特許第5692480号(P5692480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5692480
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】液晶組成物および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/54 20060101AFI20150312BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20150312BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20150312BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20150312BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20150312BHJP
   C09K 19/32 20060101ALI20150312BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20150312BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   C09K19/54 C
   C09K19/30
   C09K19/12
   C09K19/20
   C09K19/14
   C09K19/32
   C09K19/34
   G02F1/13
【請求項の数】12
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2014-548795(P2014-548795)
(86)(22)【出願日】2014年6月9日
(86)【国際出願番号】JP2014065193
【審査請求日】2014年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-133498(P2013-133498)
(32)【優先日】2013年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古里 好優
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 将之
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−224632(JP,A)
【文献】 特開2007−016207(JP,A)
【文献】 特開2007−137921(JP,A)
【文献】 特開2009−167416(JP,A)
【文献】 特開昭60−067587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00−19/60
G02F 1/13
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、負の誘電率異方性を有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物。

式(1)において、R、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から15のアルキルである。
【請求項2】
液晶組成物の重量に基づいて、式(1)で表される化合物の割合が0.005重量%から1重量%の範囲である、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
第一成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1または2に記載の液晶組成物。

式(2)において、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシであり;環Aおよび環Cは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロへキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;環Bは、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−5−メチル−1,4−フェニレン、3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、または7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルであり;ZおよびZは独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;aは、1、2、または3であり、bは、0または1であり、そしてaとbとの和は3以下である。
【請求項4】
第一成分として式(2−1)から式(2−19)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶組成物。


式(2−1)から式(2−19)において、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである。
【請求項5】
液晶組成物の重量に基づいて、第一成分の割合が10重量%から90重量%の範囲である、請求項3または4に記載の液晶組成物。
【請求項6】
第二成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。

式(3)において、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Dおよび環Eは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Zは、単結合、エチレンまたはカルボニルオキシであり;cは、1、2または3である。
【請求項7】
第二成分として式(3−1)から式(3−13)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の液晶組成物。

式(3−1)から式(3−13)において、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【請求項8】
液晶組成物の重量に基づいて、第二成分の割合が10重量%から90重量%の範囲である、請求項6または7に記載の液晶組成物。
【請求項9】
ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃で測定)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃で測定)が−2以下である、請求項1から8のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【請求項11】
液晶表示素子の動作モードが、IPSモード、VAモード、PSAモード、FFSモード、またはFPAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である、請求項10に記載の液晶表示素子。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1項に記載の液晶組成物の液晶表示素子における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶組成物、この組成物を含有する液晶表示素子などに関する。特に、誘電率異方性が負の液晶組成物、およびこの組成物を含有し、IPS、VA、FFS、FPAなどのモードを有する液晶表示素子に関する。高分子支持配向型の液晶表示素子にも関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶分子の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)、FFS(Fringe Field Switching)、FPA(field-induced photo-reactive alignment)などのモードである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PMは、スタティック(static)、マルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMは、TFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。TFTの分類は非晶質シリコン(amorphous silicon)および多結晶シリコン(polycrystal silicon)である。後者は製造工程によって高温型と低温型とに分類される。光源に基づいた分類は、自然光を利用する反射型、バックライトを利用する透過型、そして自然光とバックライトの両方を利用する半透過型である。
【0003】
