特許第5693175号(P5693175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693175
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】スパッタリング方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20150312BHJP
   C23C 14/35 20060101ALI20150312BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20150312BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   C23C14/34 R
   C23C14/35 Z
   H01L21/285 S
   H01L21/28 301R
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-262052(P2010-262052)
(22)【出願日】2010年11月25日
(65)【公開番号】特開2012-111996(P2012-111996A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2013年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】濱口 純一
(72)【発明者】
【氏名】小平 周司
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 恒吉
(72)【発明者】
【氏名】佐野 昭文
(72)【発明者】
【氏名】坂本 勇太
(72)【発明者】
【氏名】沼田 幸展
(72)【発明者】
【氏名】豊田 聡
【審査官】 浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/157439(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/004890(WO,A1)
【文献】 特開2011−256441(JP,A)
【文献】 特開2004−200401(JP,A)
【文献】 特開2007−197840(JP,A)
【文献】 特表2000−503806(JP,A)
【文献】 特開平10−259480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00〜14/58
H01L 21/28
H01L 21/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物を、アスペクト比が3以上の微細なホールまたはトレンチがパターニング形成されたものとし、これらホールを含む処理対象物の表面全体に亘って金属膜を成膜するためのスパッタリング方法であって、
真空チャンバ内に処理対象物と、処理対象物に形成しようとする金属膜に応じて作製されたターゲットとを対向配置し、
ターゲットから処理対象物に向かう方向を、処理対象物からターゲットに向かう方向をとし、上下方向に沿う真空チャンバの壁面に、上下方向に間隔を存して夫々巻回してなる第1のコイルと第2のコイルに15A〜30Aの範囲で通電して処理対象物の全面に亘って垂直な磁場が作用するように垂直磁場を発生させると共に、ターゲットの上方に設けた磁石ユニットによりターゲットの下方に磁場を作用させ、
真空チャンバ内にスパッタガスを導入し、ターゲットに所定の直流電力を投入して真空チャンバ内にプラズマを形成してターゲットをスパッタリングし、
スパッタガスをアルゴンとして、スパッタリング中、真空チャンバ内のアルゴンの分圧を5〜30Paの範囲に保持して成膜することを特徴とするスパッタリング方法。
【請求項2】
スパッタリング中、所定のバイアス電力を処理対象物に投入し、ターゲットからのスパッタ粒子やプラズマ中で電離したスパッタ粒子のイオンを引き込むようにしたことを特徴とする請求項1記載のスパッタリング方法。
【請求項3】
前記ターゲットとしてCuを用いることを特徴とする請求項1または請求項2記載のスパッタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体デバイスの製造工程にて、所定のアスペクト比を有する微細なホールまたはトレンチがパターニング形成された処理対象物に対して、ホール等を含む処理対象物の表面全体に亘って金属膜を成膜するためのスパッタリング方法に関し、特に、高アスペクト比の微細なホールに対してCu膜からなるシード層を形成することに最適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの製造工程において、所定のアスペクト比を有する微細なホールやトレンチに対してカバレッジよくCu膜からなるシード層を成膜する方法として、スパッタリング法等のPVD法を用いることが一般に知られている(特許文献1参照)。
【0003】
上記のものでは、プラズマ中のArイオンが、Cu製のターゲット面に衝突し、そのターゲット表面からCu原子やCuイオンが放出され、バイアス電力(例えば、50W)が投入されている基板に向かってかつ直進性を持って引き込まれて付着、堆積し、Cu膜からなるシード層が形成される。
