【実施例】
【0105】
本発明について、実施例および比較例を用いてさらに説明する。以下の実施例および比較例においては、SNPを人工的に作製した2種類のプラスミドをテンプレートとして用い、PCRによって2種類のテンプレートから増幅された核酸の何れか一方を特異的に確認できるか否かを検証した。
【0106】
より具体的には、公知のプラスミドであるpUC18(GenBank Accession Number L09136)の465位をSNPの位置として想定して、pUC18における465位のGをTに変異させたプラスミドを作製した。この変異プラスミドは、QuickChange Multi Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene社製)を用いて、マニュアルに沿って作製した。
【0107】
このpUC18(以下、「テンプレートG」と表記する。)、および465位がTであるpUC18(以下、「テンプレートT」と表記する。)をPCRのためのテンプレートとして用いた。テンプレートGおよびテンプレートTの具体的な塩基配列を、配列番号1および2に示す。
【0108】
また、PCRのための、フォワードプライマーとしてM13M3を用い、リバースプライマー(ヘアピンプライマー)としてHP−C、HP−A、またはHP−A1を用いた。HP−Cに対するコンペティタープライマーとしてCP−A、CP−A1またはCP−A2を用いた。HP−Aに対するコンペティタープライマーとしてCP−C、CP−C1またはCP−C2を用いた。HP−A1に対するコンペティタープライマーとしてCP−C2を用いた。
【0109】
M13M3、HP−C、HP−A、CP−A、CP−A1、CP−A2、CP−C、CP−C1、CP−C2およびHP−A1の塩基配列は、以下の通りである:
M13M3:GTTGTAAAACGACGGCCAGT(配列番号3)
HP−C :ATCATCTACAACTTTTGTCTGTAATGATCAGGAAACAGCTATGAC(配列番号4)
HP−A :ATCATCTACAACTTTTGTCTGTAATGATCAGGAAACAGCTATGAA(配列番号5)
CP−C :CAGGAAACAGCTATGAC(配列番号6)
CP−C1:ACAGGAAACAGCTATGAC(配列番号7)
CP−C2:CACAGGAAACAGCTATGAC(配列番号8)
CP−A :CAGGAAACAGCTATGAA(配列番号9)
CP−A1:ACAGGAAACAGCTATGAA(配列番号10)
CP−A2:CACAGGAAACAGCTATGAA(配列番号11)。
【0110】
HP−A1:ATCATCTACAACTTTTGTCTGTAATGATACAGGAAACAGCTATGAA(配列番号13)
M13M3は、テンプレートGまたはテンプレートTの376位〜395位の塩基配列の相補鎖に対して相補的な塩基配列からなるプライマーである。
【0111】
HP−Cは、ヘアピン構造を形成可能な塩基配列(1位〜28位の塩基配列)と、テンプレートGの465位〜481位の塩基配列の相補鎖に対して相補的な塩基配列(29位〜45位の塩基配列)からなるプライマーである。HP−Cの3’末端の位置は、テンプレートGにおける465位(SNPの位置)になるように設計されている。
【0112】
CP−Aは、テンプレートTの465位〜481位の塩基配列の相補鎖に対して相補的な塩基配列からなるプライマーである。CP−A1は、テンプレートTの465位〜482位の塩基配列の相補鎖に対して相補的な塩基配列からなるプライマーである。CP−AテンプレートTの465位〜483位の塩基配列の相補鎖に対して相補的な塩基配列からなるプライマーである。CP−A、CP−A1およびCP−A2の3’末端の位置は、SNPの位置になるように設計されている。これらの3’末端の塩基はAであり、テンプレートGの465位のGと相補的ではなく、テンプレートTの465位のTと相補的である。また、CP−Aは、HP−Cの29位〜45位の塩基配列と同じ長さある一方、CP−A1およびCP−A2はそれぞれ、HP−Cの29位〜45位の塩基配列よりも、5’末端側に1塩基および2塩基だけ長い。
【0113】
以上のような塩基配列であるため、HP−CとCP−A、CP−A1またはCP−A2とを組み合わせてPCRを実施した場合、HP−CはテンプレートGに優先的に結合し、CP−A、CP−A1またはCP−A2はテンプレートTに優先的に結合する。
【0114】
