【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年9月18日付け平成20年度、平成21年度、平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「新エネルギー技術研究開発革新的太陽光発電技術研究開発(革新型太陽電池国際研究拠点整備事業)高度秩序構造を有する薄膜多接合太陽電池の研究開発(配列制御ナノ結晶シリコン、メカニカルスタック)」に係る業務委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
GREEN M A,The MIS and MISIM solar cell,Photovoltaic Sol Enegy Conf,NL,1978年,Page.299-307
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パッシベーション薄膜上に、一方向に向かって光誘起された少数キャリアの拡散距離以下の間隔を置いて交合に配列されるように、第1の電極同士及び第2の電極同士が電気的に接続された前記第1の電極と前記第2の電極を形成する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の半導体ソーラーセルの製造方法。
前記第1の電極及び前記第2の電極を形成した後に、前記異方性導電シートを介して前記第1の電極及び前記第2の電極に電気的に接続された電流を取り出すための導電ブロック体を貼り合わせる工程を有し、
前記導電ブロック体は、絶縁体に埋め込まれた、前記第1の電極と電気的に接続される第1の金属ブロック部と、前記第2の電極と電気的に接続される第2の金属ブロック部とを有する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の半導体ソーラーセルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る半導体ソーラーセルの実施の形態は、第1導電型、例えばp型あるいはn型の半導体基板に、この半導体基板に対して絶縁性が高く、かつ電流導通可能なパッシベーション薄膜を形成し、このパッシベーション薄膜上に仕事関数が異なる第1の電極及び第2の電極を形成して構成される。第1の電極としては、仕事関数が第2の電極及び半導体基板の仕事関数より小さい金属で形成される。第2の電極としては、仕事関数が第1の電極及び半導体基板の仕事関数より大きい金属で形成される。あるいは、第1の電極及び第2の電極は、仕事関数が異なる金属と透明導電膜との組み合わせで形成することもできる。
【0023】
第1の電極と第2の電極は、後に詳述するように、それぞれ半導体基板の一方の面と他方の面にパッシベーション薄膜を介して形成することができる。すなわち、半導体基板の光入射される一方の面上にパッシベーション薄膜を介して一方の電極となる第1の電極又は第2の電極が形成され、光入射されない他方の面上にパッシベーション薄膜を介して他方の電極となる第2の電極又は第1の電極が形成される。あるいは、後に詳述するように、第1の電極と第2の電極は、半導体基板の光入射されない他方の面に、
パッシベーション薄膜を介して互いに離間するように、共存して形成される。このとき、半導体基板の光入射される一方の面には光透過性の絶縁膜、いわゆる透明絶縁膜が形成される。
【0024】
半導体基板としては、単結晶シリコン基板、多結晶シリコン基板、化合物半導体基板、その他の半導体基板を用いることができる。
【0025】
半導体基板に対してより絶縁性が高くてかつ電流導通可能なパッシベーション薄膜としては、トンネル効果による電流導通可能な絶縁薄膜、あるいは真性非晶質半導体膜を用いることができる。さらに後述で明らかになるが、パッシベーション薄膜として、電子が導通する側のパッシベーション薄膜に電子に対してポテンシャル障壁が小さい絶縁膜を用い、ホールが導通する側のパッシベーション薄膜にホールに対してポテンシャル障壁が小さい絶縁膜を用いることができる。
【0026】
本実施の形態に係るパッシベーション薄膜は、半導体基板に対して絶縁性が高い膜、いわゆる絶縁体的特徴を有する膜である。この絶縁性ないし絶縁体の定義について説明する。異種金属間の仕事関数差を利用してシリコン等の半導体に内蔵電位を生じさせるためには、金属と半導体の仕事関数差により半導体内の電荷が移動し、それによって金属に近い半導体表面層が帯電し、電位変化が生じなければならない。例えばアルミニウムの近くの半導体表面は電子がより多く集まり負に帯電しており、それに伴う内蔵電位が形成されている。半導体と金属間に存在する薄膜は、半導体表面のパッシベーションを司る。このとき、半導体と金属間に存在する薄膜内に可動電荷(キャリア)が存在しないか、少ないことが必要である。
【0027】
半導体と金属間に存在する薄膜内に可動電荷(キャリア)が多くあると、金属の仕事関数差をバランスすべく薄膜内の可動電荷(キャリア)が動いてしまい、半導体内に大きな内蔵電位を生じせしめることができない。従って、半導体と金属間の薄膜内に存在する可動電荷(キャリア)数は、半導体内のキャリア体積濃度の10分の1以下が望ましい。これは半導体から見て、薄膜すなわち上記のパッシベーション薄膜が、絶縁性の高い膜である、つまり絶縁体的特徴を有することを意味する。換言すると、この薄膜すなわち上記のパッシベーション薄膜は、半導体よりもバンドギャップの大きい薄膜である必要がある。
【0028】
例えば半導体として結晶シリコンを用いた場合、結晶シリコンのバンドギャップは1.12eVである。ここで、結晶シリコンは、単結晶シリコン、あるいは多結晶シリコンである。10分の1以下のキャリア濃度の条件は、常温の場合、バンドギャップが1.18eV以上あれば実現できる。従って、半導体と金属間に存在する薄膜のバンドギャップは、半導体より0.006eV以上大きければ良い。シリコンの場合は、バンドギャップ1.18以上の薄膜を用いれば良い。バンドギャップ1.18以上の薄膜としては、絶縁膜、非晶質シリコン等が挙げられる。SiO2膜は10eVのバンドギャップを持ち、非常に優秀な絶縁体であり、本発明の絶縁性薄膜としてのパッシベーション薄膜に用いて好適である。また、非晶質シリコンは1.7〜2.0eVのバンドギャップを持ち、本発明の絶縁性薄膜としてのパッシベーション薄膜に用いることができる。
【0029】
本実施の形態では、半導体基板の電極を形成する側の面を覆うパッシベーション薄膜として例えば絶縁薄膜を用いた場合、絶縁薄膜としては、電荷捕獲欠陥準位密度が可及的に少ない良質の絶縁薄膜を形成しなければならない。このため、本実施の形態では、半導体基板がシリコン基板の場合、低温で良質のシリコン酸化(SiO2)膜/シリコン(Si)界面を得る手法として、好ましくは絶縁薄膜として水蒸気熱処理によるシリコン酸化薄膜を用いる。この水蒸気熱処理法は、文献1で知られている。また、半導体基板がシリコン基板の場合、良質のシリコン酸化(SiO2)膜は、1000℃でシリコン基板を加熱酸化する熱酸化手法により実現することができる。
【0030】
文献1:T. Sameshima and M. Satoh“Improvement of SiO2 Properties by Heating Treatment in High Pressure H2O Vapor“, Jpn. J. Appl. Phys. 36 (1997) L687-L689
【0031】
図3に、p型シリコン表面に水蒸気熱処理で絶縁薄膜となるシリコン酸化薄膜を形成した場合の少数キャリアライフタイムを、水蒸気熱処理前のシリコン表面を洗浄した直後のシリコン酸化膜が無い状態での少数キャリアライフタイムと比較して示す。
図3の横軸のAは水蒸気熱処理前のシリコン表面洗浄直後の試料、Bは水蒸気熱処理によりシリコン酸化薄膜形成した後の試料を示す。
【0032】
図3は、p型シリコン表面を260℃、1.3×10
6Paの水蒸気熱処理により酸化処理を施したときの、光誘起電子キャリアのライフタイムの測定値である。水蒸気熱処理により、p型シリコン表面に膜厚1.5nmのシリコン酸化薄膜が形成され、光誘起電子キャリアのライフタイムは水蒸気熱処理前の20μs(同図の点a参照)から700μs(同図の点b参照)に大幅に増大している。
【0033】
水蒸気熱処理を用いれば、低温プロセスにおいてもSiO
