特許第5692313号(P5692313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5692313鉱石スラリー製造工程におけるシックナー装置及びその固体成分率制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692313
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】鉱石スラリー製造工程におけるシックナー装置及びその固体成分率制御方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 23/00 20060101AFI20150312BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   C22B23/00 101
   C22B1/00 101
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-181596(P2013-181596)
(22)【出願日】2013年9月2日
(62)【分割の表示】特願2012-20060(P2012-20060)の分割
【原出願日】2012年2月1日
(65)【公開番号】特開2014-37632(P2014-37632A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2013年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 修司
(72)【発明者】
【氏名】西川 勲
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−231928(JP,A)
【文献】 特開平06−116660(JP,A)
【文献】 特開2010−095788(JP,A)
【文献】 特表平11−509465(JP,A)
【文献】 特開2011−225956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 23/00
C22B 1/00
B01D 21/24
B01D 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱石スラリーの製造工程において使用されるシックナー装置であって、
複数種類の鉱石をブレンドしたSiを含有する第1の原料鉱石スラリーをシックニングして目的とする39%〜42%の固体成分率よりも低い第1の固体成分率の鉱石スラリーを得る第1のシックナーと、
複数種類の鉱石をブレンドしたSiを含有する第2の原料鉱石スラリーをシックニングして目的とする39%〜42%の固体成分率よりも高い第2の固体成分率の鉱石スラリーを得る第2のシックナーと、
上記第1のシックナーにより得られる第1の固体成分率の鉱石スラリーと上記第2のシックナーにより得られる第2の固体成分率の鉱石スラリーを混合して送出する鉱石スラリー混合部と、
上記鉱石スラリー混合部により混合される上記第1の固体成分率の鉱石スラリーと上記第2の固体成分率の鉱石スラリーの混合比率を制御する混合比率制御部と
を備え、
上記混合比率制御部により上記鉱石スラリー混合部における上記第1の固体成分率の鉱石スラリーと上記第2の固体成分率の鉱石スラリーの混合比率を上記目的とする39%〜42%の固体成分率の鉱石スラリーが得られる混合比率に制御して、上記鉱石スラリー混合部から、上記目的とする39%〜42%の固体成分率の鉱石スラリーを送出することを特徴とするシックナー装置。
【請求項2】
上記第1の原料鉱石スラリー中のSi品位が4.0%〜6.0%で、固体成分率が38.8〜42.1%であり、上記第2の原料鉱石スラリーのSi品位が7.0%〜8.0%で、固体成分率が41.3〜42.3%であり、
上記混合比率制御部において、上記第1の固体成分率の鉱石スラリーと上記第2の固体成分率の鉱石スラリーの混合比率が25:75〜50:50となるように制御することを特徴とする請求項1記載のシックナー装置。
【請求項3】
鉱石スラリー製造工程における鉱石スラリーの固体成分率制御方法であって、
複数種類の鉱石をブレンドしたSiを含有する第1の原料鉱石スラリーを第1のシックナーによりシックニングして目的とする39%〜42%の固体成分率よりも低い第1の固体成分率の鉱石スラリーを得るとともに、複数種類の鉱石をブレンドしたSiを含有する第2の原料鉱石スラリーを第2のシックナーによりシックニングして目的とする39%〜42%の固体成分率よりも高い第2の固体成分率の鉱石スラリーを得て、