HP−Aは、その3’末端がテンプレートTの465位のTと相補的な塩基Aになっている点を除いて、HP−Cと同様である。HP−A1も、その3’末端がテンプレートTの465位のTと相補的な塩基Aになっている。また、CP−C、CP−C1およびCP−C2は、それらの3’末端がテンプレートGの465位のGと相補的な塩基Cになっている点を除いて、それぞれ、CP−A、CP−A1およびCP−A2と同様である。このため、HP−AとCP−C、CP−C1またはCP−C2とを組み合わせてPCRを実施した場合、HP−AはテンプレートTに優先的に結合し、CP−C、CP−C1またはCP−C2はテンプレートGに優先的に結合する。同様に、HP−A1とCP−C2とを組み合わせてPCRを実施した場合、HP−A1はテンプレートTに優先的に結合し、CP−C2はテンプレートGに優先的に結合する。
【0115】
表1に、実施例および比較例において使用した、テンプレートおよびプライマーの組合せを示す。
【0116】
【表1】
【0117】
以下の実施例1〜12,比較例1〜8では、試料核酸がホモ接合体に由来する核酸である場合を想定し、PCRのためのテンプレートとしてテンプレートGまたはテンプレートTの何れか一方を用いた。そして、用いたテンプレートから特異的に増幅された核酸を確認できるか否かを検証した。
【0118】
また、実施例13,14および比較例9,10では、試料核酸がヘテロ接合体に由来する核酸である場合を想定し、PCRのためのテンプレートとしてテンプレートGおよびテンプレートTの両方を含む混合物を用いた。そして、用いた混合物中のテンプレートのどちらか一方から増幅された核酸を特異的に確認できるか否かについて検証した。
【0119】
<試料核酸がホモ接合体に由来する核酸である場合>
〔実施例1〕
本実施例におけるPCRには、テンプレートとしてテンプレートG、リバースプライマーとしてHP−C、コンペティタープライマーとしてCP−A1、フォワードプライマーとしてM13M3を用いた。
【0120】
PCRのための反応液を全量が40μLとなるように調製した。具体的には、テンプレート(4ng)、フォワードプライマー(終濃度0.5μM)、リバースプライマー(終濃度0.5μM)、コンペティタープライマー(終濃度0.5μM)、Taq PCR Master Mix Kit(QIAGEN社製)に付属のTaq PCR Master Mix(2×)(20μL)、バルジ構造結合蛍光分子(終濃度20μM)、および反応液の全量が40μLになるような量のH
2Oを混合して、反応液を調製した。バルジ構造結合蛍光分子として、式(2)で表される2,7−ジアミノ−1,8−ナフチリジンを用いた。
【0121】
PCRは、まず95℃で2分間加温した後、95℃で10秒間、55℃で30秒間および72℃で30秒間のサイクルを繰り返すことによって実施した。
【0122】
PCRに供する前に、調製した反応液の蛍光強度を測定し、次にこの反応液をそのままPCRに供し、その後、5サイクル毎に、反応液の蛍光強度を測定した。PCRは、40サイクルまで行なった。蛍光強度の測定は、蛍光プレートリーダー(ベルトールドテクノロジー社製 Mithras LB940)を用いて、励起波長400nmおよび蛍光検出波長450nmの条件にて行った。
【0123】
このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図2の(a)において「1」の凡例で示す。なお、
図2の(a)において、縦軸は相対蛍光強度、横軸はPCRのサイクル数を表す。
【0124】
また、PCRにより得られたPCR産物を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を
図3の(a)に示す。同図に示されるバンドは、左から順に、分子量マーカー、および各サイクル数におけるPCRによって得られたDNA増幅断片のバンドを示す。
【0125】
〔実施例2〕
コンペティタープライマーとしてCP−A2を用いたこと以外は、実施例1と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図2の(a)において「2」の凡例で示す。
【0126】
〔実施例3〕
テンプレートとしてテンプレートTを用いたこと以外は、実施例1と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図2の(b)において「3」の凡例で示す。
【0127】
また、PCRにより得られたPCR産物を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を
図3の(b)に示す。同図に示されるバンドは、左から順に、分子量マーカー、各サイクル数におけるPCRによって得られたDNA増幅断片のバンドを示す。
【0128】
〔実施例4〕