2/Si界面のキャリアの再結合密度を大幅に低減することができ、少数キャリアライフタイムが増大する。本実施の形態では、この実証に基づいて、MIS構造における半導体基板と電極との間の絶縁薄膜に水蒸気熱酸化処理による絶縁薄膜を用い、より好ましいMIS型ソーラーセルの構成を可能にしている。なお、本実施の形態におけるMIS構造は、金属(電極)/絶縁薄膜/半導体構造、透明導電膜(電極)/絶縁薄膜/半導体構造を含む。
【0034】
図4に、各種元素の仕事関数φ
exp(eV)と原子番号Zの関係を示す。元素に応じて仕事関数は、2eVから6eVにわたって分布している。
【0035】
仕事関数は真空エネルギー準位とフェルミレベルとのエネルギー差で与えられるので、半導体は不純物ドーピングによって仕事関数を変えることができる。例えば、シリコンでは、4.05eV〜5.17eVの間で変化することができる。n型ドーピングを施すとフェルミレベルは伝導帯に近づき仕事関数は小さくなり、4.05eVに近くなる。ドーピング量を大きくすればフェルミレベルはさらに伝導帯に近づくので、仕事関数はさらに小さくなる。これに対し、p型ドーピングを施すとフェルミレベルは価電子帯に近づき仕事関数は大きくなり、5.17eVに近づく。よって、仕事関数の小さい金属と仕事関数の大きいp型半導体を選択すれば、半導体のバンド曲がりを誘発することができ、MIS界面がn型に転じる。逆に、仕事関数の大きい金属と仕事関数の小さいn型半導体を選択すれば、半導体のバンド曲がりを誘発できMIS界面がp型に転ずる。
【0036】
ソーラーセルは、電流を取り出す素子であるから2つの電極構造を要する。そして、本実施の形態は、前述したように、少なくとも2種類の仕事関数の異なる電極を用いてソーラーセルを構成することを特徴とする。さらに、本実施の形態は、薄い良質の絶縁膜を用いたMIS構造を構成することで、電極の仕事関数差を効率よく半導体の内蔵電位形成に用いることを特徴とする。薄い良質の絶縁膜の形成には、前述した水蒸気熱酸化処理法がより好ましいが、その他、シリコンの場合、前述した熱酸化法やプラズマCVD法あるいはスパッタ法を用いても、良質のシリコン酸化膜を形成することができる。
【0037】
次に、図面を参照して本発明のソーラーセル及びその製造方法の実施の形態について説明する。
【0038】
[第1実施の形態]
図1に、本発明に係る半導体ソーラーセルの第1実施の形態、すなわち原理的構成例を示す。本実施の形態では、パッシベーション薄膜として良質の絶縁薄膜を用いる。本実施の形態に係る半導体ソーラーセル1は、第1導電型の半導体基板2の一方の面(表面)上に良質の絶縁薄膜3を介して仕事関数の小さい金属を用いた第1の電極4を形成し、半導体基板2の他方の面(裏面)上に良質の絶縁薄膜5を介して仕事関数の大きい金属を用いた第2の電極6を形成して構成される。例えば、p型のシリコン半導体基板2を用い、このシリコン半導体基板2の一方の面上に前述した良質のシリコン酸化膜による絶縁薄膜3を介して仕事関数の小さい金属、例えばアルミニウム(Al)あるいはハフニウム(Hf)あるいはタンタル(Ta)あるいはインジウム(In)あるいはジルコニウム(Zr)を用いた第1の電極4が形成される。また、シリコン半導体基板2の一方の面とは反対側の他方の面上に良質のシリコン酸化膜による絶縁薄膜5を介して仕事関数の大きい金属、例えば金(Au)あるいはニッケル(Ni)あるいは白金(Pt)あるいはパラジウム(Pd)を用いた第2の電極6が形成される。絶縁薄膜3、5としては、光誘起キャリア再結合欠陥密度の小さい良質の絶縁薄膜を用いる。水蒸気熱処理法で形成したシリコン酸化薄膜を用いることが好ましい。さらに熱酸化法やプラズマCVD法あるいはスパッタ法を用いても、良質のシリコン酸化薄膜を形成することができる。シリコン酸化薄膜は、トンネル電流が流れる膜厚とし、0.5nm〜2.0nm程度が好適な膜厚である。本実施の形態では、いわゆるダブルMIS構造の形となる。
【0039】
一方のアルミニウム(Al)あるいはハフニウム(Hf)あるいはタンタル(Ta)あるいはインジウム(In)あるいはジルコニウム(Zr)による第1の電極4側の半導体面は、バンド曲がりが誘発され、MIS界面がn型に転じる。他方の金(Au)あるいはニッケル(Ni)あるいは白金(Pt)あるいはパラジウム(Pd)による第2の電極6側の半導体面は、逆向きのバンド曲がりが誘発され、MIS界面がより強いp型に転じる。
【0040】
半導体基板2に光hνが照射されると、光照射により発生したキャリアのうちの少数キャリアである電子eは、バンド曲がりにより形成された内蔵電位に沿って第1の電極4側に移動し、シリコン酸化膜による絶縁薄膜3を通じて第1の電極4に流れ込む。光照射により発生したキャリアのうちの多数キャリアであるホールhは、逆に第2の電極6側に移動し、シリコン酸化膜による絶縁薄膜5を通じて第2の電極6に流れ込む。
【0041】
光照射は、第1の電極4が形成された側からの光照射、あるいは第2の電極6が形成された側からの光照射のいずれでも可能であるが、電極となる金属と半導体との仕事関数差が大きい側から光照射することが好ましい。なぜならば、仕事関数差が小さい側から光照射した場合、発生したキャリアのうち少数キャリアが内蔵電位に沿って移動する距離が長くなるので、移動途中で少数キャリアの消滅する確率が高くなる。このため、少数キャリアの移動距離が短くなる、仕事関数差が大きい側から光照射するのが良い。
図1の構成では、第1の電極4が形成されている側から光(hν)を照射している。
【0042】
また、
図2には半導体基板としてn型を用いた本発明に係るソーラーセルの原理的構成例(他の例)を示す。本実施の形態に係るソーラーセル8は、前述のソーラーセル1と同様に、第1導電型の半導体基板2の一方の面(表面)上に良質の絶縁薄膜3を介して仕事関数の小さい金属を用いた第1の電極4を形成し、半導体基板2の他方の面(裏面)上に良質の絶縁薄膜5を介して仕事関数の大きい金属を用いた第2の電極6を形成して構成される。本例ではn型のシリコン半導体基板2を用いる。このシリコン半導体基板2の一方の面上に前述した良質のシリコン酸化膜による絶縁薄膜3を介して仕事関数の小さい金属、例えばアルミニウム(Al)あるいはハフニウム(Hf)あるいはタンタル(Ta)あるいはインジウム(In)あるいはジルコニウム(Zr)を用いた第1の電極4が形成される。また、シリコン半導体基板2の一方の面とは反対側の他方の面上に良質のシリコン酸化膜による絶縁薄膜5を介して仕事関数の大きい金属、例えば金(Au)あるいはニッケル(Ni)あるいは白金(Pt)あるいはパラジウム(Pd)を用いた第2の電極6が形成される。絶縁薄膜3、5としては、光誘起キャリア再結合欠陥密度の小さい良質の絶縁薄膜を用いる。ここでも水蒸気熱CVD法あるいはスパッタ法を用いても、良質のシリコン酸化膜を形成することができる。シリコン酸化薄膜は、トンネル電流が流れる膜厚とし、0.5nm〜2.0nm程度が好適な膜厚である。
【0043】
金(Au)あるいはニッケル(Ni)あるいは白金(Pt)あるいはパラジウム(Pd)を用いた第2の電極6側の半導体面は、バンド曲がりが誘発され、MIS界面がp型に転じる。他方のアルミニウム(Al)あるいはハフニウム(Hf)あるいはタンタル(Ta)あるいはインジウム(In)あるいはジルコニウム(Zr)を用いた第1の電極4側の半導体面は、逆向きのバンド曲がりが誘発され、MIS界面がより強いn型に転じる。
【0044】
半導体基板2に光hνが照射されると、光照射により発生したキャリアのうちの少数キャリアである電子eは、バンド曲がりにより形成された内蔵電位に沿って第1の電極4側に移動し、シリコン酸化による絶縁薄膜5を通じて第1の金属電極4に流れ込む。光照射により発生したキャリアのうちの多数キャリアであるホールhは、逆に第2の電極6側に移動し、シリコン酸化膜による絶縁薄膜3を通じて第2の金属電極6に流れ込む。段落[0041]で述べたように、n型半導体を用いた場合は光照射は、第2の電極6が形成された側からの照射が好ましい。少数キャリアのホールhは速やかに第2の電極6側に移動して光誘起電流に寄与する。
【0045】
このようにして、異種金属による第1、第2の電極4、6と、絶縁薄膜3、5と、半導体基板2のダブルMIS構造を利用したソーラーセル1が実現する。
【0046】
第1実施の形態に係る半導体ソーラーセル1によれば、良質の絶縁薄膜3、5、好ましくは水蒸気熱処理による酸化膜を用いることにより、光誘起されたキャリアのうち少数キャリアのライフタイムが大幅に増大する。また良質の絶縁薄膜3、5による半導体界面の
パッシベーション効果により低欠陥密度の界面が形成され、電極の仕事関数差による半導体のバンド曲がりが効率的に誘発され大きな内蔵電位を形成することができる。これは、ソーラーセルの大きい開放電圧(Voc)をもたらす。
