【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0044】
「実施例1」
容量10mlの反応容器内に、ナノポーラスシリカ(空孔の平均開口端直径:6nm、平均粒子径:200nm、内部空孔率:61%、住友大阪セメント製)0.5gを投入し、次いで、メタノールを10mol%含む炭酸ガス・メタノール混合物を毎分0.341mLの流速にて反応容器内を流動させた。ここでは、メタノールは純度が99.5V/V%のものを、炭酸ガスは純度が99V/V%のものを、それぞれ用いた。
【0045】
次いで、この反応容器内の温度を80℃に上昇させて炭酸ガス・メタノール混合物の導入圧力を調整し、この反応容器の内部の圧力を14MPaまで加圧し、内部を超臨界状態に保ちつつ3時間保持した。
次いで、炭酸ガス・メタノール混合物の流動を停止し、炭酸ガスを1時間流動させて反応容器内の残留メタノールを除去し、疎水性多孔質酸化物粒子を得た。
【0046】
「実施例2」
容量10mlの反応容器内に、ナノポーラスシリカ(空孔の平均開口端直径:3nm、平均粒子径:100nm、内部空孔率:52%、住友大阪セメント製)0.5gを投入し、次いで、メタノールを10mol%含む炭酸ガス・メタノール混合物を毎分0.341mLの流速にて反応容器内を流動させた。ここでは、メタノールは純度が99.5V/V%のものを、炭酸ガスは純度が99V/V%のものを、それぞれ用いた。
【0047】
次いで、この反応容器内の温度を80℃に上昇させて炭酸ガス・メタノール混合物の導入圧力を調整し、この反応容器の内部の圧力を14MPaまで加圧し、内部を超臨界状態に保ちつつ3時間保持した。
次いで、炭酸ガス・メタノール混合物の流動を停止し、炭酸ガスを1時間流動させて反応容器内の残留メタノールを除去し、疎水性多孔質酸化物粒子を得た。
【0048】
「実施例3」
容量10mlの反応容器内に、ナノポーラスシリカ(空孔の平均開口端直径:6nm、平均粒子径:200nm、内部空孔率:61%、住友大阪セメント製)0.5gを投入し、次いで、メタノールを5mol%含む炭酸ガス・メタノール混合物を毎分0.171mLの流速にて反応容器内を流動させた。ここでは、メタノールは純度が99.5V/V%のものを、炭酸ガスは純度が99V/V%のものを、それぞれ用いた。
【0049】
次いで、この反応容器内の温度を80℃に上昇させて炭酸ガス・メタノール混合物の導入圧力を調整し、この反応容器の内部の圧力を14MPaまで加圧し、内部を超臨界状態に保ちつつ3時間保持した。
次いで、炭酸ガス・メタノール混合物の流動を停止し、炭酸ガスを1時間流動させて反応容器内の残留メタノールを除去し、疎水性多孔質酸化物粒子を得た。
【0050】
「実施例4」
容量10mlの反応容器内に、ナノポーラスシリカ(空孔の平均開口端直径:6nm、平均粒子径:200nm、内部空孔率:61%、住友大阪セメント製)0.5gを投入し、次いで、メタノールを20mol%含む炭酸ガス・メタノール混合物を毎分0.683mLの流速にて反応容器内を流動させた。ここでは、メタノールは純度が99.5V/V%のものを、炭酸ガスは純度が99V/V%のものを、それぞれ用いた。
【0051】
次いで、この反応容器内の温度を80℃に上昇させて炭酸ガス・メタノール混合物の導入圧力を調整し、この反応容器の内部の圧力を14MPaまで加圧し、内部を超臨界状態に保ちつつ3時間保持した。
次いで、炭酸ガス・メタノール混合物の流動を停止し、炭酸ガスを1時間流動させて反応容器内の残留メタノールを除去し、疎水性多孔質酸化物粒子を得た。
【0052】
「実施例5」
容量10mlの反応容器内に、ナノポーラスシリカ(空孔の平均開口端直径:6nm、平均粒子径:200nm、内部空孔率:61%、住友大阪セメント製)0.5gを投入し、次いで、メタノールを30mol%含む炭酸ガス・メタノール混合物を毎分1.024mLの流速にて反応容器内を流動させた。ここでは、メタノールは純度が99.5V/V%のものを、炭酸ガスは純度が99V/V%のものを、それぞれ用いた。
【0053】
次いで、この反応容器内の温度を80℃に上昇させて炭酸ガス・メタノール混合物の導入圧力を調整し、この反応容器の内部の圧力を14MPaまで加圧し、内部を超臨界状態に保ちつつ3時間保持した。
次いで、炭酸ガス・メタノール混合物の流動を停止し、炭酸ガスを1時間流動させて反応容器内の残留メタノールを除去し、疎水性多孔質酸化物粒子を得た。
【0054】
「実施例6」