コンペティタープライマーとしてCP−A2を用いたこと以外は、実施例3と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図2の(b)において「4」の凡例で示す。
【0129】
〔実施例5〕
テンプレートとしてテンプレートT、ヘアピンプライマーとしてHP−A、コンペティタープライマーとしてCP−C1を用いたこと以外は、実施例1と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図2の(c)において「5」の凡例で示す。
【0130】
また、PCRにより得られたPCR産物を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を
図3の(c)に示す。同図に示されるバンドは、左から順に、分子量マーカー、各サイクル数におけるPCRによって得られたDNA増幅断片のバンドを示す。
【0131】
〔実施例6〕
コンペティタープライマーとしてCP−C2を用いたこと以外は、実施例5と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図2の(c)において「6」の凡例で示す。
【0132】
〔実施例7〕
テンプレートとしてテンプレートGを用いたこと以外は、実施例5と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図2の(d)において「7」の凡例で示す。
【0133】
また、PCRにより得られたPCR産物を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を
図3の(d)に示す。同図に示されるバンドは、左から順に、分子量マーカー、各サイクル数におけるPCRによって得られたDNA増幅断片のバンドを示す。
【0134】
〔実施例8〕
コンペティタープライマーとしてCP−C2を用いたこと以外は、実施例7と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図2の(d)において「8」の凡例で示す。
【0135】
〔実施例9〕
実施例1と同様の条件にて、PCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図4の(a)において「9」の凡例で示す。
【0136】
〔実施例10〕
リバースプライマーとしてHP−A1を用い、コンペティタープライマーとしてCP−C2を用いたこと以外は、実施例9と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図4の(a)において「10」の凡例で示す。
【0137】
〔実施例11〕
実施例3と同様の条件にて、PCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図4の(b)において「11」の凡例で示す。
【0138】
〔実施例12〕
リバースプライマーとしてHP−A1を用い、コンペティタープライマーとしてCP−C2を用いた以外は、実施例11と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図4の(b)において「12」の凡例で示す。
【0139】
〔比較例1〕
コンペティタープライマーとしてCP−Aを用いたこと以外は、実施例1と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図2の(a)において「1’」の凡例で示す。
【0140】
〔比較例2〕
コンペティタープライマーとしてCP−Aを用いたこと以外は、実施例3と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図2の(b)において「2’」の凡例で示す。
【0141】
〔比較例3〕
コンペティタープライマーとしてCP−Cを用いたこと以外は、実施例5と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図2の(c)において「3’」の凡例で示す。
【0142】
〔比較例4〕
コンペティタープライマーとしてCP−Cを用いたこと以外は、実施例7と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図2の(d)において「4’」の凡例で示す。
【0143】
〔比較例5〕
コンペティタープライマーを用いなかったこと以外は、実施例9と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図4の(a)において「9’」の凡例で示す。
【0144】
〔比較例6〕