【0047】
ダブルMIS構造であるので、光誘起キャリアの消滅が可及的に低減し、両電極4、6にそれぞれ効率よく電子及びホールを流すことができる。また、MIS構造であるため、pn接合を作るための不純物ドーピング工程が不要となり、製造工程が簡素化される。従って、光電力変換効率が高く、低コスト化を可能し、且つ実用可能なMIS型ソーラーセルを提供することができる。
【0048】
以上は原理的な実施の形態について説明したが、金属の電極は光を透過しないので半導体基板に光を入射するための工夫が必要である。以下に、半導体基板に効率よく光を入射できるようにした実施の形態について説明する。
【0049】
[第2実施の形態]
図5に、本発明に係る半導体ソーラーセルの第2実施の形態を示す。
図5Aは断面図、
図5Bは平面図である。第2実施の形態に係る半導体ソーラーセル11は、第1導電型の半導体基板2、本例ではp型のシリコン半導体基板が用いられる。半導体ソーラーセル11は、この半導体基板2の一方の面(表面)及び他方の面(裏面)上に良質の絶縁薄膜3、5を形成し、一方の面側の絶縁薄膜3上に第1の電極4を形成し、他方の面側の絶縁薄膜5上に第2の電極6を形成して構成される。半導体基板2の一方の面側が光hνの照射側となる。絶縁薄膜3、5は、水蒸気熱処理によるシリコン酸化薄膜で形成するのが好ましい。このシリコン酸化薄膜の膜厚は、前述と同様に、トンネル電流が流れる厚さとなる0.5nm〜2nm程度が好適である。この水蒸気熱処理を施すことにより、良質の絶縁薄膜/半導体界面が形成される。
【0050】
光入射される一方の面側の第1の電極4は、一方向に向かって所要の間隔を置いて複数のストライプ状の電極部4Aを配列して形成される。隣り合う電極部4A間の間隔d1は、光誘起された少数キャリアの拡散距離以下に選定される。例えば、p型シリコン半導体基板を用いた場合、電子少数キャリアのライフタイムが700μsのとき、電子少数キャリアの拡散距離は約1300μmとなる。従って、電極部4A間の間隔d1を、1300μmより十分小さくすることにより、光誘起少数キャリアを効率よく第1の電極4に注入させることができる。
【0051】
第1の電極4は、半導体基板2及び第2の電極6の仕事関数より小さい仕事関数の金属、例えばアルミニウム(Al)あるいはハフニウム(Hf)あるいはタンタル(Ta)あるいはインジウム(In)あるいはジルコニウム(Zr)等の金属で形成される。これら複数の電極部4Aは、互いに電気的接続される。本例では、第1の電極4が複数のストライプ状の電極部4Aを有し、一端で電極部4A同士が連結された櫛歯状に形成される。なお、第1の電極4は、複数のストライプ状の電極部4Aを、端部以外のストライプ方向の中間部で連結するような形状とすることもできる。
【0052】
光hνが入射されない他方の面側の第2の電極6は、絶縁薄膜5上の全面一様に形成される。第2の電極6は、半導体基板2及び第1の電極3の仕事関数より大きい仕事関数の金属、例えば金(Au)あるいはニッケル(Ni)あるいは白金(Pt)あるいはパラジウム(Pd)等の金属で形成される。
【0053】
第2実施の形態では、光hνが隣り合う電極部4Aの間を透過して半導体基板2内に入射される。光hνは半導体基板2に吸収され、光誘起キャリアを発生する。このとき、電極部4Aが形成されない領域で光誘起した少数キャリア(電子)は、拡散により、電極部4A上部に到達し、電極部4Aと半導体との仕事関数差で形成された内蔵電位に従って絶縁薄膜3を通じて第1の電極4に流れる。多数キャリア(ホール)は、第2の電極6との仕事関数差で形成された内蔵電位に沿って移動し、絶縁薄膜5を通じて第2の電極6に流れる。このように、電子は仕事関数の小さい第1の電極4へ流れ、ホールは仕事関数の大きい第2の電極6へ流れ、ソーラーセルが駆動する。
【0054】
第2実施の形態の半導体ソーラーセル11の製造方法を説明する。先ず、半導体基板2の両面、すなわち一方の面(表面)及び他方の面(裏面)上に、それぞれトンネル電流が流れる膜厚を有する良質の絶縁薄膜3、5を成膜し、半導体基板面の
パッシベーションを施す。絶縁薄膜3、5は、水蒸気熱処理によるシリコン酸化薄膜で形成するのが好ましい。シリコン酸化薄膜の膜厚は前述と同様に、0.5nm〜2nm程度が好適である。この水蒸気熱処理を施すことにより、良質の絶縁薄膜/半導体界面が形成される。
【0055】
次に、半導体基板2の光入射される一方の面の絶縁薄膜3上の全面に第1の電極を形成するための第1の金属膜を成膜する。この第1の金属膜を例えば選択エッチングによりパターニング処理して、一方向に向かって光誘起された少数キャリアの拡散距離以下の間隔d1で配列された複数のストライプ状の電極部4Aからなる第1の電極4を形成する。本例では、第1の電極4を複数の電極部4Aが一端で連結した櫛歯状に形成する。
【0056】
第1の電極4の形成工程の後、あるいは第1の電極4の形成工程の前に、半導体基板2の光が入射されない他方の面の絶縁薄膜5上に全面一様の第2の電極6を形成する。このようして、第2実施の形態に係るソーラーセル11を得る。
【0057】
第2実施の形態に係る半導体ソーラーセル11によれば、ストライプ状の電極部4Aの間から光hνが半導体基板内に入射させるので、効率よく光入射させることができる。そして、重複説明は省略するも、第1実施の形態で説明したと同様に、光電力変換効率が高く、低コスト化を可能にした、実用可能なMIS型ソーラーセルを提供することができる。
【0058】
[第3実施の形態]
図6に、本発明に係る半導体ソーラーセルの第3実施の形態を示す。
図6はソーラーセル及びその製造工程を示し、
図6A及び
図6Bは断面図、
図6Cは
図6Bの平面図である。第3実施の形態に係る半導体ソーラーセル12は、第1導電型の半導体基板2、本例ではp型のシリコン半導体基板が用いられる。半導体ソーラーセル12は、この半導体基板2の他方の面(裏面)上に良質の絶縁薄膜3を介して第1の電極4と第2の電極6とを形成し、半導体基板2の一方の面(表面)上に良質の光透過性の絶縁膜13を形成して構成される。絶縁膜13を有する半導体基板2の一方の面側が光hνの照射側となる(
図6参照)。
【0059】
MIS構造側の絶縁薄膜3は、水蒸気熱処理によるシリコン酸化薄膜で形成するのが好ましい。このシリコン酸化薄膜の膜厚は、前述と同様に、トンネル電流が流れる膜厚さとなる0.5nm〜2nm程度が好ましい。この水蒸気処理により良質の絶縁薄膜/半導体界面が形成される。
【0060】
第1の電極4は、ストライプ状の複数の第1の電極部4Aを一方向に向かって所要の間隔を置いて配列し形成される。また、第2の電極6は、同様にストライプ状の複数の第2の電極部6Aを一方向に向かって所要の間隔を置いて配列し形成される。そして、第1の電極4と第2の電極6が、それぞれの第1の電極部4A及び第2の電極部6Aが一方向に向かって交互に配列するように形成される。隣り合う第1の電極部4Aと第2の電極部6Aとの間の間隔d2は、光誘起された少数キャリアの拡散距離以下に選定される。
【0061】
前述と同様に、p型シリコン半導体基板を用いた場合、電子少数キャリアのライフタイムが700μsのとき、電子少数キャリアの拡散距離は約1300μmとなる。従って、隣合う第1及び第2の電極部4A及び6A間の間隔d2を、1300μmより十分小さくすることにより、光誘起少数キャリアを効率よく第1の電極4に注入させることができる。
【0062】
第1の電極4は、半導体基板2及び第2の電極6の仕事関数より小さい仕事関数の金属、例えばアルミニウム(Al)あるいはハフニウム(Hf)あるいはタンタル(Ta)あるいはインジウム(In)あるいはジルコニウム(Zr)等の金属で形成される。複数の第1の電極部4Aは、互いに電気的に接続される。第2の電極6は、半導体基板2及び第1の電極4の仕事関数より大きい仕事関数の金属、例えば金(Au)あるいはニッケル(Ni)あるいは白金(Pt)あるいはパラジウム(Pd)等の金属で形成される。複数の第2の電極部6Aは、互いに電気的に接続される。
【0063】
本例では、
図6B,Cに示すように、第1の電極4が、複数のストライプ状の第1の電極部4Aを有し、一端で第1の電極部4Aが連結された櫛歯状に形成される。また、第2の電極6が、複数のストライプ状の第2の電極部6Aを有し、一端で第2の電極部6Aが連結された櫛歯状に形成される。これら櫛歯状の第1の電極4と第2の電極6が互いに噛み合わされて形成される。半導体基板2の光入射される一方の面に形成された透明絶縁膜13は、水蒸気熱処理法、熱酸化法などを用いて、MIS構造側の絶縁薄膜3より厚い膜厚のシリコン酸化膜で形成することができる。