液晶表示素子はネマチック相を有する液晶組成物を含有する。この組成物は適切な特性を有する。この組成物の特性を向上させることによって、良好な特性を有するAM素子を得ることができる。2つの特性における関連を下記の表1にまとめる。組成物の特性を市販されているAM素子に基づいてさらに説明する。ネマチック相の温度範囲は、素子の使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は約70℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は約−10℃以下である。組成物の粘度は素子の応答時間に関連する。素子で動画を表示するためには短い応答時間が好ましい。1ミリ秒でもより短い応答時間が望ましい。したがって、組成物における小さな粘度が好ましい。低い温度における小さな粘度はより好ましい。
【0004】
【0005】
組成物の光学異方性は、素子のコントラスト比に関連する。素子のモードに応じて、大きな光学異方性または小さな光学異方性、すなわち適切な光学異方性が必要である。組成物の光学異方性(Δn)と素子のセルギャップ(d)との積(Δn×d)は、コントラスト比を最大にするように設計される。適切な積の値は動作モードの種類に依存する。この値は、VAモードの素子では約0.30μmから約0.40μmの範囲であり、IPSモードまたはFFSモードの素子では約0.20μmから約0.30μmの範囲である。これら場合、小さなセルギャップの素子には大きな光学異方性を有する組成物が好ましい。組成物における大きな誘電率異方性は、素子における低いしきい値電圧、小さな消費電力と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、大きな誘電率異方性が好ましい。組成物における大きな比抵抗は、素子における大きな電圧保持率と大きなコントラスト比とに寄与する。したがって、初期段階において室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。長時間使用したあと、室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。紫外線および熱に対する組成物の安定性は、素子の寿命に関連する。この安定性が高いとき、素子の寿命は長い。このような特性は、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いるAM素子に好ましい。
【0006】
高分子支持配向(PSA;polymer sustained alignment)型の液晶表示素子では、重合体を含有する液晶組成物が用いられる。まず、少量の重合性化合物を添加した組成物を素子に注入する。次に、この素子の基板のあいだに電圧を印加しながら、組成物に紫外線を照射する。重合性化合物は重合して、組成物中に重合体の網目構造を生成する。この組成物では、重合体によって液晶分子の配向を制御することが可能になるので、素子の応答時間が短縮され、画像の焼き付きが改善される。重合体のこのような効果は、TN、ECB、OCB、IPS、VA、FFS、FPAのようなモードを有する素子に期待できる。
【0007】
TNモードを有するAM素子においては正の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。VAモードを有するAM素子においては負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。高分子支持配向(PSA;polymer sustained alignment)型のAM素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。本願における化合物(1)は次の特許文献1および特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−137921号公報
【特許文献2】特開2007−161995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。他の目的は、少なくとも2つの特性のあいだで適切なバランスを有する液晶組成物である。別の目的は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。別の目的は、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、長い寿命などの特性を有するAM素子である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、負の誘電率異方性を有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶表示素子である。

式(1)において、R、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から15のアルキルである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の長所は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。別の長所は、少なくとも2つの特性のあいだで適切なバランスを有する液晶組成物である。別の長所は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。別の長所は、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、長い寿命などの特性を有するAM素子である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。「液晶組成物」および「液晶表示素子」の用語をそれぞれ「組成物」および「素子」と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。液晶性化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが、ネマチック相の温度範囲、粘度、誘電率異方性のような特性を調節する目的で組成物に混合される化合物の総称である。この化合物は、例えば1,4−シクロヘキシレンや1,4−フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。重合性化合物は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加する化合物である。
【0013】
液晶組成物は、複数の液晶性化合物を混合することによって調製される。液晶性化合物の割合(含有量)は、この液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。この組成物に、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤のような添加物が必要に応じて添加される。添加物の割合(添加量)は、液晶性化合物の割合と同様に、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。重量百万分率(ppm)が用いられることもある。重合開始剤および重合禁止剤の割合は、例外的に重合性化合物の重量に基づいて表される。
【0014】
「ネマチック相の上限温度」を「上限温度」と略すことがある。「ネマチック相の下限温度」を「下限温度」と略すことがある。「比抵抗が大きい」は、組成物が初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有することを意味する。「電圧保持率が大きい」は、素子が初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有することを意味する。「誘電率異方性を上げる」の表現は、誘電率異方性が正である組成物のときは、その値が正に増加することを意味し、誘電率異方性が負である組成物のときは、その値が負に増加することを意味する。
【0015】
「少なくとも1つの‘A’は、‘B’で置き換えられてもよい」の表現は、‘A’の数は任意であることを意味する。‘A’の数が1つのとき、‘A’の位置は任意であり、‘A’の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できる。このルールは、「少なくとも1つの‘A’が、‘B’で置き換えられた」の表現にも適用される。
【0016】
成分化合物の化学式において、末端基Rの記号を複数の化合物に用いた。これらの化合物において、任意の2つのRが表す2つの基は同一であってもよく、または異なってもよい。例えば、化合物(2−1)のRがエチルであり、化合物(2−2)のRがエチルであるケースがある。化合物(2−1)のRがエチルであり、化合物(2−2)のRがプロピルであるケースもある。このルールは、他の末端基などの記号にも適用される。式(2)において、aが2のとき、2つの環Aが存在する。この化合物において、2つの環Aが表す2つの環は、同一であってもよく、または異なってもよい。このルールは、aが2より大きいとき、任意の2つの環Aにも適用される。このルールは、Z、環Dなどの記号にも適用される。
【0017】
2−フルオロ−1,4−フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルのような、非対称な環の二価基にも適用される。
【0018】
本発明は、下記の項などである。