上記第1の固体成分率と上記第2の固体成分率に基づいて、上記第1の固体成分率の鉱石スラリーと上記第2の固体成分率の鉱石スラリーの混合比率を上記目的とする39%〜42%の固体成分率の鉱石スラリーが得られる混合比率に制御して、
上記第1の固体成分率の鉱石スラリーと上記第2の固体成分率の鉱石スラリーを混合することにより、上記目的とする39%〜42%の固体成分率の鉱石スラリーを得ることを特徴とする鉱石スラリーの固体成分率制御方法。
【請求項4】
上記第1の原料鉱石スラリー中のSi品位が4.0%〜6.0%で、固体成分率が38.8〜42.1%であり、上記第2の原料鉱石スラリーのSi品位が7.0%〜8.0%で、固体成分率が41.3〜42.3%であり、
上記第1の固体成分率の鉱石スラリーと上記第2の固体成分率の鉱石スラリーの混合比率を25:75〜50:50の範囲で制御することを特徴とする請求項3記載の鉱石スラリーの固体成分率制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱石スラリー製造工程におけるシックナー装置及びその固体成分率制御方法に関し、特に、低品位ニッケル酸化鉱石からニッケルを回収する高温加圧硫酸浸出に基づく湿式製錬方法における高温加圧硫酸浸出工程に送るニッケル酸化鉱石のスラリー製造工程のその固体成分率制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、非鉄金属を含有する鉱石から形成されるスラリーに添加剤を添加し、その後、スラリーを沈降濃縮して回収する手段として、一般的にシックナーが用いられている。シックナーの構造としては、スラリー及び添加剤が供給されるシックナー本体内に、駆動部と回転軸で接続されたレーキのゆっくりした回転により、沈降したスラリーを濃縮する沈降濃縮部を備える形式のものが使用されている。ここで、シックナーでは、例えば、スラリーの沈降性を向上させるため、添加剤として凝集剤を用いてフロックを形成させること、或いはスラリーを中和処理するため、添加剤として中和剤を用いて沈殿生成を促進させること等がなされる。
【0003】
また、リモナイト鉱等に代表される低ニッケル含有量のニッケル酸化鉱石からニッケル、コバルト等の有価金属を回収する湿式製錬法として、硫酸を用いた高圧酸浸出法(HPAL(High Pressure Acid Leaching)の硫酸浸出法が行なわれている。
【0004】
ニッケル・コバルト混合硫化物を得るための高圧酸浸出法では、例えば、図5に示すように、前処理工程(1)と、浸出工程(2)と、固液分離工程(3)と、中和工程(4)と、脱亜鉛工程(5)と、硫化工程(6)と、無害化工程(7)とを含む(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
前処理工程(1)では、ニッケル酸化鉱石を解砕分級してスラリーとする。
【0006】
浸出工程(2)では、前処理工程(1)で得られたスラリーに硫酸を添加し、220〜280℃で攪拌して高温加圧酸浸出し、浸出スラリーを得る。
【0007】
固液分離工程(3)では、浸出工程(2)で得られた浸出スラリーを固液分離して、ニッケル及びコバルトを含む浸出液(以下、「粗硫酸ニッケル水溶液」という。)と浸出残渣とを得る。
【0008】
中和工程(4)では、固液分離工程(3)で得られた粗硫酸ニッケル水溶液を中和する。
【0009】
脱亜鉛工程(5)では、中和工程(4)で中和した粗硫酸ニッケル水溶液に硫化水素ガスを添加して亜鉛を硫化亜鉛として沈殿除去する。
【0010】
硫化工程(6)では、脱亜鉛工程(5)で得られた脱亜鉛終液に硫化水素ガスを添加してニッケル・コバルト複合硫化物とニッケル貧液を得る。無害化工程(7)では、固液分離工程(3)で発生した浸出残渣と、硫化工程(6)で発生したニッケル貧液とを無害化する。
【0011】
ここで、低品位ニッケル酸化鉱石からニッケルを回収する高温加圧硫酸浸出に基づく湿式製錬方法において、高温加圧硫酸浸出工程に送られる鉱石は、湿式篩を使用して、所定の大きさ以下に分類され、スラリー化される。また、通常、高温加圧硫酸浸出工程に送られる鉱石スラリーは、高温加圧硫酸浸出工程における酸消費量、得られる浸出液のニッケル濃度及びその他の不純物濃度が所定の割合となる様に、数種類のニッケル酸化鉱石をブレンドして作られる。
【0012】