【0064】
第3実施の形態では、
図7に示すように、光hνが、半導体基板2の一方の面(表面)側から光透過性の絶縁膜13を通じて半導体基板2内に入射され、半導体基板2に吸収されて光誘起キャリアが発生する。半導体基板2の他方の面(裏面)側では第1の電極4及び第2の電極6が交合に形成されるので、第1の電極4が存在するMIS界面では
図1の左側のバンド曲がりが誘起され、第2の電極6が存在するMIS界面では
図1の右側のバンド曲がりが誘起される。従って、光誘起キャリアのうち少数キャリアである電子eは、第1の電極4側に移動し、絶縁薄膜3を通じて第1の電極4に流れ込む。また光誘起キャリアのうち多数キャリアであるホールhは、第2の電極6側に移動し、絶縁薄膜3を通じて第2の電極6に流れ込む。このように、電子eは仕事関数の小さい第1の電極4へ流れ、ホールhは仕事関数の大きい第2の電極6へ流れ、ソーラーセル12が駆動する。発生した光誘起少数キャリアが効率よく基板の反対側に拡散するために、半導体基板の厚さは少数キャリア拡散距離以下であることが好ましい。
【0065】
第3実施の形態の半導体ソーラーセルの製造方法を説明する。先ず、
図6Aに示すように、半導体基板2の両面、すなわち一方の面(表面)及び他方の面(裏面)上にそれぞれ透明絶縁膜13及び絶縁薄膜3を形成し、半導体基板面の
パッシベーションを施す。このとき、MIS構造を形成すべき他方の面上の絶縁薄膜3は、前述と同様に、トンネル電流が流れる膜厚を有し、良質の絶縁薄膜とする。絶縁薄膜3は、水蒸気熱処理によるシリコン酸化薄膜で形成するのが好ましい。シリコン酸化薄膜の膜厚は、0.5nm〜2nm程度が好適である。この水蒸気熱処理を施すことにより、良質の絶縁薄膜/半導体界面が形成される。
【0066】
半導体基板2の一方の面に形成された絶縁膜13は、水蒸気熱処理法、熱酸化法などを用いて、MIS構造側の絶縁薄膜3より厚い膜厚のシリコン酸化膜で形成することができる。なお、この絶縁膜13は、MIS構造側の絶縁薄膜3と同時工程で、同じ絶縁薄膜として形成することもできる。
【0067】
次に、
図6B及び
図6Cに示すように、半導体基板2の光入射される他方の面の絶縁薄膜3上に、ストライプ状の複数の第1の電極部4Aを有する第1の電極4と、ストライプ状の複数の第2の電極部6Aを有する第2の電極6とを形成する。第1の電極部4A及び第2の電極部6Aは、一方向に向かって光誘起された少数キャリアの拡散距離以下の間隔d2で交互に配列して形成される。第1の電極4は、他方の面の絶縁薄膜3上の全面に第1の金属膜を成膜した後、選択エッチングによりパターニング処理して形成する。第2の電極6も、第1の電極4に影響を与えないように、絶縁薄膜3上の全面に第2の金属膜を成膜した後、選択エッチングによりパターニング処理して形成する。第1の電極の形成工程と、第2の電極の形成工程の順序は、どちらが先でもよい。
【0068】
本例では、
図6Cに示すように、第1の電極4を、複数のストライプ状の第1の電極部4Aを有し、一端で第1の電極部4A同士が連結された櫛歯状に形成する。また、第2の電極6を、複数のストライプ状の第2の電極部6Aを有し、一端で第2の電極部6A同士が連結された櫛歯状に形成する。しかも、これら櫛歯状の第1の電極4と第2の電極6は互いに噛み合うように形成する。このようにして、第3実施の形態に係るソーラーセル12を得る。
【0069】
第3実施の形態に係る半導体ソーラーセルによれば、MIS構造を半導体基板の他方の面側に形成し、一方の面から光を照射する構成であるので、半導体基板内に十分効率よく光を入射することができ、光で電力変換効率をさらに高めることができる。そして、重複説明は省略するも、第1実施の形態で説明したと同様に、光電力変換効率が高く、低コスト化を可能にした、実用可能なMIS型ソーラーセルを提供することができる。
【0070】
ソーラーセルは、光照射と電流引き出しを両立させる必要がある。従来の多くのソーラーセルは、pn接合を有する半導体基板の上下に透明電極を形成して、電流を光照射方向と直交方向(横方向)に取り出す構造を用いている。透明電極の面内で横方向に電流を取り出すとき、つまり透明電極の端部から電流を取り出すときは、横方向の抵抗によって電流値が制限される。このため、透明電極の抵抗を非常に小さくしなければならないが、透明性を確保するために抵抗を小さくすることができず、透明電極の抵抗には下限があった。そこで、実際は、透明電極内のところどころに銀の細い電極を分散して電流を取り出している。透明電極では、導電率と透明性とはトレードオフの関係にある。
【0071】
本発明の実施の形態では、光照射と電流引き出しの両立を図った半導体ソーラーセルを構成することができる。この半導体ソーラーセルは、半導体基板の光入射側とは反対側に良質の絶縁薄膜を介して仕事関数の異なる第1及び第2の電極を形成してなるソーラーセル素体に、電流取り出し手段を貼り合わせて構成される。次に、この半導体ソーラーセルの実施の形態を説明する。
【0072】
[第4実施の形態]
図8に、光照射と電流引き出しの両立を図った本発明に係る半導体ソーラーセルの第4実施の形態を示す。
図8Aは断面図、
図8Bは光照射の反対側から見た平面図である。第4実施の形態に係る半導体ソーラーセル14は、半導体基板2の光入射側とは反対側に良質の絶縁薄膜3を介して仕事関数が異なる第1の電極4及び第2の電極6を形成してなるソーラーセル素体15に、電流取り出し手段16を貼り合わせて構成される。
【0073】
ソーラーセル素体15は、第1導電型の半導体基板2、本例ではp型のシリコン半導体基板2が用いられる。ソーラーセル素体15は、この半導体基板2の他方の面(裏面)上に良質の絶縁薄膜3を介して第1の電極4と第2の電極6とを形成し、半導体基板2の一方の面(表面)上に良質の光透過性の絶縁膜13を形成して構成される。絶縁膜13を有する半導体基板2の一方の面(表面)側は光hνの照射側となる。
【0074】
MIS構造側の絶縁薄膜3は、水蒸気熱処理によるシリコン酸化薄膜で形成するのが好ましい。このシリコン酸化薄膜の膜厚は、前述と同様に、トンネル電流が流れる膜厚さとなる0.5nm〜2nm程度が好ましい。この水蒸気処理により良質の絶縁薄膜/半導体界面が形成される。
【0075】
第1の電極4及び第2の電極6は、例えば
図9Aに示すように、ストライプ状の複数の第1の電極部4Aとストライプ状の複数の第2の電極部6Aとを一方向に向かって交互に配列して形成することができる。隣り合う第1の電極部4Aと第2の電極部6Aとの間の間隔d2は、光誘起された少数キャリアの拡散距離以下に選定される。
【0076】
あるいは、第1の電極4及び第2の電極6は、例えば
図9Bに示すように、それぞれ櫛歯状に形成して、第1の電極部4Aと第2の電極部6Aとが交互に配列されるように形成することができる。すなわち、第1の電極4は、一方向に配列された複数のストライプ状の第1の電極部4Aが一端で連結された櫛歯状に形成される。第2の電極6は、一方向に配列された複数のストライプ状の第1の電極部4Aが一端で連結された櫛歯状に形成される。これら櫛歯状の第1の電極4及び第2の電極6が、互いに噛み合わされて形成される。
【0077】
第1の電極4は、半導体基板2及び第2の電極6の仕事関数より小さい仕事関数の金属、例えばアルミニウム(Al)あるいはハフニウム(Hf)あるいはタンタル(Ta)あるいはインジウム(In)あるいはジルコニウム(Zr)等の金属で形成される。第2の電極6は、半導体基板2及び第1の電極4の仕事関数より大きい仕事関数の金属、例えば金(Au)あるいはニッケル(Ni)あるいは白金(Pt)あるいはパラジウム(Pd)等の金属で形成される。なお、第2の電極6は、後述のITO、ZnOによる透明導電膜で形成することも可能である。
【0078】
一方、電流取り出し手段16は、
図8A、Bに示すように、絶縁シート内に導電粒子が分散された異方性導電シート17と、絶縁体18内に第1及び第2の金属ブロック部19A及び19Bが埋め込まれた導電ブロック体21とを有して構成される。第1及び第2の金属ブロック部19A及び19Bは、平面的に見て、
図8Bに示すように、互いに櫛歯状をなして噛み合うように配置される。第1の金属ブロック部19Aは、ストライプ状の第1の電極部4Aのパターンに対応した複数のストライプ部が一端で連結された櫛歯状パターンに形成される。第2の金属ブロック部19Bは、ストライプ状の第2の電極部6Aのパターンに対応した複数のストライプ部が一端で連結された櫛歯状パターンに形成される。金属ブロック部19A,19Bは、導電性に優れた金属、例えば銅(Cu)等で形成することができる。