【0019】
項1. 式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、負の誘電率異方性を有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物。

式(1)において、R、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から15のアルキルである。
【0020】
項2. 液晶組成物の重量に基づいて、式(1)で表される化合物の割合が0.005重量%から1重量%の範囲である、項1に記載の液晶組成物。
【0021】
項3. 第一成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1または2に記載の液晶組成物。

式(2)において、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシであり;環Aおよび環Cは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロへキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;環Bは、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−5−メチル−1,4−フェニレン、3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、または7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルであり;ZおよびZは独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;aは、1、2、または3であり、bは、0または1であり、そしてaとbとの和は3以下である。
【0022】
項4. 第一成分として式(2−1)から式(2−19)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から3のいずれか1項に記載の液晶組成物。


式(2−1)から式(2−19)において、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである。
【0023】
項5. 液晶組成物の重量に基づいて、第一成分の割合が10重量%から90重量%の範囲である、項3または4に記載の液晶組成物。
【0024】
項6. 第二成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。

式(3)において、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Dおよび環Eは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Zは、単結合、エチレンまたはカルボニルオキシであり;cは、1、2または3である。
【0025】
項7. 第二成分として式(3−1)から式(3−13)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から6のいずれか1項に記載の液晶組成物。

式(3−1)から式(3−13)において、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【0026】
項8. 液晶組成物の重量に基づいて、第二成分の割合が10重量%から90重量%の範囲である、項6または7に記載の液晶組成物。
【0027】
項9. ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃で測定)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃で測定)が−2以下である、項1から8のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0028】
項10. 項1から9のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0029】
項11. 液晶表示素子の動作モードが、IPSモード、VAモード、PSAモード、FFSモード、またはFPAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である、項10に記載の液晶表示素子。
【0030】
項12. 項1から9のいずれか1項に記載の液晶組成物の液晶表示素子における使用。
【0031】
本発明は、次の項も含む。(a)光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤などの添加物の少なくとも1つをさらに含有する上記の組成物。(b)上記の組成物を含有するAM素子。(c)重合性化合物をさらに含有する上記の組成物、およびこの組成物を含有する高分子支持配向(PSA)型のAM素子。(d)上記の組成物を含有し、この組成物中の重合性化合物が重合されている、高分子支持配向(PSA)型のAM素子。(e)上記の組成物を含有し、そしてPC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VA、FFS、またはFPAのモードを有する素子。(f)上記の組成物を含有する透過型の素子。(g)上記の組成物を、ネマチック相を有する組成物としての使用。(h)上記の組成物に光学活性化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用。
【0032】
本発明の組成物を次の順で説明する。第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、好ましい成分化合物を示す。第六に、組成物に添加してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。最後に、組成物の用途を説明する。
【0033】
第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。本発明の組成物は組成物Aと組成物Bに分類される。組成物Aは、化合物(1)、化合物(2)および化合物(3)から選択された化合物の他に、その他の液晶性化合物、添加物などをさらに含有してもよい。「その他の液晶性化合物」は、化合物(2)および化合物(3)とは異なる液晶性化合物である。このような化合物は、特性をさらに調整する目的で組成物に混合される。添加物は、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤などである。
【0034】
組成物Bは、実質的に化合物(1)、化合物(2)および化合物(3)から選択された化合物のみからなる。「実質的に」は、組成物が添加物を含有してもよいが、その他の液晶性化合物を含有しないことを意味する。組成物Bは組成物Aに比較して成分の数が少ない。コストを下げるという観点から、組成物Bは組成物Aよりも好ましい。その他の液晶性化合物を混合することによって特性をさらに調整できるという観点から、組成物Aは組成物Bよりも好ましい。
【0035】
第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類であり、0(ゼロ)は、値がほぼゼロであることを意味する。
【0036】
【0037】
成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。化合物(1)は熱または紫外線に対する高い安定性に寄与する。化合物(1)は、上限温度、光学異方性、および誘電率異方性の特性には差を与えない。第一成分である化合物(2)は誘電率異方性を上げ、そして下限温度を下げる。第二成分である化合物(3)は、粘度を下げる、または上限温度を上げる。
【0038】
第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の好ましい組み合わせは、化合物(1)+第一成分、化合物(1)+第二成分、または化合物(1)+第一成分+第二成分である。さらに好ましい組み合わせは、化合物(1)+第一成分+第二成分である。
【0039】
化合物(1)の好ましい割合は、熱または紫外線に対する高い安定性に寄与するために約0.005重量%以上であり、下限温度を下げるために約1重量%以下である。さらに好ましい割合は約0.01重量%から約0.5重量%の範囲である。特に好ましい割合は約0.03重量%から約0.3重量%の範囲である。
【0040】
第一成分の好ましい割合は、誘電率異方性を上げるために約10重量%以上であり、下限温度を下げるために約90重量%以下である。さらに好ましい割合は約20重量%から約80重量%の範囲である。特に好ましい割合は約30重量%から約70重量%の範囲である。
【0041】
第二成分の好ましい割合は、上限温度を上げるために、または粘度を下げるために約10重量%以上であり、誘電率異方性を上げるために約90重量%以下である。さらに好ましい割合は約20重量%から約80重量%の範囲である。特に好ましい割合は約30重量%から約70重量%の範囲である。
【0042】