容量10mlの反応容器内に、ナノポーラスシリカ(空孔の平均開口端直径:6nm、平均粒子径:200nm、内部空孔率:61%、住友大阪セメント製)0.5gを投入し、次いで、メタノールを10mol%含む炭酸ガス・メタノール混合物を毎分0.341mLの流速にて反応容器内を流動させた。ここでは、メタノールは純度が99.5V/V%のものを、炭酸ガスは純度が99V/V%のものを、それぞれ用いた。
【0055】
次いで、この反応容器内の温度を80℃に上昇させて炭酸ガス・メタノール混合物の導入圧力を調整し、この反応容器の内部の圧力を12MPaまで加圧し、内部を超臨界状態に保ちつつ3時間保持した。
次いで、炭酸ガス・メタノール混合物の流動を停止し、炭酸ガスを1時間流動させて反応容器内の残留メタノールを除去し、疎水性多孔質酸化物粒子を得た。
【0056】
「実施例7」
容量10mlの反応容器内に、ナノポーラスシリカ(空孔の平均開口端直径:6nm、平均粒子径:200nm、内部空孔率:61%、住友大阪セメント製)0.5gを投入し、次いで、メタノールを10mol%含む炭酸ガス・メタノール混合物を毎分0.341mLの流速にて反応容器内を流動させた。ここでは、メタノールは純度が99.5V/V%のものを、炭酸ガスは純度が99V/V%のものを、それぞれ用いた。
【0057】
次いで、この反応容器内の温度を80℃に上昇させて炭酸ガス・メタノール混合物の導入圧力を調整し、この反応容器の内部の圧力を17MPaまで加圧し、内部を超臨界状態に保ちつつ3時間保持した。
次いで、炭酸ガス・メタノール混合物の流動を停止し、炭酸ガスを1時間流動させて反応容器内の残留メタノールを除去し、疎水性多孔質酸化物粒子を得た。
【0058】
「比較例1」
疎水化処理を施していないナノポーラスシリカ(空孔の平均開口端直径:6nm、平均粒子径:200nm、内部空孔率:61%、住友大阪セメント製)を比較例1とした。
【0059】
「比較例2」
容量500mlの還流容器内に、ナノポーラスシリカ(空孔の平均開口端直径:6nm、平均粒子径:200nm、内部空孔率:61%、住友大阪セメント製)0.5gと、メタノール200mLを投入し、次いで、この環流容器内の温度を65℃に上昇させ、3時間環流を行った。
次いで、この還流容器を冷却し、フィルターを用いてナノポーラスシリカをろ過し、次いで、乾燥してメタノールを除去し、疎水性多孔質酸化物粒子を得た。
【0060】
「比較例3」
容量10mlの反応容器内に、ナノポーラスシリカ(空孔の平均開口端直径:6nm、平均粒子径:200nm、内部空孔率:61%、住友大阪セメント製)0.5gを投入し、次いで、エタノールを10mol%含む炭酸ガス・エタノール混合物を毎分0.495mLの流速にて反応容器内を流動させた。ここでは、エタノールは純度が99.5V/V%のものを、炭酸ガスは純度が99V/V%のものを、それぞれ用いた。
【0061】
次いで、この反応容器内の温度を80℃に上昇させて炭酸ガス・エタノール混合物の導入圧力を調整し、この反応容器の内部の圧力を14MPaまで加圧し、内部を超臨界状態に保ちつつ3時間保持した。
次いで、炭酸ガス・エタノール混合物の流動を停止し、炭酸ガスを1時間流動させて反応容器内の残留エタノールを除去し、疎水性多孔質酸化物粒子を得た。
【0062】
「比較例4」
容量10mlの反応容器内に、ナノポーラスシリカ(空孔の平均開口端直径:6nm、平均粒子径:200nm、内部空孔率:61%、住友大阪セメント製)0.5gを投入し、次いで、2−プロパノールを10mol%含む炭酸ガス・2−プロパノール混合物を毎分0.654mLの流速にて反応容器内を流動させた。ここでは、2−プロパノールは純度が99.5V/V%のものを、炭酸ガスは純度が99V/V%のものを、それぞれ用いた。
【0063】
次いで、この反応容器内の温度を80℃に上昇させて炭酸ガス・2−プロパノール混合物の導入圧力を調整し、この反応容器の内部の圧力を14MPaまで加圧し、内部を超臨界状態に保ちつつ3時間保持した。
次いで、炭酸ガス・2−プロパノール混合物の流動を停止し、炭酸ガスを1時間流動させて反応容器内の残留2−プロパノールを除去し、疎水性多孔質酸化物粒子を得た。
【0064】
「評価」
実施例1〜7及び比較例2〜4で得られた疎水性多孔質酸化物粒子及び比較例1のナノポーラスシリカ各々の評価を行った。
評価項目及び評価方法は以下のとおりである。
【0065】
(1)置換率
疎水性多孔質酸化物粒子の水酸基(−OH)の修飾剤による置換率を算出した。
ここでは、まず、示差熱/熱重量測定装置 TG/DTA6200(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用い、疎水性多孔質酸化物粒子を窒素雰囲気下、毎分20℃の昇温温度にて加熱し、疎水性多孔質酸化物粒子の重量減少量ΔW