【0079】
本実施の形態では、ソーラーセル素体15の第1及び第2の電極4及び6に対して、異方性導電シート17を介して導電ブロック体21を貼り合わせて構成される。すなわち、異方性導電シート17を介して圧着することにより、第1の金属ブロック部19Aが第1の電極4と導通し、第2の金属ブロック部19Bが第2の電極6と導通する。第1の金属ブロック部19Aと第2の金属ブロック部19Bとには、それぞれ配線22A、22Bが導出される。
【0080】
第4実施の形態に係る半導体ソーラーセル14では、第3実施の形態で説明したと同様に、光hνが、半導体基板2の一方の面(表面)側から光透過性の絶縁膜13を通じて半導体基板2内に入射され、半導体基板2に吸収されて光誘起キャリアが発生する。半導体基板2の他方の面(裏面)側に形成された、第1の電極4に絶縁薄膜3を通じて電子eが流れ込み、第2の電極6に絶縁薄膜3を通じてホールhが流れ込む。
【0081】
そして、第1及び第2の電極4及び6に流れ込んだ電子e及びホールhは、異方性導電シート17を通じて、導電ブロック体21の第1及び第2の金属ブロック部19A、19Bに独立に流れ、配線22A、22Bより電流として取り出され、ソーラーセルとして駆動する。
【0082】
第4実施の形態に係る半導体ソーラーセル14によれば、異方性導電シート17は、
図8Aにおいて、厚み方向(縦方向)にしか電流を流さないので、第1の電極4及び第2の電極6の電流を独立に金属ブロック部19A、19Bに導くことができる。第1及び第2の電極4及び6に流れ込んだ電子e及びホールhによる電流は、それぞれ第1及び第2の金属ブロック部19A及び19Bにより縦方向に独立に取り出される。一方、櫛歯状の各第1及び第2の金属ブロック部19A及び19Bは、薄膜で形成される第1及び第2の電極4及び6の膜厚に比べて非常に厚く、しかも電気抵抗が非常に小さい金属、例えば銅(Cu)で形成される。金属ブロック部19A及び19Bが厚く形成されるので、金属ブロック部19A、19Bの平面パターンでの横方向の抵抗は非常に小さくなる。従って、効率よく電流を取り出すことができる。第1及び第2の電極4及び6の表面、及び導電ブロック体の接続面は、厳密には平坦性が得にくい。しかし、異方性導電シート17を介して接続することにより、安定、確実に第1及び第2の電極4及び6と、第1及び第2の金属ブロック部19A及び19Bとの接続が行える。
【0083】
また、半導体基板2の電極4、6が形成されていない一方の面(表面)側より光hνが照射されるので、半導体基板2内に十分効率よく光を入射することができ、光で電力変換効率をさらに高めることができる。そして、重複説明は省略するも、第1実施の形態で説明したと同様に、光電力変換効率が高く、低コスト化を可能にした、実用可能なMIS型ソーラーセルを提供することができる。従って、効率のよい光照射と良好な電流引き出しとの両立を図った半導体ソーラーセルを提供することができる。
【0084】
[変形例]
ソーラーセル素体15の第1及び第2の電極4及び6のパターンとしては、ストライプ状の他、種々のパターンが考えられる。例えば、
図10に示すように、ドット状に形成することも可能である。図示の例では、第1の電極4及び6を縦横方向に交互に配列する千鳥状パターンに形成している。各第1及び第2の電極4及び6間の間隔d2は、光誘起された少数キャリアの拡散距離以下に選定される。
【0085】
この島状に配列されたドット状の第1及び第2の電極4及び6のパターンに対応して、導電ブロック体21では、その第1及び第2の金属ブロック部19A及び19Bをドット状のパターンに形成する。そして、導電ブロック体21の外面に臨む第1の金属ブロック部19A同士、第2の金属ブロック部19B同士を電気的に接続して、それぞれ配線22A、22Bを導出するようになす。
【0086】
第1及び第2の電極4及び6をドット状に形成することにより、半導体基板2内で発生した電子e、ホールhを更に効率よく第1及び第2の電極4及び6に流れ込むことができ、しかも導電ブロック体21を通じて効率よく電流を取り出すことができる。
【0087】
[第5実施の形態]
図11に、光照射と電流引き出しの両立を図った本発明に係る半導体ソーラーセルの第5実施の形態を示す。
図11Aは断面図、
図11Bは光照射の反対側から見た平面図である。第5実施の形態に係る半導体ソーラーセル24は、半導体基板2の光入射側とは反対側に良質の絶縁薄膜3を介して第1及び第2の電極4及び6を形成してなるソーラーセル素体15に、電流取り出し手段16を貼り合わせて構成される。
【0088】
本実施の形態に係る半導体ソーラーセル24は、異方性導電シート17を用いずに、例えば陽極接合により直接、ソーラーセル素体21の第1及び第2の電極4及び6と、導電ブロック体21の第1及び第2の金属ブロック部19A及び19Bとを接合して構成される。
【0089】
ソーラーセル素体15及び導電ブロック体21の構成は、第4実施の形態で説明したと同様であるので、
図11において、
図8と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
また、変形例として、ソーラーセル素体15の第1、第2の電極4、6のパターン及び導電ブロック体21の第1、第2の金属ブロック部19A、19Bのパターンは、種々のパターンが考えられる。例えば、第1、第2の電極4、6及び第1、第2の金属ブロック部19A、19Bを、
図10で説明したように、ドット状のパターンで形成することもできる。
【0090】
第5実施の形態に係る半導体ソーラーセル24によれば、ソーラーセル素体15の第1及び第2の電極4及び6と、導電ブロック体21の第1及び第2の金属ブロック部19A及び19Bが直接接合される。これにより、第1及び第2の電極4及び6に流れ込んだ電子e、ホールhによる電流は、金属ブロック部19A、19Bにより縦方向に取り出される。一方、櫛歯状の各第1、第2の金属ブロック部19A、19Bは、薄膜で形成された第1、第2の電極4、6の膜厚に比べて非常に厚く、しかも電気抵抗が非常に小さい金属、例えば銅(Cu)で形成される。金属ブロック部19A、19Bが厚く形成されるので、金属ブロック部19A、19Bの平面パターンでの横方向の抵抗は非常に小さくなる。従って、効率よく電流を取り出すことができる。
【0091】
また、半導体基板2の電極4、6が形成されていない一方の面(表面)側より光hνが照射されるので、半導体基板2内に十分効率よく光を入射することができ、光で電力変換効率をさらに高めることができる。そして、重複説明は省略するも、第1実施の形態で説明したと同様に、光電力変換効率が高く、低コスト化を可能にした、実用可能なMIS型ソーラーセルを提供することができる。
【0092】
[第6実施の形態]
図12に、本発明に係る半導体ソーラーセルの第6実施の形態を示す。第6実施の形態に係る半導体ソーラーセル26は、第1導電型の半導体基板2、本例ではn型のシリコン半導体基板の一方の面(表面)及び他方の面(裏面)上に良質の絶縁薄膜3及び5を形成し、この絶縁薄膜3、5上にそれぞれ仕事関数の小さい第1の電極4及び仕事関数の大きい第2の電極27を形成して構成される。第1及び第2の電極4及び27は、半導体基板面の全面に形成される。光が照射される他方の面側の第2の電極27は、透明導電膜で形成される。透明導電膜による第2の電極27は、第1の電極4及び半導体基板2の仕事関数より大きい仕事関数を有する。第1の電極4は、前述と同様に第2の電極27及び半導体基板2の仕事関数より小さい仕事関数を有する金属で形成される。絶縁薄膜3、5は、水蒸気熱処理によるシリコン酸化薄膜で形成するのが好ましい。シリコン酸化薄膜の膜厚は前述と同様に、トンネル電流が流れる厚さとなる0.5nm〜2nm程度が好適である。この水蒸気熱処理を施すことにより、良質の絶縁薄膜/半導体界面が形成される。
【0093】
第6実施の形態では、光hνが、透明導電膜からなる第2の電極27を透過して半導体基板2に入射され、半導体基板2に吸収されて光誘起キャリアを発生する。光誘起キャリアのうち電子eは第1の電極4側に移動し、絶縁薄膜3を通じて第1の電極4へ流れる。ホールhは、第2の電極27側に移動し、絶縁薄膜5を通じて第2の電極27へ流れる。このように、電子eは仕事関数の小さい第1の電極4へ流れ、ホールhは仕事関数の大きい透明導電膜による第2の電極27へ流れ、ソーラーセルが駆動する。
【0094】
第6実施の形態の半導体ソーラーセル26の製造方法を説明する。先ず、半導体基板2の両面、すなわち一方の面(表面)及び他方の面(裏面)上にそれぞれ良質の絶縁薄膜3、5を成膜し、半導体基板面に