第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。式(1)において、R、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から15のアルキルである。好ましいR、R、R、またはRは、水素またはメチルである。さらに好ましいR、R、R、またはRは、水素である。
【0043】
式(2)および式(3)において、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである。好ましいRまたはRは、安定性を上げるために炭素数1から12のアルキルであり、誘電率異方性を上げるために炭素数1から12のアルコキシである。RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいRまたはRは、粘度を下げるために、炭素数2から12のアルケニルであり、安定性を上げるために炭素数1から12のアルキルである。
【0044】
好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルである。さらに好ましいアルキルは、粘度を下げるためにエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘプチルである。
【0045】
好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。粘度を下げるために、さらに好ましいアルコキシは、メトキシまたはエトキシである。
【0046】
好ましいアルケニルは、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、粘度を下げるためにビニル、1−プロペニル、3−ブテニル、または3−ペンテニルである。これらのアルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。粘度を下げるためなどから1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ペンテニル、3−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。これらのアルケニルにおいては、分岐よりも直鎖のアルケニルが好ましい。
【0047】
好ましいアルケニルオキシは、ビニルオキシ、アリルオキシ、3−ブテニルオキシ、3−ペンテニルオキシ、または4−ペンテニルオキシである。粘度を下げるために、さらに好ましいアルケニルオキシは、アリルオキシまたは3−ブテニルオキシである。
【0048】
少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2−ジフルオロビニル、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル、4,4−ジフルオロ−3−ブテニル、5,5−ジフルオロ−4−ペンテニル、または6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニルである。さらに好ましい例は、粘度を下げるために2,2−ジフルオロビニルまたは4,4−ジフルオロ−3−ブテニルである。
【0049】
環Aおよび環Cは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロへキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。「少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン」の好ましい例は、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンまたは2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレンである。好ましい環Aまたは環Cは、粘度を下げるために1,4−シクロヘキシレンであり、誘電率異方性を上げるためにテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり、光学異方性を上げるために1,4−フェニレンである。1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。テトラヒドロピラン−2,5−ジイルは、
【0050】
環Bは、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−5−メチル−1,4−フェニレン、3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、または7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルである。好ましい環Bは、粘度を下げるために2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり、光学異方性を下げるために2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレンであり、誘電率異方性を上げるために7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルである。
【0051】
環Dおよび環Eは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。好ましい環Dまたは環Eは、粘度を下げるために、または上限温度を上げるために、1,4-シクロヘキシレンであり、下限温度を下げるために1,4−フェニレンである。
【0052】
およびZは独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシである。好ましいZまたはZは、粘度を下げるために単結合であり、下限温度を下げるためにエチレンであり、誘電率異方性を上げるためにメチレンオキシである。Zは、単結合、エチレンまたはカルボニルオキシである。好ましいZは、粘度を下げるために単結合である。
【0053】
aは、1、2または3である。好ましいaは粘度を下げるために1であり、上限温度を上げるために2または3である。bは0または1である。好ましいbは粘度を下げるために0であり、下限温度を下げるために1である。cは、1、2または3である。好ましいcは粘度を下げるために1であり、上限温度を上げるために2または3である。
【0054】
第五に、好ましい成分化合物を示す。好ましい化合物(1)は、下記の化合物(1−1)または化合物(1−2)である。さらに好ましい化合物(1)は、化合物(1−1)である。
【0055】
好ましい化合物(2)は、上記の化合物(2−1)から化合物(2−19)である。これらの化合物において、第一成分の少なくとも1つが、化合物(2−1)、化合物(2−3)、化合物(2−4)、化合物(2−6)、化合物(2−8)、または化合物(2−13)であることが好ましい。第一成分の少なくとも2つが、化合物(2−1)および化合物(2−6)、化合物(2−1)および化合物(2−13)、化合物(2−3)および化合物(2−6)、化合物(2−3)および化合物(2−13)、または化合物(2−4)および化合物(2−8)の組み合わせであることが好ましい。
【0056】
好ましい化合物(3)は、上記の化合物(3−1)から化合物(3−13)である。これらの化合物において、第二成分の少なくとも1つが、化合物(3−1)、化合物(3−3)、化合物(3−5)、化合物(3−6)、化合物(3−7)、または化合物(3−8)であることが好ましい。第二成分の少なくとも2つが化合物(3−1)および化合物(3−3)、化合物(3−1)および化合物(3−5)、または化合物(3−1)および化合物(3−6)の組み合わせであることが好ましい。
【0057】
第六に、組成物に添加してもよい添加物を説明する。このような添加物は、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤などである。液晶のらせん構造を誘起してねじれ角を与える目的で光学活性化合物が組成物に添加される。このような化合物の例は、化合物(4−1)から化合物(4−5)である。光学活性化合物の好ましい割合は約5重量%以下である。さらに好ましい割合は約0.01重量%から約2重量%の範囲である。
【0058】
【0059】
大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するために、または素子を長時間使用したあと、室温だけではなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するために、酸化防止剤が組成物に添加される。酸化防止剤の好ましい例は、nが1から9の整数である化合物(5)などである。
【0060】