【0004】
ところで、近年の半導体デバイスの高集積化や小型化に伴い、配線寸法の小型化が一層要求されているものの、配線膜や層間絶縁膜の厚さは、静電容量や寄生容量等を低減するために所定の厚さに保持する必要がある。このような要求を満たすために、所定の開口径を有するホール(ビアホールやコンタクトホール等)にはアスペクト比が3以上となるものがある。このようなホールに例えばCuからなるシート層を形成する場合、上記従来例のスパッタリング方法では、カバレッジ(被覆)率の良い層を形成することが困難(特に、ボール底部のカバレッジ率(ボトムカバレッジ率)を向上させることが困難)であり、その結果、信頼性の高い配線構造を形成する上で問題であった。ここで、ボトムカバレッジ率を向上させる方法の一つとして、成膜時間を長くすることが考えらえる。然し、これでは、成膜時間が著しく長くなって生産性が低下する不具合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−80962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、高アスペクト比のホールまたはトレンチに対して被覆性よく、かつ、高い成膜レートで所定の金属膜を成膜できるスパッタリング方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、処理対象物を、アスペクト比が3以上の微細なホールまたはトレンチがパターニング形成されたものとし、これらホールを含む処理対象物の表面全体に亘って金属膜を成膜するためのスパッタリング方法であって、真空チャンバ内に処理対象物と、処理対象物に形成しようとする金属膜に応じて作製されたターゲットとを対向配置し、ターゲットから処理対象物に向かう方向を、処理対象物からターゲットに向かう方向をとし、上下方向に沿う真空チャンバの壁面に、上下方向に間隔を存して夫々巻回してなる第1のコイルと第2のコイルに15A〜30Aの範囲で通電して処理対象物の全面に亘って垂直な磁場が作用するように垂直磁場を発生させると共に、ターゲットの上方に設けた磁石ユニットによりターゲットの下方に磁場を作用させ、真空チャンバ内にスパッタガスを導入し、ターゲットに所定の直流電力を投入して真空チャンバ内にプラズマを形成してターゲットをスパッタリングし、スパッタガスをアルゴンとして、スパッタリング中、真空チャンバ内のアルゴンの分圧を5〜30Paの範囲に保持して成膜することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、スパッタリング中、所定金属からなるシード層を形成する従来のスパッタリング法における成膜条件(5Paより低い分圧)と比較して、5〜30Paの範囲の高いアルゴンの分圧に保持することで、金属イオンの電離が一層促進されてプラズマ中での金属イオン比率が増加する。そして、処理対象物に向けて垂直磁場を作用させることで、プラズマ中の金属イオンが、処理対象物へと一層高い指向性を持ってかつ強い直進性を持って、ホール等の底部まで到達するようになる。その結果、ホール等の底部における成膜レートが向上してボトムカバレッジ率が大幅に向上する。しかも、ホール等の底部に一旦付着、堆積した金属膜が、それと同時に引き込まれたArイオン(金属イオン)等により逆スパッタされ、この逆スパッタされた金属原子が、微細ホールの側壁下部を含む側壁全体に亘って付着、堆積するようになる。その結果、ホール等の内部をその全体に亘って所定膜厚で被覆性良くかつ短時間で成膜できる。本発明においては、アルゴン分圧が5Paより低いと、特にボトムカバレッジ率を効果的に向上させることができない一方で、アルゴン分圧が50Paを超えると、アルゴンとの散乱により金属イオンが著しく減少し、カバレッジが低下するという不具合が生じる。
【0009】
本発明において、スパッタリング中、所定のバイアス電力を処理対象物に投入し、ターゲットからのスパッタ粒子やプラズマ中で電子したスパッタ粒子のイオンを引き込むようにすれば、一層成膜レートを向上できてよい。この場合、処理対象物に印加するバイアス電力は、50〜200Wであることが好ましい。50Wより低いバイアス電力では、ホール底部の成膜レートを効果的に向上させることができず、また、200Wを超えると、逆スパッタ量が多くなり過ぎて、逆に微細ホール底部の成膜レートが遅くなる。
【0010】
なお、本発明は、前記ターゲットとしてCuを用い、所定のアスペクト比、特に3以上のアスペクト比のホールに対して、高い成膜速度で被覆性よくCuからなるシード層を成膜することに最適である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態によるスパッタリング装置の模式的断面図。
図2】スパッタリング装置を用いて成膜したときの状態を模式的に説明する図。
図3】本発明に即した実験結果を示すグラフ。
図4】本発明に即した他の実験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、処理対象物Wを、シリコンウエハ等の基板表面にシリコン酸化物層を所定の膜厚で形成し、このシリコン酸化物層にアスペクト比が3以上である微細なホールを形成したものとし(図2参照)、このホール内にCu膜を形成する場合を例として本発明の実施形態のスパッタリング方法を説明する。