コンペティタープライマーを用いなかったこと以外は、実施例10と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図4の(a)において「6’」の凡例で示す。
【0145】
〔比較例7〕
コンペティタープライマーを用いなかったこと以外は、実施例11と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図4の(b)において「7’」の凡例で示す。
【0146】
〔比較例8〕
コンペティタープライマーを用いなかったこと以外は、実施例12と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図4の(b)において「8’」の凡例で示す。
【0147】
〔実施例1〜4,9,11と比較例1,2,5,7との対比〕
テンプレートGから増幅した核酸の特異的な確認について、実施例1〜4,9,11のPCRの結果と比較例1,2,5,7のPCRの結果とを比較して説明する。
【0148】
実施例1,2では、
図2の(a)に示すように、PCRのサイクル数の増加に伴って、蛍光強度が減少した。具体的には、蛍光強度は15サイクルにおいて1未満になり、その後さらに減少した。このことは、CP−A1またはCP−A2の存在下において、HP−CがテンプレートGに結合し、テンプレートGから核酸が増幅したことを示している。よって、これらのコンペティタープライマーの存在下においても、蛍光強度を指標とすることによって、テンプレートGからの核酸を確認することができる。さらに、
図3の(a)に示すように、実施例1では、この増幅された核酸(134bp)を電気泳動によって視覚的に確認された。
【0149】
また、
図2の(b)に示すように、実施例3では、35サイクルを超えるまで、蛍光強度は1未満にならず、実施例4では、40サイクルでも蛍光強度は1未満にならなかった。このことは、PCRが進行したとしても、CP−A1またはCP−A2が優先的にテンプレートTに結合し、HP−CはテンプレートTに極めて結合しにくいことを示している。
図3の(b)に示す電気泳動の結果からも、実施例3では、CP−A1によって増幅された核酸(107bp)は視覚的に確認されたが、HP−Cによって増幅された核酸(134bp)は視覚的に確認されなかった。
【0150】
従って、HP−CとCP−A1またはCP−A2との組合せを用いることによって、テンプレートGに対してはHP−Cを特異的に結合させ、テンプレートTに対してはCP−A1またはCP−A2を特異的に結合させることができる。このため、テンプレートGからの核酸の増幅を特異的に確認することができ、テンプレートTから増幅した核酸の増幅は確認されない。よって、信頼性の高い検出結果を得ることができる。
【0151】
一方、
図2の(a)に示すように、比較例1も、実施例1,2と同様に、PCRのサイクル数の増加に伴って、蛍光強度が減少した。この結果は、CP−Aの存在下において、HP−Cを用いてテンプレートGからの核酸を確認できることを示している。
【0152】
しかし、
図2の(b)に示すように、比較例2では、テンプレートT、HP−CおよびCP−Aを用いた場合、蛍光強度は、20サイクルを超えると1未満になり、その後さらに減少した。このことは、CP−Aが存在したとしても、PCRが進行すると、HP−CもテンプレートTに結合し、テンプレートTから核酸が増幅されたことを示している。これによれば、HP−CとCP−Aとの組合せを用いた場合、PCRのサイクル数が増加すると、テンプレートTからの核酸の増幅も確認してしまうことを示している。
【0153】
また、実施例1と同様の条件である実施例9についても、実施例1と同様の結果が得られた。実施例3と同様の条件である実施例11についても、実施例3と同様の結果が得られた。
【0154】
一方、
図4の(a)に示すように、比較例5も、実施例9と同様に、PCRのサイクル数の増加に伴って、蛍光強度が減少した。しかし、
図4の(b)に示すように、比較例7では、テンプレートTおよびHP−Cを用いた場合、蛍光強度は、20サイクルを超えると1未満になり、その後さらに減少した。このことは、CP−Aが存在しないため、PCRが進行すると、HP−CがテンプレートTに結合し、テンプレートTから核酸が増幅されたことを示している。これによれば、CP−A1を用いない場合、PCRのサイクル数が増加すると、HP−CがテンプレートTに結合し、テンプレートTからの核酸の増幅も確認してしまうことを示している。
【0155】
〔実施例5〜8,10,12と比較例3,4,6,8との対比〕
テンプレートTから増幅した核酸の特異的な確認について、実施例5〜8,10,12のPCRの結果と比較例3,4,6,8のPCRの結果とを比較して説明する。
【0156】