化合物(5)において、好ましいnは、1、3、5、7、または9である。さらに好ましいnは1または7である。nが1である化合物(5)は、揮発性が大きいので、大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するときに有効である。nが7である化合物(5)は、揮発性が小さいので、素子を長時間使用したあと、室温だけではなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するのに有効である。酸化防止剤の好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように約600ppm以下である。さらに好ましい割合は、約100ppmから約300ppmの範囲である。
【0061】
紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。これらの吸収剤や安定剤における好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないために約10000ppm以下である。さらに好ましい割合は約100ppmから約10000ppmの範囲である。
【0062】
GH(guest host)モードの素子に適合させるために、アゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に添加される。色素の好ましい割合は、約0.01重量%から約10重量%の範囲である。泡立ちを防ぐために、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどの消泡剤が組成物に添加される。消泡剤の好ましい割合は、その効果を得るために約1ppm以上であり、表示不良を防ぐために約1000ppm以下である。さらに好ましい割合は、約1ppmから約500ppmの範囲である。
【0063】
高分子支持配向(PSA)型の素子に適合させるために重合性化合物が組成物に添加される。重合性化合物の好ましい例はアクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどの重合可能な基を有する化合物である。このような化合物の例は、化合物(6−1)から化合物(6−9)である。さらに好ましい例は、アクリレートまたはメタクリレートの誘導体である。重合性化合物の好ましい割合は、その効果を得るために、約0.05重量%以上であり、表示不良を防ぐために約10重量%以下である。さらに好ましい割合は、約0.1重量%から約2重量%の範囲である。
【0064】


式(6−1)から式(6−9)において、R、R10、R11、およびR12は独立して、アクリロイルオキシ(−OCO−CH=CH)またはメタクリロイルオキシ(−OCO−C(CH)=CH)であり、R13およびR14は独立して、水素、ハロゲン、または炭素数1から10のアルキルであり;Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合または炭素数1から12のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;d、eおよびfは独立して、0、1または2である。好ましいハロゲンは、フッ素または塩素である。化合物(6−1)において、六角形を横切る垂直な線は、六員環上の任意の水素がフッ素によって置き換えられてもよいことを表わす。dなどの添え字は、置き換えられているフッ素の数を示す。このルールは、化合物(6−2)などにも適用される。化合物(6−1)において、dとeとの和は1以上であり、化合物(6−4)において、dとeとfとの和は1以上である。
【0065】
重合性化合物は紫外線照射により重合する。光重合開始剤などの開始剤の存在下で重合させてもよい。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光開始剤であるIrgacure651(登録商標;BASF)、Irgacure184(登録商標;BASF)、またはDarocure1173(登録商標;BASF)がラジカル重合に対して適切である。光重合開始剤の好ましい割合は、重合性化合物の重量に基づいて約0.1重量%から約5重量%の範囲である。さらに好ましい割合は、約1重量%から約3重量%の範囲である。
【0066】
重合性化合物を保管するとき、重合を防止するために重合禁止剤を添加してもよい。重合性化合物は、通常は重合禁止剤を除去しないまま組成物に添加される。重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4-tert-ブチルカテコール、4-メトキシフェノ−ル、フェノチアジンなどである。
【0067】
第七に、成分化合物の合成法を説明する。これらの化合物は既知の方法によって合成できる。合成法を例示する。化合物(1−1)は市販されている。化合物(2−1)は、特開2000−053602号公報に記載された方法で合成する。化合物(3−1)は、特開昭59−176221号公報に記載された方法で合成する。化合物(3−13)は、特開平2−237949号公報に記載された方法で合成する。式(5)のnが1である化合物は、アルドリッチ(Sigma-Aldrich Corporation)から入手できる。nが7である化合物(5)などは、米国特許3660505号明細書に記載された方法によって合成する。
【0068】
合成法を記載しなかった化合物は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載された方法によって合成できる。組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。
【0069】
最後に、組成物の用途を説明する。この組成物は主として、約−10℃以下の下限温度、約70℃以上の上限温度、そして約0.07から約0.20の範囲の光学異方性を有する。この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有する。この組成物はAM素子に適する。この組成物は透過型のAM素子に特に適する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、約0.08から約0.25の範囲の光学異方性を有する組成物、さらには約0.10から約0.30の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用、光学活性化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
【0070】
この組成物はAM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、FFS、VA、FPAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。TN、OCB、IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子への使用は特に好ましい。IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子において、電圧が無印加のとき、液晶分子の配列がガラス基板に対して並行であってもよく、または垂直であってもよい。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン−TFT素子または多結晶シリコン−TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。
【実施例】
【0071】
実施例により本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によっては制限されない。本発明は、実施例1の組成物と実施例2の組成物との混合物を含む。本発明は、実施例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。合成した化合物は、NMR分析などの方法により同定した。化合物および組成物の特性は、下記に記載した方法により測定した。
【0072】
NMR分析:測定には、ブルカーバイオスピン社製のDRX−500を用いた。H−NMRの測定では、試料をCDClなどの重水素化溶媒に溶解させ、測定は、室温で、500MHz、積算回数16回の条件で行った。テトラメチルシランを内部標準として用いた。19F−NMRの測定では、CFClを内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0073】
ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1重量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC−R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。
【0074】
試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1−M50−025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。
【0075】
組成物に含有される液晶性化合物の割合は、次のような方法で算出してよい。液晶性化合物の混合物をガスクロマトグラフ(FID)で検出する。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶性化合物の割合(重量比)に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶性化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶性化合物の割合(重量%)は、ピークの面積比から算出することができる。