パッシベーションを施す。絶縁薄膜3、5は、水蒸気熱処理によるシリコン酸化薄膜で形成するのが好ましい。シリコン酸化薄膜の膜厚は前述と同様に、0.5nm〜2nm程度が好適である。この水蒸気熱処理を施すことにより、良質の絶縁薄膜/半導体界面が形成される。
【0095】
次に、光入射される他方の面側の絶縁薄膜5の全面上に、透明導電膜からなる第2の金属電極27を形成する。また、光入射されない一方の面側の絶縁薄膜3の全面上に、第1の金属電極4を形成する。第2の金属電極27及び第1の金属電極4は、共に半導体基板2の両面の全面に形成される。このようして、第6実施の形態に係るソーラーセル26を得る。
【0096】
第6実施の形態に係る半導体ソーラーセル26によれば、透明導電膜からなる第2の金属電極27側から光hνを半導体基板2内に入射させるので、効率よく光入射させることができる。そして、第1実施の形態で説明したと同様に、光電力変換効率が高く、低コスト化を可能にした、実用可能なMIS型ソーラーセルを提供することができる。
【0097】
透明電極として例えばInSnO2(ITO)あるいはZnOをあげることができる。仕事関数はそれぞれ、4.8eVと7.8eVである。ITO、ZnOはn型の仕事関数はシリコン半導体に比べて高い。ZnOの仕事関数はp型のシリコン半導体に比べて高い。従ってITOあるいはZnO透明電極は、金(Au)あるいはニッケル(Ni)あるいは白金(Pt)あるいはパラジウム(Pd)等の金属の代替えとして用いることができる。
【0098】
すなわち、n型のシリコン半導体では仕事関数が4.05eVに近いので、ITO膜あるいはZnO膜を仕事関数の大きい第2の電極として用いることができる。また、p型のシリコン半導体では仕事関数が5.17eVに近くなるので、ZnO膜を仕事関数の大きい第2の電極として用いることができる。さらに、p型のシリコン半導体では、ITO膜を仕事関数の小さい第1の電極として用いることもできる。
【0099】
次に、本発明の基本概念に基づく半導体ソーラーセルについて実証する。ここでは、
図1に示す基本概念(第1実施の形態)に基づき、
図13に示す半導体ソーラーセルを試作した。試料としては、先ず、比抵抗30Ωcm、板厚520μmのシリコンによるp型半導体基板32の表裏両面を熱酸化し、膜厚100nmのシリコン酸化(SiO
2)膜33、35を形成した。このときの電子小数キャリアのライフタイムは、185μsであった。表面キャリア再結合速度は、141cm/sと見積もられた。
【0100】
次に、バッファ・フッ酸を用いて、表面側のシリコン酸化膜33を薄膜化した。光学測定により、約1.5nmにかるまで薄くした。薄膜化後、電子少数キャリアのライフタイムは16μsと低下した。
【0101】
次いで、表面パッシベーションを行う目的で、1.3×10
6Pa、260℃、3時間の水蒸気熱処理を施した。シリコン酸化膜33の膜厚は、変わらず約1.5nmである。水蒸気熱処理でシリコン酸化膜の膜質が向上する。その結果、電子小数キャリアのライフタイムは47μsに大きくなり、表面キャリア再結合速度は970cm/sと見積もられた。
【0102】
次に、半導体基板の表面側のシリコン酸化膜33上に、それぞれストライプ状のアルミニウム(Al)による第1の電極34と、金(Au)による第2の電極36を真空蒸着法で形成した。Alによる第1の電極34とAuによる第2の電極36の間の距離d4は、0.29mmとした。第1の電極34の幅t1は0.5mm、第2の電極36の幅t2は1mmとした。このようにして、
図13に示す本発明に係るソーラーセルの試料31を作成した。
【0103】
比較のために、
図14に示す半導体基板32の表面側のシリコン酸化膜33上に、アルミニウム(Al)のみのストライプ状の第1の電極34′及び第2の電極36′を形成した比較ソーラーセルの試料37を作成した。電極34′、36′以外の構成は
図13と同様であるので、対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0104】
それぞれの試料31、37に対して、光強度21.7mW/cm2のハロゲンランプ光を半導体基板32の裏面、及び表面と裏面から照射して、ソーラーセル特性を測定した。
【0105】
図15Aに、ストライプ状のAlによる第1の電極34及びAuによる第2の電極36(Al−Au電極)を形成した本発明に係る試料31の絶対電流密度―電圧特性を示す。
図15Bに、Alの電極のみ、すなわち、ストライプ状のAlによる第1の電極34′及びストライプ状のAlによる第2の電極36′(Al−Al電極)を形成した比較のための試料37の絶対電流密度―電圧特性を示す。
【0106】
各
図15A、Bにおいて、縦軸は絶対電流密度をlogの値で示し、横軸は−1Vから+1Vまでの電圧を示す。通常のソーラーセル特性ではプラスの電圧しか測定しないが、本測定ではプラス/マイナスの電圧について測定している。破線b、dは、光を当てないときの特性、実線a,cは、電極が形成されていない裏面側から光L1を照射したときの特性をそれぞれ示す。
【0107】
両試料31、37共に、破線b、dで示すように、光を当てない暗状態時には、小さな電圧印加で電流が流れた。これは表面側のシリコン酸化膜33が薄いために生じたFN電流と考えられる。裏面側から光L1を照射したとき、Al−Au電極34、36を形成した本発明の試料31では、
図15Aの実践aで示すように、ゼロ電流(谷部30参照)が0Vよりプラス側に大きくシフトし、ゼロ電圧(0V)のときに大きな電流が流れる。これは、大きな光誘起電流が生じたことを示している。さらに、ゼロ電流(谷部30参照)が電圧0.49Vで現れた。これは大きな開放電圧を示唆している。なお、Al電極34とAu電極36間に順方向電圧をかけて測定しており、ゼロ電流(谷部30参照)は、丁度電圧が打ち消されて電極が流れないところに相当する。
【0108】
これに対して、Al−Al電極34′、36′を形成した比較の試料37では、裏面側から光L1を照射したとき、
図15Bの実践cで示すように、ゼロ電圧(0V)のとき電流は小さかった。そして、ゼロ電流(谷部30′参照)の電圧は僅か0.02Vであった。
【0109】
この結果、
図15Aの本発明のソーラーセル特性は、Al−Au電極34、36の仕事関数差がシリコン半導体基板32中に電位差を生じ、光誘起電流を発生させたことを示している。
【0110】
図16に、Al−Au電極34、36を形成した本発明の試料31に、光L2、L1を表面と裏面から照射したときのソーラーセル特性を示す。
図16では、縦軸に、
図15Aの縦軸のlog値をリニアな値にしたときの電流密度[mA/cm
2]を示し、横軸に、
図15Aの横軸の0Vから+0.5Vまでを抜き出した電圧[V]を示す。また、曲線eは表面から光L2を照射したときの特性、曲線fは裏面から光L1を照射したときの特性を示す。この
図16から典型的なソーラーセル特性が得られるのが認められる。裏面照射の場合、短絡電流密度、開放電圧、効率は、それぞれ5.8mA/cm
2、0.49V、7.5%であった。表面照射の場合は、金属の電極34,36が光照射を妨げるので電流密度が小さかった。
【0111】
図15及び
図16のソーラーセル特性の結果は、異種電極、本例では異種金属の仕事関数差を用い、電極が形成されない裏面から光照射する本発明のソーラーセルが、優れたソーラーセツ特性を有していることを実証するものである。
【0112】
本発明に係る半導体ソーラーセルでは、半導体(シリコン)表面のパッシベーションが必須であり、そのためにいろいろな技術の適用が考えられる。パッシベーションとして、前述の
図3に示す水蒸気熱処理は有効である。熱酸化膜も安定で良好なパッシベーションができるので、薄膜熱酸化膜は有力な候補である。プラズマCVDなどの方法で薄膜酸化膜ができれば、低コスト化の観点から良いと思われる。また、薄膜酸化膜と水蒸気熱処理の組み合わせは、表面のパッシベーションの技術として有効である。
【0113】
上記実証では、熱酸化膜を薄膜化し水蒸気熱処理をしてソーラーセルを作成した。このとき、上述したように、熱酸化膜付きの状態でライフタイムが185μsの試料を用いた。熱酸化膜を薄膜化した後の膜厚は、平均的には1.5nmであったが、ばらつきが大きく、ところどころ完全にエッチングされた部分もあると思われる。そのため、ライフタイムは非常に小さくなった。しかし、水蒸気熱処理後はライフタイムが47μsに向上した。ライフタイムの向上は、水蒸気熱処理により、エッチングされた部分を中心にパッシベーションがなされたと考えられる。このライフタイム47μsのパッシベーション特性の試料において、本発明のソーラーセル特性の原理実証ができた。より良い特性のソーラーセル作成のためには、パッシベーションの最適化が重要である。