図2の(c)に示すように、実施例5,6では、PCRのサイクル数の増加に伴って、蛍光強度が減少した。具体的には、実施例5では、蛍光強度は20サイクルにおいて1未満になり、実施例6では、蛍光強度は25サイクルにおいて1未満になり、それぞれその後さらに減少した。このことは、CP−C1またはCP−C2の存在下において、HP−AがテンプレートTに結合し、テンプレートTから核酸が増幅したことを示している。よって、これらのコンペティタープライマーの存在下においても、蛍光強度を指標とすることによって、テンプレートTからの核酸を確認することができる。さらに、
図3の(c)に示すように、実施例5では、この増幅された核酸(134bp)を電気泳動によって視覚的に確認することができた。
【0157】
また、実施例7,8では、
図2の(d)に示すように、40サイクルでも蛍光強度は1未満にならなかった。このことは、PCRが進行したとしても、CP−C1またはCP−C2が優先的にテンプレートGに結合し、HP−AはテンプレートGに結合しないことを示している。
図3の(d)に示す電気泳動の結果からも、実施例7では、CP−C1によって増幅された核酸(107bp)は視覚的に確認されたが、HP−Cによって増幅された核酸(134bp)は視覚的に確認されなかった。
【0158】
従って、HP−AとCP−C1またはCP−C2との組合せを用いることによって、テンプレートTに対してはHP−Aを特異的に結合させ、テンプレートGに対してはCP−C1またはCP−C2を特異的に結合させることができる。このため、テンプレートTからの核酸の増幅を特異的に確認することができ、テンプレートGから増幅した核酸の増幅は確認されない。よって、信頼性の高い検出結果を得ることができる。
【0159】
一方、
図2の(c)に示すように、比較例3も実施例5,6と同様に、PCRのサイクル数の増加に伴って、蛍光強度が減少した。この結果は、CP−Cの存在下において、HP−Aを用いてテンプレートTからの核酸を確認できることを示している。
【0160】
しかし、
図2の(d)に示すように、比較例4では、テンプレートG、HP−AおよびCP−Cを用いた場合、蛍光強度は、30サイクルを超えると1未満になり、その後さらに減少した。このことは、CP−Cが存在したとしても、PCRが進行すると、HP−AもテンプレートGに結合し、テンプレートGから核酸が増幅されたことを示している。これによれば、HP−AとCP−Cとの組合せを用いた場合、PCRのサイクル数が増加すると、テンプレートGからの核酸の増幅も確認してしまうことを示している。
【0161】
また、
図4の(b)に示すように、実施例12では、PCRのサイクル数の増加に伴って、蛍光強度が減少した。具体的には、蛍光強度は20サイクルにおいて1未満になり、その後さらに減少した。このことは、CP−C2の存在下において、HP−A1がテンプレートTに結合し、テンプレートTから核酸が増幅したことを示している。よって、CP−C2の存在下においても、HP−A1を用いれば、蛍光強度を指標とすることによって、テンプレートTからの核酸を確認することができる。
【0162】
実施例10では、
図4の(a)に示すように、40サイクルでも蛍光強度は1未満にならなかった。このことは、PCRが進行したとしても、CP−C2が優先的にテンプレートGに結合し、HP−A1はテンプレートGに結合しないことを示している。
【0163】
従って、HP−A1とCP−C2との組合せを用いることによって、テンプレートTに対してはHP−A1を特異的に結合させ、テンプレートGに対してはCP−C2を特異的に結合させることができる。このため、テンプレートTからの核酸の増幅を特異的に確認することができ、テンプレートGから増幅した核酸の増幅は確認されない。よって、信頼性の高い検出結果を得ることができる。
【0164】
一方、
図4の(b)に示すように、比較例8も実施例12と同様に、PCRのサイクル数の増加に伴って、蛍光強度が減少した。しかし、
図4の(a)に示すように、比較例6では、テンプレートGおよびHP−A1を用いた場合、蛍光強度は、25サイクルを超えると1未満になり、その後さらに減少した。このことは、CP−C2が存在しないため、PCRが進行すると、HP−A1がテンプレートGに結合し、テンプレートGから核酸が増幅されたことを示している。これによれば、CP−C2を用いない場合、PCRのサイクル数が増加すると、HP−A1がテンプレートGに結合し、テンプレートGからの核酸の増幅も確認してしまうことを示している。
【0165】
<試料核酸がヘテロ接合体に由来する核酸である場合>
〔実施例13〕