この時点で得られる鉱石スラリーのSolid%は、10〜20%と低いため、このまま、高温加圧硫酸浸出工程に送ると高温加圧浸出工程後の浸出液のニッケル濃度が低く、同じニッケル量を処理するための液量が多くなり効率的にニッケルを回収出来ない問題が生じる。そこで、高温加圧硫酸浸出工程に送られる鉱石スラリーは、高温加圧硫酸浸出工程への単位時間当たりのニッケル通過量を増加させるために、シックナーを利用して、鉱石スラリーのSolid%を上げてから高温加圧硫酸浸出工程へ送られる。ここで、鉱石スラリーのSolid%とは、鉱石スラリー中の固体分(鉱石)の重量%、すなわち、固体成分率を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−350766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述の如く、低品位ニッケル酸化鉱石からニッケルを回収する高温加圧硫酸浸出に基づく湿式製錬方法では、高温加圧硫酸浸出工程に送られる鉱石スラリーは、高温加圧硫酸浸出工程への単位時間当たりのニッケル通過量を増加させるために、シックナーを利用して、鉱石スラリーのSolid%を上げてから高温加圧硫酸浸出工程へ送られるが、Solid%が高すぎるとスラリーの粘度が上昇し、ポンプ能力律速により送液が困難になる問題や配管閉塞の問題が発生するため、鉱石スラリーのSolid%は、36〜45%望ましくは39〜42%にすることが好ましい。
【0015】
しかしながら、鉱石は鉱石種によりシックニング挙動が異なるため、シックナーから得られるスラリーのSolid%は、ブレンドした鉱石種、ブレンド比率及びシックニングに使用する凝集剤の種類、量、シックナーの形状や大きさ等に依存する。
【0016】
そのために、シックニングに使用するシックナーが一種類の場合は、ブレンドした鉱石種、ブレンド比率等により、Solid%が変動する問題があった。特に、スラリー中のSi品位は、シックナーでのシックニング挙動に相関があるため、スラリー中のSi品位によってスラリーのSolid%が変動してしまう。
【0017】
従来、ブレンドした鉱石種およびその比率に応じて凝集剤添加量を変更することによりSolid%の変動に対応していたが、目的とする所定のSolid%の鉱石スラリーを安定して得られるようにシックニングの操業管理を行うのは、熟練した作業者を以てしても困難であった。
【0018】
そこで、本発明は、上述の如き従来の実情に鑑み案出されたものであって、その目的は、低品位ニッケル酸化鉱石からニッケルを回収する高温加圧硫酸浸出に基づく湿式製錬方法におけるニッケル酸化鉱石のスラリー製造工程において、鉱石種類やブレンド比率に影響されずに、目的とするSolid%の鉱石スラリーを高温加圧浸出工程に送ることができる鉱石スラリー製造工程におけるシックナー装置及びその固体成分率制御方法を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記目的を達成するために、シックナー操業の管理方法について鋭意研究の結果、高温加圧硫酸浸出工程に送るニッケル酸化鉱石のスラリー製造工程において、従来の一種類のシックナーに加えて、従来のシックナーよりシックニング効果の大きいシックナーを用いて、各々のシックナーで所定の固体成分率(Solid%)となった鉱石スラリーを所定の割合で混合することで、目的とする所定の固体成分率(Solid%)の鉱石スラリーを得る方法を見出し、本発明を完成した。
【0021】
すなわち、本発明は、鉱石スラリーの製造工程において使用されるシックナー装置であって、複数種類の鉱石をブレンドしたSiを含有する第1の原料鉱石スラリーをシックニングして目的とする39%〜42%の固体成分率よりも低い第1の固体成分率の鉱石スラリーを得る第1のシックナーと、複数種類の鉱石をブレンドしたSiを含有する第2の原料鉱石スラリーを目的とする39%〜42%の固体成分率よりも高い第2の固体成分率の鉱石スラリーを得うる第2のシックナーと、上記第1のシックナーにより得られる第1の固体成分率の鉱石スラリーと上記第2のシックナーにより得られる第2の固体成分率の鉱石スラリーを混合して送出する鉱石スラリー混合部と、上記鉱石スラリー混合部により混合される上記第1の固体成分率の鉱石スラリーと上記第2の固体成分率の鉱石スラリーの混合比率を制御する混合比率制御部とを備え、上記混合比率制御部により上記鉱石スラリー混合部における上記第1の固体成分率の鉱石スラリーと上記第2の固体成分率の