに制限されるものではない。横整流板8は、ステンレスに代表される金属やプラスチックなどその材質は限定されない。この横整流板8の厚みは、形状保持性と取扱い性を両立させるため、0.5mm以上30mm以下程度が好ましい。また、横整流板8は凝固浴への取付け及び取り外しを簡便にするため、凝固浴上部から見て2分割の構造にすることもできる。
【0033】
本発明における紡出口金1と糸条引取り側に配される引取側ガイド4との間に配され、凝固浴内を高さ方向に延びる縦整流板9は、
図8〜
図11に示すように、横整流板8を構成する板の外周部の一部から液面まで上方向に延びるか、或いは同じく横整流板8の外周部の一部から液面まで上方向に延びるとともに底面に向けて下方向に延びている。なお、前記縦整流板9が設けられていない横整流板8の外周部の残部は、凝固浴中の方向転換ガイド3によって走行方向が変えられたのち前記引取側ガイド4を経て糸条2が引き取られる方向の外周部を除き、凝固浴槽5内の側壁の内面まで延ばして設置される。
【0034】
また、本発明における縦整流板9は、
図12〜
図15に示すように、口金から下方に紡出される糸条2の紡出方向に概ね並行して、糸条2を取り囲むように設置され、横整流板8である板の外周部から液面まで上方向に延び、或いは横整流板8の外周部から液面まで上方向に延びるとともに、底面に向けて下方向に延びている。
【0035】
前記縦整流板9として、パンチングメタルを用いる場合、引取側ガイド4に向かう随伴流やその他の液面揺れ要因の発現を抑制し、整流効果をもたらすためには5%以上95%以下の開口率とすることが好ましい。更に均一な整流効果を得るためには20%以上70%以下の開口率がより好ましい。孔の直径は0.5mm以上50mm以下が好ましく、1mm以上10mm以下がさらに好ましい。
【0036】
また、前記縦整流板9として、金網を用いる場合、パンチングメタルを用いる場合と同様に、引取り側ガイドに向かう随伴流やその他の液面揺れ要因の発現を抑制し、整流効果をもたらすためには2メッシュ以上800メッシュ以下であることが望ましい。更に均一な整流効果を得るためには10メッシュ以上400メッシュ以下がより好ましく、20メッシュ以上200メッシュ以下がさらに好ましい。
【0037】
前記縦整流板9は多孔材質であっても無孔板材であってもよい。多孔材質としては、金網、パンチングメタルなどが挙げられるが、形状保持性を有する多孔材質からなる板材又は筒状部材であればよく、これらに制限されるものではない。板材及び筒状部材は、金属、プラスチックなどその材質は限定されない。また、例えば前記縦整流板9の上半分を板状部材として、下半分を金網としたり、或いは上半分をパンチングメタル、下半分を板状部材にするなど、その構成は限定されない。前記縦整流板9の凝固浴槽5の上方から見た断面形状としては、円形断面や楕円断面、円弧断面でもよく、多角形断面でもよい。
【0038】
紡出口金1の直下から下方への紡出糸条の走行に伴う随伴流は、凝固浴槽5の底面ではね返り、凝固浴槽5の側壁内面に沿って、紡出糸条の前記走行方向と反対方向、つまり凝固浴の液面に向かって逆流してくる。この流れが強いと液面揺れが発生し、単糸切れや単糸同士の接着などのトラブルが発生する。これを抑制するため、前記横整流板8を設置することにより、紡出糸条2の紡出方向と反対方向に上昇してくる液流の速さが緩和、分散され、従来のように縦整流板だけを配する場合に比して、液面揺れの抑制に大きな効果をもたらす。また、横整流板と縦整流板を組み合わせることで、糸条2の走行に伴う随伴流以外の液面揺れ要因、例えば引取側ガイド4の方向からの液面揺れなども抑制しやすくなるためさらに効果的である。
【0039】
本発明の乾湿式紡糸装置を用いることで、凝固浴槽の液面揺れが小さくなり、単繊維間の接着が少ない合成繊維を紡糸することが可能である。
特に、1つのノズルパックで使用するノズルの孔数を多くすると、液面揺れが大きくなるので、ノズル孔数が多いノズルを使用する際に効果的である。孔数は、5000以下が好ましく、4000以下が更に好ましい。
5000以下であれば、液面揺れを小さくできやすくなる。
孔数の下限は特に制限は無いが、孔数が2500以上であれば、液面揺れが大きくなるため、本発明の乾湿式紡糸装置が好適に用いることができる。
次に、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
【0040】
(液面揺れの評価)
凝固液面を目視で観察し、糸条が凝固液に入る近傍の液面の揺れを評価した。
◎:液面揺れが非常に小さい、○:液面揺れが小さい、×:液面揺れが大きい。
【0041】
(電子顕微鏡による単繊維接着の有無)
電子顕微鏡による観察は、延伸糸として得られた繊維束断面を走査電子顕微鏡(XL−20、フィリップス エレクトロン オプティックス社製)で1000倍に拡大して観察、接着の有無を確認した。なお接着の有無を確認した単繊維本数は400本であった。