テンプレートとしてテンプレートGとテンプレートTとの混合物を用い、リバースプライマーとしてHP−Cを用い、コンペティタープライマーとしてCP−A1を用いたこと以外は、実施例1と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。なお、上記混合物中のテンプレートGとテンプレートTとの割合は、1:1(各2ng)であった。
【0166】
このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図4の(c)において「13」の凡例で示す。
【0167】
〔実施例14〕
リバースプライマーとしてHP−A1を用い、コンペティタープライマーとしてCP−C2を用いたこと以外は、実施例13と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図4の(c)において「14」の凡例で示す。
【0168】
〔比較例9〕
コンペティタープライマーを用いなかったこと以外は、実施例13と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図4の(c)において「9’」の凡例で示す。
【0169】
〔比較例10〕
コンペティタープライマーを用いなかったこと以外は、実施例14と同様にPCRを実施し、反応液の蛍光強度を測定した。このPCRにおける蛍光強度の測定結果を
図4の(c)において「10’」の凡例で示す。
【0170】
〔実施例13,14と比較例9,10との対比〕
テンプレートGまたはテンプレートTの何れから一方から増幅した核酸の特異的な確認について、実施例13,14のPCRの結果と比較例9,10のPCRの結果とを比較して説明する。
【0171】
実施例13では、
図4の(c)に示すように、PCRのサイクル数の増加に伴って、蛍光強度が減少した。具体的には、蛍光強度は15サイクルにおいて1未満になり、その後さらに減少した。この蛍光強度の減少は、テンプレートGから核酸が増幅したことを示している。なぜなら、上記実施例1,3,9,11の結果から明らかなように、HP−CとCP−A1との組合せを用いてPCRを実施した場合、HP−CをテンプレートTではなくテンプレートGに特異的に結合させることができるからである。
【0172】
したがって、HP−CとCP−A1との組合せを用いることによって、テンプレートGおよびテンプレートTの混合物から、テンプレートGからの核酸の増幅のみを特異的に確認することができることが明らかになった。
【0173】
一方、比較例9では、
図4の(c)に示すように、実施例13と同様に、PCRのサイクル数の増加に伴って、蛍光強度が減少した。具体的には、蛍光強度は10サイクルを超えると1未満になり、その後さらに減少した。この蛍光強度の減少は、テンプレートGから核酸が増幅したことを示している。しかし、比較例5,7の結果から明らかなように、PCRのサイクル数が増加すると、HP−CがテンプレートTに結合し、テンプレートTからの核酸の増幅も確認してしまう。このため、比較例9では、PCRのサイクル数が増加すると、テンプレートGからの核酸の増幅だけでなく、テンプレートTからの核酸の増幅も確認してしまう。
【0174】
また、実施例14では、
図4の(c)に示すように、PCRのサイクル数の増加に伴って、蛍光強度が減少した。具体的には、蛍光強度は20サイクルを超えると1未満になり、その後さらに減少した。この蛍光強度の減少は、テンプレートTから核酸が増幅したことを示している。なぜなら、上記実施例10,12の結果から明らかなように、HP−A1とCP−C2との組合せを用いてPCRを実施した場合、HP−A1をテンプレートGではなくテンプレートTに特異的に結合させることができるからである。
【0175】
したがって、HP−A1とCP−C2との組合せを用いることによって、テンプレートGおよびテンプレートTの混合物から、テンプレートTからの核酸の増幅のみを特異的に確認することができることが明らかになった。
【0176】
一方、比較例10では、
図4の(c)に示すように、実施例14と同様に、PCRのサイクル数の増加に伴って、蛍光強度が減少した。具体的には、蛍光強度は15サイクルを超えると1未満になり、その後さらに減少した。この蛍光強度の減少は、テンプレートTから核酸が増幅したことを示している。しかし、比較例6,8の結果から明らかなように、PCRのサイクル数が増加すると、HP−A1がテンプレートGに結合し、テンプレートGからの核酸の増幅も確認してしまう。このため、比較例10では、PCRのサイクル数が増加すると、テンプレートTからの核酸の増幅だけでなく、テンプレートGからの核酸の増幅も確認してしまう。
【0177】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。