Tを測定し、次いで、比較例1のナノポーラスシリカ(疎水化処理無し)を同じ条件下で加熱し、このナノポーラスシリカの表面の水酸基の脱水による重量減少量ΔW
OHを測定し、下記の式(1)により修飾剤の修飾分子個数N
mを算出した。
N
m=( ΔW
OH−ΔW
T)/M
W×N
A ……(1)
(但し、N
m:修飾剤の分子個数、ΔW
T:疎水性多孔質酸化物粒子の重量減少量(g)、ΔW
OH:ナノポーラスシリカの表面の水酸基の脱水による重量減少量(g)、M
W:水酸基の分子量、N
A:アボガドロ数(6.02×10
23/mol))
【0066】
この修飾剤の修飾分子個数N
mと、ナノポーラスシリカの表面の水酸基の個数N
OHとを用いて、下記の式(2)により置換率(%)を算出した。
置換率=N
m/N
OH×100% ……(2)
【0067】
なお、このナノポーラスシリカの表面の水酸基の個数N
OHは、下記の式(3)により算出した。
N
OH=S
OH×A
BET×W
S ……(3)
(但し、S
OH:シリカの表面の水酸基密度(2.8個/nm
2)、A
BET:ナノポーラスシリカの比表面積(m
2/g)、W
S:測定試料の質量(g))
なお、シリカの表面の水酸基密度は、Z. W. Wang et al, J. Colloid Interface Sci., 304, 152, (2006)に記載されている値を用いた。
【0068】
(2)比(N
RO−/N
−OH)
上記の修飾剤の修飾分子個数N
mと、ナノポーラスシリカの表面の水酸基の個数N
OHとを用いて、下記の式(4)により算出した。
比(N
RO−/N
−OH)=N
m/(N
OH−N
m) ……(4)
【0069】
(3)空孔率
細孔測定装置 BELSORP−mini(日本ベル社製)を用いて、疎水性多孔質酸化物粒子の空孔容積V
DHをDH法にて測定し、下記の式(5)により算出した。
空孔率=V
DH/V
NPS×100(%) ……(5)
(但し、V
DH:疎水性多孔質酸化物粒子の空孔の容積、V
NPS:ナノポーラスシリカの平均体積)
【0070】
(4)比表面積
細孔測定装置 BELSORP−mini(日本ベル社製)を用いて、疎水性多孔質酸化物粒子のBET比表面積を測定した。
実施例1〜7及び比較例1〜4の各粒子の組成や反応条件等を表1に、評価結果を表2に、それぞれ示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
以上の結果から、下記のことが分かった。
(1)実施例1〜7では、比(N
RO−/N
−OH)は1.0以上、すなわち置換率は50%以上であり、十分な疎水性が付与されていることが確認された。また、これら実施例1〜7の空孔率及び比表面積は、有機置換基の吸着により未処理品である比較例1のナノポーラスシリカより減少しているが、十分な空孔を保持できていることが分かった。
例えば、実施例1では、比較例2と比べて空孔率、比表面積共に同レベルでありながら、比(N
RO−/N
−OH)は1.78、置換率としては64%と大幅に向上し、高度の疎水化ができていることが分かった。
【0074】
(2)実施例2では、実施例1と比べて比(N
RO−/N
−OH)が低下していた。
これは、平均開口端直径が3nmと小さく、実施例1と比べて修飾剤が空孔内部に滲入し難く、開口端付近が修飾剤で疎水化されてしまい、その結果、親水性であるメタノールとの濡れが悪くなり、メタノールが空孔内部に滲入し難かったためと考えられる。
【0075】
(3)実施例1、3〜5によれば、メタノールを5〜30mol%含む炭酸ガス・メタノール混合物で疎水化を行うことにより、比(N
RO−/N
−OH)が1.0以上の疎水性多孔質酸化物粒子が得られることが分かった。
【0076】
(4)実施例1、6、7によれば、反応容器内の圧力が14MPa付近では比(N
RO−/N
−OH)が1.78と高く、12MPaでは1.44、17MPaでは1.27と低下することが分かった。
メタノールを10mol%含む炭酸ガス・メタノール混合物の臨界点は、
図1に示すように14MPa付近であり、この臨界点から±20%の圧力範囲で比(N
RO−/N
−OH)が1.0以上の疎水性多孔質酸化物粒子が得られることが分かった。
【0077】
(5)比較例3、4では、比(N
RO−/N
−OH)が0.25以下と低い値を示した。これは、エタノールの分子量が46.1g/mol、2−プロパノールの分子量が60.1g/molと、メタノールの分子量32.0g/molと比較して大きく、したがって、先に表面の水酸基と置換したエトキシ基(C
2H
5O−)やイソプロポキシ基((CH
3)
2−CH−O−)が立体障害を形成し、他のエタノールや2−プロパノールが表面水酸基と反応するのを阻害したためと考えられる。