鉱石スラリーの混合比率を上記目的とする39%〜42%の固体成分率の鉱石スラリーが得られる混合比率に制御して、上記鉱石スラリー混合部から上記目的とする39%〜42%の固体成分率の鉱石スラリーを送出することを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、鉱石スラリー製造工程における鉱石スラリーの固体成分率制御方法であって、複数種類の鉱石をブレンドしたSiを含有する第1の原料鉱石スラリーを第1のシックナーによりシックニングして目的とする39%〜42%の固体成分率よりも低い第1の固体成分率の鉱石スラリーを得るとともに、複数種類の鉱石をブレンドしたSiを含有する第2の上記原料鉱石スラリーを第2のシックナーによりシックニングして目的とする39%〜42%の固体成分率よりも高い第2の固体成分率の鉱石スラリーを得て、上記第1の固体成分率と上記第2の固体成分率に基づいて、上記第1の固体成分率の鉱石スラリーと上記第2の固体成分率の鉱石スラリーの混合比率を上記目的とする39%〜42%の固体成分率の鉱石スラリーが得られる混合比率に制御して、上記第1の固体成分率の鉱石スラリーと上記第2の固体成分率の鉱石スラリーを混合することにより、上記目的とする39%〜42%の固体成分率の鉱石スラリーを得ることを特徴とする。
【0023】
本発明において、上記鉱石スラリー製造工程は、例えば、第1の原料鉱石スラリー中のSi品位が4.0%〜6.0%で、固体成分率が38.8〜42.1%であり、第2の原料鉱石スラリーのSi品位が7.0%〜8.0%で、固体成分率が41.3〜42.3%であり、混合比率制御部において、第1の固体成分率の鉱石スラリーと上記第2の固体成分率の鉱石スラリーの混合比率が25:75〜50:50となるように制御して、上記目的とする固体成分率が36〜45%のニッケル酸化鉱石スラリーを得るものとすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、複数種類の鉱石をブレンドしたSiを含有する第1の原料鉱石スラリーから第1のシックナーにより目的とする39%〜42%の固体成分率よりも低い第1の固体成分率の鉱石スラリーを得るとともに、複数種類の鉱石をブレンドしたSiを含有する第2の原料鉱石スラリーから第2のシックナーにより目的とする39%〜42%の固体成分率よりも高い第2の固体成分率の鉱石スラリーを得て、上記第1の固体成分率と上記第2の固体成分率に基づいて、上記第1の固体成分率の鉱石スラリーと上記第2の固体成分率の鉱石スラリーの混合比率を制御して、上記第1の固体成分率の鉱石スラリーと上記第2の固体成分率の鉱石スラリーを混合することにより、上記目的とする39%〜42%の固体成分率の鉱石スラリーを得ることができ、鉱石種類やブレンド比率、Siの品位に影響されず目的とする固体成分率の鉱石スラリーを得ることができる。
【0025】
本発明によれば、低品位ニッケル酸化鉱石からニッケルを回収する高温加圧硫酸浸出に基づく湿式製錬方法におけるニッケル酸化鉱石のスラリー製造工程において、鉱石種類やブレンド比率に影響されずに、目的とする固体成分率の鉱石スラリーを高温加圧浸出工程に送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明を適用したシックナー装置の構成を模式的に示す断面図である。
図2】上記シックナー装置を用いたシックニング処理の手順を示すフローチャートである。
図3】3種類のシックナー(A、B、C)における鉱石スラリー中のSi品位とSolid%の関係を調査した結果を示す図である。
図4】シックナーAのみとシックニング効果の大きいシックナーBのみを用いて得られた鉱石スラリー中のSi品位とSolid%の関係及び上記シックナーAとシックナーBの2種類のシックナーを用いて得られる鉱石スラリーを所定の比率で混合した鉱石スラリー中のSi品位とSolid%の関係を示す図である。
図5】ニッケル・コバルト混合硫化物を得るための高圧酸浸出法の工程を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
本発明に係る鉱石スラリー製造工程における鉱石スラリーの固体成分率制御方法は、例えば図1に示すような構成のシックナー装置100により実施される。
【0029】