【0013】
図1を参照して、SMは、本実施形態のスパッタリング方法による成膜が可能なスパッタリング装置である。このスパッタリング装置SMは、真空雰囲気の形成が可能な真空チャンバ1を備え、真空チャンバ1の天井部にカソードユニットCが取付けられている。以下においては、図1中、真空チャンバ1の天井部側を向く方向を「上」とし、その底部側を向く方向を「下」として説明する。
【0014】
カソードユニットCは、ターゲット2と、このターゲット2の上方に配置された磁石ユニット3とから構成されている。ターゲット2はCu製であり、処理対象物Wの輪郭に応じて、公知の方法で平面視円形や矩形に形成されたものである。なお、ターゲット2は、処理対象物に形成しようとする金属膜に応じて適宜選択でき、例えばTiやAl、Ta、Co、Ni、W、Mo製とすることができる。ターゲット2は、図示省略のバッキングプレートに装着した状態で、そのスパッタ面を下方にして絶縁体Iを介して真空チャンバ1の上部に取り付けられる。また、ターゲット2は、DC電源や高周波電源等のスパッタ電源E1に接続され、スパッタ中、ターゲット2に負の電位を持った電力が投入される。
【0015】
ターゲット2の上方に配置される磁石ユニット3は、ターゲット2のスパッタ面21の下方空間に磁場を発生させ、スパッタ時にスパッタ面2aの下方で電離した電子等を捕捉してターゲット2から飛散したスパッタ粒子を効率よくイオン化する公知の閉鎖磁場若しくはカスプ磁場構造を有するものであり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0016】
真空チャンバ1内には導電性を有するアノードシールド4が配置されている。アノードシールド4は、ターゲット2の周囲を覆って下方に延びる筒状の部材である。アノードシールド4は通常グランドに接続するが、他のDC電源E2に接続し正の電位を印加してもよい。この場合、アノードシールド4は、イオン化したスパッタ粒子のイオンを反射し、強い直進性を持って基板Wへと放出されることをアシストする。
【0017】
真空チャンバ1の底部には、カソードユニットCに対向させてステージ5が配置され、処理対象物Wが位置決め保持されるようになっている。ステージ5は高周波電源E3に接続され、スパッタ中、ステージ5、ひいては基板Wにバイアス電位が印加され、特にスパッタ粒子のイオンを基板Wに積極的に引き込む役割を果たす。真空チャンバ1の側壁には、スパッタガスたるアルゴンガスを導入するガス管6が接続され、このガス管6がマスフローコントローラ6aを介して図示省略のガス源に連通する。そして、これらの部品がガス導入手段を構成し、流量制御されたスパッタガスが真空チャンバ1内に導入できる。
【0018】
また、真空チャンバの側壁には、リング状のヨーク71に導線72を巻回してなる上コイル7uと下コイル7dとが上下方向に所定間隔を存して設けられ、電源E4から両コイル7u、7dに通電できるようになっている。そして、ターゲット2のスパッタリングにより生じたスパッタ粒子が垂直磁場の影響で失活せずに、効率よく基板全面に亘って到達し、かつ、ターゲット2のスパッタ面21及び処理対象物W全面に亘って垂直な磁力線MFが所定間隔で通るように下向きの垂直磁場が発生するようになっている。なお、コイルの個数は上記に限定されるものではなく、また、上コイル7uと下コイル7dとの間の距離、導線72の径や巻数は、例えばターゲット2のスパッタ面21の面積、ターゲット3と基板Wとの間の距離、電源装置E4の定格電流値や発生させようとする磁場強度(ガウス)に応じて適宜設定される。
【0019】
真空チャンバ1の底部には、ターボ分子ポンプやロータリポンプなどからなる図示省略の真空排気装置に通じる排気管8が接続されている。上記スパッタリング装置SMは、マイクロコンピュータやシーケンサ等を備えた公知の制御手段9を有し、制御手段9により上記各電源E1〜E4の作動、マスフローコントローラ6aの作動や真空排気装置の作動等を統括管理するようになっている。
【0020】
次に、上記スパッタリング装置1を用いた処理対象物Wへのスパッタリング方法を説明する。先ず、真空排気手段を作動させて真空チャンバ1内を所定の真空度(例えば、10−5Pa)まで真空引きしておく。ステージ5に処理対象物Wをセットした後、電源E4により上コイル7u及び下コイル7dに通電し、ターゲット2及び処理対象物W全面に亘って下向きの垂直な磁力線MFが所定間隔で通るように垂直磁場を発生させる。そして、真空チャンバ1内にマスフローコントローラ6aを制御してアルゴンガス(スパッタガス)を所定の流量で導入し、スパッタ電源E1よりターゲット2に負の電位を持つ所定電力を投入して放電させ、真空チャンバ1内にプラズマ雰囲気を形成する。
【0021】
ここで、従来技術では、Cu膜の成膜する場合、プラズマ雰囲気の形成後、マスフローコントローラ6aによりアルゴンガスの導入を停止する等、スパッタリング中のアルゴン分圧を0〜5Paの範囲に設定し、例えば自己放電プラズマを形成して成膜を行うことが知られている。然し、アスペクト比が3を超えるような微細ホールでは、たとえ上コイル7uと下コイル7dに通電する電流値やバイアス電力を適宜調節したとしても、特に、ホールの底部でのカバレッジ率を効果的に向上できない。
【0022】