【0076】
測定試料:組成物の特性を測定するときは、組成物をそのまま試料として用いた。化合物の特性を測定するときは、この化合物(15重量%)を母液晶(85重量%)に混合することによって測定用の試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。(外挿値)={(試料の測定値)−0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、光学異方性、粘度、および誘電率異方性の値を求めた。
【0077】
下記の母液晶を用いた。成分化合物の割合は重量%で示した。
【0078】
測定方法:特性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association;以下JEITAという)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED−2521B)に記載された方法、またはこれを修飾した方法であった。測定に用いたTN素子には、薄膜トランジスター(TFT)を取り付けなかった。
【0079】
(1)ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0080】
(2)ネマチック相の下限温度(T;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、Tを<−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0081】
(3)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定には東京計器株式会社製のE型回転粘度計を用いた。
【0082】
(4)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s):測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に39ボルトから50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、(6)項で測定した。
【0083】
(5)光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n‖は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0084】
(6)誘電率異方性(Δε;25℃で測定):誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。誘電率(ε‖およびε⊥)は次のように測定した。
1)誘電率(ε‖)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
【0085】
(7)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)は0Vから20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が10%になったときの電圧で表した。
【0086】
(8)電圧保持率(VHR−a;25℃で測定;%):測定に用いたPVA素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は3.5μmであった。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このPVA素子にパルス電圧(1Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で166.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積であった。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率で表した。
【0087】
(9)電圧保持率(VHR−b;60℃で測定;%):25℃の代わりに、60℃で測定した以外は、上記と同じ手順で電圧保持率を測定した。得られた値をVHR−bで表した。
【0088】
(10)電圧保持率(VHR−c;60℃で測定;%):紫外線を照射したあと、電圧保持率を測定し、紫外線に対する安定性を評価した。測定に用いたPVA素子はポリイミド配向膜を有し、そしてセルギャップは3.5μmであった。この素子に試料を注入し、光を167分間照射した。光源はブラックライト(ピーク波長369nm)であり、素子と光源の間隔は5mmであった。VHR−cの測定では、166.7ミリ秒のあいだ、減衰する電圧を測定した。大きなVHR−cを有する組成物は紫外線に対して大きな安定性を有する。
【0089】
(11)電圧保持率(VHR−d;60℃で測定;%):試料を注入したPVA素子を150℃の恒温槽内で2時間加熱したあと、電圧保持率を測定し、熱に対する安定性を評価した。VHR−dの測定では、166.7ミリ秒のあいだ減衰する電圧を測定した。大きなVHR−4を有する組成物は熱に対して大きな安定性を有する。
【0090】
(12)応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れた。この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に矩形波(60Hz、10V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。応答時間は透過率90%から10%に変化するのに要した時間(立ち下がり時間;fall time;ミリ秒)で表した。
【0091】
(13)比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
【0092】
実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。表3において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の特性値をまとめた。
【0093】
【0094】
[実施例1]
2−H1OB(2F,3F)−O2 (2−3) 3%
3−H1OB(2F,3F)−O2 (2−3) 10%
1V2−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 10%
V−HHB(2F,3F)−O1 (2−6) 12%
V−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 12%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 6%
2−BB(2F,3F)B−3 (2−9) 6%
3−HH−V (3−1) 25%
3−HH−V1 (3−1) 6%
4−HH−V1 (3−1) 3%
V−HHB−1 (3−5) 3%
V2−HHB−1 (3−5) 4%
誘電率異方性が負である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=80.1℃;Tc<−20℃;Δn=0.103;Δε=−3.9;Vth=2.09V;η=20.7mPa・s.
この組成物に化合物(1−1)を0.04重量%の割合で添加し、VHR−cを測定した。VHR−c=72.9%.
【0095】
[比較例1]
実施例1における化合物(1−1)を添加する前の組成物のVHR−cを測定した。VHR−c=35.6%.
【0096】
[実施例2]
3−H1OB(2F,3F)−O2 (2−3) 8%
V2−BB(2F,3F)−O1 (2−4) 4%
V2−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 9%
1V2−BB(2F,3F)−O4 (2−4) 6%
V−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 10%
V−HHB(2F,3F)−O4 (2−6) 3%
1V2−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 4%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 12%
3−HH−V (3−1) 26%
1−HH−2V1 (3−1) 3%
3−HH−2V1 (3−1) 3%
5−HB−O2 (3−2) 3%
3−HHB−O1 (3−5) 5%
V−HHB−1 (3−5) 4%
誘電率異方性が負である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=77.0℃;Tc<−20℃;Δn=0.099;Δε=−3.4;Vth=2.22V;η=18.6mPa・s.
この組成物に化合物(1−1)を0.05重量%の割合で添加し、VHR−cを測定した。VHR−c=75.7%.