本発明に係る鉱石スラリー製造工程における鉱石スラリーの固体成分率制御方法では、複数種類の鉱石をブレンドした第1の原料鉱石スラリーA0を第1のシックナー10Aによりシックニングして目的とする所定の固体成分率よりも低い第1の固体成分率の鉱石スラリーA1を得るとともに、複数種類の鉱石をブレンドした第2の原料鉱石スラリーB0を第2のシックナー10Bによりシックニングして目的とする所定の固体成分率よりも高い第2の固体成分率の鉱石スラリーB1を得て、上記第1の固体成分率と上記第2の固体成分率に基づいて、上記第1の固体成分率の鉱石スラリーA1と上記第2の固体成分率の鉱石スラリーB1の混合比率を上記目的とする所定の固体成分率の鉱石スラリーCが得られる混合比率に制御して、上記第1の固体成分率の鉱石スラリーA1と上記第2の固体成分率の鉱石スラリーB1を混合することにより、上記目的とする所定の固体成分率の鉱石スラリーCを得る。
【0030】
このシックナー装置100は、高温加圧硫酸浸出工程に送るニッケル酸化鉱石のスラリー製造工程において使用されるもので、複数種類の鉱石をブレンドした第1の原料鉱石スラリーA0が供給される第1のシックナー10Aと、複数種類の鉱石をブレンドした第2の原料鉱石スラリーB0が供給される第2のシックナー10Bと、上記第1のシックナー10Aにより第1の原料鉱石スラリーA0をシックニングして得られる第1の鉱石スラリーA1を上記第1のシックナー10Aから抜き取る第1の抜取りポンプ21Aと、上記第2のシックナー10Bにより第2の原料鉱石スラリーB0をシックニングして得られる第2の鉱石スラリーB1を上記第2のシックナー10Bから抜き取る第2の抜取りポンプ21Bと、上記第1の抜取りポンプ21Aと第2の抜取りポンプ21Bの動作を制御する制御部20と、上記第1のシックナー10Aから上記第1の抜取りポンプ21Aを介して取り出される第1の鉱石スラリーA1と上記第1のシックナー10Bから上記第2の抜取りポンプ21Bを介して取り出される第2の鉱石スラリーB1が供給される混合槽30とを備える。そして、このシックナー装置100は、上記混合槽30から第3の抜取りポンプ31を介して取り出される第3の鉱石スラリーCを高温加圧硫酸浸出工程に送るようになっている。
【0031】
このシックナー装置100は、上記第1の抜取りポンプ21Aと第2の抜取りポンプ21Bの動作を上記制御部20により制御して、上記混合槽30に供給する第1の鉱石スラリーA1と第2の鉱石スラリーB1の供給量を制御することにより、上記混合槽30における上記第1の鉱石スラリーA1と第2の鉱石スラリーB1の混合比率を制御することができるようになっている。
【0032】
上記第1のシックナー10Aは、円筒状外枠11Aと中心に向かって次第に低くなった円錐状の底部12Aとからなるシックナー本体13Aを備える。上記シックナー本体13Aの内部には上記円錐状の底部12Aの内面に沿ってレーキ14Aが配置されている。上記レーキ14Aは、その回転軸に接続されているレーキ回転モーター15Aにより回転駆動されるようになっている。
【0033】
この第1のシックナー10Aには、沈降濃縮に付す第1の原料鉱石スラリーA0、凝集剤および希釈水が供給される。そして、上記第1のシックナー10A内に供給された第1の原料鉱石スラリーA0は、凝集剤および希釈水との混合状態で沈降して凝集することにより、上部の上澄み液部分と下部の沈降濃縮部を形成し、上記第1のシックナー10Aの最下部に設けられているスラリー回収口から目的とする所定の固体成分率よりも低い第1の固体成分率の鉱石スラリーA1として回収される。上記レーキ14Aは、その回転軸に接続されているレーキ回転モーター15Aによってゆっくりと回転されることにより、沈降濃縮部でスラリーの沈降濃縮をすすめ、一様な堆積状態を確保する。上記第1のシックナー10Aから回収される第1の固体成分率の鉱石スラリーA1は、上記第1の抜取りポンプ21Aを介して上記混合槽30に供給される。
【0034】
また、上記第2のシックナー10Bは、円筒状外枠11Bと中心に向かって次第に低くなった円錐状の底部12Bとからなるシックナー本体13Bを備える。上記シックナー本体13Bの内部には上記円錐状の底部12Bの内面に沿ってレーキ14Bが配置されている。上記レーキ14Aは、その回転軸に接続されているレーキ回転モーター15Bにより回転駆動されるようになっている。
【0035】