【0114】
本発明に係るソーラーセルにおいて、半導体基板2の他方の面に絶縁薄膜3を介して第1、第2の電極4、6を形成し、半導体基板2の一方の面側から光照射する実施の形態では、電極間、電極幅、半導体基板の板厚を次ぎのように設定することができる。
【0115】
少数キャリアの拡散長Lは次の式で表される。
L= √(D×τ)
Dは拡散係数、τはライフタイムを示す。
【0116】
図17に示すように、半導体基板2の板厚をz1、第1の電極4の電極幅t1、第2の電極6の電極幅t2、電極間の間隔d2としたとき、それぞれ次のように小数キャリアの拡散長L以下に設定することが好ましい。
d2 < √(D・τ)
t1 < √(D・τ)
t2 < √(D・τ)
z1 < √(D・τ)
【0117】
本発明では、試料の質によりライフタイムがいろいろな値をとりうるので、それに応じた試料設計をする必要がある。
【0118】
一方、本発明に係る半導体ソーラーセルは、半導体基板2の不純物濃度に関わりなく構成することができる利点がある。本発明に係る半導体基板2の不純物濃度としては、好ましくは1×10
15cm
―3以上の高不純物濃度とする。本発明に係る半導体基板2の不純物濃度としては、1×10
15cm
―3以下の低不純物濃度でも可能である。
【0119】
[第7実施の形態]
図18に、本発明に係る半導体ソーラーセルの第7実施の形態を示す。パッシベーション薄膜として、シリコン酸化(SiO
2)膜は、シリコンの半導体基板の表面を良好にパッシベーションする絶縁体である。しかし、パッシベーション薄膜として用いるシリコン酸化膜は、トンネル効果で例えば金属の第1及び第2の電極に電流を流すために、膜厚を約2nm以下、好ましくは1.5nm以下にする必要がある。1nm以下のシリコン酸化(SiO
2)膜をパッシベーション用に用いた場合、膜厚のバラツキが無視できない。より薄いシリコン酸化膜の箇所は、上に形成した金属が拡散してシリコン基板にコンタクトしてパッシベーション効果がなくなる恐れがある。半導体ソーラーセルを構成する半導体基板の表面パッシベーションを達成できれば、表面に形成するパッシベーション薄膜は、完全な絶縁膜でなくても良い。例えば、半導体基板よりもバンドギャップの大きい真性非晶質半導体は、半導体基板に対して絶縁性が高くかつ電流導通可能なパッシベーション膜として用いることができる。
【0120】
第7実施の形態に係る半導体ソーラーセル41は、第1導電型の半導体基板2,本例ではp型の結晶シリコンによる半導体基板が用いられる。結晶シリコンは、単結晶シリコンあるいは多結晶シリコンである(以下、同様である)。半導体ソーラーセル41は、半導体基板2の一方の面にパッシベーション薄膜となる真性非晶質シリコン膜42を介して第1の電極4と第2の電極6とを形成し、半導体基板2の他方の面に絶縁膜44を形成して構成される。この構成では、半導体基板2の光hνが照射される他方の面での乱反射を防止するために、反射防止膜43を介して絶縁膜44が形成される。絶縁膜44としては、光透過性を有する例えばシリコン酸化膜等を用いることができる。反射防止膜43としては、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜の積層膜で形成することができる。
【0121】
第1の電極4及び第2の電極6は、第3実施の形態で説明したと同様に、それぞれストライプ状の複数の電極部を一方向に向かって所要の間隔を置いて配列して形成される。第1の電極4及び第2の電極6は、櫛歯状に形成され、互いに噛み合うように配置される。隣り合う第1の電極4と第2の電極6との間隔は、電子少数キャリアの拡散距離以下に設定される。
【0122】
第1の電極4は、半導体基板2及び第2の電極6の仕事関数より小さい仕事関数の金属、例えばアルミニウム(Al)あるいはハフニウム(Hf)あるいはタンタル(Ta)あるいはインジウム(In)あるいはジルコニウム(Zr)等の金属で形成される。第2の電極6は、半導体基板2及び第1の電極4の仕事関数より大きい仕事関数の金属、例えば金(Au)あるいはニッケル(Ni)あるいは白金(Pt)あるいはパラジウム(Pd)等の金属で形成される。
【0123】
真性非晶質シリコン膜42は、バンドギャップが1.5eV〜1.9eVの半導体である。この真性非晶質シリコン膜42のバンドギャップは、結晶シリコンの半導体基板2のバンドギャップ1.12eVより大きく、半導体基板2に対して絶縁性が高く、電流導通可能な膜である。真性非晶質シリコン膜42は、水素を導入することにより、欠陥を低減することがで、パッシベーション膜2として用いることができる。非晶質シリコンが優れたパッシベーション効果を発揮することは、結晶シリコンと非晶質シリコン膜を組み合わせたHITソーラーセルにおいて、実証されている。
【0124】
真性非晶質シリコン膜42は、バンドギャップがシリコン酸化(SiO
2)膜よりも小さいので、厚い膜を用いてもトンネル電流を得ることができる。パッシベーション薄膜として真性非晶質シリコン膜42の好適な膜厚は、3nm〜50nmである。本実施の形態では、真性非晶質シリコン膜単層の形成で十分である。
【0125】
第7実施の形態に係る半導体ソーラーセル41の動作は、前述の第3実施の形態と同様である。
【0126】
第7実施の形態に係る半導体ソーラーセル41によれば、パッシベーション薄膜として真性非晶質シリコン膜を用いるので、シリコン酸化膜よりバンドギャップが小さく、かつ膜厚を大きくしても大きなトンネル電流をえることができる。従って、より光電力変換効率が高い実用可能なソーラーセルを提供することができる。
【0127】
[第8実施の形態]
図19に、本発明に係る半導体ソーラーセルの第8実施の形態を示す。本実施の形態は、第7実施の形態の変形例に相当する。第8実施の形態に係る半導体ソーラーセル46は、第1導電型の半導体基板2,本例ではp型の結晶シリコンによる半導体基板が用いられる。半導体ソーラーセル46は、半導体基板2の一方の面にパッシベーション薄膜47を介して第1の電極4と第2の電極6とを形成し、半導体基板2の他方の面に反射防止膜43を介して絶縁膜44を形成して構成される。
【0128】
本実施の形態では、パッシベーション薄膜47として、半導体基板2上に成膜した薄いシリコン酸化膜48と、シリコン酸化(SiO
2)膜48上に成膜した真性非晶質シリコン膜42とにより構成される。薄いシリコン酸化膜48は、トンネル効果を有する膜厚、例えば膜厚1.5nm以下、例えば0.5nmで形成される。薄いシリコン酸化膜48は、好ましくは前述した水蒸気熱酸化膜を用いる。
【0129】
その他の構成は、第7実施の形態で説明した同様であるので、
図19において、
図18と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0130】
第8実施の形態に係る半導体ソーラーセル46によれば、薄いシリコン酸化膜48の上に真性非晶質シリコン膜42を形成することにより、第1の電極4及び第2の電極6である金属の拡散を防止でき、良好なパッシベーションとトンネル電流が得られる。従って、より信頼性が高く、またより光電力変換効率が高い実用可能なソーラーセルを提供することができる。
【0131】
第7、第8実施の形態では、結晶シリコンの半導体基板2に、パッシベーション薄膜として半導体基板と同じ半導体による真性非晶質シリコン膜42を形成した。その他、結晶シリコンの半導体基板2に、パッシベーション薄膜としてシリコン以外の半導体による真性非晶質半導体膜を形成することもできる。半導体基板として半導体材質が異なる結晶半導体基板を用いたときにも、パッシベーション薄膜として、上記と同様に、結晶半導体基板と同じ半導体、あるいは異なる半導体による真性非晶質半導体膜を用いることができる。パッシベーション薄膜としては、好ましくは半導体基板と同質の半導体による真性非晶質半導体膜を用いるのがよい。
【0132】
第7実施の形態のパッシベーション薄膜となる真性非晶質半導体膜42、あるいは第8実施の形態の真性非晶質半導体膜42及び薄いシリコン酸化膜48によるパッシベーション薄膜47は、第1実施の形態〜第6実施の形態のパッシベーション薄膜に適用できる。
【0133】
本発明の実施の形態のパッシベーション薄膜として、絶縁性の高いダイヤモンドライクカーボン膜を用いることもできる。