【0097】
[実施例3]
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2) 15%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−2) 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 8%
5−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 6%
2−HHB(2F,3F)−1 (2−6) 5%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−13) 10%
4−HBB(2F,3F)−O2 (2−13) 6%
1V2−HBB(2F,3F)−O2 (2−13) 4%
2−HH−3 (3−1) 20%
3−HH−4 (3−1) 10%
V2−BB(F)B−1 (3−8) 4%
誘電率異方性が負である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=80.0℃;Tc<−20℃;Δn=0.096;Δε=−3.4;Vth=2.19V;η=19.0mPa・s.
この組成物に化合物(1−2)を0.05重量%の割合で添加し、VHR−cを測定した。VHR−c=89.2%.
【0098】
[実施例4]
3−H1OB(2F,3F)−O2 (2−3) 8%
3−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 8%
2O−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 5%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 8%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 7%
2−BB(2F,3F)B−3 (2−9) 8%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (2−11) 10%
3−HH−V (3−1) 24%
3−HH−V1 (3−1) 10%
V2−HHB−1 (3−5) 9%
1O1−HBBH−4 (−) 3%
誘電率異方性が負である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=83.7℃;Tc<−20℃;Δn=0.107;Δε=−3.7;Vth=2.21V;η=22.9mPa・s.
この組成物に化合物(1−1)を0.05重量%の割合で添加し、VHR−cを測定した。VHR−c=74.2%.
【0099】
[実施例5]
V2−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 12%
1V2−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 5%
1V2−BB(2F,3F)−O4 (2−4) 3%
V−HHB(2F,3F)−O1 (2−6) 5%
V−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 12%
V−HHB(2F,3F)−O4 (2−6) 5%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (2−11) 5%
3−dhBB(2F,3F)−O2 (2−14) 4%
3−HH−V (3−1) 32%
1−BB−3 (3−3) 5%
3−HHEH−3 (3−4) 3%
V−HHB−1 (3−5) 3%
1−BB(F)B−2V (3−8) 3%
3−HHEBH−4 (3−9) 3%
誘電率異方性が負である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=78.6℃;Tc<−20℃;Δn=0.107;Δε=−2.7;Vth=2.36V;η=18.8mPa・s.
この組成物に化合物(1−1)を0.07重量%の割合で添加し、VHR−cを測定した。VHR−c=77.1%.
【0100】
[実施例6]
V2−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 12%
1V2−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 6%
1V2−BB(2F,3F)−O4 (2−4) 3%
V−HHB(2F,3F)−O1 (2−6) 6%
V−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 7%
V−HHB(2F,3F)−O4 (2−6) 5%
1V2−HHB(2F,3F)−O4 (2−6) 5%
3−DhH1OB(2F,3F)−O2 (2−12) 5%
3−dhBB(2F,3F)−O2 (2−14) 5%
3−HH−V (3−1) 26%
3−HH−VFF (3−1) 3%
V2−HB−1 (3−2) 6%
V−HHB−1 (3−5) 5%
2−BB(F)B−5 (3−8) 3%
5−HBB(F)B−3 (3−13) 3%
誘電率異方性が負である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=79.0℃;Tc<−20℃;Δn=0.112;Δε=−2.9;Vth=2.35V;η=19.8mPa・s.
この組成物に化合物(1−1)を0.1重量%の割合で添加し、VHR−cを測定した。VHR−c=79.5%.
【0101】
[実施例7]
3−H1OB(2F,3F)−O2 (2−3) 10%
1V2−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 10%
V−HHB(2F,3F)−O1 (2−6) 11%
V−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 12%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 9%
2−BB(2F,3F)B−3 (2−9) 7%
3−HH−V (3−1) 26%
3−HH−V1 (3−1) 6%
1−HH−2V1 (3−1) 3%
3−HHB−3 (3−5) 3%
V−HHB−1 (3−5) 3%
誘電率異方性が負である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=81.6℃;Tc<−20℃;Δn=0.103;Δε=−3.7;Vth=2.15V;η=20.9mPa・s.
この組成物に化合物(1−1)を0.06重量%の割合で添加し、VHR−cを測定した。VHR−c=73.8%.
【0102】
[実施例8]
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 8%
3−H1OB(2F,3F)−O2 (2−3) 8%
3−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 5%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 8%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 7%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (2−11) 10%
3−HH−V (3−1) 25%
3−HH−V1 (3−1) 10%
V2−HHB−1 (3−5) 11%
2−BB(F)B−3 (3−8) 8%
誘電率異方性が負である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=79.4℃;Tc<−20℃;Δn=0.100;Δε=−3.5;Vth=2.20V;η=19.5mPa・s.
この組成物に化合物(1−1)を0.05重量%の割合で添加し、VHR−cを測定した。VHR−c=76.3%.