【0042】
(分散テストによる単繊維接着数)
分散テストは、3mmの長さにカットした単繊維数が3000本の繊維束を、アセトンが200ml入ったビーカーに入れて10分間マグネットスターラーにて攪拌し、その後、下部に黒紙を敷いたガラスシャーレに移液して上方からライトを当てて接着糸を数えた。
【0043】
(数値解析による凝固液面最大流速)
数値解析ツール(メーカー:アンシス・ジャパン株式会社、解析ソフト:FLUENT)を用い、凝固浴中の凝固糸の流動状態について定常流体解析を行った。
【0044】
[実施例1]
アクリロニトリル96質量%、メタクリル酸1質量%、アクリル酸メチル3質量%、からなる極限粘度〔η〕1.8の重合体を、ジメチルアセトアミドに溶解し、重合体の濃度が23質量%の紡糸原液を調製した。この紡糸原液を20μおよび5μのフィルターで濾過し、70℃に保持させて、直径0.15mm、孔数3000の口金、
図12及び
図13に示す装置を用いて乾湿式紡糸法により紡出し凝固糸を得た。凝固浴の組成はジメチルアセトアミド/水=78/22(質量%)、温度15℃、ノズル面と凝固浴の距離は4mmとし、紡糸原液を凝固浴に導入した。
【0045】
得られた凝固糸を空中で延伸し、次いで熱水中で延伸洗浄を行い、シリコーン系油剤処理を施し工程糸とした。次に工程糸を乾燥させ、更に加熱ロールにて乾熱延伸を行い、全延伸倍率を9倍として、単繊維繊度0.9dtex、3000フィラメントの炭素繊維製造用のアクリル系前駆体繊維束を得た。なお、横整流板の液面からの深さは50mm、走行糸条の外周面と横整流板との距離は30mm、横整流板の材質は、関西金網(株)製の金網(30メッシュ、繊径0.18mm、網目0.67mm、材質:SUS304)とした。横整流板の横幅寸法は広いところで100mm、狭いところで10mmとした。縦整流板は上半分を材質SUS304、厚さ2mmの板、下半分を関西金網(株)製の金網(30メッシュ、線径0.18mm、網目0.67mm、材質:SUS304)とした。
このときの凝固液面の揺れの状態及び延伸糸として得られた繊維束断面の電子顕微鏡による観察と分散テストとで単繊維接着の有無について評価した結果と、数値解析ツールにより凝固液面の最大流速を解析結果を表1に示す。
数値解析による凝固浴液面の最大流速は8cm/秒であった。
【0046】
[実施例2]
図14及び
図15に示すように、横整流板の外周から凝固浴槽の底面に向けて下方向に延びる縦整流板を設置していない以外は、実施例1と同様の条件にて紡糸原液を調製し、同じ操作により紡糸した。なお、縦整流板の材質は、関西金網(株)製の金網(14メッシュ、線径0.29mm、網目1.52mm、材質:SUS304)とした。凝固液面の揺れの状態及び延伸糸として得られた繊維束断面の電子顕微鏡による観察と分散テストとで単繊維接着の有無について評価した結果を表1に示す。
また、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は9cm/秒であった。
【0047】
[実施例3]
図8及び
図9に示すように、横整流板の液面からの深さは100mm、走行糸条外周面と横整流板との距離は35mm、横整流板の材質は、関西金網(株)製の金網(120メッシュ、線径0.08mm、網目0.132mm、材質:SUS304)とした。口金と引取側ガイドとの間の縦整流板の材質は、全面を関西金網(株)製の金網(30メッシュ、線径0.18mm、網目0.67mm、材質:SUS304)とした以外は、実施例1と同様の条件にて紡糸原液を調製し、同じ操作にて紡糸した。凝固液面の揺れの状態及び延伸糸として得られた繊維束断面の電子顕微鏡による観察と分散テストとで単繊維接着の有無について評価した結果を表1に示す。
また、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は9cm/秒であった。
【0048】
[実施例4]
図10及び
図11に示すように、横整流板の外周から液面上まで上方向に延ばした引取り側ガイドと口金との間の縦整流板を設置した以外は、実施例3と同様に紡糸原液を調製し、同じ操作により紡糸した。なお、縦整流板は、材質SUS304、厚さ2mmの板とした。凝固液面の揺れの状態及び延伸糸として得られた繊維束断面の電子顕微鏡による観察と分散テストとで単繊維接着の有無について評価した結果を表1に示す。
また、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は10cm/秒であった。
【0049】
[実施例5]
図1及び
図2に示すように、縦整流板を設置せずに、横整流板だけを液面からの深さ100mmの位置に設置した。横整流板の材質は、関西金網(株)製の金網(30メッシュ、線径0.18mm、網目0.67mm、材質:SUS304)として実施例1と同様に紡糸原液を調製し、同じ操作にて紡糸した。凝固液面の揺れの状態及び延伸糸として得られた繊維束断面の電子顕微鏡による観察と分散テストとで単繊維接着の有無について評価した結果を表1に示す。