本実施形態では、スパッタガス中、真空チャンバ内1のアルゴンの分圧が5〜30Paの範囲に保持するようにした。これにより、Arイオン(またはCuイオン)がターゲット2のスパッタ面21に衝突してスパッタされ、ターゲット2からCu原子が飛散する。このとき、アルゴン分圧を高めておくことで、ターゲット2から飛散するCu原子の量が多くなると共に、Cuの電離が促進されてプラズマ中でのCuイオン比率が増加する。
【0023】
そして、処理対象物Wの全面に亘って垂直に発生させ、高周波電源E3により処理対象物Wに所定のバイアス電力を印加することで、ターゲット2のスパッタリングにより生じたCu原子や電離したCuイオンが、処理対象物Wへと一層高い指向性を持ってかつ強い直進性を持って、ホールの底部まで引き込まれるようになる。その結果、図2に示すように、ホールHの底部Hbにおける成膜レートが向上して、特にボトムカバレッジ率が大幅に向上する。しかも、ホールHの底部Hbに一旦付着、堆積したCu膜が、それと同時に引き込まれたArイオン等により逆スパッタされ、この逆スパッタされたCuが、ホールHの側壁Hs下部を含む、この側壁Hs全体に亘って付着、堆積するようになる(つまり、ホールHの側壁Hsのカバレッジ率も向上する)。その結果、ホールHの内部をその全体に亘って所定膜厚で被覆性良くかつ短時間で成膜できるようになる(図2参照)。
【0024】
なお、アルゴン分圧が5Paより低いと、特にボトムカバレッジ率を効果的に向上させることができない一方で、アルゴン分圧が50Paを超えると、アルゴンとの散乱により金属イオンが著しく減少し、カバレッジが低下するという不具合が生じる。また、バイアス電力は、50〜200Wの範囲値に設定される。50Wより低いと、ホール底部の成膜レートを効果的に向上させることができない一方で、200Wを超えると、逆スパッタ量が多くなり過ぎて、逆に微細ホール底部の成膜レートが遅くなるという不具合が生じる。更に、上コイル7uと下コイル7dへの通電電流値は、15〜30Aの範囲に設定される。15Aより低いと、ホール底部の成膜レートを効果的に向上させることができない一方で、30Aを超えると、プラズマが不安的になるという不具合が生じる。
【0025】
次に、以上の効果を確認するために、図1に示すスパッタリング装置SMを用いて以下の各実験を行った。実験1では、処理対象物Wとして、シリコン酸化物膜中に、開口径が0.06μm、アスペクト比が5のホールをパターニング形成されたものを用意した。そして、ターゲット2として高純度のCu製ターゲットを用いてCu膜を形成することとした。スパッタ条件として、ターゲット2と処理対象物Wとの間の距離を、400mm、スパッタ電源E1からターゲット2への投入電力20kW、電源E2からアースシールドへの投入電圧を30V、電源E3から投入するバイアス電力を200W、スパッタ時間を10secに設定した。また、上コイル7u及び下コイル7dへの通電電流を30Aとして下向きの垂直磁場を発生させるようにした。そして、実験1では、スパッタリング中、スパッタガスの分圧を0〜50Paの範囲で変化させ、処理対象物に成膜をした。
【0026】
図3は、上記条件で処理対象物に成膜したときの、アルゴン分圧に対するホールHの底部Hbのカバレッジ率を測定したグラフである。カバレッジ率は、a/b×100の式で算出した。ここで、aは、処理対象物の表面におけるCu膜の膜厚であり、bは、ホールHの底部におけるCuの膜厚である(図2参照)。これによれば、アルゴン分圧が5Pa以上のとき、ホールHの底部Hbでのカバレッジ率を略100%にできたことが判る。また、ホールHの側壁でのカバレッジ率も従来技術のものと比較して向上できたことが確認された。
【0027】
次に、実験2では、コイル7u、7dへの通電電流とアルゴン分圧を変化させる以外は、上記実験1と同じ条件で成膜した。図4は、コイルコイル7u、7dへの通電電流を0A,15A,30Aに夫々設定し、各通電電流にてアルゴンガスの分圧を変化させたときの成膜速度(nm/sec)を示すグラフである。これによれば、ホールHの底部Hbにおけるカバレッジ率を向上できる5Pa以上の範囲では、コイル7u、7dへの通電電流を0A、即ち、処理対象物に垂直磁場を作用させない場合にエッチングレートが極端に低下していることが判る。それに対して、垂直磁場を作用させると、エッチングレートの低下量を低減でき、30Aの場合には、半分程度の低下量まで抑制でき、生産性が然程損なわないことが判る。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。上記実施形態では、コイルを用いて垂直磁場を発生させているが、永久磁石等を用いて磁場を発生させることができる。また、スパッタガスとしては、アルゴン以外の希ガスを用いることができ、スパッタガスとして用いる希ガスに応じて、磁場強度を適宜調節すれば、上記と同様の効果が得られる。また、処理対象物は上記のものに限定されるものではなく、所定のアスペクト比で微細なホールやトレンチが形成されたものであれば、本発明は広く適用できる。
【符号の説明】
【0029】
SM…スパッタリング装置、1…真空チャンバ、2…ターゲット、6…ガス管、7u、7d…コイル(垂直磁場発生)、C…カソードユニット、E1〜E4…電源、MF…磁束、W…処理対象物、H…ホール。
図1
図2
図3
図4