【0103】
[実施例9]
V2−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 5%
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2) 9%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 12%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 7%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 12%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (2−11) 3%
2−HH−3 (3−1) 27%
1−BB−3 (3−3) 13%
3−HHB−1 (3−5) 3%
3−B(F)BB−2 (3−7) 3%
3−HB(F)HH−5 (3−10) 3%
3−HB(F)BH−3 (3−12) 3%
誘電率異方性が負である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=78.9℃;Tc<−20℃;Δn=0.098;Δε=−2.9;Vth=2.34V;η=18.2mPa・s.
この組成物に化合物(1−1)を0.03重量%の割合で添加し、VHR−cを測定した。VHR−c=78.4%.
【0104】
[実施例10]
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−2) 9%
5−BB(2F,3F)−O4 (2−4) 5%
5−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 3%
V−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 6%
3−HH2B(2F,3F)−O2 (2−7) 3%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 13%
2−BB(2F,3F)B−3 (2−9) 3%
2−HHB(2F,3CL)−O2 (2−16) 3%
4−HHB(2F,3CL)−O2 (2−16) 3%
2−HH−3 (3−1) 22%
3−HH−V (3−1) 5%
V2−BB−1 (3−3) 3%
1−BB−3 (3−3) 13%
3−HB(F)HH−5 (3−10) 3%
5−HBBH−3 (3−11) 3%
3−HB(F)BH−3 (3−12) 3%
誘電率異方性が負である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=78.9℃;Tc<−20℃;Δn=0.103;Δε=−2.6;Vth=2.49V;η=17.6mPa・s.
この組成物に化合物(1−1)を0.05重量%の割合で添加し、VHR−cを測定した。VHR−c=78.9%.
【0105】
[実施例11]
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−2) 20%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−2) 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 8%
5−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 6%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (2−11) 5%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−13) 10%
4−HBB(2F,3F)−O2 (2−13) 6%
2−HH−3 (3−1) 16%
3−HH−4 (3−1) 13%
1V−HBB−2 (3−6) 4%
誘電率異方性が負である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=76.2℃;Tc<−20℃;Δn=0.089;Δε=−3.6;Vth=2.12V;η=19.8mPa・s.
この組成物に化合物(1−1)を0.03重量%の割合で添加し、VHR−cを測定した。VHR−c=90.4%.
【0106】
[実施例12]
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 5%
V−HB(2F,3F)−O4 (2−1) 4%
5−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 6%
3−B(2F,3F)B(2F,3F)−O2
(2−5) 3%
V−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 10%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (2−8) 10%
2−BB(2F,3F)B−3 (2−9) 5%
4−HBB(2F,3F)−O2 (2−13) 5%
V−HBB(2F,3F)−O2 (2−13) 7%
3−HBB(2F,3CL)−O2 (2−17) 3%
3−HH−O1 (3−1) 3%
3−HH−V (3−1) 26%
3−HB−O2 (3−2) 3%
V−HHB−1 (3−5) 7%
3−BB(F)B−5 (3−8) 3%
誘電率異方性が負である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=80.6℃;Tc<−20℃;Δn=0.114;Δε=−3.2;Vth=2.27V;η=24.0mPa・s.
この組成物に化合物(1−1)を0.1重量%の割合で添加し、VHR−cを測定した。VHR−c=73.4%.
【0107】
[実施例13]
3−BB(2F,3F)−O4 (2−4) 6%
V2−BB(2F,3F)−O2 (2−4) 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 5%
V−HHB(2F,3F)−O1 (2−6) 6%
V−HHB(2F,3F)−O2 (2−6) 12%
3−DhHB(2F,3F)−O2 (2−10) 5%
3−HEB(2F,3F)B(2F,3F)−O2
(2−15) 3%
3−H1OCro(7F,8F)−5 (2−18) 3%
3−HH1OCro(7F,8F)−5 (2−19) 3%
3−HH−V (3−1) 23%
4−HH−V (3−1) 3%
5−HH−V (3−1) 6%
7−HB−1 (3−2) 3%
V−HHB−1 (3−5) 4%
3−HBB−2 (3−6) 3%
2−BB(F)B−3 (3−8) 3%
誘電率異方性が負である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=75.4℃;Tc<−20℃;Δn=0.099;Δε=−3.1;Vth=2.22V;η=23.3mPa・s.
この組成物に化合物(1−1)を0.2重量%の割合で添加し、VHR−cを測定した。VHR−c=80.1%.
【0108】
実施例1から実施例13の組成物は、比較例1の組成物と比較すると、紫外線照射後の電圧保持率が大きいことがわかった。よって、本発明の液晶組成物は優れた特性を有すると結論できる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の液晶組成物は、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する、または少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する。この組成物を含有する液晶表示素子は、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、長い寿命などの特性を有するので、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いることができる。
【要約】
ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する、または少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物を提供する。短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、長い寿命などの特性を有するAM素子を提供する。
熱または紫外線に対する高い安定性に寄与する化合物を含有し、負の誘電率異方性を有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物であり、この組成物は第一成分として負に大きな誘電率異方性を有する特定の化合物、第二成分として高い上限温度または小さな粘度を有する特定の化合物を含有してもよい。