また、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は12cm/秒であった。
【0050】
[実施例6]
図3及び
図4に示すように、横整流板を液面からの深さ100mmの位置に設置した。横整流板の材質は、関西金網(株)製の金網(20メッシュ、線径0.25mm、網目1.02mm、材質:SUS304)を使い、実施例1と同様に紡糸原液を調製し、同じ操作にて紡糸した。凝固液面の揺れの状態及び延伸糸として得られた繊維束断面の電子顕微鏡による観察と分散テストとで単繊維接着の有無について評価した結果を表1に示す。
また、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は13cm/秒であった。
【0051】
[実施例7]
図16及び
図17に示すように、横整流板及び縦整流板を設置した。横整流板の液面からの深さは100mm、走行糸条外周面と横整流板との距離は30〜50mm、横整流板の材質は、関西金網(株)製の金網(30メッシュ、線径0.18mm、網目0.67mm、材質:SUS304)とした。口金と引取り側ガイドとの間の縦整流板の材質は、上半分を材質SUS304、厚さ2mmの板、下半分を関西金網(株)製の金網(30メッシュ、線径0.18mm、網目0.67mm、材質:SUS304)として、実施例1と同様に紡糸原液を調製し、同じ操作にて紡糸した。凝固液面の揺れの状態及び延伸糸として得られた繊維束断面の電子顕微鏡による観察と分散テストとで単繊維接着の有無について評価した結果を表1に示す。
また、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は9cm/秒であった。
【0052】
[実施例8]
図18及び
図19に示すように、横整流板及び縦整流板を設置した。横整流板の液面からの深さは100mm、走行糸条外周面と横整流板との距離は50〜70mm、横整流板の材質は、関西金網(株)製の金網(30メッシュ、線径0.18mm、網目0.67mm、材質:SUS304)とした。口金と引取り側ガイドとの間の縦整流板の材質は、上半分を材質SUS304、厚さ2mmの板、下半分を関西金網(株)製の金網(30メッシュ、線径0.18mm、網目0.67mm、材質:SUS304)として実施例1と同様に紡糸原液を調製し、同じ操作にて紡糸した。凝固液面の揺れの状態及び延伸糸として得られた繊維束断面の電子顕微鏡による観察と分散テストとで単繊維接着の有無について評価した結果を表1に示す。
また、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は10cm/秒であった。
【0053】
[実施例9]
図20及び
図21に示すように、横整流板及び縦整流板を設置した。横整流板の液面からの深さは100mm、走行糸条外周面と横整流板との距離は50〜70mm、横整流板の材質は、関西金網(株)製の金網(30メッシュ、線径0.18mm、網目0.67mm、材質:SUS304)とした。口金と引取り側ガイドとの間の縦整流板の材質は、材質SUS304、厚さ2mmの板として、実施例1と同様に紡糸原液を調製して、同じ操作にて紡糸した。凝固液面の揺れの状態及び延伸糸として得られた繊維束断面の電子顕微鏡による観察と分散テストとで単繊維接着の有無について評価した結果を表1に示す。
また、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は10cm/秒であった。
【0054】
[比較例1]
図22及び
図23に示すように、凝固浴槽に横整流板を設置せずに、材質SUS304、厚さ2mmの4角筒状の縦整流板を設置して、実施例1と同様に紡糸原液を調製し、同じ操作にて紡糸した。
凝固液面の揺れの状態及び延伸糸として得られた繊維束断面の電子顕微鏡による観察と分散テストとで単繊維接着の有無について評価した結果を表1に示す。
また、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は17cm/秒であった。
【0055】
[比較例2]
図24及び
図25に示すように、凝固浴槽に横整流板を設置せずに、口金と引取り側ガイドとの間に縦整流板を設置した。縦整流板の材質は、全面を関西金網(株)製の金網(30メッシュ、線径0.18mm、網目0.67mm、材質:SUS304)とし、実施例1と同様に紡糸原液を調製し、同じ操作にて紡糸した。
凝固液面の揺れの状態及び延伸糸として得られた繊維束断面の電子顕微鏡による観察と分散テストとで単繊維接着の有無について評価した結果を表1に示す。