【0134】
前述したように、シリコン酸化(SiO
2)は、10eVのバンドギャップを持ち、非常に優秀な絶縁体であるため、本発明のパッシベーション薄膜として好適である。一方、
図20に示すように、様々な高誘電率材料が開発されており、これらはいずれもバンドギャップが1.18eV以上有するので、半導体、例えばシリコンと金属間に設置するパッシベーション薄膜として用いることができる。
【0135】
特に、電子に対してポテンシャル障壁の小さい材料と、ホールに対してポテンシャル障壁の小さい材料による薄膜を組み合わせれば、良好な半導体ソーラーセルを得ることができる。電子に対してポテンシャル障壁の小さい材料としては、Ta
2O
5、SrTiO
3、BaZrO
3、ZrO
2、HfO
2、ZrSiO
4、HfSiO
4等がある。ホールに対してポテンシャル障壁の小さい材料としては、LaAlO
3、Si
3N
4等がある。
【0136】
図20は、バンドギャップ1.1eVのシリコン(同図左端)と、電子に対してポテンシャル障壁が小さい材料(実線)と、ホールに対してポテンシャル障壁が小さい材料(破線)を示す。
図20では、シリコンのバンドギャップ1.1eVを挟んで上半分(E)に電子に対するポテンシャル障壁を示し、下半分(H)にホールに対するポテンシャル障壁を示す。Ta
2O
5、SrTiO
3、BaZrO
3、ZrO
2、HfO
2、Zr
SiO
4,HfSiO
4は、電子に対してポテンシャル障壁が小さい材料である。Si
3O
4、LaAlO
3は、ホールに対してポテンシャル障壁が小さい材料である。なお、一点鎖線は、SiO
2、Al
2O
3、Y
2O
3、La
2O
3のポテンシャル障壁を示す。
【0137】
次に、電子に対してポテンシャル障壁の小さい材料による薄膜と、ホールに対してポテンシャル障壁の小さい材料による薄膜とを、それぞれの電極下のパッシベーション薄膜として用いた半導体ソーラーセルの実施の形態を示す。
【0138】
[第9実施の形態]
図21に、本発明に係る半導体ソーラーセルの第9実施の形態を示す。本実施の形態は、上述した電子に対してポテンシャル障壁の小さい材料による薄膜と、ホールに対してポテンシャル障壁の小さい材料とによる薄膜を、それぞれの電極下のパッシベーション薄膜として用いた半導体ソーラーセルである。
図21Aは原理的構成を示し、
図21Bは動作説明図を示す。
【0139】
第9実施の形態に係る半導体ソーラーセル51は、第1導電型の半導体基板2,本例ではp型の結晶シリコンによる半導体基板が用いられる。半導体ソーラーセル51は、半導体基板2の一方の面に、パッシベーション薄膜として電子に対してポテンシャル障壁が小さい例えばタンタル酸化(Ta
2O
5)膜52が形成され、タンタル酸化膜52上に仕事関数の小さい例えばAlによる第1の電極4が形成される。また、半導体基板2の他方の面に、パッシベーション薄膜としてホールに対してポテンシャル障壁が小さい例えばシリコン窒化(Si
3N
4)膜53が形成され、シリコン窒化膜53上に仕事関数が大きい例えばAuによる第2の電極6が形成される。これによって、半導体ソーラーセル51が構成される。パッシベーション薄膜となるタンタル酸化膜52及びシリコン窒化膜53は、その膜厚を、上述したシリコン酸化薄膜の膜厚0.5nm〜2.0nmより厚くして形成することができる。
【0140】
第9実施の形態の半導体ソーラーセル51の動作を説明する。
図21Bに示すように、半導体2に光hνが照射されると、光照射により発生したキャリアの内の小数キャリアである電子eが、バンド曲がりにより形成された内蔵電位に沿って第1の電極4側に移動し、タンタル酸化膜52を通じて第1の電極4に流れる。このとき、パッシベーション薄膜であるタンタル酸化膜52は電子eに対してポテンシャル障壁が小さいので、電子eは第1の電極4へ極めて流れ易くなる。光照射により発生したキャリアのうちの多数キャリアデアルホールhは、逆に第2の電極6側に移動し、パッシベーション薄膜であるシリコン窒化膜53を通じて第2の電極6に流れる。このとき、パッシベーション薄膜であるシリコン窒化膜53はホールhに対してポテンシャル障壁が小さいので、ホールhは第2の電極6へ極めて流れ易くなる。従って、直流抵抗の少ない半導体ソーラーセルを構成することができる。
【0141】
第9実施の形態に係る半導体ソーラーセル51によれば、直流抵抗の少ない構造を有するので、更に光電力変換効率が高い実用可能なソーラーセルを提供することができる。シリコン酸化膜よりバンドギャップが小さく、かつ電子及びホールに対して、それぞれポテンシャル障壁の小さい膜をパッシベーション薄膜として用いることにより、膜厚を大きくしても、大きなトンネル電流が得られるので、パッシベーション薄膜としての信頼性が向上する。
【0142】
[第10実施の形態]
図22に、本発明に係る半導体ソーラーセルの第10実施の形態を示す。本実施の形態は、上述した電子に対してポテンシャル障壁の小さい材料による薄膜と、ホールに対してポテンシャル障壁の小さい材料とによる薄膜を、それぞれの電極下のパッシベーション薄膜として用いた半導体ソーラーセルである。
【0143】
第10実施の形態に係る半導体ソーラーセル55は、第1導電型の半導体基板2,本例ではp型の結晶シリコンによる半導体基板が用いられる。半導体ソーラーセル55は、半導体基板2の一方の面にパッシベーション薄膜56を介して第1の電極4と第2の電極6とを形成し、半導体基板2の他方の面に反射防止膜43を介して絶縁膜44を形成して構成される。パッシベーション薄膜56は、前述した高誘電率材料膜で形成される。そして、このパッシベーション薄膜56は、第9実施の形態で説明したと同様に、第1の電極4下に対応するパッシベーション薄膜を電子に対してポテンシャル障壁が小さい材料膜で形成し、第2の電極6下に対応するパッシベーション薄膜をホールに対してポテンシャル障壁が小さい材料膜で形成する。
【0144】
シリコンの半導体基板2の表面に高誘電率材料膜を形成したとき、シリコンの極表面には極めて薄い例えば0.5nm程度の膜厚のシリコン酸化(SiO2)膜57が形成されることが知られている。従って、本実施の形態では、この薄いシリコン酸化膜57とその上の高誘電率材によるパッシベーション薄膜56との2層膜構造のパッシベーション薄膜58が形成されることになる。
【0145】
このとき、シリコン酸化膜57が半導体基板表面をパッシベーションし、高誘電率材によるパッシベーション薄膜56がパッシベーションと、電子及びホールの輸送層として機能することになる。
【0146】
その他の構成は、第7実施の形態及び第8実施の形態で説明したと同様であるので、
図18、
図21に対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0147】
第10実施の形態に係る半導体ソーラーセル55によれば、薄いシリコン酸化膜57で半導体基板表面のパッシベーションが行われ、また高誘電率材によるパッシベーション薄膜56でさらに半導体基板表面のパッシベーションが行われる。これにより、半導体基板表面のパッシベーションが良好となる。しかも、高誘電率材によるパッシベーション薄膜56は、それぞれの第1の電極4及び第2の電極6下に在って電子輸送層、ホール輸送層となるので、第1の電極4への電子の流れ、第2の電極6へのホールの流れを容易にすることができる。従って、パッシベーションの信頼性が向上し、直流抵抗が少なくなるので、更に光電力変換効率が高い実用可能なソーラーセルを提供することができる。
【0148】
第9実施の形態のパッシベーション薄膜52,53、あるいは第10実施の形態のパッシベーション薄膜58の構成は、第2実施の形態〜第6実施の形態のパッシベーション薄膜に適用できる。
【0149】
上述した第2〜第5、第7〜第10実施の形態では、半導体基板2としてp型のシリコン半導体基板を用いたが、n型のシリコン半導体基板を用いることもできる。上述した第6実施の形態では、半導体2としてn型のシリコン半導体基板を用いたが、p型のシリコン半導体基板を用いることもできる。
【0150】
上例では、半導体基板2としてシリコン基板を用いたが、その他、ゲルマニウム基板、例えばGaAs、その他などの化合物半導体基板を用いることもできる。
【0151】
上述の実施の形態では、第1の電極及び/又は第2の電極を仕事関数の異なる2種以上の電極、例えば金属の電極で形成することができる。例えば、機能に合わせて、内蔵電位を形成するための電極と、電流取り出しのための低抵抗の電極とを組み合わせて第1の電極及び/又は第2の電極を構成することができる。