この第2のシックナー10Bには、沈降濃縮に付す第2の原料鉱石スラリーB0、凝集剤および希釈水が供給される。そして、上記第2のシックナー10B内に供給された第2の原料鉱石スラリーB0は、凝集剤および希釈水との混合状態で沈降して凝集することにより、上部の上澄み液部分と下部の沈降濃縮部を形成し、上記第2のシックナー10Bの最下部に設けられているスラリー回収口から目的とする所定の固体成分率よりも高い第2の固体成分率の鉱石スラリーB1として回収される。上記レーキ14Bは、その回転軸に接続されているレーキ回転モーター15Bによってゆっくりと回転されることにより、沈降濃縮部でスラリーの沈降濃縮をすすめ、一様な堆積状態を確保する。上記第2のシックナー10Bから回収される第2の固体成分率の鉱石スラリーB1は、上記第2の抜取りポンプ21Bを介して上記混合槽30に供給される。
【0036】
そして、このシックナー装置100では、上記第1の抜取りポンプ21Aと第2の抜取りポンプ21Bの動作を上記制御部20により制御して、上記混合槽30に供給する第1の鉱石スラリーA1と第2の鉱石スラリーB1の供給量を制御することにより、上記第1の固体成分率の鉱石スラリーA1と上記第2の固体成分率の鉱石スラリーB1の混合比率を上記混合槽30において目的とする第3の固体成分率の鉱石スラリーCが得られる混合比率に制御して、目的とする第3の固体成分率の鉱石スラリーCを生成する。
【0037】
すなわち、上記混合槽30において、上記第1のシックナー10Aから回収される目的とする所定の固体成分率よりも低い第1の固体成分率の鉱石スラリーA1と上記第2のシックナー10Bから回収される所定の固体成分率よりも高い第2の固体成分率の鉱石スラリーB1を混合することにより、目的とする第3の固体成分率の鉱石スラリーCを生成する。そして、上記混合槽30から第3の抜取りポンプ31を介して取り出される目的とする第3の固体成分率の鉱石スラリーCを高温加圧硫酸浸出工程に送る。
【0038】
このシックナー装置100を用いたシックニング処理は、図2のフローチャートに示す手順に従って行われる。
【0039】
すなわち、第1の鉱石スラリーブレンド処理(S1)では、複数種類の鉱石をブレンドして第1の原料鉱石スラリーA0を生成し、生成した第1の原料鉱石スラリーA0を第1のシックナー10Aに供給し、第1のシックナー10Aによるシックニング処理(S2)によって、目的とする所定の固体成分率よりも低い第1の固体成分率の鉱石スラリーA1を得る。
【0040】
また、第2の鉱石スラリーブレンド処理(S3)では、複数種類の鉱石をブレンドして第2の原料鉱石スラリーB0を生成し、生成した第2の原料鉱石スラリーB0を第2のシックナー10Bに供給し、第2のシックナーB1によるシックニング処理(S4)によって、目的とする所定の固体成分率よりも高い第2の固体成分率の鉱石スラリーB1を得る。
【0041】
そして、上記混合槽30において、上記第1の固体成分率の鉱石スラリーA1と上記第2の固体成分率の鉱石スラリーB1を混合するブレンド処理(S5)を行うことにより、上記目的とする所定の固体成分率の鉱石スラリーCを得て、上記目的とする所定の固体成分率の鉱石スラリーCを上記混合槽30から送出するブレンド済み鉱石スラリー送出処理(S5)を行う。
【0042】
なお、上記第1の固体成分率の鉱石スラリーA1と上記第2の固体成分率の鉱石スラリーB1から上記目的とする第3の固体成分率の鉱石スラリーCを得る混合比率は、上記第1の固体成分率と上記第2の固体成分率に基づいて決定することができ、上記第1の抜取りポンプ21Aと第2の抜取りポンプ21Bの動作を上記制御部20により制御して、上記混合槽30に供給する第1の鉱石スラリーA1と第2の鉱石スラリーB1の供給量を制御することにより、上記第1の固体成分率の鉱石スラリーA1と上記第2の固体成分率の鉱石スラリーB1の混合比率を上記混合槽30において目的とする第3の固体成分率の鉱石スラリーCが得られる混合比率に制御される。
【0043】
ここで、このシックナー装置100を用いた鉱石スラリー製造工程は、例えば、高温加圧硫酸浸出工程に送る目的とするニッケル品位、その他の不純物品位にブレンドした2mm以下のニッケル酸化鉱石スラリーの製造工程であって、上記第1の固体成分率のニッケル酸化鉱石スラリーA1と上記第2の固体成分率のニッケル酸化鉱石スラリーB2の混合比率を制御して、上記目的とする固体成分率が36〜45%、好ましくは39〜42%のニッケル酸化鉱石スラリーCを得るものとすることができる。
【実施例】
【0044】
高温加圧硫酸浸出法を用いたニッケル湿式製錬方法に使用される代表的なニッケル酸化鉱石の組成を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