また、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は18cm/秒であった。
【0056】
[実施例10]
図5に示すように、横整流板の液面からの深さは100mm、横整流板の材質及び横幅寸法は実施例1のものと同じであり、横整流板と糸条との距離を30mm、横整流板が走行糸条を取り囲む範囲を90%として、実施例1と同様に紡糸原液を調製して、同じ操作にて紡糸し、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は13cm/秒であった。
【0057】
[実施例11]
図6に示すように、横整流板の液面からの深さは100mm、横整流板の材質及び横幅寸法は実施例1のものと同じであり、横整流板と糸条との距離を30mm、横整流板が走行糸条を取り囲む範囲を80%として、実施例1と同様に紡糸原液を調製して、同じ操作にて紡糸し、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は14cm/秒であった。
【0058】
[実施例12]
図7に示すように、横整流板の液面からの深さは100mm、横整流板の材質及び横幅寸法は実施例1のものと同じであり、横整流板と糸条との距離を30mm、横整流板が走行糸条を取り囲む範囲を16分割しその50%の割合に横整流板を設置して、実施例1と同様に紡糸原液を調製して、同じ操作にて紡糸し、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は13cm/秒であった。
【0059】
[比較例3]
図26に示すように、横整流板の液面からの深さは100mm、横整流板の材質及び横幅寸法は実施例1のものと同じであり、横整流板と糸条との距離を30mm、横整流板が走行糸条を取り囲む範囲を50%として、実施例1と同様に紡糸原液を調製して、同じ操作にて紡糸し、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は26cm/秒であり、電子顕微鏡観察及び分散テストによる糸接着数が多かった比較例1の数値解析結果(17cm/秒)よりも悪化した。
【0060】
[実施例13]
図27に示すように、横整流板の液面からの深さは100mm、横整流板の材質及び横幅寸法は実施例1のものと同じであり、横整流板と糸条との距離を30mm、横整流板の取り付け角度を上に凸45度として、実施例1と同様に紡糸原液を調製して、同じ操作にて紡糸し、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は10cm/秒であった。
【0061】
[実施例14]
図28に示すように、横整流板の液面からの深さは100mm、横整流板の材質及び横幅寸法は実施例1のものと同じであり、横整流板と糸条との距離を30mm、横整流板の取り付け角度を上に凸75度として、実施例1と同様に紡糸原液を調製して、同じ操作にて紡糸し、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は12cm/秒であった。
【0062】
[比較例4]
図29に示すように、横整流板の液面からの深さは100mm、横整流板の材質及び横幅寸法は実施例1のものと同じであり、横整流板と糸条との距離を30mm、横整流板の取り付け角度を上に凸80度として、実施例1と同様に紡糸原液を調製して、同じ操作にて紡糸し、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は17cm/秒であった。
【0063】
[実施例15]
図30に示すように、横整流板の液面からの深さは100mm、横整流板の材質及び横幅寸法は実施例1のものと同じであり、横整流板と糸条との距離を30mm、横整流板の取り付け角度を下に凸45度として、実施例1と同様に紡糸原液を調製して、同じ操作にて紡糸し、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は12cm/秒であった。
【0064】
[実施例16]
図31に示すように、横整流板の液面からの深さは100mm、横整流板の材質及び横幅寸法は実施例1のものと同じであり、横整流板と糸条との距離を30mm、横整流板の取り付け角度を下に凸75度として、実施例1と同様に紡糸原液を調製して、同じ操作にて紡糸し、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は13cm/秒であった。
【0065】
[比較例5]
図32に示すように、横整流板の液面からの深さは100mm、横整流板の材質及び横幅寸法は実施例1のものと同じであり、横整流板と糸条との距離を30mm、横整流板の取り付け角度を下に凸80度として、実施例1と同様に紡糸原液を調製して、同じ操作にて紡糸し、実施例1と同様の数値解析を行った結果、凝固浴液面の最大流速は20cm/秒であった。