これらのニッケル酸化鉱石は、各々シックナーでのシックニング挙動、高温加圧浸出工程における酸消費量、酸化還元電位(ORP)等が異なるため、鉱石スラリーの組成が、Ni品位が1.0〜1.5程度、Mg+Al品位が、1.5〜4.5%程度、Si品位が3.0〜8.0%程度、C品位が0.12〜0.20%程度となる様にブレンドされる。
【0047】
鉱石スラリー中のMg+Al品位は、高温加圧浸出工程における酸素消費量へ影響を及ぼし、C品位は高温加圧浸出工程のORPに影響を及ぼす。また、鉱石スラリー中のSi品位とシックナーでのシックニング挙動には、強い相関がある。3種類のシックナー(A、B、C)における鉱石スラリー中のSi品位とSolid%の関係を調査した結果を図3に示す。
【0048】
この図3に示すように、鉱石スラリー中のSi品位が高くなる程、得られる鉱石スラリーのSolid%が低くなり、また用いるシックナーの形状や大きさによって、Si品位とSolid%の関係が異なっているのが分かる。シックニングの効果はB、C、Aの順に高いことが分かる。仮に鉱石スラリー中のSi品位が6〜7%となるようにブレンドした鉱石を原料として得られる鉱石スラリーのSolid%は、シックナーAを用いた場合は37〜38%、シックナーBを用いた場合には、42〜44%のSolid%の鉱石スラリーが得られることになる。前述したように高温加圧浸出工程へ送る鉱石スラリーのSolid%は高い方が望ましいが、高すぎると鉱石スラリーの粘度が上昇するため、適正なSolid%(39〜42%)にする必要がある。
【0049】
次に、シックナーAのみとシックニング効果の大きいシックナーBのみを用いて得られた鉱石スラリー中のSi品位とSolid%の関係及び上記シックナーAとシックナーBの2種類のシックナーを使用して、各々で得られる所定のSolid%の鉱石スラリーを所定の比率で混合することにより得られた鉱石スラリー中のSi品位とSolid%の関係を図4に示す。
【0050】
ここで、上記シックナーAとシックナーBの2種類のシックナーは、上記シックナー装置100における第1のシックナー10Aと第2のシックナー10Bに相当している。
【0051】
シックナーAとシックナーBからのスラリーの混合比率、すなわち、上記シックナー装置100における第1のシックナー10Aと第2のシックナー10Bにより得られる第1の鉱石スラリーA1と第2の鉱石スラリーB1の混合比率の決定は、以下のように行った。まず、シックナーAとシックナーBに送る原料鉱石スラリーA0、B0のブレンド比率を決定した後に、各々のシックナーで推定されるSolid%を表2に示される関係から算出した。次に各々のシックナーから得られる鉱石スラリーの混合比率を、目標のSolid%となるように決定した。
【0052】
【表2】
【0053】
具体的には、表3に示すように、混合後の鉱石スラリー中のSolid%が39〜42%となるように、シックナーAとシックナーBの混合比率を決定した。
【0054】
【表3】
【0055】
前述したように、鉱石スラリーCのSolid%は、39〜42%であることが望ましい。図4に示すように、シックナーAのみ及びシックナーBのみを使用して得られた鉱石スラリーのSolid%は、鉱石スラリー中のSi品位上昇に伴い、得られた鉱石スラリーのSolid%は低くなっている。シックナーAのみではSi品位が4.0〜5.5%では、Solid%が39〜42%と最適なSolid%となるが、Si品位が6.0%以上では、Solid%が39%以下に下がってしまう。一方、シックナーBのみでは、Si品位が6.5%以下では、Solid%が42%以上となってしまう。上記シックナー装置100では、Si品位の上昇によらず、ほぼ一定のSolid%(39〜42%)の鉱石スラリーCが得られている。このように、鉱石スラリー中のSi品位の変動によらず、最適なSolid%の鉱石スラリーを得られることは、Ni回収効率の高い操業を行うことで非常に有効である。
【符号の説明】
【0056】
10A 第1のシックナー、10B 第2のシックナー、11A,11B 円筒状外枠、12A,12B 底部、13A,13B シックナー本体、14A,14B レーキ、15A,15Bレーキ回転モーター、21A 第1の抜取りポンプ、21B 第2の抜取りポンプ、20 制御部、30 混合槽、31 第3の抜取りポンプ、100 シックナー装置、A0 第1の原料鉱石スラリー、B0 第2の原料鉱石スラリー、A1 第1の固体成分率の鉱石スラリー、B1 第2の固体成分率の鉱石スラリー、C 所定の固体成分率の鉱石スラリー
図1
図2
図3
図4
図5